(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071791
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】たん白凝集促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240520BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182203
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川口 大地
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC482
4C083AC712
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD352
4C083AD492
4C083BB51
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】
安全性の高い天然物由来の物質の中から安定性にすぐれ、ツッパリを伴わず使用感にも優れたたん白凝集促進剤を提供する。
【解決手段】
カミツレ又はカンゾウから選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とするたん白凝集促進剤により上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カミツレ又はカンゾウから選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とするたん白凝集促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載のたん白凝集促進剤を含有する皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に配合して使用するたん白凝集促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ローション等の化粧料に配合される肌の引き締め剤には、皮膚上の毛孔や汗孔等に作用して一時的に皮膚蛋白を引き締め、過剰の脂質や汗等の分泌を抑制する作用があり、それによりメークアップ化粧料の仕上がりを良くし、発汗等による化粧くずれを防ぎ、ひげ剃り後の細かい切り傷からの出血を抑えたりする。
【0003】
従来、肌の引き締め剤としては以下のものが知られている。一つ目が、エタノール等の蒸発熱によって皮膚温度を一時的に低下させ、その物理的刺激を利用するもの(例えば非特許文献1)。二つ目が、皮膚表面の蛋白質官能基と結び付く陽イオン性(たとえば塩化アルミニウム、塩基性アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム等)または陰イオン性(たとえばクエン酸、酒石酸等の有機酸)利用し蛋白間のファンデルワールス力や疎水相互作用の引力を強くし凝集させるもの(例えば非特許文献2)。三つ目が、ハマメリス抽出物、ゲンノショウコ抽出物、シャクヤク抽出物等、タンニン系化合物を含むことにより蛋白凝集作用を利用するもの(例えば非特許文献3)。四つ目が、コラーゲンゲルの収縮促進作用を利用するもの。
【0004】
しかしながら、上記にあげた効果は一過性であり且つ安全な使用量範囲ではほとんど効果がない。また、いずれも安全性に問題があり、使用が難しく、保存安定性が悪く、また鉄イオンによって著しい着色を起こす。さらに、タンニン系の化合物についてはツッパリ感を伴うため使用感としては良くない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 報 文 42 (4) 289-296 (2008)
【非特許文献2】タンパク質の凝集剤としての塩・有機溶媒・高分子 吉澤 俊祐 生物工学 第93巻 2015年 第5号
【非特許文献3】YAKUGAKU ZASSHI 128(8)1119-1131(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、安全性の高い天然物由来の物質の中から安定性にすぐれ、ツッパリを伴わず使用感にも優れたたん白凝集促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々の植物を用いて、たん白凝集促進作用についてスクリーニングを行った。その結果、カミツレ又はカンゾウから選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物が、上記たん白凝集促進作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、カミツレ、カンゾウから選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とするたん白凝集促進剤を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記たん白凝集促進剤を含有する皮膚化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明を用いれば、安全性の高い天然物由来の物質の中から安定性にすぐれ、ツッパリを伴わず使用感にも優れたたん白凝集促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、カミツレ又はカンゾウから選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物を有効成分とするたん白凝集促進剤を提供する。
【0012】
本明細書において、「たん白凝集促進剤」とは、たんぱく質の折り畳み構造に作用しタンパク質を凝集させることにより皮膚の引き締め効果をもたらすもののことをいう。
【0013】
<カミツレ>
カミツレは、キク科シカギク属植物のカミツレ(学名Matricaria recutita)を意味し、構成部位は特に限定されるものではなく、例えば花蕾部、葉部、枝部、種子、樹皮、根部等を用いることができる。
【0014】
カミツレは、抗アレルギー作用、紫外線防御作用を有することが知られているが、たん白凝集促進作用があることは知られていなかったが、本願発明では、カミツレにたん白凝集性物質が存在することを見出した。
【0015】
カミツレのたん白凝集性物質は、カミツレを1,3-ブチレングリコールを溶媒とする抽出により抽出することができ、たん白質凝集作用を発揮する濃度として、0.0001%以上あれば効果を発揮することができる。
したがって、該抽出により得られる抽出物を本発明の肌の引き締め剤とすることができる。
【0016】
<カンゾウ>
カンゾウとはマメ科カンゾウ属植物のカンゾウ(学名 Glycyrrhiza)を意味する。構成部位は特に限定されるものではなく、例えば花蕾部、葉部、枝部、種子、樹皮、根部等を用いることができる。カンゾウは、傷の治療効果や抗炎症効果、肌荒れ、ニキビ予防、抗アレルギーなどの効果が知られている。
【0017】
カンゾウには、たん白凝集促進作用があることは知られていなかったが、本願発明では、カンゾウにたん白凝集性物質が存在することを見出した。
【0018】
カンゾウの蛋白凝集性物質は、カンゾウに水を溶媒とする抽出により抽出することができ、たん白質凝集作用を発揮する濃度として、0.0001%以上あれば効果を発揮することができる。
【0019】
本発明のたん白凝集促進剤の有効成分は、主として糖質および無機質からなると考えられる。それらのいずれが肌の引き締め剤作用に関与しているのかは確認されていないが、タンニン系の肌の引き締め剤と比べると、肌の引き締め作用はやや温和であるが突っ張り感を伴うことがないという特徴がある。
【0020】
本発明のたん白凝集促進剤は、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤等、任意の剤形の任意の化粧品、皮膚外用剤等に配合することができ、その際、任意の美白剤(たとえばプラセンター、コウジ酸、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アルブチン等)、抗炎症剤(たとえばグリチルリチン酸、グリチルレチン酸、アラントイン、ビサボロール等)、保湿剤(たとえばグリセリン、PCAソーダ、ヒアルロン酸等)、紫外線吸収剤(たとえばパラアミノ安息香酸、サリチル酸ジプロピレングリコールエステル等)、血流促進剤(たとえばセンブリエキス、ビタミンE、トウガラシチンキ等)と併
用することも可能である。配合対象として特に好適な化粧品の例としては、化粧水、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、ヘアトニック、乳液、粉末入り化粧水等の水-アルコール系化粧料がある。
【0021】
試験例
カミツレの1,3-ブチレングリコール抽出液、カンゾウの水抽出液、ならびにタンニン酸(対照例)について、たん白凝集力試験を下記の方法により行なった。
【0022】
試験法:各濃度の試料溶液(溶媒:水)を用意し、そこに3.5重量%コラーゲン水溶液を5%混合する。室温で静置し、目視による凝集物の確認を行った。
【0023】
測定結果は表1に示したとおりで、カミツレ及びカンゾウの各抽出液は濃度0.0001重量%で実用上十分なたん白凝集作用を示した。
【0024】
官能試験
各濃度の試料溶液(溶媒:水)2ccを手に取り、洗顔直後の顔面にパシャパシャと塗布し、下記の官能試験を実施した。
【0025】
官能試験例1
(肌の引き締め感)
肌の引き締め感の機能について評価した。各試料について5段階で評価した。数値については5点「引き締め感が非常に高い」4点「引き締め感が高い」3点「どちらとも言えない」2点「引き締め感力が低い」1点「引き締め感が非常に低い」である。評価は20名のパネルが行った。試験結果は表1に示したとおりである。
【0026】
官能試験例2
(肌の引き締めの持続性)
肌の引き締め感の機能について評価した。各試料について5段階で評価した。数値については5点「引き締めの持続性が非常に高い」4点「引き締めの持続性が高い」3点「どちらとも言えない」2点「引き締めの持続性が低い」1点「引き締めの持続性が非常に低い」である。評価は20名のパネルが行った。試験結果は表1に示したとおりである。
【0027】
官能試験例3
(肌のつっぱり感)
肌の引き締め感の機能について評価した。各試料について5段階で評価した。数値については5点「肌のつっぱり感が非常に低い」4点「肌のつっぱり感が低い」3点「どちらとも言えない」2点「肌のつっぱり感が高い」1点「肌のつっぱり感が非常に高い」である。評価は20名のパネルが行った。試験結果は表1に示したとおりである。
【0028】
【0029】
以下、本発明皮膚外用剤のその他の処方例を実施例として挙げる。
【0030】
処方例1(化粧水) (重量%)
(1)DPG 10%
(2)BG 5%
(3)エタノール 2%
(4)グリセリン 1%
(5)PEG-75 0.5%
(6)ソルビトール 0.5%
(7)ベタイン 0.4%
(8)PPG-13デシルテトラデセス-24 0.3%
(9)キサンタンガム 0.2%
(10)サッカロミセス/コメ発酵液 0.0001%
(11)クエン酸Na 0.2%
(12)クエン酸 0.1%
(13)ツボクサエキス 0.0001%
(14)イタドリ根エキス 0.0001%
(15)オウゴン根エキス 0.0001%(16)カンゾウ根エキス 0.0001%
(17)チャ葉エキス 0.0001%
(18)カミツレ花エキス 0.0001%
(19)ローズマリー葉エキス 0.0001%
(20)ティーツリー葉油 0.0001%
(21)コメヌカエキス 0.0001%
(22)フェノキシエタノール 0.05%
(23)メチルパラベン 0.05%
(24)水 残部
【0031】
処方例2(乳液) (重量%)
(1)ミネラルオイル 5%
(2)ミリスチン酸オクチルドデシル 4%
(3)ジグリセリン 2%
(4)ジメチコン 1%
(5)ベヘニルアルコール 1%
(6)ステアリルアルコール 0.2%
(7)ワセリン 0.01%
(8)ナイアシンアミド 0.1%
(9)カルボマー 0.1%
(10)スクワラン 0.01%
(11)ミツロウ 0.01%
(12)コレステロール 0.01%
(13)ツボクサエキス 0.0001%
(14)イタドリ根エキス 0.0001%
(15)オウゴン根エキス 0.0001%
(16)カンゾウ根エキス 0.0001%
(17)チャ葉エキス 0.0001%
(18)カミツレ花エキス 0.0001%
(19)ローズマリー葉エキス 0.0001%
(20)ステアリン酸グリセリル(SE) 1%
(21)ステアリン酸 1%
(22)メチルパラベン 0.02%
(23)フェノキシエタノール 0.2%
(24)精製水 残部