(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071877
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240520BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182360
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】利根川 正明
【テーマコード(参考)】
3H051
3H062
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051BB01
3H051CC11
3H051DD01
3H051EE02
3H051FF08
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB31
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF38
3H062GG04
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
(57)【要約】
【課題】 電動弁の製造コストを低減する。
【解決手段】 電動弁1は、流体通路の中途に弁座24を有するバルブボディ5と、弁体34を弁部の開閉方向に駆動するためのロータ60と、ねじ部材を含み、ロータ60の回転運動を並進運動に変換するねじ送り機構109と、バルブボディ5に溶接され、ロータ60を内包する筒状部材であって、流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャン66と、キャン66に外挿されるステータ64と、を備える。キャン66と溶接されるバルブボディ5の少なくとも一部が、金属材料のプレス成形品である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路が形成され、前記流体通路の中途に弁座を有するバルブボディと、
前記弁座に接離して弁部を開閉する弁体と、
前記弁体を前記弁部の開閉方向に駆動するためのロータと、
ねじ部材を含み、前記ロータの回転運動を並進運動に変換するねじ送り機構と、
前記バルブボディに溶接され、前記ロータを内包する筒状部材であって、流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャンと、
前記キャンに外挿されるステータと、
を備え、
前記キャンと溶接される前記バルブボディの少なくとも一部が、金属材料のプレス成形品であることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記バルブボディは、
前記キャンに固定されるバルブハウジングと、
前記バルブハウジングに固定され、前記弁座が設けられるバルブシート部材と、
を含み、
前記バルブハウジングが前記プレス成形品であることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記バルブハウジングは、前記キャンと同軸状に接続される大径部と、取付対象となる通路ボディの取付孔に挿入される小径部と、を有する段付円筒状をなし、
前記小径部の外周面には、前記取付孔の内周面に設けられた雌ねじ部と螺合可能な雄ねじ部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記バルブシート部材が、前記小径部を貫通して前記ねじ部材に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項5】
前記ねじ部材が樹脂材のインサート成形により前記バルブハウジングと一体化されたものであることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動弁。
【請求項6】
流体通路を有し、弁部を内包するボディと、
前記弁部を開閉する弁体と、
前記弁体を前記弁部の開閉方向に駆動するためのロータと、
ねじ部材を含み、前記ロータの回転運動を並進運動に変換するねじ送り機構と、
前記ボディに対して固定され、前記ロータを内包する筒状部材であって、流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャンと、
前記キャンに溶接され、前記キャンと前記ボディとの間に配設される中間部材と、
前記キャンに外挿されるステータと、
を備え、
前記中間部材が、金属材料のプレス成形品であることを特徴とする電動弁。
【請求項7】
前記ボディは、前記流体通路と連通する取付孔を有し、
前記取付孔の内周面に雌ねじ部が設けられ、
前記中間部材は、前記キャンと同軸状に接続される大径部と、前記取付孔に挿入される小径部とを有する段付円筒状をなし、
前記小径部の外周面に前記雌ねじ部と螺合可能な雄ねじ部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の電動弁。
【請求項8】
前記中間部材の半径方向内側に前記ねじ部材が配設されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の電動弁。
【請求項9】
前記ねじ部材と前記中間部材との間に介装されて両者を固定する支持部材を備え、
前記支持部材が金属材料のプレス成形品であることを特徴とする請求項6又は7に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動弁に関し、特に電動弁のコスト低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器等を冷凍サイクルに配置して構成される。冷凍サイクルには、膨張装置としての膨張弁など、冷媒の流れを制御するために各種制御弁が設けられている。近年の電気自動車等の普及に伴い、駆動部としてモータを備える電動弁が広く採用されつつある。
【0003】
電動弁は、弁部を内包するボディとモータユニットとを組み付けて構成される(特許文献1,2参照)。モータユニットは、ロータを内包しつつ流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャンを有する。キャンは、ロータとステータとの間に介装されるため、非磁性である必要がある。一般には気密性を確保する観点からキャンとボディとを溶接により固定するため、両者を同種の金属材料(ステンレス)で構成することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-93843号公報
【特許文献2】特開2020-67122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電動弁では一般に、ステンレスの丸棒材を切削加工してボディを得る。しかしながら、ステンレスは粘度が大きいために切削精度が出し難く、また切屑がつながりやすいために遂次その除去作業が必要になるなど、一般に難削材と認識されている。このため、複雑な形状のボディを切り出す場合、歩留まりが悪いだけでなく加工時間が長くなり、結果的に製造コストが高くなる。
【0006】
本発明の目的の一つは、電動弁の製造コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の電動弁は、流体通路が形成され、流体通路の中途に弁座を有するバルブボディと、弁座に接離して弁部を開閉する弁体と、弁体を弁部の開閉方向に駆動するためのロータと、ねじ部材を含み、ロータの回転運動を並進運動に変換するねじ送り機構と、バルブボディに溶接され、ロータを内包する筒状部材であって、流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャンと、キャンに外挿されるステータと、を備える。キャンと溶接されるバルブボディの少なくとも一部が、金属材料のプレス成形品である。
【0008】
この態様によると、バルブボディの少なくとも一部がプレス成形により得られ、そのプレス成形品がキャンに溶接される。そのプレス成形品については、素材にキャンと同種の難削材を採用したとしても、その加工に長時間を要することもない。その結果、電動弁の製造コスト低減を図ることができる。
【0009】
本発明の別の態様の電動弁は、流体通路を有し、弁部を内包するボディと、弁部を開閉する弁体と、弁体を弁部の開閉方向に駆動するためのロータと、ねじ部材を含み、ロータの回転運動を並進運動に変換するねじ送り機構と、ボディに対して固定され、ロータを内包する筒状部材であって、流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャンと、キャンに溶接され、キャンとボディとの間に配設される中間部材と、キャンに外挿されるステータと、を備える。中間部材が、金属材料のプレス成形品である。
【0010】
この態様によると、キャンとボディとが中間部材を介して組み付けられ、その中間部品がキャンに溶接される。このため、キャンとボディとを同種の素材で構成する必要がない。ボディの素材としてキャンよりも切削容易性の高いものを選定できる。中間部材がプレス成形品であるため、素材にキャンと同種の難削材を採用したとしても、その加工に長時間を要することもない。その結果、電動弁の製造コスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動弁の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る電動弁の構造を表す断面図である。
【
図3】変形例1に係る電動弁の構成を表す断面図である。
【
図4】変形例2に係る電動弁の構成を表す断面図である。
【
図5】変形例3に係る電動弁の構成を表す断面図である。
【
図6】変形例4に係る電動弁の構成を表す断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る電動弁の構成を表す断面図である。
【
図9】変形例5に係る電動弁の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る電動弁の構造を表す断面図である。
電動弁1は、図示しない自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された冷媒を絞り膨張させて霧状に送出する膨張弁、霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器等が設けられている。電動弁1は、その膨張弁として機能する。
【0015】
電動弁1は、バルブユニット100と通路ボディ200とを組み付けて構成される。バルブユニット100は、ロータユニット90とステータユニット92とを含む。ロータユニット90とステータユニット92のそれぞれが、通路ボディ200に固定される。ステータユニット92は、接続部材101を介して通路ボディ200に固定される。接続部材101は、ステータユニット92に固着される金属プレートと、その金属プレートを通路ボディ200に固定するためのねじを含む。
【0016】
通路ボディ200は、例えばアルミニウム合金などの金属からなり、概略角柱形状をなしている。通路ボディ200の側部には、導入ポート202、導出ポート204、導入ポート206および導出ポート208が設けられている。導入ポート202には凝縮器側から延びる配管が接続され、導出ポート204には蒸発器の入口につながる配管が接続される。導入ポート206には蒸発器の出口につながる配管が接続され、導出ポート208には圧縮機側へ延びる配管が接続される。
【0017】
通路ボディ200には、導入ポート202と導出ポート204とをつなぐ第1通路210と、導入ポート206と導出ポート208とをつなぐ第2通路212が形成されている。第1通路210および第2通路212は「流体通路」として機能する。第1通路210と第2通路212は、隔壁214により上下に離隔されている。通路ボディ200の上部には、取付孔216が上方に向けて開口している。取付孔216は、第1通路210と連通している。取付孔216の開口端近傍には、雌ねじ部218が形成されている。
【0018】
バルブユニット100は、弁部を内包するバルブボディ5を有する。バルブボディ5の下端部にはバルブシート部材8が設けられ、バルブシート部材8の外周面にシールリング20(Oリング)が取り付けられている。バルブボディ5の外周面には、雌ねじ部218と螺合可能な雄ねじ部10が形成されている。バルブユニット100を通路ボディ200に組み付ける際には、バルブボディ5を取付孔216に挿入する。雄ねじ部10と雌ねじ部218とを螺合させ、バルブボディ5を通路ボディ200に締結させる。
【0019】
通路ボディ200の上面には、取付孔216をとり囲むように環状のシール収容部222(環状溝)が設けられており、シールリング220(Oリング)が嵌着されている。また、通路ボディ200の上面には、シール収容部222をとり囲むように環状の段差224が設けられており、その段差224の内側に環状のパッキン226が配設されている。バルブボディ5を通路ボディ200に締結させたとき、通路ボディ200の上面とバルブボディ5との間にシールリング220が介装される。通路ボディ200の上面とステータユニット92との間にパッキン226が介装される。
【0020】
シールリング220は、通路ボディ200の内部から外部への冷媒の漏れを規制する。パッキン226は、外部雰囲気からバルブユニット100の内方への水分等の侵入を防止する。シールリング20は、弁部の上流側通路230と下流側通路232との間をシールする。
【0021】
図2は、バルブユニット100の構造を表す断面図である。
バルブユニット100は、ロータユニット90とステータユニット92とを同軸状に組み付けて構成される。ロータユニット90とステータユニット92とは直接的には固定されておらず、それぞれが通路ボディ200に固定されることで間接的に固定される(
図1参照)。
【0022】
ロータユニット90がバルブボディ5を有する。バルブボディ5は、バルブハウジング6およびバルブシート部材8を含む。バルブハウジング6は、大径部7と小径部9を一体に有し、外径が下方に向けて小さくなる段付円筒状をなす。小径部9の上部がやや拡径され、その外周面に雄ねじ部10が形成されている。小径部9の下部側面に入口ポート26が設けられている。
【0023】
バルブハウジング6は、ステンレス鋼(以下「SUS」と表記する)を素材としたプレス成形品であり、その素材をプレス加工した後に雄ねじ部10が切削加工により形成されている。入口ポート26についてもそのプレス加工により成形されている。なお、変形例においては雄ねじ部10を転造その他の方法によって加工してもよい。また、入口ポート26を切削加工により成形してもよい。
図1にも示したように、小径部9の取付孔216への螺入により大径部7が通路ボディ200に軸線方向に当接することにより、バルブボディ5の取付孔216への挿入量が規制される。
【0024】
バルブハウジング6の下端開口部にバルブシート部材8が同軸状に組み付けられている。バルブシート部材8は段付円筒状をなし、バルブシート部材8の下部外周面には環状溝からなるシール収容部18が形成され、シールリング20が嵌着されている。バルブシート部材8の上部がバルブハウジング6の下端部に圧入されることで、バルブシート部材8がバルブボディ5に固定されている。その固定力を高めるために、バルブハウジング6の下端開口部を内方に加締めるなどしてもよい。
【0025】
バルブシート部材8の上部の内径が縮径されて弁孔22が形成され、弁孔22の上端開口部に弁座24が形成されている。バルブシート部材8は本実施形態ではSUSからなるが、真鍮などの耐摩耗性に優れた材料を選定してもよい。すなわち、バルブハウジング6の材料としてバルブシート部材8よりも溶接性に優れたものを採用し、バルブシート部材8の材料としてバルブボディ5よりも切削加工性に優れたものを採用してもよい。
【0026】
バルブシート部材8の下部に出口ポート28が設けられている。入口ポート26が導入ポート202に連通し、出口ポート28が導出ポート204に連通する(
図1参照)。バルブボディ5の内方には、入口ポート26と出口ポート28とを連通させる内部通路が形成されている。バルブハウジング6の内方に弁室30が形成されている。入口ポート26と出口ポート28とは、弁室30を介して連通している。
【0027】
バルブボディ5の内方には、ロータユニット90のロータ60から延びる作動ロッド32が挿通されている。作動ロッド32は、弁室30を貫通する。作動ロッド32は、非磁性金属からなる棒材を切削加工して得られ、その下部にニードル状の弁体34が一体に設けられている。弁体34が弁室30側から弁座24に着脱して弁部を開閉する。
【0028】
バルブハウジング6の大径部7の内方に連結部材12を介してガイド部材36が立設されている。連結部材12は、バルブハウジング6よりも単純形状(内外径の変化が小さい形状)である円筒状をなし、本実施形態では真鍮からなる。連結部材12は、管材を切削加工して得られ、その下端部に半径方向内向きに突出するフランジ部14を有し、上端部に半径方向外向きに突出するフランジ部16を有する。
【0029】
連結部材12は、バルブハウジング6の大径部7に同軸状に圧入され固定されている。フランジ部16の下面が大径部7の上面に係止されることで、連結部材12の大径部7への挿入量が規制される。
【0030】
ガイド部材36は、非磁性金属(本実施形態では真鍮)からなる管材を段付円筒状に切削加工して得られ、その軸線方向中央部の外周面に雄ねじ38が形成されている。ガイド部材36は「ねじ部材」として機能する。ガイド部材36の下端部が大径となっており、その大径部40が連結部材12に圧入され固定されている。フランジ部14が大径部40の底部を係止することにより、その圧入量が規制される。その固定力を高めるために、連結部材12の上端開口部を内方に加締めるなどしてもよい。
【0031】
ガイド部材36は、その内周面により作動ロッド32を軸線方向に摺動可能に支持する一方、その外周面によりロータ60の回転軸62を回転摺動可能に支持する。回転軸62は非磁性金属からなる。
【0032】
ロータユニット90のロータ60と、ステータユニット92のステータ64とは、二相ステッピングモータを構成する。ロータユニット90は、有底円筒状のキャン66を有し、そのキャン66の内方にロータ60を配置する。キャン66の外方にステータ64が配置されている。キャン66は、弁体34およびその駆動機構が配置される空間を覆うとともにロータ60を内包する有底円筒状の部材であり、冷媒の圧力が作用する内方の圧力空間(内部空間)と作用しない外方の非圧力空間(外部空間)とを画定する。
【0033】
キャン66は、非磁性金属(例えばSUS)からなり、その下端部が連結部材12のフランジ部16に外挿され、下端面がバルブハウジング6の上端面と当接する。そして、キャン66とバルブハウジング6との境界に沿って溶接(全周溶接)が施されることにより(図示略)、バルブボディ5とキャン66とが固定され、両者の間の気密性(シール)が確保されている。バルブボディ5とキャン66とに囲まれた空間が、上記圧力空間を形成している。
【0034】
ステータ64は、コイル68が巻回されたボビン70を、複数の極歯を有するヨーク72に組み付けて構成される。ステータ64は、ケース76に内包されている。ケース76は、耐食性を有する樹脂材の射出成形(「インサート成形」又は「モールド成形」ともいう)により得られる。ステータ64は、その射出成形によるモールド樹脂によって被覆されている。ケース76は、そのモールド樹脂からなる。ステータユニット92は、ステータ64とケース76との一体部品(本実施形態ではモールド成形品)である。ステータユニット92は、中空構造を有し、ステータ64がキャン66を同軸状に挿通しつつロータユニット90に組み付けられている。キャン66とバルブボディ5との溶接部は、ケース76の内方に位置する。
【0035】
ロータ60は、回転軸62に組み付けられた円筒状のロータコア102と、ロータコア102の外周面に設けられたロータマグネット104と、ロータコア102の上端面に設けられたセンサマグネット106を備える。センサマグネット106は円環状をなし、ロータコア102に同軸状に組み付けられている。ロータマグネット104は、その周方向に複数極に磁化(着磁)されている。センサマグネット106も複数極に磁化(着磁)されている。
【0036】
回転軸62は、有底円筒状の円筒軸であり、その開口端を下にしてガイド部材36に外挿されている。回転軸62の下部内周面に雌ねじ108が形成され、ガイド部材36の雄ねじ38と噛合している。これらのねじ部によるねじ送り機構109によって、ロータ60の回転運動が作動ロッド32の軸線運動に変換される。それにより弁体34が軸線方向、つまり弁部の開閉方向に移動(昇降)する。
【0037】
作動ロッド32の上部が縮径され、その縮径部110が回転軸62の底部112を貫通している。縮径部110の先端部には環状のストッパ114が固定されている。一方、縮径部110の基端と底部112との間には、作動ロッド32を下方(つまり閉弁方向)に付勢するスプリング116が介装されている。このような構成により、開弁時には、ストッパ114が底部112に係止される態様で作動ロッド32がロータ60と一体変位する。一方、閉弁時には、弁体34が弁座24から受ける反力によりスプリング116が押し縮められる。このときのスプリング116の弾性反力により弁体34を弁座24に押し付けることができ、弁体34の着座性能(弁閉性能)を高められる。
【0038】
ステータユニット92は、キャン66の外側に回路基板118を有する。回路基板118は、ケース76の内方に固定されている。回路基板118の下面に制御部や通信部として機能する各種回路が実装されている。具体的には、モータを駆動するための駆動回路、駆動回路に制御信号を出力する制御回路(マイクロコンピュータ)、制御回路が外部装置と通信するための通信回路、各回路およびモータ(コイル)に電力を供給するための電源回路等が実装されている。ケース76の上端は、樹脂製の蓋体77により閉止されている。ケース76における蓋体77の下方の空間に回路基板118が配設されている。
【0039】
回路基板118におけるセンサマグネット106との対向面には、磁気センサ119が設けられている。磁気センサ119は、キャン66の底部端壁を介してセンサマグネット106と軸線方向に対向する。ロータ60の回転に伴ってセンサマグネット106による磁束が変化する。磁気センサ119は、この磁束の変化を捉えることでロータ60の変位量(本実施形態ではロータ60の回転角度)を検出する。制御部は、そのロータ60の変位量に基づいて弁体34の軸線方向位置ひいては弁開度を算出する。
【0040】
ボビン70からはコイル68につながる端子120が延出し、回路基板118に接続されている。回路基板118からは電源端子、グランド端子および通信端子(これらを総称して「接続端子122」ともいう)が延出し、それぞれケース76の側壁を貫通して外部に引き出されている。ケース76の側部にコネクタ部124が一体に設けられ、そのコネクタ部124の内方に接続端子122が配置されている。
【0041】
図1に戻り、電動弁1の組立に際しては、通路ボディ200、ロータユニット90およびステータユニット92のそれぞれを個別に作製する。そして、ロータユニット90とステータユニット92のそれぞれを通路ボディ200に固定する。
【0042】
まず通路ボディ200のシール収容部222にシールリング220を嵌着する。ロータユニット90にはシールリング20を嵌着しておく。続いて、ロータユニット90をバルブボディ5の先端側から取付孔216に挿入する。このとき、雄ねじ部10を雌ねじ部218に螺合させ、ロータユニット90を回転させながら通路ボディ200に組み付ける。
【0043】
ロータユニット90を通路ボディ200に締結することで、シールリング220が適度に押し潰され、シール機能が有効に発揮されるようになる。また、シールリング20によるシール機能も有効に発揮される。そして、ステータユニット92をキャン66に同軸状に外挿させつつロータユニット90に組み付ける。なお、この組み付けに先立ち、ステータユニット92のケース76には接続部材101の金属プレートが溶着等により固定される。
【0044】
図示略のねじによりその金属プレートを通路ボディ200に締結することで、ステータユニット92が通路ボディ200に固定される。その結果、ロータユニット90とステータユニット92も間接的に固定される。
【0045】
以上のように構成された電動弁1は、ロータユニット90の駆動制御によってその弁開度を調整可能な電動膨張弁として機能する。すなわち、図示しない外部装置からの指令に基づき、制御部は、目標開度を実現するための制御量(モータの駆動ステップ数)を設定し、これを実現するための駆動信号を駆動回路に出力する。駆動回路は、各コイル68に設定されたタイミングで二相の駆動電流(駆動パルス)を供給する。それにより、ロータ60が高分解能にて回転する。このとき、弁体34が弁座24から離間した開弁状態であれば、スプリング116の付勢力によりストッパ114が回転軸62に当接し、作動ロッド32ひいては弁体34が、ロータ60と一体に動作する。
【0046】
ロータ60は、ガイド部材36との間のねじ送り機構109により上下方向に動作する。弁体34が弁部の開閉方向に並進し、弁部の開度が設定開度に調整される。ねじ送り機構109は、ロータ60の軸線周りの回転運動を作動ロッド32の軸線運動(直進運動)に変換し、弁体34を弁部の開閉方向に駆動する。電動弁1が膨張弁として機能するとき、弁部は小開度に制御される。制御部は、磁気センサ119の検出信号に基づいてセンサマグネット106の回転角度(ロータ60の回転角度)を検出し、弁開度を算出できる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、バルブボディ5の一部であるバルブハウジング6がプレス成形により得られるため、切削加工品と比べて材料の無駄が少ない。バルブハウジング6の素材としてキャン66と同種の難削材(例えばSUS)を採用しても、その加工に長時間を要することもない。一方、体積が大きい通路ボディ200の素材としては、バルブハウジング6よりも切削性に優れるアルミニウム合金(高精度な切削が相対的に短時間で行える材料)を採用した。本実施形態によれば、難削材の切削量を少なく抑えることができる。その結果、電動弁1の製造コスト低減を図ることができる。
【0048】
[変形例]
図3は、変形例1に係る電動弁の構成を表す断面図である。
本変形例の電動弁は、バルブボディおよびその周辺の構造が第1実施形態と異なる。バルブユニット150は、ロータユニット190およびステータユニット92を備える。ロータユニット190は、キャン66と同軸状に組み付けられるバルブボディ155を有する。バルブボディ155は、バルブハウジング156およびバルブシート部材158を有する。バルブハウジング156は、キャン66と同種の金属(本変形例ではSUS)からなる。バルブシート部材158は、本変形例ではSUSからなるが、真鍮でもよい。
【0049】
バルブハウジング156は、大径部157および小径部159を有し、外径が下方に向けて小さくなる段付円筒状をなす。バルブハウジング156は、プレス成形により得られる。大径部157の上端部がキャン66の下端部に挿通される。大径部157の上端面に周縁に沿った段差が設けられ、キャン66の下端部がその段差に嵌合することで、キャン66とバルブハウジング156との同軸度が確保されている。キャン66とバルブハウジング156とは、両者の接合部に沿った全周溶接により固定されている。小径部159の外周面に雄ねじ部10が形成されている。
【0050】
一方、バルブシート部材158は有底円筒状をなし、管材の切削加工により得られる。バルブシート部材158の底部を軸線に沿って貫通するように弁孔22が形成されている。バルブシート部材158の下端部外周面にシール収容部18が形成され、シールリング20が嵌着されている。バルブシート部材158の上部がガイド部材136(ねじ部材)の下部に圧入により固定されている。その固定力を高めるために、バルブシート部材158の上端開口部を内方に加締めるなどしてもよい。バルブシート部材158の下部側面に入口ポート26が設けられている。
【0051】
本変形例においてもバルブボディ155の一部、つまりバルブハウジング156がプレス成形品であるため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施形態では、バルブシート部材158を切削加工により得たが、プレス成形により得てもよい。
【0052】
なお、他の変形例においては、変形例1のバルブシート部材158を、円筒部材とバルブシート部材とに上下に分割してもよい。その円筒部材をプレス成形品としてもよい。具体的には、バルブハウジング156を第1バルブボディ、円筒部材を第2バルブボディとし、両者を圧入等により同軸状に固定して「バルブボディ」を構成してもよい。その場合、円筒部材の下部側面に入口ポート26が設けられ、円筒部材の上端部がガイド部材136に固定される。そして上記実施形態と同様に、円筒部材の下端開口部にバルブシート部材8を圧入し固定してもよい。その固定力を高めるために、円筒部材の下端開口部を内方に加締めるなどしてもよい。
【0053】
図4は、変形例2に係る電動弁の構成を表す断面図である。
本変形例の電動弁は、バルブボディとガイド部材との組付け構造が第1実施形態と異なる。バルブユニット160は、ロータユニット192およびステータユニット92を備える。キャン66とバルブハウジング6とが全周溶接により同軸状に固定され、シール性が確保されている。
【0054】
ロータユニット192のガイド部材166(ねじ部材)は、第1実施形態のガイド部材36よりも軸線方向に大きい。ガイド部材166の大径部40が、バルブハウジング6の小径部9に同軸状に圧入されている。
【0055】
本変形例においてもバルブハウジング6がプレス成形品であるため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。ガイド部材166がバルブハウジング6に直接固定されるため、上記実施形態の連結部材12を要しない。このため、部品点数を削減できる。
【0056】
図5は、変形例3に係る電動弁の構成を表す断面図である。
本変形例の電動弁は、バルブボディとガイド部材との組付け構造が変形例2と異なる。バルブユニット170は、ロータユニット193およびステータユニット92を備える。ガイド部材176(ねじ部材)が樹脂材のインサート成形によりバルブハウジング6と一体化されている。ガイド部材176の大径部40がバルブハウジング6の小径部9と一体化される。
【0057】
本変形例においても上記実施形態と同様の効果を得ることができ、また変形例2と同様に部品点数を削減できる。
【0058】
図6は、変形例4に係る電動弁の構成を表す断面図である。
本変形例の電動弁は、モータユニット182とボディ280とを中間部材185を介して組み付けて構成される。モータユニット182は、バルブボディとバルブシート部材を有しない点を除き、変形例2のバルブユニット160(
図4参照)とほぼ同様の構成を有する。ボディ280は、第1実施形態の通路ボディ200(
図1参照)とほぼ同様の構成を有する。ボディ280における第1通路210の中途に弁孔22および弁座24が設けられている。
【0059】
モータユニット182は、ロータユニット194およびステータユニット92を備える。中間部材185は、キャン66と同種の金属(本変形例ではSUS)からなる。中間部材185は、第1実施形態のバルブハウジング6と類似して大径部7および小径部189を有するが、入口ポート26を有しておらず、軸線方向に小さい。小径部189の外周面に雄ねじ部10が形成され、大径部7の上端部がキャン66の下端部に組み付けられ、全周溶接により固定されている。
【0060】
ガイド部材186(ねじ部材)の大径部40が小径部189に圧入され、ガイド部材186と中間部材185とが同軸状に固定されている。小径部189の下端部に半径方向内向きに突出するフランジ部187が設けられ、そのフランジ部187によりガイド部材186の底部が係止されている。作動ロッド32が取付孔216の奥方に延出し、弁座24に着脱して弁部を開閉する。
【0061】
本変形例では、キャン66とボディ280とが中間部材185を介して組み付けられるため、両者を同種の素材で構成する必要がない。このため、ボディ280の素材としてキャン66よりも切削容易性の高いもの(アルミニウム合金など)を選定できる。一方、中間部材185がプレス成形により得られるものであるため、切削加工品と比べて材料の無駄が少ない。また、中間部材185の素材にキャン66と同種の難削材を採用したとしても、その加工に長時間を要することもない。その結果、電動弁の製造コスト低減を図ることができる。
【0062】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態に係る電動弁の構成を表す断面図である。
図8は、
図7のA部拡大図である。
図7に示すように、電動弁201は、大口径の第1弁250と小口径の第2弁252とを備え、これらの弁を共用のモータユニット254により開閉駆動する点で第1実施形態と異なる。電動弁201は、第1弁250を開閉させることで開閉弁として機能する一方、第2弁252の開度を調整することにより膨張弁として機能する。
【0063】
電動弁201は、モータユニット254とボディ260とを中間部材285を介して組み付けて構成される。モータユニット254は、ロータユニット290およびステータユニット92を含む。ロータユニット290は、ガイド部材236(ねじ部材)による弁体の支持構造が第1実施形態と異なる。
【0064】
中間部材285は、キャン66と同種の金属(本実施形態ではSUS)からなり、プレス成形品である。中間部材285は、大径部207および小径部209を有する段付円筒状をなす。大径部207の上端部がキャン66の下端部に挿通され、全周溶接により同軸状に固定されている。小径部209が取付孔216に挿通され、取付孔216の内周面と小径部209の外周面との間にシールリング220(Oリング)が介装されている。
【0065】
ボディ260における流体通路211の中途に環状の弁座形成部材262が圧入されている。弁座形成部材262の内方には、取付孔216と同軸状の弁孔264(第1弁孔)が形成される。弁孔264の下流側開口部に弁座266(第1弁座)が形成される。
【0066】
ガイド部材236は、樹脂の射出成形により得た樹脂成形部品である。ガイド部材236の下部が拡径され、取付孔216の下部に圧入されている。それにより、ガイド部材236がボディ260に固定される。ガイド部材236の下部内周面によりガイド孔268が形成されている。取付孔216の内周面とガイド部材236の外周面との間に形成される環状の空間に、中間部材285の小径部209が挿入されている。中間部材285とガイド部材236との間には所定のクリアランスが設けられている。
【0067】
図8にも示すように、ガイド部材236の内方に弁体270(第1弁体)が配設されている。弁体270は、有底円筒状をなし、ガイド孔268に摺動可能に支持される。弁体270が弁座266に下流側から着脱することにより第1弁250を開閉する。一方、弁体270の内部通路の中間に弁孔22(第2弁孔)が形成されている。弁孔22の上流側開口部に弁座24(第2弁座)が形成されている。
【0068】
弁体270は、底部が十分な厚みを有する有底円筒状をなしている。弁体270の上方には背圧室274が形成されている。背圧室274は、ガイド部材236と弁体270とに囲まれる空間である。弁体270の内方(底部の上方)に弁室276が形成されている。弁体270の上部には、円板状の作動連結部材278が固定されている。作動連結部材278は、その中央に挿通孔287を有する。作動ロッド32がその挿通孔287を同軸状に貫通している。挿通孔287が弁室276と背圧室274とを連通させる。
【0069】
作動ロッド32における弁体34のやや上方に、半径方向に突出した係止部284が設けられている。係止部284は、例えばEリングからなる。ガイド部材236と作動連結部材278の底部との間にスプリング282(付勢部材)が介装されている。スプリング282の付勢力は、作動連結部材278を介して弁体270に伝達される。また、弁体34の開弁作動により係止部284が弁体270に対して相対変位し、作動連結部材278の底面に当接してこれを押し上げることにより、弁体270を開弁方向に作動させることができる。
【0070】
弁体270の底部を軸線と平行に貫通する複数の連通孔288(小孔)が設けられている。これらの連通孔288の下端開口部が入口ポート26となっている。連通孔288は、弁孔264における弁座266よりも上流側と弁室276とを連通させる。連通孔288、弁室276および挿通孔287が、弁座266の上流側と背圧室274とを連通させる「連通路」を構成する。また、弁体270の底部には、軸線と直角方向に延びる連通穴292が設けられ、弁孔22と連通している。連通穴292は、下流側通路232に向けて開口する出口ポート28を有する。弁体270の上部にはシールリング272(Oリング)が嵌着され、弁体270とガイド部材236との間隙を介した冷媒の流通が規制されている。
【0071】
以上のように構成された電動弁201は、以下のように動作する。モータユニット254の開弁作動により作動ロッド32を上方へ作動させると、弁体34が弁座24から離脱する。それにより、連通孔288、弁室276、弁孔22および連通穴292が連通する。上流側からの冷媒は、弁体270の内部通路を流れ、第2弁252を経由して下流側へ導出される。このとき、第2弁252を所定開度に調整することで膨張弁として機能させることができる。
【0072】
さらに作動ロッド32を開弁方向へ作動させると、係止部284が作動連結部材278に係合し、作動ロッド32と弁体270とが作動連結する。そして、作動ロッド32がスプリング282の付勢力に抗して弁体270を引き上げる。それにより、弁体270が弁座266から離脱し、第1弁250が開弁する。冷媒は、第1弁250および第2弁252の双方を経由して下流側へ流れる。このとき、大流量の冷媒を流すこともできるが、その流量は第1弁250の開度により調整できる。
【0073】
モータユニット254を閉弁作動させると、上記とは逆に、作動ロッド32が下方へ作動する。このとき、弁体270は、スプリング282の付勢力により作動ロッド32との作動連結が維持されたまま閉弁方向へ作動する。そしてまず、弁体270が弁座266に着座し、第1弁250が閉弁状態となる。さらに作動ロッド32を閉弁方向へ作動させると、係止部284が作動連結部材278から離脱し、作動ロッド32と弁体270との作動連結は解除される。その後、弁体34が弁座24に着座し、第2弁252が閉弁状態となる。
【0074】
本実施形態においても中間部材285がプレス成形により得られるため、第1実施形態(変形例4等)と同様の効果を得ることができる。
【0075】
[変形例]
図9は、変形例5に係る電動弁の構成を表す断面図である。
本変形例の電動弁は、ガイド部材の支持構造が第2実施形態と異なる。モータユニット255は、中間部材285に固定される支持部材294を有する。支持部材294はプレス成形品であり、ガイド部材237(ねじ部材)を下方から支持する。支持部材294は、大径部295および小径部296を上下に有する段付円筒状をなす。ガイド部材237は、金属材料の切削加工品であってもよいし、樹脂成形品であってもよい。
【0076】
大径部295が中間部材285の大径部207に圧入され、その境界部に沿って溶接されることでしっかりと固定されている。ガイド部材237の大径部40が、支持部材294の小径部296に圧入され固定されている。小径部296の下端開口部から下方に向けて円ボス状の遮蔽壁297が突出されている。遮蔽壁297は、弁室276からキャン66内への異物の侵入を抑制する。
【0077】
第2実施形態と同様、キャン66と中間部材285とは、接合部における全周溶接により同軸状に固定されている。本変形例では、中間部材285に対して支持部材294とキャン66とがそれぞれ溶接されるため、これらの部材は同種の金属(例えばSUS)により構成されている。
【0078】
本変形例においては、中間部材285に加えて支持部材294もプレス成形により得られ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0080】
[他の変形例]
上記実施形態では、ガイド部材(ねじ部材)がバルブボディと同軸状に設けられ、作動ロッドを摺動可能に支持する構成を例示した。また、ロータの内方においてガイド部材の外周面に雄ねじが設けられ、ロータの内周面に設けられた雌ねじとともにねじ送り機構を構成する例を示した。
【0081】
変形例においては、筒状のねじ部材の内周面に雌ねじを設ける一方、ロータの回転軸の外周面に雄ねじを設け、これらのねじによりねじ送り機構を構成してもよい。あるいは、ねじ送り機構をロータの外側に配設してもよい。いずれの構成においても、キャンと溶接されるバルブボディの少なくとも一部をプレス成形品としてもよい。また、キャンと溶接される中間部品をプレス成形品としてもよい。ねじ部材は、バルブボディ又は中間部材に対して固定されてもよい。
【0082】
上記実施形態では、ロータとガイド部材(ねじ部材)とがねじ送り機構により直接的に螺合する構造を例示した。変形例においては、ロータが減速機構を有し、ロータの回転を減速してねじ部材ひいては弁体に伝達できる構成としてもよい。減速機構は遊星歯車機構であってもよい。
【0083】
上記実施形態では、通路ボディ200の材料としてアルミニウム合金を採用する例を示したが、バルブハウジング6よりも被削性指数が大きい材料であればよい。「被削性指数」とは、金属材料の切削加工性のし易さ又はし難さを表す指標であり、具体的には硫黄快削鋼(AISI‐B1112)に対する材質の切削加工性のしやすさを示す値をいう(例えば特開2005-335091号公報参照)。被削性指数の大きい材質ほど切削し易い。相対的に被削性指数が大きい材料(つまり切削性に優れる材料)を採用することで、切削速度(工具の送り速度)を大きくしても加工精度を維持できる。すなわち、大きな部品についてトータルの切削時間を短縮でき、加工コストを低減できる。
【0084】
上記実施形態では、ロータユニット90およびステータユニット92のそれぞれを通路ボディ200に組み付けることで、両者を間接的に固定する構成を例示した。変形例においては、ロータユニットをステータユニットに直接固定してバルブユニットとし、そのバルブユニットを通路ボディに組み付けてもよい。ロータユニットとステータユニットとを接続部材を介するなどして固定してもよい。その場合、バルブユニットを「電動弁」として捉えてもよい。通路ボディは、電動弁が取り付けられる対象装置のボディ又はハウジングであってもよい。
【0085】
上記実施形態では、電動弁1として、弁体34が弁座24に着脱して弁部を開閉する構成を例示した。変形例においては、弁体が弁孔に挿抜されて弁部を開閉するスプール弁としてもよい。弁体は、弁孔に接離して弁部を開閉し、また弁部の開度を調整するものでよい。ここで、「接離」とは接近又は離間することを意味し、弁座に着脱する場合と弁孔に挿抜される場合の双方を含む。スプール弁とする場合、閉弁状態においても流体の漏洩を許容する所定のクリアランスが形成されるものでもよい。
【0086】
上記実施形態では、極歯を有するヨークを含むステータとした。変形例においては、積層コアを含むステータなどでもよい。
【0087】
上記実施形態では、ステータユニット92を二相ステッピングモータとしたが、三相ステッピングモータとして構成してもよい。
【0088】
上記実施形態では、上記電動弁を膨張弁として構成したが、膨張機能を有しない開閉弁として構成してもよい。
【0089】
上記実施形態の電動弁は、冷媒として代替フロン(HFC-134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルにコンデンサに代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。
【0090】
上記実施形態では、上記電動弁を自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用する例を示したが、車両用に限らず電動膨張弁を搭載する空調装置に適用可能である。また、給湯装置の湯水や油圧制御装置の作動液(作動油)など冷媒以外の流体の流れを制御する電動弁として構成してもよい。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 電動弁、5 バルブボディ、6 バルブハウジング、7 大径部、8 バルブシート部材、9 小径部、10 雄ねじ部、12 連結部材、20 シールリング、22 弁孔、24 弁座、26 入口ポート、28 出口ポート、30 弁室、32 作動ロッド、34 弁体、36 ガイド部材、38 雄ねじ、60 ロータ、62 回転軸、64 ステータ、66 キャン、68 コイル、76 ケース、90 ロータユニット、92 ステータユニット、100 バルブユニット、101 接続部材、104 ロータマグネット、106 センサマグネット、108 雌ねじ、109 ねじ送り機構、116 スプリング、119 磁気センサ、124 コネクタ部、136 ガイド部材、150 バルブユニット、155 バルブボディ、156 バルブハウジング、157 大径部、158 バルブシート部材、159 小径部、160 バルブユニット、166 ガイド部材、170 バルブユニット、176 ガイド部材、182 モータユニット、185 中間部材、186 ガイド部材、187 フランジ部、189 小径部、190 ロータユニット、192 ロータユニット、193 ロータユニット、194 ロータユニット、200 通路ボディ、201 電動弁、202 導入ポート、204 導出ポート、206 導入ポート、207 大径部、208 導出ポート、209 小径部、210 第1通路、210 流体通路、212 第2通路、216 取付孔、218 雌ねじ部、230 上流側通路、232 下流側通路、236 ガイド部材、237 ガイド部材、250 第1弁、252 第2弁、254 モータユニット、260 ボディ、262 弁座形成部材、264 弁孔、266 弁座、268 ガイド孔、270 弁体、274 背圧室、276 弁室、278 作動連結部材、280 ボディ、282 スプリング、284 係止部、285 中間部材、287 挿通孔、288 連通孔、290 ロータユニット、294 支持部材、295 大径部、296 小径部、297 遮蔽壁。