(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071614
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240517BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20240517BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240517BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q11/00
A61K8/365
A61K8/25
A61K8/24
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052797
(22)【出願日】2024-03-28
(62)【分割の表示】P 2019190545の分割
【原出願日】2019-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 諒太郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 修平
(72)【発明者】
【氏名】井手上 拓
(57)【要約】
【課題】増粘剤、乳酸アルミニウム、及びシリカを含有する口腔用組成物につき、保存したとしても、粘度の上昇を抑制できる手段を提供すること。
【解決手段】増粘剤、乳酸アルミニウム、シリカ、及びヒドロキシアパタイト粒子を含有する、口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘剤、乳酸アルミニウム、シリカ、及びヒドロキシアパタイト粒子を含有する、口腔用組成物であって、
増粘剤が、アルギン酸若しくはその塩、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース若しくはその塩、キサンタンガム、及びカラギーナンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
増粘剤を0.5~5質量%、
乳酸アルミニウムを0.05~3質量%、
シリカを1~30質量%、
ヒドロキシアパタイト粒子を1~10質量%、
含有し、
前記シリカが、平均粒子径が6~20μm、吸油量(cc/100g)が90~400のシリカであり、
55℃で6日間保存した場合に、当該保存前と保存後の粘度(Pa・s)の差が、絶対値で150以下である、
口腔用組成物(但し、カルボキシメチルセルロース若しくはその塩を0.5~5質量%を含有する口腔用組成物を除く)。
【請求項2】
30℃における粘度が400Pa・s以下である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
増粘剤を1~3質量%、
乳酸アルミニウムを0.1~2.7質量%、
シリカを2~25質量%、
ヒドロキシアパタイト粒子を2~8質量%、
含有する、
請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は口腔用組成物等に関し、より詳細には乳酸アルミニウム及びシリカを含有する口腔用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸アルミニウムは、知覚過敏予防のための薬効成分であることから、当該効果を期待して口腔用組成物に配合されている。また、シリカは、歯牙研磨剤等として、口腔用組成物に配合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、増粘剤、乳酸アルミニウム、及びシリカを含有する口腔用組成物を、保存した場合(特に比較的高温、例えば40~60℃程度で保存した場合)に、著しく粘度が上昇することを見出した。この程度の温度は、口腔用組成物製品の流通(特に夏場の流通)において充分にあり得る温度であり、製品の品質を一定に保つという観点からは、輸送又は保管時におけるこのような経時的な粘度の上昇は好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、増粘剤、乳酸アルミニウム、及びシリカを含有する口腔用組成物につき、経時的な粘度の上昇を抑制できる方法を検討した。その結果、当該口腔用組成物に、さらにヒドロキシアパタイト粒子を配合することで、口腔用組成物の粘度上昇(特に経時的な粘度上昇)を効率よく抑制できる可能性を見出した。そして、当該知見に基づき、さらに検討を進めた。
【0006】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
増粘剤、乳酸アルミニウム、シリカ、及びヒドロキシアパタイト粒子を含有する、口腔用組成物。
項2.
増粘剤が、アルギン酸若しくはその塩、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース若しくはその塩、キサンタンガム、及びカラギーナンからなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の口腔用組成物。
項3.
増粘剤が、カルボキシメチルセルロース若しくはその塩である、項1に記載の口腔用組成物。
項4.
30℃における粘度が400Pa・s以下である、項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項A.
増粘剤、乳酸アルミニウム、及びシリカを含有する口腔用組成物の調製において、ヒドロキシアパタイト粒子をさらに配合することを含む、当該口腔用組成物の経時的な粘度の上昇を抑制する方法。
【発明の効果】
【0007】
増粘剤、乳酸アルミニウム、及びシリカを含有し、且つ保管時の粘度上昇が抑制された口腔用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】各口腔用組成物を55℃で6日間保存した後に測定した粘度値から調製直後の粘度値を引いて算出された値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。なお、本開示は、口腔用組成物、特に増粘剤、乳酸アルミニウム、及びシリカを含む口腔用組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0010】
本開示に包含される口腔用組成物は、増粘剤、乳酸アルミニウム、及びシリカに加え、ヒドロキシアパタイト粒子を含有する。なお、本明細書において当該口腔用組成物を「本開示の口腔用組成物」と呼ぶことがある。
【0011】
ヒドロキシアパタイト粒子としては、口腔用組成物分野において公知のヒドロキシアパタイト粒子を用いることができる。また、公知の方法又は公知の方法から容易に想到できる方法により調製されたヒドロキシアパタイト粒子を用いることもできる。またさらに、ヒドロキシアパタイト市販品を購入して用いることもできる。例えば、富田製薬株式会社から購入して用いることができる。
【0012】
また、ヒドロキシアパタイト粒子のメジアン径(d50)は、特に制限されるものではないが、好ましくは5μm以下、より好ましくは4.5μm以下である。該メジアン径の下限は、特に制限されないが、例えば1μm以上、2μm以上、又は3μm以上が挙げられる。より具体的には、例えば1~5μmが挙げられる。なお、該メジアン径は、レーザー回折・散乱法により測定される値である。より具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して乾式粒度分布測定により測定される値である。
【0013】
ヒドロキシアパタイト粒子は、例えば、pHが4以上7未満であるリン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとを混合して35~85℃で反応させる工程を含む、ヒドロキシアパタイト粒子を製造する方法により調製することができる。
【0014】
リン酸アルカリ塩としては、特に制限されず、水和物及び無水物を包含する。リン酸アルカリ塩としては、例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム等が挙げられ、好ましくはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸ナトリウム塩が挙げられ、より好ましくはリン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
【0015】
リン酸アルカリ塩水溶液中のリン酸アルカリ塩の濃度は、特に制限されず、例えば3~50質量%である。該濃度は、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~20質量%、さらに好ましくは7~15質量%である。
【0016】
リン酸アルカリ塩水溶液のpHは、好ましくは4以上7未満である。該pHは、より好ましくは5~6.5である。なお、後述のように、リン酸アルカリ塩水溶液のpHが比較的低い場合(例えば、pH4以上5未満の場合)は、リン酸アルカリ塩として無水物を使用し、且つ反応温度を比較的高い温度、例えば65~85℃、好ましくは70~85℃、
より好ましくは75~85℃に設定することが望ましい。
【0017】
水酸化カルシウムスラリーはシュウ酸反応性を有するところ、前記水酸化カルシウムスラリーは、シュウ酸に対して特定の反応性を有する水酸化カルシウムのスラリーであることが好ましい。
【0018】
シュウ酸に対する反応性は、例えば、以下の定義で表すことができる:
シュウ酸反応性:5質量%の濃度に調製され、25±1℃に保たれた水酸化カルシウムスラリー50gに、25±1℃に保たれた0.5モル/リットルの濃度のシュウ酸水溶液40gを一気に添加し、添加後pH7.0になるまでの時間(分)。
【0019】
前記シュウ酸に対する特定の反応性としては、上記定義で表す場合、好ましくは1~40分、より好ましくは5~30分、さらに好ましくは10~20分である。
【0020】
水酸化カルシウムスラリーのBET比表面積は、好ましくは5m2/g以上、より好ましくは6m2/g以上である。該BET比表面積の上限は、特に制限されないが、例えば20m2/g、15m2/g、10m2/gである。
【0021】
シュウ酸反応性が高い(例えば上述した特定のシュウ酸に対する反応性を有する)水酸化カルシウムスラリーは、典型的には、水酸化カルシウムスラリーを磨砕処理することにより得ることができる。磨砕処理により、シュウ酸反応性をより高める(上記定義の時間をより短くする)ことができる。磨砕処理は、例えばビーズミルを用いて行われる。磨砕処理の条件としては特に制限されず、例えば特開2017-036176号公報に記載の方法に従った条件を採用することができる。
【0022】
水酸化カルシウムスラリーは、例えば、石灰石を焼成して得られる生石灰(酸化カルシウム)に水を反応させることにより、調製することができる。例えば、石灰石をキルン内において約1000℃で焼成して、生石灰を生成し、この生石灰に約10倍量の熱水を投入し、30分間攪拌させることにより、水酸化カルシウムスラリーを調製することができる。
【0023】
水酸化カルシウムスラリーの固形分濃度は、特に制限されないが、例えば1~30質量%、好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%、さらに好ましくは6~12質量%である。
【0024】
リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとの量比は、ヒドロキシアパタイト粒子を製造できる比である限り特に制限されない。該量比は、Ca/Pモル比が、好ましくは0.3~0.7、より好ましくは0.4~0.6、さらに好ましくは0.45~0.55になるように調整されることが望ましい。
【0025】
リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとを混合する態様は特に制限されない。例えば、リン酸アルカリ塩水溶液を含む反応容器に水酸化カルシウムスラリーを添加する態様(態様1)、水酸化カルシウムスラリーを含む反応容器にリン酸アルカリ塩水溶液を添加する態様(態様2)、リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーを同時に反応容器に添加する態様(態様3)等が挙げられる。これらの中でも、態様1が好ましい。反応容器への上記添加の際には、通常、反応容器中の液は攪拌されている。
【0026】
反応容器への上記添加は、一定程度の時間をかけて行うことが望ましい。添加開始から添加終了までの時間は、例えば10~90分間、好ましくは20~60分間、より好ましくは20~40分間である。
【0027】
反応は、通常、攪拌下で行う。反応温度は、35~85℃である。該反応温度は、好ましくは40~75℃、より好ましくは45~70℃、さらに好ましくは50~70℃、よりさらに好ましくは55~65℃である。反応温度は、リン酸アルカリ塩水溶液のpHが比較的低い場合(例えば、pH4以上5未満の場合)は、比較的高い温度、例えば65~85℃、好ましくは70~85℃、より好ましくは75~85℃である。反応時間(リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーが全て混合されてから開始する時間、上記態様1~3において、リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーの添加が終了した時点から開始する時間)は、例えば10~180分間、好ましくは20~120分間、より好ましくは40~90分間、さらに好ましくは50~70分間である。
【0028】
上記工程により生成したヒドロキシアパタイト粒子は、必要に応じて、精製処理に供される。精製処理としては、例えばろ過処理、水洗処理等が挙げられる。また、必要に応じて、乾燥処理に供することもできる。
【0029】
ヒドロキシアパタイト粒子は、口腔用組成物に、例えば1~10質量%程度含有させることができる。当該含有割合範囲の上限または下限は、例えば1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、2~8質量%又は3~7質量%であることがより好ましい。
【0030】
また、乳酸アルミニウムは、本開示の口腔用組成物に、0.05~3質量%含有されることが好ましい。当該範囲の上限または下限は、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、又は2.9質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、0.1~2.7質量%又は0.2~2.5質量%であってもよい。
【0031】
また、特に制限はされないが、口腔用組成物に含有されるヒドロキシアパタイト粒子及び乳酸アルミニウムの質量比は、ヒドロキシアパタイト粒子1に対して乳酸アルミニウム0.2~0.6程度が好ましい。当該範囲の上限または下限は0.25、0.3、0.35、4、0.45、0.5、又は0.55であってもよく、例えば0.25~0.55又は0.3~0.5程度がより好ましい。
【0032】
本開示の口腔用組成物に含有される増粘剤としては、口腔用組成物分野において用いられる公知の増粘剤を用いることができる。このような増粘剤としては、例えば、アルギン酸若しくはその塩、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース若しくはその塩、キサンタンガム、ジェランガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、増粘性シリカ、ビーガム、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸若しくはその塩、寒天等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、アルギン酸若しくはその塩、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース若しくはその塩、キサンタンガム、カラギーナンが好ましい。
【0034】
アルギン酸の塩としては、アルギン酸のアルカリ金属塩が好ましく、より具体的にカリウム塩及びナトリウム塩が好ましい。特にアルギン酸ナトリウムが好ましい。
【0035】
ヒドロキシアルキルセルロースのアルキルとしては、炭素数1~4(1、2、3、又は
4)のアルキルが好ましい。ヒドロキシアルキルセルロースとしては、具体的には、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が好ましく挙げられる。
【0036】
カルボキシアルキルセルロースのアルキルとしては、炭素数1~4(1、2、3、又は4)のアルキルが好ましい。ヒドロキシアルキルセルロースとしては、具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等が好ましく挙げられる。また、カルボキシアルキルセルロースの塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、より具体的にはカリウム塩又はナトリウム塩が好ましい。
【0037】
ポリアクリル酸の塩としては、ナトリウム塩またはカリウム塩が好ましく例示できる。
【0038】
増粘剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また増粘剤は、例えば、口腔用組成物に0.5~5質量%程度含有することができ、当該範囲の上限又は下限は例えば1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、又は4.5質量%とすることができる。例えば、当該範囲は1~3質量%又は1~2.5質量%とすることができる。
【0039】
本開示の口腔用組成物に含有されるシリカとしては、口腔用組成物分野において用いられる公知のシリカを用いることができる。例えば、沈降シリカを用いることができる。また、研磨用シリカを用いることができる。特に制限はされないが、当該シリカは、平均粒子径2~20μmのシリカであることが好ましい。なお、当該平均粒子径はレーザー回折・散乱法により測定される値である。また、当該シリカは、pH(5aq. Sol.)が例えば5.5~7.5程度又は6~7程度であることが好ましい。なお、pH(5aq. Sol.)とは、5gのシリカを95mLの精製水に分散した際のpHのことである。また、当該シリカは、吸油量(cc/100g)が、例えば10~500又は20~400程度であることが好ましい。 当該シリカは、口腔用組成物に、例えば1~30質量%程度含有させることができる。当該含有割合範囲の上限または下限は、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、又は29質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、2~25質量%又は3~20質量%であることがより好ましい。
【0040】
本開示の口腔用組成物は、比較的高温(例えば40~60℃程度)で保存した場合であっても、著しい粘度の上昇は起こらない。特に、55℃で6日間保存した場合に、当該保存前と保存後の粘度(Pa・s)の差が、絶対値で300以下のものが好ましく、絶対値で250以下、200以下、150以下、又は100以下のものがより好ましい。
【0041】
なお、本明細書において、組成物の粘度は、30℃の恒温槽で30分保温して組成物を30℃とした後、B型粘度計(ブルックフィールド社製、スピンドルT-F、回転数:10rpm/1分間)を用いて測定した値である。
【0042】
本開示の口腔用組成物は、調製されてからの時間や、保存条件(特に保存温度)等にかかわらず、30℃における粘度が400Pa・s以下であることが好ましい。換言すれば、本開示の口腔用組成物は、調製直後であっても、比較的高温で保存した後であっても、30℃における粘度が400Pa・s以下であることが好ましい。また、当該粘度は、例えば、390、380、370、360、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、又は250Pa・s以下であってもよい。当該粘度の下限は特に制限されないが、例えば10、20、30、40、50、又は60Pa・s程度が挙げられる。
【0043】
本開示の口腔用組成物には、効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に配合し得る上記以外の成分を、単独で又は2種以上組み合わせて、さらに配合してもよい。
【0044】
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が例示される。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が例示される。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が例示される。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。
【0045】
また、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等の甘味剤を配合し得る。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらは、組成物全量に対して0.01~1質量%配合することができる。
【0046】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、グリセリン、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0047】
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を単独又は2種以上組み合わせて配合することができる。
【0048】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を単独又は2種以上組み合わせて配合してもよい。
【0049】
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4~8、好ましくは5~7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01~2重量%が例示される。
【0050】
薬効成分として、殺菌剤を配合してもよい。例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン等のカチオン性殺菌剤、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロ
サン、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、ヒノキチオール等が挙げられる。またさらに、殺菌剤以外の薬効成分を配合することもできる。例えば、硝酸カリウム、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、フッ化ナトリウム等を配合してもよい。薬効成分は単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。なお、硝酸カリウムは、知覚過敏予防のための薬効成分であるため、本開示の口腔用組成物にさらに配合するのに特に好ましい。特に硝酸カリウムを配合する場合は、口腔用組成物に例えば1~10質量%程度含有させることができる。当該含有割合範囲の上限または下限は、例えば1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、2~8質量%又は3~7質量%であることがより好ましい。
【0051】
また、基剤として、例えば、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を単独または2種以上を組み合わせて添加することも可能である。
【0052】
なお、以上の任意成分の記載は例示であり、用い得る任意成分を限定するものではない。
【0053】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0054】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0055】
以下に、例に基づいて本開示の主題をより詳細に説明するが、本開示の主題はこれらの例に限定されるものではない。
【0056】
製造例1:ヒドロキシアパタイト粒子の調製
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(BET比表面積:6.7m2/g シュウ酸反応性:15分30秒 特開第2017-036176号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら60℃に加温し撹拌停止まで維持した。10%NaOH水溶液を添加してpHを5.5に調整した。そこに水酸化カルシウムスラリーを30分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ、ヒドロキシアパタイト粒子(粉末)を得た。
【0057】
検討例:乳酸アルミニウムによる口腔用組成物の粘度変化の検討
表1に示す各成分を混合して各口腔用組成物を調製した。乳酸アルミニウムを配合した組成物には、pHを7付近に調整するために苛性ソーダも配合した。なお、表1に示す各成分の数値は質量%を示す。また、表1において、「製造例1HAp」は製造例1と同様にして得られたヒドロキシアパタイト粒子を示し、「市販HAp」は市販ヒドロキシアパタイト粒子(富田製薬(株)製)を示す。また、表1の「シリカ」としては、市販の5種類のシリカ(シリカa、b、c、d、eとする)のいずれかを用い、「ヒドロキシアパタ
イト粒子」としては、製造例1HAp又は市販HApを用いるか、あるいは配合しなかった。これら各「シリカ」及び各「ヒドロキシアパタイト粒子」を組み合わせて各口腔用組成物を調製した(表2a、2b、及び2c参照)。また、用いた5種類のシリカの特徴について、表3にまとめて示す。
【0058】
得られた各口腔用組成物について、調製直後の粘度を測定した。さらに、各満注量83.5mL、胴径45.5mmの無色透明なガラス容器(柏洋硝子製)に60mL以上充填し、充填直後及び55℃、暗所にて6日間保存した後に粘度を測定した。粘度の測定は、いずれも、30℃の恒温槽で30分各口腔用組成物を保温した後、B型粘度計(ブルックフィールド社製、スピンドルT-F、回転数:10rpm/1分間)を用いて行った。調製直後の粘度を表2aに、55℃で6日間保存した後の粘度を表2bに、それぞれ示す。さらに、当該保存後の粘度値から当該調製直後の粘度値を引いて算出した値を表2cに示す。なお、表2cの結果をグラフ化して
図1に示す。
【0059】
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【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
また、ヒドロキシアパタイト粒子として市販HApを用い、市販シリカとしてシリカc、シリカd、又はシリカeを用い、乳酸アルミニウム配合量を0.2質量%、48%苛性ソーダ配合量を0.1質量%とし、保存条件を室温で6日間保存とした以外は、上記と同様にして口腔用組成物を調製して保存し、粘度を検討した。調製直後の粘度を表4aに、室温で6日間保存した後の粘度を表4bに、それぞれ示す。さらに、当該保存後の粘度値から当該調製直後の粘度値を引いて算出した値を表4cに示す。
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【0066】
【0067】