(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007176
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】剥離シート付き粘着シートの製造方法及び剥離シート付き粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240111BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20240111BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20240111BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240111BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/40
C09J133/14
C09J4/02
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108463
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 康代
(72)【発明者】
【氏名】上野 裕美
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004DA04
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
4J040DF021
4J040FA081
4J040FA291
4J040GA05
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4J040GA29
4J040HB30
4J040HD30
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA11
4J040KA16
4J040KA26
4J040LA08
4J040LA10
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA17
4J040PA23
(57)【要約】
【課題】本発明は、高温環境下や湿熱環境下においても被着体に対して優れた密着性と耐アウトガス性を示す粘着シートを有し、さらに製造工程において剥離シートに浮きやシワ等が発生しない剥離シート付き粘着シートを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、第1の剥離シート、光硬化性粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着シート及び第2の剥離シートをこの順で有する剥離シート付き粘着シート及び該剥離シート付き粘着シートの製造方法に関する。光硬化性粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体、環構造を有する単官能モノマー、粘着付与樹脂、多官能モノマー及び光重合開始剤を含み、粘着シートの厚みが150μm以上であり、第1の剥離シートは厚みが50μm以上であり、TD方向の70~90℃での平均線膨張係数が5.5×10
-5/℃以上であり、かつ、波長360nmにおける光透過率が75%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の剥離シート、光硬化性粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着シート及び第2の剥離シートをこの順で有する剥離シート付き粘着シートの製造方法であって、
前記第1の剥離シートと前記第2の剥離シートとの間の光硬化性粘着剤組成物に、前記第1の剥離シート側から光を照射して、前記光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有し、
前記光硬化性粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体、環構造を有する単官能モノマー、粘着付与樹脂、多官能モノマー及び光重合開始剤を含み、
前記粘着シートの厚みが150μm以上であり、
前記第1の剥離シートは厚みが50μm以上であり、TD方向の70~90℃での平均線膨張係数が5.5×10-5/℃以上であり、かつ、波長360nmにおける光透過率が75%以上である、剥離シート付き粘着シートの製造方法。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位と、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位とを有し、
前記(メタ)アクリル重合体における、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、前記(メタ)アクリル重合体の全質量に対して20質量%以上であり、
前記(メタ)アクリル重合体における、前記環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、前記(メタ)アクリル重合体の全質量に対して1質量%以上である、請求項1に記載の剥離シート付き粘着シートの製造方法。
【請求項3】
前記環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位が、脂環構造を有する、(メタ)アクリルモノマー単位である、請求項2に記載の剥離シート付き粘着シートの製造方法。
【請求項4】
前記光重合開始剤が、アセトフェノン系光重合開始剤又はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の剥離シート付き粘着シートの製造方法。
【請求項5】
シランカップリング剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の剥離シート付き粘着シートの製造方法。
【請求項6】
光照射側に配される第1の剥離シート、光硬化性粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着シート及び第2の剥離シートをこの順で有する剥離シート付き粘着シートであって、
前記光硬化性粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体、環構造を有する単官能モノマー、粘着付与樹脂、多官能モノマー及び光重合開始剤を含み、
前記粘着シートの厚みが150μm以上であり、
前記第1の剥離シートは厚みが50μm以上であり、TD方向の70~90℃での平均線膨張係数が5.5×10-5以上であり、かつ、波長360nmにおける光透過率が75%以上である、剥離シート付き粘着シート。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位と、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位とを有し、
前記(メタ)アクリル重合体における、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、前記(メタ)アクリル重合体の全質量に対して20質量%以上であり、
前記(メタ)アクリル重合体における、前記環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、前記(メタ)アクリル重合体の全質量に対して1質量%以上である、請求項6に記載の剥離シート付き粘着シート。
【請求項8】
前記環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位が、脂環構造を有する、(メタ)アクリルモノマー単位である、請求項7に記載の剥離シート付き粘着シート。
【請求項9】
前記光重合開始剤が、アセトフェノン系光重合開始剤又はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、請求項6~8のいずれか1項に記載の剥離シート付き粘着シート。
【請求項10】
シランカップリング剤をさらに含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の剥離シート付き粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離シート付き粘着シートの製造方法及び剥離シート付き粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられている。これらの表示装置や入力装置においては、光学部材を貼り合せる用途に透明な粘着シートが使用されており、表示装置と入力装置の貼合にも透明な粘着シートが使用されている。
【0003】
粘着シートは表示装置等の被着体に貼合される前には剥離シートに覆われた状態で保管されている。例えば、両面粘着シートの両面に剥離シートを積層してなる剥離シート付き両面粘着シートが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、粘着シートの各面に積層された剥離シートの剥離力を調整することで、取り扱い性等を高めることが検討されている。
【0004】
ところで、粘着シートを形成するアクリル系重合体の重合方法としては、下記のような数通りの重合方法があることが知られている。具体的には、(1)熱による重合、(2)活性エネルギー線による重合、(3)熱(又は活性エネルギー線)による重合をした後に、活性エネルギー線(又は熱)による重合を行う2段重合、(4)活性エネルギー線による重合をした後に、活性エネルギー線による重合を行う2段重合といった方法がある。アクリル系重合体を活性エネルギー線で重合させる場合、剥離シート付き両面粘着シートに対して、いずれか一方の面側から活性エネルギー線を照射することが行われている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-019833号公報
【特許文献2】特開2021-059619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粘着シートが表示装置等に用いられる場合、粘着シートには高い透明性や耐湿熱性が要求される。また、近年は、粘着シートを貼合した光学部材が高温や高湿環境といった過酷環境下で使用される場合もあり、このような条件下においても優れた密着性を発揮し、かつ耐アウトガス性にも優れていることが求められている。しかしながら、従来の光硬化型粘着シートにおいては、高温環境下や湿熱環境下における密着性や耐アウトガス性に改善の余地があった。また、従来の光硬化型粘着シートにおいては、製造工程において、剥離シートに浮きやシワ等が発生することで粘着シートの透明性に悪影響を及ぼす懸念もあった。
【0007】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、高温環境下や湿熱環境下においても被着体に対して優れた密着性と耐アウトガス性を示す粘着シートを有し、さらに製造工程において剥離シートに浮きやシワ等が発生しない剥離シート付き粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 第1の剥離シート、光硬化性粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着シート及び第2の剥離シートをこの順で有する剥離シート付き粘着シートの製造方法であって、
第1の剥離シートと第2の剥離シートとの間の光硬化性粘着剤組成物に、第1の剥離シート側から光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有し、
光硬化性粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体、環構造を有する単官能モノマー、粘着付与樹脂、多官能モノマー及び光重合開始剤を含み、
粘着シートの厚みが150μm以上であり、
第1の剥離シートは厚みが50μm以上であり、TD方向の70~90℃での平均線膨張係数が5.5×10-5/℃以上であり、かつ、波長360nmにおける光透過率が75%以上である、剥離シート付き粘着シートの製造方法。
[2] (メタ)アクリル重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位と、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位とを有し、
(メタ)アクリル重合体における、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して20質量%以上であり、
(メタ)アクリル重合体における、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して1質量%以上である、[1]に記載の剥離シート付き粘着シートの製造方法。
[3] 環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位が、脂環構造を有する、(メタ)アクリルモノマー単位である、[2]に記載の剥離シート付き粘着シートの製造方法。
[4] 光重合開始剤が、アセトフェノン系光重合開始剤又はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、[1]~[3]のいずれかに記載の剥離シート付き粘着シートの製造方法。
[5] シランカップリング剤をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の剥離シート付き粘着シートの製造方法。
[6] 光照射側に配される第1の剥離シート、光硬化性粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着シート及び第2の剥離シートをこの順で有する剥離シート付き粘着シートであって、
光硬化性粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体、環構造を有する単官能モノマー、粘着付与樹脂、多官能モノマー及び光重合開始剤を含み、
粘着シートの厚みが150μm以上であり、
第1の剥離シートは厚みが50μm以上であり、TD方向の70~90℃での平均線膨張係数が5.5×10-5以上であり、かつ、波長360nmにおける光透過率が75%以上である、剥離シート付き粘着シート。
[7] (メタ)アクリル重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位と、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位とを有し、
(メタ)アクリル重合体における、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して20質量%以上であり、
(メタ)アクリル重合体における、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して1質量%以上である、[6]に記載の剥離シート付き粘着シート。
[8] 環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位が、脂環構造を有する、(メタ)アクリルモノマー単位である、[7]に記載の剥離シート付き粘着シート。
[9] 光重合開始剤が、アセトフェノン系光重合開始剤又はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、[6]~[8]のいずれかに記載の剥離シート付き粘着シート。
[10] シランカップリング剤をさらに含む、[6]~[9]のいずれかに記載の剥離シート付き粘着シート。
【0010】
本発明によれば、高温環境下や湿熱環境下においても被着体に対して優れた密着性を示し、かつ耐アウトガス性を有する粘着シートを提供することができる。また、本発明によれば、製造工程において剥離シートに浮きやシワ等が発生しない剥離シート付き粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、剥離シート付き粘着シートの断面を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
なお、本明細書において、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表す。また、本明細書において、“単量体”と“モノマー”は同義であり、“重合体”と“ポリマー”は同義である。
【0014】
(剥離シート付き粘着シートの製造方法)
本発明は、第1の剥離シート、光硬化性粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着シート及び第2の剥離シートをこの順で有する剥離シート付き粘着シートの製造方法に関する。本発明の剥離シート付き粘着シートの製造方法は、第1の剥離シートと第2の剥離シートとの間の光硬化性粘着剤組成物に、第1の剥離シート側から光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有する。また、光硬化性粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体、環構造を有する単官能モノマー、粘着付与樹脂、多官能モノマー及び光重合開始剤を含み、光硬化性粘着剤組成物から形成される粘着シートの厚みは150μm以上である。さらに、第1の剥離シートは厚みが50μm以上であり、TD方向の70~90℃での平均線膨張係数が5.5×10-5/℃以上であり、かつ、波長360nmにおける光透過率が75%以上である。
【0015】
本発明は上記構成を有するものであるため、上記製造方法から製造される剥離シート付き粘着シートは、高温環境下や湿熱環境下においても、被着体に対して優れた密着性を示し、かつ耐アウトガス性を有する粘着シートを有している。また、上記製造方法においては、剥離シート付き粘着シートの剥離シートに浮きやシワ等が発生することが抑制される。具体的には、所定の光硬化性粘着剤組成物に、所定の光透過率を有する剥離シート側から光を照射して所定の厚みを有する粘着シートを形成することで、高温環境下や湿熱環境下における密着性と耐アウトガス性を高めることができる。また、所定の厚みや物性を有する第1の剥離シートを用いることで、製造工程において剥離シートに浮きやシワ等が発生することを抑制することができる。
【0016】
本発明の剥離シート付き粘着シートの製造方法は、第1の剥離シートと第2の剥離シートとの間の光硬化性粘着剤組成物に、第1の剥離シート側から光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有する。より具体的には、本発明の剥離シート付き粘着シートの製造方法は、第2の剥離シート上に光硬化性粘着剤組成物を塗工し塗膜を形成する工程と、該塗膜上に第1の剥離シートを積層する工程と、第1の剥離シート側から光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有することが好ましい。当該工程において照射する光は、活性エネルギー線であることが好ましい。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。本発明において、第1の剥離シートの波長360nmにおける光透過率は75%以上であるため、活性エネルギー線(特に紫外線)の透過率が高く、光硬化性粘着剤組成物からなる塗膜を効率よく光硬化することができる。
【0017】
光硬化性粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0018】
第1の剥離シート側から塗膜に光を照射する工程では、積算光量が100~10000mJ/cm2となるように活性エネルギー線を照射することが好ましく、500~5000mJ/cm2となるように活性エネルギー線を照射することがより好ましい。塗膜に活性エネルギー線を照射する工程では、活性エネルギー線を2段階で照射してもよい。例えば、1段階目に比べて2段階目の照射強度を高めることもできる。このような2段階照射を行うことにより、粘着シートに含まれるポリマーの分子量を調整し、得られる粘着シートの密着性や耐アウトガス性をより効果的に高めることもできる。また、2段階照射を行うことで、剥離シートの熱収縮等を抑制しやすくなるため、剥離シートに浮きやシワ等が発生することを効果的に抑制することができる。
【0019】
なお、本発明において、光硬化性粘着剤組成物が溶剤等を含む場合には、光を照射する工程の前に、塗膜を加熱する工程を設けてもよい。加熱工程では、塗膜を加熱条件下に置き、乾燥を行うことが好ましい。加熱工程における温度は、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、85℃以上であることがさらに好ましい。また、加熱工程における温度は、150℃以下であることが好ましい。加熱工程における処理時間は、10秒以上であることが好ましく、1分以上であることがより好ましく、2分以上であることがさらに好ましい。また、加熱工程における処理時間は、1時間以下であることが好ましい。
【0020】
(剥離シート付き粘着シート)
本発明は、上述した製造方法で製造される剥離シート付き粘着シートに関する。具体的に、本発明の剥離シート付き粘着シートは、光照射側に配される第1の剥離シート、光硬化性粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着シート及び第2の剥離シートをこの順で有する剥離シート付き粘着シートであって、光硬化性粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体、環構造を有する単官能モノマー、粘着付与樹脂、多官能モノマー及び光重合開始剤を含み、粘着シートの厚みが150μm以上であり、第1の剥離シートは厚みが50μm以上であり、TD方向の77~84℃での平均線膨張係数が5.5×10-5/℃以上であり、かつ、波長360nmにおける光透過率が75%以上である、剥離シート付き粘着シートである。
【0021】
図1に示されるように、本発明の剥離シート付き粘着シートは、粘着シートの両表面に剥離シートを備える。
図1では、粘着剤層11の各表面に第1の剥離シート12a及び第1の剥離シート12bを有している。
【0022】
第1の剥離シートの厚みは50μm以上であればよく、55μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましく、65μm以上であることがさらに好ましく、70μm以上であることが特に好ましい。また、第1の剥離シートの厚みは特に限定されるものではないが、例えば、200μm以下であることが好ましい。第1の剥離シートの厚みを上記範囲とすることにより、製造工程において剥離シートに浮きやシワ等が発生することを効果的に抑制することができる。
【0023】
第1の剥離シートのTD方向の70~90℃での平均線膨張係数は、5.5×10-5/℃以上であればよく、6.0×10-5/℃以上であることが好ましく、6.5×10-5/℃以上であることがより好ましい。また、第1の剥離シートのTD方向の70~90℃での平均線膨張係数の上限は特に限定されるものではないが、例えば、1.5×10-4/℃以下であることが好ましい。なお、第1の剥離シートのTD方向とは、第1の剥離シートの幅方向(横方向)をいい、MD方向(長さ方向)に直交する方向である。TD方向の70~90℃での平均線膨張係数の測定には、例えば、日立ハイテクサイエンス社製の測定装置(TMA SS7100)を用いることができる。この場合、測定条件としては以下の条件を採用することができる。
測定モード : 引張法
測定温度範囲: 25℃から150℃まで
昇温速度 : 20℃/分
荷重 : 100mN
試験片サイズ: 幅5mm×長さ20mm
そして、得られたひずみ-温度曲線のデータより、70~90℃での平均線膨張係数を算出する。
【0024】
第1の剥離シートのTD方向の70~90℃での平均線膨張係数を上記範囲内とすることにより、第1の剥離シートにシワが発生することを抑制することができ、その結果粘着シートの外観を向上させることができる。具体的には、第1の剥離シートのTD方向の70~90℃での平均線膨張係数を上記範囲内とすることにより、熱がかかった際に伸長することで、粘着剤の熱収縮を緩和することができるため、剥離シートにシワが発生することが抑制されるものと考えられる。
【0025】
第1の剥離シートの波長360nmにおける光透過率は75%以上であればよく、77%以上であることが好ましい。なお、第1の剥離シートの波長360nmにおける光透過率の上限値は特に限定されるものではなく、100%であってもよい。第1の剥離シートの波長360nmにおける光透過率を上記範囲とすることにより、製造工程における活性エネルギー線(特に紫外線)の透過率を高めることができるため、光硬化性粘着剤組成物からなる塗膜を効率よく光硬化することができる。これにより、粘着シートの生産効率を高めることができる。なお、第1の剥離シートの波長360nmにおける光透過率は、例えば分光光度計(V-770、日本分光社製)を使用して測定することができる。
【0026】
上記物性を有する第1の剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シートが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO2単位と(CH3)3SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
第1の剥離シートとして、市販品を用いてもよい。例えば、三菱ケミカル社製のシリコーン離型剤が塗布されたポリエステルフィルムであるMRF#75やMRF#50、MRQ#75(三菱ケミカル社製)、MRV#75V04(三菱ケミカル社製)、75E-0010KF(藤森工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0027】
第2の剥離シートの厚みは、50μm以上であればよく、60μm以上であることが好ましく、70μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることがさらに好ましく、90μm以上であることが特に好ましい。また、第2の剥離シートの厚みは特に限定されるものではないが、例えば、200μm以下であることが好ましい。
【0028】
第2の剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。シリコーン系剥離剤としては、上述したものを同様に例示することができる。
第2の剥離シートとして、市販品を用いてもよい。例えば、三菱ケミカル社製のシリコーン離型剤が塗布されたポリエステルフィルムであるMRV V06T、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムA71や、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムA38ST等を挙げることができる。
【0029】
剥離シート付き粘着シートは、粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを有することが好ましい。すなわち、剥離シートは、剥離しやすくするために、第1の剥離シート12aと第2の剥離シート12bとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。例えば、第2の剥離シート12bの剥離力が、第1の剥離シート12aの剥離力よりも大きいことが好ましい。すなわち、第1の剥離シート12aが軽剥離シートであり、第2の剥離シート12bが重剥離シートであることが好ましい。一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて第1の剥離シート12aと第2の剥離シート12bの剥離性を調整すればよい。
【0030】
本発明の剥離シート付き粘着シートに含まれる粘着シートは、後述する光硬化性粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着シートである。粘着シートは、粘着剤層のみから構成される両面粘着シートであることが好ましい。両面粘着シートとしては、粘着剤層からなる単層の粘着シート、粘着剤層を複数積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に他の粘着剤層を積層した多層の粘着シートが挙げられる。なお、粘着シートは、粘着剤層と粘着剤層の間に支持体を積層した多層の粘着シートであってもよい。両面粘着シートが支持体を有する場合、支持体として透明な支持体を用いたものが好ましい。支持体としては、透明基材と同様に光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることができる。このような両面粘着シートは、粘着シート全体としての透明性にも優れることから、光学部材同士の接着に好適に用いることができる。
【0031】
粘着シートの厚みは、150μm以上であればよく、155μm以上であることが好ましく、160μm以上であることがより好ましく、165μm以上であることがさらに好ましく、170μm以上であることが特に好ましい。粘着シートの厚みの上限値は特に限定されるものではないが、例えば、500μm以下であることが好ましい。粘着シートの厚みを上記範囲内とすることにより、高温環境下や湿熱環境下においても、被着体に対して優れた密着性を発揮することができ、優れた耐アウトガス性を発揮することができる。また、粘着剤層の厚さを上記範囲内とすることにより、剥離シート付き粘着シートの製造が容易となり、生産効率を高めることができる。
【0032】
(光硬化性粘着剤組成物)
光硬化性粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体、環構造を有する単官能モノマー、粘着付与樹脂、多官能モノマー及び光重合開始剤を含む。このような光硬化性粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着シートは高温環境下や湿熱環境下においても被着体に対して優れた密着性を発揮することができる。具体的には、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着シートをポリカーボネートシートもしくはフロートガラスに貼合し、温度95℃の恒温恒湿機内部にて30分間静置した後に、100gの分銅を用いた定荷重測定を行った際、粘着シートの剥離が抑制されている場合に、高温環境下における密着性が良好であると評価できる。また、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着シートをポリカーボネートシートもしくはフロートガラスに貼合し、温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿機内に60分間静置した後に、100gの分銅を用いた定荷重測定を行った際、粘着シートの剥離が抑制されている場合に、湿熱環境下における密着性が良好であると評価できる。
【0033】
また、上記の光硬化性粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着シートは、耐アウトガス性にも優れている。具体的には、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着シートをポリカーボネートシート等の被着体に貼合し、高温環境下に所定時間以上静置した場合であっても、粘着シートと被着体の間に気泡や剥がれが発生することが抑制されている場合に、耐アウトガス性が良好であると評価できる。
【0034】
<(メタ)アクリル重合体>
光硬化性粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体を含む。(メタ)アクリル重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位と、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位とを有することが好ましい。(メタ)アクリル重合体における、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリルポリマーの全質量に対して20質量%以上であることが好ましく、(メタ)アクリル重合体における、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して1質量%以上であることが好ましい。なお、(メタ)アクリル重合体における、窒素原子を有するモノマー単位の含有量は0.1質量%以下であることが好ましい。
【0035】
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種は好ましく用いられる。
【0036】
(メタ)アクリル重合体における、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して20質量%以上であることが好ましく、24質量%以上であることがより好ましい。また、(メタ)アクリル重合体における、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量を上記範囲内とすることにより、高温環境下及び湿熱環境下における粘着シートの密着性や耐アウトガス性をより効果的に高めることができる。
【0037】
(メタ)アクリル重合体は、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有する。環構造を有する(メタ)アクリルモノマーは、脂環もしくは芳香族環を有する(メタ)アクリルモノマーであることが好ましく、脂環を有する(メタ)アクリルモノマーであることがより好ましい。脂環としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。なお、脂環はスピロ構造を有するものであってもよい。芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピリジン、フラン、ベンゾフラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、オキサゾールが挙げられる。中でも、環構造は、脂環であることが好ましく、シクロヘキサン、ジシクロペンタン、イソボルニル及びベンゼンから選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。なお、上述した環構造はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルキル基、アルケニル基、アシル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、脂環基、シアノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基等から選択される置換可能な置換基を挙げることができる。
【0038】
環構造を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、O-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。(メタ)アクリル重合体における、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体の全質量に対して1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル重合体における、環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は、30質量%以下であることが好ましい。環構造を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの密着性と耐アウトガス性をより効果的に高めることができる。
【0039】
(メタ)アクリル重合体のガラス転移温度は0℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることがさらに好ましく、-30℃以下であることが特に好ましい。(メタ)アクリル重合体のガラス転移温度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、-80℃以上であることが好ましい。
なお、(メタ)アクリル重合体のガラス転移温度は以下のFOX式により算出することができる。
1/Tgp=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
Tgpはアクリル重合体のガラス転移温度であり、Wnは各モノマーの重量分率であり、Tgnは各モノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度である。
【0040】
(メタ)アクリル重合体の重量平均分子量は、10000より大きいことが好ましく、10万以上であることがより好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル重合体の重量平均分子量は、200万以下であることが好ましく、150万以下であることがより好ましく、120万以下であることがさらに好ましい。なお、(メタ)アクリル重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、分子量が既知である標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて換算して求めた値である。(メタ)アクリル重合体としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0041】
(メタ)アクリル重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の他に、アルキル(メタ)アクリレート単位を含有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル重合体がアルキル(メタ)アクリレート単位を含む場合、アルキル(メタ)アクリレートの炭素数は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましい。また、アルキル(メタ)アクリレートの炭素数は24以下であってもよく、20以下であってもよく、18以下であってもよく、15以下であってもよく、12以下であってもよく、9以下であってもよい。アルキル(メタ)アクリレートの炭素数を上記範囲内とすることにより、粘着シートの密着性と耐アウトガス性をより効果的に高めることができる。
【0043】
(メタ)アクリル重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の他に、架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有していてもよい。架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマーが有する架橋性官能基としては、アミド基、アミノ基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、カルボン酸基を挙げることができる。(メタ)アクリル重合体における架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル重合体における架橋性官能基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量を上記範囲にすることにより、粘着シートと被着体の密着性をより効果的に高めることができる。
【0044】
但し、(メタ)アクリル重合体における、カルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位の含有量は0.1質量%以下であってもよく、0.01質量%以下であってもよい。このことは、(メタ)アクリル重合体が実質的にカルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有さないことを意味する。すなわち、本発明の光硬化性粘着剤組成物中に含まれる(メタ)アクリル重合体は、カルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマー単位を有しておらず、得られる光硬化性粘着剤組成物は酸フリーの粘着剤組成物であってもよい。
【0045】
(メタ)アクリル重合体は、必要に応じて、他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、上述したモノマー成分と共重合可能なものであればよく、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。(メタ)アクリル重合体における他の単量体単位の含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
ただし、(メタ)アクリル重合体における、窒素原子を有するモノマー単位の含有量は0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。このことは、(メタ)アクリル重合体が実質的に窒素原子を有するモノマー単位を有さないことを意味する。(メタ)アクリル重合体が実質的に窒素原子を有するモノマー単位を有さないことにより、粘着シートの密着性と耐光性がより効果的に高められる。
【0047】
光硬化性粘着剤組成物には、(メタ)アクリル重合体を含むアクリルシロップAが含まれていてもよい。ここで、アクリルシロップAには、少なくとも(メタ)アクリル重合体と、(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーが含まれる。このため、光硬化性粘着剤組成物には、(メタ)アクリル重合体に加えて、(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーが含まれていてもよい。なお、アクリルシロップAが(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーを含有する場合、これらのモノマーは粘着シートを製造する工程において重合し、(メタ)アクリル重合体を形成する。
【0048】
<粘着付与樹脂(粘着付与剤)>
光硬化性粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含む。粘着付与樹脂は、ガラス転移温度が20℃以上の樹脂であることが好ましく、ガラス転移温度が20℃以上の樹脂は、粘着付与樹脂(粘着付与剤)として機能する。光硬化性粘着剤組成物が、(メタ)アクリル重合体に加えて、粘着付与樹脂を含有することにより、光硬化性粘着剤組成物中の各成分の相溶性が高まり、光硬化性粘着剤組成物から形成される粘着シートはより優れた密着性や耐アウトガス性、耐光性を発揮する。
【0049】
ガラス転移温度が20℃以上の樹脂(粘着付与樹脂)のガラス転移温度は、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。また、粘着付与樹脂のガラス転移温度は、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。粘着付与樹脂のガラス転移温度を上記範囲内とすることにより、被着体に対する粘着シートの密着性を高めることができる。
【0050】
粘着付与樹脂の重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、3200以上であることがより好ましく、3500以上であることがさらに好ましい。また、粘着付与樹脂の重量平均分子量は、10000以下であればよく、9000以下であることがより好ましく、8000以下であることがさらに好ましい。粘着付与樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、分子量が既知である標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて換算して求めた値である。このような樹脂としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0051】
粘着付与樹脂は、官能基を実質的に有さないものであることが好ましい。この場合、粘着付与樹脂は、上述した(メタ)アクリル重合体と架橋構造を形成しない。
【0052】
粘着付与樹脂は、脂環を有するモノマー単位を含んでいてもよい。粘着付与樹脂が脂環を有するモノマー単位を含む場合、脂環を構成する炭素数は6以上であることが好ましい。炭素数が6以上の脂環としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタン等が挙げられる。
【0053】
脂環を有するモノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
【0054】
粘着付与樹脂が、脂環を有するモノマー単位を含む場合、脂環を有するモノマー単位の含有量は、粘着付与樹脂の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、脂環を有するモノマー単位の含有量は、粘着付与樹脂の全質量に対して、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。脂環を有するモノマー単位の含有量を上記範囲内とすることにより、(メタ)アクリル重合体と粘着付与樹脂との相溶性を高め、粘着シートと被着体の密着性をより効果的に高めることができる。
【0055】
粘着付与樹脂は、さらにアルキル(メタ)アクリレート単位を含有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、粘着付与樹脂は、メチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量は、粘着付与樹脂の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量は、粘着付与樹脂の全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量を上記範囲内とすることにより、(メタ)アクリル重合体と粘着付与樹脂との相溶性を高め、粘着シートと被着体の密着性をより効果的に高めることができる。
【0056】
粘着付与樹脂は、必要に応じて、他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、上述したモノマー成分と共重合可能なものであればよく、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。粘着付与樹脂における他の単量体単位の含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
光硬化性粘着剤組成物中における粘着付与樹脂の含有量は、(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、1.2質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましい。また、光硬化性粘着剤組成物中における粘着付与樹脂の含有量は、(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましい。なお、光硬化性粘着剤組成物から構成された粘着シートにおいては、(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーは、(メタ)アクリル重合体を構成しているため、粘着付与樹脂の含有量は、(メタ)アクリル重合体100質量部に対して上記範囲であることが好ましい。粘着付与樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、被着体に対する粘着シートの密着性を高めることができ、さらに、粘着シートの耐アウトガス性をより効果的に高めることができる。
【0058】
<多官能モノマー>
光硬化性粘着剤組成物は、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する多官能モノマーを含む。多官能モノマーは反応性二重結合を2つ以上有するものであり、中でも、多官能モノマーは反応性二重結合を2つ以上5つ未満有するものであることが好ましく、2つ以上4つ未満有するものであることがより好ましい。
【0059】
多官能モノマーとしては、例えば、2官能モノマーとして、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレンジアクリレート、アルキルジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカノールジアクリレート、フルオレンジアクリレートを挙げることができる。また、3官能以上のモノマーとして、アルコキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、アルコキシ化グリセリントリアクリレート、カプロラクトン変性イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、アルコキシ化ペンタエリルリトールアクリレート、(アルコキシ化)ペンタエリスリトールアクリレート、(アルコキシ化)ジトリメチロールプロパンアクリレート、(アルコキシ化)ジペンタエリスリトールアクリレート、(エトキシ化)ポリグリセリンアクリレート等を挙げることができる。
【0060】
多官能モノマーとして、市販品を使用できる。市販品の例としては、新中村化学工業社製、2官能モノマーA-200(ポリエチレングリコール#200ジアクリレート)、三官能モノマーA-TMPT((アルコキシ化)トチメチロールプロパンアクリレート)、東亞合成社製2官能モノマーM240(ポリエチレングリコールジアクリレート)、4官能モノマーM-408(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)等が挙げられる。
【0061】
多官能モノマーは、粘着シート中においては、上述した(メタ)アクリル重合体と架橋構造を構成している。なお、光硬化性粘着剤組成物中における多官能モノマーの含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、光硬化性粘着剤組成物中における多官能モノマーの含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。多官能モノマーの含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの硬度を高めることができ、粘着シートの耐久性や加工性、密着性を高めることができる。
【0062】
<単官能モノマー>
光硬化性粘着剤組成物は、単官能モノマーを含む。単官能モノマーは、分子内に反応性二重結合を1つ有するモノマーである。
【0063】
単官能モノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、などを挙げることができる。中でも、単官能モノマーの炭素数は3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましく、9以上であることが一層好ましく、10以上であることが特に好ましい。また、単官能モノマーは、環構造を有する単官能モノマーであることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。単官能モノマーの市販品の例としては、大阪有機化学工業社製のIBXA、IBXMA等が挙げられる。
【0064】
光硬化性粘着剤組成物中における単官能モノマーの含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、光硬化性粘着剤組成物中における単官能モノマーの含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。単官能モノマーの含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの密着性をより効果的に高めることができる。
【0065】
<架橋剤>
粘着剤組成物は、上記多官能モノマーの他に架橋剤をさらに含むものであってもよい。架橋剤は、(メタ)アクリル重合体が有する架橋性官能基との反応性を考慮して適宜選択できる。例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から選択できる。中でも、架橋剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物及び金属キレート化合物から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
【0066】
<光重合開始剤>
光硬化性粘着剤組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により多官能モノマーの重合を開始させるものである。ここで、「活性エネルギー線」とは電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0067】
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-ヘニルプロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチル-1-プロパノン等のアセトフェノン系光重合開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイドや、2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベンゾイルギ酸メチルや4メチルベンゾフェノン等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤の他、オキシムエステル系光重合開始剤やカチオン系光重合開始剤などの油溶性重合開始剤を挙げることができる。中でも、光重合開始剤は、アセトフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アセトフェノン系光重合開始剤又はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤であることがより好ましい。
【0068】
アセトフェノン系光重合開始剤の市販品としてはEsacureOne(オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニルプロパノン]、IGM RESINS B.V.製光開始剤)、Omnirad651(2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、IGM RESINS B.V.社製)、Omnirad184(1-ヒドロキシシクロヘキシルーフェニルケトン、IGM RESINS B.V.社製)、Omnirad1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、IGM RESINS B.V.社製)等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としてはOmnirad 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド IGM RESINS B.V.社製)やOmnirad TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルフォスフィンオキサイド IGM RESINS B.V.社製)等が挙げられる。
【0069】
光硬化性粘着剤組成物中の光重合開始剤の含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、光硬化性粘着剤組成物中における光重合開始剤の含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの硬度を高めることができ、粘着シートの耐久性や加工性、密着性を高めることができる。
【0070】
<シランカップリング剤>
光硬化性粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むものであってもよい。光硬化性粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有することで、光硬化性粘着剤組成物から形成される粘着シートと被着体の密着性をより高めることがでる。
【0071】
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプト基を含有するメルカプト系シランカップリング剤や、エポキシ基を有するエポキシ系シランカップリング剤、ビニル基を有するビニル系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤等が挙げられる。
【0072】
シランカップリング剤としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、信越化学工業社製のKBM-9659、KBM-5103、KBM-502、KBM-503、KBM-402、KBM-403等を挙げることができる。
【0073】
光硬化性粘着剤組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、光硬化性粘着剤組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は(メタ)アクリル重合体と(メタ)アクリル重合体を構成するモノマーの合計質量100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの密着性をより効果的に高めることができる。
【0074】
<溶剤>
光硬化性粘着剤組成物には、溶剤が含まれていてもよい。この場合、溶剤は、光硬化性粘着剤組成物の塗工適性の向上のために用いられる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0075】
<他の成分>
光硬化性粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分を挙げることができる。例えば可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。また、着色を目的に染料や顔料を添加してもよい。
【0076】
可塑剤としては、例えば無官能基アクリル重合体を用いてもよい。無官能基アクリル重合体としては、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位のみからなる重合体や、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位と官能基を有しない非アクリル単量体単位とからなる重合体を挙げることができる。無官能基アクリル重合体は架橋しないため、粘着性に影響を与えずに被着体に貼合したときの段差追従性を高めることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、粘着剤の相溶性や効果の高さから、ベンゾトリアゾール系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
【0077】
(剥離シート付き粘着シートの用途)
本発明の剥離シート付き粘着シートは、被着体貼合用であり、剥離シート付き粘着シートから両面の剥離シートを剥離した後に、粘着シートは被着体に貼合される。被着体は光学部材であることが好ましい。光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。また、本発明の粘着シートは、液晶モジュールとタッチパネルモジュールなどのモジュール同士の貼合に用いられてもよい。
【0078】
これらの光学部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。中でも、被着体は、ガラス、ポリカーボネート及びPMMAから選択される少なくとも1種を含むものであることが特に好ましい。
【0079】
(積層体)
本発明は、剥離シート付き粘着シートから剥離シートを剥離して得られる粘着シートと、被着体を含む積層体に関するものであってもよい。ここで被着体は、光学部材であることが好ましく、被着体は、ガラス、ポリカーボネート及びPMMAから選択される少なくとも1種であることが好ましい。本発明の積層体は、上述した粘着シートと、ポリカーボネート板もしくはPMMA板とを含む積層体であることが好ましい。本発明の粘着シートは、特にポリカーボネート板に対して、優れた密着性を発揮することができる。
【実施例0080】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0081】
(実施例1)
<アクリル重合体Aの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにアクリル酸2エチルヘキシル620g、アクリル酸4ヒドロキシルブチル290g、メタクリル酸シクロヘキシル90g、n-ドデシルメルカプタン0.1gを投入し、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて65℃まで昇温し加熱した。AIBN 0.15gを投入し、発熱を制御しながら30分間反応させ、その後室温まで冷却した。前述のモノマー比率となるように追加モノマーをフラスコに投入し、固形分濃度が20%となるよう調整した。以上のようにして、固形分濃度20質量%、重量平均分子量(GPC測定)が90万程度のアクリル重合体Aを含むシロップAを得た。
【0082】
<粘着付与樹脂aの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにメタクリル酸メチル250g、メタクリル酸イソボルニル250g、n-ドデシルメルカプタン20g、酢酸エチル500g、メチルエチルケトン200gを投入し、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて70℃まで昇温し加熱を停止した。AIBN 2gを投入し、発熱を制御しながら3時間反応させ、その後AIBNを3g追加投入し、4時間反応させた後、30℃まで冷却した。以上のようにして、重量平均分子量(GPC測定)が6,000、ガラス転移温度95℃の粘着付与樹脂aを得た。
【0083】
<粘着シートの製造>
粘着付与樹脂aについては、100℃で5時間乾燥させ、溶媒を除去した。シロップA 100gに、溶媒除去した粘着付与樹脂a 5g、アクリル酸イソボルニル3g、多官能モノマー(新中村化学工業社製、NKエステルA-200)0.3g、シランカップリング剤(信越化学工業社製、KBM-9659)0.1g、光重合開始剤(IGM Resins B.V製、Esacure One)0.3gを添加し、攪拌脱泡を行い、光硬化性粘着剤組成物を得た。光硬化性粘着剤組成物を、第2の剥離シートであるシリコーン離型剤が塗布されたポリエステルフィルム(三菱ケミカル社製、MRV V06T、厚さ100μm)上に厚みが175μmとなるように塗布し、第1の剥離シートであるシリコーン離型剤が塗布されたポリエステルフィルム(三菱ケミカル社製、MRF#75、厚さ75μm)でラミネートした後、ケミカルランプを照度4mW/cm2、積算照度600mJ/cm2となるように照射し、さらに高圧水銀ランプを照度200mW/cm2、積算照度2000mJ/cm2となるように照射することで、剥離シート付き粘着シートを得た。
【0084】
(実施例2)
<アクリル重合体Bの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにアクリル酸2エチルヘキシル690g、アクリル酸4ヒドロキシルブチル240g、メタクリル酸シクロヘキシル70g、n-ドデシルメルカプタン0.1gを投入し、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて65℃まで昇温し加熱した。AIBN 0.15gを投入し、発熱を制御しながら30分間反応させ、その後室温まで冷却した。前述のモノマー比率にて追加モノマーをフラスコに投入し、固形分濃度が20%となるよう調整した。以上のようにして、固形分濃度20質量%、重量平均分子量(GPC測定)が90万程度のアクリル重合体Bを含むシロップBを得た。
【0085】
<粘着シートの製造>
<粘着シートの製造>においてシロップAに代えてシロップBを用い、さらに、アクリル酸イソボルニルに代えてメタクリル酸イソボルニル3gを添加したこと以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0086】
(実施例3)
<アクリル重合体Cの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにアクリル酸ブチル620g、アクリル酸4ヒドロキシルブチル290g、メタクリル酸シクロヘキシル90g、n-ドデシルメルカプタン0.1gを投入し、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて65℃まで昇温し加熱した。AIBN 0.15gを投入し、発熱を制御しながら30分間反応させ、その後室温まで冷却した。前述のモノマー比率にて追加モノマーをフラスコに投入し、固形分濃度が20%となるよう調整した。以上のようにして、固形分濃度20質量%、重量平均分子量(GPC測定)が90万程度のアクリル重合体Cを含むシロップCを得た。
【0087】
<粘着シートの製造>
<粘着シートの製造>においてシロップAに代えてシロップCを用い、さらに、アクリル酸イソボルニルに代えてメタクリル酸イソボルニル3gを添加したこと以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0088】
(実施例4)
<アクリル重合体Dの製造方法>
攪拌機、窒素導入管、冷却管、温度計を備えた2Lフラスコにアクリル酸ブチル670g、アクリル酸4ヒドロキシルブチル250g、メタクリル酸シクロヘキシル80g、n-ドデシルメルカプタン0.1gを投入し、窒素流量300ml/minで60分間窒素置換した後、窒素流量を100ml/minまで下げ、ウォーターバスにて65℃まで昇温し加熱した。AIBN 0.15gを投入し、発熱を制御しながら30分間反応させ、その後室温まで冷却した。前述のモノマー比率にて追加モノマーをフラスコに投入し、固形分濃度が20%となるよう調整した。以上のようにして、固形分濃度20質量%、重量平均分子量(GPC測定)が90万程度のアクリル重合体Dを含むシロップDを得た。
【0089】
<粘着シートの製造>
<粘着シートの製造>においてシロップAに代えてシロップDを用い、さらに、第1の剥離シートとしてシリコーン離型剤が塗布されたポリエステルフィルム(三菱ケミカル社製、MRF#50、厚さ50μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0090】
(比較例1)
<粘着シートの製造>において、単官能モノマーを添加しなかった以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0091】
(比較例2)
<粘着シートの製造>において、粘着付与樹脂aを添加せず、メタクリル酸イソボルニルに代えてアクリル酸イソボルニルを用いた以外は、実施例2と同様に剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0092】
(比較例3)
<粘着シートの製造>において、多官能モノマー(新中村化学工業社製、NKエステルA-200を添加しなかった以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0093】
(比較例4)
<粘着シートの製造>において、第1の剥離シートとしてシリコーン離型剤が塗布されたポリエステルフィルム(東洋紡社製、A38ST#75、厚さ75μm)を使用した以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0094】
(比較例5)
<粘着シートの製造>において、粘着剤層厚みを50μmに変更した以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0095】
(比較例6)
<粘着シートの製造>において、第1の剥離シートとしてシリコーン離型剤が塗布されたポリエステルフィルム(東洋紡社製、A38ST#25、厚さ25μm)を使用した以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0096】
(比較例7)
<粘着シートの製造>において、第1の剥離シートとしてシリコーン離型剤が塗布されたポリエステルフィルム(藤森工業社製、75E-0010KF AS、厚さ75μm)を使用した以外は、実施例1と同様に剥離シート付き粘着シートを作製した。
【0097】
(測定及び評価)
((メタ)アクリル重合体のガラス転移温度の算出)
アクリル重合体のガラス転移温度は次のFOX式により求めた。
1/Tgp=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
Tgpはアクリル重合体のガラス転移温度であり、Wnは各モノマーの重量分率であり、Tgnは各モノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度である。
【0098】
(粘着付与樹脂のガラス転移温度の測定)
粘着付与樹脂のガラス転移温度の測定にはセイコーインスツル製DSC6200を用いた。リファレンスはアルミナ10mgとし、直径5mmのサンプル用アルミパンに粘着付与樹脂の溶媒除去品を10mg程度入れ、窒素流量50ml/minの環境下にて昇温速度10℃/minで0℃~150℃まで昇温させた。その際に、比熱が変化する変曲点を粘着付与樹脂のガラス転移温度として読み取った。
【0099】
(透過率測定)
分光光度計(V-770、日本分光社製)を使用して、各剥離シートについて波長360nmにおける光透過率を測定した。
【0100】
(TD方向の70~90℃での平均線膨張係数)
第1の剥離シートのTD方向の70~90℃での平均線膨張係数の測定には、日立ハイテクサイエンス社製の測定装置(TMA SS7100)を用い、測定は下記の条件で行った。
測定モード : 引張法
測定温度範囲: 25℃から150℃まで
昇温速度 : 20℃/分
荷重 : 100mN
試験片サイズ: 幅5mm×長さ20mm
得られたひずみ-温度曲線のデータより、70~90℃での平均線膨張係数を算出した。
【0101】
(高温定荷重測定)
得られた粘着シートを、厚さ100μmの易接着処理されたポリエステルフィルム(東洋紡社製A4300)に貼合し、貼合部が幅25mm、長さ50mmとなるようカットした。次いで、これを1mm厚のポリカーボネートシート(帝人製、パンライト1151)もしくは1.1mm厚のフロートガラス(平岡硝子工業株式会社製)にそれぞれ貼り付けた後、2kgのローラーで2往復し圧着した。その後、オートクレーブにて温度30℃、圧力0.5MPaの環境下で30分間処理し、大気圧、室温環境下にて1日静置し、評価用積層体とした。
評価用積層体を、温度95℃の恒温恒湿機内部にて30分間静置した後、ポリカーボネートシートもしくはフロートガラス側が上面になるように台に設置した。次いで、100gの分銅をポリステルフィルム端部に引っ掛け、30分経過後の接着状態もしくは剥離距離(ポリカーボネートシートもしくはフロートガラスと粘着シートの剥離距離)を測定し、以下の基準で評価した。
<高温定荷重(95℃)、被着体:ポリカーボネートシート>
A:30分間落下しない
C:30分以内に落下
<高温定荷重(95℃)、被着体;ガラス>
A:30分経過後の剥離距離が10mm未満
C:30分経過後の剥離距離が10mm以上
【0102】
(湿熱定荷重測定)
上記方法で得られた評価用積層体を温度85℃、相対湿度85%の恒温恒湿機内に60分間静置した後、ポリカーボネートシートもしくはフロートガラス側が上面になるように台に設置した。次いで、100gの分銅をポリステルフィルム端部に引っ掛け、30分経過後の剥離距離(ポリカーボネートシートもしくはフロートガラスと粘着シートの剥離距離)を測定し、以下の基準で評価した。
<湿熱定荷重(85℃85%)、被着体:ポリカーボネートシート>
A:30分間落下しない
C:30分以内に落下
<湿熱定荷重(85℃85%)、被着体:ガラス>
A:30分経過後の剥離距離が10mm未満
C:30分経過後の剥離距離が10mm以上
【0103】
(耐アウトガス性)
得られた粘着シートの片面に幅55mm、長さ80mm、1mm厚のポリカーボネート(帝人製パンライト1151)を貼り合わせ、もう一方の面に幅52mm、長さ76mmの1mm厚のガラス(マツナミ製)を貼り合わせた後、オートクレーブにて温度30℃、圧力0.5MPaの環境下で30分間処理し、大気圧、室温環境下にて1日静置した。得られた評価用積層体を95℃の乾燥機に入れ6時間後に取り出し、気泡や剥がれの発生の有無を評価した。
A:気泡及び剥がれなし
C:気泡又は剥がれあり
【0104】
(粘着シートの外観)
各実施例及び比較例で得られた光硬化性粘着剤組成物を用いて、表1に記載の第1の剥離シート及び第2の剥離シートの間に粘着剤層を形成した。なお、粘着剤層の厚みは表1に記載のとおりとした。また、各剥離シートはいずれも1300mm幅のものを使用した。
具体的には、各実施例及び比較例で得られた光硬化性粘着剤組成物を、1300mm幅の第2の剥離シート(シリコーン離型剤が塗布されたポリエステルフィルム)上に、表1に記載の厚みとなるように塗布し、第1の剥離シートでラミネートした後、ケミカルランプを照度4mW/cm2、積算照度600mJ/cm2となるように照射し、さらに高圧水銀ランプを照度200mW/cm2、積算照度2000mJ/cm2となるように照射することで、剥離シート付き粘着シートを得た。さらに得られた粘着シートを巻き取って粘着ロールを得た。
(実施製造粘着シートの外観評価)
得られた粘着ロールから粘着シートを1300mm×1000mmの大きさに切り出し、剥離シートの浮きシワ等、外観に異常がないかを目視で確認した。また、LED光を当て粘着シートの投影を映し出し、筋が入っていないか確認した。
A:剥離シートの浮き、シワ及び筋が発生していない
C:剥離シートの浮き、シワ又は筋が発生している
【0105】
【0106】
2EHA:アクリル酸2エチルヘキシル
BA:アクリル酸ブチル
4HBA:アクリル酸4ヒドロキシルブチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
IBXMA:メタクリル酸イソボルニル
【0107】
比較例に比べて実施例では、高温環境下における接着性及び/又は高温高湿環境下における接着性が優れていた。また、実施例で得られた粘着シートは耐アウトガス性に優れ、得られた粘着シートの外観も良好であった。