(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071868
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
B25J19/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182345
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】石川 友梧
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 哲也
(72)【発明者】
【氏名】一宮 祐太
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS15
3C707CX01
3C707CX03
3C707CX09
3C707HS27
3C707HT17
3C707HT20
3C707KS21
3C707KX10
3C707MS12
3C707MS22
(57)【要約】
【課題】第2部材にかかる負荷を軽減することができるロボットを提供すること。
【解決手段】第1部材と、前記第1部材に対し回転可能に設けられ、第1孔部を有する第2部材と、前記第1部材に設けられ、前記第2部材の前記第1部材に対する回転角度を規制する規制部材と、ピン本体と、前記ピン本体の基端部に設けられ、前記規制部材と接触するヘッドと、を有し、前記ピン本体が前記第1孔部の底部に固定されたピンと、第2孔部を有し、前記ピン本体が前記第2孔部に挿入された状態で、前記第2部材に固定された支持板と、を備え、前記第1孔部の内面と前記ピン本体との間には、第1隙間が設けられ、前記第2孔部の内面と前記ピン本体との間には、第2隙間が設けられていることを特徴とするロボット。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、
前記第1部材に対し回転可能に設けられ、第1孔部を有する第2部材と、
第2孔部を有し、前記第2部材に固定される支持板と、
前記第1部材に設けられ、前記第2部材の前記第1部材に対する回転角度を規制する規制部材と、
先端部が前記第2部材に固定されるピン本体と、前記ピン本体の基端部に設けられ、前記規制部材と接触するヘッドと、を有し、前記第1孔部および前記第2孔部を通るピンと、を備え、
前記第1孔部の内面と前記ピンとの間には、第1隙間が設けられ、前記第2孔部の内面と前記ピンとの間には、第2隙間が設けられ、
前記ピン本体に沿って延びる直線と直交する方向から見たときに、前記第2孔部は、前記第1孔部の前記基端部側にあることを特徴とするロボット。
【請求項2】
第1部材と、
前記第1部材に対し回転可能に設けられる第2部材と、
互いに連通し、孔の横断面形状が異なる第1孔部および第2孔部を有し、前記第2部材に固定される支持板と、
前記第1部材に設けられ、前記第2部材の前記第1部材に対する回転角度を規制する規制部材と、
先端部が前記第2部材に固定されるピン本体と、前記ピン本体の基端部に設けられ、前記規制部材と接触するヘッドと、を有し、前記第1孔部および前記第2孔部を通るピンと、を備え、
前記第1孔部の内面と前記ピンとの間には第1隙間が設けられ、前記第2孔部の内面と前記ピンとの間には、第2隙間が設けられ、
前記ピン本体に沿って延びる直線と直交する方向から見たときに、前記第2孔部は、前記第1孔部の前記基端部側にあることを特徴とするロボット。
【請求項3】
前記第2部材が回転した際の前記ピンの軌跡に沿った第1方向における前記第1孔部の内面と前記ピンとの間隙距離をD1とし、前記第1方向における前記第2孔部の内面と前記ピンとの間隙距離をD2としたとき、D2<D1を満たす請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
前記支持板は、前記第1部材よりも硬質な材料で構成されている請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記第2部材は、空洞部と、前記空洞部を複数の空間に仕切るリブと、を有する筐体を備え、
前記第1孔部は、前記リブに設けられている請求項3に記載のロボット。
【請求項6】
前記支持板は、前記空洞部を覆うように、かつ前記リブに対し複数の固定部材により固定されている請求項5に記載のロボット。
【請求項7】
前記規制部材は、前記支持板よりも硬質な材料で構成されている請求項3に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているロボットは、ベースと、ベースに回転可能に接続された第1アームと、第1アームに回転可能に接続された第2アームと、第2アームに回転可能に接続された第3アームと、を有する。また、ベースには、ベースに対する第1アームの回転角度を所定角度内に規制する当接部材が設けられており、第1アームには、前記回転角度が前記所定角度に達したときに当接部材と接触する突出部が設けられている。突出部は、第1アームに設けられた設置孔に固定されたボルトのヘッドで構成されている。
【0003】
このような当接部材および突出部を有する構成のロボットでは、突出部が当接部材に接触することにより、ベースに対する第1アームの回転角度を予め設定された所定角度範囲内に規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているロボットでは、突出部が当接部材に当接する衝撃の程度によっては、突出部を介して第1アームに過剰に負荷がかかり、第1アームに変形、破損等を生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロボットは、第1部材と、
前記第1部材に対し回転可能に設けられ、第1孔部を有する第2部材と、
第2孔部を有し、前記第2部材に固定される支持板と、
前記第1部材に設けられ、前記第2部材の前記第1部材に対する回転角度を規制する規制部材と、
先端部が前記第2部材に固定されるピン本体と、前記ピン本体の基端部に設けられ、前記規制部材と接触するヘッドと、を有し、前記第1孔部および前記第2孔部を通るピンと、を備え、
前記第1孔部の内面と前記ピンとの間には、第1隙間が設けられ、前記第2孔部の内面と前記ピンとの間には、第2隙間が設けられ、
前記ピン本体に沿って延びる直線と直交する方向から見たときに、前記第2孔部は、前記第1孔部の前記基端部側にあることを特徴とする。
【0007】
本発明のロボットは、第1部材と、
前記第1部材に対し回転可能に設けられる第2部材と、
互いに連通し、孔の横断面形状が異なる第1孔部および第2孔部を有し、前記第2部材に固定される支持板と、
前記第1部材に設けられ、前記第2部材の前記第1部材に対する回転角度を規制する規制部材と、
先端部が前記第2部材に固定されるピン本体と、前記ピン本体の基端部に設けられ、前記規制部材と接触するヘッドと、を有し、前記第1孔部および前記第2孔部を通るピンと、を備え、
前記第1孔部の内面と前記ピンとの間には第1隙間が設けられ、前記第2孔部の内面とピンとの間には、第2隙間が設けられ、
前記ピン本体に沿って延びる直線と直交する方向から見たときに、前記第2孔部は、前記第1孔部の前記基端部側にあることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るロボットを備えるロボットシステムの全体図である。
【
図3】
図1に示すロボットが備える第1アームを下面側から見た斜視図である。
【
図5】
図3中B-B線断面図の部分拡大図であって、ピンが変形した状態を示す図である。
【
図6】
図3中B-B線断面図の部分拡大図であって、ピンが変形した状態を示す図である。
【
図7】第1実施形態の第1変形例を示す図であって、
図4中の矢印C方向から見た図である。
【
図8】第1実施形態の第2変形例を示す図であって、
図4中の矢印C方向から見た図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るロボットにおいて、
図3中B-B線断面図に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のロボットを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボットを備えるロボットシステムの全体図である。
図2は、
図1中矢印A方向から見た図である。
図3は、
図1に示すロボットが備える第1アームを下面側から見た斜視図である。
図4は、
図3中B-B線断面図である。
図5および
図6は、
図3中B-B線断面図の部分拡大図であって、ピンが変形した状態を示す図である。
図7は、第1実施形態の第1変形例を示す図であって、
図4中の矢印C方向から見た図である。
図8は、第1実施形態の第2変形例を示す図であって、
図4中の矢印C方向から見た図である。
【0010】
図1中、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸が設定されており、
図2、
図3、
図4、
図5、
図6、
図7および
図8中にもそれぞれ同様の3軸が示されている。後述する第2実施形態に係る
図9についても同様である。3軸のうちZ軸方向は鉛直方向を示し、X-Y平面は水平面を示す。
【0011】
図1、
図4、
図5および
図6中の上下方向は、鉛直方向と一致している。
図1の上側を「上」、下側を「下」とも言い、
図4、
図5および
図6の上側を「下」、下側を「上」とも言う。後述する第2実施形態に係る
図9についても同様である。ロボットアーム22、第1アーム23および第2アーム24等については、
図1および
図2中の右側を基端部、左側を先端部と言う。また、第1アーム23が
図2中実線で示す初期姿勢であるときに、X軸において第1アーム23が位置する側をベース21の前側、その反対側をベース21の後側と言う。
【0012】
本明細書において、「鉛直」とは、鉛直と一致している場合のみならず、鉛直に対して若干、例えば±10°以内傾斜している場合も含む意味である。また、本明細書において、「平行」とは、2つの対象が平行と一致している場合のみならず、平行から若干、例えば±10°以内傾斜している場合も含む意味である。
【0013】
図1に示すロボットシステム1は、ロボット2と、ロボット2の駆動を制御するロボット制御装置9と、を有している。
【0014】
本実施形態におけるロボット2は、スカラロボットであり、例えば、電子部品等のワークの保持、搬送、組立および検査等の各作業で用いられる。ただし、ロボット2の用途は、特に限定されない。また、本発明のロボットは、スカラロボット以外、例えば、6軸多関節ロボット、双腕ロボット等であってもよい。
【0015】
図1に示すように、ロボット2は、ベース21と、ベース21に対し回転可能に接続されているロボットアーム22と、を有している。ベース21は、水平面と平行な床面10に固定されている。
【0016】
ロボットアーム22は、基端部がベース21に接続され、ベース21に対して鉛直方向に沿う第1回動軸J1まわりに回転する第1アーム23と、基端部が第1アーム23の先端部に接続され、第1アーム23に対して鉛直方向に沿う第2回動軸J2まわりに回動する第2アーム24と、を有している。本実施形態では、ベース21は第1部材に相当し、第1アーム23は第2部材に相当する。
【0017】
第2アーム24の先端部には作業ヘッド25が設けられている。作業ヘッド25は、第2アーム24の先端部に同軸的に配置されているスプラインナット251およびボールネジナット252と、スプラインナット251およびボールネジナット252に挿通されているスプラインシャフト253と、を有している。スプラインシャフト253は、第2アーム24に対して、その中心軸であり鉛直方向に沿う第3回動軸J3まわりに回転可能で、かつ、第3回動軸J3に沿って昇降可能である。
【0018】
スプラインシャフト253の下端部には、エンドエフェクター26が装着されている。エンドエフェクター26は、着脱自在であり目的の作業に適したものが適宜選択される。
【0019】
ロボット2は、ベース21と第1アーム23とを連結し、ベース21に対して第1アーム23を第1回動軸J1まわりに回転させる第1関節アクチュエーター27と、第1アーム23と第2アーム24とを連結し、第1アーム23に対して第2アーム24を第2回動軸J2まわりに回動させる第2関節アクチュエーター28と、を有している。第1アーム23は、第1関節アクチュエーター27によって、ベース21の上面220に対し、離間した状態でベース21に接続されている。
【0020】
また、ロボット2は、スプラインナット251を回転させてスプラインシャフト253を第3回動軸J3まわりに回転させる第1駆動機構291と、ボールネジナット252を回転させてスプラインシャフト253を第3回動軸J3に沿った方向に昇降させる第2駆動機構292と、を有する。
【0021】
第1関節アクチュエーター27、第2関節アクチュエーター28、第1駆動機構291および第2駆動機構292は、それぞれ、図示しないモーター、減速機、エンコーダー等を有する。各モーターおよび各エンコーダーは、それぞれ、ロボット制御装置9と電気的に接続されている。各エンコーダーは、対応するモーターの回転位置情報を検出し、ロボット制御装置9に送信する。ロボット制御装置9は、各エンコーダーから受信した各モーターの回転位置情報に基づいて、図示しないモータードライバーを介して各モーターへの通電条件を制御する。これにより、第1アーム23、第2アーム24およびスプラインシャフト253がそれぞれ作動し、ロボットアーム22の姿勢が経時的に変化して、所望の作業を行うことができる。
【0022】
次に、第1アーム23の構造について説明する。
図1~
図3に示すように、第1アーム23は、筐体230を有する。筐体230は、上面230Aおよび下面230Bを有し、X軸方向を長手方向とする長尺な部材で構成される。筐体230は、先端部が第2関節アクチュエーター28を介して第2アーム24に接続され、基端部が第1関節アクチュエーター27を介してベース21に接続されている。
【0023】
筐体230の構成材料としては、特に限定されず、例えば、金属材料、樹脂材料、セラミックス等が挙げられる。
【0024】
筐体230は、先端部の上面230A側に第2関節アクチュエーター28が設置される凹部である設置部231と、基端部の下面230B側に第1関節アクチュエーター27が設置される凹部である設置部232を有する。
【0025】
筐体230は、空洞部233と、リブ234とを有する。
空洞部233は、下面230B側に開放する凹部で構成されており、設置部231および設置部232の間の部分に設けられている。ただし、空洞部233は、設置部231および設置部232とは隔てられており、連通していない。このような空洞部233を有する筐体230を用いることにより、第1アーム23の軽量化を図ることができる。
空洞部233は、複数のリブ234によって仕切られている。
【0026】
図3に示すように、空洞部233は、複数のリブ234によって複数の空間に仕切られている。各リブ234は、第1アーム23の強度を補う機能を有する。各リブ234は、等間隔に配置される複数の柱部2341と、複数の柱部の間を繋ぎ、柱部よりも厚みの薄い壁部2342とからなり、空洞部233内において、第1アーム23の長手方向に沿って延在している。各リブ234は、空洞部233の底部、すなわち筐体230の上面230Aを構成する天板に固着または一体化されている。Y軸方向に隣接するリブ234同士は、空洞部233内において部分的に連結されていてもよい。
【0027】
リブ234の所定部位には、第1孔部235および固定用孔部236が設けられている。本実施形態では、柱部2341に第1孔部235および固定用孔部236が設けられている。
【0028】
第1孔部235は、後述するピン4が挿入、および固定される部分である。第1孔部235は、Z軸方向を深さ方向とする孔である。第1孔部235は、後述する支持板5に形成された第2孔部52に対応する位置に設けられている。なお、第1孔部235および固定用孔部236が設けられる所定部位は、柱部2341に限らず、所定以上の厚みのある箇所であればよい。例えば、壁部2342が所定以上の厚みである場合には、所定部位は壁部2342であってもよく、リブ234に柱部2341および壁部2342がない場合には、リブ234のうち所定以上の厚みのある箇所であればよい。
【0029】
固定用孔部236は、後述する支持板5の固定部材6が挿入、固定される部分である。固定用孔部236は、Z軸方向を深さ方向とする孔である。固定用孔部236の内周は、雌ネジが形成された雌ネジ部となっている。固定用孔部236は、支持板5に形成された複数の固定孔51に対応する位置に設けられている。
【0030】
図3に示すように、支持板5は、空洞部233の下面230B側を覆うように第1アーム23の筐体230に固定されている。これにより、支持板5は、空洞部233を覆う蓋体部材としての機能を併せ持ち、第1アーム23の補強および軽量化、部品点数の削減等に寄与する。支持板5の構成については、後に詳述する。
【0031】
次に、規制部材3a、3bについて説明する。
図2に示すように、ベース21には、一対の規制部材3a、3bが設けられている。規制部材3a、3bは、ベース21の上面220から上方に向かって突出する突出部で構成されている。一対の規制部材3a、3bは、第1アーム23のベース21に対する回転角度を規制するものである。一対の規制部材3a、3bは、上方から見たとき、ベース21の後側であって、第1アーム23の基端部を介して互いに反対側に設置されている。また、一対の規制部材3a、3bは、
図2中実線で示す第1アーム23の初期姿勢において、それぞれ第1アーム23から離間して配置されている。
【0032】
規制部材3a、3bは、X軸方向、すなわち第1アーム23の長手方向に沿って延在する形状をなしている。ただし、この構成に限定されず、その他の形状、例えば、円柱状、角柱状等をなしていてもよい。
【0033】
第1アーム23が初期姿勢からベース21に対し第1回動軸J1を中心として
図2中時計まわりに回転し、所定角度に達すると、第1アーム23に固定されたピン4のヘッド42の側面が規制部材3aに接触して停止し、それ以上の回転が規制される。逆に、第1アーム23が初期姿勢からベース21に対し第1回動軸J1を中心として
図2中反時計まわりに回転し、所定角度に達すると、第1アーム23に固定されたピン4のヘッド42の側面が規制部材3bに接触して停止し、それ以上の回転が規制される。このように、第1アーム23は、正逆いずれの方向においてもその回転角度が規制される。これにより、第1アーム23の回転可能な角度範囲を角θに規制することができる。なお、ピン4の構成に関しては、後に詳述する。
【0034】
規制部材3a、3bは、比較的硬質な材料で構成されているのが好ましく、特に、筐体230または支持板5の構成材料よりも硬質な材料で構成されているのが好ましい。規制部材3a、3bの構成材料としては、特に限定されず、例えば、金属材料、樹脂材料、セラミックス等が挙げられる。
【0035】
図3および
図4に示すように、第1アーム23の基端部の下面230B側には、ピン4が固定されている。ピン4は、ピン本体41と、ヘッド42とを有する。ピン本体41とヘッド42とは、固着または一体化されている。ピン本体41は、第1アーム23、すなわち、第1アーム23の第1孔部235の底部に固定される。ピン本体41の外周部は、雄ネジが形成された雄ネジ部となっている。ピン本体41は直線形状であり、
図3および
図4に示すように、ピン本体41に沿って延びる仮想の直線は、Z軸と平行であり、X軸およびY軸と直交する。また、ピン本体41の第1アーム23に固定される端部を先端部、ヘッドと接続する端部を基端部と言う。
【0036】
ヘッド42は、ピン本体41が第1アーム23に固定された状態において、第1アーム23の下面230Bから下側(Z軸のマイナス方向)に突出している。
ヘッド42は、ピン本体41よりも外径が大きい。
図4に示すように、ピン本体41の外径は、第2孔部52よりも小さく、第2孔部52を挿通することができるが、ヘッド42の外径は、第2孔部52よりも大きく、第2孔部52を通過することができない。つまり、ヘッド42は、第1孔部235および第2孔部52より外側に位置している。
【0037】
このようなヘッド42は、第1アーム23の下面230Bから下側に相当長さ突出しているため、第1アーム23が角θの範囲を超えて回転しようとすると規制部材3aまたは3bと接触する。これにより、第1アーム23のベース21に対する回転角度が規制される。
【0038】
なお、ピン本体41とヘッド42との大小関係は、前述した条件に限らず、例えば、ピン本体41とヘッド42の外径は同じであってもよい。また、ヘッド42は、第2孔部52の内部の位置にあってもよい。換言すれば、ヘッド42は、ピン本体41に沿って延びる直線と直交する方向から見たときに、第2孔部52と重なる位置にあってもよい。
【0039】
ピン4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、金属材料、樹脂材料、セラミックス等が挙げられる。
【0040】
ピン4の構成材料は、筐体230の構成材料と同等の硬さを有するかまたは筐体230の構成材料より硬質、すなわち硬度が高いのが好ましい。これにより、ピン4が規制部材3a、3bに衝突した際、ピン4が破断せずに荷重を受け続けることができ、第1アーム23の回転可能な角度範囲を規制することができる。すなわち、筐体230を保護する効果がより高まる。また、第1孔部235を深くするほど、ピン本体41のネジ穴237と螺合する部分からヘッド42までの距離が長くなるため、ピン4にかかるモーメントも大きくなり、ピン4が筐体230よりも優先的に変形しやすくなる。本実施形態では、第1孔部235の深さは、ピン4全体の長さの半分程度の長さである。
【0041】
このようなピン4は、支持板5を介して第1アーム23に固定されている。
支持板5は、複数の固定孔51と、第2孔部52とを有する板状部材で構成されている。
【0042】
支持板5の構成材料としては、特に限定されず、例えば、金属材料、樹脂材料、セラミックス等が挙げられる。支持板5の構成材料は、第1アーム23を構成する筐体230の構成材料より硬質であるのが好ましい。
【0043】
支持板5は、平面視で四辺形をなしている。すなわち、支持板5は、支持板5の中心部に向かって凹となるように湾曲した辺501と、直線状の3つの辺502、503および504とを有する。
【0044】
辺501は、第1アーム23の基端側に位置し、設置部232を避けるように湾曲した形状をなしている。辺502は、Y軸方向に沿って延在し、第1アーム23の先端側に位置している。辺503および辺504は、筐体230を介して対向するように配置されている。辺503は、筐体230の一方の側面230Cに対応する位置に配置され、辺504は、筐体230の他方の側面230Dに対応する位置に配置されている。すなわち、支持板5の辺503および辺504の間の長さは、第1アームの筐体230のY軸方向の長さ以下である。このような支持板5は、辺501が設置部232に臨む向きで第1アーム23の筐体230の下面230B側、すなわち、第1アーム23の筐体230の外側に固定されている。換言すれば、支持板5は、ピン本体41に沿って延びる直線と直交する方向から見たときに、筐体230よりもピン本体41の基端部側にある。
【0045】
図3に示すように、本実施形態では、支持板5に対し固定孔51は8個設けられており、そのうちの4つの固定孔51に固定部材6が挿入、固定されており、他の4つの固定孔51は使用されていない。なお、第1アーム23において、固定用孔部236の形成位置が図示の構成とは異なる場合、当該固定用孔部236の形成位置に併せて、他の固定孔51に固定部材6を挿入、固定することができる。このように、固定用孔部236の形成位置に応じ、複数の固定孔51から所望の固定孔51を選択して用いることができ、汎用性に優れた支持板5とすることができる。
【0046】
固定部材6は、例えばビスまたはネジ部材で構成され、固定孔51および固定用孔部236に一括して挿入され、螺合されている。ただし、この構成に限定されず、例えば、固定部材6は、リベットまたはかしめ部材で構成され、固定孔51および固定用孔部236に一括して挿入され、嵌合された構成であってもよい。
【0047】
第2孔部52は、ピン4のピン本体41が挿し通される部分であり、第1孔部235と連通している。また、第1孔部235の底部には、雌ネジによるネジ穴237が設けられており、ピン本体41の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成されている。
【0048】
第1孔部235および第2孔部52は、それぞれ、第1アーム23の下面230Bの平面視で、すなわち、
図4中矢印C方向から見て円形をなしている。ただし、この構成に限らず、第1孔部235および第2孔部52の少なくとも一方は、平面視で例えば楕円または長円、半円、半楕円、正方形、長方形、菱形等の矩形形、三角形、六角形、八角形等の多角形であってもよく、さらにはこれらを任意に組み合わせた形状であってもよい。
【0049】
支持板5は、ピン本体41が第2孔部52および第1孔部235に挿し通され、かつピン本体41の先端部、すなわちヘッド42と反対側の端部がネジ穴237へ螺合された状態で第1アーム23に固定される。この状態では、ヘッド42は、第2孔部52より下方に位置している。このとき、ヘッド42は、支持板5の下面と接触している。これにより、後述する衝突した場合に、ヘッド42が支持板5の下面から摩擦力を受けて、衝撃力をより一層吸収することができる。ただし、これに限らず、ヘッド42は、支持板5の下面から所定距離離間していてもよく、衝突の変形によりヘッド42が支持板5の下面と接触する距離であればよい。規制部材3a、3bにヘッド42が衝突し、ピン本体41が湾曲変形すると、ヘッド42が倒れ、規制部材3a、3bがヘッド42を乗り越えてしまうおそれがあるが、ヘッド42が支持板5の下面と接触することで、支持板5がヘッド42を支えて倒れを抑制し、規制部材3a、3bの乗り越えを防止できる。
【0050】
図4に示すように、第1孔部235の内面とピン本体41との間には、第1隙間S1が設けられている。また、第2孔部52の内面とピン本体41との間には、第2隙間S2が設けられている。なお、ヘッド42が、第2孔部52の内部にある場合は、第2孔部52の内面とヘッド42との間に第2隙間S2が設けられる。
【0051】
次に、ロボットアーム22の動作中、第1アーム23の回転によりピン4が規制部材3aと接触または衝突(以下単に「衝突」と言う)した場合について説明する。
【0052】
図5に示すように、静止している規制部材3aに対して、ピン4が図中矢印E方向に移動し、規制部材3aに衝突した場合、規制部材3aからピン4の移動方向と反対方向の反力Fを受ける。この反力F、すなわち衝撃力がある程度大きい場合には、ピン本体41が規制部材3aによって湾曲変形または屈曲変形(以下単に「変形」と言う)する。この変形の際、第1隙間S1および第2隙間S2は、ピン本体41の変形しろ、すなわち逃げ部として機能する。第1隙間S1および第2隙間S2の存在により、ピン本体41が多少変形しても、第1アーム23と直接接触するのを回避することができる。よって、ピン4が規制部材3aと衝突した際に第1アーム23に過剰な衝撃が加わり、第1アーム23が変形、破損等を生じることを防止または抑制することができる。ピン4が規制部材3bと衝突した際も同様である。
【0053】
図6に示すように、規制部材3aのヘッド42への衝突時の衝撃力がより大きく、ピン本体41がより大きく変形してしまった場合、ピン本体41のヘッド42側が反力Fの向かう方向に曲がるため、ピン本体41がヘッド42側にある支持板5に形成された第2孔部52の内面を押圧し、第2孔部52の内面が図中破線で示す位置から実線で示す位置に移動するよう変形する。
【0054】
この場合でも、変形したピン本体41は、支持板5に接触して第2孔部52を変形させるが、第2孔部52よりピン本体41の先端側にある第1アーム23との接触は生じないかまたは生じたとしても軽度であり、第1アーム23への負担が軽減または緩和される。よって、ピン4が規制部材3aと衝突した際に第1アーム23に過剰な衝撃が加わり、第1アーム23が変形、破損等を生じることを防止または抑制することができる。ピン4が規制部材3bと衝突した際も同様である。また、ヘッド42が第2孔部52の内部にある場合は、ヘッド42が支持板5に接触して第2孔部52を変形させるが、この場合も上述と同様に第1アーム23との接触は生じないかまたは生じたとしても軽度である。
【0055】
本実施形態では、第1孔部235、第2孔部52およびピン本体41は、平面視すなわち、
図4中矢印C方向から見た形状がいずれも円形であるため、ピン本体41が変形していない状態では、第1隙間S1の形状および第2隙間S2の形状は、それぞれ所定の幅、すなわち後述する間隙距離D1およびD2を有する円環状をなしている。ピン本体41が第1孔部235および第2孔部52の中心部に位置している場合、前記円環の幅、すなわち間隙距離D1およびD2は、それぞれ周方向のどの位置でも等しい。
【0056】
図4に示すように、第1隙間S1の間隙距離をD1とし、第2隙間S2の間隙距離をD2としたとき、D1とD2の大小関係は特に限定されないが、D2<D1を満足するのが好ましい。これにより、衝突によりピン本体41が変形した際、ピン本体41を筐体230の第1孔部235の内面よりも優先的に支持板5の第2孔部52の内面に接触させることができる。よって、第1アーム23の変形、破損をより効果的に、より確実に防止または抑制することができる。
【0057】
D2/D1の値としては、特に限定されないが、0.04以上0.97以下であるのが好ましく、0.1以上0.9以下であるのがより好ましく、0.2以上0.8以下であるのがさらに好ましい。これにより、上記効果をより顕著に発揮することができる。
【0058】
また、本実施形態では、平面視でピン本体41を中心に見たとき、どの方向においてもD2<D1を満足する場合について説明したが、上記に限定されない。例えば、第1アーム23が回転した際の、ピン4の円弧状の軌跡Rに沿った方向を第1方向としたとき、第1方向における間隙距離D1と間隙距離D2の大小関係は、D2<D1を満足しているのが好ましく、また、D2/D1の値も上記と同様であるのが好ましい。これにより、上記と同様の効果を発揮することができる。この場合、
図7に示すように、第1孔部235は、第1アーム23の下面230Bの平面視で、すなわち、
図4中矢印C方向から見て、円弧状に延在する形状をなす長孔で構成し、第2孔部52は、第1方向における長さが第1孔部235の長孔より短い孔、例えば円形で構成することができる。このような構成により、第1アーム23等の加工部位、すなわち第1孔部235および第2孔部52の形成部分の面積を最小限にしつつ、必要かつ十分な第1アーム23の保護効果を発揮することができる。よって、上記効果を簡単かつ確実に発揮することができる。なお、第2孔部52は、
図8に示すように、円弧状の長孔でもよい。この場合、軌跡Rに沿って延びる直線と直交する方向を第2方向としたときに、第2方向における第2孔部52の長さは、第2方向における第1孔部235の長さよりも短いことが好ましい。これにより、衝突の際、ピン本体41を第1孔部235の内面よりも優先的に支持板5の第2孔部52に接触させることができる。
【0059】
なお、上記の各例では、D2<D1を満足する構成について説明したが、本発明ではこれに限定されず、D2>D1であってもよく、D2=D1であってもよい。
【0060】
上述したように、支持板5は、第1部材である第1アーム23よりも硬質な材料で構成されている。具体的には、支持板5の構成材料は、第1アーム23を構成する筐体230の構成材料より硬質である。これにより、支持板5がピン4の衝突による過剰な変形を防止し、第1アーム23への負担をより確実に軽減することができる。
支持板5の構成材料と第1アーム23、特に筐体230の構成材料との硬度差は、特に限定されないが、両構成材料のビッカース硬度(HV)の差が、44kgf/mm2以上130kgf/mm2以下であるのが好ましい。これにより、上記効果をより顕著に発揮することができる。
【0061】
なお、この構成に限定されず、支持板5および第1アーム23は、硬さが同等の材料で構成されていてもよく、第1アーム23が、支持板5よりも硬質な材料で構成されていてもよい。
【0062】
上述したように、規制部材3a、3bは、支持板5よりも硬質な材料で構成されている。これにより、ピン4が規制部材3a、3bと衝突した際、規制部材3a、3bの変形を防止しつつ、支持板5を優先的に変形させることができる。よって、上記効果をより顕著に発揮することができる。
規制部材3a、3bの構成材料と支持板5の構成材料との硬度差は、特に限定されないが、両構成材料のビッカース硬度(HV)の差が、86kgf/mm2以上130kgf/mm2以下であるのが好ましい。これにより、上記効果をさらに顕著に発揮することができる。
【0063】
なお、この構成に限定されず、規制部材3a、3bおよび支持板5は、硬さが同等の材料で構成されていてもよく、規制部材3a、3bが、支持板5よりも硬質な材料で構成されていてもよい。
【0064】
以上説明したように、ロボット2は、第1部材であるベース21と、ベース21に対し回転可能に設けられ、第1孔部235を有する第2部材である第1アーム23と、第2孔部52を有し、第1アーム23に固定される支持板5と、ベース21に設けられ、第1アーム23のベース21に対する回転角度を規制する規制部材3a、3bと、先端部が第1アーム23に固定されるピン本体41と、ピン本体41の基端部に設けられ、規制部材3a、3bと接触するヘッド42と、を有し、第1孔部235および第2孔部52を通るピン4と、を備える。また、第1孔部235の内面とピン4との間には、第1隙間S1が設けられ、第2孔部52の内面とピン4との間には、第2隙間S2が設けられ、ピン本体41に沿って延びる直線と直交する方向から見たときに、第2孔部52は、第1孔部235の基端部側にある。このように、第1隙間S1および第2隙間S2が設けられ、第2孔部52が第1孔部235のヘッド42側に位置しているため、ピン4が規制部材3a、3bに衝突して多少変形しても、ピン4が第1アーム23と直接接触するのを回避することができる。さらに、衝突時の衝撃力が大きく、ピン4がより大きく変形してしまった場合でも、変形したピン4は支持板5に接触し、第1アーム23との接触は生じないかまたは生じたとしても軽度であり、第1アーム23への負担が軽減される。以上より、ピン4が規制部材3a、3bと衝突した際、第1アーム23の変形、破損を防止または抑制することができる。すなわち、第1アーム23を保護することができる。
【0065】
特に、第1アーム23の破片が飛散するのを防止または抑制することができるため、本発明のロボットは、食品、医薬品等を容器に充填したり加工を行ったりする作業に適している。また、第1アーム23の破片が生じたとしても、支持板5が飛散防止ストッパーとして機能するため、上記作業にさらに適している。
【0066】
また、規制部材3a、3bの破損を防止または抑制することができるとともに、規制部材3a、3bを固定する図示しない固定部材等の破損を防止または抑制することができる。
【0067】
なお、ピン本体41、ヘッド42の径の大小を適宜設定することにより、第1隙間S1および第2隙間S2の大きさを調整してもよい。
【0068】
前述したように、第2部材である第1アーム23が回転した際のピン4の軌跡Rに沿った第1方向における第1孔部235の内面とピン4との間隙距離をD1とし、第1方向における第2孔部52の内面とピン4との間隙距離をD2としたとき、D2<D1を満たす構成である。このような構成により、第1アーム23等の加工部位、すなわち第1孔部235および第2孔部52の形成部分の面積を最小限にしつつ、必要かつ十分な第1アーム23の保護効果を発揮することができる。よって、上記効果を簡単かつ確実に発揮することができる。
【0069】
前述したように、第2部材である第1アーム23は、空洞部233と、空洞部233を複数の空間に仕切るリブ234と、を有する筐体230を備え、第1孔部235は、リブ234に設けられている。これにより、第1アーム23は、軽量化と十分な強度維持との両立を図りつつ、支持板5を第1アーム23に適正に設置することができる。
【0070】
支持板5は、空洞部233を覆うように、かつリブ234に対し複数の固定部材6により固定されている。これにより、支持板5は、空洞部233を覆う蓋体部材としての機能を併せ持ち、第1アーム23の補強および軽量化、部品点数の削減等に寄与する。また、支持板5を簡単な構成で第1アーム23に強固に固定することができるとともに、固定部材6から支持板5へかかる負荷を分散し、軽減することができる。
【0071】
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態に係るロボットにおいて、
図3中B-B線断面図に相当する断面図である。
【0072】
以下、
図9を参照しつつ本発明のロボットの第2実施形態について説明するが、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0073】
図9に示すように、本実施形態では、第1アーム23における第1孔部235が省略され、第1アーム23には、下面230Bに開放するネジ穴237が形成されている。ネジ穴237の内周は、雌ネジが形成された雌ネジ部となっており、ピン本体41の外周部の雄ネジ部と螺合する。
【0074】
支持板5には、互いに連通する第1孔部53および第2孔部54が形成され、第1孔部53と第2孔部54とで、支持板5を厚さ方向、すなわちZ軸方向に貫通する連続孔が形成される。第1孔部53は、支持板5の上面、すなわちZ軸方向プラス側の面に開放し、第2孔部54は、支持板5の下面、すなわちZ軸方向マイナス側の面に開放している。
【0075】
第1孔部53と第2孔部54とは、X-Y平面での断面形状、すなわち横断面の形状が異なっている。本実施形態では、第1孔部53および第2孔部54の横断面形状は、共に円形であるが、第1孔部53の内径は、第2孔部54の内径より大きい。
【0076】
なお、第1孔部53および第2孔部54の平面視での形状、横断面形状は、それぞれ、円形に限らず、第1孔部53および第2孔部54の少なくとも一方は、円形以外の形状でもよいことは、前記第1実施形態で述べたのと同様である。
【0077】
このような支持板5は、第1孔部53が第1アーム23の下面230B側に臨むような向きで第1アーム23に固定される。支持板5の第1アーム23への固定は、前記と同様の固定部材6を用いて行われ、その固定の構造、方法等は、前記第1実施形態と同様である。
【0078】
支持板5は、ピン本体41が第2孔部54および第1孔部53に挿し通され、かつピン本体41の先端部、すなわちヘッド42と反対側の端部がネジ穴237へ螺合された状態で第1アーム23に固定される。この状態では、ヘッド42は、第2孔部54より下方に位置している。このとき、ヘッド42は、支持板5の下面と接触している。ただし、これに限らず、ヘッド42は、支持板5の下面から所定距離離間していてもよい。
【0079】
また、第1孔部53の内面とピン本体41との間には第1隙間S3が設けられ、第2孔部54の内面とピン本体41との間には、第2隙間S4が設けられている。第1隙間S3の間隙距離をD1とし、第2隙間S4の間隙距離をD2としたとき、D2<D1を満足する。これにより、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、ピン4が規制部材3a、3bと衝突した際、第1アーム23の変形、破損を防止または抑制することができる。すなわち、第1アーム23を保護することができる。
【0080】
D2/D1の値の好ましい範囲およびそれによる効果は、前記第1実施形態で述べたのと同様である。
【0081】
このようなロボット2では、規制部材3a、3bにヘッド42が衝突し、ピン本体41が湾曲変形した場合、第1隙間S3および第2隙間S4は、ピン本体41の変形しろ、すなわち逃げ部として機能する。第1隙間S3および第2隙間S4の存在により、ピン本体41が多少変形しても、第1アーム23と直接接触するのを回避することができる。よって、ピン4の衝突により第1アーム23に過剰な衝撃が加わり、第1アーム23が変形、破損等を生じることを防止または抑制することができる。
【0082】
ピン4の衝突時の衝撃力がより大きく、ピン本体41がより大きく変形してしまった場合、変形したピン本体41は、支持板5に接触して第2孔部54の内面を変形させるが、ピン本体41が第2孔部54の内面に接触した後に第1孔部53の内面に接触し、衝撃力を段階的に変形吸収できるため、ピン本体41の第1アーム23との接触は生じないかまたは生じたとしても軽度であり、第1アーム23への負担が軽減または緩和される。よって、ピン4が規制部材3a、3bと衝突した際に第1アーム23に過剰な衝撃が加わり、第1アーム23が変形、破損等を生じることを防止または抑制することができる。
【0083】
以上説明したように、ロボット2は、第1部材であるベース21と、ベース21に対し回転可能に設けられる第2部材である第1アーム23と、互いに連通し、孔の横断面形状が異なる第1孔部53および第2孔部54を有し、第1アーム23に固定される支持板5と、ベース21に設けられ、第1アーム23のベース21に対する回転角度を規制する規制部材3a、3bと、先端部が第1アーム23に固定されるピン本体41と、ピン本体41の基端部に設けられ、規制部材3a、3bと接触するヘッド42と、を有し、第1孔部53および第2孔部52を通るピン4と、を備える。また、第1孔部53の内面とピン4との間には、第1隙間S3が設けられ、第2孔部54の内面とピン4との間には、第2隙間S4が設けられ、第2孔部52は、ピン本体41に沿って延びる直線と直交する方向から見たときに、第1孔部53の基端部側にある。このように、第1隙間S3および第2隙間S4が設けられ、第2孔部54が第1孔部53よりヘッド42側に位置しているため、ピン4が規制部材3a、3bと接触して多少変形しても、ピン4が第1アーム23と接触するのを回避することができる。さらにピン4が過剰に変形してしまった場合であっても、変形したピン4は支持板5、特に第2孔部54の内面に接触し、第1アーム23へは接触しないかまたは接触しても軽度である。よって、第1アーム23への負担を軽減または緩和することができる。以上より、ピン4が規制部材3a、3bに衝突した場合であっても、第1アーム23の破損をより効果的に防止または抑制することができる。
【0084】
本実施形態においても、
図7および
図8を用いて第1実施形態の変形例として説明したのと同様に、ピン4の円弧状の軌跡Rに沿った方向を第1方向としたとき、第1方向における間隙距離D1と間隙距離D2の大小関係は、D2<D1を満足しているのが好ましく、また、D2/D1の値も上記と同様であるのが好ましい。これにより、上記と同様の効果を発揮することができる。この場合、
図7および
図8に示すのと同様に、第1孔部53および第2孔部54は、第1アーム23の下面230Bの平面視で、円弧状に延在する形状をなす長孔で構成することができる。
【0085】
このような構成により、支持板5の加工部位、すなわち第1孔部53および第2孔部54の形成部分の面積を最小限にしつつ、必要かつ十分な第1アーム23の保護効果を発揮することができる。
【0086】
図9に示すように、第1孔部53と第2孔部54との境界部には、孔径の差による段差55が形成されているが、この段差55は、必ずしも明確でなくてもよく、例えば段差55の角部に面取りやR付けがなされていてもよい。
【0087】
また、第1孔部53と第2孔部54との境界部に段差55が存在しなくてもよい。例えば、第1孔部53の内周面と第2孔部54の内周面とがZ軸方向に段差の無い連続面を形成しており、第1孔部53および第2孔部54の内径がZ軸のプラス方向に向かって漸増または漸減するテーパ状をなす構成、すなわち第1孔部53および第2孔部54の内腔が円錐台形状をなす構成が挙げられる。このような構成によっても、前記と同様の効果が発揮される。
【0088】
以上、本発明のロボットを図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。第1実施形態における構成と、第2実施形骸における構成を任意に組み合わせてもよい。また、本発明では、各実施形態に他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0089】
なお、第1部材をベース21、第2部材を第1アーム23として説明したが、第1部材を第1アーム23、第2部材をベース21に適用してもよく、第1部材を第1アーム23、第2部材を第2アーム24に適用してもよく、第1部材を第2アーム24、第2部材を第1アーム23に適用してもよい。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、ピン4と、第1アーム23とは、螺合により固定される構成であったが、本発明ではこれに限定されず、例えば、嵌入、ろう接、溶接等の方法により固定される構成であってもよい。
【0091】
また、第1方向における間隙距離D1と間隙距離D2の大小関係は、D2<D1を満足している場合について説明したが、D1<D2を満足する構成であってもよく、D2=D1を満足する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…ロボットシステム、2…ロボット、3a…規制部材、3b…規制部材、4…ピン、5…支持板、6…固定部材、9…ロボット制御装置、10…床面、21…ベース、22…ロボットアーム、23…第1アーム、24…第2アーム、25…作業ヘッド、26…エンドエフェクター、27…第1関節アクチュエーター、28…第2関節アクチュエーター、41…ピン本体、42…ヘッド、51…固定孔、52…第2孔部、53…第1孔部、54…第2孔部、55…段差、220…上面、230…筐体、230A…上面、230B…下面、230C…側面、230D…側面、231…設置部、232…設置部、233…空洞部、234…リブ、235…第1孔部、236…固定用孔部、237…ネジ穴、251…スプラインナット、252…ボールネジナット、253…スプラインシャフト、291…第1駆動機構、292…第2駆動機構、501…辺、502…辺、503…辺、504…辺、2341…柱部、2342…壁部、D1…間隙距離、D2…間隙距離、F…反力、J1…第1回動軸、J2…第2回動軸、J3…第3回動軸、R…軌跡、S1…第1隙間、S2…第2隙間、S3…第1隙間、S4…第2隙間