(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000718
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】レーダ装置及びレーダ信号受信装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
G01S7/02 216
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099580
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】栗原 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AD05
5J070AD09
5J070AH12
5J070AH31
5J070AH35
(57)【要約】
【課題】 指定覆域の全空間を高データレートで常時観測できるようにする。
【解決手段】 実施形態に係るレーダ装置によれば、全素子数Nのアンテナを有し、前記アンテナの素子パターンで決まる全観測範囲をFOVeとし、前記全素子数Nのアンテナのうち、Ns(Ns≧1)素子のアンテナからなるサブアレイを含む1個のアンテナで観測できる範囲を部分観測空間FOV1(FOV1=FOVe/Ns)とし、前記アンテナの開口をNs分割し、各々の分割開口(素子数:M=N/Nsの四捨五入)に異なる部分観測空間FOV1を割り当て、前記部分観測空間FOV1のそれぞれに、空間FOV1内を覆う送信ファンビームを形成し、前記分割開口のそれぞれの開口内にサブアレイDBF(Digital Beam Forming)によるL(L=M/Nsの四捨五入)本の受信マルチビームを形成して、全観測空間FOVeを常時観測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全素子数Nのアンテナを有し、
前記アンテナの素子パターンで決まる全観測範囲をFOVeとし、
前記全素子数Nのアンテナのうち、Ns(Ns≧1)素子のアンテナからなるサブアレイを含む1個のアンテナで観測できる範囲を部分観測空間FOV1(FOV1=FOVe/Ns)とし、
前記アンテナの開口をNs分割し、各々の分割開口(素子数:M=N/Nsの四捨五入)に異なる部分観測空間FOV1を割り当て、
前記部分観測空間FOV1のそれぞれに、空間FOV1内を覆う送信ファンビームを形成し、
前記分割開口のそれぞれの開口内にサブアレイDBF(Digital Beam Forming)によるL(L=M/Nsの四捨五入)本の受信マルチビームを形成して、全観測空間FOVeを常時観測するレーダ装置。
【請求項2】
任意の部分観測範囲FOVが、Nsで決まるFOV1(FOVe/Ns)のP(1≦P<Nsの整数)倍の場合に、前記アンテナの開口をNs/P分割してビーム形成する請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
アンテナの素子パターンで決まる全観測範囲をFOVeとし、
全素子数Nのアンテナのうち、Ns(Ns≧1)素子のアンテナからなるサブアレイを含む1個のアンテナで観測できる範囲を部分観測空間FOV1(FOV1=FOVe/Ns)とし、
前記アンテナの開口をNs分割し、各々の分割開口(素子数:M=N/Nsの四捨五入)に異なる部分観測空間FOV1を割り当て、
前記分割開口のそれぞれの開口内にサブアレイDBF(Digital Beam Forming)によるL(L=M/Nsの四捨五入)本の受信マルチビームを形成して、全観測空間FOVeを常時観測するレーダ信号受信装置。
【請求項4】
任意の部分観測範囲FOVが、Nsで決まるFOV1(FOVe/Ns)のP(1≦P<Nsの整数)倍の場合に、前記アンテナの開口をNs/P分割してビーム形成する請求項3記載のレーダ信号受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、レーダ装置及びレーダ信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置やレーダ信号受信装置では、指定覆域の観測空間を覆うために、予め決められた時系列に沿ってビームを走査している。このため、指定覆域が広域の場合にはその全空間を常時観測することができず、データレートが低くなるため、小目標を検出する高データレートな探索には対応できない問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】DBF(Digital Beam Forming):吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.289-291(1996)
【非特許文献2】FFT(Fast Fourier Transform):日野、‘スペクトル解析’、朝倉書店、pp.193-198(1977)
【非特許文献3】CFAR(Constant False Alarm Rate):吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.87-89(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の課題は、指定覆域の全空間を高データレートで常時観測できるレーダ装置及びレーダ信号受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、実施形態に係るレーダ装置は、全素子数Nのアンテナを有し、前記アンテナの素子パターンで決まる全観測範囲をFOVeとし、前記全素子数Nのアンテナのうち、Ns(Ns≧1)素子のアンテナからなるサブアレイを含む1個のアンテナで観測できる範囲を部分観測空間FOV1(FOV1=FOVe/Ns)とし、前記アンテナの開口をNs分割し、各々の分割開口(素子数:M=N/Nsの四捨五入)に異なる部分観測空間FOV1を割り当て、前記部分観測空間FOV1のそれぞれに、空間FOV1内を覆う送信ファンビームを形成し、前記分割開口のそれぞれの開口内にサブアレイDBF(Digital Beam Forming)によるL(L=M/Nsの四捨五入)本の受信マルチビームを形成して、全観測空間FOVeを常時観測する。
【0006】
上記構成によれば、観測範囲をサブアレイ素子数により決まるFOVで分割し、同じ分割数で開口分割した分割アンテナに割り当てて、サブアレイDBFによるマルチビームで観測することで、常時観測を可能にすることができる。
【0007】
また、実施形態に係るレーダ信号受信装置は、アンテナの素子パターンで決まる全観測範囲をFOVeとし、全素子数Nのアンテナのうち、Ns(Ns≧1)素子のアンテナからなるサブアレイを含む1個のアンテナで観測できる範囲を部分観測空間FOV1(FOV1=FOVe/Ns)とし、前記アンテナの開口をNs分割し、各々の分割開口(素子数:M=N/Nsの四捨五入)に異なる部分観測空間FOV1を割り当て、前記分割開口のそれぞれの開口内にサブアレイDBF(Digital Beam Forming)によるL(L=M/Nsの四捨五入)本の受信マルチビームを形成して、全観測空間FOVeを常時観測する。
【0008】
上記構成によれば、観測範囲をサブアレイ素子数により決まるFOVで分割し、同じ分割数で開口分割した分割アンテナに割り当てて、サブアレイDBFによるマルチビームで観測することで、常時観測を可能にすることができる。
【0009】
さらに、上記レーダ装置、レーダ信号受信装置において、任意の部分観測範囲FOVが、Nsで決まるFOV1(FOVe/Ns)のP(1≦P<Nsの整数)倍の場合に、アンテナ開口をNs/P分割してビーム形成する。
【0010】
上記構成によれば、観測範囲に応じて、サブアレイ素子数により決まるFOVで分割し、開口分割数を大きくすることで、サブアレイDBFによる狭ビーム幅のマルチビームで観測することで、レーダ装置または受信装置により常時観測を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るレーダ装置の送信系統及び受信系統の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すレーダ装置に用いられるアンテナ装置に送受信モジュールを用いた構成を示す概念図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す送受信モジュールの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態において、観測範囲内のビーム形成方法を説明するための概念図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態において、アンテナ開口をNs分割し、各々の分割開口を空間分割単位に割り当てる様子を示す概念図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態において、FOV1毎の各ビームポジションに連続したPRIパルスを送受信し、CPI間でスライディング処理してデータを出力する様子をドップラ軸の応答で示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係るレーダ信号受信装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すレーダ信号受信装置に用いられるアンテナ装置の構成を示す概念図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すアンテナ装置のアンテナ素子毎の受信モジュールの構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態において、アンテナ開口をNs分割し、各々の分割開口を空間分割単位に割り当てる様子を示す概念図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態に係るレーダ装置の送信系統及び受信系統の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態において、アンテナ開口を2分割し、各々の分割開口を空間分割単位に割り当てる様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1乃至
図6を参照して、第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1は第1の実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図で、(a)が送信系統の構成を示すブロック図、(b)が受信系統の構成を示すブロック図である。また、
図2は
図1に示すレーダ装置に用いられるアンテナ装置が送受共用の構成を示す概念図、
図3は
図2に示すアンテナ装置のアンテナ素子毎の送受信モジュールの構成を示すブロック図である。
図1(a)に示すレーダ装置の送信系統では、信号生成器11で送信種信号を生成し、変調器12で送信種信号から変調信号を生成し、周波数変換器13で変調信号を高周波信号に変換した後、パルス変調器14でパルス変調してレーダ信号を生成し、送信給電回路15で送信アンテナを構成するM系統の送信サブアレイ(1~M)16に給電して送信する。
【0015】
一方、
図1(b)に示す受信系統は、受信アンテナを構成するM系統の受信サブアレイ(1~M)21でレーダ反射信号を受信し、周波数変換器22で受信信号をベースバンドに周波数変換し、AD変換器23でディジタル信号に変換する。次に、ビーム合成器24で各系統のサブアレイ間のディジタルビーム形成器(以下、DBF(Digital Beam Forming))のレーダ信号をビーム合成し、信号処理器25で目標検出のための信号処理を実施して、受信データとして出力する。
【0016】
ここで、
図1に示す系統の構成では、送信アンテナの送信サブアレイと受信アンテナの受信サブアレイを分離した形で記述したが、同一地点であれば、送信サブアレイと受信サブアレイを共用することも可能である。
【0017】
図2は送信・受信共用のサブアレイの系統を示しており、31~3i~3n~3Nsはアンテナ素子、41~4i~4n~4Nsは送受信モジュール、5Tは送信給電回路、5Rは受信給電回路である。
図3は
図2に示す送受信サブアレイの、アンテナ素子31の送受信を行う送受信モジュール41の内部の系統を示しており、411は移相器、412は高出力増幅器、413はサーキュレータ、414は低雑音増幅器、415は移相器である。なお、他の送受信モジュール42~4Nsの構成はいずれも送受信モジュール41と同様であるので、その説明は省略する。
【0018】
図3において、
図2の送信給電回路5Tから出力される送信信号を入力した送受信モジュール41は、移相器411で送信方向に応じた位相を送信信号に与えた後、高出力増幅器412で電力増幅し、サーキュレータ413によってアンテナ素子31に導出し、空間に送出させる。また、送受信モジュール41は、アンテナ素子31で捕捉した目標からの信号を入力してサーキュレータ413によって受信系統に導出し、低雑音増幅器414で適正レベルに増幅し、移相器415でビーム形成方向に応じた位相を受信信号に与えて、
図2の受信給電回路5Rに出力する。
【0019】
このように、送受信モジュール41は、送信信号を送出と受信信号の入力にアンテナ素子31を共有し、送信系統の移相器411及び受信系統の移相器414で位相制御を施すことで、送信ビーム、受信ビームの走査が可能となっている。
【0020】
次に、
図4により、観測範囲内のビーム形成手法を考える。一般に観測範囲を観測するには、送信及び受信のN(N>1)素子のアンテナで形成するペンシルビームを観測範囲内に時系列に走査して観測する。この際、観測範囲が広く、長時間積分すると、データレートが低下する。この対策として、
図4に示すように、送信は全観測範囲を覆うファンビームとし、受信は受信素子単位でディジタル信号に変換し、全観測範囲を一度に観測するためのマルチビームを形成する。これにより、観測範囲を常時観測することが可能となり、高データレートの観測ができるようになる。
【0021】
ただし、上記の構成では、受信素子単位でディジタル信号に変換するフルDBFとなるため、ハードウェア規模が増大する。この対策として、本実施形態ではNs素子単位でサブアレイ合成した後、ディジタル変換するサブアレイ型DBFとする。Ns=1とすればフルDBFになる。
【0022】
サブアレイDBFでは、サブアレイ内で送信用と受信用の移相器を備えるので、サブアレイ単位でのビーム走査が可能である。しかしながら、サブアレイの素子数で決まるビーム幅FOV1(FOV1=FOV/Ns)では、全観測範囲FOVを1回で覆えない場合が多い。このため、本実施形態では、全観測範囲FOVをサブアレイのビーム幅FOV1で分割する。
【0023】
図5は、アンテナ開口をNs(Ns=FOV/FOV1)分割し、各々の分割開口を空間分割単位に割り当てる様子を示している。各々の分割開口では、アンテナ素子数はM(M=N/Ns)で、サブアレイ数L(L=M/Ns)に応じたL本のマルチビームを形成できる。このため、サブアレイで送信ファンビーム、受信は送信ビームよりも1/Lのビーム幅の受信マルチビームで分割観測空間FOV1を覆うことができる。これにより、全観測空間FOVを常時観測することが可能となる。
【0024】
図6は、分割観測空間FOV1毎の各ビームポジションP1, P2, P3, …, PNsに連続したPRI(Pulse Repetition Interval)パルスを送受信し(a)、CPI(Coherent Pulse Interval)間でスライディング処理して長時間積分し(b)、ドップラ軸の応答でデータを出力する(c)様子を示す図である。
【0025】
図6に示すように、常時観測できれば、分割観測空間FOV1毎の各ビームポジションに連続したPRIパルスを送受信することができ、複数のPRIパルスをまとめてFFT処理(非特許文献2参照)等のコヒーレント処理するCPI単位で出力する。このようにすれば、CPI間で更にコヒーレント処理したスライディング処理により、CPIの高いレ-トでデータを出力できる。その様子を
図6(c)にドップラ軸の応答で示している。このドップラ軸の応答をCFAR(Constant False Alarm Rate)(非特許文献3参照)等により検出処理すれば、目標検出情報を出力することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態に係るレーダ装置は、指定覆域の全空間を常時観測し、高データレートで目標検出情報を出力することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
図7乃至
図10を参照して、第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、レーダ信号の送受信を行うレーダ装置の場合について述べたが、受信のみの場合にも同様の方式が適用できる。
【0028】
図7は第2の実施形態に係るレーダ信号受信装置の系統を示すブロック図である。本実施形態の受信装置は、基本的に
図1に示したレーダ装置の受信系統と同様であるため、同一部分には同一符号を付して示す。
【0029】
図7において、受信サブアレイ211~21Mは、観測範囲からのレーダ反射信号を受信するもので、その受信信号を周波数変換器22でベースバンドに周波数変換し、AD変換器13でディジタル信号に変換し、ビーム合成器14でサブアレイDBF処理によりビーム合成し、信号処理器15で目標検出のための信号処理を実施して、受信データとして出力する。
【0030】
図8は、受信サブアレイの系統を示しており、61~6i~6n~6Nsはアンテナ素子、71~7i~7n~7Nsは受信モジュール、8Rは受信給電回路である。
【0031】
図9は
図8に示す受信サブアレイの、アンテナ素子61の受信を行う受信モジュール71の内部の系統を示しており、711は低雑音増幅器、712は移相器である。なお、他の受信モジュール72~7Nsの構成はいずれも受信モジュール71と同様であるので、その説明は省略する。
【0032】
すなわち、アンテナ素子61~6i~6n~6Nsで捕捉された目標からの信号は受信モジュール71~7i~7n~7Nsに入力される。受信モジュール71(他のモジュールも同様)は、低雑音増幅器711で適正レベルに増幅し、移相器415でビーム形成方向に応じた位相を受信信号に与えて、
図8の受信給電回路8Rに出力する。ここで、受信モジュール71は、移相器712の位相制御により、サブアレイによる受信ビームの走査が可能となっている。
【0033】
次に、
図10により、観測範囲内のビーム形成手法を考える。一般に観測範囲を観測するには、受信のペンシルビームを観測範囲内に時系列に走査して観測する。この際、観測範囲が広く、長時間積分すると、データレートが低下する。
【0034】
この対策として、第1の実施形態と同様に、ハードウェア規模の小さいサブアレイDBFを考える。サブアレイ内で、受信用の移相器を備え、サブアレイ単位でビーム走査できるものとする。ただし、サブアレイの開口で決まるビーム幅FOV1であるため、観測範囲FOVを1回で覆えない場合が多い。
【0035】
そこで、本実施形態では、観測範囲FOVをサブレイのビーム幅FOV1で分割することを考える。このために、
図10に示すように、アンテナ開口をNs(Ns=FOV/FOV1)分割し、各々の分割開口を、空間分割単位に割り当てる。各々の分割開口では、アンテナ素子数はM(M=N/Ns)で、サブアレイ数(L=M/Ns)に応じたL本のマルチビームを形成できる。このため、受信は空間分割単位よりも1/Lのビーム幅の受信マルチビームで分割空間FOV1を覆うことができる。これにより、全空間FOVを常時観測することが可能となる。
【0036】
(第3の実施形態)
第1の実施形態及び第2の実施形態では、サブアレイ内素子数により観測範囲FOV1が決まり、その範囲内で受信マルチビームを形成して、分割開口で全観測範囲を覆う手法について述べた。この場合、分割開口が小さいと、受信マルチビームのビーム幅が広く、アンテナ利得が低下するため、システム利得を確保するためには長時間積分の時間が長くなる。本実施形態では、この対策について
図11と
図12を用いて説明する。
【0037】
図11は、第3の実施形態に係るレーダ装置の送信系統及び受信系統の構成を示すブロック図である。
図12は、第3の実施形態において、アンテナ開口を2分割し、各々の分割開口を空間分割単位に割り当てる様子を示す概念図である。本実施形態に係るレーダ装置の送信系統、受信系統は、基本的に
図1に示したレーダ装置の受信系統と同様であるため、同一部分には同一符号を付して示す。
【0038】
本実施形態に係るレーダ装置は、
図11に示すように、信号処理器25で得られた目標検出結果をサブアレイ制御器26に送る。サブアレイ制御器26は、入力される目標検出結果から目標の存在可能範囲を識別し、ビーム合成器24に対して、アンテナ開口分割単位を大きくして受信ビーム幅を狭める分割制御を行う。
【0039】
一般に、初期の捜索では観測範囲FOVが広いが、捜索が進むと、信号処理器15の処理結果により目標の存在可能範囲を限定できる場合も多い。サブアレイの素子数はハードウェアで決まっており、部分観測範囲FOV1は固定であるため、全観測範囲FOVが小さくなるとM=FOV/FOV1で決まるアンテナ開口分割単位をサブアレイ制御により大きくすることができる。その結果、
図12に示すように、各分割開口で形成する受信ビーム幅は狭くなり、受信利得を高くできる。このため、積分時間も短くなり、測角精度も向上するメリットがある。アンテナ開口分割単位は、観測範囲がNsで決まるFOV1(FOVe/Ns)のP(1≦P<Nsの整数)倍の場合に、Ns/P分割とすればよい。
【0040】
以上実施形態のビーム形成は、簡単のために、1次元のサブアレイについて述べたが、2次元のサブアレイの場合でも、同様の方式を拡張できる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
11…信号生成器、12…変調器、13…周波数変換器、14…パルス変調器、15…送信給電回路、16…送信サブアレイ(1~M)、211~21M…受信サブアレイ(1~M)、221~22M…周波数変換器、231~23M…AD変換器、24…ビーム合成器、25…信号処理器、26…サブアレイ制御器。