(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071827
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20240520BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240520BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182265
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 智史
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正浩
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友邦
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA22
(57)【要約】
【課題】搬送方向の寸法のばらつきが少ない、間欠塗工型の電極の製造方法を提供すること。
【解決手段】集電箔上に間欠的に電極材料を塗工する塗工工程と、前記電極材料を乾燥する乾燥工程と、前記電極材料をプレスするプレス工程と、を備え、前記塗工工程において、前記電極材料の塗工目付量に合わせて前記電極材料の塗工長が調整される、電極の製造方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電箔上に間欠的に電極材料を塗工する塗工工程と、
前記電極材料を乾燥する乾燥工程と、
前記電極材料をプレスするプレス工程と、を備え、
前記塗工工程において、前記電極材料の目付量に合わせて前記電極材料の塗工長が調整される、電極の製造方法。
【請求項2】
前記集電箔および活物質層を含む、請求項1に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2021-082504号公報)には、正極および負極を別工程でプレス形成するバイポーラ電極の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極シートとして、集電箔の表面上に活物質層を有する電極シートが知られている。また、高エネルギー密度の電池で採用されることの多い電極シートとして、集電箔上に活物質層の形成部(塗工部)と非形成部(非塗工部)とが交互に存在する間欠塗工型の電極シートも知られている。
【0005】
しかしながら、間欠塗工型の電極シートの作製において、集電箔上に塗工された電極材料をプレスして活物質層を形成する際に、電極材料が伸び広がることで寸法が変化するため、活物質層の長さを設定した通りに製造することは困難である。
【0006】
本開示の目的は、搬送方向の寸法のばらつきが少ない、間欠塗工型の電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕集電箔上に間欠的に電極材料を塗工する塗工工程と、
前記電極材料を乾燥する乾燥工程と、
前記電極材料をプレスするプレス工程と、を備え、
前記塗工工程において、前記電極材料の目付量に合わせて前記電極材料の塗工長が調整される、電極の製造方法。
【0008】
本開示の発明者らは、電極材料の目付量(流量)と、プレス後の電極材料の寸法の変化とに相関があることに着目し、電極材料の目付量に合わせて電極材料の塗工長を調整することを見出した。これにより、プレス後の電極材料の塗工長(活物質層の搬送方向の寸法)を一定に保つことができる。
【0009】
〔2〕前記集電箔および活物質層を含む、〔1〕に記載の電極の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態における電極の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、本実施形態における電極の製造に用いられる塗工装置の一部を示す概念図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における電極の製造方法を説明するための概念図である。
【
図4】
図4は、従来の電極の製造方法を説明するための概念図である。
【
図5】
図5は、実施例1における電極の目付量と伸び率との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施例1および比較例1における電極の寸法のばらつきを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。なお、本明細書では、「正極」および「負極」を総称して「電極」と記す。
【0012】
<電極の製造方法>
図1は、本実施形態における電極の製造方法の概略を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態の電極の製造方法は、少なくとも(a)塗工工程と、(b)乾燥工程と、(c)プレス工程と、を備える。塗工工程において、電極材料の目付量に合わせて電極材料の塗工長を調整する。
【0013】
なお、本実施形態で製造される電極は、正極、負極またはバイポーラ電極のいずれであってもよい。
【0014】
《(a)塗工工程》
塗工工程では、集電箔上に間欠的に電極材料を塗工する。本工程において、電極材料の目付量に合わせて電極材料の塗工長が調整される。
【0015】
(集電箔)
集電箔は、例えば、5μm以上100μm以下の厚さを有していてもよい。集電箔は、導電性を有する。集電箔としては、例えば、アルミニウム(Al)箔、Al合金箔、銅(Cu)箔、Cu合金箔、ニッケル(Ni)箔、Ni合金箔、チタン(Ti)箔、Ti合金箔等が挙げられる。電極が正極であるとき、集電箔は、例えば、Al箔等である。電極が負極であるとき、集電箔は、例えば、Cu箔等である。
【0016】
(電極材料)
電極材料は、電極活物質を含む。電極活物質は、正極活物質であってもよいし、負極活物質であってもよい。電極活物質が正極活物質である場合、電極材料は正極材料である。電極活物質が負極活物質である場合、電極材料は負極材料である。
【0017】
正極活物質としては、例えば、リチウム含有金属酸化物、リチウム含有リン酸塩等が挙げられる。リチウム含有金属酸化物は、例えば、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2等が挙げられる。リチウム含有リン酸塩は、例えば、LiFePO4等が挙げられる。
【0018】
負極活物質としては、例えば、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素等の炭素系負極活物質、珪素(Si)、錫(Sn)等を含有する合金系負極活物質等が挙げられる。
【0019】
電極材料は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、例えば、水系溶媒、有機溶媒等が挙げられる。水系溶媒とは、水、または、水と極性有機溶媒とを含む混合溶媒を意味する。
【0020】
水系溶媒としては、例えば、水(イオン交換水)等が挙げられる。混合溶媒に使用可能な極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。なお、水系溶媒は、負極製造用の溶媒として好適に用いることができる。
【0021】
有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が挙げられる。なお、有機溶媒は、正極製造用の溶媒として好適に用いることができる。
【0022】
電極材料は、さらに導電材を含んでいてもよい。導電材としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)等が挙げられる。導電材の配合量は、100質量部の電極活物質に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下であってもよい。
【0023】
電極材料は、さらにバインダを含んでいてもよい。バインダは、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。バインダの配合量は、100質量部の電極活物質に対して、例えば、0.1質量部以上10質量部以下であってもよい。
【0024】
(塗工)
本工程では、任意の塗工装置により集電箔の表面に電極材料が塗工される。塗工装置としては、例えば、ダイコータ、ロールコータ等が使用されてもよい。
図2は、本実施形態における電極の製造に用いられる塗工装置の一部を示す概念図である。塗工装置5は、供給部1、ダイ2およびロール3を備える。供給部1に供給された電極材料4は、ロール3により搬送される集電箔11上にダイ2から塗工される。電極材料4は、集電箔11の片面のみに塗工されてもよい。電極材料4は、集電箔11の表裏両面に塗工されてもよい。電極材料4は、集電箔11に間欠的に塗工される。
【0025】
本工程では、電極材料の目付量(mg/cm
2)に合わせて電極材料の塗工長が調整される。調整方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる(
図3参照)。なお、以下の方法は例示であり、該方法に限定されるものではない。
【0026】
まず、目付量が異なる複数の電極を作製する。例えば、目付量がX0-5(mg/cm2)、X0(mg/cm2)およびX0+5(mg/cm2)である電極を作製する。各目付量となる電極材料を塗工装置を用いて集電箔に塗工し、搬送方向の寸法(以下、「プレス前寸法」と記載する。)を測定する。測定後、各電極材料を乾燥させ、同じ厚み(狙い厚み)となるようにプレスし、搬送方向の寸法(以下、「プレス後寸法」と記載する。)を測定する。これらの寸法から、狙い厚みにプレスした際の電極の伸び率(以下、単に「伸び率」と記載する。)を算出する。得られた各伸び率をプロットし、目付量と伸び率との関係を示す検量線を作成する。伸び率は、以下の式(1)により算出される。
【0027】
伸び率(%)=100×(プレス後寸法-プレス前寸法)/プレス前寸法・・・式(1)
次に、所望する目付量の電極を作製する。電極材料の目付量は、塗工装置5における電極材料の流量と略等しいため、例えば、塗工装置の流量から電極材料の目付量(X1)を求める。該目付量と上記で得られた検量線とを基に、該目付量の電極材料をプレスした際の伸び率(Y1)を算出し、塗工長(Z1)を決定する。Z1は、以下の式(2)により算出される。該塗工長となるように、塗工装置の塗工バルブを調整する。これにより、所望する目付量の電極が作製される。
【0028】
Z1(mm)=Z0×(100-Y1)/100・・・式(2)
式(2)中、Z0(mm)は、狙い厚みを示す。
【0029】
従来の方法では、電極材料の目付量に関わらず、一定の圧力でプレスしていたため、電極材料の寸法にばらつきが見られていた(
図4参照)。本願では、上述のような方法で電極材料の目付量に合わせて電極材料の塗工長を調整することで、搬送方向の寸法のばらつきの少ない電極を製造することが可能である。
【0030】
《(b)乾燥工程》
乾燥工程では、塗工工程で集電箔11上に塗工された電極材料4を乾燥する。例えば、熱風乾燥炉等により、電極材料4が乾燥されてもよい。
【0031】
《(c)プレス工程(S30)》
プレス工程では、乾燥工程で乾燥された電極材料4をプレスし、活物質層10を形成する。すなわち、集電箔11上に活物質層10が形成された電極が作製される。
【0032】
圧力は、活物質層10の狙い厚みに応じて適宜調整され得る。例えば、0.5t/cm以上5.0t/cm以下の圧力が電極材料に加えられてもよい。
【0033】
<用途>
本開示の製造方法によって得られる電極は、例えば、リチウムイオン二次電池(非水電解質二次電池)の電極として用いることができる。そのリチウムイオン二次電池は、例えば、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)等の電源として用いることができる。また、本開示の製造方法によって得られる電極は、大面積(例えば、1200mm×1600mm)の電極を得る場合に好適である。ただし、本開示の製造方法によって得られる電極は、このような車載用途に限られず、あらゆる用途に適用可能である。
【実施例0034】
以下、実施例を用いて本実施形態を説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
実施例1では、電極材料の目付量に合わせて電極材料の塗工長を調整するために、まず以下の処理を行った。
【0036】
集電箔および電極材料が準備された。目付量が異なる3つの電極を作製した。すなわち、目付量が70mg/cm
2、75mg/cm
2、80mg/cm
2となるように、電極材料を集電箔に塗工し、プレス前寸法を測定した。測定後、各電極材料を熱風乾燥炉により乾燥させた。乾燥後、厚みが400μmとなるようにプレスし、プレス後寸法を測定した。各プレス後寸法から、狙い厚みにプレスした際の電極の伸び率を上述の式(1)により算出した。得られた各伸び率をプロットし、目付量と伸び率との関係を示す検量線を作成した(
図5参照)。
【0037】
次に、塗工装置の流量から実施例1の電極材料の目付量を求めた。目付量は75mg/cm2であった。該目付量と上記で得られた検量線とを基に、該目付量の電極材料をプレスした際の伸び率を算出し、上述の式(2)より塗工長を決定した。伸び率は0.3%であり、塗工長は1595mmであった。なお、狙い厚みは400μmとした。
【0038】
上記塗工長となるように、塗工装置の塗工バルブを制御することで、集電箔上に間欠的に電極材料を塗工した。塗工後、各電極材料を熱風乾燥炉により乾燥させた。乾燥後、上記の狙い厚みとなるようにプレスすることで、実施例1の電極を製造した。なお、電極のn数は3とした。
【0039】
(比較例1)
比較例1では、実施例1のように電極材料の目付量に合わせて電極材料の塗工長は調整しなかった。すなわち、実施例1と同じ流量で、集電箔上に間欠的に電極材料を塗工した。塗工後、各電極材料を熱風乾燥炉により乾燥させた。乾燥後、実施例1と同じ狙い厚みとなるようにプレスすることで、比較例1の電極を製造した。なお、電極のn数は3とした。
【0040】
《評価》
上述の実施例1および比較例1において、各電極の寸法のばらつきを測定した。その結果を
図6に示す。なお、寸法のばらつきは、実施例1および比較例1で作製した3個の電極で測定し、その最大値と最小値との差とした。
【0041】
<結果>
図6に示すように、実施例1においては、比較例1と比較して、寸法のばらつきが少なかった。
【0042】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。