(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071865
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】可塑化装置、及び三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240520BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240520BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/106
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182342
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】渡部 学
(72)【発明者】
【氏名】大村 眞
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA23
4F213AR06
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】結晶性樹脂を含む造形材料のノズルからの吐出量を安定化させることができる可塑化装置を提供すること。
【解決手段】造形材料を吐出するノズルと、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、前記溝形成面に対向する対向面を有し、ヒーター及び連通孔が設けられたバレルと、前記溝形成面に形成された溝と前記バレルとの間に供給された前記造形材料を加熱する第1加熱部と、前記ノズルに供給された前記造形材料を加熱する第2加熱部と、前記駆動モーター、前記第1加熱部、前記第2加熱部のそれぞれを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記造形材料が結晶性樹脂を含む場合、前記第1加熱部と前記第2加熱部との少なくとも一方を制御し、前記バレルの温度に応じた第1温度と、前記ノズルの温度に応じた第2温度との差を小さくする、可塑化装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料を吐出するノズルと、
駆動モーターと、
前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、ヒーター及び連通孔が設けられたバレルと、
前記溝形成面に形成された溝と前記バレルとの間に供給された前記造形材料を加熱する第1加熱部と、
前記ノズルに供給された前記造形材料を加熱する第2加熱部と、
前記駆動モーター、前記第1加熱部、前記第2加熱部のそれぞれを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記造形材料が結晶性樹脂を含む場合、前記第1加熱部と前記第2加熱部との少なくとも一方を制御し、前記バレルの温度に応じた第1温度と、前記ノズルの温度に応じた第2温度との差を小さくする、
可塑化装置。
【請求項2】
前記第1温度は、前記バレルの温度であり、
前記第2温度は、前記ノズルの温度である、
請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項3】
前記対向面は、第1領域と、前記第1領域よりも前記連通孔から遠い第2領域とを有し、
前記バレルの温度は、前記第1領域の温度である、
請求項2に記載の可塑化装置。
【請求項4】
前記第1温度は、前記第1加熱部の温度であり、
前記第2温度は、前記第2加熱部の温度である、
請求項1に記載の可塑化装置。
【請求項5】
前記対向面は、第1領域と、前記第1領域よりも前記連通孔から遠い第2領域とを有し、
前記第1加熱部は、前記第1領域に配置される、
請求項4に記載の可塑化装置。
【請求項6】
可塑化装置を備える三次元造形装置であって、
前記可塑化装置は、
造形材料を吐出するノズルと、
駆動モーターと、
前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、ヒーター及び連通孔が設けられたバレルと、
前記溝形成面に形成された溝と前記バレルとの間に供給された前記造形材料を加熱する第1加熱部と、
前記ノズルに供給された前記造形材料を加熱する第2加熱部と、
前記駆動モーター、前記第1加熱部、前記第2加熱部のそれぞれを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記造形材料が結晶性樹脂を含む場合、前記第1加熱部と前記第2加熱部との少なくとも一方を制御し、前記バレルの温度に応じた第1温度と、前記ノズルの温度に応じた第2温度との差を小さくする、
三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、可塑化装置、及び三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を含む造形材料の少なくとも一部を可塑化し、可塑化された造形材料をノズルから吐出可能な可塑化装置を備える三次元造形装置についての研究、開発が行われている。
【0003】
これに関し、熱可塑性樹脂として、POM(ポリアセタール)等の結晶性樹脂と、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の非結晶性樹脂とのそれぞれを利用可能な可塑化装置を備える三次元造形装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載されたような可塑化装置において、ノズルから吐出される単位時間当たりの造形材料の量がばらつくことは、三次元造形装置による三次元造形物の造形精度を低下させることが知られている。このため、当該可塑化装置では、ノズルの温度を高くすることにより、造形材料のノズルからの吐出量を安定化させることがある。しかしながら、可塑化された結晶性樹脂の粘度の温度変化に対する変化率は、可塑化された非結晶性樹脂の粘度の温度変化に対する変化率よりも大きい。このため、ユーザーは、非結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料の単位時間当たりの吐出量のばらつきを小さくする造形条件を、結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料の吐出量を安定化させる造形条件に適用することができない。当該可塑化装置は、結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料をノズルから吐出する場合、単純にノズルの温度を高くすることで、造形材料のノズルからの吐出量を安定化させることができないことがあった。言い換えると、当該可塑化装置は、非結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料の吐出量を安定化させる造形条件を、結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料の吐出量を安定化させる造形条件として適用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本開示の一態様は、造形材料を吐出するノズルと、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、前記溝形成面に対向する対向面を有し、ヒーター及び連通孔が設けられたバレルと、前記溝形成面に形成された溝と前記バレルとの間に供給された前記造形材料を加熱する第1加熱部と、前記ノズルに供給された前記造形材料を加熱する第2加熱部と、前記駆動モーター、前記第1加熱部、前記第2加熱部のそれぞれを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記造形材料が結晶性樹脂を含む場合、前記第1加熱部と前記第2加熱部との少なくとも一方を制御し、前記バレルの温度に応じた第1温度と、前記ノズルの温度に応じた第2温度との差を小さくする、可塑化装置である。
【0007】
また、上記課題を解決するために本開示の他の態様は、可塑化装置を備える三次元造形装置であって、前記可塑化装置は、造形材料を吐出するノズルと、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、前記溝形成面に対向する対向面を有し、ヒーター及び連通孔が設けられたバレルと、前記溝形成面に形成された溝と前記バレルとの間に供給された前記造形材料を加熱する第1加熱部と、前記ノズルに供給された前記造形材料を加熱する第2加熱部と、前記駆動モーター、前記第1加熱部、前記第2加熱部のそれぞれを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記造形材料が結晶性樹脂を含む場合、前記第1加熱部と前記第2加熱部との少なくとも一方を制御し、前記バレルの温度に応じた第1温度と、前記ノズルの温度に応じた第2温度との差を小さくする、三次元造形装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】三次元造形装置1の構成の一例を示す図である。
【
図2】制御装置40のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】制御装置40の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】制御装置40が吐出温度調整制御を行う処理の流れの一例を示す図である。
【
図5】制御装置40が吐出温度調整制御を行った結果の一例を示す図である。
【
図6】制御装置40が吐出温度調整制御の変形例を行う処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
<三次元造形装置の概要>
まず、実施形態に係る三次元造形装置の概要について説明する。
【0011】
実施形態に係る三次元造形装置は、実施形態に係る可塑化装置を備える。可塑化装置は、ノズルと、駆動モーターと、スクリューと、バレルと、第1加熱部と、第2加熱部と、制御部を備える。ノズルは、造形材料を吐出する。スクリューは、駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有する。バレルは、溝形成面に対向する対向面を有し、ヒーター及び連通孔が設けられている。第1加熱部は、溝形成面に形成された溝とバレルとの間に供給された造形材料を加熱する。第2加熱部は、ノズルに供給された造形材料を加熱する。制御部は、駆動モーター、第1加熱部、第2加熱部のそれぞれを制御する。そして、制御部は、造形材料が結晶性樹脂を含む場合、第1加熱部と第2加熱部との少なくとも一方を制御し、バレルの温度に応じた第1温度と、ノズルの温度に応じた第2温度との差を小さくする。これにより、当該三次元造形装置、及び当該可塑化装置は、結晶性樹脂を含む造形材料のノズルからの吐出量を安定化させることができる。
【0012】
以下では、実施形態に係る三次元造形装置の構成と、実施形態に係る可塑化装置の構成と、当該三次元造形装置が行う処理とについて詳しく説明する。
【0013】
<三次元造形装置の構成>
以下、実施形態に係る三次元造形装置の構成について、三次元造形装置1を例に挙げて説明する。
【0014】
図1は、三次元造形装置1の構成の一例を示す図である。
【0015】
ここで、三次元座標系TCは、三次元座標系TCが描かれた図における方向を示す三次元直交座標系である。以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるX軸を、単にX軸と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるY軸を、単にY軸と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるZ軸を、単にZ軸と称して説明する。また、以下では、一例として、Z軸の負方向が重力方向と一致している場合について説明する。このため、以下では、説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向又は単に上と称し、Z軸の負方向を下方向又は単に下と称して説明する。
【0016】
三次元造形装置1は、ノズルNzを含む可塑化装置2を有する吐出ユニット10と、三次元造形物が造形される造形面21を有するステージ20と、移動部30と、制御装置40と、データ生成装置50を備える。なお、三次元造形装置1において、データ生成装置50は、制御装置40と一体に構成されてもよい。また、三次元造形装置1は、データ生成装置50を備えない構成であってもよい。この場合、データ生成装置50は、三次元造形装置1へ外部から通信可能に接続される。また、三次元造形装置1は、制御装置40とデータ生成装置50とを備えない構成であってもよい。この場合、データ生成装置50は、制御装置40を介して三次元造形装置1と通信可能に接続される。
【0017】
三次元造形装置1は、ステージ20の造形面21上に向かって吐出ユニット10から図示しない造形材料Xを吐出させつつ、吐出ユニット10とステージ20との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置1は、N個のスライス層を積層させて1個の予め決められた形状の三次元造形物を造形する。ここで、Nは、1以上の整数であれば、如何なる整数であってもよい。この場合、N個のスライス層のうち下から数えて1番目のスライス層は、造形面21上に積層される。また、造形面21上に積層されるN個のスライス層のそれぞれは、造形面21と平行な造形パスに沿って吐出された造形材料Xのことである。また、造形パスは、造形材料Xを吐出しながら移動するノズルNzのステージ20に対する走査経路のことである。すなわち、三次元造形装置1は、N個のスライス層のうちのn番目のスライス層の造形パスに沿って造形材料Xを吐出ユニット10によって吐出し、n番目のスライス層をn-1番目のスライス層の上に積層させる。なお、N個のスライス層のそれぞれは、単一の層によって構成されてもよく、積層された複数の層によって構成されてもよい。ここで、nは、1以上N以下のいずれかの整数である。また、あるスライス層の造形パスには、当該スライス層の輪郭に沿ったノズルNzの走査経路であるアウトラインと、当該アウトラインに囲まれた領域内におけるノズルNzの走査経路であるインフィルとが含まれている。すなわち、あるスライス層は、当該スライス層のアウトラインに沿って吐出された造形材料Xと、当該スライス層のインフィルに沿って吐出された造形材料Xとによって構成される。
【0018】
三次元造形装置1は、このような三次元造形物の造形を、三次元造形用データに基づいて行う。ここで、三次元造形装置1は、受け付けた操作に応じて、三次元造形用データを生成する。三次元造形用データは、N個のスライス層を予め決められた形状の三次元造形物として三次元造形装置1に積層させるためのデータである。三次元造形装置1には、当該形状を示す形状データが記憶されている。形状データは、例えば、当該形状を示すデータであれば、如何なるデータであってもよく、例えば、STL(Stereolithography)データである。三次元造形装置1は、受け付けた操作と、形状データとに基づいて、形状データが示す形状を有する仮想的な造形体と、造形体を支持するために造形体に付加される仮想的な支持体とのうち、少なくとも造形体を含む仮想的なオブジェクトを示すオブジェクトデータを生成する。造形体は、積層されるN個のスライス層が有する部分のうち、1個の三次元造形物としてN個のスライス層から切り離される部分のことである。また、支持体は、積層されたN個のスライス層が有する部分のうち、造形体を支持する部分のことである。
【0019】
オブジェクトデータを生成した後、三次元造形装置1は、生成したオブジェクトデータを記憶する。オブジェクトデータを記憶した後、三次元造形装置1は、スライス条件情報に基づいて、記憶したオブジェクトデータが示すオブジェクトをN個の層に仮想的にスライスする。このように三次元造形装置1によりオブジェクトが仮想的にスライスされたN個の層のそれぞれは、前述のN個のスライス層のそれぞれに対応する。そこで、以下では、説明の便宜上、これらN個の層のうちn番目の層を、スライス層VLnと称し、前述のN個のスライス層のうちn番目のスライス層を、スライス層Lnと称して説明する。この場合、例えば、1番目のスライス層VL1は、1番目のスライス層L1に対応する。なお、以下では、説明の便宜上、1番目のスライス層VL1~N番目のスライス層VLNのそれぞれを区別する必要が無い限り、単にスライス層VLと称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、1番目のスライス層L1~N番目のスライス層LNのそれぞれを区別する必要が無い限り、単にスライス層Lと称して説明する。ここで、スライス条件情報は、三次元造形装置1が記憶したオブジェクトデータが示すオブジェクトをN個のスライス層VLに仮想的にスライスするためのスライス条件を示す情報のことである。スライス条件情報には、N個のスライス層VLの数であるNを示す情報、N個のスライス層VLそれぞれの厚みを示す情報等の情報が含まれている。
【0020】
オブジェクトを仮想的にスライスした後、三次元造形装置1は、造形パス生成条件情報に基づいて、スライスしたN個のスライス層VLのそれぞれ毎に、スライス層VLの造形パスを生成する。造形パスは、造形材料Xを吐出しながら移動するノズルNzのステージ20に対する走査経路のことである。このため、n番目のスライス層VLnの造形パスに沿って吐出された造形材料Xが、スライス層VLnに対応する現実のスライス層Lnのことである。
【0021】
ここで、n番目のスライス層VLnは、オブジェクトに含まれる造形体と支持体とのうちの少なくとも一方がスライスされたスライス層のうちの1つである。このため、n番目のスライス層VLnには、造形体がスライスされた部分と、支持体がスライスされた部分とのうちの少なくとも一方が含まれている。すなわち、n番目のスライス層VLnは、造形体がスライスされた層と、支持体がスライスされた層とのうちの少なくとも一方を含んでいる。そして、造形体がスライスされた層は、第1ソリッド層、造形層の2種類に分類される。第1ソリッド層は、造形体のソリッド層のことである。造形体は、第1ソリッド層と、第1ソリッド層と第1ソリッド層との間に積層される造形層とによって構成される。すなわち、造形体は、第1ソリッド層と、造形層とを積層させることによって造形される。また、支持体がスライスされた層は、第2ソリッド層、支持層、ラフト層の3種類に分類される。第2ソリッド層は、支持体のソリッド層のことである。ラフト層は、第1ソリッド層、造形層、第2ソリッド層、支持層のそれぞれが積層される土台となる層のことである。支持体は、第2ソリッド層と、第2ソリッド層と第2ソリッド層との間に積層される支持層と、ラフト層とによって構成される。すなわち、支持体は、第2ソリッド層と、支持層と、ラフト層とを積層させることによって造形される。例えば、ある造形体の形状がオーバーハングを有する形状である場合、当該造形体が有する部分のうちオーバーハングの部分は、このような支持体により支持される。以上のことから、n番目のスライス層VLnの種類は、n番目のスライス層VLnに含まれる層によって分類される。例えば、n番目のスライス層VLnが第1ソリッド層のみを含んでいる場合、n番目のスライス層VLnの種類は、第1ソリッド層である。また、例えば、n番目のスライス層VLnが第1ソリッド層と第2ソリッド層とを含んでいる場合、n番目のスライス層VLnの種類は、n番目のスライス層VLnに含まれる層のうち造形体がスライスされた層の種類と、支持n番目のスライス層VLnに含まれる層のうち支持体がスライスされた層の種類との組み合わせ、すなわち、第1ソリッド層と第2ソリッド層との組み合わせによって表される。そして、n番目のスライス層VLnの種類は、n番目のスライス層Lnの種類でもある。このため、三次元造形装置1は、スライス条件情報に基づいて、n番目のスライス層VLnの種類を特定することができるとともに、スライス層Lnの種類を特定することができる。
【0022】
造形パス生成条件情報に基づいてN個のスライス層VLのそれぞれ毎にスライス層VLの造形パスを生成した後、三次元造形装置1は、生成したN個のスライス層VLそれぞれの造形パスを示す造形パス情報を含む三次元造形用データを生成する。ここで、造形パス生成条件情報は、N個のスライス層VLそれぞれの造形パスを生成するための造形パス生成条件を示す情報のことである。造形パス生成条件情報には、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスの形状を示す情報、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスの幅を示す情報、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスに沿って造形材料Xを吐出する場合におけるノズルNzの移動速度を示す情報等の情報が含まれている。また、ある造形パスを示す造形パス情報には、当該造形パスの幅を示す情報、当該造形パスに沿って造形材料Xを吐出する場合のノズルNzの移動速度を示す情報等の他の情報が含まれている。
【0023】
また、三次元造形装置1では、スライス条件情報には、N個のスライス層VLのうちのn-1番目のスライス層VLn-1の種類を示すn-1番目スライス層種類情報と、N個のスライス層VLのうちn-1番目のスライス層VLn-1の上に積層されるn番目のスライス層VLnの種類を示すn番目スライス層種類情報とが含まれている。また、三次元造形装置1では、造形パス生成条件情報には、n-1番目のスライス層VLn-1の種類と、n番目のスライス層VLnの種類と、n番目のスライス層VLnの造形パスを生成するための条件を示す情報とが対応付けられた情報を含む対応情報が含まれている。そして、三次元造形装置1は、n番目のスライス層VLnの造形パスを生成する場合、対応情報と、n-1番目のスライス層VLn-1の種類と、n番目のスライス層VLnの種類とに基づいて、n番目のスライス層VLnの造形パスを生成する。これにより、三次元造形装置1は、焼結工程を伴わずとも、造形体からラフト層、支持体のそれぞれが除去し易くなる三次元造形用データを生成することができる。
【0024】
ここで、N個のスライス層Lのうちのラフト層のスライス層Lは、他の層のスライス層Lの土台として造形面21と、他の層との間に形成される層であり、造形材料Xによって塗り潰された層のことである。当該他の層は、N個のスライス層Lのうちラフト層の上に積層される個々のスライス層Lのことであり、具体的には、第1ソリッド層、造形層、第2ソリッド層、支持層のうちの一部又は全部のスライス層Lのことである。当該他の層は、造形面21と接するように造形面21上に積層された場合、造形面21から剥がれ難くなることがある。また、当該他の層は、当該場合、精度よく定着させることができないことがある。また、当該他の層には、当該場合、残存応力が残ってしまうことがある。これらの問題を解決するために当該他の層と造形面21との間に積層される層が、ラフト層のスライス層Lである。また、ソリッド層、造形層、支持層それぞれのスライス層Lは、予め決められた外形状の輪郭に沿って吐出された造形材料Xであるアウトラインと、アウトラインによって囲まれた領域内に吐出される造形材料Xであるインフィルとによって形成される。そして、ソリッド層のスライス層Lは、ソリッド層のスライス層Lのアウトラインによって囲まれた領域内が、インフィルによって略隙間無く塗り潰された層のことである。換言すると、ソリッド層のスライス層Lは、当該領域内におけるインフィルの充填率が100%の層のことである。なお、第1ソリッド層のスライス層Lは、造形体の表面を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。また、造形層のスライス層Lは、造形体の内部を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことである。また、第2ソリッド層のスライス層Lは、支持体の表面を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。一方、造形層のスライス層Lは、造形層のアウトラインによって囲まれた領域内にインフィルが含まれ、当該領域内にインフィルが充填されていない領域が存在する層のことである。換言すると、造形層のスライス層Lは、当該領域内におけるインフィルの充填率が100%未満の層のことである。また、造形層のスライス層Lは、造形体の内部を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。また、支持層のスライス層Lのうちのは、支持層のアウトラインによって囲まれた領域内にインフィルが含まれ、当該領域内にインフィルが充填されていない領域が存在する層のことである。換言すると、支持層のスライス層Lは、当該領域内におけるインフィルの充填率が100%未満の層のことである。また、支持層のスライス層Lnは、支持体の内部を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。
【0025】
三次元造形装置1は、以上のようにして生成した三次元造形用データに基づいて、造形面21上にN個のスライス層Lを積層させる場合、ラフト層、第1ソリッド層、造形層、第2ソリッド層、支持層のうちの一部又は全部によって表される種類のスライス層Lとして、N個のスライス層Lのそれぞれを吐出ユニット10によって造形面21上に吐出し、N個のスライス層Lを積層させて1個の三次元造形物を造形する。これにより、三次元造形装置1は、焼結工程を伴わずとも、ラフト層、支持体のそれぞれを除去し易い造形体を、三次元造形物として造形することができる。換言すると、これにより、三次元造形装置1は、熱可塑性樹脂を含む造形材料Xの積層によって、ラフト層、支持体のそれぞれを除去し易い造形体を、三次元造形物として造形することができる。
【0026】
吐出ユニット10は、造形材料Xを造形面31上に吐出する吐出装置である。前述した通り、吐出ユニット10は、ノズルNzを含む可塑化装置2を有する。
【0027】
可塑化装置2は、ノズルNzとともに、1種類以上の材料を溶融させて造形材料Xとする材料溶融部11と、材料供給部12を有する。ここで、可塑化装置2において、材料供給部12と材料溶融部11との間は、供給路13によって接続される。また、材料溶融部11とノズルNzとの間は、連通孔14によって接続される。このため、ノズルNzには、材料溶融部11に連通されている。ノズルNzは、連通孔14を通って材料溶融部11から供給される造形材料Xを先端から吐出する。
【0028】
ここで、三次元造形装置1は、n-1番目のスライス層Ln-1の上にn番目のスライス層Lnを積層する場合、n-1番目のスライス層Ln-1の上面とノズルNzの先端との距離を変更することにより、n-1番目のスライス層Ln-1の上面に吐出する造形材料Xの幅を変化させる。ただし、三次元造形装置1によりn番目のスライス層Lnの上面に吐出される造形材料Xの幅の最大値は、ノズルNzの先端の外径である。これは、n-1番目のスライス層Ln-1の上面とノズルNzの先端との距離を、ノズルNzの先端の内径Dnよりも短くすると、ノズルNzの先端から吐出される造形材料Xが、ノズルNzの先端によって押し潰されながらn-1番目の造形層の上面に吐出されることになるからである。
【0029】
材料供給部12には、ペレット、粉末等の状態の1種類以上の材料が収容される。以下では、一例として、材料供給部12に収容される材料が、ペレット状の結晶性樹脂である場合について説明する。ここで、可塑化装置2において利用可能な結晶性樹脂は、後述する第1領域又は第2領域の温度として設定可能な温度よりも融点が低い結晶性樹脂である。本実施形態において、第1領域又は第2領域の温度として設定可能な温度は、160~210℃程度の範囲内の温度である。この場合、可塑化装置2は、このような結晶性樹脂として、例えば、POM(ポリアセタール)、PP(ポリプロピレン)等を利用可能である。なお、第1領域又は第2領域の温度として設定可能な温度は、可塑化装置2の構成に応じて変わる。このため、第1領域又は第2領域の温度として設定可能な温度が160~210℃程度の範囲内の温度であることは、一例に過ぎない。以下では、一例として、材料供給部12に収容される材料が、ペレット状のPOMである場合について説明する。なお、材料供給部12に収容される材料には、ペレット状のPOMに加えて、他の1以上の材料が含まれる構成であってもよい。また、材料供給部12に収容される材料は、ペレット状の結晶性樹脂に代えて、ペレット状の非結晶性樹脂であってもよい。すなわち、可塑化装置2は、材料供給部12に収容する材料を変えることにより、結晶性樹脂を含む造形材料Xと、非結晶性樹脂を含む造形材料XとのいずれかをノズルNzから吐出することができる。なお、可塑化装置2は、ペレット状の結晶性樹脂が収容される第1材料供給部と、ペレット状の非結晶性樹脂が収容される第2材料供給部との2つを材料供給部12として備える構成であってもよい。この場合、可塑化装置2は、ユーザーからの操作、又は、制御装置40からの要求に応じて、材料供給部12の下方に設けられた供給路13へ供給する材料を、ペレット状の結晶性樹脂と、ペレット状の非結晶性樹脂とのいずれかに切り替える。材料供給部12に収容可能なペレット状の非結晶性樹脂としては、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等が挙げられる。材料供給部12は、例えば、ホッパーによって構成される。材料供給部12に収容された材料は、材料供給部12の下方に設けられた供給路13を介して、材料溶融部11に供給される。
【0030】
材料溶融部11は、スクリューケース111と、スクリューケース111内に収容されたフラットスクリュー112と、フラットスクリュー112を駆動させる駆動モーター113と、スクリューケース111内においてフラットスクリュー112よりも下方に固定されたバレル114を備える。
【0031】
フラットスクリュー112は、駆動モーター113によって回転し、溝が形成された溝形成面を有する。より具体的には、フラットスクリュー112は、扁平な円柱形状を有し、円柱の外周から円柱の中心軸AXに向かう渦状の溝部が円柱の底面に形成されたスクリューである。この底面が、フラットスクリュー112が有する溝形成面のことである。なお、フラットスクリュー112の構造については、例えば、特開2022-007237号公報等に詳しく記載されている。このため、本実施形態では、当該構造について、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0032】
バレル114は、フラットスクリュー112の溝形成面に対向する対向面を有し、第1ヒーターH1、第2ヒーターH2、第1温度検出部TS1、第2温度検出部TS2、連通孔14のそれぞれが設けられている。
【0033】
第1ヒーターH1及び第2ヒーターH2は、制御装置40によって制御される。第1ヒーターH1及び第2ヒーターH2は、フラットスクリュー112の溝形成面に形成された溝とバレル114との間に、供給路13を介して供給された材料を、造形材料Xとして加熱する。第1ヒーターH1及び第2ヒーターH2は、例えば、電熱線であるが、これに代えて、他の種類のヒーターであってもよい。
【0034】
第1ヒーターH1は、バレル114の対向面が有する領域のうちの第1領域を加熱することにより、フラットスクリュー112の溝形成面に形成された溝と第1領域との間に供給された造形材料Xを加熱する。このため、第1ヒーターH1は、第1領域に配置される。第1領域は、バレル114の対向面上において、第2ヒーターH2によって加熱される第2領域よりも連通孔14に近い領域のことである。より具体的には、第1領域は、バレル114の対向面上において、第2領域に囲まれた略円形状領域であり、フラットスクリュー112の溝形成面の回転軸に第2領域よりも近い領域である。第1ヒーターH1は、第1加熱部の一例である。第1領域温度T1は、バレルの温度の一例である。
【0035】
第2ヒーターH2は、バレル114の対向面が有する領域のうちの第2領域を加熱することにより、フラットスクリュー112の溝形成面に形成された溝と第2領域との間に供給された造形材料Xを加熱する。第2領域は、バレル114の対向面上において、第1ヒーターH1によって加熱される第1領域よりも連通孔14から遠い領域のことである。より具体的には、第2領域は、バレル114の対向面上において、第1領域を囲む略リング形状領域であり、フラットスクリュー112の溝形成面の回転軸から第1領域よりも遠い領域である。
【0036】
第1温度検出部TS1は、第1領域の温度に応じた第1領域温度T1を検出する温度センサーであり、例えば、熱電対である。なお、第1温度検出部TS1は、熱電対に変えて、他の種類の温度センサーであってもよい。第1温度検出部TS1は、検出した温度に応じた信号を制御装置40に出力する。第1領域温度T1は、例えば、第1領域の温度そのものであってもよく、第1ヒーターH1の温度であってもよく、第1領域の温度を示す他の温度であってもよい。以下では、一例として、第1温度検出部TS1が、第1ヒーターH1の温度を第1領域温度T1として検出する場合について説明する。第1領域温度T1は、第1温度の一例である。
【0037】
第2温度検出部TS2は、第2領域の温度に応じた第2領域温度T2を検出する温度センサーであり、例えば、熱電対である。なお、第2温度検出部TS2は、熱電対に変えて、他の種類の温度センサーであってもよい。第2温度検出部TS2は、検出した温度に応じた信号を制御装置40に出力する。第2領域温度T2は、例えば、第2領域の温度そのものであってもよく、第2ヒーターH2の温度であってもよく、第2領域の温度を示す他の温度であってもよい。以下では、一例として、第2温度検出部TS2が、第2ヒーターH2の温度を第2領域温度T2として検出する場合について説明する。
【0038】
回転しているフラットスクリュー112と、バレル114との間に、供給路13を介して供給された材料は、フラットスクリュー112の回転と、バレル114に内蔵されたヒーターによる加熱とによって、少なくとも一部が溶融されて、流動性を有するペースト状の造形材料Xとなる。造形材料Xは、フラットスクリュー112の回転によって、バレル114に設けられた連通孔14を介してノズルNzに供給される。そして、ノズルNzに供給された造形材料Xは、ノズルNzの先端からステージ20に向かって吐出される。
【0039】
また、吐出ユニット10は、バレル114とノズルNzが有するフランジとの間にノズルヒーターNHと、ノズル温度検出部NTSを更に備える。
【0040】
ノズルヒーターNHは、バレル114とノズルNzが有するフランジとの間の位置のうちノズルNzに近い位置を加熱することにより、ノズルNzに供給された造形材料Xを加熱する。なお、ノズルヒーターNHは、バレル114とノズルNzが有するフランジとの間の位置のうちノズルNzに近い位置に代えて、ノズルNzそのものを加熱する構成であってもよく、ノズルNzに対して予め決められた他の位置を加熱することによりノズルNzを加熱する構成であってもよい。ノズルヒーターNHは、例えば、電熱線であるが、これに代えて、他の種類のヒーターであってもよい。ノズルヒーターNHは、第2加熱部の一例である。
【0041】
第3温度検出部TS3は、ノズルNzの温度に応じたノズル温度T3を検出する温度センサーであり、例えば、熱電対である。なお、第3温度検出部TS3は、熱電対に変えて、他の種類の温度センサーであってもよい。第3温度検出部TS3は、検出した温度に応じた信号を制御装置40に出力する。ノズル温度T3は、例えば、ノズルNzの温度そのものであってもよく、ノズルヒーターNHの温度であってもよく、ノズルNzの温度を示す他の温度であってもよい。以下では、一例として、第3温度検出部TS3が、ノズルヒーターNHの温度をノズル温度T3として検出する場合について説明する。ノズル温度T3は、第2温度の一例である。
【0042】
移動部30は、吐出ユニット10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させる。より具体的には、移動部30は、吐出ユニット10とステージ20とのいずれか一方又は両方を移動させることにより、吐出ユニット10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させる。以下では、一例として、移動部30が、ステージ20を移動させることにより、吐出ユニット10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させる場合について説明する。例えば、移動部30は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ20をX軸、Y軸、Z軸のそれぞれと平行な方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。この場合、これら3つのモーターは、制御装置40により制御される。なお、以下では、説明の便宜上、ステージ20に対する吐出ユニット10の相対的な速度を、単に移動速度と称して説明する。
【0043】
制御装置40は、三次元造形装置1の全体を制御する。制御装置40は、データ生成装置50によって生成された三次元造形用データを、ネットワーク又は記録媒体を介して取得する。制御装置40は、予め記憶された三次元造形用プログラムを実行することによって、三次元造形用データに応じて吐出ユニット10と移動部30との動作を制御する造形制御を行うことにより、三次元造形物を造形する。なお、制御装置40は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0044】
造形制御は、吐出ユニット10、移動部30についての制御のことである。具体的には、造形制御は、造形面21上にN個のスライス層Lを積層させて予め決められた形状の1個の三次元造形物を造形する制御のことである。ここで、N個のスライス層Lのうちのn番目のスライス層Lnは、n-1番目のスライス層Ln-1の上に積層される。この際、n番目のスライス層Lnは、n-1番目のスライス層Lnの上に積層された場合、n番目のスライス層Lnの熱によりn-1番目のスライス層Ln-1の一部を溶融させる。このため、n番目のスライス層Lnは、n-1番目のスライス層Ln-1と接合される。その結果、造形面21上において、N個のスライス層Lは、1個の三次元造形物として積層される。このため、実施形態では、0番目のスライス層L0は、造形面21のことを意味する。すなわち、実施形態において、1番目のスライス層L1は、0番目のスライス層L0、すなわち、造形面21の上に積層される。
【0045】
n番目のスライス層Lnをn-1番目のスライス層Ln-1の上に積層させる場合、制御装置40は、吐出ユニット10、移動部30を制御し、n番目のスライス層Lnに対応するn番目のスライス層VLnの造形パスに沿った造形材料Xの吐出を吐出ユニット10によって行う。これにより、制御装置40は、n番目のスライス層Lnをn-1番目のスライス層Ln-1の上に積層させることができる。以上のような制御を造形制御として行うことにより、制御装置40は、造形材料Xの吐出を順に行い、造形面21上にN個のスライス層Lを積層させて、1個の三次元造形物を造形する。
【0046】
また、制御装置40は、前述した造形制御において、造形材料Xが結晶性樹脂を含む場合、第1ヒーターH1とノズルヒーターNHとの少なくとも一方を制御し、第1領域温度T1と、ノズル温度T3との差を小さくする。これにより、制御装置40は、ノズルNzが有する部位のうち第1領域に近い部位と、ノズルNzが有する部位のうちノズルNzの先端に近い部位との温度差を小さくすることができる。その結果、制御装置40は、ノズルNzを通って吐出される造形材料Xの粘度を、ノズルNz内において略一定に保つことができ、結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させることができる。なお、制御装置40が有する機能のうち、造形材料Xが結晶性樹脂を含む場合において、ノズルヒーターNHとの少なくとも一方を制御し、第1領域温度T1と、ノズル温度T3との差を小さくする機能の一部又は全部については、制御装置40と別体の制御装置が有する構成であってもよい。この場合、当該制御装置は、可塑化装置2と一体に構成されてもよく、可塑化装置2と別体に構成されてもよい。
【0047】
ここで、制御装置40は、例えば、ワークステーション、デスクトップPC(Personal Computer)、ノートPC、タブレットPC、多機能携帯電話端末(スマートフォン)、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の情報処理装置であるが、これらに限られるわけではない。
【0048】
図2は、制御装置40のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0049】
制御装置40は、プロセッサー41と、記憶部42と、入力受付部43と、通信部44と、表示部45を備える。なお、制御装置40は、前述した通り、三次元造形装置1と別体に構成された情報処理装置であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、情報処理装置と通信可能に接続され、この情報処理装置により制御される。
【0050】
プロセッサー41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。なお、プロセッサー41は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の他のプロセッサーであってもよい。また、プロセッサー41は、複数のプロセッサーにより構成されてもよい。プロセッサー41は、記憶部42に記憶された各種のプログラム、各種の命令等を実行することにより、制御装置40が有する各種の機能を実現する。
【0051】
記憶部42は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部42は、制御装置40に内蔵されるものに代えて、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部42は、制御装置40が処理する各種のプログラム、各種の命令、各種の情報等を記憶する。例えば、記憶部42は、三次元造形用データ、スライス条件情報、造形パス生成条件情報、対応情報等を記憶する。
【0052】
入力受付部43は、表示部45に表示された画像を見ながら行われるユーザーからの操作を受け付ける。入力受付部43は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド等を含む入力装置である。なお、入力受付部43は、表示部45と一体に構成されたタッチパネルであってもよい。
【0053】
通信部44は、例えば、USB等のデジタル入出力ポート、イーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される。
【0054】
表示部45は、画像を表示する。表示部45は、制御装置40が備えるディスプレイとして、例えば、液晶ディスプレイパネル、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイパネル等を含む表示装置である。
【0055】
図3は、制御装置40の機能構成の一例を示す図である。
【0056】
制御装置40は、記憶部42と、入力受付部43と、通信部44と、表示部45と、制御部46を備える。
【0057】
制御部46は、三次元造形装置1の全体を制御する。例えば、制御部46は、前述の造形制御により、三次元造形物を三次元造形装置1に造形させる。また、例えば、制御部46は、造形制御において、造形材料Xが結晶性樹脂を含む場合、第1ヒーターH1とノズルヒーターNHとの少なくとも一方を制御し、第1領域温度T1と、ノズル温度T3との差を小さくする。なお、以下では、説明の便宜上、当該場合において第1領域温度T1とノズル温度T3との差を小さくする制御を、吐出温度調整制御と称して説明する。
【0058】
制御部46が有する機能は、例えば、プロセッサー41が、記憶部42に記憶された各種のプログラムを実行することにより実現される。また、制御部46が有する機能のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部として実現されてもよい。
【0059】
データ生成装置50は、三次元造形装置1が三次元造形物を造形するために用いる三次元造形用データを生成する装置である。データ生成装置50は、上記において説明した三次元造形装置1が三次元造形用データを生成する方法により、三次元造形用データを生成する。このため、ここでは、当該方法の説明については、省略する。また、データ生成装置50は、受け付けた操作に応じて、前述の形状データを記憶する。なお、データ生成装置50は、形状データを生成可能であってもよく、形状データを生成不可能であってもよい。データ生成装置50が形状データを生成不可能である場合、データ生成装置50は、他の装置からネットワーク又は記憶媒体を介して形状データを取得する。なお、データ生成装置50は、1以上のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。
【0060】
<制御装置が吐出温度調整制御を行う処理>
以下、
図4を参照し、制御装置40が吐出温度調整制御を行う処理について説明する。
図4は、制御装置40が吐出温度調整制御を行う処理の流れの一例を示す図である。以下では、一例として、
図4に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、造形制御を開始させる操作を制御装置40が受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、熱可塑性樹脂として結晶性樹脂を含む造形材料Xと、熱可塑性樹脂として非結晶性樹脂を含む造形材料XとのいずれをノズルNzから吐出させるかを示す造形材料情報を制御装置40が受け付けている場合について説明する。造形材料情報は、例えば、表示部45に表示された操作受付画像を介して制御装置40に受け付けられる。操作受付画像は、制御装置40がユーザーからの操作を受け付ける画像であり、制御部46によって生成される。なお、可塑化装置2と材料供給部12とが脱着可能であり、材料供給部12に収容された材料を識別可能な識別情報として造形材料情報を材料供給部12が有する場合、制御装置40は、当該識別情報を読み取る読取部を備え、読取部により読み取られた当該識別情報に基づいて、材料供給部12に収容された材料についての造形材料情報を受け付ける構成であってもよい。また、吐出温度調整制御を開始するタイミングは、例えば、造形制御を開始させる操作を制御装置40が受け付けたタイミングであってもよく、当該場合において当該識別情報が当該読取部によって読み取られたタイミングであってもよく、ノズルNzから造形材料Xを吐出するよりも前の他のタイミングであってもよい。以下では、一例として、吐出温度調整制御を開始するタイミングが、造形制御を開始させる操作を制御装置40が受け付けたタイミングである場合について説明する。
【0061】
造形制御を開始させる操作を制御装置40が受け付けた後、制御部46は、予め受け付けた造形材料情報に基づいて、ノズルNzから吐出する造形材料Xに結晶性樹脂が含まれているか否かを判定する(ステップS110)。なお、制御部46は、ステップS110において、造形材料情報に基づいて、ノズルNzから吐出する造形材料Xに結晶性樹脂が含まれているか否かを判定する構成に変えて、他の方法により、ノズルNzから吐出する造形材料Xに結晶性樹脂が含まれているか否かを判定する構成であってもよい。
【0062】
制御部46は、ノズルNzから吐出する造形材料Xに結晶性樹脂が含まれていると判定した場合(ステップS110-YES)、第1温度検出部TS1からの信号に基づいて第1領域温度T1を特定し、ノズル温度検出部NTSからの信号に基づいてノズル温度T3を特定する。そして、制御部46は、特定した第1領域温度T1と、特定したノズル温度T3との間に差があるか否かを判定する(ステップS120)。ここで、制御部46は、第1領域温度T1とノズル温度T3との間が予め決められた閾値TH以上離れていた場合、第1領域温度T1とノズル温度T3との間に差があると判定する。一方、制御部46は、第1領域温度T1とノズル温度T3との間が閾値TH以上離れていなかった場合、第1領域温度T1とノズル温度T3との間に差がないと判定する。閾値THは、例えば、1℃程度であるが、これに代えて、1℃より低い温度であってもよく、1℃より高い温度であってもよい。
【0063】
制御部46は、第1領域温度T1とノズル温度T3との間に差がないと判定した場合(ステップS120-NO)、
図4に示したフローチャートの処理、すなわち、吐出温度調整制御を行う処理を終了する。
【0064】
一方、制御部46は、第1領域温度T1とノズル温度T3との間に差があると判定した場合(ステップS120-YES)、第1ヒーターH1とノズルヒーターNHとの少なくとも一方を制御し、第1領域温度T1とノズル温度T3との差を小さくする(ステップS130)。ここで、制御部46は、ステップS130において、第1領域温度T1を変化させることによって第1領域温度T1をノズル温度T3に近づける構成であってもよく、ノズル温度T3を変化させることによってノズル温度T3を第1領域温度T1に近づける構成であってもよく、第1領域温度T1及びノズル温度T3の両方を変化させることによって第1領域温度T1とノズル温度T3とを近づける構成であってもよい。なお、制御部46は、第1領域温度T1及びノズル温度T3の両方を変化させることによって第1領域温度T1とノズル温度T3とを近づける構成である場合、例えば、第1領域温度T1及びノズル温度T3の両方を、予め決められた目標温度に近づける。この場合、制御部46は、目標温度を示す情報を、操作受付画像等を介して事前に受け付ける。ここで、制御部46は、第1領域温度T1を、第2領域温度T2から極端に離れた温度に設定することができない。これは、バレル114が単一の金属材料によって形成されているためである。また、バレル114の外側は、冷却水によって冷却されていることも少なくない。このため、制御部46は、無制限に第1領域温度T1を高くすることができない。このような事情から、制御部46は、ステップS130において、ノズル温度T3を変化させて第1領域温度T1をノズル温度T3に近づけることにより、バレル114付近の設計自由度が低下してしまうことを抑制することができる。また、このような事情により、本実施形態において造形材料Xに含まれる結晶性樹脂としては、第1領域又は第2領域の温度として設定可能な温度よりも融点が低い結晶性樹脂が利用される。また、このようなステップS130の処理により、制御部46は、ノズルNzが有する部位のうち第1領域に近い部位と、ノズルNzが有する部位のうちノズルNzの先端に近い部位との温度差を小さくすることができる。その結果、制御部46は、ノズルNzを通って吐出される造形材料Xの粘度を、ノズルNz内において略一定に保つことができ、結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させることができる。換言すると、制御部46は、第1領域温度T1とノズル温度T3との差を小さくすることにより、フラットスクリュー112からノズルNzの先端までの流路内における造形材料Xの可塑化状態を均一にすることができ、結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させることができる。これは、フラットスクリュー112で発生した圧力が、フラットスクリュー112付近からノズルNzの先端付近へ伝達されるまでに減衰する減衰率を一定にすることができるからである。ステップS130の処理を行った後、制御部46は、
図4に示したフローチャートの処理、すなわち、吐出温度調整制御を行う処理を終了する。
【0065】
一方、制御部46は、ノズルNzから吐出する造形材料Xに結晶性樹脂が含まれていないと判定した場合(ステップS110-NO)、ノズルNzから吐出する造形材料Xに非結晶性樹脂が含まれていると判定する。その後、制御部46は、第1温度検出部TS1からの信号に基づいて第1領域温度T1を特定し、ノズル温度検出部NTSからの信号に基づいてノズル温度T3を特定する。そして、制御部46は、特定した第1領域温度T1と、特定したノズル温度T3との間に差があるか否かを判定する(ステップS140)。なお、ステップS140の処理は、ステップS120の処理と同様の処理である。このため、本実施形態では、ステップS140の処理について、詳細な説明を省略する。
【0066】
制御部46は、第1領域温度T1とノズル温度T3との間に差があると判定した場合(ステップS140-YES)、
図4に示したフローチャートの処理、すなわち、吐出温度調整制御を行う処理を終了する。
【0067】
一方、制御部46は、第1領域温度T1とノズル温度T3との間に差がないと判定した場合(ステップS140-NO)、第1ヒーターH1とノズルヒーターNHとの少なくとも一方を制御し、第1領域温度T1とノズル温度T3との差を大きくする(ステップS150)。ここで、制御部46は、ステップS150において、第1領域温度T1を変化させることによって第1領域温度T1をノズル温度T3から遠ざける構成であってもよく、ノズル温度T3を変化させることによってノズル温度T3を第1領域温度T1から遠ざける構成であってもよく、第1領域温度T1及びノズル温度T3の両方を変化させることによって第1領域温度T1とノズル温度T3とを遠ざける構成であってもよい。なお、制御部46は、第1領域温度T1及びノズル温度T3の両方を変化させることによって第1領域温度T1とノズル温度T3とを遠ざける構成である場合、例えば、第1領域温度T1を予め決められた第1目標温度に近づけるとともに、ノズル温度T3を第1目標温度よりも高い第2目標温度に近づける。この場合、制御部46は、第1目標温度を示す情報と第2目標温度を示す情報とを、操作受付画像等を介して事前に受け付ける。ここで、制御部46は、前述した通り、第1領域温度T1を、第2領域温度T2から極端に離れた温度に設定することができない。このため、制御部46は、ステップS150において、ノズル温度T3を変化させてノズル温度T3を第1領域温度T1から遠ざけることにより、バレル114付近の設計自由度が低下してしまうことを抑制することができる。また、このようなステップS150の処理により、制御部46は、ノズルNzの温度を第1領域温度T1よりも高くすることができる。その結果、制御部46は、非結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させることができる。ステップS150の処理を行った後、制御部46は、
図4に示したフローチャートの処理、すなわち、吐出温度調整制御を行う処理を終了する。
【0068】
以上のような処理により、制御装置40は、吐出温度調整制御を行う。すなわち、制御装置40は、造形材料Xが結晶性樹脂を含む場合、第1ヒーターH1とノズルヒーターNHとの少なくとも一方を制御し、第1領域温度T1と、ノズル温度T3との差を小さくする。これにより、制御装置40は、結晶性樹脂を含む造形材料のノズルNzからの吐出量を安定化させることができる。
【0069】
<制御装置が吐出温度調整制御を行った結果>
以下、
図5を参照し、制御装置40が吐出温度調整制御を行った結果について説明する。
図5は、制御装置40が吐出温度調整制御を行った結果の一例を示す図である。
図5に示した表には、制御装置40が吐出温度調整制御によって、ノズル温度T3を210℃とし、第1領域温度T1を210℃とし、第2領域温度T2を165℃とした場合において、POMを熱可塑性樹脂として含む造形材料Xを三次元造形装置1がノズルNzから安定的に吐出できているか否かを検査する吐出検査の結果が示されている。ただし、出願人は、この結果を得るため、ノズルNzの先端の内径Dnを0.5[mm]とし、フラットスクリュー112の回転数を4000[rpm]とし、造形材料XのノズルNzからの吐出時間を1分とした場合における三次元造形装置1を用いて、9回の吐出検査を行った。そして、出願人は、これら9回の吐出検査のそれぞれにおいて、ノズルNzから吐出された造形材料Xの重さを測定し、測定した重さの標準偏差が、測定した重さの平均値の10%以下である場合、造形材料XのノズルNzからの吐出量が安定していると判定した。
図5に示した通り、この場合、三次元造形装置1は、POMを熱可塑性樹脂として含む造形材料Xを、ノズルNzから安定して吐出することができていた。このため、当該表における当該安定性を示すフィールドには、「○」が記載されている。この結果から、制御装置40、又は三次元造形装置1は、造形材料XがPOMを含む場合、第1ヒーターH1とノズルヒーターNHとの少なくとも一方を制御し、第1領域温度T1と、ノズル温度T3との差を小さくすることにより、POMを含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させることができることが分かる。
【0070】
ここで、
図5には、このような結果に対する比較対象として、2つの吐出検査の結果が更に示されている。これら2つの吐出検査のうちの一方は、制御装置40が、ノズル温度T3を230℃とし、第1領域温度T1を210℃とし、第2領域温度T2を180℃とした場合において、ABSを熱可塑性樹脂として含む造形材料Xを三次元造形装置1がノズルNzから安定的に吐出できているか否かを検査する吐出検査の結果である。ただし、出願人は、この結果を得るため、ノズルNzの先端の内径Dnを0.5[mm]とし、フラットスクリュー112の回転数を4000[rpm]とし、造形材料XのノズルNzからの吐出時間を1分とした場合における三次元造形装置1を用いて、9回の吐出検査を行った。そして、出願人は、これら9回の吐出検査のそれぞれにおいて、ノズルNzから吐出された造形材料Xの重さを測定し、測定した重さの標準偏差が、測定した重さの平均値の10%以下である場合、造形材料XのノズルNzからの吐出量が安定していると判定した。
図5に示した通り、この場合、三次元造形装置1は、ABSを熱可塑性樹脂として含む造形材料Xを、ノズルNzから安定して吐出することができていた。このため、当該表における当該安定性を示すフィールドには、「○」が記載されている。この結果から、制御装置40、又は三次元造形装置1は、造形材料XがABSを含む場合、第1ヒーターH1とノズルヒーターNHとの少なくとも一方を制御し、第1領域温度T1と、ノズル温度T3との差を大きくすることにより、ABSを含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させることができることが分かる。
【0071】
また、上記の2つの吐出検査のうちの他方は、制御装置40が、ノズル温度T3を230℃とし、第1領域温度T1を210℃とし、第2領域温度T2を165℃とした場合において、POMを熱可塑性樹脂として含む造形材料Xを三次元造形装置1がノズルNzから安定的に吐出できているか否かを検査する吐出検査の結果である。ただし、出願人は、この結果を得るため、ノズルNzの先端の内径Dnを0.5[mm]とし、フラットスクリュー112の回転数を4000[rpm]とし、造形材料XのノズルNzからの吐出時間を1分とした場合における三次元造形装置1を用いて、9回の吐出検査を行った。そして、出願人は、これら9回の吐出検査のそれぞれにおいて、ノズルNzから吐出された造形材料Xの重さを測定し、測定した重さの標準偏差が、測定した重さの平均値の10%以下である場合、造形材料XのノズルNzからの吐出量が安定していると判定した。
図5に示した通り、この場合、三次元造形装置1は、POMを熱可塑性樹脂として含む造形材料Xを、ノズルNzから安定して吐出することができていない。このため、当該表における当該安定性を示すフィールドには、「×」が記載されている。この結果から、制御装置40、又は三次元造形装置1は、造形材料XがABSを含む場合、第1ヒーターH1とノズルヒーターNHとの少なくとも一方を制御し、第1領域温度T1と、ノズル温度T3との差を大きくしてしまうと、POMを含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を不安定化させてしまうことが分かる。
【0072】
以上のように、
図5に示した3つの吐出検査の結果は、POMのような結晶性樹脂を含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させる吐出条件が、ABSのような非結晶性樹脂を含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させる吐出条件と異なることを示している。すなわち、制御装置40が行う吐出温度調整制御は、結晶性樹脂を含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させるために有用である。
【0073】
<吐出温度調整制御の変形例>
制御装置40は、
図4に示したフローチャートの処理に代えて、
図6に示したフローチャートの処理によって吐出温度調整制御を行う構成であってもよい。
図6は、制御装置40が吐出温度調整制御の変形例を行う処理の流れの一例を示す図である。なお、
図6に示したステップS110の処理は、
図4に示したステップS110の処理と同様の処理である。このため、本実施形態では、
図6に示したステップS110の処理についての詳細な説明を省略する。また、
図6に示したステップS120の処理は、
図4に示したステップS120の処理と同様の処理である。このため、本実施形態では、
図6に示したステップS120の処理についての詳細な説明を省略する。また、
図6に示したステップS140の処理は、
図4に示したステップS140の処理と同様の処理である。このため、本実施形態では、
図6に示したステップS140の処理についての詳細な説明を省略する。また、以下では、一例として、
図6に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、造形制御を開始させる操作を制御装置40が受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、熱可塑性樹脂として結晶性樹脂を含む造形材料Xと、熱可塑性樹脂として非結晶性樹脂を含む造形材料XとのいずれをノズルNzから吐出させるかを示す造形材料情報を制御装置40が受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、吐出温度調整制御を開始するタイミングが、造形制御を開始させる操作を制御装置40が受け付けたタイミングである場合について説明する。
【0074】
制御部46は、
図6に示したステップS120において、第1領域温度T1とノズル温度T3との間に差があると判定した場合、第1ヒーターH1と第2ヒーターH2とノズルヒーターNHとのうちの少なくとも1つを制御し、第1領域温度T1と第2領域温度T2とノズル温度T3との差を小さくする(ステップS210)。ここで、第1領域温度T1と第2領域温度T2とノズル温度T3との差を小さくことは、第1領域温度T1と第2領域温度T2との差と、第2領域温度T2とノズル温度T3との差との両方を小さくすることを意味する。制御部46は、ステップS210において、第1領域温度T1と第2領域温度T2とのいずれか一方又は両方をノズル温度T3に近づける構成であってもよく、第1領域温度T1とノズル温度T3とのいずれか一方又は両方を第2領域温度T2に近づける構成であってもよく、第2領域温度T2とノズル温度T3とのいずれか一方又は両方を第1領域温度T1に近づける構成であってもよく、第1領域温度T1と第2領域温度T2とノズル温度T3とのすべてを前述の目標温度に近づける構成であってもよく、他の方法により第1領域温度T1と第2領域温度T2とノズル温度T3との差を小さくする構成であってもよい。また、前述した通り、バレル114の外側は、冷却水によって冷却されていることも少なくない。このため、制御部46は、無制限に第1領域温度T1を高くすることができない。このような事情から、制御部46は、ステップS210において、第1領域温度T1とノズル温度T3との両方を第2領域温度T2に近づけることにより、バレル114付近の設計自由度が低下してしまうことを抑制することができる。また、このようなステップS210の処理により、制御部46は、ノズルNzが有する部位のうち第1領域に近い部位と、ノズルNzが有する部位のうちノズルNzの先端に近い部位との温度差を小さくすることができるとともに、第1領域と第2領域との温度差を小さくすることができる。その結果、制御部46は、結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させることができるとともに、フラットスクリュー112が有する溝形成面とバレル114との間におけるブリッジ現象の発生を抑制することができる。ステップS210の処理を行った後、制御部46は、
図6に示したフローチャートの処理、すなわち、吐出温度調整制御を行う処理を終了する。
【0075】
また、制御部46は、
図6に示したステップS140において、第1領域温度T1とノズル温度T3との間に差がないと判定した場合、第1ヒーターH1と第2ヒーターH2とノズルヒーターNHとのうちの少なくとも1つを制御し、第1領域温度T1とノズル温度T3との差を大きくするとともに、第1領域温度T1と第2領域温度T2との差を小さくする(ステップS220)。ここで、制御部46は、ステップS210において、ノズル温度T3を第1領域温度T1から遠ざけ、且つ、第1領域温度T1を第2領域温度T2に近づけることにより、第1領域温度T1とノズル温度T3との差を大きくするとともに、第1領域温度T1と第2領域温度T2との差を小さくする構成であってもよい。また、制御部46は、第1領域温度T1を第2領域温度T2へ近づけることにより、第1領域温度T1とノズル温度T3との差を大きくするとともに、第1領域温度T1と第2領域温度T2との差を小さくする構成であってもよい。更に、制御部46は、他の方法により第1領域温度T1とノズル温度T3との差を大きくするとともに、第1領域温度T1と第2領域温度T2との差を小さくする構成であってもよい。このようなステップS220の処理により、制御部46は、ノズルNzが有する部位のうち第1領域に近い部位と、ノズルNzが有する部位のうちノズルNzの先端に近い部位との温度差を大きくすることができるとともに、第1領域と第2領域との温度差を小さくすることができる。その結果、制御部46は、非結晶性樹脂を熱可塑性樹脂として含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させることができるとともに、フラットスクリュー112が有する溝形成面とバレル114との間におけるブリッジ現象の発生を抑制することができる。ステップS220の処理を行った後、制御部46は、
図6に示したフローチャートの処理、すなわち、吐出温度調整制御を行う処理を終了する。
【0076】
なお、上記において説明した内容は、如何様に組み合わされてもよい。
【0077】
以上説明したように、実施形態に係る可塑化装置2は、造形材料Xを吐出するノズルNzと、駆動モーター113と、駆動モーター113によって回転し、溝が形成された溝形成面を有するフラットスクリュー112と、当該溝形成面に対向する対向面を有し、第1ヒーターH1、第2ヒーターH2、連通孔14が設けられたバレル114と、当該溝形成面に形成された溝とバレル114との間に供給された造形材料Xを加熱する第1ヒーターH1と、ノズルNzに供給された造形材料Xを加熱するノズルヒーターNHと、駆動モーター113、第1ヒーターH1、ノズルヒーターNHのそれぞれを制御する制御部46と、を備え、制御部46は、造形材料Xが結晶性樹脂を含む場合、第1ヒーターH1とノズルヒーターNHとの少なくとも一方を制御し、第1領域温度T1と、ノズル温度T3との差を小さくする。これにより、可塑化装置2は、結晶性樹脂を含む造形材料XのノズルNzからの吐出量を安定化させることができる。
【0078】
<付記>
[1]
造形材料を吐出するノズルと、
駆動モーターと、
前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、ヒーター及び連通孔が設けられたバレルと、
前記溝形成面に形成された溝と前記バレルとの間に供給された前記造形材料を加熱する第1加熱部と、
前記ノズルに供給された前記造形材料を加熱する第2加熱部と、
前記駆動モーター、前記第1加熱部、前記第2加熱部のそれぞれを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記造形材料が結晶性樹脂を含む場合、前記第1加熱部と前記第2加熱部との少なくとも一方を制御し、前記バレルの温度に応じた第1温度と、前記ノズルの温度に応じた第2温度との差を小さくする、
可塑化装置。
[2]
前記第1温度は、前記バレルの温度であり、
前記第2温度は、前記ノズルの温度である、
[1]に記載の可塑化装置。
[3]
前記対向面は、第1領域と、前記第1領域よりも前記連通孔から遠い第2領域とを有し、
前記バレルの温度は、前記第1領域の温度である、
[2]に記載の可塑化装置。
[4]
前記第1温度は、前記第1加熱部の温度であり、
前記第2温度は、前記第2加熱部の温度である、
[1]に記載の可塑化装置。
[5]
前記対向面は、第1領域と、前記第1領域よりも前記連通孔から遠い第2領域とを有し、
前記第1加熱部は、前記第1領域に配置される、
[4]に記載の可塑化装置。
[6]
可塑化装置を備える三次元造形装置であって、
前記可塑化装置は、
造形材料を吐出するノズルと、
駆動モーターと、
前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するスクリューと、
前記溝形成面に対向する対向面を有し、ヒーター及び連通孔が設けられたバレルと、
前記溝形成面に形成された溝と前記バレルとの間に供給された前記造形材料を加熱する第1加熱部と、
前記ノズルに供給された前記造形材料を加熱する第2加熱部と、
前記駆動モーター、前記第1加熱部、前記第2加熱部のそれぞれを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記造形材料が結晶性樹脂を含む場合、前記第1加熱部と前記第2加熱部との少なくとも一方を制御し、前記バレルの温度に応じた第1温度と、前記ノズルの温度に応じた第1温度との差を小さくする、
三次元造形装置。
【0079】
以上、この開示の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0080】
また、以上に説明した装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。ここで、当該装置は、例えば、三次元造形装置1、可塑化装置2、制御装置40、データ生成装置50等である。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0081】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル又は差分プログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…三次元造形装置、2…可塑化装置、10…吐出ユニット、11…材料溶融部、12…材料供給部、13…供給路、14…連通孔、20…ステージ、21…造形面、30…移動部、31…造形面、40…制御装置、41…プロセッサー、42…記憶部、43…入力受付部、44…通信部、45…表示部、46…制御部、50…データ生成装置、111…スクリューケース、112…フラットスクリュー、113…駆動モーター、114…バレル、AX…中心軸、H1…第1ヒーター、H2…第2ヒーター、NH…ノズルヒーター、NTS…ノズル温度検出部、Nz…ノズル、TC…三次元座標系、TS1…第1温度検出部、TS2…第2温度検出部、TS3…第3温度検出部、X…造形材料