(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071848
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 1/16 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
G01K1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182303
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】乾 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 達雄
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056DA02
(57)【要約】
【課題】 測定対象物に対して高い密着性を有し、より高い温度測定性能(より小さい温度差、高い熱応答性及び熱追従性)を得ることができる温度センサを提供すること。
【解決手段】 感熱素子と、感熱素子に先端が接続された一対のリード線3と、少なくとも感熱素子を絶縁性の樹脂で封止した先端部を有する樹脂封止部4と、先端部を覆って設けられた弾性材料部5とを備え、弾性材料部が、樹脂封止部の樹脂よりも熱膨張係数が高い弾性材で形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱素子と、
前記感熱素子に先端が接続された一対のリード線と、
少なくとも前記感熱素子を絶縁性の樹脂で封止した先端部を有する樹脂封止部と、
前記先端部を覆って設けられた弾性材料部とを備え、
前記弾性材料部が、前記樹脂封止部の樹脂よりも熱膨張係数が高い弾性材で形成されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記樹脂封止部が、エポキシ樹脂で形成され、
前記弾性材料部が、シリコーンゴムで形成されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記弾性材料部が、前記先端部と、
前記先端部の基端に接続され前記先端部よりも外径が大きい拡径部とを備え、
前記先端部と前記拡径部との接続部分に段差部が形成され、
前記弾性材料部の基端が、前記段差部に係止されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記樹脂封止部の外周面に、前記弾性材料部が覆っていない部分から前記先端部の先端まで延在した空気逃がし溝が形成されていることを特徴とする温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大電力を給電するためのコネクタ等に使用される温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサとして、充電用のコネクタ部に用いられるピン状の充電プラグ等に内蔵されて温度を測定するものが知られている。例えば、特許文献1には、充電ピンのセンサ空洞に内蔵された円柱状又は円筒状の温度センサユニットが記載されている。この温度センサユニットは、セラミックス材料等の電気絶縁性の円筒状外被内に温度センサ素子が配置され、後方領域にセンサ線を有したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
充電用コネクタ部等の温度監視の目的は、コネクタ部の許容上限以下での運用とするための電流値の調整、接点の異常過熱時のシャットダウンなどがある。一般的に充電経路で最も抵抗値の高い端子の接触箇所から測温部が離れているため、発熱部と測温部との温度差や異常過熱の際の遅れ時間などを考慮して、温度のマージンを取る必要があり、最大電流値を低くせざるを得なかった。上記特許文献1では、充電ピンの中に穴(センサ空洞)を形成して、温度センサユニットを挿入しているが、温度センサユニットと測定対象物である充電ピンの穴とのクリアランス又は製造バラツキ等があり、充電ピンの穴と温度センサユニットとが密着できず、充電ピンと温度センサとの温度差が大きくなってしまうと共に、熱応答性や熱追従性もが低下してしまう問題があった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、測定対象物に対して高い密着性を有し、より高い温度測定性能(より小さい温度差、高い熱応答性及び熱追従性)を得ることができる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、感熱素子と、前記感熱素子に先端が接続された一対のリード線と、少なくとも前記感熱素子を絶縁性の樹脂で封止した先端部を有する樹脂封止部と、前記先端部を覆って設けられた弾性材料部とを備え、前記弾性材料部が、前記樹脂封止部の樹脂よりも熱膨張係数が高い弾性材で形成されていることを特徴とする。
【0007】
この温度センサでは、弾性材料部が、樹脂封止部の樹脂よりも熱膨張係数が高い弾性材で形成されているので、測定対象物である充電ピン等の穴とのクリアランス又は製造バラツキ等の隙間又は高温時の熱膨張による穴の拡大があっても、高温時の弾性材料部の熱膨張によって、樹脂封止部と弾性材料部とを密着させることができると共に、充電ピン等の穴に密着させることができる。
また、先端部が弾性材料部で覆われているので、充電ピン等の穴に対して密着し易く、抜け止め効果も得ることができる。
したがって、充電ピン等(測定対象物)と感熱素子との温度差をさらに低減することができると共に、高い熱応答性を得ることができる。
【0008】
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記樹脂封止部が、エポキシ樹脂で形成され、前記弾性材料部が、シリコーンゴムで形成されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、樹脂封止部が、エポキシ樹脂で形成され、弾性材料部が、シリコーンゴムで形成されているので、絶縁性及び非透湿性が高いが硬く、感熱素子に対して機械的な負荷が掛かりやすいエポキシ樹脂の先端部を、より柔らかく高い熱膨張係数を有するシリコーンゴムの弾性材料部で覆うことで、感熱素子への機械的負荷を低減すると共に、充電ピン等の穴への高い密着性を得ることができる。
【0009】
第3の発明に係る温度センサは、第1又は第2の発明において、前記弾性材料部が、前記先端部と、前記先端部の基端に接続され前記先端部よりも外径が大きい拡径部とを備え、前記先端部と前記拡径部との接続部分に段差部が形成され、前記弾性材料部の基端が、前記段差部に係止されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、弾性材料部の基端が、段差部に係止されているので、段差部が弾性材料部のストッパーとなって段差部で弾性材料部の基端が位置決めされることで、挿入時には、初期圧縮代を用い、測定対象物である穴の径方向と先端方向に密着させると共に、高温時の熱膨張した際に、弾性材料部が先端側に膨張し易くなって、確実に密着させることができる。
【0010】
第4の発明に係る温度センサは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記樹脂封止部の外周面に、前記弾性材料部が覆っていない部分から前記先端部の先端まで延在した空気逃がし溝が形成されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、樹脂封止部の外周面に、弾性材料部が覆っていない部分から先端部の先端まで延在した空気逃がし溝が形成されているので、樹脂封止部の先端部と弾性材料部との間の初期圧縮代において、初期挿入した際にその中の圧縮された空気が容易に空気逃がし溝を通して外部に排出することができ、先端部と弾性材料部とを密着させることができる。また、空気逃がし溝は、高温時においても、完全に密着できていない箇所からの空気の排出も促す機能を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、弾性材料部が、樹脂封止部の樹脂よりも熱膨張係数が高い弾性材で形成されているので、高温時の弾性材料部の熱膨張によって、樹脂封止部と弾性材料部とを密着させることができると共に、充電ピン等の測定対象物の穴に密着させることができる。また、初期挿入時、一定のクリアランスを設けた装着が可能になり、樹脂封止部に無理な力を加えない装着が可能になる。
したがって、本発明の温度センサでは、例えば測定対象物である充電ピンの温度上昇に対して、測定対象物との温度差を小さくできると共に、より高い熱応答性での温度測定が可能になり、温度制御や異常過熱時のシャットダウンに関してマージンを大幅に減らすことができ、充電の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る温度センサの一実施形態において、温度センサを示す斜視図(a)及び温度センサを充電ピンに装着した状態を示す斜視図(b)である。
【
図2】本実施形態において、内部を透視して示す温度センサの正面図(a)及び温度センサを充電ピンに装着した状態の正面図(b)である。
【
図3】本実施形態において、内部を透視して示す温度センサの左側面図(a)及び温度センサを充電ピンに装着した状態の左側面図(b)である。
【
図4】本実施形態において、初期圧縮代が生じた温度センサにおいて内部を透視して示す要部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る温度センサの一実施形態を、
図1から
図4を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態の温度センサ1は、
図1から
図4に示すように、感熱素子2と、感熱素子2に先端が接続された一対のリード線3と、少なくとも感熱素子2を絶縁性の樹脂で封止した先端部4aを有する樹脂封止部4と、先端部4aを覆って設けられた弾性材料部5とを備えている。
上記弾性材料部5は、樹脂封止部4の樹脂よりも熱膨張係数が高い弾性材で形成されている。
【0015】
上記樹脂封止部4は、例えばエポキシ樹脂で形成され、上記弾性材料部5は、例えばシリコーンゴムで形成されている。
エポキシ樹脂の熱膨張係数は、40~80×10-6/Kであるのに対し、シリコーンゴムの熱膨張係数は、250~400×10-6/Kである。
本実施形態の温度センサ1は、例えば測定対象物Pに形成された穴P0に、少なくとも弾性材料部5で覆われた先端部4aを挿入して設置される。
上記測定対象物Pは、例えば金属で形成された充電ピンである。
【0016】
上記弾性材料部5は、先端部4aと、先端部4aの基端に接続され先端部4aよりも外径が大きい拡径部4bとを備えている。
先端部4aと拡径部4bとの接続部分には、段差部Dが形成されている。
弾性材料部5の基端は、段差部Dに係止されている。
【0017】
上記樹脂封止部4は、さらに拡径部4bの基端側に拡径部4bよりも外径が大きい基端部4cが形成されている。
樹脂封止部4の外周面には、弾性材料部5が覆っていない部分(拡径部4b及び基端部4c)から先端部4aの先端まで延在した空気逃がし溝4dが形成されている。
【0018】
上記空気逃がし溝4dは、先端部4aの先端から拡径部4bを介して基端部4cの基端まで延在している。
また、樹脂封止部4の外周面には、一対の空気逃がし溝4dが互いに反対側に配されて形成されている。
なお、測定対象物Pである充電ピンの穴P0は、拡径部4b及び基端部4cに形成された空気逃がし溝4dとの間に僅かな隙間を有した断面形状とされている。
【0019】
先端部4aと弾性材料部5との間には、
図2の(a)及び
図4に示すように、穴P0への挿入前には初期圧縮代Cの空間が形成されている。
すなわち、弾性材料部5内には、先端部4aとの間に、初期圧縮代Cの空間がある。しかしながら、測定対象物Pの充電ピン等へ挿入する際、弾性材料部5が軸線方向に圧縮され、先端部4aの先端に密着する。
【0020】
また、弾性材料部5が熱膨張した際にも、内部の空気残は、空気逃がし溝4dを介して弾性材料部5の外へと押し出される。
すなわち、弾性材料部5は高温時に熱膨張すると、先端が穴P0の底面に位置決めされていると共に、基端が段差部Dに位置決めされているため、軸線方向に熱膨張しようとして、挿入時の圧縮代残があったとしても、その空気も空気逃がし溝4dを介して押し出され、最終的に弾性材料部5と先端部4aとが更に密着する。
なお、空気逃がし溝4dと弾性材料部5との間には、初期圧縮代C内の僅かな残留空気が外部に抜ける程度の流路となる僅かな隙間が設けられている。
【0021】
上記感熱素子2は、例えばチップサーミスタやフレーク型サーミスタ等である。なお、本実施形態では、フレーク型サーミスタの感熱素子2を採用している。
この感熱素子6は、先端部4aの先端側かつ一対のリード線3の先端間にハンダにより設置されている。
【0022】
上記一対のリード線3は、例えばリードフレームであり、基端部分だけが樹脂封止部4の基端部4cから外方に露出している。すなわち、一対のリード線3は、露出した基端部分を除いて樹脂封止部4内に封止されている。
なお、樹脂封止部4の基端は、プリント基板等の別部材で固定されることで、測定対象物Pに対して抜け止め設置される。
【0023】
このように本実施形態の温度センサ1では、弾性材料部5が、樹脂封止部4の樹脂よりも熱膨張係数が高い弾性材で形成されているので、測定対象物Pである充電ピン等の穴とのクリアランス又は製造バラツキ等の隙間又は高温時の熱膨張による穴P0の拡大があっても、高温時の弾性材料部5の熱膨張によって、樹脂封止部4と弾性材料部5とを密着させることができると共に、充電ピン等の穴P0に密着させることができる。
【0024】
また、先端部4aが弾性材料部5で覆われているので、充電ピン等の穴P0に対して密着し易く、抜け止め効果も得ることができる。
したがって、充電ピン等(測定対象物P)と感熱素子2との温度差をさらに低減することができると共に、高い熱応答性を得ることができる。
【0025】
特に、樹脂封止部4が、エポキシ樹脂で形成され、弾性材料部5が、シリコーンゴムで形成されることで、絶縁性及び非透湿性が高いが硬く、感熱素子2に対して機械的な負荷が掛かりやすいエポキシ樹脂の先端部4aを、より柔らかく高い熱膨張係数を有するシリコーンゴムの弾性材料部5で覆うことで、感熱素子2への機械的負荷を低減すると共に、充電ピン等の穴P0への高い密着性を得ることができる。
【0026】
また、弾性材料部5の基端が、段差部Dに係止されているので、段差部Dが弾性材料部5のストッパーとなって段差部Dで弾性材料部5の基端が位置決めされることで、挿入時には、初期圧縮代Cを用い、測定対象物Pである穴P0の径方向と先端方向に密着させると共に、高温時の熱膨張した際に、弾性材料部5が先端側に膨張し易くなって、確実に密着させることができる。
【0027】
さらに、樹脂封止部4の外周面に、弾性材料部5が覆っていない部分から先端部4aの先端まで延在した空気逃がし溝4dが形成されているので、
図4に示すように、先端部4aと弾性材料部5との間の初期圧縮代Cにおいて、初期挿入した際にその中の圧縮された空気が容易に空気逃がし溝4dを通して外部に排出することができ、先端部4aと弾性材料部5とを密着させることができる。また、空気逃がし溝4dは、高温時においても、完全に密着できていない箇所からの空気の排出も促す機能を有している。
【0028】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0029】
上記実施形態では、チップサーミスタやフレーク型サーミスタの感熱素子をリードフレームのリード線に接続しているが、例えばポリイミドフィルム等の絶縁性フィルムに実装したチップサーミスタやフレーク型サーミスタや成膜した薄膜サーミスタ等の感熱素子を、絶縁性フィルムに銅箔等で形成したパターン配線のリード線に接続しても構わない。この場合、感熱素子が絶縁性フィルムの一部と共に樹脂封止部に封止される。このようなフレキシブルな絶縁性フィルム及びパターン配線を用いることで、プリント基板等の外部配線との接続の自由度が高くなる。
【符号の説明】
【0030】
1…温度センサ、2…感熱素子、3…リード線、4…樹脂封止部、4a…先端部、4b…拡径部、4d…空気逃がし溝、5…弾性材料部、D…段差部