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特開2024-71866ロボットの制御方法およびロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071866
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ロボットの制御方法およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182343
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】竪山 光普
(72)【発明者】
【氏名】奥山 正幸
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707KS21
3C707KS33
3C707KS35
3C707KX06
3C707KX10
3C707LT00
3C707LU06
3C707LV15
3C707MT08
(57)【要約】
【課題】搬送中のワークの振動を低減することのできるロボットの制御方法およびロボットシステムを提供する。
【解決手段】ロボットアームと、ツールと、前記ロボットアームと前記ツールとの間に配置されている力検出部と、を有するロボットの制御方法であって、前記ツールで少なくとも一部が前記ツールに対して変位するワークを保持し、前記ロボットアームを動かして前記ワークを第1方向に移動させる移動工程と、前記移動中に前記ロボットの制御点が受ける力を検出する力検出工程と、前記検出した力が目標力となるように前記ロボットアームの駆動を力制御する制御工程と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、ツールと、前記ロボットアームと前記ツールとの間に配置されている力検出部と、を有するロボットの制御方法であって、
前記ツールで少なくとも一部が前記ツールに対して変位するワークを保持し、前記ロボットアームを動かして前記ワークを第1方向に移動させる移動工程と、
前記移動中に前記ロボットの制御点が受ける力を検出する力検出工程と、
前記検出した力が目標力となるように前記ロボットアームの駆動を力制御する制御工程と、を含むことを特徴とするロボットの制御方法。
【請求項2】
前記目標力は、ゼロである請求項1に記載のロボットの制御方法。
【請求項3】
前記力検出工程では、前記力として前記第1方向の並進力を検出する請求項1に記載のロボットの制御方法。
【請求項4】
前記力検出工程では、前記力として前記第1方向に直交する水平軸まわりのトルクを検出する請求項1に記載のロボットの制御方法。
【請求項5】
前記第1方向が水平方向である請求項1に記載のロボットの制御方法。
【請求項6】
前記第1方向が水平方向および鉛直方向に対して傾斜した方向である請求項1に記載のロボットの制御方法。
【請求項7】
前記移動工程の間または前記移動工程の後に、前記ワークに対して所定の作業を行う作業工程を含む請求項1に記載のロボットの制御方法。
【請求項8】
ロボットアームと、ツールと、前記ロボットアームと前記ツールとの間に配置されている力検出部と、を有するロボットと、
前記ロボットの駆動を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記ツールで少なくとも一部が前記ツールに対して変位するワークを保持し、前記ロボットアームを動かして前記ワークを第1方向に移動させる移動工程と、
前記移動中に前記ロボットの制御点が受ける力を検出する力検出工程と、
前記検出した力が目標力となるように前記ロボットアームの駆動を力制御する制御工程と、を実行することを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制御方法およびロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを使用する生産現場においては、生産効率の向上を図るためにロボットの動作を高速化してタクトタイムを短縮することが求められる。しかしながら、ロボットの動作をある程度以上高速化すると、減速機の歪みやロボットアームの剛性不足などに起因して動作中のロボットの先端部に振動が発生してしまう。
【0003】
ロボットの振動を抑制する技術として、例えば、特許文献1に記載されたロボットシステムが知られている。このロボットシステムでは、機械学習を用いてロボットの振動を抑制している。具体的には、学習制御の対象とする動作プログラムに基づいてロボットを実際に駆動させ、その際のセンサー検出値の時系列データと、ロボットのサーボモーターに対する位置指令値の時系列データと、を取得する。また、これら両データからロボットの振動量の時系列データを求め、このデータから振動補正量を求める。そして、求められた振動補正量に基づいて動作プログラムを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-118353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のロボットシステムでは、事前に振動補正量を求めておく必要があり、決まったワークおよび決まった動作でなければ振動を抑制することができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロボットの制御方法は、ロボットアームと、ツールと、前記ロボットアームと前記ツールとの間に配置されている力検出部と、を有するロボットの制御方法であって、
前記ツールで少なくとも一部が前記ツールに対して変位するワークを保持し、前記ロボットアームを動かして前記ワークを第1方向に移動させる移動工程と、
前記移動中に前記ロボットの制御点が受ける力を検出する力検出工程と、
前記検出した力が目標力となるように前記ロボットアームの駆動を力制御する制御工程と、を含む。
【0007】
本発明のロボットシステムは、ロボットアームと、ツールと、前記ロボットアームと前記ツールとの間に配置されている力検出部と、を有するロボットと、
前記ロボットの駆動を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記ツールで少なくとも一部が前記ツールに対して変位するワークを保持し、前記ロボットアームを動かして前記ワークを第1方向に移動させる移動工程と、
前記移動中に前記ロボットの制御点が受ける力を検出する力検出工程と、
前記検出した力が目標力となるように前記ロボットアームの駆動を力制御する制御工程と、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るロボットシステムの構成図である。
図2】ワークおよび移動時のワークの変位を示す図である。
図3】制御装置のブロック部である。
図4】ロボットの制御方法を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係るワークおよび移動時のワークの変位を示す図である。
図6】第3実施形態に係るワークおよび移動時のワークの変位を示す図である。
図7】第4実施形態に係るワークを示す図である。
図8】第4実施形態に係るロボットの制御方法を示すフローチャートである。
図9】作業工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のロボットの制御方法およびロボットシステムを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るロボットシステムの構成図である。図2は、ワークおよび移動時のワークの変位を示す図である。図3は、制御装置のブロック部である。図4は、ロボットの制御方法を示すフローチャートである。
【0011】
図1に示すロボットシステム1は、ワークWを保持するロボット2と、ロボット2の駆動を制御する制御装置3と、を有する。
【0012】
ロボット2は、駆動軸を6つ有する6軸垂直多関節ロボットである。ロボット2は、ベース21と、ベース21に回動自在に連結されたロボットアーム22と、ロボットアーム22の先端に装着されたツール23と、ロボットアーム22とツール23との間に配置された力検出部としての力センサー24と、を有する。
【0013】
また、ロボットアーム22は、6本のアーム221、222、223、224、225、226が回動自在に連結されたロボティックアームであり、6つの関節J1、J2、J3、J4、J5、J6を備えている。これら6つの関節J1~J6のうち、関節J2、J3、J5が曲げ関節であり、関節J1、J4、J6がねじり関節である。
【0014】
関節J1、J2、J3、J4、J5、J6には、それぞれ、モーターMとエンコーダーEとが設置されている。制御装置3は、ロボットシステム1の運転中、各関節J1~J6について、エンコーダーEの出力が示す関節J1~J6の回転角度を目標位置Prefに一致させるフィードバック制御を実行する。これにより、ツール23で把持したワークWを所望の軌道で搬送することができる。
【0015】
また、ツール23は、ワークWを保持する構成であり、フック状の引っ掛け部231を有する。このようなツール23は、引っ掛け部231にワークWを引っ掛けることでワークWを保持することができる。ただし、ツール23の構成は、ワークWを保持することができれば、特に限定されない。
【0016】
また、力センサー24は、互いに直交する3つの検出軸を有し、各検出軸に沿う並進力(軸力)および各検出軸まわりの回転力(トルク)をそれぞれ独立して検出することができる6軸力センサーである。
【0017】
また、ロボット2には、ベース21を座標系の基準位置として設定されたロボット座標系と、制御点であるツールセンターポイント(以下、「TCP」とも言う。)を座標系の基準位置として設定されたツール座標系と、力センサー24を座標系の基準位置として設定されたセンサー座標系と、が設定されている。なお、TCPは、ツール23に設定される基準点であり、ユーザーが任意に設定することができる。
【0018】
以上、ロボット2について説明したが、ロボット2の構成は、特に限定されない。例えば、スカラロボット(水平多関節ロボット)、上述のロボットアーム22を2本備えた双腕ロボット等であってもよい。また、ベース21が固定されていない自走式のロボットであってもよい。
【0019】
ワークWは、ツール23に保持された状態において、少なくとも一部がツール23に対して変位する。そのため、ロボット2でワークWを搬送する際、主に慣性力によってワークWが振動する。搬送中にワークWが振動すると、その振動がロボット2に伝わってロボット2の駆動が不安定になるおそれがある。また、ワークWの振動が収まるまで次の作業に進むことができず、タクトタイムが長くなるおそれもある。また、例えば、ワークWに対象物Qが載置されているような場合には、ワークWの振動によって対象物QがワークWから落下するおそれもある。そこで、制御装置3は、搬送中のワークWの振動を低減して上記問題を解消すべく、力制御を用いてロボット2の駆動を制御する。なお、制御装置3の構成や制御方法については後述する。
【0020】
本実施形態のワークWは、筐体W11と、筐体W11に取り付けられた把持部W12と、を備えるワーク本体W1と、ワーク本体W1に載置された対象物Qと、を有する。このようなワークWは、把持部W12が引っ掛け部231に引っ掛けられてツール23に保持される。把持部W12が引っ掛け部231に引っ掛けられた状態では、ワークWは、ツール23に対して振り子のように揺動可能である。また、筐体W11は、棚状になっており、筐体W11内には複数の対象物Qが載置されている。そのため、例えば、図2に示すように、ロボット2を動かしてワークWを第1方向Aに搬送すると、ワークWが第1方向Aに直交する水平軸Jgまわりに揺動する。そのため、前述したように、ロボット2の駆動が不安定になったり、タクトタイムが長くなったり、対象物Qが落下したりするおそれがある。
【0021】
制御装置3は、ロボット2の駆動を制御する。制御装置3は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶されたプログラム等を読み込んで実行することができる。
【0022】
このような制御装置3は、ワークWを搬送する際の振動を低減するために力制御を用いてロボット2の駆動を制御する。図3に示すように、制御装置3は、力制御部31と、指令統合部33と、を有する。
【0023】
制御装置3は、各モーターMの回転角つまり各エンコーダーEの出力信号から導出される各関節J1~J6の回転角と、ロボット座標系におけるTCPの位置および姿勢(以下、単に「位置姿勢」とも言う。)と、を相互に変換する第1変換部U1を有する。第1変換部U1は、ロボット座標系におけるTCPの位置を各モーターMの回転角に変換することができ、反対に、各モーターMの回転角をロボット座標系におけるTCPの位置に変換することができる。
【0024】
また、制御装置3は、センサー座標系とツール座標系との対応関係に基づいて、力センサー24により検出される力F0をツール座標系における力つまりTCPに作用する力F1に変換する第2変換部U2を有する。第2変換部U2は、力F1の力成分と、力F1のトルク成分と、を算出することができる。
【0025】
力制御部31は、力検出部311と、力制御補正量算出部312と、第3変換部U3と、を有する。力制御部31は、TCPに作用する力F1を所定の目標力Frefに制御する機能を有する。具体的には、力制御部31は、力F1を目標力Frefにするように目標位置Prefを補正する力制御補正量ΔPを算出し、指令統合部33に出力する。
【0026】
力検出部311は、力センサー24からの出力に基づいてTCPに作用する力F2を検出する。具体的には、力検出部311は、第2変換部U2を介して力センサー24から取得される力F1に対して重力に起因する成分を除去する重力補償を施し、重力の影響を有しないTCPに作用する力F2を検出する。
【0027】
ここで、本実施形態では、力検出部311は、力F2としてワークWの移動方向である第1方向Aに直交する水平軸Jgまわりのトルクを検出する。ワークWは、慣性力によって第1方向Aへの移動中に水平軸Jgまわりに特に揺動し易い。そのため、水平軸Jgまわりのトルクを検出することにより、移動中のワークWの振動をより効果的に低減することができる。なお、ワークWの移動方向については、例えば、動作プログラムから取得することができる。
【0028】
力制御補正量算出部312は、目標力Frefと力F2とから、力F2を目標力Frefにするように目標位置Prefを補正する力制御補正量ΔPを算出する。力制御補正量ΔPは、TCPが機械的インピーダンスを受けた場合において、目標力Frefと力F2との力偏差(=Fref-F2)を解消するために、TCPが位置から移動すべき量を意味する。力制御補正量算出部312は、例えば、仮想の機械的インピーダンスを各モーターMによって実現するインピーダンス制御により力制御補正量ΔPを算出する。
【0029】
ここで、目標力Frefとしては、特に限定されないが、小さい程、移動中のワークWの振動を低減することができる。そのため、本実施形態では、目標力Frefが0(ゼロ)に設定されている。これにより、移動中のワークWの振動をより効果的に低減することができる。
【0030】
第3変換部U3は、ツール座標系とロボット座標系との対応関係に基づいて、力制御補正量ΔPをロボット座標系における力制御補正量ΔP1に変換する。
【0031】
指令統合部33は、フィードバック制御部331と、前述した第1変換部U1および第2変換部U2と、力制御補正量加算部332と、を有する。指令統合部33は、目標位置Prefと、力制御部31により算出された力制御補正量ΔP1とを統合する。指令統合部33は、統合した制御指令に応じた目標値を達成するように、ロボット2に操作量を出力する。
【0032】
力制御補正量加算部332は、目標位置Prefに力制御補正量ΔP1を加算し、各モーターMの指令位置Pttを算出する。指令位置Pttは、ロボット座標系における最終的なTCPの目標値を意味する。第1変換部U1は、ロボット座標系における指令位置Pttを、各モーターMの目標角Dtに変換する。
【0033】
フィードバック制御部331は、各モーターMの実際の回転角Daを制御量として目標角Dtに制御するフィードバック制御を行う。フィードバック制御部331は、各エンコーダーEの出力から回転角Daを取得する。フィードバック制御部331は、回転角Da、目標角Dtから操作量Dcを算出して、各モーターMを制御する。
【0034】
以上、制御装置3について説明した。次に、図4に示すフローチャートを参照してロボットの制御方法について説明する。ロボットの制御方法は、ロボットアーム22を駆動してワークWを第1方向Aに移動させる移動工程S1と、第1方向Aへの移動中にTCPが受ける力F2を検出する力検出工程S2と、検出した力F2が目標力Frefとなるようにロボットアーム22の駆動を制御する制御工程S3と、を含む。なお、力検出工程S2および制御工程S3は、移動工程S1中に行われる。
【0035】
[移動工程S1]
移動工程S1では、制御装置3は、ステップS11として、ロボットアーム22を動かして、TCPを目標位置Prefへ向けて移動させる。これにより、TCPの目標位置Prefへの移動が開始される。次に、制御装置3は、ステップS12として、TCPが目標位置Prefに到達したかを判定する。制御装置3は、TCPが目標位置Prefに到達した場合は、ロボット2の制御を終了し、TCPが目標位置Prefに到達していない場合は、力検出工程S2に移行する。
【0036】
[力検出工程S2]
力検出工程S2では、制御装置3は、ステップS21として、TCPの目標位置Prefへの移動が開始されてからTCPが目標位置Prefに到達するまでの間、力センサー24により検出される力F0に基づいて、所定の周期で力F2を算出する。
【0037】
[制御工程S3]
制御工程S3では、制御装置3は、ステップS31として、力F2と目標力Frefとに基づいて力制御補正量ΔPを算出する。次に、制御装置3は、ステップS32として、力制御補正量ΔPをロボット座標系に変換して力制御補正量ΔP1を算出する。次に、制御装置3は、ステップS33として、力制御補正量ΔP1と目標位置Prefとに基づいて各モーターMの指令位置Pttを算出する。次に、制御装置3は、ステップS34として、指令位置Pttに基づいてロボット2の駆動を制御する。
【0038】
このような制御方法によれば、目標位置Prefへの移動中のワークWの振動を効果的に低減することができる。そのため、目標位置Prefへの移動中のロボット2の駆動が安定する。また、目標位置Prefへの移動が完了した後、速やかに次の作業に進むことができる。そのため、タクトタイムを短縮することができ、生産性が向上する。また、目標位置Prefへの移動中の対象物Qの落下を抑制することもでき、作業エラーの発生を効果的に抑制することもできる。特に、上述の制御方法によれば、事前に補正量を求めておく必要がなく、どのようなワークWでも、かつ、どのような動作でも、移動中のワークWの振動を低減することができる。そのため、容易かつ利便性の高いロボットの制御方法となる。
【0039】
以上のように、本実施形態のロボットの制御方法は、ロボットアーム22と、ツール23と、ロボットアーム22とツール23との間に配置されている力検出部である力センサー24と、を有するロボット2の制御方法であって、ツール23で少なくとも一部がツール23に対して変位するワークWを保持し、ロボットアーム22を動かしてワークWを第1方向Aに移動させる移動工程S1と、移動中に制御点が受ける力を検出する力検出工程S2と、検出した力が目標力Frefとなるようにロボットアーム22の駆動を力制御する制御工程S3と、を含む。
【0040】
これにより、移動中のワークWの振動を効果的に低減することができる。そのため、目標位置Prefへの移動中のロボット2の駆動が安定する。また、目標位置Prefへの移動が完了した後、速やかに次の作業に進むことができる。そのため、タクトタイムを短縮することができ、生産性が向上する。また、目標位置Prefへの移動中の対象物Qの落下を抑制することもでき、作業エラーの発生を効果的に抑制することもできる。特に、上述の制御方法によれば、事前に補正量を求めておく必要がなく、どのようなワークWでも、かつ、どのような動作でも、移動中のワークWの振動を低減することができる。そのため、容易かつ利便性の高いロボットの制御方法となる。
【0041】
また、前述したように、目標力Frefは、ゼロである。これにより、移動中のワークWの振動をより効果的に低減することができる。
【0042】
また、前述したように、力検出工程S2では、力F2として第1方向Aに直交する水平軸Jgまわりのトルクを検出する。第1方向Aへの移動中、ワークWは、水平軸Jgまわりに揺動し易い。したがって、力F2として水平軸Jgまわりのトルクを検出することにより、移動中のワークWの振動をより効果的に低減することができる。
【0043】
また、前述したように、第1方向Aが水平方向である。これにより、ワークWがより振動し易くなり、上述の力制御の効果がより顕著となる。
【0044】
また、前述したように、ロボットシステム1は、ロボットアーム22と、ツール23と、ロボットアーム22とツール23との間に配置されている力検出部である力センサー24と、を有するロボット2と、ロボット2の駆動を制御する制御装置3と、を有する。また、制御装置3は、ツール23で少なくとも一部がツール23に対して変位するワークWを保持し、ロボットアーム22を動かしてワークWを第1方向Aに移動させる移動工程S1と、移動中に制御点が受ける力を検出する力検出工程S2と、検出した力が目標力Frefとなるようにロボットアーム22の駆動を力制御する制御工程S3と、を実行する。
【0045】
これにより、移動中のワークWの振動を効果的に低減することができる。そのため、目標位置Prefへの移動中のロボット2の駆動が安定する。また、目標位置Prefへの移動が完了した後、速やかに次の作業に進むことができる。そのため、タクトタイムを短縮することができ、生産性が向上する。また、目標位置Prefへの移動中の対象物Qの落下を抑制することもでき、作業エラーの発生を効果的に抑制することもできる。特に、上述の制御方法によれば、事前に補正量を求めておく必要がなく、どのようなワークWでも、かつ、どのような動作でも、移動中のワークWの振動を低減することができる。そのため、容易かつ利便性の高いロボットシステム1となる。
【0046】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係るワークおよび移動時のワークの変位を示す図である。
【0047】
本実施形態に係るロボットの制御方法は、ワークWの移動方向である第1方向Aが異なること以外は、前述した第1実施形態のロボットの制御方法と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態のロボットの制御方法に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0048】
本実施形態のロボットの制御方法では、図5に示すように、ワークWの移動方向である第1方向Aが水平方向および鉛直方向に対して傾斜した方向である。このような方向であっても、ワークWが水平軸Jgまわりに揺動し易い。したがって、制御装置3による力制御の効果がより顕著となる。
【0049】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0050】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係るワークおよび移動時のワークの変位を示す図である。
【0051】
本実施形態に係るロボットの制御方法は、ワークWの構成および力F2の種類が異なること以外は、前述した第1実施形態のロボットの制御方法と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態のロボットの制御方法に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0052】
図6に示すように、本実施形態のワークWは、トレーW3と、トレーW3上に載置された対象物Qと、を有する。対象物Qは、例えば、食器である。そして、このようなワークWは、トレーW3を水平にした姿勢でツール23に保持されている。この状態でワークWを第1方向Aに移動させると、慣性力によって対象物QがトレーW3に対して移動方向後方側に滑るように変位する。そのため、移動中に対象物QがトレーW3から落下するおそれがある。
【0053】
このようなワークWの場合、制御装置3の力検出部311は、力F2としてワークWの移動方向である第1方向Aの並進力を検出する。前述したように、トレーW3上の対象物Qは、慣性力によって第1方向Aの反対側に変位し易いため、第1方向Aの並進力を検出することにより、対象物Qの変位をより効果的に低減することができる。
【0054】
以上のように、力検出工程S2では、力F2として第1方向Aの並進力を検出する。第1方向Aへの移動中、ワークWは、第1方向Aと反対側の方向に変位し易い。したがって、力F2として第1方向Aの並進力を検出することにより、移動中のワークWの変位をより効果的に低減することができる。
【0055】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0056】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態に係るワークを示す図である。図8は、第4実施形態に係るロボットの制御方法を示すフローチャートである。図9は、作業工程の一例を示す図である。
【0057】
本実施形態に係るロボットの制御方法は、移動工程S1中または移動工程S1の後に行われる作業工程S4をさらに有すること以外は、前述した第1実施形態のロボットの制御方法と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態のロボットの制御方法に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0058】
図7に示すように、本実施形態のワークWは、作業対象物W41をフックW42で吊り下げた構成であり、フックW42がツール23の引っ掛け部231に引っ掛けられている。そのため、ワークWを第1方向Aへ移動させると、ワークWがツール23に対して水平軸Jgまわりに揺動する。
【0059】
次に、図8に示すフローチャートを参照してロボットの制御方法について説明する。ロボットの制御方法は、ロボットアーム22を駆動してワークWを第1方向Aに移動させる移動工程S1と、第1方向Aへの移動中にTCPが受ける力F2を検出する力検出工程S2と、検出した力F2が目標力Frefとなるようにロボットアーム22の駆動を制御する制御工程S3と、ワークWに対して所定の作業を行う作業工程S4と、を含む。なお、力検出工程S2および制御工程S3は、移動工程S1中に行われる。これに対して、作業工程S4は、移動工程S1の後に行われる。
【0060】
作業工程S4では、ワークWに対して所定の作業が行われる。所定の作業としては、特に限定されないが、本実施形態では、図9に示すように、吹き付け塗装装置9を用いてワークWを塗装する塗装作業である。前述したように、制御装置3による力制御によって移動工程S1中のワークWの変位が低減されるため、移動工程S1が終了した後、より迅速に、作業工程S4に進むことができる。そのため、タクトタイムを短縮することができる。
【0061】
なお、作業工程S4は、移動工程S1の後ではなく、移動工程S1中に行われてもよい。つまり、TCPを目標位置Prefに向けて移動させつつ、ワークWに対して塗装作業を行ってもよい。これにより、移動工程S1と作業工程S4とを並行して行うことができ、タクトタイムをさらに短縮することができる。特に、前述したように、制御装置3による力制御によって移動工程S1中のワークWの変位が低減されるため、移動工程S1中においても作業工程S4を高い精度で行うことができる。
【0062】
以上のように、本実施形態のロボットの制御方法は、移動工程S1中または移動工程S1の後に、ワークWに対して所定の作業を行う作業工程を含む。移動工程S1中に作業工程S4を行う場合には、これら工程S1、S4を並行して行うことができるため、タクトタイムを短縮することができる。特に、前述したように、制御装置3による力制御によって移動工程S1中のワークWの振動が低減されるため、移動工程S1中においても作業工程S4を高い精度で行うことができる。一方、移動工程S1の後に作業工程S4を行う場合には、移動工程S1の後、より迅速に作業工程S4に進むことができる。そのため、タクトタイムを短縮することができる。
【0063】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0064】
以上、本発明のロボットの制御方法およびロボットシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではない。各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…ロボットシステム、2…ロボット、21…ベース、22…ロボットアーム、221…アーム、222…アーム、223…アーム、224…アーム、225…アーム、226…アーム、23…ツール、231…引っ掛け部、24…力センサー、3…制御装置、31…力制御部、311…力検出部、312…力制御補正量算出部、33…指令統合部、331…フィードバック制御部、332…力制御補正量加算部、9…吹き付け塗装装置、A…第1方向、Da…回転角、Dc…操作量、Dt…目標角、E…エンコーダー、F0…力、F1…力、F2…力、Fref…目標力、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、Jg…水平軸、M…モーター、Pref…目標位置、Ptt…指令位置、Q…対象物、S1…移動工程、S11…ステップ、S12…ステップ、S2…力検出工程、S21…ステップ、S3…制御工程、S31…ステップ、S32…ステップ、S33…ステップ、S34…ステップ、S4…作業工程、TCP…ツールセンターポイント、U1…第1変換部、U2…第2変換部、U3…第3変換部、W…ワーク、W1…ワーク本体、W11…筐体、W12…把持部、W3…トレー、W41…作業対象物、W42…フック、ΔP…力制御補正量、ΔP1…力制御補正量
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図9