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特開2024-71727高いホウ素アルミノシリケートの組成の割には改善された低い熱膨張係数を有する、改善された低い誘電率の繊維を作製するための、MgO、ZnO、および希土類酸化物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071727
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】高いホウ素アルミノシリケートの組成の割には改善された低い熱膨張係数を有する、改善された低い誘電率の繊維を作製するための、MgO、ZnO、および希土類酸化物の使用
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/00 20060101AFI20240517BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C03C13/00
C03C3/093
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024057551
(22)【出願日】2024-03-29
(62)【分割の表示】P 2022163164の分割
【原出願日】2016-05-11
(31)【優先権主張番号】62/160,709
(32)【優先日】2015-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520052293
【氏名又は名称】エレクトリック グラス ファイバー アメリカ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ホン リー
(57)【要約】
【課題】 新規ガラス組成物およびその用途を提供すること
【解決手段】 新規ガラス組成物およびその用途が開示される。本明細書において記載されるガラス組成物は、50から55重量パーセントのSiO、17から26重量パーセントのB、13から19重量パーセントのAl、0から8.5重量パーセントのMgO、0から7.5重量パーセントのZnO、0から6重量パーセントのCaO、0から1.5重量パーセントのLiO、0から1.5重量パーセントのF、0から1重量パーセントのNaO、0から1重量パーセントのFe、0から1重量パーセントのTiO、および0から8重量パーセントの他の構成成分を含み得る。また、そのような組成物から形成されるガラス繊維、複合材、ならびにガラス組成物および/またはガラス繊維を含む製造物品についても本明細書において記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成物の熱安定性
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、米国仮特許出願第62/160,709号(2015年5月13日出願)に対する優先権を主張する。この米国仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、ガラス組成物およびその用途に関する。実施形態は、繊維を形成するためのガラス組成物、繊維および繊維を含む製造物品(例えば、プリント回路板)を含み、プリント回路板は、改善された電気性能および熱安定性を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ガラス繊維は、長年、様々な高分子樹脂を強化するために使用されてきた。強化用途において使用するための、一般に使用されているいくつかのガラス組成物としては、「Eガラス」および「Dガラス」ファミリーの組成物が挙げられる。別の一般に使用されているガラス組成物は、AGY(Aiken、South Carolina)から、「Lガラス」の商品名で市販されている。
【0004】
強化用途および他の用途において、ガラス繊維またはガラス繊維で強化された複合材、特にプリント回路基板に関して、ある特定の電気特性および熱特性は重要であり得る。しかしながら、多くの場合において、改善された電気特性および熱特性(例えば、より低い誘電率、より低い熱膨張係数など)を有するガラス繊維の製造は、例えばバッチ材料のコストの上昇、製造コストの上昇、または他の因子に起因して、より高いコストをもたらし得る。例えば、前述の「Lガラス」は、従来型のEガラスと比較して改善された電気特性および熱特性を有するが、バッチからガラスへの変換(batch-to-glass conversion)、溶融清澄(melt fining)、および繊維延伸(fiber drawing)のための大幅に高い温度およびエネルギー需要の結果として、コストもまた大幅に高くなる。繊維ガラス製造業者は、商業的な製造環境において望ましい性能関連特性を有するガラス繊維を形成するために使用することができるガラス組成物を探求し続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明の様々な実施形態は、ガラス組成物、繊維化可能なガラス組成物、そのような組成物から形成されるガラス繊維、ならびにガラス組成物および/またはガラス繊維を含む製造物品を提供する。
【0006】
本発明の実施形態におけるガラス組成物、繊維化可能なガラス組成物、およびガラス繊維は、例えば現在市販されているガラス組成物と比較して、以下の有利な特色:より低い熱膨張係数(CTE)の値、より低い誘電率(Dk)、より低い溶融温度および成形温度、ならびに/またはより高いガラス転移温度のうちの1つまたは複数を有し得る。本発明の実施形態のさらなる利点としては、繊維強度の増加、繊維のヤング率の増加、繊維密度の減少、および/またはホウ素排出量の減少を挙げることができる。本発明の実施形態は、他の潜在的用途の中でも特に、プリント回路板用途に関して有利であり得る。本発明の
実施形態のさらなる利益は、当業者には、本明細書において提供される記載から明らかとなるであろう。
【0007】
本発明の特色および実施形態については、以下に続く詳細な説明において、より詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
特に明記しない限り、以下の明細書において示される数値パラメーターは、本発明によって得ることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。ともあれ、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限することを試みるものではないが、各数値パラメーターは、少なくとも、報告される有効桁数の観点から、通常の丸め技術を適用することによるものとして解釈されるべきである。
【0009】
本発明の幅広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターは近似値であるものの、具体例において示される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、あらゆる数値は、それらそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差に必然的に起因するある特定の誤差を本質的に含む。また、本明細書において開示されるすべての範囲は、それらの範囲に包含される任意かつすべての部分範囲を包括するものとして理解されるべきである。例えば、「1から10」と記載された範囲は、最小値1から最大値10の間(また両端も含まれる)の任意かつすべての部分範囲、すなわち、1またはそれ超の最小値(例えば1から6.1)で始まり、そして10またはそれ未満の最大値(例えば5.5から10)で終わる、すべての部分範囲を含むものとみなされるべきである。加えて、「本明細書に組み込まれる」と言及される任意の参考文献は、その全体が組み込まれるものとして理解されるべきである。
【0010】
本明細書において使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、バッチ材料中の微量不純物として存在する構成成分に起因し、約0.2重量パーセントまたはそれ未満(例えば、0.1重量パーセントもしくはそれ未満、0.05重量パーセントもしくはそれ未満、0.01重量パーセントもしくはそれ未満、または0.005重量パーセントもしくはそれ未満)の量でしか存在しない、ガラス組成物中に存在する構成成分の任意の量を指す。
【0011】
さらに、本明細書において使用される場合、単数形の「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、および「その(the)」は、明示的かつ明解に1つの指示対象に対して限定されていない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0012】
本発明の実施形態は、ガラス組成物を含む。ある態様において、本発明は、本明細書において記載されるガラス組成物から形成されるガラス繊維を提供する。一部の実施形態において、本発明のガラス繊維は、Lガラス繊維と比較して、より低い誘電率およびより低い熱膨張係数などの改善された機械的特性を有し得る。加えて、組成物は、より低い溶融温度および成形温度、ならびにより高いガラス転移温度などの改善された特性を有する。
【0013】
一部の実施形態では、本発明のガラス組成物は、繊維形成に好適であり、すべてガラス組成物の重量に基づいて、約50から約55重量パーセントのSiO、約17から約26重量パーセントのB、約13から約19重量パーセントのAl、約0から約8.5重量パーセントのMgO、約0から約7.5重量パーセントのZnO、約0から約6重量パーセントのCaO、約0から約1.5重量パーセントのLiO、約0から約1.5重量パーセントのF、約0から約1重量パーセントのNaO、約0から約1重量パーセントのFe、約0から約1重量パーセントのTiO、および約0から約
8重量パーセントの他の構成成分を含む。
【0014】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するSiOの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、SiOは、ガラス組成物の重量に基づいて、約50から約55重量パーセントの量で存在してもよい。一部の実施形態では、SiOは、約51から約54重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、SiOの含有量は、約52から約54重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、SiOの含有量は、52超から約53.5重量パーセントであってもよい。
【0015】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するBの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、Bは、ガラス組成物の重量に基づいて、約17から約26重量パーセントの量で存在してもよい。一部の実施形態では、Bの含有量は、約17.5から約25重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Bの含有量は、約19から約24重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Bの含有量は、約17.5から約22重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Bの含有量は、約22から約26重量パーセントであってもよい。
【0016】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するAlの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、Alは、ガラス組成物の重量に基づいて、約13から約19重量パーセントの量で存在してもよい。一部の実施形態では、Alの含有量は、約14から約18重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Alは、13超から約16重量パーセントの量で存在してもよい。一部の実施形態では、Alは、約16から約18.5重量パーセントの量で存在してもよい。
【0017】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するMgOの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、MgOの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、約8.5重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、MgOは、0超から約8.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、MgOは、0超から約7.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、MgOの含有量は、約1から約8.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、MgOの含有量は、約2から約8.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、MgOの含有量は、約2から約8重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、MgOの含有量は、約3から約7重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、MgOの含有量は、1重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。
【0018】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するAlおよびMgOの合わせた含有量(すなわち、Al+MgO)によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、Al+MgOの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、少なくとも約14重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+MgOの含有量は、約14から約26.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+MgOの含有量は、約14から約26重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+MgOの含有量は、約14から約21重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+MgOの含有量は、約20から約26.5重量パーセントであってもよい。
【0019】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するZnOの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、ZnOの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、約0から約8重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、ZnOの含有量は、約0から約7.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、ZnOは、0
超から約5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、ZnOの含有量は、約2から約7.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、ZnOの含有量は、約2から約5.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、組成物は、ZnOを実質的に含まなくてもよい。
【0020】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するAlおよびZnOの合わせた含有量(すなわち、Al+ZnO)によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、Al+ZnOの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、少なくとも約14重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+ZnOの含有量は、約14から約22重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+ZnOの含有量は、約14から約20重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+ZnOの含有量は、約14.5から約18重量パーセントであってもよい。
【0021】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するCaOの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、CaOの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、約0から約6重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、CaOの含有量は、0超から約5.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、CaOの含有量は、0超から約4.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、CaOの含有量は、約1.5から約5.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、CaOの含有量は、約1重量パーセント未満であってもよい。一部の実施形態では、組成物は、CaOを実質的に含まなくてもよい。
【0022】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するMgOおよびCaOの合わせた含有量(すなわち、MgO+CaO)によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、MgO+CaOの合計含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、約9重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、MgO+CaOの含有量は、0超から約9重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、MgO+CaOの含有量は、0超から約7.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、MgO+CaOの含有量は、0超から約4重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、MgO+CaOの含有量は、約2から約9重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、MgO+CaOの含有量は、約4から約8.5重量パーセントであってもよい。
【0023】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するNaOの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、NaOの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、約1重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、NaOの含有量は、約0.5重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、NaOの含有量は、約0.1重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、NaOの含有量は、約0.05重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、NaOは、0超から約1重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、NaOは、0超から約0.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、NaOは、0超から約0.1重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、NaOの含有量は、約0.04から約0.05重量パーセントであってもよい。
【0024】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するLiOの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、LiOの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、約1.5重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、LiOの含有量は、約1.2重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施
形態では、LiOの含有量は、約0.8重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、LiOの含有量は、約0.5重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、LiOは、0超から約1.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、LiOは、0超から約0.8重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、LiOの含有量は、約0.4から約0.7重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、組成物は、LiOを実質的に含まなくてもよい。
【0025】
本発明の一部の実施形態は、組成物中に存在するNaOおよびLiOの含有量の合計量(すなわち、NaO+LiO)によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、NaO+LiOの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、約1.5重量パーセント未満であってもよい。一部の実施形態では、NaO+LiOの含有量は、約1.2重量パーセント未満であってもよい。一部の実施形態では、NaO+LiOの含有量は、約0.7重量パーセント未満であってもよい。一部の実施形態では、NaO+LiOの含有量は、約0.1重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、NaO+LiOの含有量は、約0.4から約0.7重量パーセントであってもよい。
【0026】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するFの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、Fの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、約1.5重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、Fは、0超から約1.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Fは、約0.5から約1.5重量パーセントの量で存在してもよい。一部の実施形態では、Fは、約0.9から約1.3重量パーセントの量で存在してもよい。
【0027】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するFeの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、Feの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、約1重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、Feの含有量は、約0.5重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、Feは、0超から約0.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Feは、約0.2から約0.4重量パーセントの量で存在してもよい。
【0028】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するTiOの量によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、TiOの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、約1重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、TiOは、0超から約0.7重量パーセントで存在してもよい。一部の実施形態では、TiOは、約0.4から約1重量パーセントの量で存在してもよい。一部の実施形態では、TiOは、約0.4から約0.7重量パーセントの量で存在してもよい。一部の実施形態では、TiOは、約0.45から約0.6重量パーセントの量で存在してもよい。
【0029】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するBaOおよび/またはSrOの量によって特徴付けることができる。組成物は、不純物に由来する少量のBaOおよび/またはSrOを含有してもよい。組成物中のBaOおよびSrOの合わせた濃度は、ガラス組成物の重量に基づいて、約0.2重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、組成物は、BaOを実質的に含まなくてもよい。一部の実施形態では、組成物は、SrOを実質的に含まなくてもよい。
【0030】
サルフェート(SOとして表される)もまた、精製剤として存在してもよい。一部の実施形態では、組成物は、SOを実質的に含まない。また、原材料由来または溶融プロ
セス中の混入に由来するCl、P、Cr、またはNiOなどの少量の不純物が存在する場合もあるが、これらの特定の化学形態に限定されるものではない。また、As、MnO、Sb、またはSnOなどの他の精製剤および/または加工助剤が存在する場合もあるが、これらの特定の化学形態に限定されるものではない。これらの不純物および精製剤は、存在する場合、ガラス組成物の重量に基づいて、各々典型的には約0.5重量パーセント未満の量で存在する。
【0031】
本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在する希土類酸化物(RE)の量によって特徴付けることができる。当業者には理解されるように、「希土類酸化物」という用語は、希土類金属を組み込んだ酸化物を指し、スカンジウムの酸化物(Sc)、イットリウムの酸化物(Y)、ならびにランタノイド元素の酸化物(ランタン(La)、セリウム(CeおよびCeO)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(EuおよびEuO)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびルテチウム(Lu))を含む。
【0032】
本発明のガラス組成物の一部の実施形態では、1種または複数の希土類酸化物は、希土類酸化物が、ガラスバッチとともに含まれる、バッチ材料中の混入物または不純物としてのみ存在するような量を上回る量で含まれ、別の構成成分をもたらし得る。一部の実施形態では、ガラス組成物は、希土類酸化物の組合せ(例えば、様々な希土類酸化物のうち1種または複数)を含んでもよい。一部の実施形態では、1種または複数の希土類酸化物は、La、CeO、Y、およびScのうち少なくとも1種を含む。
【0033】
一部の実施形態では、本発明のガラス組成物は、ガラス組成物の重量に基づいて、約0.1重量パーセント超の量の1種または複数の希土類酸化物(RE)を含んでもよい。一部の実施形態では、1種または複数の希土類酸化物の合計量は、約8重量パーセントまたはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、1種または複数の希土類酸化物の含有量は、0超から約8重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、1種または複数の希土類酸化物の含有量は、0超から約7.5重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、1種または複数の希土類酸化物の含有量は、約3.5から約7.5重量パーセントの量で存在してもよい。一部の実施形態では、組成物は、希土類酸化物を実質的に含まなくてもよい。本発明の一部の実施形態は、ガラス組成物中に存在するAlおよび希土類酸化物の合わせた含有量(すなわち、Al+RE)によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、Al+REの含有量は、ガラス組成物の重量に基づいて、少なくとも約13重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+REの含有量は、約13から約22重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+REの含有量は、約14から約22重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+REの含有量は、約14から約18重量パーセントであってもよい。一部の実施形態では、Al+REの含有量は、約18から約22重量パーセントであってもよい。約0重量パーセントから別の重量パーセントの量で存在するとして記載されている、ガラス組成物の任意の構成成分は、必ずしもすべての実施形態で必要とされるわけではないことを理解されたい。換言すれば、そのような構成成分は、無論、組成物中に含まれる他の構成成分の量に応じて、一部の実施形態では任意選択であり得る。同様に、一部の実施形態では、ガラス組成物は、そのような構成成分を実質的に含まなくてもよく、これは、ガラス組成物中に存在する構成成分の任意の量が、バッチ材料中の微量不純物として存在する構成成分に起因し、約0.2重量パーセントまたはそれ未満の量でしか存在しないことを意味する。
【0034】
上述されるように、本発明の一部の実施形態によるガラス組成物は、繊維化可能である。一部の実施形態では、本発明のガラス組成物は、商業的繊維ガラス製造作業における使用にとって望ましい成形温度(T)を有する。本明細書において使用される場合、「成形温度」またはTという用語は、ガラス組成物が1000ポアズの粘度を有する温度(または「log3温度」)を意味する。一部の実施形態では、本発明のガラス組成物は、約1030℃から約1350℃の範囲のTを有する。別の実施形態では、本発明のガラス組成物は、約1150℃から約1300℃の範囲のTを有する。
【0035】
一部の実施形態では、本発明のガラス組成物は、約1030℃から約1360℃の範囲の液相線温度を有する。別の実施形態では、本発明のガラス組成物は、約1155から約1255℃の範囲の液相線温度を有する。
【0036】
一部の実施形態では、本発明のガラス組成物の成形温度と液相線温度との間の差異は、商業的繊維ガラス製造作業にとって望ましい。例えば、ガラス組成物の一部の実施形態について、成形温度と液相線温度との間の差異は、約35℃から60℃超の範囲である。一部の実施形態では、本発明のガラス組成物の成形温度と液相線温度との間の差異は、少なくとも65℃である。
【0037】
本明細書において提供される場合、ガラス繊維は、本発明のガラス組成物の一部の実施形態から形成され得る。したがって、本発明の実施形態は、本明細書において記載されるガラス組成物のいずれかから形成されるガラス繊維を含み得る。一部の実施形態では、ガラス繊維は、布地にすることができる。一部の実施形態では、本発明のガラス繊維は、例えば、限定されるものではないが、連続ストランド、チョップドストランド(乾燥または湿潤)、糸、ロービング、プリプレグなどを含む他の形態で提供することができる。要するに、ガラス組成物の様々な実施形態(およびそれから形成される任意の繊維)は、様々な用途において使用することができる。
【0038】
本発明のガラス繊維は、繊維の組成を形成する特定の酸化物を供給するのに使用される原料をブレンドすることによって、当該技術分野において周知の従来型の様式で調製することができる。本発明の様々な実施形態によるガラス繊維は、ガラス繊維を形成するための、当該技術分野において公知の任意のプロセス、より望ましくは、本質的に連続したガラス繊維を形成するための、当該技術分野において公知の任意のプロセスを使用して形成することができる。例えば、本明細書において限定的であるわけではないが、本発明の非限定的な実施形態によるガラス繊維は、直接溶融または間接溶融による繊維形成方法を使用して形成することができる。これらの方法は、当該技術分野において周知であり、本開示の見地からは、そのさらなる考察が必要であるとは考えられない。例えば、K. L. Loewenstein、The Manufacturing Technology of Continuous Glass Fibers、第3版、Elsevier、N.Y.、1993年、47~48頁および117~234頁を参照されたい。
【0039】
本発明の一部の実施形態は、繊維ガラスストランドに関する。本発明の一部の実施形態は、繊維ガラスストランドを含む糸に関する。本発明の糸の一部の実施形態は、製織(weaving)用途にとって特に好適である。加えて、本発明の一部の実施形態は、ガラス繊維
布地に関する。本発明の繊維ガラス布地の一部の実施形態は、強化用途、特に高い弾性率、高い強度、および/または高い伸び率が重要である強化用途における使用にとって特に好適である。さらに、本発明の一部の実施形態は、繊維ガラスストランド、繊維ガラス糸、および繊維ガラス布地を組み込む複合材、例えば繊維強化ポリマー複合材に関する。なおもさらに、本発明の一部の実施形態は、限定されるものではないが、風力エネルギー、自動車、安全/セキュリティー、航空宇宙、航空、および高圧タンクを含む用途のための繊維強化複合材に関する。本発明の一部の実施形態は、チップ実装用基板などの、より低
い熱膨張係数が特に望ましいプリント回路板に関する。
【0040】
本発明の一部の実施形態は、繊維ガラスストランドに関する。一部の実施形態では、本発明の繊維ガラスストランドは、以下の構成成分:
約50から約55重量パーセントのSiO
約17から約26重量パーセントのB
約13から約19重量パーセントのAl
約0から約8.5重量パーセントのMgO、
約0から約7.5重量パーセントのZnO、
約0から約6重量パーセントのCaO、
約0から約1.5重量パーセントのLiO、
約0から約1.5重量パーセントのF
約0から約1重量パーセントのNaO、
約0から約1重量パーセントのFe
約0から約1重量パーセントのTiO、および
合計で約0から約8重量パーセントの他の構成成分
を含むガラス組成物を含む複数のガラス繊維を含む。
【0041】
いくつかの他のガラス組成物が、本発明の一部として本明細書において開示されており、本発明の他の実施形態は、そのような組成物から形成される繊維ガラスストランドに関する。
【0042】
一部の実施形態では、本発明のガラス繊維は、望ましい機械的特性および他の特性を提示し得る。一部の実施形態では、本発明のガラス繊維は、L-ガラスから形成されるガラス繊維に対して、1つまたは複数の改善された機械的特性を提示し得る。本発明のガラス繊維の一部の実施形態によって提示される、改善された望ましい特性の例としては、限定されるものではないが、誘電率、熱膨張係数、溶融温度および成形温度、転移温度、繊維強度、ヤング率、密度、ならびにホウ素排出量が挙げられる。
【0043】
一部の実施形態では、本発明のガラス繊維は、望ましい誘電率(D)の値を有し得る。一部の実施形態では、本発明のガラス組成物から形成される繊維は、5未満の誘電率を有し得る(1GHzにおいて)。一部の実施形態では、本発明のガラス繊維は、4.75未満の誘電率を有し得る(1GHzにおいて)。一部の実施形態では、本発明のガラス組成物から形成される繊維は、4.0未満の誘電率を有し得る(1GHzにおいて)。本明細書において別途示されない限り、本明細書において考察される誘電率の値は、下の実施例のセクションにおいて示される手順を使用して決定される。
【0044】
一部の実施形態では、本発明のガラス繊維は、望ましい熱膨張係数(CTE)の値を有し得る。一部の実施形態では、本発明のガラス組成物から形成される繊維は、3.5ppm/℃未満のCTEを有し得る。一部の実施形態では、本発明のガラス繊維は、3.3ppm/℃未満のCTEを有し得る。一部の実施形態では、本発明のガラス組成物から形成される繊維は、3.2ppm/℃未満のCTEを有し得る。本明細書において別途示されない限り、本明細書において考察されるCTEの値は、下の実施例のセクションにおいて示される手順を使用して決定される。
【0045】
繊維ガラスストランドは、所望される用途に応じて、様々な直径のガラス繊維を含み得る。一部の実施形態では、本発明の繊維ガラスストランドは、約5から約24μmの間の直径を有する少なくとも1つのガラス繊維を含む。他の実施形態では、少なくとも1つのガラス繊維は、約5から約10μmの間の直径を有する。
【0046】
一部の実施形態では、本発明の繊維ガラスストランドは、糸およびロービングに形成され得る。ロービングは、合糸された(assembled)、マルチエンドまたはシングルエンド
の直接延伸ロービングを含み得る。本発明の繊維ガラスストランドを含むロービングは、所望される用途に応じて、様々な直径および密度を有する直接延伸シングルエンドロービングを含み得る。一部の実施形態では、本発明の繊維ガラスストランドを含むロービングは、最大で約113ヤード/ポンドの密度を示す。
【0047】
本発明の一部の実施形態は、本明細書において開示されるような少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含む糸に関する。一部の実施形態では、本発明の糸は、本明細書において開示されるような少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含み、この少なくとも1本の繊維ガラスストランドは、サイジング組成物で少なくとも部分的にコーティングされている。一部の実施形態では、サイジング組成物は、熱硬化性高分子樹脂と適合性である。他の実施形態では、サイジング組成物は、デンプン-油サイジング組成物(starch-oil
sizing composition)を含み得る。
【0048】
糸は、所望される用途に応じて、様々な線形質量密度を有し得る。一部の実施形態では、本発明の糸は、約5,000ヤード/ポンドから約10,000ヤード/ポンドの線形質量密度を有する。
【0049】
糸は、所望される用途に応じて、様々な撚り数レベルおよび撚り方向を有し得る。一部の実施形態では、本発明の糸は、z方向において、約0.5から約2の撚り数毎インチの撚りを有する。他の実施形態では、本発明の糸は、z方向において、約0.7の撚り数毎インチの撚りを有する。
【0050】
糸は、所望される用途に応じて、一緒に撚られ、かつ/またはプライされた、1本または複数のストランドから作製することができる。糸は、一緒に撚られているが、プライはされていない、1本または複数のストランドから作製することができ、そのような糸は「単糸」として公知である。本発明の糸は、一緒に撚られているが、プライはされていない、1本または複数のストランドから作製することができる。一部の実施形態では、本発明の糸は、一緒に撚られた1~4本のストランドを含む。他の実施形態では、本発明の糸は、撚られた1本のストランドを含む。
【0051】
本発明の一部の実施形態は、少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含む布地に関する。一部の実施形態では、本発明の布地は、本発明の一部として本明細書において開示されるガラス組成物のうち少なくとも1つを含む、少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含み得る。一部の実施形態では、本発明の布地は、本明細書において開示されるような糸を含む。一部の実施形態では、本発明の布地は、本明細書において開示されるような少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含む、少なくとも1本の緯糸を含み得る。一部の実施形態では、本発明の布地は、本明細書において開示されるような少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含む、少なくとも1本の経糸を含み得る。一部の実施形態では、本発明の布地は、本明細書において開示されるような少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含む少なくとも1本の緯糸と、本明細書において開示されるような少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含む少なくとも1本の経糸とを含む。
【0052】
布地を含む本発明の一部の実施形態では、ガラス繊維布地は、工業用布地スタイル(industrial fabric style)第7781号にしたがって織られた布地である。他の実施形
態では、布地は、平織布地、あや織布地、クローフット布地、繻子織布地、ステッチボンディングされた布地(ノンクリンプ布地としても公知である)、または「三次元」織り布地を含む。
【0053】
本発明の実施形態は、本発明のガラス組成物の実施形態および/またはガラス繊維の実施形態を含む、製造物品をさらに含み得る。一部の実施形態では、製造物品は、本発明の糸の実施形態、本発明の布地の実施形態、および/または本発明の複合材の実施形態を含む。
【0054】
本発明の製造物品の一部の実施形態は、プリント回路板に関する。一部の実施形態では、プリント回路板は、本発明の糸、布地、および/または複合材を含む。プリント回路板を製造するための方法は、一般的に、当業者には公知である。
【0055】
本発明の一部の実施形態は、複合材に関する。一部の実施形態では、本発明の複合材は、高分子樹脂と、高分子樹脂中に配置された複数のガラス繊維とを含み、複数のガラス繊維のうちの少なくとも1つは、本発明の一部として本明細書において開示されるガラス組成物のうちのいずれかを含む。一部の実施形態では、本発明の複合材は、高分子樹脂と、高分子樹脂中に配置された、本明細書において開示されるような少なくとも1本の繊維ガラスストランドとを含む。一部の実施形態では、本発明の複合材は、高分子樹脂と、高分子樹脂中に配置された、本明細書において開示されるような少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含むロービングの少なくとも一部とを含む。他の実施形態では、本発明の複合材は、高分子樹脂と、高分子樹脂中に配置された、本明細書において開示されるような少なくとも1本の糸とを含む。さらに他の実施形態では、本発明の複合材は、高分子樹脂と、高分子樹脂中に配置された、本明細書において開示されるような少なくとも1つの布地とを含む。一部の実施形態では、本発明の複合材は、本明細書において開示されるような少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含む少なくとも1本の緯糸と、本明細書において開示されるような少なくとも1本の繊維ガラスストランドを含む少なくとも1本の経糸とを含む。
【0056】
本発明の複合材は、所望される特性および用途に応じて、様々な高分子樹脂を含み得る。複合材を含む本発明の一部の実施形態では、高分子樹脂は、エポキシ樹脂を含む。複合材を含む本発明の他の実施形態では、高分子樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、フェノール類、ポリエステル、ビニルエステル、ポリジシクロペンタジエン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、シアン酸エステル、ビスマレイミド、および熱硬化性ポリウレタン樹脂を含み得る。本発明は、以下の一連の具体的な実施形態を通じて例証される。しかしながら、当業者には、多くの他の実施形態が本発明の原理によって企図されることが理解されるであろう。
【実施例0057】
表1は、本発明の様々な実施形態による複数の繊維化可能なガラス組成物、およびそのような組成物の様々な特性に関するデータを提供する。
【0058】
これらの実施例におけるガラスは、粉末形態の市販の化学薬品と試薬グレード化学薬品(試薬グレード化学薬品は希土類酸化物についてのみ使用した)の混合物を、10%Rh/Ptるつぼ中で、1500℃から1600℃(2732°F~2822°F)の間の温度で4時間溶融させることによって作製した。各バッチは約1000グラムであった。4時間の溶融期間の後、溶融ガラスを、クエンチさせるために鋼板上に注いだ。揮発性種であるホウ素およびフッ化物は、それらの放出損失に関して、バッチにおいて調整した。実施例における組成は、上記の調整を伴う、バッチ処理された状態の組成を表す。ガラスを調製する際、市販の原料成分を使用した。バッチ計算においては、各ガラス中の酸化物を計算するために、特別な材料保持因子について考慮した。保持因子は、長年にわたるガラスバッチ溶融、および測定されたガラス中の酸化物収率に基づく。したがって、実施例において例証されるバッチ処理された状態の組成は、測定された組成に近似していると考え
られる。
【0059】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0060】
溶融特性
温度の関数としての溶融粘度および液相線温度を、それぞれ、ASTM試験方法C965「Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point」およびC829「Standard Practices for Measurement of Liquidus
Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method」を使用して決定した。ガラスの軟化は、ASTM C338-93(2008年)「Standard Test Method
for Softening Point of Glass」を使用して決定した。
【0061】
表1は、ガラス組成物に関する、測定液相線温度(T)、1000ポアズの溶融粘度で定義される基準成形温度(T)、および100ポアズの粘度で定義される基準溶融温度(T)を含む。成形温度と液相線温度との差異(ΔT)も示されている。
【0062】
熱特性
ガラスの熱線膨張係数を、ASTM試験方法E228-11「Standard Test Method
for Linear Thermal Expansion of Solid Materials With a Push-Rod Dilatometer」を使用して決定した。同じ方法を使用して、ガラスのガラス転移温度Tを決
定した。
【0063】
電気特性
各ガラスの誘電率(D)および誘電正接(D)を、1GHzの周波数で、ASTM試験方法D150「Standard Test Methods for A-C Loss Characteristics and
Permittivity (Dielectric Constant) of Solid Electrical Insulating Materials」を使用して決定した。周波数1GHzにおける、Agilent E4991A RFインピーダンス/マテリアルアナライザーを使用するDおよびDの測定のために、40mmの直径および1~1.5mmの厚さを有する各ガラス試料の研磨ディスクを使用した。
【0064】
機械的特性
また、以下の技法を使用して、表1のある特定のガラス組成物についてヤング率を測定した。表1の適切な実施例に対応する組成を有するおよそ50グラムのガラスカレットを、90Pt/10Rhるつぼ中で、100ポアズで定義される溶融温度で2時間再溶融させた。続いて、るつぼを、垂直管である電気加熱炉に移した。炉温は、1000ポアズ溶融粘度に近いか、またはそれに等しい繊維牽引温度にプリセットした。ガラスは、その温度で、繊維延伸前に1時間平衡化させた。繊維延伸炉の頂部には、センターホールを備えたカバーがあり、その上に、繊維の冷却を調節するための水冷した銅コイルを載せた。次いで、シリカロッドを、冷却コイルを通して溶融物中に手動で浸漬させ、約1~1.5mの長さで繊維を延伸し、収集した。繊維の直径は、一方の端部における100μmから他方の端部における1000μmまでの範囲であった。
【0065】
ガラス溶融物から延伸された繊維について、弾性係数を、超音波音響パルス技法(Waltham、MassachusettsのPanametrics,Inc.製のPanatherm5010ユニット)を使用して決定した。伸縮波反射時間(extensional
wave reflection time)を、20マイクロ秒の期間、200kHzのパルスを使用して得た。試料の長さを測定し、それぞれの伸縮波速度(V)を計算した。繊維密度(ρ)を、Micromeritics AccuPyc 1330比重計を使用して測定した。各組成物について約20回の測定を行い、平均ヤング率(E)を以下の式で計算した。
E=V ×ρ
弾性率試験器は、1mmの直径を有する導波管を使用し、これにより、導波管との接触側の繊維直径が導波管の直径とほぼ同じになるように設定される。換言すれば、1000μmの直径を有する繊維の端部を、導波管の接触側で接続した。様々な直径を有する繊維をヤング率に関して試験した。結果は、100から1000μmの繊維直径は、繊維の弾性率に影響を及ぼさないことを示している。比弾性率の値は、ヤング率の値を対応する密度で除することで計算した。
【0066】
本説明は、本発明の明確な理解にとって適切な本発明の態様を例証していることを理解されたい。当業者には明らかであると思われるため、本発明のより良好な理解の助けにはなりそうにない、本発明のある特定の態様については、本説明を簡略化するために、提示されていない。本発明を、ある特定の実施形態に関連して説明してきたが、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨および範囲内の修正形態を網羅することが意図される。
【0067】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
繊維形成に好適なガラス組成物であって、
約50から約55重量パーセントの量のSiO
約17から約26重量パーセントの量のB
約13から約19重量パーセントの量のAl
約0から約8.5重量パーセントの量のMgO、
約0から約7.5重量パーセントの量のZnO、
約0から約6重量パーセントの量のCaO、
約0から約1.5重量パーセントの量のLiO、
約0から約1.5重量パーセントの量のF
約0から約1重量パーセントの量のNaO、
約0から約1重量パーセントの量のFe
約0から約1重量パーセントの量のTiO、および
合計で0から約8重量パーセントの量の1種または複数の希土類酸化物(RE)を含む、組成物。
(項2)
SiOの含有量が、約51から約54重量パーセントである、上記項1に記載の組成物。
(項3)
の含有量が、約17.5から約25重量パーセントである、上記項1から2のいずれかに記載の組成物。
(項4)
の含有量が、約19から約24重量パーセントである、上記項1から3のいずれかに記載の組成物。
(項5)
Alの含有量が、約14から約18重量パーセントである、上記項1から4のいずれかに記載の組成物。
(項6)
MgOの含有量が、0超から約7.5重量パーセントである、上記項1から5のいずれかに記載の組成物。
(項7)
MgOの含有量が、約2から約8.5重量パーセントである、上記項1から5のいずれかに記載の組成物。
(項8)
Al+MgOの含有量が、約14から約26.5重量パーセントである、上記項1から7のいずれかに記載の組成物。
(項9)
Al+MgOの含有量が、約14から約26重量パーセントである、上記項1から8のいずれかに記載の組成物。
(項10)
ZnOの含有量が、0超から約5重量パーセントである、上記項1から9のいずれかに記載の組成物。
(項11)
Al+ZnOの含有量が、約14から約22重量パーセントである、上記項1から10のいずれかに記載の組成物。
(項12)
CaOの含有量が、0超から約5.5重量パーセントである、上記項1から11のいずれかに記載の組成物。
(項13)
MgO+CaOの含有量が、約9重量パーセントまたはそれ未満である、上記項1から12のいずれかに記載の組成物。
(項14)
MgO+CaOの含有量が、0超から約9重量パーセントである、上記項1から12のいずれかに記載の組成物。
(項15)
NaOの含有量が、0超から約0.5重量パーセントである、上記項1から14のいずれかに記載の組成物。
(項16)
LiOの含有量が、約0.8重量パーセントまたはそれ未満である、上記項1から15のいずれかに記載の組成物。
(項17)
LiOの含有量が、0超から約0.8重量パーセントである、上記項1から15のいずれかに記載の組成物。
(項18)
NaO+LiOの合計含有量が、約1.5重量パーセントまたはそれ未満である、上記項1から17のいずれかに記載の組成物。
(項19)
の含有量が、0超から約1.5重量パーセントである、上記項1から18のいずれかに記載の組成物。
(項20)
Feの含有量が、0超から約0.5重量パーセントである、上記項1から19のいずれかに記載の組成物。
(項21)
TiOの含有量が、0超から約0.7重量パーセントである、上記項1から20のいずれかに記載の組成物。
(項22)
TiOの含有量が、0超から約0.6重量パーセントである、上記項1から21のいずれかに記載の組成物。
(項23)
前記ガラス組成物が、約0.01重量パーセント超の量の1種または複数の希土類酸化物を含む、上記項1から22のいずれかに記載の組成物。
(項24)
1種または複数の希土類酸化物の含有量が、0超から約8重量パーセントである、上記項1から22のいずれかに記載の組成物。
(項25)
1種または複数の希土類酸化物の含有量が、0超から約7.5重量パーセントである、上記項1から22のいずれかに記載の組成物。
(項26)
1種または複数の希土類酸化物の含有量が、0超から約7重量パーセントである、上記項1から25のいずれかに記載の組成物。
(項27)
RE+Alの含有量が、約13から約22重量パーセントである、上記項1から26のいずれかに記載の組成物。
(項28)
前記1種または複数の希土類酸化物が、La、CeO、Y、およびScのうち少なくとも1種を含む、上記項1から27のいずれかに記載の組成物。
(項29)
前記組成物が、BaOを実質的に含まない、上記項1から28のいずれかに記載の組成物。
(項30)
前記組成物が、SrOを実質的に含まない、上記項1から29のいずれかに記載の組成物。
(項31)
上記項1から30のいずれかに記載の組成物から形成される、繊維。
(項32)
上記項31に記載の繊維を含む、製造物品。
(項33)
前記製造物品がプリント回路板である、上記項32に記載の製造物品。
【外国語明細書】