(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071734
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】汚染を低減させ、質量分析法システムのロバスト性を向上させるためのRF/DCカットオフ
(51)【国際特許分類】
H01J 49/06 20060101AFI20240517BHJP
H01J 49/26 20060101ALI20240517BHJP
H01J 49/02 20060101ALI20240517BHJP
H01J 49/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H01J49/06 300
H01J49/26
H01J49/02 200
H01J49/00 310
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024058794
(22)【出願日】2024-04-01
(62)【分割の表示】P 2021510092の分割
【原出願日】2019-08-21
(31)【優先権主張番号】62/722,440
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ヘイガー
(57)【要約】
【課題】汚染を低減させ、質量分析法システムのロバスト性を向上させるための好適なRF/DCカットオフを提供すること。
【解決手段】本明細書に説明されるシステムおよび方法は、望ましくない/干渉/汚染イオンが質量分析法システムの高真空チャンバの中に伝送されることを防止しながら、下流の質量分析器への伝送のためにイオンをイオン源から受け取ることができる多極イオンガイドを利用する。種々の側面では、RFおよび/またはDC信号が、多極イオンガイドからのイオンの伝送を制御または操作するように、四重極ロッドセット内に挿入される補助電極に提供されることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、2018年8月24日に出願され、「RF/DC Cutoff to Reduce Contamination and Enhance Robustness of MassSpectrometer Systems」と題された、米国仮出願第62/722,440号の優先権を主張する。
【0002】
(分野)
本開示は、質量分析法に関し、より具体的には、イオンを伝送するために多極イオンガイドを利用する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
質量分析法(MS)は、定量的および定質的用途の両方を伴う試験基質の基本組成を決定するための解析技法である。例えば、MSは、未知の化合物を同定するために、分子中の元素の同位体組成を決定するために、およびその断片化を観察することによって特定の化合物の構造を決定するために、ならびにサンプル中の特定の化合物の量を定量化するために、使用されることができる。
【0004】
質量分析法では、サンプル分子は、概して、イオン源を使用してイオンに変換され、次いで、1つ以上の質量分析器によって分離および検出される。大部分の大気圧イオン源に関して、イオンは、真空チャンバ内に配置されるイオンガイドへの入射に先立って、入口オリフィスを通過する。従来の質量分析法システムでは、イオンガイドに印加される無線周波数(RF)信号は、質量分析器が配置される後続のより低い圧力の真空チャンバの中にイオンが移送されるとき、イオンガイドの中心軸に沿った衝突冷却および半径方向集束を提供する。
【0005】
大気圧におけるイオン化(例えば、化学イオン化、エレクトロスプレーによって)は、概して、サンプル中の分子をイオン化する高効率手段である。イオンの大気イオン化は、着目検体のみならず、干渉/汚染イオンおよび中性分子も大量に生成し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要約)
本開示は、イオンをイオン源から質量分析計の下流構成要素に伝送するための向上されたイオンガイドの必要性が存在するという認識を包含する。本開示は、質量分析法システムの大部分のイオン光学系(例えば、レンズ)が、それを通したその伝送の間、イオンの集束ずれに起因して、イオン堆積を被るため、したがって、実質的汚染(例えば、感度の損失)に続いて、有意に異なる挙動を呈し得ることを認識する。汚損した表面を定期的に清掃し、感度を維持することが、有益であり得る。フロントエンド構成要素(例えば、カーテンプレート、オリフィスプレート、フロントエンドイオンガイド等)の表面は、清掃が比較的に容易であり得るが、下流高真空チャンバ(例えば、Q0、Q1、IQ1)内に含有される、構成要素の汚損は、真空チャンバが、清掃に先立って、通気され、実質的に分解されなければならないため、時間および/または費用をもたらし得る。質量分析法システムの構成要素の汚染を制御するための方法およびシステムが、本明細書に提供される。いくつかの側面では、そのような方法およびシステムは、イオン源の安定性を維持しながら、および/またはそれによってイオンを持続的に生産しながら、動作可能であって、特に有用である。質量分析法システム内に格納される敏感な構成要素の中へのイオンの伝送を低減させることによって、本開示のシステムは、スループットの増加、ロバスト性の改良、および/または汚損した構成要素を通気/分解/清掃するために典型的に要求される、休止時間の短縮を呈する。
【0007】
とりわけ、本開示は、イオンガイドとともに使用される補助電極アセンブリを含む、本明細書に開示されるような質量分析法システムが、そのようなシステムの下流汚染を低減させ得るという認識を包含する。いくつかの実施形態では、本開示は、そのようなイオンガイドおよび補助電極アセンブリのための幾何学形状およびバイアスアプローチを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、そのようなアセンブリを作製および使用する方法を提供する。本開示の補助電極アセンブリの実装は、例えば、複雑な高分子量生物製剤をサンプリングするときを含む、質量分析法システムにおいて有用である。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、イオン源と、イオンガイドとを含む、質量分析法システムを提供する。イオン源は、イオンを発生させ、イオン源の下流に位置付けられる、イオンガイドは、発生させられるイオンを受容し、選択し、送流し、および/または質量分析法システム内でイオン源およびイオンガイドから下流に位置付けられる質量分析器に伝送するために構成されることができる。いくつかの実施形態では、イオンガイドは、入口オリフィスと、少なくとも1つの出口オリフィスとを有する、チャンバ内に配置される。イオンガイドチャンバの入口オリフィスは、イオン源によって発生させられたイオンを受け取る。いくつかの実施形態では、イオンガイドチャンバは、約1mTorr~約30mTorrの範囲内の圧力に維持される、または維持されることができる。いくつかの実施形態では、イオンガイドチャンバは、圧力×四重極ロッド長が2.25×10-2Torr-cmを上回るような圧力に維持される、または維持されることができる。いくつかの実施形態では、イオンガイドチャンバの少なくとも1つの出口オリフィスは、イオン源から受容されるイオンの一部を少なくとも1つの質量分析器を格納している真空チャンバの中に伝送する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つの質量分析器を格納し得る、真空チャンバを含む、質量分析法システムを提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの質量分析器を格納する、真空チャンバは、イオンガイドチャンバから下流に位置付けられ、そこに流動的に接続されることができる。質量分析器真空チャンバは、低圧に維持される、または維持されることができる。例えば、質量分析器を格納する、真空チャンバは、それが接続される、イオンガイドチャンバを下回る圧力に維持されることができ、例えば、質量分析器真空チャンバの低圧は、約5×10-5Torr等の約1×10-4Torr未満である。質量分析器は、例えば、三重四重極、線形イオントラップ、四重極飛行時間、オービトラップ、または他のフーリエ変換質量分析法システム等を含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、イオンガイドは、多極イオンガイドである。多極イオンガイドは、イオンガイドチャンバ内に配置される、または配置されることができる。いくつかの実施形態では、多極イオンガイドは、入口オリフィスに隣接して配置されるイオンガイドチャンバの近位端から少なくとも1つの出口オリフィスに隣接して配置されるイオンガイドチャンバの遠位端まで延びている四重極ロッドセットを含むことができる。四重極ロッドセットは、第1の対のロッドと、第2の対のロッドとを含むことができる。四重極ロッドセットの各ロッドは、イオンガイドチャンバの中心縦軸から間隔を置かれ、それと並んで延びていることができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、イオンガイドチャンバは、補助電極アセンブリを含むことができる。いくつかの実施形態では、補助電極アセンブリは、複数の補助電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の補助電極のうちの補助電極は、イオンガイドチャンバの中心縦軸から間隔を置かれ、それと並んで延びている。いくつかの実施形態では、補助電極は、第1および第2の対の補助電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1および第2の対の補助電極は、イオンガイドチャンバの中心縦軸に関連して配置される。実施例として、第1の対の補助電極は、中心縦軸の周囲に互いに半径方向に反対側に配置されることができる。別の実施例では、第1の対の補助電極の補助電極は、第2の対の補助電極と半径方向に反対側に配置されることができる。すなわち、第1の対の補助電極は両方とも、中心縦軸に対して互いに半径方向に隣接して配置される。
【0012】
いくつかの実施形態では、補助電極アセンブリは、四重極ロッドセットのロッド間に位置付けられる、少なくとも1つの補助電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の補助電極は、イオンガイドチャンバ内に配置される、第1および第2の対の四重極ロッドセットのロッドの少なくとも一部から間隔を置かれ、それと並んで延びている。例えば、複数の補助電極のうちの補助電極は、四重極ロッドセットのロッド間に挿入されることができる。いくつかの実施形態では、1つの補助電極は、四重極ロッドセットの第1の対の四重極ロッドからの四重極ロッドおよび四重極ロッドセットの第2の対の四重極ロッドからの四重極ロッドに隣接して位置付けられる。いくつかの実施形態では、1つの四重極ロッドは、第1および第2の対の補助電極のそれぞれからの補助電極に隣接して位置付けられる。
【0013】
複数の補助電極のうちの補助電極は、厚さ、例えば、約0.1mm~約50mmの厚さ範囲によって特徴付けられることができる。補助電極はまた、その長さによって特徴付けられることができる。例えば、補助電極は、四重極ロッドの四重極ロッドの長さの少なくとも一部に沿って延びていることができる。補助電極はまた、四重極ロッドセットの四重極ロッドの長さに沿って完全に延び得る。いくつかの実施形態では、各補助電極の長さは、四重極ロッドセットの四重極ロッドの長さ未満である。例えば、補助電極は、四重極ロッドセットの四重極ロッドの長さの半分未満(例えば、33%未満、10%未満)の長さを有することができる。いくつかの実施形態では、補助電極は、四重極ロッドセットの四重極ロッドの長さに沿って、種々の場所(例えば、四重極ロッドセットの近位3分の1、中央3分の1、または遠位3分の1のうちの1つ以上のもの内)に位置付けられることができる。補助電極は、種々の構成を有することができる。いくつかの実施形態では、補助電極は、丸みを帯びた形状またはT形状構成を有することができる。T形状補助電極は、その全長に沿って、一定T形状断面積を有することができる。いくつかの実施形態では、複数の補助電極はさらに、約5mm~約20mmの長さを有する複数の導電性ステムを含む。いくつかの実施形態では、補助電極ステムは、四重極ロッドセットの対のロッドに並んで延び、イオンガイドの中心軸を中心として半径方向に配置されることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、補助電極アセンブリはさらに、各補助電極が他のものに電気的に結合されるように構成され得る、導電性カラーを含むことができる。いくつかの実施形態では、補助電極アセンブリは、相互から電気的に隔離される、補助電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、補助電極は、対内で電気的に結合される。いくつかの実施形態では、結合される対の補助電極は、相互から隔離される。例えば、第1および第2の対の補助電極は、第1の対の補助電極が電気的に結合されるように構成され、第2の対の補助電極は、電気的に結合され、第1および第2の対は、相互から電気的に隔離される。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるような質量分析法システムは、多極イオンガイドに結合される、少なくとも1つの電力供給源を含むことができる。少なくとも1つの電力供給源は、四重極ロッドセットのロッドと電気連通し、電力をロッドに印加するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電力供給源は、第1のRF電圧を第1の対の四重極ロッドに、第2のRF電圧を第2の対の四重極ロッドに印加するように構成される、1つ以上のRF源を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1のRF電圧は、第1の周波数および第1の位相で、第1の対の四重極ロッドに印加され、第2のRF電圧は、第1の周波数に等しい第2の周波数および第1の位相と反対の第2の位相で、第2の対の四重極ロッドに印加される。いくつかの実施形態では、電力供給源は、DCオフセット電圧を四重極ロッドセットに印加するように動作可能である少なくとも1つのDC電圧源を含むことができる。いくつかの実施形態では、DCオフセット電圧は、第1および第2の対の四重極ロッドセットの四重極ロッドに印加される、第1および第2のDC電圧を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1および第2の印加されるDC電圧は、実質的に同一振幅を有する。いくつかの実施形態では、電力供給源は、補完的電気信号を四重極ロッドセットの少なくとも1つの四重極ロッドに提供するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、補完的電気信号は、DC電圧および/またはAC励起信号のうちの1つである。例えば、電力供給源は、イオンビーム内のイオンの一部と共または略共振する、補完的AC場を使用して、双極DC場、四重極DC場、または共振励起を発生させるように、補完的電気信号を四重極ロッドセットに提供するように動作可能であることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電力供給源は、補助電極と電気連通し、電力をイオンガイドチャンバ内に配置される補助電極に印加するように構成されることができる。例えば、電力供給源は、第1の電気信号を第1の対の補助電極の各補助電極に、第2の補助電気信号を第2の対の補助電極の各補助電極に提供するように動作可能であることができる。いくつかの実施形態では、第1および第2の信号は、実質的に同一である。いくつかの実施形態では、第1および第2の信号は、異なる。例えば、第1および第2の補助電極のセットに印加される第1および第2の補助信号は、DC電圧を第1の対の補助電極に印加するように構成される、第1のDC電圧源と、DC電圧を第2の対の補助電極に印加するように構成される、第2のDC電圧源とを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1および第2の補助電極に印加される第1および第2のDC電圧は、四重極ロッドセットのロッドに印加されるDCオフセット電圧と異なる振幅を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電力供給源は、第1のDC電圧を第1の対の補助電極に、第2のDC電圧を第2の対の補助電極に提供するように動作可能であることができ、第1および第2のDC電圧は、同一振幅を有し、反対符号を有する。いくつかの実施形態では、第1および第2のDC電圧は、同一振幅および同一符号を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、印加される補助DC電圧は、約±1V~約±200Vの範囲内の振幅を有することができる。いくつかの実施形態では、RF電圧は、約50V~約1000Vの範囲内の振幅を有することができる。いくつかの実施形態では、RF電圧は、約0.3MHz~約2.5MHzの範囲内の周波数を有することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるような質量分析法システムは、多極イオンガイドに結合される、少なくとも1つのコントローラを含むことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコントローラは、少なくとも1つの電力供給源と通信する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコントローラは、多極イオンガイドの四重極ロッドセットと通信する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコントローラは、多極イオンガイドの複数の補助電極と通信する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコントローラは、四重極ロッドセットおよび/または複数の補助電極に印加される電力を調節、制御、または調整するように構成されることができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコントローラは、複数の補助電極に印加される電力を調節、制御、または調整するように構成されることができる。例えば、少なくとも1つのコントローラは、多極イオンガイドに入射するイオンが、下流質量分析法システム構成要素に到達する前に、イオンビームから減衰、カットオフ、フィルタ処理、または除去されるように、第1および第2の対の補助電極に印加される電力を調節する、制御、または調整するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、補助電極に印加される、DC電圧および/またはRF電圧を調節、制御、または調整するように構成されることができる。例えば、コントローラは、これらの電圧が、四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なるように、第1および第2の補助電極に印加されるDC電圧を制御するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、第1および第2の印加される補助DC電圧を実質的に同一振幅または大きさもしくは異なる振幅または大きさに維持するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、第1および第2の印加される補助DC電圧を実質的に同一振幅または大きさであるが反対符号に維持するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、多極イオンガイドから伝送される、イオンの少なくとも一部を減衰、カットオフ、および/またはフィルタ処理するように、四重極ロッドセットの少なくとも1つのロッドに印加されるDCオフセット電圧に対して補助電極に印加される第1および第2の補助DC電圧を調節、制御、または調整するように構成されることができる。イオンガイドの下流のイオン伝送は、コントローラが、四重極ロッドセットの少なくとも1つのロッドに印加されるDCオフセット電圧に対して補助電極に印加される第1および第2の補助DC電圧を調節するとき、減衰、カットオフ、および/またはフィルタ処理されることができる。いくつかの実施形態では、イオンカットオフは、イオンm/zに従って生じるように構成されることができる。例えば、コントローラは、高m/zイオンカットオフが、達成され、それによって、カットオフが、これらの高m/zイオンへの下流光学系の暴露を限定または実質的に防止し得るように、四重極ロッドセットのロッドに印加されるDCオフセット電圧に対して補助電極に印加される第1および第2の補助DC電圧を調節するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、イオン源から受容されるイオンの15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、または0%を伝送するように多極イオンガイドを構成することによって、第1および第2の補助電圧を調節、制御、または調整するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、高m/zイオンカットオフは、約400~2,000amuにあることができる。
【0020】
いくつかの側面では、本開示はさらに、イオン源によって発生させられたイオンをイオンガイドチャンバの入口オリフィスを通して受け取るステップと、選択されたイオンが下流質量分析器に到達するように、イオンガイドチャンバ内に配置された多極イオンガイドを通して、イオンを選択、送流、および/または伝送するステップとを含み得る、イオンを処理する方法を提供する。いくつかの実施形態では、イオンを選択、送流、および/または伝送する方法は、本明細書に開示される種々の実施形態による、多極イオンガイドを提供するステップを含む。いくつかの実施形態では、多極イオンガイドを通して、イオンを選択する、送流、および/または伝送する方法は、電力を四重極ロッドセットに印加するステップおよび/または電力を補助電極アセンブリに印加するステップを含むことができる。例えば、方法は、第1の周波数および第1の位相で、第1のRF電圧を第1の対の四重極ロッドセットのロッドに印加するステップと、第2の周波数において、第2のRF電圧を第2の対の四重極ロッドセットのロッドに印加するステップとを含むことができる。第1の周波数は、第2の周波数と同一または異なることができる。第1および第2の位相は、互いに同一または反対であることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法は、電力を補助電極アセンブリの補助電極に印加するステップを含むことができる。例えば、方法は、DC電圧を第1および第2の補助電極に印加するステップを含むことができる。DC電圧を第1および第2の補助電極に印加するステップは、第1のDC電圧を第1の補助電極に、第2のDC電圧を第2の補助電極に印加するステップを含むことができ、第1および第2の電圧は、同一または異なる振幅、周波数、および/または位相を含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は、四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なるように、第1および第2のDC電圧を印加するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、本開示は、多極イオンガイドから伝送されるイオンを減衰、フィルタ処理、および/またはそのカットオフを発生させるために、四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧に対して第1および第2の補助電極に印加される第1および第2の補助DC電圧を調節、制御、および/または調整する方法を提供する。いくつかの実施形態では、イオンのカットオフは、そのm/zに従う。いくつかの実施形態では、イオンカットオフは、高質量イオンのカットオフであることができる。例えば、方法は、高m/zイオンカットオフが発生させられるように、DCオフセットに対して誘引性であるように第1および第2の補助電極を調節、制御、および/または調整するステップを含むことができる。
【0022】
実施例として、方法は、四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧に対して第1および第2の補助電極に印加される第1および第2の補助DC電圧を調節、制御、および/または調整するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1および第2の補助電極に印加されるDC電圧は、多極イオンガイドから伝送されるイオンを減衰(すなわち、イオン電流を低減させる)、フィルタ処理、および/またはそのカットオフを発生させる(すなわち、多極イオンガイドから伝送されるイオンのm/z範囲を調節する)ために、同一振幅であるが、反対符号を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法はさらに、四重極ロッドセットの第1の対のロッドに印加されるRF電圧および/または四重極ロッドセットの第2の対のロッドに印加されるRF電圧を調節、制御、および/または調整することによって、多極イオンガイドによって受容されるイオンの伝送を調節、減衰、フィルタ処理、および/または防止するステップを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、補完的電気信号を四重極ロッドセットの少なくとも1つのロッドに印加するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、補完的電気信号は、DC電圧および/またはAC励起信号のうちの1つであって、イオンビーム内の少なくとも一部のイオンと共振または略共振する、補完的AC場を使用して、双極DC場、四重極DC場、または共振励起を発生させるために有効であり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、イオンガイドチャンバを約1mTorr~約30mTorrの範囲内の圧力に維持するステップを含むことができる。例えば、方法は、圧力×四重極ロッドの長さが2.25×10-2Torr-cmを上回るように、イオンガイドチャンバを圧力に維持するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は、イオンガイドチャンバ圧力を下流真空チャンバのものより高く、例えば、約1×10-4Torr、約5×10-5、またはそれ未満に維持するステップを含むことができる。
【0025】
本開示の前述および他の利点、側面、実施形態、特徴、ならびに目的は、付随の図面に関連して熟読されるとき、以下の発明を実施するための形態を参照することによって、より明白となり、より深く理解されるであろう。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
質量分析法システムであって、前記質量分析法システムは、
イオンを発生させるためのイオン源と、
前記イオンを受け取るために前記イオン源の下流に位置付けられたイオンガイドチャンバと
を備え、
前記イオンガイドチャンバは、
前記イオン源によって発生させられたイオンを受け取るための入口オリフィスと、
イオンを前記イオンガイドチャンバから少なくとも1つの質量分析器を格納している真空チャンバの中に伝送するための少なくとも1つの出口オリフィスと、
前記イオンガイドチャンバ内に配置された多極イオンガイドと
を備え、
前記多極イオンガイドは、
前記入口オリフィスに隣接して配置された近位端から前記少なくとも1つの出口オリフィスに隣接して配置された遠位端まで延びている四重極ロッドセットであって、前記四重極ロッドセットは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドを備え、各ロッドは、中心縦軸から間隔を置かれ、それと並んで延びている、四重極ロッドセットと、
前記四重極ロッドセットの少なくとも一部に沿って、前記中心縦軸から間隔を置かれ、それと並んで延びている複数の補助電極であって、前記複数の補助電極のうちの少なくとも1つの補助電極は、前記四重極ロッドセットのロッドの各々間に挿入されており、それによって、前記補助電極の各々は、前記第1の対のロッドのうちの単一のロッドおよび前記第2の対のロッドのうちの単一のロッドに隣接している、複数の補助電極と、
前記多極イオンガイドに結合された少なくとも1つの電力供給源と
を備え、
前記少なくとも1つの電力供給源は、
i)第1の周波数および第1の位相で前記第1の対のロッドに印加される第1のRF電圧と、
ii)前記第1の周波数に等しい第2の周波数および前記第1の位相と反対の第2の位相で前記第2の対のロッドに印加される第2のRF電圧と、
iii)前記補助電極に印加される複数の補助電気信号と
を提供するように動作可能であり、
前記複数の補助電気信号は、
a)前記補助電極のうちの第1の対に印加される第1のDC電圧と、
b)前記補助電極のうちの第2の対に印加される第2のDC電圧と
を含み、
前記第1および第2の印加されるDC電圧は、反対符号を有する、質量分析法システム。
(項目2)
前記第1および第2の印加されるDC電圧は、実質的に同一振幅を有する、項目1に記載の質量分析法システム。
(項目3)
前記第1および第2の対の前記補助電極の各々は、前記中心縦軸に関連して互いに半径方向に反対側に配置された2つの電極を備えている、項目1に記載の質量分析法システム。
(項目4)
前記第1および第2の対の前記補助電極は、各対の各補助電極が他方の対の2つの補助電極に隣接して位置付けられているように配置されている、項目3に記載の質量分析法システム。
(項目5)
前記イオンガイドチャンバは、約1mTorr~約30mTorrの範囲内の圧力に維持されている、項目1に記載の質量分析法システム。
(項目6)
前記少なくとも1つの電力供給源は、
前記第1のRF電圧を前記第1の対のロッドに印加し、前記第2のRF電圧を前記第2の対の前記ロッドに印加するように動作可能である少なくとも1つのRF電圧源と、
DCオフセット電圧を前記四重極ロッドセットのうちの少なくとも1つに印加するように動作可能である少なくとも1つのDC電圧源と、
DC電圧を前記第1の対の補助電極に印加するように動作可能である第1の補助DC電圧源と、
DC電圧を前記第2の対の補助電極に印加するように動作可能である第2の補助DC電圧源と
を備えている、項目1に記載の質量分析法システム。
(項目7)
前記第1および第2の印加される補助DC電圧の大きさは、前記DCオフセット電圧と異なる、項目1に記載の質量分析法システム。
(項目8)
少なくとも1つのコントローラをさらに備えている、項目1に記載の質量分析法システム。
(項目9)
前記少なくとも1つのコントローラは、前記補助電極への前記第1および第2の印加される補助DC電圧を調節するように構成されることができる、項目8に記載の質量分析法システム。
(項目10)
前記少なくとも1つのコントローラは、前記多極イオンガイドから伝送されるイオンを減衰させるように、前記四重極ロッドセットのうちの少なくとも1つに印加されるDCオフセット電圧に対して、前記補助電極に印加される前記第1および第2の補助DC電圧を調節するように構成されることができる、項目9に記載の質量分析法システム。
(項目11)
前記少なくとも1つのコントローラは、前記多極イオンガイドから伝送されるイオンをフィルタ処理および/またはイオンをカットオフするように、前記四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧に対して、第1および第2の印加される補助DC電圧を調節するように構成されることができる、項目9に記載の質量分析法システム。
(項目12)
前記複数の補助電極のうちの補助電極は、長さによって特徴付けられ、前記補助電極の長さの各々は、前記四重極ロッドセットの前記対のロッドの長さより小さい、項目1に記載の質量分析法システム。
(項目13)
前記イオン源は、イオンを複数のイオン強度で発生させるように構成されることができる、項目11に記載の質量分析法システム。
(項目14)
前記補助DC電圧は、約±1V~約±200Vの範囲内の大きさを有する、項目1に記載の質量分析法システム。
(項目15)
前記第1および第2のRF電圧の各々は、約50V~約1000Vの範囲内の振幅と、約0.3MHz~約2.5MHzの範囲内の周波数とを有する、項目1に記載の質量分析法システム。
(項目16)
質量分析法システムであって、前記質量分析法システムは、
イオンを発生させるためのイオン源と、
イオンガイドチャンバと
を備え、
前記イオンガイドチャンバは、
前記イオン源によって発生させられたイオンを受け取るための入口オリフィスと、
イオンを前記イオンガイドチャンバから少なくとも1つの質量分析器を格納している真空チャンバの中に伝送するための少なくとも1つの出口オリフィスと、
前記イオンガイドチャンバ内に配置された多極イオンガイドと
を備え、
前記多極イオンガイドは、
前記入口オリフィスに隣接して配置された近位端から前記少なくとも1つの出口オリフィスに隣接して配置された遠位端まで延びている四重極ロッドセットであって、前記四重極ロッドセットは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドを備え、各ロッドは、中心縦軸から間隔を置かれ、それと並んで延びている、四重極ロッドセットと、
前記中心縦軸の少なくとも一部に沿って、それから半径方向に間隔を置かれ、それと並んで延びている複数の補助電極を備えている補助電極アセンブリであって、前記複数の補助電極は、約5mm~約20mmの長さを有する複数の導電性ステムを備え、前記複数の導電性ステムは、前記四重極ロッドセットのロッド間に挿入され、延びており、それによって、前記補助電極の各ステムは、前記第1の対のロッドのうちの単一のロッドおよび前記第2の対のロッドのうちの単一のロッドに隣接している、複数の補助電極と、
前記多極イオンガイドに結合された少なくとも1つの電力供給源と
を備え、
前記少なくとも1つの電力供給源は、
i)第1の周波数および第1の位相における前記第1の対のロッドへの第1のRF電圧と、
ii)前記第1の周波数に等しい第2の周波数および前記第1の位相と反対の第2の位相における前記第2の対のロッドへの第2のRF電圧と、
iii)前記補助電極アセンブリに印加される補助電気信号と
を提供するように動作可能である、質量分析法システム。
(項目17)
前記補助電極アセンブリは、約0.1mm~約50mmの範囲内の厚さを有する、項目16に記載の質量分析法システム。
(項目18)
イオンを処理する方法であって、前記方法は、
イオン源によって発生させられたイオンをイオンガイドチャンバの入口オリフィスを通して受け取るステップと、
イオンを前記イオンガイドチャンバ内に配置された多極イオンガイドを通して伝送するステップであって、前記多極イオンガイドは、
前記入口オリフィスに隣接して配置された近位端から少なくとも1つの出口オリフィスに隣接して配置された遠位端まで延びている四重極ロッドセットであって、前記四重極ロッドセットは、第1の対のロッドおよび第2の対のロッドを備え、前記ロッドの各々は、中心縦軸から間隔を置かれ、それと並んで延びている、四重極ロッドセットと、
前記四重極ロッドセットの少なくとも一部に沿って、前記中心縦軸から間隔を置かれ、それと並んで延びている複数の補助電極であって、前記複数の補助電極のうちの少なくとも1つの補助電極は、前記四重極ロッドセットのロッドの各々間に挿入されており、それによって、前記補助電極の各々は、前記第1の対のロッドのうちの単一のロッドおよび前記第2の対のロッドのうちの単一のロッドに隣接している、複数の補助電極と、
前記多極イオンガイドに結合された少なくとも1つの電力供給源と
を備えている、ステップと、
第1の周波数および第1の位相で第1のRF電圧を前記第1の対のロッドに印加するステップと、
前記第1の周波数に等しい第2の周波数および前記第1の位相と反対の第2の位相で第2のRF電圧を前記第2の対に印加するステップと、
第1の補助DC電圧を前記補助電極のうちの第1の対に印加するステップと、
第2の補助DC電圧を前記補助電極のうちの第2の対に印加するステップであって、前記第2の補助DC電圧は、前記第1のDC電圧に対して同一電圧および反対符号を有する、ステップと、
イオンを前記イオンガイドチャンバから前記少なくとも1つの出口オリフィスを通して少なくとも1つの質量分析器を格納している真空チャンバの中に伝送するステップと
を含む、方法。
(項目19)
前記第1の補助DC電圧を印加するステップおよび前記第2の補助DC電圧を印加するステップは、前記四重極ロッドセットが維持されるDCオフセット電圧と異なる振幅を有する、DC電圧を印加するステップを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記多極イオンガイドから伝送されるイオンのm/zカットオフを発生させるように、前記補助電極に提供される前記第1および第2の補助DC電圧を調節するステップをさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記多極イオンガイドは、前記イオン源がイオンを2つ以上のイオン強度で発生させるとき、前記第1および第2の印加される補助DC電圧の実質的に同一振幅がカットオフを発生させるように特性付けられ、前記カットオフは、前記2つ以上のイオン強度の各イオン強度におけるそれらのm/zに従って選択されたイオンの前記多極イオンガイドからの伝送を限定する、項目18に記載の方法。
【0026】
当業者は、下記に説明される図面が例証目的のためだけのものであることを理解するであろう。図面の図は、本出願人の教示の範囲をいかようにも限定することを意図するものではない。一般的実践に従って、図面の種々の特徴は、正確な縮尺で描かれていないことが強調される。対照的に、種々の特徴の寸法は、明確にするために、恣意的に拡大または縮小されているか、またはそのようなこともある。以下の図が、図面内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、概略図において、本出願者の教示の種々の実施形態の一側面による、補助電極を有する多極イオンガイドを含み得る質量分析法システムを図示する。
【0028】
【
図2】
図2は、概略図において、
図1の質量分析法システムにおいて使用するための本教示の種々の側面による、例示的多極イオンガイドの断面図を描写する。
【0029】
【
図3】
図3は、
図2の多極イオンガイドの一部の例示的プロトタイプを描写する。
【0030】
【
図4A】
図4Aは、本教示の種々の側面による、質量分析法システムによって処理された322Daのm/zを有するイオンに関する例示的データを描写する。
【0031】
【
図4B】
図4Bは、本教示の種々の側面による、質量分析法システムによって処理された622Daのm/zを有するイオンに関する例示的データを描写する。
【0032】
【
図4C】
図4Cは、本教示の種々の側面による、質量分析法システムによって処理された922Daのm/zを有するイオンに関する例示的データを描写する。
【0033】
【
図5】
図5A-Cは、本教示の種々の側面による、イオンを処理するための質量分析法システムによって発生させられる例示的質量スペクトルを描写する。
【0034】
【
図6】
図6A-Dは、本教示の種々の側面による、イオンを処理するための質量分析法システムによって発生させられる例示的質量スペクトルを描写する。
【0035】
【
図7】
図7A-Cは、本教示の種々の側面による、イオンを処理するための質量分析法システムによって発生させられる例示的質量スペクトルを描写する。
【0036】
【
図8-1】
図8A-Fは、本教示の種々の側面による、イオンを処理するための質量分析法システムによって発生させられる例示的質量スペクトルを描写する。
【
図8-2】
図8A-Fは、本教示の種々の側面による、イオンを処理するための質量分析法システムによって発生させられる例示的質量スペクトルを描写する。
【
図8-3】
図8A-Fは、本教示の種々の側面による、イオンを処理するための質量分析法システムによって発生させられる例示的質量スペクトルを描写する。
【0037】
【
図9】
図9は、概略図において、
図1の質量分析法システムにおいて使用するための本教示の種々の側面による、例示的多極イオンガイドの断面図を描写する。
【0038】
【
図10】
図10は、概略図において、RF/DCフィルタが誘引性にバイアスされるときに生じる、誘引性電位井戸を描写する。
【0039】
【
図11】
図11は、概略図において、RF/DCフィルタが反発性にバイアスされるときに生じる、反発性軸方向障壁を描写する。
【0040】
【
図12】
図12は、2つの異なるイオンビーム強度を用いて取得されるm/z564の抽出されたイオンクロマトグラフに関する例示的データを描写する。
【0041】
【0042】
【
図14】
図14は、概略図において、
図1の質量分析法システムにおいて使用するための本教示の種々の側面による、別の例示的多極イオンガイドの断面図を描写する。
【0043】
【
図15】
図15は、概略図において、
図1の質量分析法システムにおいて使用するための本教示の種々の側面による、別の例示的多極イオンガイドの断面図を描写する。
【0044】
【
図16】
図16は、
図14に従ってバイアスされるRF/DCフィルタに印加されるDC電圧に関する例示的データを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(定義)
本開示の側面に関連する種々の用語は、明細書および請求項全体を通して使用される。本開示がより容易に理解されるために、ある用語が、最初に、下記に定義される。以下の用語および他の用語に関する付加的定義は、明細書全体を通して記載される。
【0046】
本明細書で使用されるように、用語「約」、「およそ」、および「実質的に」は、例えば、実世界における測定または取扱手順を通して、これらの手順における不注意による誤差を通して、電気要素の製造における差異/瑕疵を通して、電気損失を通して生じ得る、数値量における変動だけではなく、そのような変動が先行技術によって実践される既知の値を包含しない限り、均等物であるとして当業者によって認識されるであろう変動を指す。用語「約」、「およそ」、または「実質的に」によって修飾されるかどうかにかかわらず、請求項に列挙される定量値は、列挙される値の均等物、例えば、生じ得るが、当業者によって均等物であると認識されるであろう、そのような値の数値量における変動を含む。
【0047】
本明細書で使用されるように、文脈から別様に明白ではない限り、用語「a」は、「少なくとも1つ」を意味するものと理解され得る。本願において使用されるように、用語「または」は、「および/または」を意味するものと理解され得る。本願では、用語「comprising(~を備えている)」および「including(~を含む)」は、それ自体によって、もしくは1つ以上の付加的構成要素またはステップとともに提示されるかどうかにかかわらず、箇条書きされた構成要素またはステップを包含するものと理解され得る。別用に述べられない限り、用語「約」および「およそ」は、当業者によって理解されるであろうような標準的変動を許容するものと理解され得る。範囲が、本明細書に提供される場合、終点は、含まれる。本願において使用されるように、用語「comprise(~を備えている)」ならびに「comprising(~を備えている)」および「comprises(~を備えている)」等の用語の変形例は、他の追加、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図するものではない。
【0048】
本明細書で使用されるように、用語「約」および「およそ」は、均等物として使用される。本願において使用される任意の数字は、約/およその有無にかかわらず、関連技術における当業者によって理解される任意の通常変動を網羅するものと意味される。ある実施形態では、用語「約」または「およそ」は、別様に述べられない限り、または文脈から別様に明白ではない限り、述べられた参照値のいずれか方向における(それを上回る、またはそれ未満である)、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満内に該当する、値の範囲を指す(そのような数が可能な値の100%を超えるであろう場合を除く)。例えば、用語「約」が、述べられた値または値の範囲を述べられた値の1/10を上回る、またはそれ未満である、例えば、±10%であることを意味する場合、約+3VDCの電圧を要素に印加するステップは、+2.7VDC~+3.3VDCの電圧を意味し得る。
【0049】
本明細書で使用されるように、用語「実質的に」は、着目特性または性質の全もしくはほぼ全範囲または程度を呈する、定質的条件を指す。当業者は、電気性質が、仮にあるとしても、完了に近づく、および/または完全まで進む、もしくは絶対結果を達成または回避することが稀であることを理解するであろう。「実質的に」は、したがって、本明細書では、その中に固有の完全性の潜在的欠如を捉えるために使用される。値は、いずれかの方向において(それを上回って、またはそれ未満において)、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満内の値の範囲内で異なり得る。例えば、値は、5%異なり得る。
【0050】
(詳細な説明)
明確にするために、以下の議論は、そうすることが便宜的または適切である場合、ある具体的詳細を省略しながら、本出願者の教示の実施形態の種々の側面を詳説するであろうことを理解されたい。例えば、代替実施形態における同様または類似特徴の議論は、若干、簡略化され得る。周知の考えまたは概念もまた、簡潔にするために、さらに詳細に論じられない場合がある。当業者は、本出願者の教示のいくつかの実施形態が、実施形態の完全な理解を提供するためだけに本明細書に記載される、具体的に説明される詳細のあるものを全ての実装において要求しない場合もあることを認識するであろう。同様に、説明される実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、一般的常識に従って、代替または変形例を受け入れる余地があり得ることが明白となるであろう。以下の発明を実施するための形態は、本出願者の教示の範囲をいかようにも限定するものと見なされないものとする。
【0051】
大気圧におけるイオン化(例えば、化学イオン化、エレクトロスプレーによって)は、概して、サンプル中の分子をイオン化する高効率手段であるため、着目検体のイオンだけではなく、干渉/汚染イオンおよび中性分子も、大量に生成され得る。本開示は、イオンガイドに入射する着目イオンの数を増加させるために、イオン源とイオンガイドとの間の入口オリフィスのサイズを増加させる(それによって、潜在的に、MS器具の感度を増加させる)ことが望ましくあり得るが、そのような構成も同様に、より多くの望ましくない分子が、下流真空チャンバと、潜在的に、着目イオンの軌道が電場によって精密に制御される、高真空チャンバの内側に位置する、下流の質量分析器段とに入射することを可能にし得るという認識を包含する。望ましくないイオンおよび中性分子の伝送は、これらの下流の要素を汚損/汚染し得、それによって、質量分析解析に干渉する、および/または高真空チャンバ内の重要な構成要素の清掃によって必要となるコストの増加もしくはスループットの低下につながる。今日の大気圧イオン化源を用いて分析されている、より大量のサンプル装填量および生物学的ベースのサンプルの汚染性質のため、清潔な質量分析器を維持することは、重要な懸念のままである。
【0052】
下記にさらに詳細に議論されるように、いくつかの実施形態では、多極イオンガイドロッドのセット、例えば、四重極ロッドセットと、四重極ロッドセットのロッド間に散在され得る、複数の補助電極とを含み得る、質量分析法システムにおいて使用するための多極イオンガイドが、開示される。いくつかのそのような実施形態では、2つの対の補助電極が、四重極ロッドセットの対のロッド間に配置される。対の補助電極および四重極ロッドへのDC電圧の印加の様々な設計および配置は、ある利点を提供し得ることが発見されている。例えば、第1の対の補助電極に印加される第1のDC電圧は、第1の大きさ、周波数、および位相を有することができ、第2の対の補助電極に印加される第2のDC電圧は、第2の大きさ、周波数、および位相を有することができる。DCオフセット電圧はまた、四重極ロッドセットのロッドにも印加されることができる。第1および第2の印加されるDC電圧は、第1および第2の補助電極のそれぞれに印加される、同一大きさを有し、DC電圧が、四重極ロッドセットのロッドに印加されるDCオフセット電圧と異なるとき、イオンカットオフが、発生させられる。例えば、そのような配置は、高m/zイオンを下流イオン伝送から排除することが可能であり得る。そのような配置はまた、イオンの通過を遅延させ得、例えば、イオン信号不安定性をもたらし得る、電位障壁または電位井戸を発生させることができる。さらに、第1および第2の対の補助電極へのDC電圧が、第2の電圧の符号のものと反対の第1の電圧反対の符号で印加されるとき、不安定性は、低減または排除され、高m/zカットオフをもたらすことができる。
【0053】
本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法は、多くの異なる質量分析法システムとともに使用されることができるが、そのような使用のための例示的質量分析法システム100が、
図1に概略的に図示される。質量分析法システム100は、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法の実施形態に従う使用のための1つの可能な質量分析法システムを表すにすぎないことを理解されたい。さらに、他の構成を有する他の質量分析法システムも全て、同様に、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法に従って使用されることができる。
【0054】
図1に描写される例示的実施形態に概略的に示されるように、質量分析法システム100は、概して、James W. HagerおよびJ. C. Yves Le Blancによって共著され、Rapid Communications in Mass Spectrometry(2003;17:1056-1064)において発表された「Product ion scanning using a Q-q-Q
linear ion trap(QTRAP(R))mass spectrometer」と題された記事(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に概して説明され、本教示の種々の側面に従って修正されるようなQTRAP(登録商標)Q-q-Qハイブリッド線形イオントラップ質量分析法システムを含むことができる。本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法に従って修正され得る、他の非限定的例示的質量分析法システムは、例えば、「Collision Cell for Mass Spectrometer」と題された米国特許第7,926,681号(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に見出され得る。限定ではないが、本明細書に説明されるものおよび当業者に公知のその他を含む、他の構成もまた、本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法とともに使用されることができる。
【0055】
図1に示されるように、例示的質量分析法システム100は、イオン源102と、第1の真空チャンバ112内に格納される多極イオンガイド120(すなわち、Q0)と、第2の真空チャンバ114内に格納される1つ以上の質量分析器と、検出器116とを含むことができる。例示的第2の真空チャンバ114は、3つの質量分析器(すなわち、Q1とQ2との間のオリフィスプレートIQ2と、Q2とQ3との間のIQ3とによって分離される、細長いロッドセットQ1、Q2、およびQ3)を格納するが、より多いまたはより少ない質量分析器要素が、本教示に従って、システム内に含まれることもできることを理解されたい。便宜上、細長いロッドセットQ1、Q2、およびQ3は、概して、本明細書では、四重極(すなわち、それらは、4つのロッドを有する)と称されるが、細長いロッドセットは、任意の他の好適な多極構成、例えば、六重極、八重極等であることができる。また、1つ以上の質量分析器は、全て非限定的実施例であるが、三連四重極、線形イオントラップ、四重極飛行時間型、Orbitrap、または他のフーリエ変換質量分析法システムのいずれかであることを理解されたい。
【0056】
図1に示されるように、例示的質量分析法システム100は、加えて、特定のMS用途に応じて、種々の異なる動作モードのために、RF、AC、および/またはDC成分を伴う電位を四重極ロッド、種々のレンズ、および補助電極に印加し、質量分析法システム100の要素を構成するように、コントローラ103によって制御され得る、1つ以上の電力供給源(例えば、RF電力供給源105およびDC電力供給源107)を含むことができる。コントローラ103はまた、実行されるタイミングシーケンスの共同制御を提供するために、種々の要素に連結されることができることを理解されたい。故に、コントローラは、本明細書のその他で論じられるように、質量分析法システム100を制御するために、協働方式で種々の構成要素に給電する電源に制御信号を提供するように構成されることができる。
【0057】
Q0、Q1、Q2、およびQ3は、当技術分野において公知のように、例えば、開口レンズIQ1、IQ2、およびIQ3によって分離され、大気圧下に排気される、隣接するチャンバ内に配置されることができる。一例として、機械的ポンプ(例えば、ターボ分子ポンプ)が、真空チャンバを適切な圧力まで排気するために使用されることができる。出射レンズ115は、Q3と検出器116との間に位置付けられ、検出器116の中へのイオン流動を制御することができる。いくつかの実施形態では、短太ロッドのセットもまた、近隣の対の四重極ロッドセット間に提供され、四重極間のイオンの移送を促進することができる。短太ロッドは、Brubakerレンズとして役割を果たすことができ、例えば、レンズがオフセット電位に維持される場合、隣接するレンズの近傍に形成され得る、任意のフリンジ場との相互作用を最小限にすることに役立つことができる。非限定的実施例として、
図1は、イオンの流動をQ1の中に集束させるためのIQ1とQ1との間の短太ロッドSTを描写する。同様に、短太ロッドSTは、例えば、細長いロッドセットQ2の上流および下流にも含まれる。
【0058】
イオン源102は、イオンを発生させるための任意の公知のまたは今後開発されるイオン源であって、本教示に従って修正されることができる。本教示と併用するために好適なイオン源の非限定的実施例として、とりわけ、大気圧化学イオン化(APCI)源、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源、連続イオン源、パルスイオン源、誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)イオン源、グロー放電イオン源、電子衝突イオン源、化学イオン化源、または光イオン化イオン源が挙げられる。
【0059】
質量分析法システム100の動作の間、イオン源102によって発生させられるイオンは、オリフィスプレート104およびスキマ106(すなわち、入口オリフィス112a)内の開口を通して連続的に通過させ、狭小かつ非常に集束されたイオンビームをもたらすことによって、コヒーレントイオンビームの中に抽出されることができる。種々の実施形態では、約1Torr~約4Torrのおおよその範囲内の圧力まで排気され得るが、他の圧力も、本または他の目的のために使用され得る、中間圧力チャンバ110が、オリフィスプレート104とスキマ106との間に位置することができる。いくつかの実施形態では、イオンは、ガス動態および無線周波数場の組み合わせを使用して、イオンビームの付加的集束および微調整を提供するために、1つ以上の付加的真空チャンバおよび/または四重極(例えば、QJet(R)四重極または他のRFイオンガイド)を横断すること
ができる。
【0060】
イオン源102によって発生させられるイオンは、入口オリフィス112aを通して伝送され、本教示に従って、望ましくないイオン(例えば、干渉/汚染イオン、高質量イオン)がより低い圧力の真空チャンバ114の中に伝送されることを防止しながら、さらなる処理のために、イオン源102から受容されたイオンの一部を下流の質量分析器の中に伝送するように動作し得る、多極イオンガイド120(すなわち、Q0)に入射する。例えば、本教示の種々の側面によると、以下に詳細に論じられるように、多極イオンガイド120は、多極イオンガイド120の構成要素への種々のRFおよび/またはDC電位の印加に応じて、着目イオンが、衝突冷却され(例えば、真空チャンバ112の圧力と併せて)、さらなる処理のために、出口開口112bを通して下流の質量分析器の中に伝送される一方、望ましくないイオンが、多極イオンガイド120内で中性化され、それによって、下流の処理ステップにおける汚染および/または干渉の潜在的源を低減させ得るように、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bと、多極イオンガイド120の一部に沿って延び、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130b間に挿入される、複数の補助電極140とを含むことができる。その中に多極イオンガイド120が格納される、真空チャンバ112は、チャンバを衝突冷却を提供するために好適な圧力まで排気するように動作可能な機械的ポンプ(図示せず)と関連付けられることができる。例えば、真空チャンバは、約1mTorr~約30mTorrのおおよその範囲内の圧力まで排気されることができるが、他の圧力も、本または他の目的のために使用されることができる。例えば、いくつかの側面では、真空チャンバ112は、四重極ロッドの圧力×長さが2.25×10-2Torr-cmを上回るような圧力に維持されることができる。レンズIQ1(例えば、オリフィスプレート)が、Q0の真空チャンバと隣接するチャンバとの間に配置され、2つのチャンバ112、114を隔離することができる。
【0061】
Q0からレンズIQ1の出口開口112bを通して伝送された後、イオンは、イオンガイドチャンバ112のものより低く維持され得る圧力まで排気され得る真空チャンバ114内に位置し得る、隣接する四重極ロッドセットQ1に入射することができる。非限定的実施例として、真空チャンバ114は、約1×10-4Torr未満(例えば、約5×10-5Torr)の圧力に維持されることができるが、他の圧力も、本または他の目的のために使用されることができる。当業者によって理解されるであろうように、四重極ロッドセットQ1は、着目イオンおよび/または着目イオンの範囲を選択するように動作され得る、従来の伝送RF/DC四重極質量フィルタとして動作されることができる。一例として、四重極ロッドセットQ1は、質量分解モードで動作するための好適なRF/DC電圧が提供されることができる。理解されるはずであるように、Q1の物理および電気特性を考慮して、印加されるRFおよびDC電圧に関するパラメータが、Q1が選定されるm/z率の伝送窓を確立し、これらのイオンが概して妨害されずにQ1を横断し得るように、選択されることができる。しかしながら、窓外のm/z率を有するイオンは、四重極内で安定した軌道を達成せず、四重極ロッドセットQ1を横断しないように防止されることができる。本動作モードは、Q1に関する1つの可能な動作モードにすぎないことを理解されたい。一例として、Q1とQ2との間のレンズIQ2は、四重極ロッドセットQ1がイオントラップとして動作されるように、Q1よりはるかに高いオフセット電位に維持されることができる。そのような様式では、入射レンズIQ2に印加される電位は、Q1内にトラップされたイオンが、例えば、イオントラップとしても動作され得る、Q2の中に加速され得るように、選択的に降下される(例えば、質量選択的に走査される)ことができる。
【0062】
四重極ロッドセットQ1を通過するイオンは、示されるように、加圧されたコンパートメント内に配置され得、約1mTorr~約30mTorrのおおよその範囲内の圧力において、衝突セルとして動作するように構成され得るが、他の圧力も、本または他の目的のために使用され得る、レンズIQ2を通して隣接する四重極ロッドセットQ2の中に通過することができる。好適な衝突ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)が、ガス入口(図示せず)を用いて提供され、イオンビーム内のイオンを熱平衡化および/または断片化することができる。いくつかの実施形態では、四重極ロッドセットQ2ならびに入射および出射レンズIQ2およびIQ3への好適なRF/DC電圧の印加は、随意の質量フィルタ処理を提供することができる。
【0063】
Q2によって伝送されるイオンは、IQ3によって上流と出射レンズ115によって下流とに境界される、隣接する四重極ロッドセットQ3の中に通過することができる。当業者によって理解されるであろうように、四重極ロッドセットQ3は、Q2のものと比較して低動作圧力、例えば、約1×10-4Torr未満(例えば、約5×10-5Torr)で動作されることができるが、他の圧力も、本または他の目的のために使用されることができる。当業者によって理解されるであろうように、Q3は、いくつかの様式において、例えば、走査RF/DC四重極として、または線形イオントラップとして、動作されることができる。Q3を通した処理または伝送に続いて、イオンは、検出器116の中に出射レンズ115を通して伝送されることができる。検出器116は、次いで、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法に照らして、当業者に公知の様式において動作されることができる。当業者によって理解されるであろうように、本明細書の教示に従って修正される任意の公知の検出器が、イオンを検出するために使用されることができる。
【0064】
ここで
図2および3を参照すると、
図1の例示的多極イオンガイド120が、より詳細に描写される。最初に、
図2に関して、多極イオンガイド120は、
図1に描写される補助電極140の場所を横断する断面概略図で描写される。示され、前述のように、多極イオンガイド120は、概して、入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端から出口開口112bに隣接して配置される遠位出口端まで延びている、4つのロッド130a、130bのセットを含むことができる。ロッド130a、130bは、多極イオンガイド120の中心軸を囲繞し、それに沿って延び、それによって、それを通してイオンが伝送される、空間を画定する。当技術分野において公知のように、いくつかの実施形態では、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bの各ロッドは、中心軸の両側のロッドが、それに実質的に同じRF信号が印加される、ロッド対をともに形成するように、RF電力供給源に結合されることができる。すなわち、ロッド対130aは、第1の周波数および第1の位相における第1のRF電圧を第1の対のロッド130aに提供する、第1のRF電力供給源に結合されることができる。一方、ロッド対130bは、第2の周波数(第1の周波数と同一であり得る)であるが、第1の対のロッド130aに印加されるRF信号と位相が反対である、第2のRF電圧を提供する、第2のRF電力供給源に結合されることができる。当業者によって理解されるであろうように、DCオフセット電圧もまた、四重極ロッドセットのロッド130a、130bに印加されることができる。
【0065】
図2に示されるように、多極イオンガイド120は、加えて、同様に中心軸に沿って延びている、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130b間に挿入される複数の補助電極140を含むことができる。
図2に示されるように、各補助電極140は、四重極ロッドセットのロッド130a、130bによって別の補助電極140から分離されることができる。さらに、補助電極140の各々は、第1の対のロッド130aと第2の対のロッド130bに隣接して、かつその間に配置されることができる。以下に詳細に論じられるように、補助電極140の各々は、本明細書のその他に説明されるように、多極イオンガイド120からのイオンの伝送を制御または操作するように、補助電気信号を補助電極140に提供するために、RFおよび/またはDC電力供給源(例えば、
図1の電力供給源105および107)に結合されることができる。非限定的実施例として、一実施形態では、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bに印加されるDCオフセット電圧に等しいDC電圧が、補助電極140に印加されることができる。補助電極140に印加されるそのような同等DC電圧は、多極イオンガイドが従来のコリメート四重極イオンガイドとして機能するであろうように、多極イオンガイド120内のイオンによって被られる半径方向力に実質的に影響を及ぼさないであろうことを理解されたい。代替として、本教示の種々の側面によると、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bは、第1の周波数および第1の位相で第1の対のロッド130aに印加される第1のRF電圧と、第2の周波数であるが、第2の対のロッド130bに印加される位相と反対である、(例えば、第1のRF電圧と同一振幅(V
0-p)の)第2のRF電圧とを用いて、DCオフセット電圧に維持されるが、全て非限定的実施例であるが、i)DCオフセット電圧と異なるが、RF成分を伴わない、DC電圧と、ii)第3の振幅および周波数(例えば、第1の周波数と異なる)および第3の位相におけるものであるが、DC電圧がDCオフセット電圧と同等である、RF信号と、iii)DCオフセット電圧と異なるDC電圧と第3の振幅および周波数ならびに第3の位相におけるRF信号の両方とを含む、種々の補助電気信号が、補助電極140に印加されることができる。さらに、本教示の種々の側面による、補助電極140に印加される補助RFおよび/またはDC信号は、従来のコリメート用四重極イオンガイド内のイオンの半径方向振幅を増加させるために利用される、当技術分野において公知の他の技法と組み合わせられることができることを理解されたい。そのような例示的技法として、全て非限定的実施例であるが、双極DC印加、四重極DC印加、および四重極のロッドに印加される補完AC信号であって、イオンビーム内のイオンのいくつかと共振もしくはほぼ共振する、AC信号を使用する、共振励起が挙げられる。
【0066】
本教示に照らして、補助電極140は、種々の構成を有することができることが理解されるであろう。一例として、補助電極140は、種々の形状(例えば、丸形、T形状)を有することができるが、T形状電極は、長方形ベース150から多極イオンガイド120の中心軸に向かうステム160の延在部が、補助電極の最内伝導性表面が中心軸により近接して配置される(例えば、多極イオンガイド120内の場の強度を増加させるために)ことを可能にするため、好ましくあり得る。種々の側面では、T形状電極は、ステム160の最内半径方向表面が補助電極140の全長に沿って中心軸から実質的に一定距離のままであるように、その長さに沿って実質的に一定断面を有することができる。丸形補助電極(または他の断面形状のロッド)もまた、本教示の種々の側面に従って使用されることができるが、概して、四重極ロッド130a、130b間の限定された空間に起因して、四重極ロッド130a、130bと比較してより小さい断面積を呈する、および/または中心軸からのその増加される距離に起因して、より大きい補助電位の印加を要求するであろう。
【0067】
前述のように、補助電極140は、四重極ロッド130a、130bの全長に沿って延びている必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、補助電極140は、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bの長さの半分未満(例えば、33%未満、10%未満)の長さを有することができる。従来のQ0四重極のロッド電極は、約10cm~約30cmの範囲内の縦軸に沿った長さを有することができる一方、補助電極140は、全て非限定的実施例であるが、10mm、25mm、または50mmの長さを有することができる。さらに、
図1は、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bの近位端と遠位端との間の中間を中心として配置される補助電極140を描写するが、補助電極140は、本描写される例示的実施形態と比較してより近位またはより遠位に位置付けられることもできる。一例として、補助電極140は、四重極ロッドセットの近位3分の1、中央3分の1、または遠位3分の1のいずれかに配置されることができる。実際、補助電極140の比較的により短い長さのため、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bは、補助電極140の複数のセットを中心軸に沿った種々の位置に収容することができることを理解されたい。一例として、本教示の範囲内において、質量分析法システム100は、第1の補助電気信号(例えば、ロッド130a、130bのDCオフセット電圧と異なるDC電圧)が印加され得る、補助電極の第1の近位セットと、第2の補助電気信号(例えば、RF成分を有する)が印加され得る、補助電極の1つ以上の遠位セットとを含むことができる。
【0068】
ここで
図3を参照すると、実施形態による、多極イオンガイド120の一部の例示的プロトタイプが、描写される。
図3に示されるように、多極イオンガイド120は、ベース部分150と、そこから延びているステム部分160とを有する、4つのT形状電極140を含むことができる。10mmの長さであって、約6mmの長さのステム160を有する、電極140は、本教示の種々の側面によると、四重極ロッドセットの所望の場所に搭載され得る、搭載リング142に結合されることができる。非限定的実施例として、例示的搭載リング142は、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bに(例えば、想像線として示される四重極130aと)しっかりと係合するための切り欠きを備えている。示されるように、RF電力供給源105および/またはDC電力供給源107に結合され得る、単一導線144もまた、実質的に同じ補助電気信号が補助電極140のそれぞれに印加されるように、補助電極140のそれぞれに電気的に結合されることができる。
【0069】
ここで
図9を参照すると、
図1の別の例示的多極イオンガイド120が、さらに詳細に描写される。特に、例示的多極イオンガイド120の一部が、描写される。
図9に示されるように、多極イオンガイド120は、
図1に描写される補助電極140の場所を横断して断面概略図に描写される。
図1にさらに詳細に示され、上記に解説されるように、多極イオンガイド120は、概して、入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端部から出口開口112bに隣接して配置される遠位出口端部まで延びている、4つのロッド130a、130bのセットを含むことができる。ロッド130a、130bは、多極イオンガイド120の中心軸を囲繞し、それに沿って延び、それによって、それを通してイオンが伝送される、空間を画定する。
【0070】
多極イオンガイド120はさらに、同様に中心軸(想像線で示される)に沿って延びている、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130b間に挿入される、複数の補助電極140を含むことができる。各補助電極140は、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bのロッドによって、別の補助電極140から分離されることができる。さらに、補助電極140の各々は、第1の対のロッド130aと第2の対のロッド130bに隣接して、かつその間に配置されることができる。
【0071】
補助電極140の各々は、本明細書に別様に説明されるように、多極イオンガイド120からのイオンの伝送を制御または操作するように、補助電気信号を補助電極140に提供するために、RFおよび/またはDC電力供給源(例えば、
図1の電力供給源105および107)に結合されることができる。
【0072】
非限定的実施例として、本教示の種々の側面によると、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bは、第1の周波数および第1の位相で第1の対のロッド130aに印加される、第1のRF電圧と、第2の周波数であるが、位相が反対である、第2の対のロッド130bに印加される、(例えば、第1のRF電圧と同一振幅(V
0-p)の)第2のRF電圧とを用いて、DCオフセット電圧に維持されるが、種々の補助電気信号が、補助電極140に印加されることができる。
図9に示されるように、各補助電極140は、そこに印加される同一振幅910のDC電圧を有する。特に、
図9の概略断面図は、T形状RF/DCフィルタ電極と、丸みを帯びた多極イオンガイド電極とを示す。RF/DCフィルタの全てのT形状電極は、同一DC電圧でバイアスされる。
【0073】
上記に解説されるように、例えば、各補助電極140は、四重極ロッドセットのロッドに印加されるDCオフセット電圧と異なる、そこに印加される同一振幅および位相のDC電圧を有する。すなわち、多極イオンガイドのための質量窓処理デバイスが、生成される。本実施形態におけるDC電圧は、多極イオンガイドの四重極ロッドセットのロッドに印加されるDCオフセット電圧に対して誘引性または反発性のいずれかであることができる。例えば、そのような実施形態では、印加される補助DC電圧およびDCオフセット電圧における差異は、イオン伝送の高m/zカットオフの発生および下流イオン光学系を汚染し得るそのようなイオンの除去をもたらすであろう。
【0074】
本明細書に開示されるイオンガイドは、概して、約2~20e-3Torrの中性ガス圧力で動作され、約1MHzのRF周波数および約50~1,000V0-peakの電圧の半径方向閉じ込めを有する。
【0075】
いくつかの側面では、本開示は、上記に開示されるようなm/zカットオフの発生が、より低速のまたは低減されたイオン伝送をもたらし得るという認識を包含する。いくつかの実施形態では、例えば、高圧の環境が、イオンガイド内に存在するとき、イオンは、多数の衝突を被るであろう。いくつかの実施形態では、印加される軸方向場の不在下では、イオンの伝送は、減速するであろう。いくつかの実施形態では、伝送は、事実上(実質的に)、停止するであろう。対照的に、API質量分析法システムの通常動作の条件下では、概して、これらの減速イオンを多極イオンガイドに沿って、その出口オリフィスに駆動、押動、または伝送するために十分な数の流入イオンが存在する。すなわち、空間電荷誘発押動が、必然的に、生成される。そのような空間電荷誘発押動の大きさは、流入イオンの数密度に依存するであろう。
【0076】
上記に開示されるようないくつかの実施形態では、RF/DCフィルタからのDC場の半径方向プロファイルは、多極イオンガイドの軸に沿って、印加されるDC電圧に依存する、小電位井戸または障壁のいずれかを提供する。いくつかの実施形態では、超低局所イオン速度と結合されると、多極イオンガイドの軸に沿った小電位井戸または障壁は、RF/DCフィルタを通した遷移時間における時間的遅れにつながり得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、多極イオンガイドの軸に沿った小電位井戸または障壁の結果は、高m/zカットオフを生じさせる、不安定イオン信号および/またはDC電圧の変化をもたらし得る。
【0078】
図10は、例えば、小電位井戸の影響を示す。特に、
図10は、四重極ロッドセットのロッドが、補助電極とともに散在され、誘引性にバイアスされる、RF/DCフィルタを発生させるときに生じる、誘引性電位井戸の概略である。本明細書に開示されるようなRF/DCフィルタに印加される、誘引性DC電圧は、その中に流入イオンが捕獲され得る、電位井戸を多極イオンガイド内に生じさせることができる。そのような構成では、イオンは、井戸が発生させられる付加的イオンによって「充填」されるまで捕獲され続けるであろう。本時間の間および井戸が充填されるまで、予期されるより少ないイオンが、多極イオンガイドから出射するであろう。いくつかの実施形態では、そのような配置は、イオン信号安定性不良につながり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、イオン信号不安定性問題は、イオン束に依存し得る。特に、RF/DCフィルタを越え、質量分析器に向かう、イオンの通過における重要な要因は、電位井戸が流入イオンから充填され得る速度である。いくつかの側面では、例えば、より低いイオン濃度を有する、分析サンプルは、電位井戸を充填するためにより多くの時間を要求し、高イオン濃度を有する分析サンプルよりイオン信号不安定性を表すであろう。
【0080】
図11は、例えば、多極イオンガイドの軸に沿った障壁の影響を示す。特に、
図11は、四重極ロッドセットのロッドが、補助電極とともに散在され、反発性にバイアスされる、RF/DCフィルタを発生させるときに生じる、反発性軸方向障壁の概略である。いくつかの実施形態では、例えば、
図11に示されるように、DC電圧が、多極イオンガイドのDCオフセットに対して反発性である、RF/DCフィルタに印加されると、電位障壁が、生成されるであろう。
【0081】
いくつかの実施形態では、電位障壁は、十分な数のイオンがそのような障壁を克服するために蓄積するまで、RF/DCフィルタを越えるイオン通過を遅延させるであろう。いくつかの実施形態では、そのような配置は、時間に伴って、信号安定性の損失につながり得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、多極イオンガイドの軸に沿った小電位井戸または障壁のいずれかの結果は、例えば、
図10および
図11に示されるように、高m/zカットオフを生じさせる、例えば、不安定イオン信号および/またはDC電圧の変化となり得る。
【0083】
所与の高m/zカットオフを生じさせるために要求されるDC電圧の変化は、
図12に実証される。m/z564のイオン信号を表す、2つの抽出されたイオンクロマトグラフプロファイルが、
図12に示される。RF/DCフィルタ電極は全て、
図12に示される結果として生じるイオンクロマトグラフプロファイルに関して同じようにバイアスされる。多極イオンガイドは、940kHzおよび約350V
0-peakの固定電圧であった。補助電圧である、フィルタ電圧(DCボルト)は、多極イオンガイドの四重極ロッドのためのDCオフセット電圧に対して-250ボルトまで低減される。
【0084】
データは、高強度イオンビームおよび低強度イオンビームに関する例示的抽出されたイオンクロマトグラフプロファイルを示す。高および低強度イオンクロマトグラフプロファイルは両方とも、RF/DCフィルタのための10-mm長T形状補助電極を使用して取得された。1つのプロファイルは、高強度イオンビームを有する、m/z564のイオン信号を示す。第2のプロファイルは、低強度イオンビームを有する、m/z564のイオン信号を示す。
図12の低強度イオンビームを参照すると、イオン信号のカットオフは、約-165Vで生じる。
図12の高強度イオンビームを参照すると、イオン信号のカットオフは、約-220Vで生じる。
【0085】
具体的理論によって拘束されることを所望するわけではないが、
図12の実施例では、約55V差である、低および高強度イオンビームのためのカットオフ電圧における差異である、本差異は、誘引性フィルタ電極によって形成される電位井戸の存在下における補助電極との異なるイオン相互作用時間に起因することが考えられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、多極イオンガイドの軸に沿った小電位井戸または障壁のいずれかの結果である、高m/zカットオフを生じさせる、不安定イオン信号および/またはDC電圧の変化は、超短電極を使用することによって低減され得る。
図13は、多極イオンガイドの四重極のロッド間に挿入される13-mm長ステムを伴う電極のセットを有する、補助電極アセンブリを示す。いくつかの実施形態では、アセンブリは、約0.5-mm厚である。
【0087】
特定の理論によって拘束されることを所望するわけではないが、
図13に示されるような電極アセンブリは、多極イオンガイドの軸に沿って発生させられる、電位井戸の幅を最小限にする。いくつかの実施形態では、例えば、誘引性電位井戸は、補助電極アセンブリの補助電極が、誘引性にバイアスされるときに生じ、および/または補助電極アセンブリの補助電極が反発性にバイアスされるとき、反発性軸方向障壁を最小限にする。結果は、具体的高m/zカットオフのために要求される電圧に及ぼす変化するイオン電流の影響の低減となる。
【0088】
上記に解説されるように、いくつかの実施形態では、多極イオンガイドの軸に沿った小電位井戸または障壁のいずれかは、高m/zカットオフを生じさせる、不安定イオン信号および/またはDC電圧の変化をもたらし得る。いくつかの実施形態では、例えば、誘引性電位井戸は、補助電極アセンブリの補助電極が誘引性にバイアスされるときに生じ、および反発性軸方向障壁は、補助電極アセンブリの補助電極が反発性にバイアスされるときに低くされる(すなわち、最小限にされる)。結果は、具体的高m/zカットオフのために要求される電圧に及ぼされる変化するイオン電流の影響の低減となる。記載されるように、高m/zカットオフを生じさせる、不安定イオン信号および/または異なるDC電圧は、誘引性フィルタ電極によって形成される電位井戸の存在下における、補助電極との異なるイオン相互作用時間に起因し得ることが考えられる。
【0089】
特定の理論によって拘束されることを所望するわけではないが、イオン信号不安定性および変動する高質量カットオフ値のそのような問題は、補助電極アセンブリの補助電極の交互バイアス配置を使用することによって、すなわち、電位井戸または障壁形成を最小限にするような様式においてRF/DCフィルタ電極をバイアスすることによって、克服することができる。
【0090】
図14を参照すると、補助電極140a、140b(集合的に、
図1の140)の場所の例示的多極イオンガイド120が、断面概略図に描写される。上記に記載のように、いくつかの実施形態では、多極イオンガイド120は、
図1の入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端部から
図1の出口開口112bに隣接して配置される遠位出口端部まで延びている、4つのロッド130a、130bのセットを含むことができる。ロッド130a、130bは、多極イオンガイド120の中心軸(想像線で示される)を囲繞し、それに沿って延び、それによって、それを通してイオンが伝送される、空間を画定する。
【0091】
前の実施形態と同様に、本実施形態では、本明細書に提供されるような多極イオンガイド120はさらに、複数の補助電極、すなわち、補助電極140a、140bを含むことができ、これは、
図1の入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端部から
図1の出口開口112bに隣接して配置される遠位出口端部まで延びている。いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、部分的に、
図1の入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端部から
図1の出口開口112bに隣接して配置される遠位出口端部まで延びている。いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、完全に、
図1の入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端部から
図1の出口開口112bに隣接して配置される遠位出口端部まで延びている。
【0092】
補助電極140a、140bは、種々の構成を有することができる。実施例として、補助電極140a、140bは、種々の形状(例えば、丸みを帯びた形状、T形状)を有することができるが、T形状電極は、基部150から多極イオンガイド120の中心軸に向かったステム160の延在部が、補助電極の最内伝導性表面が中心軸のより近くに配置されることを可能にするため、好ましくあり得る(例えば、多極イオンガイド120内の場の強度を増加させるために)。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される補助電極140a、140bは、相互および四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bの両方に対するその位置および/またはそこに印加される電圧によって特徴付けられる。
【0094】
いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、中心軸の周囲に半径方向に位置付けられる。いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130b間に挿入される。いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130b間に均一に間隔を置かれ、その間に挿入される。
【0095】
本実施形態では、各補助電極140aは、別の補助電極140aの半径方向に反対にあって、各補助電極140bは、別の補助電極140bの半径方向に反対にある。すなわち、本実施形態では、各補助電極140aは、単一四重極ロッド130a、単一四重極ロッド130b、および単一補助電極140bによって、別の補助電極140aから半径方向に分離される。換言すると、本実施形態では、各補助電極140aは、四重極ロッド130aおよび130b、および単一補助電極140bによって、時計回り(および反時計回り)方向に中心軸に対して別の補助電極140aから分離される。
【0096】
各補助電極140aは、
図14では、別の補助電極140aの半径方向に反対に示され、各補助電極140bは、別の補助電極140bの半径方向に反対に示される。
【0097】
上記に述べられたように、各補助電極140a、140bは、本明細書に別様に説明されるように、多極イオンガイド120からのイオンの伝送を制御または操作するように、補助電気信号を補助電極140a、140bに提供するために、RFおよび/またはDC電力供給源(例えば、
図1の電力供給源105および107)に結合されることができる。
【0098】
図14は、補助電極アセンブリの補助電極の交互バイアス配置を使用する、構成を示す。本実施形態では、第1の対の補助電極、例えば、140aは、正にバイアスされ、第2の対の補助電極、例えば、140bは、負にバイアスされる。補助電極のそのようなバイアスは、電位井戸または障壁形成を最小限にし、それによって、イオン信号不安定性および高質量カットオフ値の変動の両方を低減させることができる。本実施形態では、補助電極140aは、物理的に別個である、または少なくとも補助電極140bから電気的に隔離されることができる。補助電極は、異なるDC電圧源または同一DC電圧源に結合されることができる(すなわち、1つの源は、2つ以上の電圧信号を提供するように構成される)。
【0099】
本実施形態では、補助電極140a、140bは、DC電圧を用いてバイアスされる。いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、同一振幅を有する、DC電圧を用いてバイアスされる。いくつかの実施形態では、一対の補助電極140aは、別の対の補助電極140bと同一振幅を有するが、各対140a、140bへのDC電圧の符号が反対である、DC電圧を用いてバイアスされる。すなわち、いくつかの実施形態では、各対の補助電極140a、140bは、同一電圧であるが、反対符号を用いて、バイアスされる。例えば、補助電極140aは、負の(-)電荷を有することができ、補助電極140bは、正の(+)電荷を有することができる。本実施形態では、補助電極140a、140bは、実質的に同一振幅であるが、反対位相を有する、DC電圧を用いてバイアスされる。
【0100】
例えば、対の補助電極140aに供給される電圧1410は、負であって、対の補助電極140aに供給される電圧1420は、正である。
【0101】
いくつかの実施形態では、
図14に描写されるようなバイアススキームは、事実上、上記に説明されるイオン信号不安定性および高質量カットオフ値の変動につながり得る、任意の電位井戸および障壁を除去することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、そのような配置は、同一振幅の供給電圧1410および1420を含むことができる。いくつかの実施形態では、供給される電圧1410および1420は、RFイオンガイドのDCオフセット電圧に対して同一振幅および異なる電圧である。いくつかの実施形態では、一対の補助電極140aに供給される電圧1410は、負または正であってもよい。いくつかの実施形態では、一対の補助電極140bに供給される電圧1420は、負または正であってもよい。
【0103】
図15を参照すると、補助電極140a、140bの場所を示す、例示的多極イオンガイド120が、断面概略図に描写される。上記に記載のように、いくつかの実施形態では、多極イオンガイド120は、
図1の入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端部から
図1の出口開口112bに隣接して配置される遠位出口端部まで延びている、4つのロッド130a、130bのセットを含むことができる。四重極ロッド130a、130bは、多極イオンガイド120の中心軸(想像線で示される)を囲繞し、それに沿って延び、それによって、それを通してイオンが伝送される、空間を画定する。
【0104】
本明細書に提供されるような多極イオンガイド120はさらに、
図1の入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端部から
図1の出口開口112bに隣接して配置される遠位出口端部まで延びている、複数の補助電極140a、140bを含むことができる。いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、部分的に、
図1の入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端部から
図1の出口開口112bに隣接して配置される遠位出口端部まで延びている。いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、完全に、
図1の入口オリフィス112aに隣接して配置される近位入口端部から
図1の出口開口112bに隣接して配置される遠位出口端部まで延びている。
【0105】
いくつかの実施形態では、上記に対処されるように、補助電極140a、140bは、種々の構成を有することができる。実施例として、補助電極140a、140bは、種々の形状(例えば、丸みを帯びた形状、T形状)を有することができるが、T形状電極は、基部150から多極イオンガイド120の中心軸に向かったステム160の延在部が、補助電極の最内伝導性表面が中心軸のより近くに配置されることを可能にし得るため、好ましくあり得る(例えば、多極イオンガイド120内の場の強度を増加させるために)。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される補助電極140a、140bは、相互および四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130bの両方に対するその位置および/またはそこに印加される電圧によって特徴付けられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、中心軸の周囲に半径方向に位置付けられる。補助電極140a、140bは、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130b間に挿入される。本実施形態では、補助電極140a、140bは、四重極ロッドセットの四重極ロッド130a、130b間に均一に間隔を置かれ、その間に挿入される。
【0108】
上記に述べられたように、いくつかの実施形態では、各補助電極140a、140bは、本明細書に別様に説明されるように、多極イオンガイド120からのイオンの伝送を制御または操作するように、補助電気信号を補助電極140a、140bに提供するために、RFおよび/またはDC電力供給源(例えば、
図1の電力供給源105および107)に結合されることができる。
【0109】
図15は、補助電極アセンブリの補助電極の交互バイアス配置を使用する、構成を示す。いくつかの実施形態では、そのような交互バイアスされる補助電極140a、140bは、電位井戸または障壁形成の形成を最小限にし、それによって、イオン信号不安定性および高質量カットオフ値の変動の両方を低減させ得る。本実施形態では、補助電極140aは、物理的に別個である、または少なくとも補助電極140bから電気的に隔離されることができる。補助電極は、異なるDC電圧源(すなわち、別の別個の源)または同一DC電圧源(すなわち、1つの源は、2つ以上の電圧信号に提供するように構成される)に結合されることができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、DC電圧を用いてバイアスされる。いくつかの実施形態では、補助電極140a、140bは、同一振幅を有する、DC電圧を用いてバイアスされる。いくつかの実施形態では、一対の補助電極140aは、別の対の補助電極140bと同一振幅を有するが、各対140a、140bへのDC電圧の符号が反対である、DC電圧を用いてバイアスされる。すなわち、いくつかの実施形態では、各対の補助電極140a、140bは、同一電圧であるが、対向符号を用いて、バイアスされる。例えば、補助電極140aは、負の(-)電荷を有することができ、補助電極140bは、正の(+)電荷を有することができる。本実施形態では、補助電極140a、140bは、実質的に同一振幅であるが、反対位相を有する、DC電圧を用いてバイアスされる。
【0111】
例えば、対の補助電極140aに供給される電圧1510は、負であって、対の補助電極140aに供給される電圧1520は、正である。いくつかの実施形態では、
図15に描写されるもの等のバイアススキームは、事実上、そうでなければ上記に説明されるイオン信号不安定性および高質量カットオフ値の変動につながり得る、任意の電位井戸および障壁を除去することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、そのような配置は、同一振幅の供給電圧1510および1520を含むことができる。いくつかの実施形態では、補助電極に印加される電圧1510および1520は、RFイオンガイドに印加されるDCオフセット電圧に対して同一値を有することができるが、異なる。いくつかの実施形態では、一対の補助電極140aに供給される電圧1510は、負または正であってもよい。いくつかの実施形態では、一対の補助電極140bに供給される電圧1520は、負または正であってもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、
図15に描写されるようなバイアススキームは、事実上、上記に説明されるイオン信号不安定性および高質量カットオフ値の変動につながり得る、任意の電位井戸および障壁を除去する。
【0114】
(実施例)
以下の実施例は、本開示のいくつかの実施形態および側面を図示する。種々の修正、追加、代用、および同等物が、本開示の精神または範囲を改変することなく実施されることができる、そのような修正および変形例は、続く請求項に定義されるような本開示の範囲内に包含されることが、当業者に明白であろう。本開示は、これらの実施例を参照することによって、より完全に理解されるであろう。以下の実施例は、いかようにも、本開示または請求される開示を限定するものではなく、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0115】
前述のように、種々のRFおよび/またはDC信号が、本教示によると、多極イオンガイド120から下流の真空チャンバ114の中へのイオンの伝送を制御または操作するように、補助電極140に印加されることができる。前述の教示は、ここで、本教示を限定するのではなく、実証することを前提として、i)ロッド130a、130bに印加されるDCオフセット電圧と異なるDC電圧(RF成分を伴わない)が、
図2の例示的補助T形状電極140に印加され、ii)RF信号が、
図2の例示的補助T形状電極140に印加され(電極140に印加されるDC電圧は、DCオフセット電圧と同等である)、iii)ロッド130a、130bに印加されるDCオフセット電圧と異なるDC電圧と、RF信号の両方が、
図2の例示的補助T形状電極140に印加される、以下の実施例を使用して実証されるであろう。
【0116】
最初に、
図4A-Cを参照すると、Q0の四重極ロッド(長さ約18cmを有する)の近位入口端から下流約12cmに位置する、長さ約50mmを有する補助T形状電極140を含むように本教示に従って修正された、4000QTRAP(登録商標)システム(SCIEXによって市販)を通した種々のイオンの伝送を実証する、例示的データが、描写される。Q0の四重極ロッドは、-10VDCオフセットに維持され、異なる振幅(すなわち、189V
0-p、283V
0-p、378V
0-p、および567V
0-p)の種々のRF信号が、四重極ロッドに印加された。四重極ロッドに印加される主駆動RFの周波数は、約1MHzであって、隣接する四重極ロッドに印加される信号は、互いに位相が反対であった。
【0117】
図4A-Cは、それぞれ、補助電極に印加されるDC電圧がDCオフセット電圧(すなわち、-10VDC)から調節されるにつれて、多極イオンガイドを通して322Da、622Da、および922Daのm/zを呈する、イオンの伝送の変化を描写する。例えば、ここで
図4Aを具体的に参照すると、322Daのm/zを有するイオンの伝送は、四重極ロッドに印加される種々のRF信号毎に、DCオフセット電圧から約±10~15VDCの補助DC電圧(すなわち、約-18~22VDCおよび+12~15VDC)において実質的に停止される。しかしながら、
図4Bおよび4Cに示されるように、増加されるm/zのイオンに関するDCカットオフは、四重極ロッドに印加されるRFの振幅に応じて実質的に変動する(概して、V
0-pが増加するにつれて、ますますより高い補助DC電圧が、多極イオンガイドを通したイオンの伝送を停止するために要求される)。一例として、922Daのm/zを有するイオンに関して、カットオフは、189V
0-pでは、DCオフセット電圧から約±10VDC(すなわち、-20VDCおよび0VDC)である一方、567V
0-pでは、カットオフは、DCオフセット電圧から約±25VDC(すなわち、-35VDCおよび+15VDC)である。これらの実施例に照らして、四重極ロッドセットおよび/または補助DC信号に印加されるRF電圧は、下流の質量分析器への全イオンの伝送を実質的に阻止するように、調節されることができる(例えば、コントローラ103を介して)ことを理解されたい。非限定的実施例として、補助DC電圧は、イオン源によって発生させられる実質的に全イオンのカットオフポイントを超えて、DCオフセット電圧から調節されることができる。前述のデータはまた、四重極ロッドに印加されるRF信号の振幅が、多極イオンガイドを通したイオンの伝送を防止するように、補助DC電圧とDCオフセット電圧との間の差異の増加と別個に、またはそれと連動して同時に減少されることができることを示す。故に、本教示による方法およびシステムは、例えば、検体が連続イオン源(例えば、液体クロマトグラフィの勾配溶出の初めまたは後の部分における)に送達されているサンプル中に存在しないことが既知である、および/または下流の質量分析器(例えば、イオントラップデバイス)が多極イオンガイドを通して以前に伝送されたイオンを処理している、時間周期の間、下流の質量分析器の中へのイオンの流動を停止する(例えば、汚染をさらに低減させる)ことができる。
【0118】
図4A-Cを継続して参照すると、約-10VDCの補助DC電圧では、多極イオンガイド内の電場は、多極イオンガイドが従来のコリメート四重極として機能するであろうように(すなわち、補助電極が存在さえしないであろうかのように)、補助DC電圧によって実質的に改変されないであろうことを理解されたい。本教示の種々の側面による方法およびシステムは、望ましくないイオン(例えば、本明細書のその他で、以下の
図5A-Cに関して具体的に論じられるように、高m/zの干渉/汚染イオン)の伝送を低減させるために効果的であり得るが、
図4A-Cは、驚くことに、多極イオンガイドを通した全体的イオン伝送が、補助DC信号がDCオフセット電圧から調節されるにつれて、従来のコリメート四重極と比較して増加され得ることを実証する。すなわち、
図4A-Cに示されるように、全体的検出されたイオン電流は、最初に、補助DC電圧がDCオフセット電圧に維持されるときに発生させられるイオン電流と比較して、補助DC電圧によって増加される。任意の特定の理論によって拘束されるわけではないが、イオン電流の本増加は、補助DC信号によって引き起こされた多極イオンガイド内のイオンのクラスタ分離の増加に起因し得ると考えられる。これらの重く帯電されたクラスタは、従来のコリメート四重極Q0内で中性化される、および/またはQ0を通した下流の真空チャンバの中への伝送に続き、下流の光学要素および質量分析器を汚染し得る一方、本教示の種々の側面による方法およびシステムは、驚くことに、多極イオンガイド内のこれらの帯電されたクラスタをクラスタ分離し、それによって、イオンをそこから解放し、潜在的に、典型的には従来のシステム内で喪失される、着目イオンの伝送/検出を可能にするとによって、感度を増加させるために使用されることができる。
【0119】
ここで
図5A-Cを参照すると、Q0の四重極ロッド(長さ約18cmを有する)の近位入口端から約12cm下流に位置する、長さ約50mmを有する補助T形状電極を含むように本教示の種々の側面に従って修正された、4000QTRAP(登録商標)システムを通したイオン化された標準(Agilent ESI Tuning Mix、G2421、Agilent Technologies)の伝送に続く例示的質量スペクトルが、描写される。Q0の四重極ロッドは、-10VDCオフセットに維持され、189V
0-pのRF信号が、四重極ロッドに印加された。四重極ロッドに印加される主駆動RFの周波数は、約1MHzであって、隣接する四重極ロッドに印加される信号は、互いに位相が反対であった。
【0120】
図5Aの質量スペクトログラムを生成するために、補助電極は、多極イオンガイドが従来のコリメート四重極として実質的に機能されるように、-10VDC(すなわち、四重極ロッドの同一DCオフセット電圧)に維持された。
図5Bに関して、補助DC電圧は、補助ロッドの電圧を-15VDC(ΔV=DCオフセットに対して-5VDC)まで減少させることによって、DCオフセット電圧から調節された。すなわち、四重極ロッドと比較すると、補助電極は、イオン源によって発生させられる正イオンに5Vより誘引性であった。
図5Cのスペクトログラムを得るために、補助DC電圧は、-19VDC(ΔV=-9VDC)までさらに減少された。RF信号は、補助電極に印加されなかった。
【0121】
図5Bと
図5Aを比較すると、DCオフセット電圧に対して補助DC電圧を調節する(この場合、減少させ、補助電極を正イオンにより誘引性にする)ことによって、
図5Bの構成は、高m/zイオンをフィルタ処理するために効果的であったことが観察され得る。例えば、識別可能ピークが、
図5Aでは、1518.86Daおよび1521.66Daに存在するが、これらのピークは、
図5Bには存在しない。実際、
図5Bでは、約1400Daを上回るm/zにおいて、判別可能信号はない。
【0122】
図5Cと
図5Bを比較すると、DCオフセット電圧に対して補助DC電圧をさらに減少させることによって、高m/zイオンはさらにフィルタ処理されることが観察される。例えば、識別可能ピークが、
図5Bでは、921.25Daに存在するが、本ピークは、
図5Cでは存在しない。実際、
図5Cでは、約900Daを超えると、判別可能信号はない。また、低m/zイオンのフィルタ処理増加もまた、
図5Cと
図5Bを比較すると観察され得るが、本効果は、高域通過フィルタ効果ほど顕著ではないことに留意されたい。例えば、
図5Bでは、235.66Daに存在する識別可能ピークは、
図5Cでは存在しない。したがって、本教示の種々の側面によるイオンガイドは、補助DC信号を調節し、それによって、潜在的に、干渉/汚染イオンが下流の質量分析器に伝送されることを防止することによって、低域通過フィルタ(
図5Bにおけるように)として、および/または帯域通過フィルタ(
図5Cにおけるように)として動作されることができることが理解されるであろう。
【0123】
ここで
図6A-Dを参照すると、
図5A-Cを参照して前述のように実質的に修正された、4000QTRAP(登録商標)システムを通したイオン化された標準(Agilent ESI Tuning Mix、G2421、Agilent Technologies)の伝送に続く、例示的質量スペクトルが、描写される。しかしながら、
図6A-Dの質量スペクトルを得るために、283V
0-pのRF信号が、四重極ロッドに印加された(依然として、-10VDCオフセットに維持される)。
図6A-Dの実験条件はさらに、電圧を減少させる(すなわち、補助DC信号を-10VDCオフセットに対してより負にする)のではなく、補助DC電圧が、
図6Bにおけるように0VDC(ΔV=DCオフセットに対して10VDC)、
図6Cにおけるように+5VDC(ΔV=+15VDC)、および
図6Dにおけるように+9VDC(ΔV=+19VDC)まで補助ロッドの電圧を増加させることによって、DCオフセット電圧から調節されたという点において異なる。すなわち、四重極ロッドと比較して、補助電極は、イオン源によって発生させられる正イオンにより反発性となった。
図6A-6Dを比較すると、多極イオンガイドは、補助電極が四重極電極に対してますます正(すなわち、正イオンにより反発性)になるにつれて、低m/zイオンをより良好にフィルタ処理することが認められる。したがって、本教示の種々の側面による多極イオンガイドは、補助DC信号をより正にし、それによって、潜在的に、干渉/汚染低m/zイオンが下流の質量分析器に伝送されることを防止することによって、高域通過フィルタとして動作されることが理解されるであろう。
【0124】
種々の側面によると、本教示による多極イオンガイドは、代替として、または加えて、RF信号が、多極イオンガイド120から下流の真空チャンバ114の中へのイオンの伝送を制御または操作するよう、補助電極に印加されるように、RF電力供給源に結合されることができる。ここで
図7A-Cを参照すると、Q0の四重極ロッド(長さ約18cmを有する)の近位入口端から約12cm下流に位置する、長さ約10mmを有する補助T形状電極を含むように本教示の種々の側面に従って修正された、4000QTRAP(登録商標)システムを通したイオン化された標準(Agilent ESI Tuning
Mix、G2421、Agilent Technologies)の伝送に続く、例示的質量スペクトルが、描写される。Q0の四重極ロッドは、-10VDCオフセットに維持され、283V
0-pのRF信号が、四重極ロッドに印加された。四重極ロッドに印加される主駆動RFの周波数は、約1MHzであって、隣接する四重極ロッドに印加される信号は、互いに位相が反対であった。
【0125】
図7Aの質量スペクトログラムを生成するために、補助電極は、多極イオンガイドが従来のコリメート四重極として実質的に機能されるように、-10VDC(すなわち、四重極ロッドの同一DCオフセット電圧)に維持された(すなわち、補助RF信号は、印加されなかった)。
図7Bに関して、補助DC電圧もまた、-10VDCに維持されたが、同じ補助RF信号が、周波数80kHzにおいて300V
p-pで補助電極のそれぞれ(例えば、
図2および3の4つの電極140)に印加された。同様に、
図7Cに関しても、補助DC電圧は、-10VDCに維持され、同じ補助RF信号が、周波数80kHzにおいて350V
p-pで補助電極のそれぞれに印加された。
図7A-Cを比較すると、補助電極に印加されるRF信号の振幅の増加は、スペクトルの低m/z部分に殆ど乃至全く影響を及ぼさずに、高m/zイオンを質量スペクトルから除去するためにますます効果的となり得ることが観察される。例えば、識別可能ピークが、
図7Aでは、2116.22Daに存在するが、本ピークは、
図7Bでは、大幅に減衰される。
図7Cと
図7Bを比較すると(補助RF信号の振幅を350V
p-pから300V
p-pに増加後)、高m/zイオンがさらにフィルタ処理されることが観察される。例えば、識別可能ピークが、
図7Bでは、920.77Daおよび1522.36Daに存在するが、これらのピークは、
図7Cでは存在しない。実際、
図7Cでは、約900Daを超えると、判別可能信号はない。したがって、本教示の種々の側面による多極イオンガイドでは、補助電極に印加されるRF信号は、高m/zイオンが下流の質量分析器に伝送されることを防止し、それによって、潜在的に、イオン源によって発生させられるイオン中に存在する干渉/汚染イオンの影響を防止するように調節されることができることが理解されるであろう。
【0126】
さらに、本教示の種々の側面によると、補助電極に印加される補助DC信号および補助RF信号は両方とも、多極イオンガイドからのイオンの伝送を制御または操作するように調節されることができる。ここで
図7Aおよび
図8A-Fを参照すると、例示的質量スペクトルは、DCおよびRF補助信号の両方への調節の影響を描写する。前述のように、
図7Aの質量スペクトログラムを生成するために、補助電極は、多極イオンガイドが従来のコリメート四重極として実質的に機能されるように、-10VDC(すなわち、四重極ロッドの同一DCオフセット電圧)に維持された(すなわち、補助RF信号は、印加されなかった)。
図8A(
図7Bと同じ)では、補助DC電圧は、-10VDCに維持されたが、周波数80kHzで300V
p-pにおける同じ補助RF信号が、補助電極のそれぞれに印加された。
図8B-Eのイオンスペクトルに関して、補助RF信号は、周波数80kHzにおいて300V
p-pに維持された一方、電極に印加される補助DC電圧は、それぞれ、
図8Bにおけるように-25VDC(ΔV=DCオフセットに対して-15VDC)、
図8Cにおけるように-30VDC(ΔV=-20VDC)、
図8Dにおけるように-36VDC(ΔV=-26VDC)、
図8Eにおけるように-38VDC(ΔV=-28VDC)、および
図8Fにおけるように-45VDC(ΔV=-35VDC)に減少された。付随のデータおよび本教示に照らして、RFおよびDC補助信号は両方とも、本明細書に説明される種々の側面に従ってイオンガイドによる所望のフィルタ処理を提供するように調節(例えば、調整)されることができることが、当業者によって理解されるであろう。非限定的実施例として、
図8A-Fのデータは、RF信号の印加が、高m/zイオンのフィルタ処理のために要求される補助DC電圧の振幅を低減させることができる一方、低m/zイオンが、概して影響されないままであることを実証することを理解されたい(-19VDCの補助DC電圧(ΔV=DCオフセットに対して-9VDC)における実質的低m/z除去を描写する、
図5Cと比較して)。
【0127】
ここで
図16を参照すると、RF/DCフィルタの補助電極に印加され、1,000amuにおける高m/zカットオフを提供した、DC電圧を実証する、例示的データが、描写される。
図16におけるグラフは、
図14に示されるような補助電極バイアス配置を使用して入手されたデータを呈する。
【0128】
図16の2つのデータセットは、RFイオンガイド電圧のDCオフセット電圧に対して印加される補助電極電圧差に対応する。示される印加される補助電極電圧差は、RFイオンガイド電圧のためのDCオフセット電圧に対して補助電極に印加された、付加的電圧である。例えば、60ボルトDC電圧は、RFイオンガイドのDCオフセットの上部に印加される60ボルトと相関する。RFイオンガイド電圧のためのDCオフセット電圧のものを上回って補助電極に印加される電圧は、1,000amuにおけるm/zカットオフを生産する。
【0129】
図14の配置に関して上記に解説されるように、付加的電圧は、同一振幅を用いて、各対の2つの対の補助電極に印加され、1つの対は、負にバイアスされ、別の対は、正にバイアスされる。例えば、60ボルトDC電圧は、1つの半径方向に反対の対の補助電極に印加されるRFイオンガイドのDCオフセットの上部に印加される+60ボルトと、他の半径方向に反対の対の補助電極に印加されるRFイオンガイドのDCオフセットの上部に印加される-60ボルトと相関する。
【0130】
2つのデータセットは、2つの異なるイオン強度、具体的には、10倍を上回るイオンビーム強度における差異を表す。
【0131】
データは、RF/DCフィルタの補助電極に印加されるDC電圧が、異なるイオン強度に関して1,000amuの高m/zカットオフを達成することを示す。RFイオンガイド電圧のセットおよび補助電極電圧のセット毎に、1,000amuの高m/zカットオフが、高イオンビーム強度および低イオンビーム強度の両方に関して達成される。すなわち、本実施例では、イオンビーム強度差にもかかわらず、1,000amuカットオフをもたらす、補助電極のための付加的DC電圧のDC電圧値は、事実上、イオンビーム強度データの両セットに関して同じである。
【0132】
図16は、本明細書に提供されるような補助電極の交互バイアスを使用する、RF/DCフィルタが、高m/zカットオフのイオン電流誘発変化を有意に最小限にすることを示す。
【0133】
当業者は、本明細書に説明される実施形態および実践の多くの均等物を把握する、または日常的にすぎない実験を使用して解明可能であろう。一例として、種々の構成要素の寸法および種々の構成要素に印加される特定の電気信号に関する明示的値(例えば、振幅、周波数等)は、単に、例示であって、本教示の範囲を限定することを意図するものではない。故に、本発明は、本明細書に開示される実施形態を限定するものではなく、法律の下で可能な限り広範囲であるように解釈されるべきである、以下の請求項から理解されるものとすることを理解されたい。
【0134】
本開示は、上記に説明および例示される実施形態に限定されず、添付の請求項の範囲内の変形例および修正が可能である。本明細書で使用される見出しは、編成目的のためにすぎず、限定として解釈されない。本出願人の教示は、種々の実施形態と併せて説明されたが、本出願人の教示が、そのような実施形態に限定されることを意図するものではない。対照的に、本出願人の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【0135】
特許、公開出願、技術的記事、および学術的記事を含む、種々の刊行物が、明細書全体を通して引用される。これらの引用される刊行物の各々は、その全体として、あらゆる目的のために、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0136】
(他の実施形態および均等物)
本開示は、本開示のある特定の実施形態および実施例において明示的に議論されたが、当業者は、本開示は、そのような実施形態または実施例に限定されることを意図するものではないことを理解するであろう。対照的に、本開示は、当業者によって理解されるであろうように、そのような特定の実施形態および/または実施例の種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【0137】
故に、例えば、方法および略図は、文脈から明示的に述べられたまたは明確に要求されない(例えば、そうでなければ動作不能ではない)限り、ステップまたは要素の特定の説明される順序もしくは配置に限定されるように読み取られるべきではない。さらに、異なる実施形態に例示され得る、特定の要素の異なる特徴は、いくつかの実施形態では、互いに組み合わせられてもよい。
【外国語明細書】