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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071840
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】紙製ロール製品の巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 18/26 20060101AFI20240520BHJP
   B65H 18/20 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B65H18/26
B65H18/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182291
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】391054453
【氏名又は名称】川之江造機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 智之
(72)【発明者】
【氏名】宇根 誠
(72)【発明者】
【氏名】掛水 浩二
【テーマコード(参考)】
3F055
【Fターム(参考)】
3F055AA01
3F055DA10
3F055EA11
(57)【要約】
【課題】紙製ロール製品に巻取り中にたるみが生じず、巻き姿が美しい紙製ロール製品を製造できる紙製ロール製品の巻取装置を提供する。
【解決手段】ワインディングロール10、ベッドロール20およびニップロール30で囲まれた巻取空間Sで被巻取体Rを回転させて、被巻取体Rに原紙を巻取る巻取装置1であって、ニップロール30を巻取空間S内で回転している被巻取体Rに対して接近離間させる動作機構と、ニップロール30の接近離間動作を制御するカム曲線制御器36とが設けられており、カム曲線制御器36は、i:被巻取体Rの巻取り開始区間において、ニップロール30を被巻取体Rに接触するよう接近させる制御と、ii:接触してから後の巻取り完了までの区間において、ニップロール30の被巻取体Rに対する接触圧を適正値に保つ制御、を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワインディングロール、ベッドロールおよびニップロールで囲まれた巻取空間で被巻取体を回転させて、該被巻取体に原紙を巻取る巻取装置であって、
前記ニップロールを前記巻取空間内で回転している前記被巻取体に対して接近離間させる動作機構と、
前記ニップロールの接近離間動作を制御するカム曲線制御器とが設けられており、
前記カム曲線制御器は、
i:前記被巻取体の巻取り開始区間において、前記ニップロールを前記被巻取体に接触するよう接近させる制御と、
ii:接触してから後の巻取り完了までの区間において、前記ニップロールの前記被巻取体に対する接触圧を適正値に保つ制御、を実行する
ことを特徴とする紙製ロール製品の巻取装置。
【請求項2】
前記カム曲線制御器は、前記ニップロールの前記被巻取体への接触圧を最適にするカム曲線を作成し、格納し、設定する機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の紙製ロール製品の巻取装置。
【請求項3】
前記カム曲線制御器は、
カム曲線を被巻取体の巻長さを基準として上昇させる上昇位置と、巻径を基準として上昇させる上昇量を指示すると、対応するカム曲線を作成する機能を有している
ことを特徴とする請求項2記載の紙製ロール製品の巻取装置。
【請求項4】
前記動作機構は、前記ニップロールを回転自在に取付けた揺動アームと、該揺動アームを上下に揺動可能に支持する支軸と、該支軸に連結されたサーボモータとから構成されており、
前記カム曲線制御器は、前記サーボモータの正逆回転を制御して、選択されたカム曲線に従って前記ニップロールを前記被巻取体に接触させる
ことを特徴とする請求項1記載の紙製ロール製品の巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製ロール製品の巻取装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、トイレットロールやキッチンロールなどの紙製ロール製品を製造する巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示す紙製ロール製品の巻取装置は、3本の巻取ロールで囲まれた巻取空間で原紙をロール状に巻き取る巻取機械である。3本の巻取ロールは、ワインディングロールとベッドロールとニップロールからなり、各巻取ロールには各ロールの速度を制御する速度制御モータと、速度制御モータへの出力信号を送信する制御器と、制御器への入力信号を送信する入力装置と、を備えている。
この構成により、3本の巻取ロールの回転数を個別に制御して、紙製ロール製品を均一な巻き硬さにしたり、あるいはロール内層部を柔らかく巻きながらロール外層部を硬く巻くなどの仕上げが可能になっていた。
【0003】
しかしながら、上記従来技術では、紙製ロール製品の紙質の硬軟やエンボス加工の有無、エンボスの大きさ深さ等による影響で、ロール製品の巻取り初期に弛みが発生することがあり、そのまま巻取り続けるとロール製品外層はしっかり巻取れていても内層には巻きの緩い部分が残って、それが外見的に木の年輪のように見えてしまう。このような年輪様の歪が発生すると紙製ロール製品の商品価値を低下させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-87054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、紙製ロール製品に巻取り初期に弛みが生じず、巻き姿が美しい紙製ロール製品を製造できる紙製ロール製品の巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の紙製ロール製品の巻取装置は、ワインディングロール、ベッドロールおよびニップロールで囲まれた巻取空間で被巻取体を回転させて、該被巻取体に原紙を巻取る巻取装置であって、前記ニップロールを前記巻取空間内で回転している前記被巻取体に対して接近離間させる動作機構と、前記ニップロールの接近離間動作を制御するカム曲線制御器とが設けられており、前記カム曲線制御器は、i:前記被巻取体の巻取り開始区間において、前記ニップロールを前記被巻取体に接触するよう接近させる制御と、ii:接触してから後の巻取り完了までの区間において、前記ニップロールの前記被巻取体に対する接触圧を適正値に保つ制御、を実行することを特徴とする。
第2発明の紙製ロール製品の巻取装置は、第1発明において、前記カム曲線制御器は、前記ニップロールの前記被巻取体への接触圧を最適にするカム曲線を作成し、格納し、設定する機能を有していることを特徴とする。
第3発明の紙製ロール製品の巻取装置は、第2発明において、前記カム曲線制御器は、カム曲線を被巻取体の巻長さを基準として上昇させる上昇位置と、巻径を基準として上昇させる上昇量を指示すると、対応するカム曲線を作成する機能を有していることを特徴とする。
第4発明の紙製ロール製品の巻取装置は、第1発明において、前記動作機構は、前記ニップロールを回転自在に取付けた揺動アームと、該揺動アームを上下に揺動可能に支持する支軸と、該支軸に連結されたサーボモータとから構成されており、前記カム曲線制御器は、前記サーボモータの正逆回転を制御して、選択されたカム曲線に従って前記ニップロールを前記被巻取体に接触させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、カム曲線制御器の制御動作によって、被巻取体に対するニップロールの接触圧が適切に保たれるので、巻取り開始区間における被巻取体に弛みが発生しないか、発生しても小さくなり、その後の原紙巻取りによって弛みを解消できるので、巻姿がきれいになり、商品価値の高い紙製ロール製品を提供できる。
第2発明によれば、カム曲線制御器は、格納しておいた複数本のカム曲線から最適のものを選択して設定できるので、被巻取体に巻取る原紙の硬軟の違いやエンボス加工の有無、エンボスの大きさと深さなどの原紙仕様の相違に基づき、最適のカム曲線を使用できる。このように、製造現場での接触圧調整が容易に行える。
第3発明によれば、設定されているカム曲線上昇位置と上昇量を入力することで、最適のカム曲線を作成できる。このため、製造現場での接触圧調整が容易に行える。
第4発明によれば、ニップロールは揺動アームの揺動によって被巻取体の外周面に接触して接触圧が加減されるが、カム曲線制御器の正逆転はカム曲線に基づいて行われるので、巻取り開始区間以降の接触圧制御が正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る紙製ロール製品の巻取装置1の基本構成説明図である。
図2】巻取装置1におけるコア供給区間の動作説明図である。
図3】巻取装置1における巻取り開始区間の動作説明図である。
図4】巻取装置1における増径区間の動作説明図である。
図5】巻取装置1における巻締め区間の動作説明図である。
図6】巻取装置1における排出区間の動作説明図である。
図7】巻取装置1におけるベッドロール20の速度線図である。
図8】巻取り開始区間IIにおける弛み防止制御の説明図である。
図9】巻取装置1におけるニップロール30のカム曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態に係る巻取装置1は、トイレットロールやキッチンロールその他の紙製ロール製品を製造するための機械装置である。
本明細書において原紙とは、トイレットロールやキッチンロールとして巻き取られる帯状の長尺の紙をいう。この原紙には、1枚の長尺紙からなるものや2枚以上の長尺紙を重ねているものを含む。また、原紙にエンボス加工を施したものもエンボス加工を施してないものも本明細書にいう原紙に含まれる。コアとはウェブを巻き付ける際の芯となる紙製の管(いわゆる紙管)をいう。被巻取体とは、コアcの外周に原紙が巻き付けられて巻き太っていく状態の中間品をいう。
【0010】
本発明にいう紙製ロール製品には、とくに巻長に制限はない。したがって、トイレットロールの場合、標準巻きのほか、いわゆる長尺巻きと称されるものなど様々な巻長のものが含まれる。なお、標準巻きの巻長は、1枚の長尺紙なら50~60mであり、2枚重ねの長尺紙なら25~30mであるが、本発明の巻取装置は原紙の巻長には関係なく使用することができる。
【0011】
本発明に係る巻取装置の上流には原反ロール供給機が置かれる。原反ロール供給機は、紙幅が2~4m位の原紙を直径が1.5~3.5m位に巻取っている原反ロールを回転させながら原紙を繰り出して巻取装置に供給する。巻取装置では紙幅が2~4mの原紙をコアcの回りに巻取るので、棒状になった被巻取体が得られる。この被巻取体は外観が丸太に似ているのでログとも称される。なお、本発明の適用に関し、原紙の紙幅や原反ロールの直径にはなんら制限はない。
巻取装置で巻取った被巻取体が規定の巻径になると巻取装置の下流に配置されている切断機に送られる。切断機で、被巻取体を所定寸法(たとえば、紙幅として100~230mm位)の長さに切断すると、ここでトイレットロールやキッチンロールとなる紙製ロール製品が得られる。
【0012】
(巻取装置の基本構成)
図1に示すように、巻取装置1は、ワインディングロール10、ベッドロール20、およびニップロール30を備えており、この3つのロールで囲まれた空間が巻取空間Sとなっている。3つのロール10,20,30は、いずれも時計方向に回転する。ガイドロール51およびワインディングロール10を経由して供給される原紙Wはコアcの外周に巻き取られて被巻取体となる。被巻取体は3つのロール表面に接触して回転させられることで巻き太っていく。
【0013】
ワインディングロール10もベッドロール20もニップロール30も、個別にサーボモータに連結されており、その回転速度はサーボモータに接続された速度制御器(図示省略)で可変に制御される。本明細書でいう回転速度は、各ロールの外周面の周速度をいう。
【0014】
ワインディングロール10とベッドロール20は取付位置が固定された回転軸11,21上で回転する。ニップロール30を被巻取体に対して接近離間させる動作機構には任意のものを採用できるが、図示の実施形態では以下のように構成されている。
ニップロール30は揺動アーム32の先端に取付けられた回転軸31上で回転する。揺動アーム32の基端は支軸33で支持され、上向きあるいは下向きに揺動する。揺動アーム32の支軸33にはサーボモータを連結しており、サーボモータを正逆転させることで揺動アーム32を上下に揺動させ、ニップロール30を被巻取体の外周面に接触させたり、離間させたり、また接触圧を調整することができる。
【0015】
ニップロール30は、ワインディングロール10とベッドロール20と共に巻取り中の被巻取体を3点支持するために用いられる。そのため、ニップロール30を支持する揺動アーム32は、被巻取体に接触するよう、また被巻取体の巻径の増大に合わせるよう上下に揺動する。この揺動アーム32の揺動角度は正確に制御することを要するため、支軸33を回転させるサーボモータ35の正逆回転は後述するカム曲線制御器36で制御される。
【0016】
ワインディングロール10の下方であって、ベッドロール20の側方(図中右側)には、コアガイド40が配置されている。コアガイド40は、コアcを受け入れて巻取空間Sまで送り込むためのガイド部材であり、静止部材で構成されている。
【0017】
(巻取りの基本動作)
図2図6に示す巻取装置1の動作説明図および図7に示すベッドロール20の速度線図に基づき、紙製ロール製品の巻取作業の基本動作を説明する。
図7において、横軸は被巻取体を1本巻取る巻長さ(単位m)を示しており、縦軸はベッドロール20の基準値Yに対する速度比(%)を示している。太実線で示した折れ線はベッドロール20の速度比を示している。
【0018】
基準値Yは、ワインディングロール10に対するベッドロール20の速度比が100%から99%の間で選択され、代表的には99.5%が選択される。100%の場合は、ベッドロール20はワインディングロール10と同速である。99%や99.5%の場合は、ベッドロール20の速度はワインディングロール10よりやや遅く、この巻取速度では被巻取体をやや柔らかく巻取ることができる。
【0019】
Yaは基準値より増速した速度を示しており、増速比Oはたとえば0.25%である。したがって、後述する制御区間Bbではニップロール30は基準値Yより0.25%速い速度で回転する。ただし、この数値に限られない。
Ybは基準値Yより減速した速度を示しており、減速比Nは約5%である。したがって、後述する制御区間Bdでは、ニップロール30は基準値Yより約5%低い、約95%の速度で回転する。ただし、この数値に限られない。
【0020】
図7の横軸における符号Ba,Bb,Bc,Bd,Be,Bf,BgおよびBhは、1個の被巻取体を排出してから次の被巻取体を巻き取るまでの制御区間を示している。図中の黒三角は被巻取体の巻芯であるコアの投入点(原点)を示している。符号Xは、先に巻取り完了した被巻取体の排出から新しいコアcの投入までの制御区間を示している。
【0021】
上記の巻取装置1における巻取り作業を以下に説明する。
I コア供給区間(Bc後半+Bd)
コア供給区間Iを図2に基づき説明する。同図において、ワインディングロール10の回転軸11を中心として描いた円弧に付した符号Bc,Bdは図7の制御区間Bc,Bdに対応する。
コア供給区間Iは、コアcをコアガイド40の入口から巻取り空間Sまで送り込む区間である。コアcは図示しないコア供給装置からコアガイド40の入口に投入され、投入された時点ではコアcの外周に糊が付着している。この投入点は、図7のBc区間の中間にある原点(黒三角表示)である。
【0022】
ベッドロール20は、図7のBc区間で基準値Yよりやや早い上限速度Yaから下限速度Ybまで急減速する。なお、下限速度Ybは基準値Yの95%位であり、ベッドロール20は下限速度Ybでの回転を次の制御区間Bdの間保持する。
ワインディングロール10は時計方向に回転しており、コアガイド40は静止しているので、コアcはワインディングロール10に接して反時計方向に回転してコアガイド40上を巻取空間Sの方に向け転がっていく。コアcがコアガイド40の先端(図中左端)を抜けると、ベッドロール20に接触し、ベッドロール20は制御区間Bdにおいて下限速度Ybで回転しているので、コアcは巻取空間Sまで送り込まれる。
また、この間にワインディングロール10を経て供給される原紙Wがコアcに巻き付けられる。これ以降、コアcに原紙Wが巻き付けられつつある物を被巻取体と称して説明する。
【0023】
II 巻取り開始区間(Be~Bg)
巻取り開始区間IIを引き続き図3に基づき説明する。図7ではBe~Bgに示す区間が対応する。制御区間Beではベッドロール20が急増速しこれに続く区間Bfでは緩増速し、さらに区間Bgで最緩増速して基準値Yに到る。制御区間Beの終点(つまり制御区間Bfの始点)から基準値Yまでの減速比Mは1.0~2.5%の範囲から選択される。制御区間Bfの終点(つまり制御区間Bgの始点)から基準値Yまでの減速比Lは0.1~0.3%の範囲から選択される。制御区間Be,Bfでベッドロール20はワインディングロール10より低速であるが、制御区間Bgの終了点では制御区間Bhの基準値Yに一致するよう増速する。以降は巻取り完了まで一定速度で巻取りを続ける制御区間Bhが続く。
このように、回転速度を3段階に分けて増速するのは、被巻取体の巻径の増化に合わせて基準値Yまで円滑に増速するためである。
【0024】
制御区間Bdでは、ワインディングロール10とベッドロール20とでコアcを回転させて原紙を巻取っていき、さらにニップロール30が下降して、制御区間Be,BfおよびBgにおいて巻取り中の被巻取体Rの回転を安定させる。この巻取り開始区間IIでは、コアcの外周に数層の巻き層が生じる。この区間で、コアcの外周に巻き付けられている原紙Wに弛みが生じることがあるが、この問題への対処は後述する。
【0025】
III 増径区間(Bh)
増径区間IIIを図4に基づき説明する。図7ではBhの制御区間が対応する。
巻取り開始区間IIを終えると、被巻取体Rの巻径を増大させる増径区間IIIに入る。図7に示す制御区間Bhでベッドロール20を基準値Yで回転させ、被巻取体Rの巻径を太らせていく。また、ニップロール30の速度も同調させている。
この区間では、巻取り空間Sに送り込まれた被巻取体Rは3つのロール10,20,30に接触して回転しながら、ワインディングロール10を経由して送られてくる原紙Wを巻取るので、被巻取体Rは巻き太っていく。この区間では3つのロール10,20,30がそれぞれ一定の速度で回転する。
【0026】
IV 巻締め区間(Ba+Bb)
巻締め区間IVを図5に基づき説明する。図7ではBa+Bbの制御区間が対応する。
被巻取体Rが所定の巻径(たとえば、110mm)になる直前には、図7に示すように、ベッドロール20の回転速度を上限速度Yaまで上げる。
こうすることで、原紙Wに張力がかかり、被巻取体の最外層部分の巻き硬さを硬くすることができる。また、原紙の張力を少し上げて原紙の末端(次の被巻取体の先端)を切断しやすくする。巻径が所定寸法になると巻取りが完了した巻取り製品が得られる。その後は、既述したようにベッドロール20が減速する制御区間Bcに入る。
なお、次の被巻取体のためのコアcがコアガイド40に投入される。この投入点は制御区間Bcの中間点(黒三角で示す原点)である。
【0027】
V 排出区間(Bc前半)
巻取装置1の排出区間を図6に基づき説明する。図7ではBc前半の制御区間が対応する。
被巻取体Rが所定の巻径になったら、ニップロール30の速度を上げ、図7のBcに示すようにベッドロール20の速度を下げる。そうすると、被巻取体Rはベッドロール20の側方(図中左側)に向け蹴り出されるようにして排出される。また、蹴り出しが邪魔にならないようニップロール30は上方に退避させる。
以後は、前述したコア供給区間I→巻取り開始区間II→増径区間III→巻締め区間IV→排出区間Vの各動作をこの順で繰り返すことで、次々と被巻取体を巻取ることができる。
【0028】
(巻取り開始区間IIにおける弛み防止制御)
巻取り開始区間IIにおける弛み防止制御の詳細を、図8および図9に基づき説明する。
図9のカム曲線図において、横軸は被巻取体の巻長さ(単位m)を示しており、縦軸は被巻取体の巻径(単位mm)を示している。横軸における原点(黒三角)はコアcの投入点を示している。符号Dは被巻取体Rの巻径を、符号dはコアcの直径を示している。Hはニップロール30の退避のための上昇高さを示している。
【0029】
ニップロール30の制御区間は、符号Na,Nb,Nc,NdおよびNeで示す5区間からなる。
カム曲線Cvはニップロール30の昇降動作、つまり被巻取体Rへの接近離間動作を1本の被巻取体Rの巻長さを基準にとって示したものである。太点線Rdは、被巻取体Rの巻始めから巻終わりまでの巻径の変化を示している。図示のように被巻取体Rの巻径Rdは、緩やかな円弧を描いて増大していく。ニップロール30は、巻径Rdが示すように増径していく被巻取体Rの外周を押えて、3点巻取りが安定して行えるように用いられる。
被巻取体Rの巻始めは制御区間Nbの始点(原点黒三角と同一点)であり、巻終わりは制御区間Neの終点である。この間で、1本の被巻取体Rの巻取りが完了する。
【0030】
カム曲線Cv(Cvs,Cvmおよび複数のCvwを含む)は、被巻取体Rの巻径Rdから少し離して図示しているが、実際にはニップロール30は被巻取体Rの外面に接するよう制御されているので、接触圧の強弱の差を間隔をあけることで示している。カム曲線Cvのうち巻径Rdに近い線(Cvs)は接触圧が高く、離れている線(Cvw)ほど接触圧が低いことを示すものである。
【0031】
図9のNa,Nb制御区間では未だ巻取空間Sにコアcが投入されてない時期であって、このタイミングでカム曲線Cvの上昇に合わせてニップロール30が上昇し始めているのは、先に巻取り完了した被巻取体の排出を妨げないようにするためである。
【0032】
制御区間Ncではニップロール30は上昇高さHで示す上方退避位置に保持されているが、この直前である制御区間Nbとそれに続く制御区間Ncでは新しく投入されたコアcへの原紙Wの巻き付けが開始されている(図2の状態に対応)。
そのため、次の制御区間Ndで、カム曲線Cvが急下降しているようにニップロール30は急下降をして、巻取り進行中の被巻取体Rに上方から接触して、他のワインディングロール10およびベッドロール20と共に3点支持をし始める。このようにして巻取り開始区間II(図3参照)が始まる。
【0033】
ところで、既述のごとくニップロール30の上下動は揺動アーム32をサーボモータ35で上下に揺動させて行う。
サーボモータ35を駆動して、揺動アーム32を下降させ(図8の矢印Nd)、ニップロール30を被巻取体Rに接触させ、次いでその直後から徐々に揺動アーム32を上昇させ(図8の矢印Ne)ていくと、ニップロール30が被巻取体Rの外面に常に接触し、3点ロール支持を可能とすることができる。
【0034】
しかるに、揺動アーム32が下降から上昇に移り替わる一瞬には、ニップロール30が静止した状態が発現する。
このときに、原紙が柔らかい紙であったり、エンボス加工の凹部が多かったり深いもの等であると、巻始めの被巻取体Rに弛みsagが生じることがある。この弛みsagはさらに外層に原紙を巻き付けていくと被巻取体Rの内層側に残ったままで、しわができたり、巻き硬さの異なる層が隣接して発現し、木の年輪のように見えてくる。巻取り完了後の紙巻取り製品(トイレットペーパーなど)がこのような不完全な巻取り姿になるのを防止するため、本発明では、ニップロール30を被巻取体Rの外面に接した後の接触圧を調整可能としている。
【0035】
図9に示すカム曲線Cvは、ニップロール30の被巻取体Rに対する接近離間動作を制御する基準であり、ニップロール30を上下動させるのはサーボモータ35であるから、カム曲線Cvはサーボモータを制御するためにソフト的に作成されている。したがって、ニップロール30の上方退避とそこから下降して被巻取体Rに接触し、さらに接触圧を適正値に保ち続ける動作は、カム曲線Cvで制御されることになる。
このカム曲線Cvには、制御区間Neで用いられるCvs,Cvm,Cvwも含まれるが、制御区間Neで用いられるCvs,Cvm,Cvwは接触圧調整に用いられるので、接触圧曲線の意味ももっている。
【0036】
図8に示すカム曲線制御器36は、コンピュータを内蔵しており、カム曲線Cvを作成し、作成したカム曲線Cvを格納し、格納したカム曲線Cvを呼び出して設定する機能を有している。
また、作成、格納、設定の各機能を実施するためのタッチパネル等の操作機器が付設されている。
【0037】
カム曲線制御器36のカム曲線作成機能は、被巻取体Rの巻径を基準として、カム曲線を上昇させる上昇位置と上昇させる上昇量を指示して、対応するカム曲線Cvを作成するというものである。
具体的には、タッチパネルを用いて図9に示す上昇位置cp(制御区間Neの開始点からの巻長さ増加分)を制御区間Neの全長に対する割合(%)で指示し、上昇量cu(制御区間Neの開始点からの巻径増加分)を被巻取体Rの巻径Dに対する割合(%)で指示すると、指示内容に対応したカム曲線Cvを作成することができる。
このカム曲線作成機能を用いて、ニップロール30の被巻取体Rへの接触圧の強いカム曲線Cvsや接触圧の弱いカム曲線Cvwを作成でき、それらの間で任意の接触圧のカム曲線Cvmを作成することができる。
【0038】
作成されたカム曲線Cvs,Cvm,Cvwは、カム曲線制御器36の記憶部内に格納しておくことができる。またタッチパネルの操作で呼び出して設定することができる。
どのカム曲線Cvs,Cvm,Cvwがどの仕様の原紙Wに最適かは、予め実験的に求めておいて、カム曲線制御器36内に格納しておけばよい。
そのうえで、巻取り作業の始めに、原紙の仕様に最適なカム曲線Cvを呼び出して設定すれば、巻取り開始区間IIにおいて、被巻取体Rへのニップロール30の接触圧が最適となる。つまり、接触圧が過大にならないので、弛みsagが生じないか、生じても小さなものとなる。
【0039】
以上のように、カム曲線制御器36による弛み防止制御を行えば、被巻取体Rに巻取る原紙Wの硬軟の違いやエンボス加工の有無、エンボスの大きさと深さなどの原紙仕様の相違に基づき、最適の接触圧曲線を選択できる。このため、巻取り開始区間IIにおける被巻取体Rに弛みsagが発生しないか、できたとしても小さくなる。また発生した弛みは小さいうちに外周に新しい原紙を巻き付けていくので、目立たなくなり、被巻取体Rにしわや木の年輪模様のすじが発現することはなくなる。
【0040】
(弛み防止制御の効果)
上記のように、本発明で得られた被巻取体Rには、巻取り断面における巻き硬さの不足部分(柔らかい部分)が少なくなる。仮に被巻取体Rに巻取りの硬い部分と柔らかい部分が生じるが巻き硬さの不揃いが残っていると使い勝手が悪くなったり、見映えが悪くなり商品価値が落ちてしまうが、本発明の巻取装置1を用いると、巻き硬さが概ね均一化されるので、商品価値の高い紙製ロール製品が得られる。
【符号の説明】
【0041】
1 巻取装置
10 ワインディングロール
20 ベッドロール
30 ニップロール
32 揺動アーム
35 サーボモータ
36 カム曲線制御器
Cv カム曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9