IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図1
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図2
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図3
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図4
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図5
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図6
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図7
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図8
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図9
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図10
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図11
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図12
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図13
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図14
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図15
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図16
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図17
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図18
  • 特開-半導体装置およびその製造方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007167
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/76 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
H01L21/76 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108449
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有江 寛之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 孝行
【テーマコード(参考)】
5F032
【Fターム(参考)】
5F032AA13
5F032AA35
5F032AA44
5F032AA54
5F032DA02
5F032DA43
(57)【要約】
【課題】DTIを有する半導体装置において、素子間におけるリーク電流の発生を防ぐ。
【解決手段】半導体基板SBと、半導体基板SB上のBOX膜BXと、BOX膜BX上の半導体層SLと、半導体層SLの上面から、BOX膜BXの上面に達するトレンチD1と、トレンチD1の両側の側面を覆い、トレンチD1の底部でBOX膜BXの上面と接する絶縁膜IF3と、トレンチD1内において対向する絶縁膜IF3同士の間に形成され、底面が絶縁膜IF3とBOX膜BXとの界面よりも下のBOX膜BX内に位置するトレンチD2と、トレンチD2内に埋め込まれた絶縁膜IF5と、絶縁膜IF5に内包され、一部が当該界面と同じ高さに位置する空隙V1と、を有する半導体装置を用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上の第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上の半導体層と、
前記半導体層の上面から、前記第1絶縁膜の上面に達する第1トレンチと、
前記第1トレンチの両側の側面を覆い、前記第1トレンチの底部で前記第1絶縁膜の上面と接する第2絶縁膜と、
前記第1トレンチ内において対向する前記第2絶縁膜同士の間に形成され、底面が前記第2絶縁膜と前記第1絶縁膜との界面よりも下の前記第1絶縁膜内に位置する第2トレンチと、
前記第2トレンチ内に埋め込まれた第3絶縁膜と、
前記第3絶縁膜に内包され、一部が前記界面と同じ高さに位置する空隙と、
を有する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2絶縁膜は、
前記第1トレンチの側面および前記第1絶縁膜の上面を連続的に覆う第4絶縁膜と、
一方の側面が前記第4絶縁膜の側面を覆い、反対側の側面が前記第2トレンチの側面を構成する第5絶縁膜と、
を有する、半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、
前記半導体層の上面に形成され、前記第1トレンチよりも浅い第3トレンチと、
前記第3トレンチ内に埋め込まれた第6絶縁膜と、
をさらに有する、半導体装置。
【請求項4】
半導体基板と、
前記半導体基板上の第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上の半導体層と、
前記半導体層の上面から、前記第1絶縁膜の途中深さに達する第1トレンチと、
前記第1トレンチ内に、前記第1トレンチの側面および底面を覆う第2絶縁膜を介して埋め込まれた第3絶縁膜と、
を有する、半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置において、
前記半導体層の上面に対して垂直な方向において、前記半導体層と前記第1絶縁膜との界面と、前記第1トレンチの底面との距離は、0.3μm以上である、半導体装置。
【請求項6】
請求項4記載の半導体装置において、
前記第3絶縁膜に内包された空隙をさらに有し、
前記半導体層の前記上面に対して垂直な方向において、前記空隙は、前記第1トレンチの長さの80%以上の長さを有する、半導体装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置において、
前記空隙の一部は、前記半導体層と前記第1絶縁膜との界面と同じ高さに位置する、半導体装置。
【請求項8】
(a)半導体基板と、前記半導体基板上に順に形成された第1絶縁膜および半導体層を備えたSOI基板を準備する工程、
(b)前記半導体層の上面から、前記第1絶縁膜の上面に達する第1トレンチを形成する工程、
(c)前記第1トレンチの両側の側面および底面を覆う第2絶縁膜を形成する工程、
(d)前記半導体層の前記上面に対して垂直な方向において前記第2絶縁膜を貫通し、前記第1絶縁膜の途中深さに達する第2トレンチを形成する工程、
(e)前記第2トレンチ内を埋め込み、空隙を内包する第3絶縁膜を形成する工程、
を有し、
前記空隙の一部は、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との界面と同じ高さに位置する、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程は、
(c1)前記第1トレンチの前記側面および前記第1絶縁膜の前記上面を連続的に覆う第4絶縁膜を形成する工程、
(c2)前記第1トレンチ内に、前記第4絶縁膜の側面を覆う第5絶縁膜を形成することで、前記第4絶縁膜および前記第5絶縁膜からなる前記第2絶縁膜を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項8記載の半導体装置の製造方法において、
(b1)前記半導体層の前記上面に第3トレンチを形成し、前記第3トレンチ内に第6絶縁膜を埋め込む工程をさらに有し、
前記第3トレンチは、前記第1トレンチよりも浅い、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
(a)半導体基板と、前記半導体基板上に順に形成された第1絶縁膜および半導体層を備えたSOI基板を準備する工程、
(b)前記半導体層の上面から、前記第1絶縁膜の途中深さに達する第1トレンチを形成する工程、
(c)前記第1トレンチの両側の側面および底面を覆う第2絶縁膜を形成する工程、
(d)前記第1トレンチ内に、前記第2絶縁膜を介して第3絶縁膜を埋め込む工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体層の前記上面に対して垂直な方向における、前記半導体層と前記第1絶縁膜との界面と、前記第1トレンチの底面との距離は、0.3μm以上である、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3絶縁膜は、内包された空隙を有し、
前記半導体層の前記上面に対して垂直な方向において、前記空隙は、前記第1トレンチの長さの80%以上の長さを有する、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、
前記空隙の一部は、前記半導体層と前記第1絶縁膜との界面と同じ高さに位置する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、DTIを有する半導体装置およびその製造方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランジスタの短チャネル特性の抑制および、素子ばらつきの抑制が可能な半導体装置として、現在、SOI基板を用いた半導体装置が使用されている。SOI基板は、高抵抗なSi(シリコン)などからなる支持基板上にBOX(Buried Oxide)膜(埋め込み酸化膜)が形成され、BOX膜上にSi(シリコン)を主に含む薄い半導体層(シリコン層、SOI層)が形成された基板である。
【0003】
また、半導体基板に形成した素子同士を電気的に分離する構造として、半導体基板の上面に形成された溝内に絶縁膜を埋め込んだ素子分離膜を形成することが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2011-66067号公報)には、半導体基板の上面上に素子分離膜を形成し、さらに、当該素子分離膜よりも深い溝内に、内部に空隙を有する素子分離膜を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-66067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SOI基板に半導体素子を搭載する場合、BOX膜上の半導体層を貫通してBOXの上面に接する深い素子分離膜、つまりDTIを形成することが考えられる。しかし、当該素子分離膜により半導体層を完全に分離しても、素子分離膜の底面とBOX膜との界面(酸化膜界面)を通じてリーク電流が流れる場合がある。その場合、半導体素子の耐圧が確保できず、半導体装置の信頼性が低下する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
一実施の形態である半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上の第1絶縁膜と、第1絶縁膜上の半導体層と、半導体層の上面から、第1絶縁膜の上面に達する第1トレンチと、第1トレンチの両側の側面を覆い、第1トレンチの底部で第1絶縁膜の上面と接する第2絶縁膜と、第1トレンチ内において対向する第2絶縁膜同士の間に形成され、底面が第2絶縁膜と第1絶縁膜との界面よりも下の第1絶縁膜内に位置する第2トレンチと、第2トレンチ内に埋め込まれた第3絶縁膜と、第3絶縁膜に内包され、一部が界面と同じ高さに位置する空隙と、を有するものである。
【0010】
一実施の形態である半導体装置の製造方法は、半導体基板と、半導体基板上に順に形成された第1絶縁膜および半導体層を備えたSOI基板を準備する工程と、半導体層の上面から、第1絶縁膜の上面に達する第1トレンチを形成する工程と、第1トレンチの両側の側面および底面を覆う第2絶縁膜を形成する工程と、半導体層の上面に対して垂直な方向において第2絶縁膜を貫通し、第1絶縁膜の途中深さに達する第2トレンチを形成する工程と、第2トレンチ内を埋め込み、空隙を内包する第3絶縁膜を形成する工程と、を有するものである。空隙の一部は、第1絶縁膜と第2絶縁膜との界面と同じ高さに位置する。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置の製造工程中の断面図である。
図3図2に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4図3に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図5図4に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図6図5に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図7図6に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図8図7に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図9】実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。
図10】実施の形態2に係る半導体装置の製造工程中の断面図である。
図11図10に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図12図11に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図13図12に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図14図13に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図15】実施の形態3に係る半導体装置の断面図である。
図16】実施の形態3に係る半導体装置の製造工程中の断面図である。
図17図16に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図18図17に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図19】比較例の半導体装置を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その言及した数に限定されるものではなく、言及した数以上でも以下でもよい。
【0014】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0015】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0016】
また、本願では、半導体基板と、その上に順に積層したBOX膜および半導体層とを含む積層基板をSOI(Silicon On Insulator)基板と呼ぶ。また、BOX膜上の当該半導体層を、SOI層と呼ぶ場合がある。
【0017】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
以下では、本実施の形態におけるSOI基板に形成されたDTI(Deep Trench Isolation)の構造を、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態の半導体装置は、支持基板である半導体基板SB、半導体基板SB上のBOX膜BX、および、BOX膜BX上のSOI層である半導体層SLからなるSOI基板を有している。半導体基板SBは、例えば500μm~700μm程度の厚さを有し、例えば750Ωcm以上の高い抵抗を有する単結晶シリコン基板である。BOX膜BXは、例えば酸化シリコン(SiO)膜からなる。BOX膜BXの厚さは、例えば、0.5μmより大きい。半導体層SLは、単結晶シリコンからなる半導体層である。半導体層SLの膜厚は、例えば5μmである。半導体基板SBはグランド電位に接続されていてもよい。
【0019】
半導体層SL上には、複数の半導体素子が形成されている。ここでいう半導体素子とは、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などである。半導体素子同士は、半導体層SLの上面に形成された、比較的浅いトレンチ(分離溝)D3内に埋め込まれた絶縁膜からなる素子分離膜EI2により互いに分離されている。素子分離膜EI2は、例えば主に酸化シリコンからなる。
【0020】
素子分離膜EI2から露出する半導体層SLの上面には、所定の深さで不純物が導入された半導体領域(拡散領域)DRが形成されている。半導体領域DRは、例えばMOSFETのソース領域、ドレイン領域、または、半導体層SLを所定の電位で固定するためのコンタクト層を構成している。半導体層SL、素子分離膜EI2および半導体領域DRのそれぞれの上には、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、主に酸化シリコンからなる。層間絶縁膜ILの上面は平坦化されている。
【0021】
層間絶縁膜ILは、上面から下面を貫通する接続孔を複数有している。接続孔は、その底部において半導体領域DRの上面を露出している。各接続孔内には、コンタクトプラグCPが埋め込まれている。コンタクトプラグCPは、例えば主にW(タングステン)からなる導電性接続部である。図示は省略するが、コンタクトプラグCPと半導体領域DRとの間には、接続抵抗を低減するためのシリサイド層が形成されていてもよい。
【0022】
層間絶縁膜IL上およびコンタクトプラグCP上には、金属膜からなる複数の配線M1が形成されている。配線M1は例えばCu(銅)またはAl(アルミニウム)などからなる。コンタクトプラグCPは配線M1の上面に接続されている。つまり、半導体領域DRは、コンタクトプラグCPを介して配線M1に電気的に接続されている。図示は省略しているが、配線M1の側面は、配線層を構成する絶縁膜に覆われていてもよく、当該配線層上に複数の配線層が積層されていてもよい。
【0023】
本実施の形態の半導体装置は、素子分離膜EI2の他に、素子分離膜EI2よりも深い素子分離膜EI1を有している。素子分離膜EI1の一部は、素子分離膜EI2と、当該素子分離膜EI2の下の半導体層SLを縦方向において貫通し、BOX膜BXに達するトレンチD1内に形成されている。ここでいう縦方向とは、半導体層SLの上面に対して垂直な方向(垂直方向、厚さ方向、高さ方向、深さ方向)である。
【0024】
トレンチD1は、半導体層SLの上面に沿う方向において、延在している。つまり、トレンチD1は図1の奥行方向に延在している。素子分離膜EI1の他の一部は、後述するトレンチD2内に形成されている。トレンチD1は、半導体層SLの上面から下面に亘って貫通している。トレンチD1の底面はBOX膜BXの上面に達している。つまり、トレンチD1はトレンチD3および素子分離膜EI2よりも深い。トレンチD1の側面における半導体層SL内には、p型不純物(例えばB(ホウ素))が導入されている。
【0025】
トレンチD1内には、トレンチD1の両側の側面上のそれぞれには、当該側面と、トレンチD1の底面(BOX膜BXの上面)とを連続的に覆う絶縁膜IF3が形成されている。絶縁膜IF3は、例えば酸化シリコンからなる。絶縁膜IF3は、トレンチD1の底面の全部を覆っておらず、当該底面の中央部を露出している。絶縁膜IF3の底面はBOX膜BXの上面と接している。平面視におけるトレンチD1の短手方向において、BOX膜BXに接する絶縁膜IF3の幅は、約800nm以下である。当該短手方向において、絶縁膜IF3は後述するトレンチD2および絶縁膜IF5により2つに分離されている。ここでいう、BOX膜BXに接する絶縁膜IF3の幅とは、分離された当該2つの絶縁膜IF3を含む構造の幅である。絶縁膜IF3の当該幅は、トレンチD1の短手方向におけるトレンチD1の下端の幅と同義である。
【0026】
また、トレンチD1の両側の側面上のそれぞれは、絶縁膜IF3を介して絶縁膜IF4により覆われている。絶縁膜IF4は、絶縁膜IF3の側面のうち、半導体層SL側とは反対側の側面と、トレンチD1の底面を覆う絶縁膜IF3の上面とを連続的に覆っている。半導体層SLの上面に沿う方向(横方向)における、絶縁膜IF3、IF4のそれぞれの端部のうち、トレンチD1の中央側の端部は、トレンチD1の中央から同等の距離で終端している。言い換えれば、平面視において、絶縁膜IF3、IF4のそれぞれのトレンチD1の中央側の終端部は互いに重なっている。絶縁膜IF4は、例えば酸化シリコンからなる。
【0027】
絶縁膜IF4のトレンチD1の中央側の側面(上記終端部)と、絶縁膜IF3のトレンチD1の中央側の終端部とは、トレンチD2の側面を構成している。トレンチD2は、半導体層SLの上面近傍から、絶縁膜IF3とBOX膜BXとの界面よりも下(半導体基板SB側)のBOX膜BX内に達する、トレンチD1より深い凹部である。つまり、トレンチD2の底面は、絶縁膜IF3とBOX膜BXとの界面よりも下のBOX膜BX内に位置している。言い換えれば、トレンチD2は、BOX膜BXの途中深さに達している。トレンチD2の側面は、上から順に絶縁膜IF4の側面、絶縁膜IF3の側面、およびBOX膜BXの側面により構成されている。トレンチD2の側面は主に絶縁膜IF4の側面により構成されている。トレンチD2は、半導体層SLの上面に沿う方向において、延在している。つまり、トレンチD2は図1の奥行方向に延在している。
【0028】
トレンチD2内には、空隙V1を内包する絶縁膜IF5が埋め込まれている。トレンチD1の両側の側面を覆う絶縁膜IF4同士の間に亘って、絶縁膜IF5が埋め込まれている。つまり、トレンチD1内には、トレンチD1の側面から中央に向かって順に、絶縁膜IF3、IF4およびIF5が形成されている。絶縁膜IF3、IF4およびIF5のそれぞれの上端は、素子分離膜EI2および半導体層SLのそれぞれの上面の高さとほぼ同じ高さに位置している。素子分離膜EI2の上面および半導体層SLの最上面のそれぞれの上に、絶縁膜IF3、IF4およびIF5は形成されていない。絶縁膜IF5の下端は、トレンチD2の底部においてBOX膜BXの底面に接している。つまり、絶縁膜IF5はトレンチD1の底面より下のトレンチD2内を埋め込んでいる。絶縁膜IF5は、例えば酸化シリコンからなる。
【0029】
空隙V1は、トレンチD2内においてトレンチD2の底部近傍に形成されている。空隙V1の周囲は全て絶縁膜IF5で覆われている。すなわち、空隙V1は絶縁膜IF5以外の膜には触れておらず、トレンチD2の側面および底面から離間している。空隙V1の少なくとも一部は、絶縁膜IF3とBOX膜BXとの界面、および、半導体層SLとBOX膜との界面のそれぞれと同じ高さに位置している。
【0030】
トレンチD1、D2の内部の絶縁膜IF3、IF4、IF5および空隙V1は、素子分離膜EI1を構成している。素子分離膜EI1は、素子分離膜EI2よりも深さが深い素子分離構造(素子分離領域)であり、所謂DTIである。なお、トレンチD1、D2も素子分離膜EI1を構成していると考えてもよい。素子分離膜EI1は、半導体層SL上に形成(搭載)された複数の半導体素子同士を電気的に分離している。
【0031】
ここでは、素子分離膜EI1が1つの空隙V1を有する構造について説明したが、空隙V1上の絶縁膜IF5内に他の空隙が1または複数形成されていてもよい。
【0032】
<半導体装置の製造方法>
以下に、図2図8および図1を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。図2図8は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
【0033】
まず、図2に示すように、上方にBOX膜BXおよび半導体層SLが順に積層された半導体基板SBを準備する。半導体基板SBはSi(シリコン)からなる支持基板であり、半導体基板SB上のBOX膜BXは酸化シリコン膜であり、BOX膜BX上の半導体層SLは単結晶シリコンからなる層である。BOX膜BXの膜厚は0.2~2μmである。ここでは、BOX膜BXの膜厚は例えば1.5μmである。半導体層SLの膜厚は、0.5~15μmである。ここでは、半導体層SLの膜厚は5μmである。
【0034】
半導体基板SB、BOX膜BXおよび半導体層SLからなるSOI基板はSIMOX(Silicon Implanted Oxide)法で形成することができる。つまり、Si(シリコン)からなる半導体基板SBの主面に高いエネルギーでO(酸素)をイオン注入し、その後の熱処理でSi(シリコン)と酸素とを結合させ、半導体基板の表面よりも少し深い位置に埋込み酸化膜(BOX膜)を形成することで、SOI基板を形成することができる。また、SOI基板は、表面に酸化膜を形成した半導体基板SBと、もう1枚のSi(シリコン)からなる半導体基板とを高熱および圧力を加えることで接着して貼り合わせた後、片側のシリコン層を研磨して薄膜化することで形成することもできる。
【0035】
続いて、周知の方法を用いて素子分離膜EI2を形成する。素子分離膜EI2は、SOI基板の上面に形成され、半導体基板SBの途中深さまで達するトレンチD3内に埋め込まれた絶縁膜からなる。素子分離膜EI2は、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)構造を有し、主に酸化シリコンにより構成される。
【0036】
ここでは、STI構造を有する素子分離膜EI2を形成することについて説明したが、素子分離膜EI2は、LOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)構造を有していてもよい。
【0037】
続いて、半導体層SL上および素子分離膜EI2上に、絶縁膜IF1、IF2を順に形成する。絶縁膜IF1は、例えば窒化シリコン(Si)からなる。絶縁膜IF2は、例えば酸化シリコンからなる。絶縁膜IF1、IF2は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成できる。
【0038】
次に、図3に示すように、絶縁膜IF2上にフォトレジスト膜PRを形成する。フォトレジスト膜PRは、素子分離膜EI2の直上に開口部を有するレジストパターンである。続いて、フォトレジスト膜PRをマスク(エッチング防止マスク)として用いて絶縁膜IF2、IF1および素子分離膜EI2のそれぞれの一部を除去する。これにより、トレンチD3の底面である半導体層SLの上面を露出させる。これにより、トレンチD1を形成する。
【0039】
次に、図4に示すように、フォトレジスト膜PRを除去した後、絶縁膜IF1、IF2をハードマスクとして用いてドライエッチングを行う。これにより、トレンチD3の底面からBOX膜BXの上面に亘って半導体層SLの一部を除去する。すなわち、トレンチD1がBOX膜BXまで達するように、トレンチD1を掘り下げる。この工程により、BOX膜BXの上面が露出する。ここではシリコンを選択的に除去するため、酸化シリコンからなる絶縁膜であるBOX膜BXはエッチストッパとして働く。したがって、BOX膜BXの上面はほぼ後退せず、平坦なままである。
【0040】
次に、図5に示すように、絶縁膜IF2を除去する。続いて、トレンチD1の側面および底面を含む半導体層SL上、および、絶縁膜IF1上を覆うように、絶縁膜IF3を形成(堆積)する。絶縁膜IF3は例えば酸化シリコンからなる。絶縁膜IF3は例えばCVD法により形成できる。絶縁膜IF3の膜厚はトレンチD1の開口幅の1/2より小さい。このため、トレンチD1の両側の側面を覆う絶縁膜IF3同士は互いに離間している。
【0041】
続いて、イオン注入法により、トレンチD1の側面にp型不純物(例えばB(ホウ素))を打ち込む。ここでは、半導体層SLの上面に対して斜めの方向から行うイオン注入、すなわち斜めイオン注入により、不純物を導入する。不純物は、絶縁膜IF3を貫通して半導体層SL内に打ち込まれる。
【0042】
次に、図6に示すように、トレンチD1内を含む絶縁膜IF3上を覆うように、絶縁膜IF4を形成(堆積)する。絶縁膜IF4は例えば酸化シリコンからなる。絶縁膜IF4は、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜またはTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜である。絶縁膜IF4は例えばCVD法により形成できる。絶縁膜IF4の膜厚はトレンチD1の両側の側面を覆う絶縁膜IF3同士の間の開口幅の1/2より小さい。このため、トレンチD1の両側の側面を覆う絶縁膜IF4同士は互いに離間している。
【0043】
続いて、エッチバックを行うことで、絶縁膜IF3、IF4のそれぞれの一部を除去し、さらに、トレンチD1の底面を一部後退させ、トレンチD2を形成する。このエッチバック工程では、トレンチD1の外において半導体層SLの上面上の絶縁膜IF4、IF3を除去し、絶縁膜IF1の上面を露出させる。また、トレンチD1の底部では、当該エッチバックにより絶縁膜IF4、IF3が除去されてBOX膜BXの上面が露出し、さらにエッチバックを続けることでBOX膜BXの上面の一部をBOX膜BXの途中深さまで後退させる。これにより、半導体層SLの上面近傍からBOX膜BXの途中深さまで達するトレンチD2が形成される。
【0044】
すなわち、BOX膜BXの上面を露出させるエッチバックを行った後、さらにエッチバックを行う時間を延長している。これにより、トレンチD2の幅は広がるため、後述する空隙V1が形成され易くなる。
【0045】
上記エッチバックでは、トレンチD1の側面を覆う絶縁膜IF3、IF4は除去されずに残る。また、トレンチD1の側面を覆う絶縁膜IF4の直下においてトレンチD1の底面を覆う絶縁膜IF3は、除去されずに残る。トレンチD2の側面は、上から順に絶縁膜IF4の側面、絶縁膜IF3の側面、およびBOX膜BXの側面により構成されている。
【0046】
次に、図7に示すように、トレンチD2内を含むBOX膜BX上、絶縁膜IF1上、絶縁膜IF3上および絶縁膜IF4上に、例えばCVD法により絶縁膜IF5を形成する。これにより、トレンチD2内を埋め込む。絶縁膜IF5の膜厚は、トレンチD2の開口幅の1/2以上である。したがって、トレンチD2の両側の側面のそれぞれを覆う絶縁膜IF5同士は、トレンチD2の短手方向(横方向)におけるトレンチD2の中央部にて互いに接触している。すなわち、トレンチD1の一方の側面を覆う絶縁膜IF3、IF4およびIF5の合計の膜厚は、トレンチD1の開口幅の1/2以上である。絶縁膜IF5の一部は絶縁膜IF1の上面を覆い、他の一部はトレンチD2内を埋め込んでいる。絶縁膜IF5は、例えば酸化シリコンからなる。絶縁膜IF5は、PSG膜またはTEOS膜である。
【0047】
絶縁膜IF5の成膜工程では、絶縁膜IF5内に空隙V1が内包されるように絶縁膜IF5を形成する。空隙V1は、絶縁膜IF5の成膜中に、トレンチD2の底部近傍の表面を覆う絶縁膜IF5の膜厚が大きくなる前に、トレンチD2の底部より上の領域の絶縁膜IF5の膜厚がより大きくなり、トレンチD2内を当該領域で閉塞させることにより形成される。空隙V1の形成位置および形状は、例えば、絶縁膜IF5を成膜しながら、成膜条件を変更し、これにより成膜する絶縁膜IF5の膜質を変更することで制御できる。
【0048】
空隙V1は、トレンチD2内においてトレンチD2の底部近傍に形成される。空隙V1の周囲は全て絶縁膜IF5で覆われている。空隙V1の少なくとも一部は、絶縁膜IF3とBOX膜BXとの界面、および、半導体層SLとBOX膜との界面のそれぞれと同じ高さに位置している。
【0049】
次に、図8に示すように、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて半導体層SL上の絶縁膜IF1、IF5を除去する。これにより、半導体層SLおよび素子分離膜EI2のそれぞれの上面を露出させる。この工程により、トレンチD1、D2内に素子分離膜EI1が形成される。つまり、トレンチD1、D2の内部の絶縁膜IF3、IF4、IF5および空隙V1は、素子分離膜EI1を構成している。
【0050】
次に、図1に示すように、例えばイオン注入法を用いて、素子分離膜EI1、EI2から露出する半導体層SLの上面に、不純物イオンを注入する。これにより、半導体層SLの上面から所定の深さを有するn型またはp型の半導体領域DRを形成する。半導体領域DRの深さは、例えば、素子分離膜EI2の深さよりも浅い。続いて、半導体層SL上に、主に酸化シリコンからなる層間絶縁膜ILを形成する。その後、層間絶縁膜ILの上面を例えばCMP法により平坦化する。続いて、層間絶縁膜ILを貫通し、半導体領域DRに電気的に接続されたコンタクトプラグCPを形成する。続いて、層間絶縁膜IL上およびコンタクトプラグCP上に、コンタクトプラグに接続された配線M1を形成する。
【0051】
その後、図示は省略するが、SOI基板をダイシングして個片化することで複数の半導体チップを得る。これにより、本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0052】
<本実施の形態の効果>
図19に、比較例である半導体装置の素子分離膜EIAを示す。比較例の半導体装置は、本実施の形態の半導体装置と異なり、トレンチD2を有していない。トレンチD1内には、その側面および底面側から順に絶縁膜IF3、IF4およびIF5が形成され、トレンチD1内を埋め込んでいる。トレンチD1の底面におけるBOX膜BXの上面には、横方向におけるトレンチD1の両端の間に亘って形成された絶縁膜IF3のみが接している。トレンチD1内において、絶縁膜IF5は空隙V3を内包している。ただし、空隙V3は、絶縁膜IF3とBOX膜BXとの界面(酸化膜界面)よりも上に位置している。トレンチD1内の絶縁膜IF3、IF4、IF5および空隙V3は、素子分離膜EIAを構成している。
【0053】
本発明者らは、比較例の半導体装置を用いた素子分離のストレス試験を行った際、素子分離膜EIAにより横方向に分離された半導体層SL同士の間において、リーク電流が生じることを見出した。解析の結果、素子分離膜EIAの底部の短手方向(横方向)における幅が小さい場合、および、素子分離膜EIAとBOX膜BXとの界面が、酸化シリコン膜同士が接する界面(酸化膜界面)である場合に、特にリーク電流の発生が顕著であった。具体的には、素子分離膜EIAの底部の短手方向(横方向)における幅が約800nm以下となると、リーク電流の発生が顕著となる。
【0054】
比較例におけるリーク電流は、BOX膜BXと、トレンチD1の底部の絶縁膜IF3との界面を通じて流れるものと考えられる。そこで、本実施の形態では、図1を用いて説明したように、トレンチD1よりもさらに深く掘り下げられBOX膜BXの途中深さまで達するトレンチD2を形成している。また、トレンチD2内を埋め込む絶縁膜IF5が内包する空隙V3を、BOX膜BXと絶縁膜IF3との界面と同じ高さに形成している。
【0055】
トレンチD2およびトレンチD2内の絶縁膜IF5が形成されていることにより、リーク電流が流れる経路(リークパス)は、BOX膜BXと絶縁膜IF3との界面に、絶縁膜IF5とBOX膜BXとの界面を加えた距離となる。したがって、本実施の形態の半導体装置では、比較例に比べ、リーク電流が流れる経路が長くなるため、リーク電流の発生を抑えられる。
【0056】
また、本実施の形態では、BOX膜BXと絶縁膜IF3との界面は、トレンチD2により分断され、トレンチD2を挟んでトレンチD1の短手方向において隣り合っている。トレンチD2を挟んで隣り合うこれらの界面同士の間において、絶縁膜IF5を突き抜けてリーク電流が流れることも考えらえる。しかし、ここでは絶縁膜IF5内の空隙V3を、BOX膜BXと絶縁膜IF3との界面と同じ高さに形成している。空隙V3は、絶縁膜IF5を構成する酸化シリコンよりも絶縁性が高い領域である。このため、トレンチD2を挟んで隣り合うBOX膜BXと絶縁膜IF3との界面同士の間の最短距離を流れようとするリーク電流を、空隙V3により遮断できる。
【0057】
以上より、素子分離膜の電気的な分離性能を高められる。つまり、DTIを有する半導体装置の耐圧を高められる。これにより、半導体装置の信頼性を高められる。
【0058】
(実施の形態2)
以下では、素子分離膜全体を埋め込むトレンチが、BOX膜の途中深さに達している態様について説明する。
【0059】
<半導体装置の構造>
図9に、本実施形態の半導体装置の断面図を示す。本実施の形態の半導体装置の構造は、素子分離膜EI1に代わり形成された素子分離膜EI3、および、BOX膜に達するトレンチの形状を除き、上記実施の形態1の半導体装置の構造と同様である。
【0060】
ここで、トレンチD1は、素子分離膜EI2の上面から、素子分離膜EI2および半導体層SLを貫通し、BOX膜BXの途中深さに達している。つまり、トレンチD1の底面は、半導体層SLとBOX膜BXとの界面より下に位置している。ここでは、図1に示したトレンチD2は形成されていない。トレンチD1内には、トレンチD1の側面側から順に絶縁膜IF3、IF4およびIF5が埋め込まれている。絶縁膜IF3、IF4およびIF5のそれぞれの上端は、素子分離膜EI2および半導体層SLのそれぞれの上面の高さとほぼ同じ高さに位置している。素子分離膜EI2の上面および半導体層SLの最上面のそれぞれの上に、絶縁膜IF3、IF4およびIF5は形成されていない。絶縁膜IF5は、空隙を内包していない。
【0061】
トレンチD1の底面において、BOX膜BXに接しているのは絶縁膜IF3のみである。つまり、トレンチD1の底面の全体は、絶縁膜IF3により覆われている。トレンチD1の底面を覆う絶縁膜IF3の上面には、トレンチD1の両側の側面をそれぞれ覆う絶縁膜IF4と、それらの絶縁膜IF4同士の間を埋め込む絶縁膜IF5とが接している。トレンチD1内の絶縁膜IF3、IF4およびIF5は、素子分離膜EI3を構成している。
【0062】
本実施の形態の主な特徴の一つは、素子分離膜EI3が埋め込まれたトレンチD1が、BOX膜BXの途中深さに達していることにある。具体的には、縦方向における、半導体層SLとBOX膜BXとの界面と、トレンチD1の底面との距離は、0.3μm以上であることが好ましい。当該距離が0.3μm未満だと、リーク電流が流れる経路が長くすることによるリーク電流抑制効果が効果的に得られなくなるためである。当該距離は、0.5μm以上であれば、より望ましい。
【0063】
<半導体装置の製造方法>
以下に、図10図14および図9を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。図10図14は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
【0064】
まず、図10に示すように、図2図4を用いて説明した工程を行う。これにより、SOI基板上に素子分離膜EI2を形成し、素子分離膜EI2および半導体層SLを貫通し、BOX膜BXの上面に達するトレンチD1を形成する。続いて、絶縁膜IF1、IF2をハードマスクとして用いてドライエッチングを行うことで、トレンチD1をBOX膜BXの最上面より下へさらに掘り下げる。これにより、トレンチD1の深さが深くなり、トレンチD1の底面は、BOX膜BXの途中深さに達する。このとき、ハードマスクである半導体層SL上の絶縁膜IF2もエッチバックされ、当該絶縁膜IF2の膜厚は小さくなる。
【0065】
次に、図11に示すように、図5を用いて説明した工程と同様の工程を行い、これにより絶縁膜IF3を形成する。すなわち、絶縁膜IF2を除去した後、半導体層SLの上面、素子分離膜EI2の上面、トレンチD1の側面および底面を覆うように、絶縁膜IF3を形成(堆積)する。続いて、斜めイオン注入を行うことで、トレンチD1の側面にp型不純物(例えばB(ホウ素))を打ち込む。絶縁膜IF3は、BOX膜BXの上面の凹部であるトレンチD1の側面および底面を覆うように形成される。
【0066】
次に、図12に示すように、絶縁膜IF4を、例えばCVD法を用いて形成(堆積)する。絶縁膜IF4はトレンチD1の内外において絶縁膜IF3の上面を覆い、トレンチD1内において絶縁膜IF3の側面を覆う。絶縁膜IF4の膜厚はトレンチD1の両側の側面を覆う絶縁膜IF3同士の間の開口幅の1/2より小さい。このため、トレンチD1の両側の側面を覆う絶縁膜IF4同士は互いに離間している。
【0067】
続いて、エッチバックを行うことで、絶縁膜IF3の上面上の絶縁膜IF4を除去する。これにより、トレンチD1の内外において絶縁膜IF3の上面を露出させる。すなわち、トレンチD1の底面を覆う絶縁膜IF3の上面の一部が露出する。トレンチD1内において絶縁膜IF3の側面を覆う絶縁膜IF4は除去されずに残る。
【0068】
次に、図13に示すように、トレンチD1内を含む絶縁膜IF3上および絶縁膜IF4上に、例えばCVD法により絶縁膜IF5を形成する。これにより、トレンチD1内を埋め込む。絶縁膜IF5の膜厚は、トレンチD1の両側の側面を覆う絶縁膜IF4同士の間の開口幅の1/2以上である。したがって、トレンチD1の両側の側面のそれぞれを覆う絶縁膜IF5同士は、トレンチD1の短手方向(横方向)におけるトレンチD1の中央部にて互いに接触している。すなわち、トレンチD1の一方の側面を覆う絶縁膜IF3、IF4およびIF5の合計の膜厚は、トレンチD1の開口幅の1/2以上である。トレンチD1の外の絶縁膜IF5は絶縁膜IF3の上面を覆い、絶縁膜IF5の他の一部はトレンチD1内を埋め込んでいる。トレンチD1の底部近傍において、絶縁膜IF5の下端は絶縁膜IF3の上面に接している。
【0069】
次に、図14に示すように、例えばCMP法を用いて半導体層SL上の絶縁膜IF1、IF3およびIF5を除去する。これにより、半導体層SLおよび素子分離膜EI2のそれぞれの上面を露出させる。この工程により、トレンチD1内に素子分離膜EI3が形成される。つまり、トレンチD1の内部の絶縁膜IF3、IF4およびIF5は、素子分離膜EI3を構成している。
【0070】
次に、図9に示すように、例えばイオン注入法を用いて、素子分離膜EI3、EI2から露出する半導体層SLの上面に、不純物イオンを注入する。これにより、半導体層SLの上面から所定の深さを有するn型またはp型の半導体領域DRを形成する。続いて、半導体層SL上に、主に酸化シリコンからなる層間絶縁膜ILを形成する。その後、層間絶縁膜ILの上面を例えばCMP法により平坦化する。続いて、層間絶縁膜ILを貫通し、半導体領域DRに電気的に接続されたコンタクトプラグCPを形成する。続いて、層間絶縁膜IL上およびコンタクトプラグCP上に、コンタクトプラグに接続された配線M1を形成する。
【0071】
その後、図示は省略するが、SOI基板をダイシングして個片化することで複数の半導体チップを得る。これにより、本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0072】
<本実施の形態の効果>
本実施の形態では、上記実施の形態1と異なり、トレンチD2および空隙V1を形成せず、トレンチD1および素子分離膜EI3のそれぞれを、BOX膜BXの途中深さに達するように形成している。これにより、素子分離膜EI3により横方向において分離された半導体層SL同士の間でリーク電流が流れる場合、リーク電流は、BOX膜BXの途中深さまで達するトレンチD1に埋め込まれた絶縁膜IF3の側面および底面とBOX膜BXとの界面を通る。つまり、リーク電流は、平坦なBOX膜BXの上面(最上面)と当該上面に接する酸化シリコン膜との界面を直線的に流れるのではなく、BOX膜BXの平坦な上面よりも下側の迂回路を通る。すなわち、本実施の形態では、図19を用いて説明した比較例に比べてリーク電流が流れる経路が長くなるため、リーク電流の発生を抑えられる。
【0073】
よって、素子分離膜の電気的な分離性能を高められる。つまり、DTIを有する半導体装置の耐圧を高められる。これにより、半導体装置の信頼性を高められる。
【0074】
(実施の形態3)
以下では、素子分離膜全体を埋め込むトレンチが、BOX膜の途中深さに達し、かつ、素子分離膜が空隙を内包している態様について説明する。
【0075】
<半導体装置の構造>
図15に、本実施形態の半導体装置の断面図を示す。本実施の形態の半導体装置の構造は、素子分離膜EI1に代わり形成された素子分離膜EI4、および、BOX膜に達するトレンチの形状を除き、上記実施の形態1の半導体装置の構造と同様である。
【0076】
ここで、トレンチD1は、上記実施の形態2と同様に、素子分離膜EI2の上面から、素子分離膜EI2および半導体層SLを貫通し、BOX膜BXの途中深さに達している。ここでは、図1に示したトレンチD2は形成されていない。トレンチD1内には、トレンチD1の側面側から順に絶縁膜IF6、IF7が埋め込まれている。絶縁膜IF6、IF7のそれぞれの上端は、素子分離膜EI2および半導体層SLのそれぞれの上面の高さとほぼ同じ高さに位置している。素子分離膜EI2の上面および半導体層SLの最上面のそれぞれの上に、絶縁膜IF6、IF7は形成されていない。絶縁膜IF7は、空隙V2を内包している。
【0077】
トレンチD1の底面において、BOX膜BXに接しているのは絶縁膜IF6のみである。つまり、トレンチD1の底面の全体は、絶縁膜IF6により覆われている。トレンチD1の底面を覆う絶縁膜IF6の上面には、絶縁膜IF7のみが接している。絶縁膜IF6、IF7のそれぞれは、例えば酸化シリコンからなる。トレンチD1内の絶縁膜IF6、IF7および空隙V2は、素子分離膜EI4を構成している。空隙V2の全体は絶縁膜IF7により覆われており、絶縁膜IF6とは離間している。
【0078】
本実施の形態の主な特徴の一つは、素子分離膜EI4が埋め込まれたトレンチD1が、BOX膜BXの途中深さに達していることにある。具体的には、縦方向における、半導体層SLとBOX膜BXとの界面と、トレンチD1の底面との距離は、0.3μm以上であることが好ましい。当該距離が0.3μm未満だと、リーク電流が流れる経路を長くすることによるリーク電流抑制効果が効果的に得られなくなるためである。当該距離は、0.5μm以上であれば、より望ましい。
【0079】
また、本実施の形態の主な特徴の一つは、縦方向における空隙V2の上端から下端までの長さが、縦方向におけるトレンチD1の上端から下端に亘る距離の大部分を占めていることにある。つまり、空隙V2の縦方向の長さは、図1に示す空隙V1の縦方向の長さよりも大きい。具体的には、縦方向において、空隙V2は、トレンチD1の長さの80%以上の長さを有する。ここで、空隙V2の一部は、半導体層SLとBOX膜BXとの界面と同じ高さにあってもなくてもよい。つまり、空隙V2の下端の位置は、当該界面の位置より下であっても上であってもよい。このように、素子分離膜EI4の内部は、縦方向における長さのほぼ全体が空洞化している。
【0080】
<半導体装置の製造方法>
以下に、図16図18および図15を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。図16図18は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
【0081】
まず、図16に示すように、図10および図12を用いて説明した工程を行う。これにより、SOI基板上の素子分離膜EI2と、素子分離膜EI2および半導体層SLを貫通し、BOX膜BXの途中深さに達するトレンチD1と、絶縁膜IF3とを形成する。また、トレンチD1の側面にp型不純物(例えばB(ホウ素))を導入する。続いて、絶縁膜IF3を除去する。ただし、ここでは絶縁膜IF3を除去せず残してもよい。続いて、絶縁膜IF1の上面を覆い、トレンチD1の側面および底面を覆うように、絶縁膜IF6を形成する。絶縁膜IF6は、例えばCVD法を用いて形成できる。絶縁膜IF6は、例えば酸化シリコンからなる。絶縁膜IF6の膜厚はトレンチD1の開口幅の1/2より小さい。このため、トレンチD1の両側の側面を覆う絶縁膜IF6同士は互いに離間している。
【0082】
次に、図17に示すように、トレンチD1内を含む絶縁膜IF6上に、例えばCVD法により絶縁膜IF7を形成する。これにより、トレンチD1内を埋め込む。絶縁膜IF7の膜厚は、トレンチD1の両側の側面を覆う絶縁膜IF6同士の間の開口幅の1/2以上である。したがって、トレンチD1の両側の側面のそれぞれを覆う絶縁膜IF7同士は、トレンチD1の短手方向(横方向)におけるトレンチD1の中央部にて互いに接触している。すなわち、トレンチD1の一方の側面を覆う絶縁膜IF6、IF7の合計の膜厚は、トレンチD1の開口幅の1/2以上である。トレンチD1の外の絶縁膜IF7は絶縁膜IF6の上面を覆い、絶縁膜IF7の他の一部はトレンチD1内を埋め込んでいる。
【0083】
絶縁膜IF7の成膜工程では、絶縁膜IF7内に空隙V2が内包されるように絶縁膜IF7を形成する。空隙V2は、絶縁膜IF7の成膜中に、トレンチD1の底部近傍および開口部(上端)近傍の覆う絶縁膜IF7の膜厚が大きくなる前に、トレンチD1の開口部の絶縁膜IF7の膜厚がより大きくなり、トレンチD1内を当該開口部近傍で閉塞させることにより形成される。空隙V2の形成位置および形状は、例えば、絶縁膜IF7を成膜しながら、成膜条件を変更し、これにより成膜する絶縁膜IF7の膜質を変更することで制御できる。
【0084】
縦方向において、空隙V2は、トレンチD1の長さの80%以上の長さを有する。空隙V2は半導体層SLとBOX膜との界面のそれぞれと同じ高さに位置していてもよく、全体が当該界面より上に位置していてもよい。
【0085】
次に、図18に示すように、例えばCMP法を用いて半導体層SL上の絶縁膜IF6、IF7を除去する。これにより、半導体層SLおよび素子分離膜EI2のそれぞれの上面を露出させる。この工程により、トレンチD1内に素子分離膜EI4が形成される。つまり、トレンチD1の内部の絶縁膜IF6、IF7および空隙V2は、素子分離膜EI4を構成している。
【0086】
次に、図15に示すように、例えばイオン注入法を用いて、素子分離膜EI4、EI2から露出する半導体層SLの上面に、不純物イオンを注入する。これにより、半導体層SLの上面から所定の深さを有するn型またはp型の半導体領域DRを形成する。続いて、半導体層SL上に、主に酸化シリコンからなる層間絶縁膜ILを形成する。その後、層間絶縁膜ILの上面を例えばCMP法により平坦化する。続いて、層間絶縁膜ILを貫通し、半導体領域DRに電気的に接続されたコンタクトプラグCPを形成する。続いて、層間絶縁膜IL上およびコンタクトプラグCP上に、コンタクトプラグに接続された配線M1を形成する。
【0087】
その後、図示は省略するが、SOI基板をダイシングして個片化することで複数の半導体チップを得る。これにより、本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0088】
<本実施の形態の効果>
本実施の形態では、上記実施の形態2と同様に、BOX膜の途中深さに達するトレンチD1を形成し、当該トレンチD1内に絶縁膜を埋め込んでいる。これにより、上記実施の形態2と同様の効果を得られる。すなわち、素子分離膜EI4の底部においてリーク電流が流れる場合の電流経路を延長できる。したがって、半導体装置の耐圧を高められる。
【0089】
また、上記実施の形態2と異なり、トレンチD1内に、トレンチD1の縦方向の長さの大部分を占める空隙V2を形成している。空隙V2は、絶縁膜IF7を構成する酸化シリコンよりも絶縁性が高い領域である。これにより、本実施の形態では、縦方向におけるトレンチD1のほぼ全体に亘って、素子分離膜EI4により横方向に分離された半導体層SL同士の間で流れようとするリーク電流を遮断できる。
【0090】
よって、素子分離膜の電気的な分離性能を高められる。つまり、DTIを有する半導体装置の耐圧を高められ
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0091】
BX BOX膜
CP コンタクトプラグ
D1~D3 トレンチ
DR 半導体領域
EI1~EI4、EIA 素子分離膜
IF1~IF7 絶縁膜
IL 層間絶縁膜
M1 配線
PR フォトレジスト膜
SB 半導体基板
SL 半導体層
V1~V3 空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19