IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

<>
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図1
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図2
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図3
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図4
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図5
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図6
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図7
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図8
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図9
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図10
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図11
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図12
  • 特開-発熱装置及び窓部材 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000717
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】発熱装置及び窓部材
(51)【国際特許分類】
   F24V 30/00 20180101AFI20231226BHJP
【FI】
F24V30/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099579
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】市川 靖
(72)【発明者】
【氏名】伊倉 亜美
(72)【発明者】
【氏名】内村 允宣
(57)【要約】
【課題】エネルギー消費効率を向上させることができると共に、MHE発熱材料と水素ガスを収納した発熱材料収納部の交換が可能な発熱装置、及びこれを備えた窓部材を提供する。
【解決手段】発熱装置は、可視光を透過又は反射する基材を加熱して基材における結露又は凍結による曇りを除去する発熱装置である。発熱装置は、MHE発熱材料と水素ガスを収納した発熱材料収納部と、MHE発熱材料を加熱する加熱部を具備している。発熱装置においては、発熱材料収納部が、加熱部よりも基材に近い側において加熱部に積層され、かつ、着脱可能に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を透過又は反射する基材を加熱して該基材における結露又は凍結による曇りを除去する発熱装置であって、
MHE発熱材料と水素ガスを収納した発熱材料収納部と、該MHE発熱材料を加熱する加熱部を具備し、
上記発熱材料収納部が、上記加熱部よりも上記基材に近い側において該加熱部に積層され、かつ、着脱可能に固定された
ことを特徴とする発熱装置。
【請求項2】
上記発熱材料収納部と上記加熱部とが、該発熱材料収納部と該加熱部との接合面に相対的に設けられたほぞ部とほぞ溝部とでかみ合っていることを特徴とする請求項1に記載の発熱装置。
【請求項3】
上記発熱材料収納部と上記加熱部とが、段付きのあり継ぎ構造でかみ合っていることを特徴とする請求項2に記載の発熱装置。
【請求項4】
上記段付きのあり継ぎ構造において、上記発熱材料収納部と上記加熱部との積層方向に対して垂直でない接合面同士の間に隙間を有してかみ合っていることを特徴とする請求項3に記載の発熱装置。
【請求項5】
上記発熱材料収納部を上記加熱部に着脱可能に固定する固定部材を具備したことを特徴とする請求項1に記載の発熱装置。
【請求項6】
上記固定部材が、上記発熱材料収納部及び上記加熱部の側面に対向配置され、弾性を有し、一端に該発熱材料収納部に係合する爪部を有すると共に他端に該加熱部に係合する爪部を有する2つの係合部と、該係合部同士を連結する連結部とを有するホルダーを備えたことを特徴とする請求項5に記載の発熱装置。
【請求項7】
上記固定部材が、上記発熱材料収納部及び上記加熱部を緊締するバンド状のホルダーを備えたことを特徴とする請求項5に記載の発熱装置。
【請求項8】
上記固定部材が、上記発熱材料収納部及び上記加熱部の側面に対向配置された2つの係合部と、該係合部同士を連結する連結部と、該発熱材料収納部と該加熱部との積層方向における片側に配置され、該発熱材料収納部と該加熱部との間の押圧力を増大させる押圧付与部とを有するホルダーを備え、
上記係合部が、一端に上記発熱材料収納部に係合する爪部を有すると共に他端に上記押圧付与部に係合する爪部を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の発熱装置。
【請求項9】
上記加熱部が、通電加熱部と該通電加熱部を挟持する電極を有することを特徴とする請求項1に記載の発熱装置。
【請求項10】
上記通電加熱部が分割されており、分割された通電加熱部の各々が電極で挟持されていることを特徴とする請求項9に記載の発熱装置。
【請求項11】
上記発熱材料収納部が分割されていないことを特徴とする請求項10に記載の発熱装置。
【請求項12】
上記発熱材料収納部が、上記基材と接触していることを特徴とする請求項1に記載の発熱装置。
【請求項13】
上記発熱材料収納部が、上記基材と接触していないことを特徴とする請求項1に記載の発熱装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1つの項に記載の発熱装置を備え、
上記基材が、窓の開口部部材である
ことを特徴とする窓部材。
【請求項15】
上記開口部部材の少なくとも一部に電熱線又は通電性の透明膜からなる発熱体が配置されている
ことを特徴とする請求項14に記載の窓部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱装置及び窓部材に係り、さらに詳細には、可視光を透過又は反射する基材を加熱して該基材における結露又は凍結による曇りを除去する発熱装置、及びこれを備えた窓部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本来不安定な水素吸蔵金属又は水素吸蔵合金を利用して熱を発する発熱体セルを用いて、安定して熱を得ることができる発熱システムが提案されている(特許文献1参照)。この発熱システムにおいては、時間経過と共に変化する発熱体セルの発熱状況に応じて、適宜、発熱体セル内に供給する水素系ガスの供給位置を変化させて過剰熱が出力されるようにできているので、安定して熱を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-110835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような発熱システムは、エネルギー消費効率(COP)を1以上に向上させることができるものの、ガス供給部等を含むため、非常に大きく複雑なシステムになっている。そのため、発熱体セルを車両に搭載できないという問題点があった。また、発熱体セルの発熱持続可能時間が車両の寿命と比較して短いにもかかわらず、発熱体セルの交換ができないという問題点もあった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、エネルギー消費効率を向上させることができると共に、水素を吸脱蔵して過剰熱を発生する水素吸蔵合金を含む発熱材料(以下「MHE発熱材料」ということがある。)と水素ガスを収納した発熱材料収納部の交換が可能な発熱装置、及びこれを備えた窓部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、可視光を透過又は反射する基材を加熱して基材における結露又は凍結による曇りを除去する発熱装置において、MHE発熱材料と水素ガスを収納した発熱材料収納部を、MHE発熱材料の加熱部よりも基材に近い側において加熱部に積層し、かつ、着脱可能に固定することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の発熱装置は、可視光を透過又は反射する基材を加熱して基材における結露又は凍結による曇りを除去する発熱装置である。
この発熱装置は、MHE発熱材料と水素ガスを収納した発熱材料収納部と、MHE発熱材料を加熱する加熱部を具備している。
この発熱装置においては、発熱材料収納部が、加熱部よりも基材に近い側において加熱部に積層され、かつ、着脱可能に固定されている。
【0008】
また、本発明の窓部材は、上述の発熱装置を備える。この窓部材においては、基材が窓の開口部部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光を透過又は反射する基材を加熱して基材における結露又は凍結による曇りを除去する発熱装置において、上述の発熱材料収納部を、上述の加熱部よりも基材に近い側において加熱部に積層し、かつ、着脱可能に固定したため、エネルギー消費効率を向上させることができると共に、MHE発熱材料と水素ガスを収納した発熱材料収納部の交換が可能な発熱装置、及びこれを備えた窓部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の窓部材の一実施形態を模式的に示す配置図である。
図2図1に示した発熱装置を模式的に示す構成図である。
図3図2に示した発熱装置の一部をIII-III線に沿って切った部分断面図である。
図4】第2実施形態の発熱装置を模式的に示す構成図である。
図5】第3実施形態の発熱装置の一部を示す部分断面図である。
図6】第4実施形態の発熱措置の一部を示す部分断面図である。
図7】第5実施形態の発熱装置の一部の着脱状態を模式的に示す説明図である。
図8】第6実施形態の発熱装置の一部の着脱状態を模式的に示す説明図である。
図9】第7実施形態の発熱装置の一部の着脱状態を模式的に示す説明図である。
図10】第8実施形態の発熱装置の一部を模式的に示す構成図である。
図11】第9実施形態の発熱装置の一部を模式的に示す構成図である。
図12】第10実施形態の発熱装置の一部を模式的に示す構成図である。
図13】本発明の窓部材の他の実施形態を模式的に示す配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の発熱装置及び窓部材について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
(第1実施形態)
図1及び図2に示すように、第1実施形態の窓部材1は、可視光を透過又は反射する基材10、具体的にはガラスや樹脂などの窓の開口部部材11を加熱して開口部部部材11における結露又は凍結による曇りを除去する発熱装置20を備えている。窓の開口部部材11の代表例としては車両のウインドシールドを挙げることができる。
【0013】
第1実施形態の発熱装置20は、MHE発熱材料(図示せず)と水素ガス(図示せず)を収納した発熱材料収納部21と、MHE発熱材料を加熱する加熱部23と、加熱部23の温度を調整する温度調節部25を具備している。なお、加熱部23としては、MHE発熱材料を加熱することができれば、特に限定されない。例えば、通電や高温ガスなどによって発熱材料収納部21を加熱すればよい。また、温度調節部25としては、加熱部23の温度を調整することができれば、特に限定されない。例えば、熱電対で温度を計測しながら、通電量や高温ガスの供給量を調節して、加熱温度を調節すればよい。
【0014】
そして、この発熱装置20においては、発熱材料収納部21が、加熱部23よりも上述の基材10、即ち窓の開口部部材11に近い側において加熱部23に積層され、かつ、着脱可能に固定されている。
【0015】
また、この発熱装置20においては、発熱材料収納部21が、基材10、即ち窓の開口部部材11と接触していない。
【0016】
さらに、図3に示すように、この発熱装置20においては、発熱材料収納部21と加熱部23とが、発熱材料収納部21と加熱部23との接合面20aに相対的に設けられたほぞ部23Aとほぞ溝部21Aとでかみ合っている。ほぞ部23Aは突条部とも言い得るが、具体的にはあり部を構成しており、ほぞ溝部21Aは溝部とも言い得るが、具体的にはあり溝部を構成している。
【0017】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、発電装置において上述の発熱材料収納部21を、上述の加熱部23よりも窓の開口部部材11などの基材10に近い側において加熱部23に積層し、かつ、着脱可能に固定したので、エネルギー消費効率(COP)を1以上、2程度まで向上させることができると共に、MHE発熱材料と水素ガスを収納した発熱材料収納部21の交換が可能になる。
【0018】
より具体的には、このような発電装置は、省電力でガラス面などの結露や凍結による曇りを除去することができ、MHE発熱材料の発熱持続可能時間を経過した後、発熱材料収納部を図2中の矢印Z方向にスライドさせて脱着・交換し、MHE発熱材料のリサイクルが可能になる。さらに、このような発電装置や窓部材を搭載した電気自動車などの車両においては、航続距離を更に延ばすことが可能になる。なお、従来、車両に搭載されている電熱線式加熱ではエネルギー消費効率(COP)が1.0未満であり、HVACデフロスター加熱ではエネルギー消費効率(COP)が0.6程度である。
【0019】
また、本実施形態によれば、発熱材料収納部21が、基材10、即ち窓の開口部部材11と接触していないので、発熱材料収納部21から窓の開口部部材11へ放射伝熱によって熱が伝わる。これにより、例えば、MHE発熱材料が高温で発熱する場合でも、窓の開口部部材が必要以上に高温になることを抑制ないし防止することができる。特に、窓の開口部部材は使用者が触れることがあるので安全性を確保できる。
【0020】
さらに、本実施形態によれば、発熱材料収納部21と加熱部23とが、発熱材料収納部21と加熱部23との接合面20aに相対的に設けられたほぞ部23Aとほぞ溝部21Aとでかみ合っているので、加熱部23から発熱材料収納部21へ効率良く熱を伝えることができ、かつ、加熱部23からの発熱材料収納部21の脱着が容易である。また、詳しくは後述する固定部材などの別部材を用いる必要がないという利点もある。
【0021】
また、図4図13は、本発明の発熱装置又は窓部材の第2~第11実施形態を説明する図である。以下の実施形態では、上述した第1実施形態と同じ構成部位に同一符号を付して詳細な発明を省略する。
【0022】
(第2実施形態)
図4に示すように、本実施形態の発熱装置20Aにおいては、発熱材料収納部21が、基材10、即ち窓の開口部部材11と接触していること以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。
【0023】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、発熱材料収納部21が、基材10、即ち窓の開口部部材11と接触しているので、発熱材料収納部21から窓の開口部部材11へ接触熱伝導によって熱が伝わる。これにより、第1実施形態の利点に加えて、窓の開口部部材へ熱が伝わる際のロスを抑制ないし防止することができる。
【0024】
(第3実施形態)
図5に示すように、本実施形態の発熱装置20Bにおいては、発熱材料収納部21と加熱部23とが、段付きのあり継ぎ構造20bでかみ合っていること以外は、第2実施形態と同様の構成を有している。
【0025】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、発熱材料収納部21と加熱部23とが、段付きのあり継ぎ構造20bでかみ合っており、抑え荷重を垂直に受ける接合面20aを複数有しているので、加熱部23から発熱材料収納部21へ第2実施形態によりも更に効率良く熱を伝えることができ、かつ、加熱部23からの発熱材料収納部21の脱着が容易である。特に、図5において、紙面垂直方向に発熱材料収納部21を加熱部23に対して相対的にスライドして脱着することができる。
【0026】
(第4実施形態)
図6に示すように、本実施形態の発熱装置20Cにおいては、段付きのあり継ぎ構造20bにおいて、発熱材料収納部21と加熱部23との積層方向(図6中で矢印Zで示す方向)に対して垂直でない接合面20a同士の間に隙間20cを有してかみ合っていること以外は、第3実施形態と同様の構成を有している。
【0027】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、段付きのあり継ぎ構造20bにおいて、発熱材料収納部21と加熱部23との積層方向(図6中で矢印Zで示す方向)に対して垂直でない接合面20a同士の間に隙間20cを有しており、逃げスペースを有してかみ合っているので、第3実施形態の利点に加えて、脱着スライドする際に、発熱材料収納部21と加熱部23との間の摩擦が低減されると共に、これらの熱膨張による固着を抑制ないし防止することができる。
【0028】
(第5実施形態)
図7に示すように、本実施形態の発熱装置20Dにおいては、発熱材料収納部21を加熱部23に着脱可能に固定する固定部材27を更に具備していること以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。
【0029】
より具体的には、この発熱装置20Dにおいては、固定部材27が、発熱材料収納部21及び加熱部23の側面に対向配置され、弾性を有し、一端に発熱材料収納部21に係合する爪部291Aを有すると共に他端に加熱部23に係合する爪部291Aを有する2つの板状の係合部291と、係合部291,291同士を連結する連結部293とを有するホルダー29を備えていること以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。なお、このような板状の係合部291としては、例えば、高温耐久性に優れた金属製の板バネを適用することが好ましい。また、加熱部23から発熱材料収納部21を脱着する際には、図7中において点線で示すように、爪部291Aを矢印で示す方向に弾性変形させて拡げればよい。
【0030】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、固定部材27が、上述のような爪部291Aを有する係合部291と連結部293とを有する簡易な構成のホルダー29を備えているので、加熱部23からの発熱材料収納部21の脱着が第1の実施形態よりも更に容易である。
【0031】
(第6実施形態)
図8に示すように、本実施形態の発熱装置20Eにおいては、発熱材料収納部21を加熱部23に着脱可能に固定する固定部材27を更に具備していること以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。
【0032】
より具体的には、この発熱装置20Eにおいては、固定部材27が、発熱材料収納部21及び加熱部23を緊締するバンド状のホルダー29を備えていること以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。なお、このようなバンド状のホルダー29としては、例えば、高温耐久性に優れた金属バンドを適用することが好ましい。また、加熱部23から発熱材料収納部21を脱着する際には、図8中で示すように、ホルダー29を矢印で示す方向にスライドさせて外せばよい。
【0033】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、固定部材27が、上述のようなバンド状のホルダーのような簡易な構成のホルダーを備えているので、加熱部23からの発熱材料収納部21の脱着が第1の実施形態よりも更に容易である。また、上述のようなバンド状のホルダーは発熱材料収納部21と加熱部23の積層方向に対して垂直な方向の軸中心の周囲に配置されているので、積層方向の固定だけでなく、積層方向に対して垂直な方向の固定も十分なものにしやすい。
【0034】
(第7実施形態)
図9に示すように、本実施形態の発熱装置20Fにおいては、発熱材料収納部21を加熱部23に着脱可能に固定する固定部材27を更に具備していること以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。
【0035】
より具体的には、この発熱装置20Fにおいては、固定部材27が、発熱材料収納部21及び加熱部23の側面に対向配置された2つの係合部291と、係合部291,291同士を連結する連結部293と、発熱材料収納部21と加熱部23との積層方向(図9中で矢印Zで示す方向)における片側に配置され、発熱材料収納部21と加熱部23との間の押圧力を増大させる押圧付与部295とを有するホルダー29を備え、係合部291が、一端に発熱材料収納部21に係合する爪部291Aを有すると共に他端に押圧付与部295に係合する爪部291Aを有していること以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。
【0036】
なお、このような押圧付与部295としては、例えば、固定板295Aと固定ねじ295Bを備えたものを適用することができる。加熱部23から発熱材料収納部21を脱着する際には、固定ねじ295Bを回転させ図中下側に移動させることにより、固定板295Aが図中上側に移動して、発熱材料収納部21と加熱部23との間に押圧力をなくして、発熱材料収納部を脱着すればよい。また、図示しないが、爪部に係合させたバネを押圧付与部材として適用することもできる。
【0037】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、固定部材27が、上述のような係合部291と連結部293と押圧付与部295を有する簡易な構成のホルダー29を備えているので、発熱材料収納部21と加熱部23とを第1の実施形態よりも更に密着させることができ、加熱部23からの発熱材料収納部21の脱着が第1の実施形態よりも更に容易である。
【0038】
(第8実施形態)
図10に示すように、本実施形態の発熱装置20Gにおいては、加熱部23が、通電加熱部231と通電加熱部231を挟持する電極233,233を有していること以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。なお、このような通電加熱部231及び電極233を備えたものとしては、例えば、セラミックスヒータを適用することができる。
【0039】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、加熱部23が、通電加熱部231と通電加熱部231を挟持する電極233,233を有しているので、加熱部は通電により加熱することができる。これにより、例えば、電気自動車などの車両に備える電力により加熱を実行することができる。
【0040】
(第9実施形態)
図11に示すように、本実施形態の発熱装置20Hにおいては、通電加熱部231が分割されており、分割された通電加熱部231の各々が電極233,233で挟持されていること以外は、第8実施形態と同様の構成を有している。
【0041】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、通電加熱部231が分割されており、分割された通電加熱部231の各々が電極233,233で挟持されているので、第8実施形態の利点に加えて、発熱にかける通電電圧の低電圧化によって通電装置のコスト低減を実現できる。
【0042】
(第10実施形態)
図12に示すように、本実施形態の発熱装置20Iにおいては、発熱材料収納部21が分割されていないこと以外は、第9実施形態と同様の構成を有している。
【0043】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、発熱材料収納部21が分割されていないので、第9実施形態の利点に加えて、一度で発熱材料収容部21を脱着することができ、発熱材料収容部21の交換がより容易になる。
【0044】
(第11実施形態)
図13に示すように、本実施形態の窓部材2は、開口部部材11の少なくとも一部に電熱線又は通電性の透明膜からなる発熱体13が配置されていること以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。なお、電熱線としては従来公知のものを適用することができ、通電性の透明膜としては、例えば、ITO蒸着膜やAg薄膜透明フィルム、透明導電性樹脂膜を適用することができる。
【0045】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、開口部部材11の少なくとも一部に電熱線又は通電性の透明膜からなる発熱体13が配置されているので、第1実施形態の利点に加えて、窓部材が大きいときに全面を素早く加熱することができる。特に、比較的高温になりやすいMHE発熱収納部を開口部部材11の四隅近傍に配置した場合、これらから遠い開口部部材11の中央に電熱線又は通電性の透明膜からなる発熱体13を配置して加熱を補助することにより、得られる効果が顕著になる。
【0046】
ここで、各構成要素の仕様や材種について更に詳細に説明する。
【0047】
(MHE発熱材料)
MHE発熱材料としては、例えば、水素を吸蔵・脱蔵(放出)して過剰熱を発生する水素吸蔵合金を含んでいれば、特に限定されない。例えば、このような水素吸蔵合金は、水素吸蔵脱蔵特性が異なる第1及び第2の金属を含む水素吸蔵合金により形成される。第1の金属及び第2の金属は、具体的な種類について特に制限はなく、上記の水素吸蔵機能を発揮し得る組み合わせから任意に選択可能である。そして、ある金属が「第1の金属」に該当するか「第2の金属」に該当するかは、組み合わされる他の金属との関係で決定される相対的なものである。このため、これらの金属の組み合わせによっては、ある金属が「第1の金属」に該当する場合と、「第2の金属」に該当する場合の双方の可能性が存在する。
【0048】
第1の金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)及び鉛(Pb)が挙げられる。また、第2の金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、バナジウム(V)及びカルシウム(Ca)が挙げられる。これらの金属を用いると、発熱量の大きいMHE発熱材料を構成することが可能である点で好ましい。
【0049】
加熱温度が比較的低い場合でもMHE発熱材料として機能し得るという観点からは、融点が比較的低いスズ(Sn)を第1の金属として用いることが好ましい。また、発熱量が大きいという観点からは、アルミニウム(Al)を第1の金属として用いることも好ましい。
【0050】
さらに、「第1金属-第2金属」の組み合わせとしては、ニッケル-ジルコニウム、アルミニウム-ニッケル、アルミニウム-チタン、アルミニウム-マンガン、アルミニウム-亜鉛、スズ-チタン、アルミニウム-カルシウムなどが挙げられる。特に発熱量の大きいMHE発熱材料を構成することが可能であるという観点からは、アルミニウム-ニッケル、アルミニウム-チタン、スズ-チタンの組み合わせが好ましく、アルミニウム-ニッケル、スズ-チタンの組み合わせがより好ましく、アルミニウム-ニッケルの組み合わせが特に好ましい。なお、これら以外の金属や、これら以外の組み合わせが用いられても良いことは勿論である。
【0051】
MHE発熱材料に対する前処理として、2相の水素吸蔵合金に対し、高圧・高温下において水素を吸蔵させ、エネルギー的に安定した状態のMHE発熱材料にする。次いで、例えば圧力を常圧程度に下げるか又は温度を200℃などの中温度に下げるなどしてエネルギー状態をずらし、エネルギー的に不安定な状態のMHE発熱材料にする。
【0052】
MHE発熱材料中に2つの相が共存すると、一方の相と他方の相とでエネルギー的にバランスが取れる平衡点が異なり、水素の吸脱蔵スピードが異なるので、一方の相が水素を放出して他方の相が水素を吸蔵する。この状態が一方の相の平衡点まで続き、一方の相の平衡点で一方の相からの水素放出が止まる。
【0053】
この一方の相の平衡点は、他方の相の平衡点からずれているので、今度は、他方の相が水素を放出して一方の相が水素を吸蔵し、上記一方の相の平衡点を通り過ぎて他方の相の平衡点まで他方の相からの水素の放出が続く。
【0054】
上記のように、一方の相からの水素放出、一方の相の平衡点、他方の相からの水素放出、他方の相の平衡点のサイクルが繰り返され、パルス的な発熱を継続して得ることができる。なお、MHE発熱材料は、水素の吸脱蔵を何度も繰り返すうちに、水素吸蔵合金であった材料が徐々に水素吸蔵機能がない単なる合金になる。なお、このようなMHE発熱材料は、例えば、上述の合金粉末をペレット状に固めたものを用いることが好ましい。また、水素吸蔵機能が無くなった単なる合金に対して、相図を利用し、適切な温度で加熱溶融し、一定時間保持した後、他の適切な温度付近までゆっくり冷却することで、水素を吸蔵・脱蔵(放出)して過剰熱を発生する水素吸蔵合金に再生することができる。
【0055】
(水素ガス)
MHE発熱材料と共に収納される水素ガスは、容器に少量充填されることが好ましい。この場合、例えば、容器の内部圧力を0.1MPa以下とすることが好ましく、1kPa~10kPaとすることがより好ましい。
【0056】
(発熱材料収納部)
MHE発熱材料を収納する発熱材料収納部(容器)としては、例えば、その内部にMHE発熱材料と共に水素ガスを収納することができれば、特に限定されない。このような容器としては、例えば、耐熱性、耐久性を有することが好ましい。このような容器の材質としては、耐熱性、耐久性の観点からは、アルミニウムや鋼などの金属を好適に用いることができる。
【0057】
以上、本発明を若干の実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0058】
本発明においては、エネルギー消費効率を向上させることができると共に、MHE発熱材料と水素ガスを収納した発熱材料収納部の交換を可能とするべく、上述の発熱材料収納部を、上述の加熱部よりも基材に近い側において加熱部に積層し、かつ、着脱可能に固定したことを骨子とする。
【0059】
従って、上述の効果が得られれば、例えば、図示しないが、発熱材料収納部と加熱部とがほぞ部やほぞ溝部、更には単なる凸部や凹部などによって嵌合しておらず、上述した固定部材のみで発熱材料収納部が加熱部に着脱可能に固定されていてもよい。もちろん、単なる凸部や凹部などによって嵌合していてもよい。
【0060】
また、基材として窓の開口部部材、特にウインドシールドを例示して説明したが、これに限定されるものでなく、基材として結露又は凍結による曇りが問題となる、リヤウインドウ、サイドウインドウ、サイドミラーや後方確認用の補助ミラー、可視光を透過又は反射するその他の基材に適用することができる。これら基材の着雪防止、融雪用途にも利用することができる。
【0061】
さらに、例えば、上述した構成要素は、各実施形態に示した構成に限定されるものではなく、MHE発熱材料、水素ガス、発熱材料収納部、加熱部、温度調整部、固定部材の仕様や材質の細部を変更することや、一の実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と入れ替えて又は組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,2 窓部材
10 基材
11 窓の開口部部材
13 発熱体
20,20A~20I 発熱装置
20a 接合面
20b 段付きのあり継ぎ構造
20c 隙間
21 発熱材料収納部
21A ほぞ溝部
23 加熱部
231 通電加熱部
233 電極
23A ほぞ部
25 温度調整部
27 固定部材
29 ホルダー
291 係合部
291A 爪部
293 連結部
295 押圧付与部
295A 固定板
295B 固定ねじ
30 インストルメントパネル
40 ルーフトリム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13