(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071839
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】気液分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 45/12 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
B01D45/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182289
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 康祐
【テーマコード(参考)】
4D031
【Fターム(参考)】
4D031AC01
4D031AC02
4D031BA01
4D031BA07
4D031BA08
4D031BA10
4D031EA01
(57)【要約】
【課題】対象流体から液体を十分に分離させることができる気液分離装置の提供。
【解決手段】
高圧下で発生した100度を超える高温のドレンが、流入口25からフラッシュタンク2内の大気圧中に流入し、貯留ドレン70は瞬時に再蒸発してフラッシュ蒸気を生じさせる。このフラッシュ蒸気は、タンク室23の下部から上部に向けて矢印91方向に沿って勢いよく流動し、サイクロンセパレータ4の旋回羽根45に導かれて旋回する。この旋回によってフラッシュ蒸気からドレンが分離し、分離したドレンの水滴は、内周面47を伝って滴下し、タンク本体20の内周面を流れて貯留ドレン70に混入する。また、気液分離された低圧のフラッシュ蒸気は上部開口44から矢印91方向に上昇して流動し、送出口29から配管L6に送り出される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に本体空間を有しており、当該本体空間に連通する導入部及び導出部が形成された本体であって、鉛直方向における下部に当該導入部が位置し、上部に当該導出部が位置しており、下部から上部に向けて当該本体空間内を流動する対象流体を当該導出部から導出させる本体、
前記本体空間において前記導入部と前記導出部との間に配置され、前記対象流体が通過する分離手段であって、通過する前記対象流体から液体を分離させる分離手段、
を備えたことを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
請求項1に係る気液分離装置において、
前記分離手段は、前記対象流体の通過方向に対して、螺旋状に配置された1又は2以上の螺旋羽根を有しており、当該螺旋羽根に沿って前記対象流体を旋回させることによって、前記対象流体から液体を分離させる、
ことを特徴とする気液分離装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る気液分離装置において、
前記対象流体は、蒸気の凝縮水が再蒸発した再蒸発蒸気である、
ことを特徴とする気液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る気液分離装置は、蒸気等の対象流体からドレン等の液体を分離させる気液分離装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
気液分離装置としては、後記特許文献1に開示されている気液分離タンクがある。まず、この特許文献1の第1図に開示されている気液分離タンクは、タンク5の底部にドレン排出用のドレン管9を設け、頂部に排気管7を設けている。また、タンク5の上部周面に、接線方向に向けて第1の入口管2及び第2の入口管4を設けている。
【0003】
そして、第1の入口管2及び第2の入口管4から、それぞれ流量、乾き度共に小さい気液混合物1及び気液混合物3を流入させ、旋回流6を形成させて遠心分離によって液体と気体とを分離している。分離された気体は排気管7を通じて上部に排気され、分離された液体は下部のドレン管9から排出される。なお、この第1図に開示されている気液分離タンクについては、気流速度の増加に従って生じる液滴の再飛散と、気体の飛沫同伴によって分離効果率が低下する点が、特許文献1において指摘されている。
【0004】
また、特許文献1の第2図に開示されている気液分離タンクは、タンク5に第1の入口管2を設けると共に、タンク5の上部周面に、タンク5の中心に向けて半径方向に第2の入口管14を設けている。この第2の入口管14は、排気管7を側方向から貫通している。そして、第2の入口管14の先端にはT字形分岐管15が接続されている。このT字形分岐管15の上端は排気管7内に位置し、下端は排気管7の開口部11よりも低い位置まで延びて、多孔板17を介して開口している。第2の入口管14には、流量及び乾き度が最初は小さいが、時間と共に増大する気液混合物3がタンク5内に向けて流入する。
【0005】
第2の入口管14の先端にT字形分岐管15を接続し、排気管7内に配置することによって、流量の大きい気液混合物3が、流量の小さい気液混合物1の旋回分離部に入らないため、排気管7の開口部11から流入する気流はほとんど気液混合物1のみであり、気流速度が低下する。これによって、排気管7に流入する気流による液飛沫の同伴量を減少させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術では、気液混合物の気液分離が不十分になるという問題がある。すなわち、特許文献1の第1図に開示されている気液分離タンクについては、気流速度が増加に従って生じる液滴の再飛散と、気体の飛沫同伴によって十分な気液分離を行うことができず、気液分離が不十分な気液混合物が排気管7から上部に向けて排気されてしまう。
【0008】
また、特許文献1の第2図に開示されている気液分離タンクにおいては、第2の入口管14を通じて流入する気液混合物3はT字形分岐管15に衝突してそのまま排気管7から上部に向けて排気されるため、気液分離を行うことができない。
【0009】
そこで本願に係る気液分離装置は、これらの問題を解決するため、下部から上部に向けて流動する気液混合物等の対象流体から液体を十分に分離させることができる気液分離装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に係る気液分離装置は、
内部に本体空間を有しており、当該本体空間に連通する導入部及び導出部が形成された本体であって、鉛直方向における下部に当該導入部が位置し、上部に当該導出部が位置しており、下部から上部に向けて当該本体空間内を流動する対象流体を当該導出部から導出させる本体、
前記本体空間において前記導入部と前記導出部との間に配置され、前記対象流体が通過する分離手段であって、通過する前記対象流体から液体を分離させる分離手段、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願に係る気液分離装置においては、分離手段は、本体空間において下部に位置する導入部と上部に位置する導出部との間に配置され、通過する対象流体から液体を分離させる。このため、下部から上部に向けて流動する対象流体から、液体を十分に分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願に係る気液分離装置の第1の実施形態であるフラッシュタンク2が設けられたフラッシュ蒸気利用システム1の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すフラッシュタンク2の一部断面図である。
【
図3】
図2に示すサイクロンセパレータ4の一部断面図である。
【
図4】
図2に示すサイクロンセパレータ4の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、本願に係る気液分離装置の下記の要素に対応している。
【0014】
フラッシュタンク2・・・気液分離装置
サイクロンセパレータ4・・・分離手段
タンク室23・・・本体空間
流入口25・・・導入部
送出口29・・・導出部
旋回羽根45・・・螺旋羽根
矢印91、92方向・・・鉛直方向
フラッシュ蒸気(再蒸発蒸気)・・・対象流体
【0015】
[第1の実施形態]
本願に係る気液分離装置の第1の実施形態を説明する。本実施形態においては、気液分離装置として、産業プラントに設置するフラッシュ蒸気利用システム1で用いるフラッシュタンク2を例示する。
【0016】
(フラッシュ蒸気利用システム1全体の説明)
フラッシュ蒸気利用システム1は、給水タンク51(給水装置)、ボイラー52(蒸気生成装置)、蒸気使用装置55及びフラッシュタンク2を備えており、これらの各機器は配管で接続されている。まず、給水タンク51には、配管L1を通じて蒸気生成用の水が給水される。給水タンク51に貯留された水は配管L2を通じてボイラー52に給水される。
【0017】
ボイラー52はこの給水された水を加熱し、高温・高圧の蒸気を生成する。生成された蒸気は配管L3を通じて蒸気使用装置55に向けて圧送される。なお、生成された蒸気は高圧であり、このままでは使用に適さない。このため、配管L3上には2つの減圧弁53、54が直列的に配置されており、ボイラー52が圧送する蒸気を順次、減圧する。これによって、使用に適した中圧蒸気が蒸気使用装置55に供給される。
【0018】
蒸気使用装置55は、供給された中圧蒸気を使用して所定の処理を行う。たとえば、食品加工装置としての蒸気使用装置55であれば、中圧蒸気を使用して食料品の加熱処理等を行う。蒸気使用装置55の蒸気使用によって蒸気は潜熱を失い、凝縮してドレン(凝縮水)が発生する。
【0019】
蒸気使用装置55で発生したドレンは配管L4を通じて排出される。配管L4上にはスチームトラップ56が設けられている。本実施形態におけるスチームトラップ56はフリーフロート式スチームトラップであり、内部の弁室に浮動自在なフロートが配置されていると共に、弁室内の空間を開放する弁口が形成されている。
【0020】
スチームトラップ56の弁室に、配管L4を通じてドレンが流入した場合、ドレンの水位の上昇に従ってフロートが浮上して弁口を開放して開弁する。これによって、弁室内のドレンは配管の高圧の勢いを受けて弁口から排出される。そして、ドレンの排出によって弁室内のドレンの水位が低下した場合、これに従ってフロートは下降し弁口を閉塞して閉弁する。弁口の閉塞によって蒸気使用装置55からの蒸気の漏洩が防止され、蒸気ロスを回避することができる。
【0021】
こうしてスチームトラップ56を介して蒸気使用装置55から排出されたドレンは、フラッシュタンク2に与えられ、フラッシュタンク2内に貯留される。蒸気使用装置55から排出されフラッシュタンク2内に貯留されるドレンは、高圧下で発生した100度を超える高温のドレンである。これに対し、フラッシュタンク2内は大気圧に保たれているため、フラッシュタンク2に流入した高温・高圧のドレンは、大気圧に晒されて再蒸発しフラッシュ蒸気(再蒸発蒸気)を生じる。フラッシュタンク2内で発生するフラッシュ蒸気は低圧蒸気であり、配管L6を通じてフラッシュ蒸気の使用装置へ送り出されて再利用される。
【0022】
フラッシュ蒸気生成後のドレンはフラッシュタンク2から配管L5を通じて排出される。配管L5にはドレントラップ57が設けられている。このドレントラップ57も、スチームトラップ56と同様、弁室に一定量のドレンが滞留したとき自動的に開弁し、ドレン排出後は自動的に閉弁する。このドレントラップ57の開閉動作に従って、フラッシュタンク2からはドレンが間欠的に排出されて給水タンク51に与えられる。給水タンク51に与えられたドレンは再利用され、循環して配管L2を通じボイラー52に供給される。
【0023】
なお、
図1には1つの蒸気使用装置55のみが図示されているが、配管L3が分岐して複数の蒸気使用装置に中圧蒸気が供給されることがある。この場合、それぞれの蒸気使用装置から各スチームトラップを介して排出されたドレンは、集合用配管に統合されて回収され、フラッシュタンク2に集中して与えられる。
【0024】
(フラッシュタンク2の詳細な説明)
次に、フラッシュタンク2の詳細を説明する。
図2はフラッシュタンク2の一部断面図である。フラッシュタンク2は、両端が開口した円筒形状のタンク本体20を備えており、内部空間がタンク室23として構成される。タンク本体20の上部開口には、中心に送出口29が形成された上蓋21が固定されている。この上蓋21にはフランジ69が取り付けられている。
【0025】
そして、フランジ69に対して前述の配管L6が固定され、送出口29を介してタンク室23は配管L6に連通する。タンク本体20の下部開口には底蓋22が固定されており、下部開口は閉じられている。
【0026】
タンク本体20の中央部より下部の側面には、フランジ65が取り付けられた流入口25が設けられており、フランジ65に対して前述の配管L4が接続されて固定される。そして、配管L4を通じて流入したドレンは、タンク室23に貯留ドレン70として貯留される。
【0027】
また、タンク本体20のさらに下部の側面には、フランジ66が取り付けられた流出口26が設けられており、フランジ66に前述の配管L5が接続されて固定される。これによって、タンク室23内の貯留ドレン70は、配管L5上に設けられたドレントラップ57を介して、間欠的に給水タンク51に向けて排出される。
【0028】
さらに、タンク本体20の上部の側面には、それぞれ接続管67、68が取り付けられた取付口27、28が形成されている。取付口27の接続管67には安全弁(図示せず)が接続され、取付口28の接続管68には圧力計(図示せず)が接続される。
【0029】
フラッシュタンク2のタンク室23には、サイクロンセパレータ4が設けられている。タンク室23の中心軸とサイクロンセパレータ4の中心軸とは中心線90として一致する。サイクロンセパレータ4は、タンク本体20の下部に設けられた流入口25と、タンク本体20の上部に設けられた送出口29との間に配置されて固定されている。
【0030】
図3はサイクロンセパレータ4の一部断面図であり、
図4は平面図である。なお、
図4に示すII―II方向の矢視断面図が
図2に表れている。サイクロンセパレータ4のセパレータ本体41は略円筒形状を有している。セパレータ本体41の外径の直径は、フラッシュタンク2のタンク室23の内径とほぼ同じであり、セパレータ本体41の外周面とタンク室23の内周面とは隙間なく接して固定されている。
【0031】
セパレータ本体41の上部にはセパレータ上部46が一体的に形成されており、このセパレータ上部46の中心部には上部開口44が形成されて、タンク室23の上方に連通している。上部開口44には、開口部分に交差して3本のステー40が等間隔で放射状に配置されている。各ステー40の先端部分はセパレータ上部46に固着している。また、セパレータ本体41の下部には下部開口43が形成されており、タンク室23の下方に向けて開放されている。
【0032】
セパレータ本体41のセパレータ内周面47には、連続してセパレータ上部46の裏面であるセパレータ天井面48が形成されている。また、セパレータ本体41の内部空間には、円柱形状の支柱42が中心線90と同軸上には配置されている。そして、この支柱42には螺旋状に傾斜した8枚の旋回羽根45が等間隔をもって固定されている。
【0033】
支柱42は、放射状に配置された3本のステー40の中心部とボルト(図示せず)によって固定されている。これによって、セパレータ本体41、ステー40、支柱42及び旋回羽根45は一体化している。
【0034】
前述のように、高圧下で発生した100度を超える高温のドレンが、流入口25からフラッシュタンク2内の大気圧中に矢印93方向に沿って流入するため、貯留ドレン70は瞬時に再蒸発してフラッシュ蒸気を生じさせる。このフラッシュ蒸気は、タンク室23の下部から上部に向かう矢印91方向に沿って勢いよく流動し(矢印94)、サイクロンセパレータ4の下部開口43からセパレータ本体41の内部に進入する。
【0035】
セパレータ本体41の内部に進入したフラッシュ蒸気は、サイクロンセパレータ4の8枚の旋回羽根45に衝突して矢印95方向に沿って螺旋状に導かれて旋回する。この旋回による遠心力によって比重の重いドレンは外側に振り出され、フラッシュ蒸気から液体であるドレンが分離して取り出される。分離したドレンの一部はセパレータ本体41の内周面47に付着し、付着したドレンの水滴は内周面47を伝って矢印92方向に滴下し、タンク本体20の内周面を流れて貯留ドレン70に混入する。なお、内周面47に付着したドレンの水滴が、流動するフラッシュ蒸気の勢いを受け、内周面47を伝って矢印91方向に上昇することがあるが、このような水滴はセパレータ天井面48に衝突して上昇を阻止され、送出口29から配管L6に入ることはない。
【0036】
以上のように、フラッシュ蒸気はサイクロンセパレータ4によって気液分離され、乾き度が向上したフラッシュ蒸気が生成される。そして、この乾き度の高いフラッシュ蒸気はサイクロンセパレータ4の上部に形成された上部開口44から矢印91方向に上昇して流動し、送出口29から配管L6に送り出される。
【0037】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、気液分離装置、分離手段、本体空間、導入部、導出部、螺旋羽根、鉛直方向及び対象流体のそれぞれについて例を掲げたが、これらは単なる例示であり、各々について異なる構成を採用することもできる。
【0038】
すなわち、前述の実施形態においては、気液分離装置としてフラッシュ蒸気を発生させるフラッシュタンク2を例示したが、気相と液相とが混合した混合流体を対象に気液分離するものであれば他の装置に本願に係る気液分離装置を適用してもよい。また、前述の実施形態では、蒸気が凝縮して発生したドレンを再蒸発させてフラッシュ蒸気を生成する機能を有するフラッシュタンク2に、気液分離機能を併有させた装置を例示したが、気液分離機能のみを有する装置に本願に係る気液分離装置を適用することもできる。
【0039】
また、前述の実施形態においては、分離手段として遠心分離方式のサイクロンセパレータ4を例示したが、異なる方式の分離手段を採用することができる。また、螺旋羽根として8枚の旋回羽根45を例示したが、7枚以下又は9枚以上の螺旋羽根を採用してもよい。さらに旋回羽根45と異なる形状の螺旋羽根を用いることもできる。
【0040】
また、前述の実施形態においては、貯留ドレン70から発生するフラッシュ蒸気が鉛直方向に一致する矢印91方向に流動する例を示したが、フラッシュ蒸気の流動方向は必ずしも鉛直方向に一致する必要はなく、鉛直方向における下部から上部に向かう方向であれば斜めに傾斜した方向であってもよい。
【0041】
また、前述の実施形態においては、対象流体としてドレンが混入した蒸気を例示したが、これに限定されるものではなく、空気、水、油等が混合した流体を対象流体をすることもできる。なお、以上の各実施形態を組み合わせて他の実施形態とすることもできる。
【符号の説明】
【0042】
2:フラッシュタンク 4:サイクロンセパレータ 23:タンク室 25:流入口
29:送出口 45:旋回羽根