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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071795
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ボックスカルバート
(51)【国際特許分類】
   E03F 3/04 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
E03F3/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182215
(22)【出願日】2022-11-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】591067897
【氏名又は名称】千葉窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】野手 誠
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA06
2D063BA23
2D063BA24
2D063BA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】頂版排水処理を施されたボックスカルバート内に排水を取り込んで排水効率の向上を図る。
【解決手段】ボックスカルバート11は列状に連結され、左右一対の側壁12と、両側壁12の上端部間を連結する頂版13と、側壁12の下端部間を連結する底版14とを備える。この頂版13上には排水用の勾配が施され、側壁12は勾配をつたって流れてきた排水を集めて内部に取り込む集水導入部材20を備える。この集水導入部材20は、勾配をつたって流れてきた排水を集水する透水マット21と、透水マット21に集水された排水を内部に取り込むウィープホール22とを備える。この透水マット21の下側には、透水マット21に集水された排水の流れ落ちを堰き止めて、ウィープホール22へ案内する止水コンクリート23が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の側壁と、
前記両側壁の上端部間を連結する頂版と、
前記側壁の下端部間を連結する底版と、
を備え、
前記頂版上には排水用の勾配が施されている一方、
前記側壁は、前記勾配をつたって流れてきた排水を集めて内部に取り込む集水導入部材を備える
ことを特徴とするボックスカルバート。
【請求項2】
前記集水導入部材は、
前記勾配をつたって流れてきた排水を集水する透水槽と、
前記透水槽に集水された排水を内部に取り込む導入部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のボックスカルバート。
【請求項3】
前記透水槽は、前記側壁の外面に設けられ、
前記透水槽の下側には、前記透水槽に集水された排水の落下を堰き止めて前記導入部へ案内する止水コンクリートが設けられている
ことを特徴とする請求項2記載のボックスカルバート。
【請求項4】
前記集水導入部材は、前記勾配をつたって流れてきた排水を集水する透水管と、
前記透水管に集水された排水を内部に取り込む導入部と、
前記透水管内と前記導入部内との間を連通させる連通管と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のボックスカルバート。
【請求項5】
前記透水管は、列状に連結されたボックスカルバート群の長手方向に沿って設置される一方、
前記連結管および前記導入部は、前記ボックスカルバート群の長手方向に一定間隔をおいて設置される
ことを特徴とする請求項4記載のボックスカルバート。
【請求項6】
前記導入部材は、ウィープホールにより構成され、
前記排水の逆流防止用の弁を備える
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか記載のボックスカルバート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頂版上に排水勾配を施されたボックスカルバートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2のボックスカルバートは、地中に埋設される箱型のコンクリート構造物として構成されている。このボックスカルバートの用途は、多岐にわたり水路などの様々なインフラ事業で活用されている。
【0003】
非特許文献1には、頂版排水処理が施されたボックスカルバートが示されている。ここでは寒冷地などで頂版上面の滞水による凍上の影響が予想される場合には、図1に示すように、ボックスカルバート1の頂版2上のコンクリート仕上面3に「2%」程度の勾配を施すことが望ましいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-74886
【特許文献2】特開2019-152025
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“道路土工カルバート工指針(平成21年度版)” 平成22年3月 公益社団法人日本道路協会 P140
【非特許文献2】”擁壁用透水マット技術マニュアル”,監修 建設省建設経済局民間宅地指導室,社団法人全国宅地擁壁技術協会,平成3年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1の頂版排水処理によれば、矢印Pに示すように、前記勾配によって雨水などを排水することで頂版2上の凍結防止などを図っている。
【0007】
しかしながら、前記勾配をつたって流れてきた排水は、ボックスカルバート1の側壁4脇に流れ落ちるため、地下水として滞水するおそれがある。これでは排水効率が悪く、却って土砂災害などの原因となる危険がある。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、頂版排水処理を施されたボックスカルバート内に排水を取り込んで排水効率を向上させることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明のボックスカルバートは、
一対の側壁と、
前記両側壁の上端部間を連結する頂版と、
前記側壁の下端部間を連結する底版と、
を備え、
前記頂版上には排水用の勾配が施されている一方、
前記側壁は、前記勾配をつたって流れてきた排水を集めて内部に取り込む集水導入部材を備えることを特徴としている。
【0010】
(2)前記集水導入部材の一態様は、
前記勾配をつたって流れてきた排水を集水する透水槽と、
前記透水槽に集水された排水を内部に取り込む導入部と、
を備える。
【0011】
(3)前記透水槽は、一態様として前記側壁の外面に設けられ、
前記透水槽の下側には、前記透水槽に集水された排水の落下を堰き止めて前記導入部へ案内する止水コンクリートが設けられている。
【0012】
(4)前記集水導入部材の一態様は、前記勾配をつたって流れてきた排水を集水する透水管と、
前記透水管に集水された排水を内部に取り込む導入部と、
前記透水管内と前記導入部内との間を連通させる連通管と、
を備える。
【0013】
(5)前記透水管は、一態様として列状に連結されたボックスカルバート群の長手方向に沿って設置され、
前記連結管および前記導入部は、一態様として前記ボックスカルバート群の長手方向に一定間隔をおいて設置される。
【0014】
(6)前記導入部材の一態様は、ウィープホールにより構成され、
前記排水の逆流防止用の弁を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、頂版排水処理を施されたボックスカルバート内の水路に排水を取り込んで排水効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】非特許文献1のボックスカルバートを示す正面図。
図2】(a)は実施例1のボックスカルバートを示す正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB矢視図、(d)は(a)のC部拡大図。
図3】(a)はウィープホールの側面図、(b)は(a)のD部内視図、(c)は(a)のF矢視図。
図4】(a)は実施例2のボックスカルバートを示す正面図、(b)は(a)のD-D断面図、(c)は(a)のE矢視図、(d)は(a)のG部拡大図。
図5】実施例3のボックスカルバートを示す正面図。
図6】(a)は透水管の管体の連結前の状態図、(b)は同連結後の状態図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るボックスカルバートを説明する。このボックスカルバートは、箱型(暗渠型)のコンクリート構造物により構成され、複数個を列状に連結した集合体(ボックスカルバート群)として用いられる。例えば前記集合体を道路下の地中などに埋設することで地下水路などを構築することができる。
【0018】
特に前記ボックスカルバートは、従来の頂版排水処理(図1参照)が施された幅の大きいタイプにとって有益である。なお、前記ボックスカルバートは、プレキャスト化され、あらかじめ工場で製作された資材を工事現場に運搬し、据え付けと組立てが行われている。以下、各実施例に基づき前記ボックスカルバートの具体的な実施形態を説明する。
【実施例0019】
図2および図3に基づき実施例1を説明する。図2中の11は、本実施例のボックスカルバートを示している。
【0020】
ボックスカルバート11は、図2(a)に示すように、左右一対の側壁12と、両側壁12の上端部間を連結する頂版13と、側壁12の下端部間を連結する底版14と、両側壁12間において頂版13と底版14とを連結する一対の中間壁15とを備えている。
【0021】
ここではボックスカルバート11の内部には、側壁12,中間壁15に仕切られた三つの水路1~R3が設けられている。このとき中間壁15の奥行W1(図2(b)参照)は、側壁12の奥行W2(図2(c)参照)よりも短く形成されている。
【0022】
その結果、ボックスカルバート11を列状に連結した際には、前後のボックスカルバート11の中間壁15間に図示省略の隙間が生じ、各水路R1~R3が連通される。このボックスカルバート11同士の連結手段としては、PC鋼棒や連結金物及びその他継手(例えば高弾性接着継手)などを用いた公知の手法を採用することができる。
【0023】
頂版13上のコンクリート仕上面13cには、図2(a)に示すように、従来の頂版排水処理と同様に中央部13aから両端部13bの方向に向かって約2%の下り勾配が施されている。
【0024】
各側壁12の上部外面には、図2(c)(d)に示すように、頂版13上からの排水を集めて水路R1,R3内に取り込む集水導入部材20が設置されている。この集水導入部材20は、前記排水を集水する透水槽21と、透水槽21の集水した前記排水を水路R1,R3に導入するウィープホール22とを備えている。
【0025】
透水槽21は、砂利・砕石などは使用することなく、擁壁用の透水マットにより構成されている(本実施例では透水マット21と呼ぶ。)。この透水マット21は、所定の空隙率を持つ排水材であって積層構造を通して高い透水率を有し、非特許文献2の擁壁用透水マット技術マニュアルに規定された性能を満たすものが使用される。
【0026】
例えば高密ポリエチレンを積層したタイプ(50%~70%の空隙率を持つ。)、または透水フィルターとリブ型構造体とを積層したタイプなどを用いることができる。なお、透水マット21は、各側壁12の上部外面の奥行方向に接着などの公知の手段で固着されるものとする。
【0027】
透水マット21の下側には、縦断面矩形状の止水コンクリート23が各側壁22の奥行方向に沿って形成され、透水マット21に集水された排水の流れ落ちを堰き止めてウィープホール22内へ案内している。
【0028】
このウィープホール22は、図3(a)に示すように、略円筒状に形成され、各側壁22内に埋設されている。すなわち、止水コンクリート22のやや上側の位置に埋設され、透水マット21に集水された排水を内部に取り込む。ここではウィープホール22は、図3(b)(c)に示すように、一端部22a側の内部にビス30で固定された弁座31に支持されたゴム弁(埋め戻し弁)32を備え、他端部22b側の内部には図示省略のフィルター(不織布付)が設けられている。
【0029】
このように構成されたボックスカルバート11によれば、従来の頂版排水処理と同様に頂版13上の雨水などは、矢印Pに示すように、前記勾配をつたって端部13bから側壁12側に流れ落ちて排水され、これにより頂版13上の滞水による凍上が抑制される。
【0030】
ただし、各側壁12の上部外面には透水マット21が固着されているため、前記排水は透水マット21に集水される。また、透水マット21に集水された前記排水は、止水コンクリート23により落下が防止され、ウィープホール22内に案内される。
【0031】
ウィープホール22内の前記排水は、水路R1,R2に流れ落ち、前記空隙を通って水路R2にも流れ込む。したがって、前記排水は、従来の頂版排水処理のように側壁12脇に溜まることなく、水路R1~R3に導入されて取り込まれる。
【0032】
その結果、頂版12上の排水効率が向上し、前記排水が地下水として滞水することを防止でき、前記滞水による土砂災害などを回避することが可能となる。なお、水路R1~R3が水位上昇してもゴム弁32によりウィープホール22内の逆流が防止されている。
【実施例0033】
図4に基づき実施例2を説明する。図4中の31は、本実施例のボックスカルバートを示している。
【0034】
このボッスカルバート31は、透水槽21および止水コンクリート23が各側壁22の奥行方向に沿って形成されているものの、透水槽21に透水マットに砂利・砕石を設けた従来工法のタイプが採用されている。また、止水コンクリート23が透水槽21の幅方向に沿った長さの板状に形成されている。さらに一本の中間壁15を備え、内部に二つの水路R1,R2が設けられている。
【0035】
本実施例のボックスカルバート11によれば、実施例1と同様に頂版13上の雨水などは、前記勾配をつたって端部13bから側壁12側に流れ落ちて前記排水として透水槽21に集水され、止水コンクリート23によりウィープホール22内に案内される。これにより前記排水が水路R1,R2に導入されて取り込まれ、実施例1と同様な効果が得られる。
【実施例0036】
図5および図6に基づき実施例3を説明する。図5中の41は、本実施例のボックスカルバートを示している。このボックスカルバート41は、実施例2と同様に一本の中間壁15を備え、内部に二つの水路R1,R2が設けられている。
【0037】
ただし、本実施例の集水導入部材20は、透水槽21および止水コンクリート23を廃止され、頂版13上の雨水などを排水として集水する直管状の透水管42と、透水管42に集水された前記排水をウィープホール22に案内する縦管44と、透水管42を受ける突起部43とが追加されている。また、ウィープホール22は、列状に連結されたボックスカルバート41群の長手方向に所定間隔(例えば10m間隔)をおいて埋設されている。
【0038】
透水管42は、突起部43に載置されてブラケット(図示省略)などを用いて側壁12の上端外面に固定されている。具体的には透水管42は、図6(a)(b)に示すように、管体42a,42bを接合することで構成されている。この管体42a,42bの外周には、谷部43と山部44とが交互に形成されており、谷部43にはネット状の吸水孔(図示省略)が形成され、該吸水孔により前記排水が透水管42内に集水される。また、透水管42は、管体42aの直管接手42cを管体42b内にねじ込んで接合され、前記ボックスカルバート41群の長手方向に沿って配置されている。
【0039】
縦管44は、側壁12の外面上部に固定され、透水管42とウィープホール22とを連通させている。すなわち、縦管44の下端外面には図示省略の開口部が形成され、ウィープホール22の他端部22b側が前記開口部に挿入されている。
【0040】
これにより透水管42内に集水された排水は、前記連通孔からウィープホール22内に導入される。この縦管44は、例え角管であれば側壁12の外面に固着することができ、また円管であればブラケット(図示省略)などを用いて固定することができる。
【0041】
突起部43は、ウィープホール22および縦管44を配置された箇所を除き側壁12に一体形成されている。この突起部43は、側壁12の長手方向に沿って形成してもよく、あるいは側壁12に所定間隔をおいて複数個を形成してもよく、透水管42を載せて支持できればよい。
【0042】
本実施例のボックスカルバート41によれば、頂版13上の雨水などは、前記勾配をつたって端部13bから側壁12側に流れ落ちて排水される。このとき側壁12の上端外面には透水管42が固定されているため、前記排水は透水管42内に集水される。
【0043】
透水管42に集水された前記排水は、縦管44によりウィープホール22内に案内されて導入される。これにより前記排水が水路R1,R2に導入されて取り込まれ、実施例1と同様な効果が得られる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えば実施例1~3の中間壁15の本数および水路Rの個数は、ボックスカルバート11,31,41の大きさなどに応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0045】
11,31,41…ボックスカルバート
12…側壁
13…頂版
14…底版
20…集水導入部材
21…透水槽
22…ウィープホール(導入部)
23…止水コンクリート
32…ゴム弁
42…透水管
44…縦管(連通管)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の側壁と、
前記両側壁の上端部間を連結する頂版と、
前記側壁の下端部間を連結する底版と、
を備え、
前記頂版上には排水用の勾配が施されている一方、
前記側壁は、前記勾配をつたって流れてきた排水を集めて内部に取り込む集水導入部材を備え、
前記集水導入部材は、
前記勾配をつたって流れてきた排水を集水する透水槽と、
前記透水槽に集水された排水を内部に取り込む導入部と、
を備え、
前記透水槽は、前記側壁の外面に設けられ、
前記透水槽の下側には、前記透水槽に集水された排水の落下を堰き止めて前記導入部へ案内する止水コンクリートが設けられている
ことを特徴とするボックスカルバート。
【請求項2】
一対の側壁と、
前記両側壁の上端部間を連結する頂版と、
前記側壁の下端部間を連結する底版と、
を備え、
前記頂版上には排水用の勾配が施されている一方、
前記側壁の外面には、前記勾配をつたって流れてきた排水を集めて内部に取り込む集水導入部材が設けられ、
前記集水導入部材は、
前記勾配をつたって流れてきた排水を集水する透水管と、
前記透水管に集水された排水を内部に取り込む導入部と、
前記透水管内と前記導入部内との間を連通させる連通管と、
を備えることを特徴とするボックスカルバート。
【請求項3】
前記透水管は、列状に連結されたボックスカルバート群の長手方向に沿って設置される一方、
前記連管および前記導入部は、前記ボックスカルバート群の長手方向に一定間隔をおいて設置される
ことを特徴とする請求項記載のボックスカルバート。
【請求項4】
前記導入部は、ウィープホールにより構成され、
前記排水の逆流防止用の弁を備える
ことを特徴とする請求項1~のいずれか記載のボックスカルバート。