(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071828
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】画像処理装置および方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/407 20060101AFI20240520BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H04N1/407
B41J29/393 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182269
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】増田 心一郎
【テーマコード(参考)】
2C061
5C077
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AR03
2C061KK25
2C061KK28
2C061KK32
5C077LL02
5C077LL19
5C077PP15
5C077PP25
5C077PQ23
5C077SS01
5C077TT02
(57)【要約】
【課題】透過特性が未知の両面印刷物であっても、裏抜けを抑制した読み取り画像データを取得することができる画像処理装置および方法並びにプログラムを提供する。
【解決手段】両面印刷済みの印刷媒体の両面を読み取って得られた表面画像データと裏面画像データを受け付け、表面画像データと裏面画像データに基づいて、印刷媒体の透過特性の推定情報を取得する透過特性推定部21と、印刷媒体の透過特性の推定情報に基づいて、表面画像データまたは裏面画像データに濃度補正処理を施す濃度補正処理部22とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面印刷済みの印刷媒体の両面を読み取って得られた表面画像データと裏面画像データを受け付け、前記表面画像データと前記裏面画像データに基づいて、前記印刷媒体の透過特性の推定情報を取得する透過特性推定部と、
前記印刷媒体の透過特性の推定情報に基づいて、前記表面画像データまたは前記裏面画像データに濃度補正処理を施す濃度補正処理部とを備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記透過特性推定部が、前記印刷媒体の表面と裏面とで同位置の2つの画素値の組み合わせに基づいて、片面のみ印刷画像が形成され、かつ裏抜けが未発生である特定画素を抽出し、該抽出した特定画素の印刷画像の画素値に基づいて、前記透過特性の推定情報を取得する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記透過特性推定部が、複数枚の前記印刷媒体における前記特定画素の印刷画像の最大濃度の画素値を前記透過特性の推定情報として取得する請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記透過特性推定部が、前記印刷媒体の紙白を表す画素値の統計情報をさらに用いて、前記透過特性の推定情報を取得する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記濃度補正処理部が、前記透過特性の推定情報毎に設けられた補正テーブルを用いて前記濃度補正処理を施す請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
両面印刷済みの印刷媒体の両面を読み取って得られた表面画像データと裏面画像データを受け付け、
前記表面画像データと前記裏面画像データに基づいて、前記印刷媒体の透過特性の推定情報を取得し、
前記印刷媒体の透過特性の推定情報に基づいて、前記表面画像データまたは前記裏面画像データに濃度補正処理を施す画像処理方法。
【請求項7】
両面印刷済みの印刷媒体の両面を読み取って得られた表面画像データと裏面画像データを受け付けるステップと、
前記表面画像データと前記裏面画像データに基づいて、前記印刷媒体の透過特性の推定情報を取得するステップと、
前記印刷媒体の透過特性の推定情報に基づいて、前記表面画像データまたは前記裏面画像データに濃度補正処理を施すステップとをコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面印刷済みの印刷媒体を読み取って得られた画像データに対して濃度補正処理を施す画像処理装置および方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の印刷媒体に両面印刷を行った場合、印刷媒体が薄い場合やインクなどの色材が印刷媒体に浸透しやすい組成である場合、印刷媒体上の一方の面の印刷画像が、反対の面に抜ける裏抜けが発生することが知られている。
【0003】
そして、裏抜けが発生している両面印刷物(両面印刷済み印刷媒体)をスキャナなどの読取装置によって読み取った場合、その読み取った画像データにも裏抜けの画像のデータが含まれることになる。
【0004】
そこで、両面印刷物を読み取った画像データにおける裏抜けの影響を補正するため、テーブルを用いて補正する方法が提案されている。
【0005】
たとえば特許文献1においては、裏抜け補正前の表裏が同位置にある2つの画素値を入力とし、補正後の2つの画素値を出力とするテーブルを使用して裏抜けを補正する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2においては、両面印刷物を読み取った表面画像データと裏面画像データの同位置にある2つの画素値の差分に基づいて裏抜け補正対象となる画素を抽出し、その補正対象の画素についてテーブルを用いて補正を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-118517号公報
【特許文献2】特開2009-177479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、裏抜けの程度は両面印刷物の透過特性(紙種と色材の組合せ)によって異なり、補正量もそれに応じて異ならせる必要がある。読取対象の両面印刷物は基本的には透過特性が未知であるため、補正テーブルを使用するだけでは適切に補正することができない。
【0009】
特許文献1に記載の方法でも、両面印刷物の透過特性が既知である必要があり、透過特性が未知である両面印刷物を読み取った画像データに対しては適切に補正することができない。
【0010】
また、特許文献2でも、透過特性が未知の両面印刷物について適切なテーブルを選択する方法は何も提案されていない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、透過特性が未知の両面印刷物であっても、裏抜けを抑制した読み取り画像データを取得することができる画像処理装置および方法並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像処理装置は、両面印刷済みの印刷媒体の両面を読み取って得られた表面画像データと裏面画像データを受け付け、表面画像データと裏面画像データに基づいて、印刷媒体の透過特性の推定情報を取得する透過特性推定部と、印刷媒体の透過特性の推定情報に基づいて、表面画像データまたは裏面画像データに濃度補正処理を施す濃度補正処理部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像処理装置によれば、両面印刷済みの印刷媒体の両面を読み取った表面画像データと裏面画像データに基づいて、印刷媒体の透過特性の推定情報を取得し、その透過特性の推定情報に基づいて、表面画像データまたは裏面画像データに濃度補正処理を施すようにしたので、透過特性が未知の両面印刷済みの印刷媒体であっても、裏抜けを抑制した読み取り画像データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の画像処理装置の一実施形態を用いた画像処理システムの概略構成を示すブロック図
【
図2】
図1に示す画像処理システムの処理を説明するためのフローチャート
【
図3】両面印刷済みの印刷媒体の印刷画像の一例を示す図
【
図4】
図3に示す両面印刷済みの印刷媒体を読み取った表面画像データと裏面画像データの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の画像処理装置の一実施形態を用いた画像処理システムについて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の画像処理システム1の概略構成図である。
【0016】
本実施形態の画像処理システム1は、
図1に示すように、読取装置10と、画像処理装置20とを備えている。
【0017】
読取装置10は、印刷済みの印刷媒体を光電的に読み取って、印刷媒体に印刷された印刷画像に応じた画像データを出力する。特に、本実施形態の読取装置10は、両面印刷済みの印刷媒体(両面印刷物)の表面および裏面の印刷画像を読み取ることが可能に構成されており、表面の印刷画像を読み取った表面画像データと裏面の印刷画像を読み取った裏面画像データを出力する。
【0018】
画像処理装置20は、読取装置10から出力された表面画像データと裏面画像データを受け付け、これらの画像データに対して、上述した裏抜け(裏移り)を抑制する濃度補正処理を施すものである。
【0019】
画像処理装置20は、具体的には、透過特性推定部21と、濃度補正処理部22とを備える。
【0020】
透過特性推定部21は、読取装置10から出力された表面画像データと裏面画像データを受け付け、その受け付けた表面画像データと裏面画像データに基づいて、印刷画像が印刷された印刷媒体の透過特性(紙種および色材の組み合わせ)の推定情報を取得する。印刷媒体の透過特性の推定情報およびその取得方法については、後で詳述する。
【0021】
濃度補正処理部22は、透過特性推定部21によって取得された印刷媒体の透過特性の推定情報に基づいて、表面画像データまたは裏面画像データに対して、裏抜けを抑制する濃度補正処理を施す。本実施形態の濃度補正処理部22は、透過特性の推定情報毎に設けられた補正テーブルを用いて濃度補正処理を施すが、補正テーブルおよび濃度補正処理については、後で詳述する。
【0022】
濃度補正処理部22によって濃度補正処理が施された表面画像データおよび裏面画像データは、たとえば表示装置(図示省略)に表示されたり、印刷装置(図示省略)において片面印刷または両面印刷として印刷されたりする。
【0023】
画像処理装置20は、たとえばコンピュータから構成され、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの半導体メモリやハードディスクなどの記憶媒体、並びに通信I/F(Interface)などを備えている。
【0024】
画像処理装置20は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶された画像処理プログラムをCPUによって実行することによって、上述した各部の処理を行う。本実施形態においては、CPUによって画像処理プログラムを実行することによって各部の処理を行うようにしたが、画像処理プログラムが実行する一部の機能または全部の機能をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)、その他の電気回路などのハードウェアから構成するようにしてもよい。
【0025】
次に、本実施形態の画像処理システム1の処理について、
図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0026】
まず、読取装置10は、両面印刷済みの印刷媒体の表面の印刷画像と裏面の印刷画像を読み取り(S10)、表面画像データと裏面画像データを画像処理装置20に出力する。なお、ここでは、印刷媒体の表面に
図3に示すA面の印刷画像が印刷され、裏面に
図3に示すB面の印刷画像が印刷されているものとする。
図4に示すA面は、
図3に示すA面を読み取った表面画像データを示しており、
図4に示すB面は、
図3に示すB面を読み取った裏面印刷画像を示している。また、
図3に示すB面の印刷画像および
図4に示すB面の裏面画像データは、説明を分かりやすくするために左右反転したものである。
【0027】
また、
図4に示すA面の領域A1の画素値を50とし、領域A2の画素値を200とする。
図4に示すA面の領域A3は、
図3に示すB面の下側の矩形の印刷画像の裏抜け画像である。また、
図4に示すB面の領域B1の画素値を80とし、領域B2の画素値を60とする。
図4に示すB面の領域B3は、
図3に示すA面の上側の丸の印刷画像の裏抜け画像である。
【0028】
読取装置10から出力された表面画像データと裏面画像データは、画像処理装置20の透過特性推定部21によって受け付けられ、透過特性推定部21は、受け付けた表面画像データまたは裏面画像データに基づいて、印刷媒体の紙白の画素値を推定する(S12)。紙白の画素値とは、何も印刷されていない状態の印刷媒体を読み取った場合の画素値である。
【0029】
透過特性推定部21は、具体的には、表面画像データまたは裏面画像データ、もしくは表面画像データと裏面画像データの両方について、画素値の頻度のヒストグラムを生成し、最頻値の画素値を紙白の画素値として推定する。なお、紙白の画素値の推定方法としては、これに限らず、その他の公知な方法を用いることができる。
【0030】
次に、透過特性推定部21は、印刷媒体の表面と裏面とで同位置の2つの画素値の組み合わせに基づいて、片面のみ印刷画像が形成され、かつ裏抜けが未発生である特定画素を抽出し、その抽出した特定画素の印刷画像の画素値に基づいて、透過特性の推定情報を取得する(S14)。
【0031】
具体的には、透過特性推定部21は、表面画像データと裏面画像データとで同位置の2つの画素の画素値の組み合わせを各位置について取得する。そして、各位置の画素値の組み合わせに基づいて、一方がS21で推定した紙白と同じ値であり、かつ他方が紙白と異なる画素値である特定画素を抽出する。すなわち、透過特性推定部21は、一方の面のみに印刷画像が形成され、かつその裏抜け影響が他方の面(反対の面)に表れていない画素を特定画素として抽出する。なお、特定画素を抽出する際、紙白の画素値と同じ値の画素を特定するのではなく、紙白の画素値を含む所定のバラつき範囲内の画素値と同じ画素を抽出するようにしてもよい。ここでは、
図4に示す破線で囲んだ領域内の画素が、特定画素として抽出される。
【0032】
次に、透過特性推定部21は、抽出された特定画素の印刷画像の画素値のうち、最大濃度の画素値を特定する(S16)。なお、本実施形態では、画素値が小さいほど濃度が高いものとし、最大濃度の画素値とは、特定画素の印刷画像の画素値のうち、最小の画素値ということになる。最大濃度の画素値とは、裏抜けしない最大濃度の画素値であり、この最大濃度の画素値が小さいほど、濃い印刷画像でも裏抜けしていない(裏抜けしない最大濃度が高い)ことになり、透過の少ない紙と色材の組合せ(たとえばマット紙×トナー)ということが推定できる。
【0033】
たとえば表面画像データと裏面画像データが、
図4に示す例の場合、領域A2の画素値200と領域B1の画素値80が特定画素の画素値として抽出されているため、より小さい画素値である80が最大濃度の画素値として特定される。
【0034】
そして、透過特性推定部21は、S16で特定された最大濃度の画素値に基づいて、
図5に示す透過特性テーブルを参照し、透過特性1~透過特性9のいずれかを特定する(S18)。本実施形態においては、透過特性1~透過特性9が、本発明の透過特性の推定情報に相当する。
【0035】
図5に示す透過特性テーブルは、色材と紙種の組み合わせ毎について、裏抜けしない最大濃度の画素値を予め求めておき、色材と紙種の組み合わせ毎の最大濃度の画素値を透過特性1~透過特性9として予めテーブル化したものである。
【0036】
図4に示す例の場合、透過特性推定部21は、最大濃度の画素値は80であるので、
図5に示す透過特性1~9のうち、透過特性9を特定する。なお、
図5に示す透過特性1~9の最大濃度の画素値の中に、S16で取得された最大濃度の画素値と同じ画素値がない場合には、透過特性推定部21は、S16で取得された最大濃度の画素値に最も近い画素値に対応する透過特性1~9を特定する。また、本実施形態では、代表的な紙種と色材の組み合わせの透過特性1~9および最大濃度の画素値を透過特性テーブルに含めるようにしたが、実際は想定される紙種と色材の組み合わせの透過特性を予め取得しておく。
【0037】
そして、透過特性推定部21によって特定された透過特性9の情報は、濃度補正処理部22に出力される。
【0038】
濃度補正処理部22は、入力された透過特性9の情報に基づいて、表面画像データまたは裏面画像データに対して、裏抜けを抑制する濃度補正処理を施す。
【0039】
具体的には、濃度補正処理部22には、上述した透過特性1~9のそれぞれに対応する補正テーブルが予め記憶されている。濃度補正処理部22は、透過特性9の補正テーブルを特定し(S20)、その補正テーブルを用いて濃度補正処理を施す(S22)。
図6は、透過特性9の補正テーブルの一例を示す図である。
【0040】
図6に示す補正テーブルでは、左側の2列(面Aおよび面B)に、表面と裏面とで同じ位置の画素値の組み合わせが示されており、右側の2列(面A補正後および面B補正後)に、補正後の同じ位置の画素値の組み合わせが示されている。また、
図6に示す補正テーブルは、透過特性9の紙種と色材の組み合わせで種々の濃度で片面印刷を行い、その片面印刷済みの印刷媒体を読み取って得られた画像データの最大濃度の画素値(
図5の透過特性テーブルに示す裏抜けしない最大濃度とは異なる)を40とし、紙白の画素値を220とし、画素値が80以下の場合に裏抜けが発生するものとして作成された補正テーブルである。なお、補正テーブルの作成方法については、後で詳述する。
【0041】
濃度補正処理部22は、まず補正対象画素を特定する。補正対象画素は、透過特性推定部21で抽出された特定画素および両面とも紙白の画素値である画素以外の画素である。このような画素は、両面の画像が重なる部分も含めて裏抜けが発生している画素である。
【0042】
そして、濃度補正処理部22は、全ての補正対象画素の画素値の組み合わせに基づいて、
図6に示す補正テーブルを参照し、両面の画素値を補正する。具体的には、
図6に示す補正テーブルの左側の2列の画素値の組み合わせの中に、補正対象画素の画素値の組み合わせと同じものが存在する場合には、補正対象画素の画素値の組み合わせを右側の2列の画素値の組み合わせに置き換えることによって濃度補正処理を施す。たとえば、補正対象画素の表面の画素値が40であり、裏面の画素値が100である場合には、補正テーブルの一番上の面Aと面Bの画素値の組み合わせと同じであるので、補正対象の表面の画素値は40のままとするが、裏面の画素値については100を220に置き換える。これにより、裏抜けした濃度分だけ薄くすることができる。
【0043】
なお、補正テーブルにおける面Aと面Bは、特に表面と裏面とを区別しておらず、補正対象画素の裏面の画素値が40であり、表面の画素値が100である場合も補正テーブルの一番上の行が参照されて、裏面の画素値は40のままとし、表面の画素値が100から220に置き換えられる。
【0044】
また、補正対象画素の画素値の組み合わせと同じ画素値の組み合わせが補正テーブルに存在しない場合には、補間処理を行って補正後の画素値を求めて置き換える。
【0045】
具体的には、補正対象画素値の面Aと面Bの組み合わせが(30,30)は補正テーブルには存在しない。補間にあたり、補正テーブルに存在する組合せのうち、(30,30)に座標が近い所定の複数の組み合わせを参照する。たとえば、2つの組合せを参照する場合、面Aと面Bが(20,20)および(35,35)の組合せを参照する。この2つの組合せの座標上の距離は、(35-20,35-20)=(15,15)である。また、(30,30)と(20,20)の座標上の距離は(10,10)であり、(30,30)と(35,35)の座標上の距離は(5,5)である。この値を先ほどの(15,15)で割った値を1から引くことで、参照する2つの組合せの補正後の値をどれだけ(30,30)の補正後の値として反映させるかの重みづけ量を算出する。
【0046】
重みづけ量は、それぞれ、(1-10/15,1-10/15)=(1/3,1/3)、(1-5/15,1-5/15)=(2/3,2/3)である。この値を補正後の値にかけて足すことで、(30,30)の補正後の値を算出する。2つの組合せの補正後の値は補正テーブルより(40,40)、(50,50)であるから、(40×1/3+50×2/3,40×1/3+50×2/3)=(47,47)が、(30,30)の補正後の値として算出される。なお、本実施例では周辺の2つの組合せを参照するようにしたが、3つや4つを参照するようにしてもよい。その数に応じて適切な重みづけ値の算出の方法は異なるが、公知の補間方法を使用することができる。
【0047】
また、上記説明では、透過特性推定部21によって特定された透過特性の推定情報が、透過特性9の場合について説明したが、濃度補正処理部22は、透過特性の推定情報が透過特性3である場合には、透過特性3に対応する補正テーブルを用いて濃度補正処理を行い、透過特性の推定情報が透過特性5である場合には、透過特性5に対応する補正テーブルを用いて濃度補正処理を行う。
【0048】
上記実施形態の画像処理システム1によれば、両面印刷済みの印刷媒体の両面を読み取った表面画像データと裏面画像データに基づいて、透過特性1~9のいずれかを特定し、その特定した透過特性に基づいて、表面画像データまたは裏面画像データに濃度補正処理を施すようにしたので、透過特性が未知の両面印刷済みの印刷媒体であっても、裏抜けを抑制した読み取り画像データを取得することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、片面のみ印刷画像が形成され、かつ裏抜けが未発生である特定画素を抽出し、その抽出した特定画素の印刷画像の画素値に基づいて、透過特性を推定するようにしたので、透過特性を計測等することなく、演算処理だけで透過特性を推定することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、透過特性1~9毎に設けられた補正テーブルを用いて濃度補正処理を施すようにしたので、簡易な演算処理によって濃度補正処理を施すことができる。
【0051】
次に、上述した補正テーブルを作成する方法について説明する。ここでは、透過特性9(マット紙×トナー)に対応する補正テーブルを作成する方法について説明する。
【0052】
まず、透過特性9の紙種と色材の組み合わせであるマット紙とトナーを用いて、種々の濃度のパッチを片面印刷し、その片面印刷済みの印刷媒体を読み取って得られた画像データから最大濃度の画素値と、紙白の画素値と、反対面に裏抜けを発生する画素値とを求める。ここでは、最大濃度の画素値を40、紙白の画素値を220、反対面に裏抜けを発生する画素値を80以下とする。なお、ここでいう最大濃度の画素値とは、上述した裏抜けしない最大濃度の画素値とは異なる。
【0053】
そして、片面印刷を読み取った画像データの画素値が、
図7に示すXの値であるパッチをマット紙の表面と裏面にトナーを用いて両面印刷し、その両面印刷済み印刷媒体を読み取る。どちらかの片面に80以下の濃いパッチが存在する場合には、反対面に裏抜けを発生し、両面印刷の画像データの表面と裏面の画素値は、
図7に示すYの値に変調される。
【0054】
そして、
図7に示すXの値およびYの値のうち、表の画素値と裏の画素値を逆にすると一致する画素値の組み合わせ(グレーで示す組み合わせ)を除去した後、Yの値を補正対象画素と比較対象の画素値とし、Xの値を補正後の画素値として
図6に示す補正テーブルを生成する。
【0055】
次に、透過特性5(普通紙×水性インク)に対応する補正テーブルを作成する方法について説明する。
【0056】
まず、透過特性5の紙種と色材の組み合わせである普通紙と水性インクを用いて、種々の濃度のパッチを片面印刷し、その片面印刷済みの印刷媒体を読み取って得られた画像データから最大濃度の画素値と、紙白の画素値と、反対面に裏抜けを発生する画素値とを求める。ここでは、最大濃度の画素値を80、紙白の画素値を200、反対面に裏抜けを発生する画素値を170以下とする。
【0057】
そして、片面印刷を読み取った画像データの画素値が、
図8に示すXの値であるパッチを普通紙の表面と裏面に水性インクを用いて両面印刷し、両面印刷済み印刷媒体を読み取る。どちらかの片面に170以下の濃いパッチが存在する場合には、反対面に裏抜けを発生し、両面印刷の画像データの表面と裏面の画素値は、
図8に示すYの値に変調される。
【0058】
そして、
図8に示すXの値およびYの値のうち、表の画素値と裏の画素値を逆にすると一致する画素値の組み合わせ(グレーで示す組み合わせ)を除去した後、Yの値を補正対象画素と比較対象の画素値とし、Xの値を補正後の画素値として
図9に示す補正テーブルを生成する。
【0059】
なお、上記実施形態では、片面のみ印刷画像が形成され、かつ裏抜けが未発生である特定画素の画素値に基づいて、裏抜けしない最大濃度の画素値を特定する際、1枚の両面印刷済み印刷媒体の表面画像データと裏面画像データを用いるようにしたが、印刷物が、複数枚の両面印刷済みの印刷媒体を含むものである場合には、その複数枚の両面印刷済み印刷媒体の表面画像データと裏面画像データに基づいて特定画素を特定し、その特定画素の画素値に基づいて、裏抜けしない最大濃度の画素値を特定することが好ましい。
【0060】
このように複数枚の表面画像データと裏面画像データを利用することによって、より多くの大きさの濃度の画素値を取得することができるので、裏抜けしない最大濃度の画素値の推定精度を向上させることができ、すなわち透過特性の推定精度を向上させることができる。これにより、より適切な濃度補正処理を施すことができる。
【0061】
また、上記実施形態では、
図5に示す透過特性テーブルを用いて透過特性を特定するようにしたが、
図5に示す透過特性テーブルの場合、裏抜けしない最大濃度の画素値が120である透過特性として、透過特性6と透過特性7があるため、裏抜けしない最大濃度の画素値だけでは、透過特性6と透過特性7を区別することができない。また、裏抜けしない最大濃度の画素値が175の場合、透過特性1と透過特性2を判別することができない。
【0062】
そこで、透過特性推定部21が、裏抜けしない最大濃度の画素値だけでなく、紙白の画素値および紙白の画素値の分散値も用いて、透過特性を特定するようにしてもよい。
【0063】
紙白の画素値の分散値については、たとえば以下のようにして算出する。
1.紙白の画素値を含む所定の画素値範囲を満たす画素を抽出する。たとえば紙白の画素値が200の場合、画素値180~220である画素を抽出する。
2.「1.」で抽出した画素の画素値の分散を求める。
【0064】
そして、透過特性推定部21は、紙白の画素値と上述したような紙白の画素値の分散値とに基づいて、
図10に示すテーブルを参照し、紙白の画素値と紙白の画素値の分散値が近い紙種を特定する。例えば、
図5において最大濃度が120であった場合に、透過特性の候補は透過特性6と透過特性7とがあるが、紙白画素値、または、紙白分散値をさらに用いて紙種を推定するようにすれば、透過特性を決定することができる。具体的には、紙白画素値が220であればマット紙と推定でき透過特性6に決定し、紙白画素値が190であれば軽量紙と推定でき透過特性7に決定する。これにより、透過特性の推定精度を向上させることができ、より適切な濃度補正処理を施すことができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。たとえば実施形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。
【0066】
本発明に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
本発明の画像処理装置は、両面印刷済みの印刷媒体の両面を読み取って得られた表面画像データと裏面画像データを受け付け、表面画像データと裏面画像データに基づいて、印刷媒体の透過特性の推定情報を取得する透過特性推定部と、印刷媒体の透過特性の推定情報に基づいて、表面画像データまたは裏面画像データに濃度補正処理を施す濃度補正処理部とを備える。
【0067】
(付記2)
付記1記載の画像処理装置において、透過特性推定部は、印刷媒体の表面と裏面とで同位置の2つの画素値の組み合わせに基づいて、片面のみ印刷画像が形成され、かつ裏抜けが未発生である特定画素を抽出し、その抽出した特定画素の印刷画像の画素値に基づいて、透過特性の推定情報を取得することができる。
【0068】
(付記3)
付記2記載の画像処理装置において、透過特性推定部は、複数枚の印刷媒体における特定画素の印刷画像の最大濃度の画素値を透過特性の推定情報として取得することができる。
【0069】
(付記4)
付記1から付記3いずれかに記載の画像処理装置において、透過特性推定部は、印刷媒体の紙白を表す画素値の統計情報をさらに用いて、透過特性の推定情報を取得することができる。
【0070】
(付記5)
付記1から付記4いずれかに記載の画像処理装置において、濃度補正処理部は、透過特性の推定情報毎に設けられた補正テーブルを用いて濃度補正処理を施すことができる。
【0071】
(付記6)
本発明の画像処理方法は、両面印刷済みの印刷媒体の両面を読み取って得られた表面画像データと裏面画像データを受け付け、表面画像データと裏面画像データに基づいて、印刷媒体の透過特性の推定情報を取得し、印刷媒体の透過特性の推定情報に基づいて、表面画像データまたは裏面画像データに濃度補正処理を施す。
【0072】
(付記7)
本発明の画像処理プログラムは、両面印刷済みの印刷媒体の両面を読み取って得られた表面画像データと裏面画像データを受け付けるステップと、表面画像データと裏面画像データに基づいて、印刷媒体の透過特性の推定情報を取得するステップと、印刷媒体の透過特性の推定情報に基づいて、表面画像データまたは裏面画像データに濃度補正処理を施すステップとをコンピュータに実行させる。
【符号の説明】
【0073】
1 画像処理システム
10 読取装置
20 画像処理装置
21 透過特性推定部
22 濃度補正処理部