(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071821
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】成形パイ生地及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 10/00 20060101AFI20240520BHJP
A21D 13/14 20170101ALI20240520BHJP
【FI】
A21D10/00
A21D13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182254
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】522042636
【氏名又は名称】藤永 真那
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】藤永 真那
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB13
4B032DB18
4B032DB38
4B032DE05
4B032DE06
4B032DE10
4B032DK18
4B032DK31
4B032DK40
4B032DK47
4B032DP25
4B032DP28
4B032DP30
4B032DP40
4B032DP54
(57)【要約】
【課題】短時間で焼き上げることができ、クリーム類、フルーツ類又は調理済食品等のフィリングを容易に挟むことができる成形パイ生地、及び、その成形パイ生地の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】外周側面部の一部を開口させてフィリングを挟むことが可能な、所定の厚みと所定の平面視の大きさ及び形状を有する立体形状の成形パイ生地であって、平面視における略中心部を中心に渦巻状に複数の断面略四角形のうどん形状生地が巻き回されており、かつ側面視ではほぼ層状に複数の断面略四角形のうどん形状生地が積層状態となっている成形パイ生地により課題解決できた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側面部の一部を開口させてフィリングを挟むことが可能な、所定の厚みと所定の平面視の大きさ及び形状を有する立体形状の成形パイ生地であって、
平面視における略中心部を中心に渦巻状に複数の断面略四角形のうどん形状生地が巻き回されており、かつ側面視ではほぼ層状に複数の断面略四角形のうどん形状生地が積層状態となっていることを特徴とする成形パイ生地。
【請求項2】
前記複数の断面略四角形の柔らかいうどん形状生地の表面に油脂が塗布されている状態、又は、前記複数の断面略四角形の表面に焼き色を呈するうどん形状生地がパリパリとした食感を有する状態であることを特徴とする請求項1に記載の成形パイ生地。
【請求項3】
フィリングを挟むことが可能な成形パイ生地の製造方法であって、
パイ生地を捏ねて球状生地に成形する球状生地成形工程と、
前記球状生地を長尺状の略丸棒状になるように捏ねて略丸棒状生地に成形する略丸棒状生地成形工程と、
前記略丸棒状生地を長尺状の薄厚の平板状になるように上方から押して薄厚平板状生地に成形する薄厚平板状生地成形工程と、
前記薄厚平板状生地に、一端側の薄厚平板状部分を少し残して、他端側方向の大部分に短手方向で所定の幅で略等間隔になるように長手方向の切れ目を略平行に複数本入れて、前記所定の幅を有する複数の断面約四角形で長尺状のうどん形状生地を成形して、うどん形状有生地を成形するうどん形状有生地成形工程と、
前記うどん形状有生地の表面の全域に亘って液状の油脂を、塗布手段を使用して塗る油脂塗布工程と、
油脂塗布後の前記うどん形状有生地を、前記一端側の端部を中心にかつ前記端部を囲繞するように、長手方向の前記一端側の薄厚平板状部分から他端側方向に向けてぐるぐる巻きになるように転がして、平面視が略渦巻状で側面視が略層状で略円柱状の形態を有する略円柱状生地を成形する略円柱状生地成形工程と、
前記略円柱状生地を、上方からゆっくりと下方に押しながら半径方向の大きさを大きくし、上面が略平面状で所定の厚みを有する立体形状の成形パイ生地を成形する成形パイ生地成形工程と、を備えることを特徴とする成形パイ生地製造方法。
【請求項4】
前記ぐるぐる巻きの方向が、前記うどん形状有生地の長手方向に沿って前記切れ目と略同一方向にぐるぐる巻きにする方法、又は、前記うどん形状有生地の長手方向にぐるぐる巻きする方向を略1回転ごとに左右に少し向きを交互に変えながらぐるぐる巻きする方法であることを特徴とする請求項3に記載の成形パイ生地製造方法。
【請求項5】
前記成形パイ生地成形工程後の前記成形パイ生地を、油を引いた調理容器を使用して焼く成形パイ生地焼き工程を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の成形パイ生地製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィリングを容易に挟むことができ、短時間で焼き上げることができる成形パイ生地、及び、その成形パイ生地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイには、アップルパイのように予めアップル等の食材をパイ生地で包んで焼成するパイがあり、ミルフィーユのように焼いたパイ生地でクリーム類やフルーツを挟んで層状に重ねたものがある。
【0003】
特許文献1には、パイ生地を型の縁に接する周辺又は角を折り、型に入れて焼成したパイ菓子のパイ皮内部にフィリング材を充填する、型焼きパイ菓子の製造法が開示されている。フィリングはパイ菓子の焼成により生じる空洞に充填すると記載され、フィリングはカスタードクリーム等の各種風味付けしたクリーム類等との記載がある。また、事例には、96層の折りパイで195℃で35分間焼成しできた高さ83mmのパイ菓子のパイ皮内部にカスタードクリームを充填するとの記載がある。
【0004】
特許文献2には、乳化剤及びトレハロースを添加した餅生地を用いて所定形状に成形し、成形した餅をパイ生地で被覆するように包み、急速冷凍した後、高温で焼き上げるようにしたパイ包み餅の製造方法であって、パイに包まれる餅が大福餅であって、餅生地の中に小豆餡及びクリーム、フルーツ、ソース、チョコレート等を入れる技術が開示されている。そして、パイ生地は餅の表層に保持されるので薄肉が好ましいとの記載がある。
【0005】
特許文献3には、包み込めるように所定形状に成形されたパイ生地製包込み用シートと、当該パイ生地製包込み用シートに包まれるに適した量で、適当な重さと加熱しても少なくとも2分程度保形性を有する被包装用食品原料とを用意し、前記パイ生地製包込み用シートのほぼ中央位置に被包装用食品原料を載置して周囲にパイ生地製包込み用シートが延出するように組み合わせ、その組み合わせ状態のままオーブンに入れてパイ生地が焼成するに必要な設計された所定時間加熱し、それによってパイ生地製包込み用シートは、まず被包装用食品原料の周囲延出部分だけが1~2分のうちに膨張変性して外輪山のように盛り上がり、その後更に包むように膨れて側壁部になるとともに、被包装用食品原料の載置部分はほとんど膨張しないまま熱変性して底部となり、被包装用食品原料を包むような器状焼きパイが成形され、その後に被包装用食品原料の内部まで加熱されて調理食品になるとともに、先に成形された器状焼きパイは、被包装用食品原料を包み込んだ状態のまま固化焼成されるようにした焼きパイ器状包み食品の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、パイ生地に囲繞された内部に調理済の食品を充填状態にし、包装材内に収納したパイタイプのバーガー食品において、上記パイ生地の側面と底面の少くとも前者が閉じ断面に形成され、該パイ生地の面に形成される内部に調理済の米飯を充填し、その上部にホワイトソース、或いはグラタンを介してチーズが載置されているパイタイプバーガー食品が開示されている。
【0007】
特許文献5には、2枚以上のパイ生地を収納した包装体と調理したフィリングを収納した包装体を、それぞれ一緒に包装体中に収納した即席手作りパイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-281888号公報
【特許文献2】特開2005-312349号公報
【特許文献3】特開平8-9874号公報
【特許文献4】特開平10-14546号公報
【特許文献5】特開平3-254629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の発明は、焼成したパイ菓子のパイ皮内部の空洞にクリーム類を充填する技術であるので、流動性を有し柔らかい食材しか充填できないので例えばフィリングとしてハンバークは充填できないという問題があった。
【0010】
特許文献2に記載の発明は、フルーツ等を餅生地で包み、その餅の表面をパイ生地で包んでパイ生地の崩れを防いでいるので、餅が不要なフィリングを包むことはできないという問題があった。
【0011】
特許文献3に記載の発明は、フィリングは加熱しても少なくとも2分間は保形性を有するものに限定されるので、クリームなどの流動性を有するフィリングや2分間の加熱で形が崩れるフィリングを使用することができないという問題があった。
【0012】
特許文献4に記載の発明は、ミルフィーユタイプのパイクラフトのパイ生地を有底短円筒状のカップタイプに形成しなければならないので、例えば折りパイをつくった後にカップタイプに形成しなければならず、手順が増加し、作る時間がかかり、コストがかかるという問題があった。
【0013】
特許文献5に記載の発明は、折りパイでつくった2枚の平板状のパイ生地で、例えばフィリングとしてリンゴのシロップ煮を挟んで180℃、30分間の条件で焼成してアップルパイをつくるので、フィリングを挟んで後の焼成時間がかかるという問題があった。
【0014】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、短時間で焼き上げることができ、クリーム類、フルーツ類又は調理済食品等のフィリングを容易に挟むことができる成形パイ生地、及び、その成形パイ生地の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の成形パイ生地は、外周側面部の一部を開口させてフィリングを挟むことが可能な、所定の厚みと所定の平面視の大きさ及び形状を有する立体形状の成形パイ生地であって、平面視における略中心部を中心に渦巻状に複数の断面略四角形のうどん形状生地が巻き回されており、かつ側面視ではほぼ層状に複数の断面略四角形のうどん形状生地が積層状態となっていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の成形パイ生地は、請求項1において、前記複数の断面略四角形の柔らかいうどん形状生地の表面に油脂が塗布されている状態、又は、前記複数の断面略四角形の表面に焼き色を呈するうどん形状生地がパリパリとした食感を有する状態であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の成形パイ生地製造方法は、フィリングを挟むことが可能な成形パイ生地の製造方法であって、パイ生地を捏ねて球状生地に成形する球状生地成形工程と、前記球状生地を長尺状の略丸棒状になるように捏ねて略丸棒状生地に成形する略丸棒状生地成形工程と、前記略丸棒状生地を長尺状の薄厚の平板状になるように上方から押して薄厚平板状生地に成形する薄厚平板状生地成形工程と、前記薄厚平板状生地に、一端側の薄厚平板状部分を少し残して、他端側方向の大部分に短手方向で所定の幅で略等間隔になるように長手方向の切れ目を略平行に複数本入れて、前記所定の幅を有する複数の断面約四角形で長尺状のうどん形状生地を成形して、うどん形状有生地を成形するうどん形状有生地成形工程と、前記うどん形状有生地の表面の全域に亘って液状の油脂を、塗布手段を使用して塗る油脂塗布工程と、油脂塗布後の前記うどん形状有生地を、前記一端側の端部を中心にかつ前記端部を囲繞するように、長手方向の前記一端側の薄厚平板状部分から他端側方向に向けてぐるぐる巻きになるように転がして、平面視が略渦巻状で側面視が略層状で略円柱状の形態を有する略円柱状生地を成形する略円柱状生地成形工程と、前記略円柱状生地を、上方からゆっくりと下方に押しながら半径方向の大きさを大きくし、上面が略平面状で所定の厚みを有する立体形状の成形パイ生地を成形する成形パイ生地成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の成形パイ生地製造方法は、請求項3において、前記ぐるぐる巻きの方向が、前記うどん形状有生地の長手方向に沿って前記切れ目と略同一方向にぐるぐる巻きにする方法、又は、前記うどん形状有生地の長手方向にぐるぐる巻きする方向を略1回転ごとに左右に少し向きを交互に変えながらぐるぐる巻きする方法であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の成形パイ生地製造方法は、請求項3又は4において、前記成形パイ生地成形工程後の前記成形パイ生地を、油を引いた調理容器を使用して焼く成形パイ生地焼き工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、2、4又は6に記載の発明は、成形パイ生地は、うどん形状生地の表面に油脂が塗布されているので、うどん生地同士が容易に離隔しやすいことから、立体形状の成形パイ生地の側面から、うどん生地の上下間を容易に開口させて、フィリングを成形パイ生地の中に挿入し挟みやすいという効果を奏する。さらに、立体形状の成形パイ生地は外周面には全域に油脂が塗布されているので、フライパンで焼くことができることから、オーブンで焼成させる時間が約30分~60分に対して約5分~10分で焼き上げることができるという効果を奏する。よって、本発明の成形パイ生地は、フィリングを容易に挟むことができ、フライパンで短時間で焼き上げることができるので、例えば、自宅における時間的な余裕があまりない出勤前であっても手軽な朝食として調理して食することができるという効果を奏する。
【0021】
また、フィリングをフライパンで焼いた成形パイ生地の中に挟むこともできる。そのため、フィリングを挟む前に、約5分~10分ほどフライパンで焼いて、パリパリ、サクサクの食感ができた成形パイ生地の側面を開いて、カスタードクリーム等の流動性のあるフィリング、アップル等のフルーツのフィリング、あるいは、ソーセージ、ハンバーグ、目玉焼き等の形があるフィリング等のフィリングの中から好みのフィリングを挟んで食することができる。焼く前の成形パイ生地を準備して冷蔵庫などで保管していれば、好みのフィリングを挟んだパイ料理を約5分~10分という短時間で完成させることができる。
【0022】
また、平面視が円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、多角形、星形、ハート形等の様々な形状を形成した環状の型枠を使用すれば、略円盤形状、略楕円盤形状、略円柱形状、略直方体形状、略立方体形状、略三角柱形状、略多角形柱形状、あるいは、平面視がハート形状の立体形状、又は、平面視が星形状の立体形状などの種々の形状の立体形状の成形パイ生地ができるという効果を奏する。
【0023】
請求項5に記載の発明は、フライパンなどの油を引いた調理容器を使用するので、オーブンによる焼成時間が約30分~60分に比較して、約5分~10分という短時間で成形パイ生地を完成させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の成形パイ生地をフライパンで焼いた状態の説明写真である。
【
図2】本発明の成形パイ生地製造方法のフローを説明するフロー図である。
【
図3】成形パイ生地製造方法の球状生地成形工程の成果物である球状生地の説明図である。
【
図4】成形パイ生地製造方法の略丸棒状生地成形工程の成果物である略丸棒状生地の説明図で、(a)は平面視の説明図で、(b)は右又は左側面視の説明図である。
【
図5】成形パイ生地製造方法の薄厚平板状生地成形工程の成果物である薄厚平板状生地の説明図で、(a)は平面視の説明図で、(b)は正面視又は背面視の説明図で、(c)は右又は左側面視の説明図である。
【
図6】成形パイ生地製造方法のうどん形状有生地成形工程の成果物であるうどん形状有生地の説明図である。
【
図7】成形パイ生地製造方法の油脂塗布工程の説明図である。
【
図8】成形パイ生地製造方法の略円柱状生地成形工程の説明図で、(a)はぐるぐる巻きにまき始めた段階の平面視の説明図で、(b)はぐるぐる巻きにまき始めた段階の正面視の説明図である。
【
図9】ぐるぐる巻きにする方向を約1回転ごとに左右に少し角度を交互に変える巻き方の説明図で、(a)は巻く方向に向かって少し左側に向きを変えて巻いている説明図で、(b)は巻く方向に向かって少し右側に向きを変えて巻いている説明図である。
【
図10】成形パイ生地製造方法の略円柱状生地成形工程の成果物である略円柱状生地の平面視における外観説明図である。
【
図11】成形パイ生地製造方法の略円柱状生地成形工程の成果物である略円柱状生地の側面視における説明図で、(a)はぐるぐる巻きの方向をうどん形状有生地の切れ目とほぼ平行方向に巻いた場合の側面説明図で、(b)はぐるぐる巻きの方向をうどん形状有生地の切れ目の方向とは1巻きごとに左右に少し向きを交互に変えながら巻いた場合の側面説明図である。
【
図12】略円柱状生地を上方からゆっくりと下方に押しながら半径方向の大きさを大きくする成形パイ生地成形工程後の成形パイ生地の一例を上方斜視から見た説明写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の成形パイ生地1a、1bは、
図1又は
図12に示すように、外周側面部の一部を開口させてフィリングを挿入し挟むことが可能な、所定の厚みと所定の平面視の大きさ及び形状を有する立体形状の成形パイ生地1a、1bであって、平面視における略中心部を中心に渦巻状に複数の断面略四角形のうどん形状生地2、2aが巻き回されており、かつ側面視ではほぼ層状に複数の断面略四角形のうどん形状生地2、2aが積層状態となっている。
【0026】
そして、前記成形パイ生地1a、1bは、前記複数の断面略四角形の柔らかいうどん形状生地2の表面に油脂が塗布されている状態、又は、前記複数の断面略四角形の表面に焼き色を呈するうどん形状生地2aがパリパリとした食感を有する状態である。前記成形パイ生地1aを焼く前の油脂が塗布されている状態のパイ生地とし、前記成形パイ生地1bを焼いた後の状態のパイ生地として区別する。
【0027】
よって、本発明の前記成形パイ生地1a、1bには、油を引いた調理容器である例えばフライパンで焼く前の段階における、うどん形状生地2の表面に油脂が塗布されている状態の前記成形パイ生地1aの第一形態、又は、油を引いた調理容器である例えばフライパンで前記成形パイ生地1aを焼いた後のパリパリとした食感を有する状態の前記成形パイ生地1bの第二形態がある。
【0028】
前記第一形態の成形パイ生地1aの場合は、表面に油脂を塗布された複数の断面略四角形のうどん形状生地2が側面視でほぼ層状に積層されているので、上下方向で隣接する2つの断面略四角形のうどん形状生地2間をうどん形状生地2同士がひっつくことなく手で容易に開口させることができる。このため、成形パイ生地1aを手に取って極めて容易に、例えばアップル、シチュウ、カレー又はハンバーグなどのフィリングを開口部から容易に挿入し上下のうどん形状生地2で挟むことができる。
【0029】
また、成形パイ生地1aは表面全域に亘って油脂で被膜された状態であるので、油を引いた調理容器の一つであるフライパンで焼くことができるため、オーブンを使って焼成する時間約30分~60分に比較して約5分~10分で焼くことができるので、極めて短時間で焼き上げることができる。忙しいときにもちょっと調理して食べようという意欲が湧くという効果を奏する。
【0030】
次に、前記第二形態の成形パイ生地1bの場合は、表面に油脂が全面に亘って塗布され、かつ表面に塗布された油脂が前記成形パイ生地1aの内部に浸透しているので、油を引いた調理容器の一つであるフライパンで焼くことにより、前記成形パイ生地1aが膨張し、上下方向で隣接する2つの断面略四角形のうどん形状生地2間が離れて上下方向の隙間が生じるので、手で極めて容易に開口させることができる。そして、焼いた後の前記成形パイ生地1bはパリパリとした食感を有する。
【0031】
このため、焼いた後の前記成形パイ生地1bを手に取って極めて容易に開口させることができ、例えばハンバーグなどのフィリングを開口部から容易に挿入し上下の焼いた後で膨張したうどん形状生地2a群で挟むことができる。
【0032】
よって、前記成形パイ生地1aにフィリングを挟んだ後に焼く調理容器である例えばフライパンを使用して焼いてもいいし、焼く調理容器である例えばフライパンで焼いた後の成形パイ生地1bにクリーム類、フルーツ類、又は、ハンバーグ等を開口させて挿入して挟んでもよい。いずれも場合も、焼いた前記成形パイ生地1bはパリパリ、サクサクとした食感がある。
【0033】
また、前記成形パイ生地1a、1bの立体形状は、略円盤形状、略楕円盤形状、略円柱形状、略直方体形状、略立方体形状、略三角柱形状、略多角形柱形状、平面視がハート形状の立体形状、又は、平面視が星形状の立体形状等があり、前記立体形状はこれらに限定されるものではなく、いずれの立体形状でもよい。
【0034】
次に、成形パイ生地製造方法10、10aについて説明する。前記成形パイ生地製造方法10、10aは、
図2に示すように、フィリングを挟むことが可能な成形パイ生地の製造方法10、10aであって、パイ生地を捏ねて球状生地11aに成形する球状生地成形工程11と、前記球状生地11aを長尺状の略丸棒状になるように捏ねて略丸棒状生地12aに成形する略丸棒状生地成形工程12と、前記略丸棒状生地12aを長尺状の薄厚の平板状になるように上方から押して薄厚平板状生地13aに成形する薄厚平板状生地成形工程13と、前記薄厚平板状生地13aに、一端側の薄厚平板状部分14bを少し残して、他端側方向の大部分に短手方向で所定の幅で略等間隔になるように長手方向の切れ目を略平行に複数本入れて、前記所定の幅を有する複数の断面約四角形で長尺状のうどん形状生地2を成形して、うどん形状有生地14aを成形するうどん形状有生地成形工程14と、前記うどん形状有生地14aの表面の全域に亘って液状の油脂を、塗布手段15aを使用して塗る油脂塗布工程15と、油脂塗布後の前記うどん形状有生地14aを、前記一端側の端部を中心にかつ前記端部を囲繞するように、長手方向の前記一端側の薄厚平板状部分14bから他端側方向に向けてぐるぐる巻きになるように転がして、平面視が略渦巻状で側面視が略層状で略円柱状の形態を有する略円柱状生地16aを成形する略円柱状生地成形工程16と、前記略円柱状生地16aを、上方からゆっくりと下方に押しながら半径方向の大きさを大きくし、上面が略平面状で所定の厚みを有する立体形状の成形パイ生地1aを成形する成形パイ生地成形工程17と、を備える。
【0035】
さらに、前記成形パイ生地製造方法10は、前記成形パイ生地成形工程17後の前記成形パイ生地1aを、油を引いた調理容器を使用して焼く成形パイ生地焼き工程18を備える。
【0036】
まず、前記球状生地成形工程11について説明する。前記球状生地成形工程11は、パイ生地を捏ねて、
図3に示すように、球状生地11aに成形する。前記パイ生地は、一般的に用いられる強力粉、薄力粉、中力粉等の小麦粉、油脂、食塩、卵及び水等を加えて捏ねて球状に形成する。小麦粉に代えてグルテンの含まれない米粉でもよい。よって、小麦に代えて米粉を使用することができ、小麦アレルギーの方にもグルテンフリーのパイ料理を味わって頂くことができる。
【0037】
次に、前記略丸棒状生地成形工程12について説明する。前記略丸棒状生地成形工程12は、前記球状生地11aを、
図4(a)、(b)に示すように、長尺状で断面円形状の略丸棒状になるように捏ねて略丸棒状生地12aに成形する。球状生地11aを両端を引っ張り出すようにしながら、かつ手で押さえながら、かつ捏ねながら太い丸棒状に伸ばしていき略丸棒状生地12aを成形する。
【0038】
次に、前記薄厚平板状生地成形工程13について説明する。前記薄厚平板状生地成形工程13は、前記略丸棒状生地12aを、
図5(a)~(c)に示すように、長尺状の薄厚の平板状になるように上方から押して薄厚平板状生地13aに成形する。めん棒で押しながら捏ねるように長尺状の薄厚の平板状の形状にする。
【0039】
次に、前記うどん形状有生地成形工程14について説明する。前記うどん形状有生地成形工程14は、前記薄厚平板状生地13aに、
図6に示すように、一端側の薄厚平板状部分14bを少し残して、他端側方向の大部分に短手方向で所定の幅で略等間隔になるように、例えば、包丁、ピザカッター等の切断具で長手方向の切れ目を略平行に複数本入れて、前記所定の幅を有する複数の断面約四角形で長尺状のうどん形状生地2を成形して、うどん形状有生地14aを成形する。前記うどん形状有生地14aは、切れ目がない薄厚平板状部分14bと、切れ目によって形成された複数の断面約四角形で長尺状のうどん形状生地2の両方を備えている。
【0040】
次に、前記油脂塗布工程15について説明する。前記油脂塗布工程15は、
図7に示すように、前記うどん形状有生地14aの表面の全域に亘って液状の油脂を、ハケ等の塗布手段15aを使用して塗る。油脂をハケで塗布すると、油脂はうどん形状生地2の表面のみならず、うどん形状生地2間に侵入し、かつ、うどん形状生地2内にも浸透する。前記油脂は固体ではなく液体のものを使用する。前記油脂としては、溶かしたバター、オリーブ油、ココナッツオイル、えごま油等の食用油であればいずれでもよい。
【0041】
次に、前記略円柱状生地成形工程16について説明する。前記略円柱状生地成形工程16は、
図8(a)、(b)に示すように、油脂塗布後の前記うどん形状有生地14aを、前記一端側の端部を中心にかつ前記端部を囲繞するように、長手方向の前記一端側の薄厚平板状部分14bから他端側方向に向けてぐるぐる巻きになるように転がして、平面視が略渦巻状で側面視が略層状で略円柱状の形態を有する略円柱状生地16a、16bを成形する。
【0042】
前記ぐるぐる巻きの方向として、第一に、前記うどん形状有生地14aの長手方向に沿って前記切れ目と略同一方向にぐるぐる巻きにする方法、又は、第二に、
図9に示すように、前記うどん形状有生地14aの長手方向にぐるぐる巻きする方向を略1回転ごとに左右に少し向きを交互に変えながらぐるぐる巻きする方法がある。
【0043】
前記第一の方法の場合は、ぐるぐる巻きが完了すると、平面視が
図10に示すようにうどん形状生地2が渦巻状になっており、側面視が
図11(a)に示すように、うどん形状生地2が略水平方向の層状になっている。
【0044】
前記第二の方法の場合は、例えば、
図9(a)に示すように巻く進行方向に向かって左側に傾けてぐるぐる巻きし、約1回転したら次に
図9(b)に示すように巻く進行方向に向かって右側に傾けてぐるぐる巻きする。この方向の切り替えを巻き完了するまで行う。
【0045】
前記第二の方法の場合は、ぐるぐる巻きが完了すると、平面視が
図10に示すようにうどん形状生地2が渦巻状になっており、側面視が
図11(b)に示すように、うどん形状生地2が斜めの層状になっている。
【0046】
次に、前記成形パイ生地成形工程17の説明をする。前記成形パイ生地成形工程17は、
図11(a)、(b)に示すような前記略円柱状生地16a、16bを、上方からゆっくりと下方に押しながら半径方向の大きさを大きくし、
図12の写真に示すように、上面が略平面状で所定の厚みを有する立体形状の成形パイ生地1aを成形する。
【0047】
前記成形パイ生地成形工程17においては、前記略円柱状生地16a、16bを半径方向に大きくするときに、例えばステンレス製の環状の側壁で作られている型枠を使用する。前記型枠は、平面視が円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、多角形、星形、ハート形等の様々な形状を形成している。前記型枠の中に略円柱状生地16a、16bを置いて、上方からゆっくりと下方に押しながら半径方向の大きさを大きくしていくと、使用した型枠に応じた形状を形成する前記成形パイ生地1aをつくることができる。
【0048】
次に、前記成形パイ生地1a、1bの立体形状としては、使用した型枠に応じて種々の形状をつくることができ、略円盤形状、略楕円盤形状、略円柱形状、略直方体形状、略立方体形状、略三角柱形状、略多角形柱形状、あるいは、平面視がハート形状の立体形状、又は、平面視が星形状の立体形状等がある。
【0049】
また、前記型枠を形状が同じでも大きさを異なるようにすれば、例えば、円形状で大きさが異なる型枠が複数あると、大きさの異なる立体形状の成形パイ生地1aをつくることができる。また、前記型枠を使用すれば、大きさと形状が一定の立体形状の成形パイ生地1aをつくることができる。
【0050】
次に、成形パイ生地焼き工程18を説明する。前記成形パイ生地焼き工程18は、前記成形パイ生地成形工程17後の前記成形パイ生地1aを、油を引いた調理容器を使用して焼く。これにより、
図1に示すような、焼いた成形パイ生地1bができる。
【0051】
前記調理器具としては、フライパン、鍋、ホットプレート等があり、油をひける調理器具であればいずれの調理器具でもよい。前記成形パイ生地1aの表面には液状の油脂が塗布され、かつ前記成形パイ生地1aの内部に液状の油脂が浸透しているので、温度160°~180°で約5分~10分間焼くことにより、パリパリ、サクサクの食感のある焼き上がりができる。
【0052】
焼きあがった成形パイ生地1aは、
図1に示すように、膨張したうどん形状生地2aの層状の上下間に線状の凹みが形成されるので、この凹みを上下方向で離すようにして容易に開口させることができ、この開口部から容易に、カスタードクリーム等の流動性のあるフィリング、アップル等のフルーツのフィリング、あるいは、ソーセージ、ハンバーグ、目玉焼き等の料理済食品のフィリングを挟むことができる。
【0053】
次に、前記成形パイ生地1a、1bの調理方法について説明する。前記成形パイ生地1a、1bの調理方法には、前記成形パイ生地1aをフライパン等で焼いて前記成形パイ生地1bにした後にフィリングを挟む第一の調理方法と、前記成形パイ生地1aにフィリングを挟んだ後にフライパン等で焼く第二の調理方法がある。
【0054】
まず、第一の調理方法について説明する。前記成形パイ生地1a、1bの調理方法は、飲食店の場合は、
図12に示すような前記成形パイ生地成形工程17で成形された成形パイ生地1aを冷凍庫や冷蔵庫で保管し、パイ料理の注文を受けたら前記成形パイ生地1aを冷凍庫又は冷蔵庫から取り出し、油を引いたフライパンで中火で約5分~10分間焼いて、次に焼いた成形パイ生地1bの側面の層状の層間を開いて、注文のあったフィリングを挿入してパイ料理を完成させる。約5分~10分という極めて短時間でパイ料理を提供することができる。
【0055】
また、家庭の場合は、
図12に示すような前記成形パイ生地成形工程17で成形された成形パイ生地1aを冷蔵庫の冷凍室で保管し、パイ料理を食したいと思い立ったら前記成形パイ生地1aを冷蔵庫から取り出し、油を引いたフライパンで中火で約5分~10分間焼いて、次に焼いた成形パイ生地1bの側面の層状の層間を開いて、好みのフィリングを挿入してパイ料理を完成させる。約5分~10分という極めて短時間でパイ料理を食することができる。
【0056】
次に、第二の調理方法について説明する。前記成形パイ生地1a、1bの調理方法は、飲食店の場合は、
図12に示すような前記成形パイ生地成形工程17で成形された成形パイ生地1aを冷凍庫や冷蔵庫で保管し、パイ料理の注文を受けたら前記成形パイ生地1aを冷凍庫又は冷蔵庫から取り出し、前記成形パイ生地1aの側面の層状の層間を開いて、注文のあったフィリングを挿入して、油を引いたフライパンで中火で約5分~10分間焼いてパイ料理を完成させる。約5分~10分という極めて短時間でパイ料理を提供することができる。
【0057】
また、家庭の場合は、
図12に示すような前記成形パイ生地成形工程17で成形された成形パイ生地1aを冷蔵庫の冷凍室で保管し、パイ料理を食したいと思い立ったら前記成形パイ生地1aを冷蔵庫から取り出し、前記成形パイ生地1aの側面の層状の層間を開いて、好みのフィリングを挿入して、油を引いたフライパンで中火で約5分~10分間焼いてパイ料理を完成させる。約5分~10分という極めて短時間でパイ料理を食することができる。
【符号の説明】
【0058】
1a 成形パイ生地
1b 成形パイ生地
2 うどん形状生地
2a うどん形状生地
10 成形パイ生地の製造方法
11 球状生地成形工程
11a 球状生地
12 略丸棒状生地成形工程
12a 略丸棒状生地
13 薄厚平板状生地成形工程
13a 薄厚平板状生地
14 うどん形状有生地成形工程
14a うどん形状有生地
14b 薄厚平板状部分
15 油脂塗布工程
15a 塗布手段
16 略円柱状生地成形工程
16a 略円柱状生地
16b 略円柱状生地
17 成形パイ生地成形工程
18 成形パイ生地焼き工程