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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071879
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】液体肥料散布装置の分配機
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
A01C15/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182362
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】513164451
【氏名又は名称】株式会社北海コーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100106954
【弁理士】
【氏名又は名称】岩城 全紀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 幸輝
【テーマコード(参考)】
2B052
【Fターム(参考)】
2B052BA03
2B052EB04
2B052EB09
(57)【要約】
【課題】 液体肥料を複数の散布装置に均等に分配して供給することを可能とする分配装置を提供する。
【解決手段】 上部から供給される液体肥料が留まるよう有底円筒状に形成され、その底面部21の内側の周縁部に沿う位置に、複数の供給ホース13,・・・,13に液体肥料を均等に分配する複数の定量孔22,・・・,22を適宜間隔で形成した分配筒20と、 分配筒20の内部であって、底面部21の上方に回転可能に配置され、分配筒20内の液体肥料を撹拌しつつ各定量孔22,・・・,22へ導入するドーム部31を備え、ドーム部31の下部に設けられて該ドーム部31の回転する径方向に延出すると共に底面部21に摺動して各定量孔22,・・・,22の上縁に形成した刃部22aとの間で剪断可能な刃部32bを有するカッタ部32を備えた撹拌部30と、を具備している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部から供給される液体肥料が留まるよう有底円筒状に形成され、その底面部の内側の周縁部に沿う位置に、複数の供給ホースに液体肥料を均等に分配する複数の定量孔を適宜間隔で形成した分配筒と、
前記分配筒の内部であって、前記底面部の上方に回転可能に配置され、前記分配筒内の液体肥料を撹拌しつつ前記各定量孔へ導入するドーム部を備え、前記ドーム部の下部に設けられて該ドーム部の回転する径方向に延出するとともに前記底面部の前記各定量孔の上縁に形成した刃部との間で、剪断可能な刃部を有するカッタ部を備えた撹拌部と、
を具備していることを特徴とする液体肥料散布装置の分配機。
【請求項2】
前記複数の定量孔は、前記底面部の内側の周縁部に沿う位置に、一定の間隔毎に形成したことを特徴とする請求項1に記載の液体肥料散布装置の分配機。
【請求項3】
前記カッタ部は、前記ドーム部の回転方向に一定間隔毎に複数個を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体肥料散布装置の分配機。
【請求項4】
前記カッタ部は、前記定量孔より大きく、かつ回転自在に支持した円盤状に形成し、この円盤状の外周縁を刃部に形成していることを特徴とする請求項1に記載の液体肥料散布装置の分配機。
【請求項5】
前記カッタ部は、前記定量孔より大きく、かつ回転自在に支持した円盤状に形成し、この円盤状の外周縁を刃部に形成していることを特徴とする請求項2に記載の液体肥料散布装置の分配機。
【請求項6】
前記カッタ部は、前記定量孔より大きく、かつ回転自在に支持した円盤状に形成し、この円盤状の外周縁を刃部に形成していることを特徴とする請求項3に記載の液体肥料散布装置の分配機。
【請求項7】
前記ドーム部は、その外周面にフィン部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液体肥料散布装置の分配機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の糞尿などから構成される液体肥料を、牧草地や畑などの土壌に散布する際に利用される液体肥料散布装置の分配機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から牛や馬や豚などの家畜の糞尿は、牧草地や畑などに散布することにより、土壌の肥料や堆肥として利用している。糞尿など、いわゆる液体肥料を用いて土壌を肥沃にすることは有機栽培農業を促進することになる。
従来、特許文献1では家畜糞尿の散布装置が開示されている。すなわち、液体肥料を収容したバキュームカーがトラクタなどで牽引されながら、バキュームカー内の液体肥料が分配機に送られ、この分配機から複数本の供給ホースへ分配される。さらに液体肥料は各供給ホースの先端に設けた排出インジェクタから土壌に形成した溝に散布される。溝まわりの土は各排出インジェクタの後方に設けられたローラにより転圧され埋め戻される。溝内に散布された液体肥料は土で覆われるので悪臭がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-109886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における家畜糞尿の散布装置は、バキュームカー内の液体肥料が分配機から複数本の供給ホースに分配されるのであるが、各供給ホースへ分配される液体肥料の量は均等であることが望ましい。液体肥料が牧草地や畑などの圃場の土壌に満遍なく散布されることによって土壌全体が均一に肥沃になるからである。しかしながら、液体肥料を各供給ホースに均等に分配する装置に関しては、出願人の知る限り、従来技術は見当たらない。
また、家畜の糞尿には牧草や藁等の固形物がかなりの程度含まれている。一般的に、液体肥料は70%が尿であり、残りは糞と固形物である。そのため、固形物が大きい場合は分配機内の供給用の孔が狭くなったり、各供給ホースが詰まったりする原因となり、液体肥料を均等に分配することが難しくなる。そのために、液体肥料が圃場の土壌に対して満遍なく散布されなくなるとともに、液体肥料の散布時間も長くなってしまうという課題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、液体肥料を複数の散布装置に均等に分配して供給することを可能とし、目詰まりなどを起こすことなく、円滑にインジェクタへ液体肥料を送り込むことできる分配機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、上部から供給される液体肥料が留まるよう有底円筒状に形成され、その底面部の内側の周縁部に沿う位置に、複数の供給ホースに液体肥料を均等に分配する複数の定量孔を適宜間隔で形成した分配筒と、
前記分配筒の内部であって、前記底面部の上方に回転可能に配置され、前記分配筒内の液体肥料を撹拌しつつ前記各定量孔へ導入するドーム部を備え、前記ドーム部の下部に設けられて該ドーム部の回転する径方向に延出すると共に前記底面部に摺動して前記各定量孔の上縁に形成した刃部との間で剪断可能な刃部を有するカッタ部を備えた撹拌部と、を具備していることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記1項において、前記複数の定量孔は、前記底面部の内側の周縁部に沿う位置に、一定の間隔毎に形成したことを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明は、上記1項又は2項において、前記カッタ部は、前記ドーム部の回転方向に一定間隔毎に複数個を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の発明は、上記1項において、前記カッタ部は、前記定量孔より大きく、かつ回転自在に支持した円盤状に形成し、この円盤状の外周縁を刃部に形成していることを特徴としている。
請求項5記載の発明は、上記2項において、前記カッタ部は、前記定量孔より大きく、かつ回転自在に支持した円盤状に形成し、この円盤状の外周縁を刃部に形成していることを特徴としている。
請求項6記載の発明は、上記3項において、前記カッタ部は、前記定量孔より大きく、かつ回転自在に支持した円盤状に形成し、この円盤状の外周縁を刃部に形成していることを特徴としている。
【0010】
請求項7記載の発明は、前記ドーム部は、その外周面にフィン部を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、分配筒の内部では液体肥料がドーム部の回転により撹拌されるので、効率よく複数の各定量孔へ均等に分配することができる。さらに、カッタ部が複数の定量孔を配置した底面部に摺動して回転するので、液体肥料内の固形物をカッタ部の刃部と各定量孔の上縁の刃部との間で剪断力が生じることから、固形物を確実に切断・粉砕することができる。これにより、各定量孔や各供給ホースが詰ってしまう事態を回避できるので、液体肥料を効率よく各定量孔へ均等に分配できる。この結果、液体肥料は、圃場の土壌に満遍なく散布されることになる。しかも液体肥料は、各供給ホース内にスピーディに供給されるので、散布時間を短縮できる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、複数の定量孔を一定の間隔毎にすることで、よりいっそう効率よく均等に分配することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、カッタ部は複数個設けることで、液体肥料内の固形物を効率よく切断できるので、液体肥料をより効率よく分配することができる。
【0014】
請求項4乃至6記載の発明によれば、カッタ部は定量孔より大きく、かつ回転自在に支持した円盤状に形成し、この円盤状の外周縁を刃部に形成することで、カッタ部を正逆回転しても液体肥料内の固形物を切断できる。しかもカッタ部と各定量孔の両刃における剪断部の範囲が長くなるので、固形物を効率よく切断・粉砕できる。また、円盤状のカッタ部は、固定ではなく回転自在に支持されているので、カッタ部の全周を刃部として使用できることから、刃部の全周が均等に摩耗するようになり、長期にわたって切断力を維持することが可能である。
【0015】
請求項7記載の発明によれば、ドーム部はフィン部がなくても液体肥料を撹拌できるが、フィン部を備えることで効率よく撹拌することができるので、液体肥料をより効率よく均等に分配することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る液体肥料散布装置の分配機の内部構造を示す斜視図である。
図2図1の分配装置の内部の上方から視た平面図である。
図3図1の分配装置の内部構造の分解斜視図である。
図4図1の分配装置の全体を示す斜視図である。
図5図1の分配装置の側面図である。
図6】トラクタに液体肥料散布装置およびバキュームカーを連結した斜視図である。
図7図6の平面図である。
図8図7の矢視VIa-VIa線から視た液体肥料散布装置の正面図である。
図9図7の矢視VIb-VIb線から視た液体肥料散布装置の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る液体肥料散布装置の分配機について図面を参照して説明する。
液体肥料散布装置10は、家畜の糞尿などの液体肥料を圃場の土壌内部に散布する散布装置である。一例として、液体肥料散布装置10は、図6ないしは図9に示すように例えばトラクタ60の後部に牽引されるもので、トラクタ60に連結部11aを介して連結されるメインフレーム11を備えている。さらに、液体肥料を分配する分配装置12がメインフレーム11の上部に配置され、メインフレーム11の下部には複数本の排出インジェクタ15,・・・,15がトラクタ60の進行方向に対して左右の横方向に配置されるようにインジェクタ支持部材14,14にて支持される。インジェクタ支持部材14,14はメインフレーム11に連結したシリンダなどのアクチュエータ14a,14aによって下方へ押し下げたり、引き上げたりできるように設けられている。
【0018】
分配装置12で分配された液体肥料LFは、図7ないしは図9に示すように複数本の供給ホース13,・・・,13を経てその先端に設けた各排出インジェクタ15,・・・,15に供給される構成である。本実施形態では10本の供給ホース13,・・・,13と10本の排出インジェクタ15,・・・,15を備えている。
なお、図7ないしは図9では、各供給ホース13,・・・,13を図示しないで、主に液体肥料LFの流れを点線で示している。
【0019】
さらに図8及び図9に示すように、液体肥料散布装置10は、各排出インジェクタ15,・・・,15の進行方向の前方で圃場に溝を形成するための作溝ローラ16,・・・,16を備え、各作溝ローラ16,・・・,16と各排出インジェクタ15,・・・,15の間に、作溝ローラ16,・・・,16で形成した溝の底部の土を掻き出すカッタ17,・・・,17を備えている。また、各排出インジェクタ15,・・・,15の後方で液体肥料LFを散布後に溝の上部に土壌を被せるためのローラ18,・・・,18を備えている。
なお、上述したように図9で示す排出インジェクタ15、作溝ローラ16、カッタ17、ローラ18でなるインジェクタ関連機構19は、図7および図8において詳しい図示を省略して設置される位置を二点鎖線で示している。
【0020】
本実施形態では、図6および図7に示すように液体肥料LFを収容したバキュームカー70が液体肥料散布装置10の後方に位置してトラクタ60で連結して牽引され、バキュームカー70のタンクから、液体肥料LFが圧送用ホース71を経て分配装置12の上部へ供給される構成である。
【0021】
次に、本実施形態の主要な構成である分配装置12について詳しく説明する。
図1は分配装置12の内部構造を示す斜視図、図2は分配装置12の内部の上方から視た平面図、図3は分配装置12の内部構造の分解斜視図、図4は分配装置12の全体を示す斜視図、図5は分配装置12の側面図である。
【0022】
分配装置12は、基本的に分配筒20と撹拌部30と蓋部40とで構成されている。
分配筒20は、図1および図4に示すように上部に上面開口20aを有し、この上面開口20aから供給される液体肥料LFが留まるよう有底円筒状に形成されている。分配筒20の底面部21は、液体肥料LFを均等に分配する複数の定量孔22,・・・,22が円筒内側の周縁部に沿う位置に適宜の間隔をあけて形成されている。
本実施形態では、10個の定量孔22,・・・,22が一定の間隔毎に形成されている。このように複数の定量孔22,・・・,22が一定の間隔毎に配置されることで、よりいっそう効率よく均等に分配可能となるが、一定の間隔毎に配置されることに限定されない。
なお、底面部21の下部には各定量孔22,・・・,22に連通するホース連結管23,・・・,23を備えており、これらの各ホース連結管23,・・・,23に対応する供給ホース13,・・・,13が接続されるようになっている。
【0023】
撹拌部30は、分配筒20の内部にあって、底面部21の上方に回転可能に配置されている。撹拌部30は、図1に示すように分配筒20内の液体肥料LFを撹拌しつつ各定量孔22,・・・,22へ導入する、円錐状のドーム部31を備えている。また、ドーム部31の下部には、複数の定量孔22,・・・,22が配置された底面部21に対して摺動しながら回転し、液体肥料LF内の牧草や藁などの固形物を切断するカッタ部32が配設されている。
【0024】
分配筒20の底面部21は、図3に示すように、ほぼ中央に回転可能な回転円盤33を備えており、この回転円盤33は図示しないモータなどの回転駆動装置により正逆回転可能に設けられている。回転円盤33には、円環状のドーム基部31aが取り付けられており、このドーム基部31aの上部に円錐形状のドーム部31が設けられている。ドーム部31はそれ自体が回転円盤33によって回転駆動されることで、分配筒20内の液体肥料LFを攪拌する機能を有している。
【0025】
さらに、ドーム部31の円錐形状の上面には、回転方向に直交するように上方に延伸する複数のフィン部31c,・・・,31cが、円周方向に沿って等間隔で配置されている。本実施形態では4個のフィン部31c,・・・,31cが回転軸を中心に対称位置に配置されているが、フィン部31cの数や形状は、特に限定されない。なお、フィン部31cを備えることで液体肥料LFを確実に撹拌できるので、液体肥料LFを一層効率よく各定量孔22,・・・,22へ均等に分配することが可能である。
【0026】
カッタ部32はリング状に形成され、回転円盤33上に回転可能に取り付けられているとともに、複数のカッタ32a,・・・,32aを備え、これらの複数のカッタ32a,・・・,32aは、ドーム基部31aの外周にほぼ均等に配置され、径方向に延出して設けられたカッタ支持部31b,・・・,31bに取り付けられている。
カッタ支持部31b,・・・,31bに取り付けられた各カッタ32a,・・・,32aは、ドーム基部31aの回転に伴って、複数の定量孔22,・・・,22を配置した底面部21上を摺動、若しくは一定の隙間を隔てながら回転し、各定量孔22,・・・,22の上縁に形成した刃部22aとの間で、分配筒20内の固形物を剪断(切断)するようになっている。
なお、カッタ32aは1個だけでも目的を果たすが、複数個設けることで、液体肥料LF内の牧草や藁等の固形物を効率よく切断できるので、よりいっそう効率よく分配可能となる。本実施形態では4個のカッタ32a,・・・,32aを回転方向にほぼ一定間隔で配置しているが、カッタ32aの数および配置間隔は特に限定されない。
【0027】
また、各カッタ32a,・・・,32aは、本実施形態では各定量孔22,・・・,22よりも、その面積が大きい円盤形状に形成されており、ドーム基部31aの回転する径方向に突設したカッタ支持部31bに回転可能に、その中心部が取り付けられている。また、各カッタ32a,・・・,32aの外周縁には、刃部32bが形成されている。その結果、ドーム部31を正逆回転しても切断できる。また、定量孔22とカッタ32aの両刃22b,32bにおける剪断部の範囲が長くなるので効率よく切断できる。
また、円盤状の各カッタ32a,・・・,32aは、前述したように、カッタ支持部31bに対し、固定されているのではなく回転可能に取付支持されているので、カッタ32aの全周を刃部32bとして使用することができる。この結果、カッタ32aの刃部32bは均等に摩耗し、又、稼働時には分配筒12内の固形物に対して引っ掛かることなく、切断作業を行うことが可能となっている。
なお、カッタ32aは、正逆回転に対応するように、径方向に延びる両刃を備えるものとしてもよいので、特に円盤状であることに限定はされない。
【0028】
蓋部40は、図4および図5に示すように分配筒20の上面開口20aを閉塞(被蓋)するものである。蓋部40のほぼ中央には液体肥料LFを分配筒20へ導入する湾曲形状の液体肥料導入管41を備えている。この液体肥料導入管41には、バキュームカー70の液体肥料LFを圧送する圧送用ホース71が接続される。
さらに、蓋部40は、図5の二点鎖線で示すように、蓋部40の上面に取り付けたアーム部43がメインフレーム11に設けたヒンジ部11bを中心に上方へ回動可能であり、これによって分配筒20の上面開口20aを開放若しくは閉塞することができるようになっている。上面開口20aを閉塞(被蓋)した蓋部40はロック機構42によりロックされる構成である。
【0029】
次に、本実施形態の液体肥料散布装置の分配機12の作用について図面を参照して説明する。
肥料散布の際、液体肥料散布装置10は、図6および図7に示すように圃場にてトラクタ60によって牽引され、かつバキュームカー70も同時に牽引される。この時、バキュームカー70の内部の液体肥料LFは圧送用ホース71を経て圧送され、分配装置12の液体肥料導入管41を経て、蓋部40の中央から分配筒20の内部へ導入される。
【0030】
分配筒20の内部では液体肥料LFがドーム部31の頂点付近へ導入されると、図1および図2に示すようにドーム部31が既に回転しているので、液体肥料LFが遠心力により円錐形状の上面に沿って分配筒20の内側の周縁部へ案内される。さらに液体肥料LFが分配筒20の内部に充填されると、回転する4個のフィン部31c,・・・,31cによって撹拌されるので、液体肥料LFが効率よく各定量孔22,・・・,22へ均等に分配される。
【0031】
また、カッタ部32を構成する複数の各カッタ32a,・・・,32aが複数の定量孔22,・・・,22を配置した底面部21に対し、接触しながら摺動して回転(旋回)するので、図2に示すように、液体肥料LF内の牧草や藁などの固形物が各カッタ32a,・・・,32aの刃部32bと各定量孔22,・・・,22の上縁の刃部22aとの間で剪断して切断されることになる。
液体肥料LFの糞尿内には、牧草や藁などの固形物が、かなりの大きさをもって混じっている。一般的に、液体肥料は70%程度が尿であり、残りは糞と固形物である。そのため、このままでは各定量孔22,・・・,22や各供給ホース13,・・・,13が前記固形物によって詰まることになりかねない。
したがって、上記のようにカッタ部32によって固形物を小さく切断することで、液体肥料LFが各定量孔22,・・・,22や各供給ホース13,・・・,13に詰ってしまう事態を回避することができる。これによって、液体肥料を効率よく各定量孔22,・・・,22へ均等に分配することが可能となる。しかも液体肥料LFは各供給ホース13,・・・,13内に、より一層いっそうスピーディに供給されるようになるため、散布時間の短縮に寄与する。
【0032】
液体肥料散布装置10がトラクタ60に牽引されると、各排出インジェクタ15,・・・,15の前方に備えた作溝ローラ16,・・・,16およびカッタ17,・・・,17によって圃場に溝が作られる。
分配装置12の分配筒20の内部で均等に分配された液体肥料LFは、図7ないしは図9の点線で示すように複数本の各供給ホース13,・・・,13を経てその先端に設けた各排出インジェクタ15,・・・,15から圃場の溝内へ散布される。
したがって、液体肥料LFは各供給ホース13,・・・,13を均等に流れるので圃場の土壌へ液体肥料を満遍なく散布することができる。しかも、各排出インジェクタ15,・・・,15の後方に備えたローラ18,・・・,18によって溝の上部に土壌を被せるので、液体肥料LFを土壌内に封じ込めることで、悪臭が漂うことを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、農業機械関連を製造する農業機械製造および販売業、酪農業、畜産業などの広範囲の分野において、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0034】
10 液体肥料散布装置 11 メインフレーム
11a 連結部 11b ヒンジ部
12 分配装置 13 供給ホース
14 インジェクタ支持部材 14a アクチュエータ
15 排出インジェクタ 16 作溝ローラ
17 カッタ 18 ローラ
19 インジェクタ関連機構
20 分配筒 20a 上面開口
21 底面部 22 定量孔
22a 刃部 23 ホース連結管
30 撹拌部 31 ドーム部
31a ドーム基部 31b カッタ支持部
31c フィン部 32 カッタ部
32a カッタ 32b 刃部
33 回転円盤
40 蓋部 41 液体肥料導入管
42 ロック機構 43 アーム部
60 トラクタ
70 バキュームカー 71 圧送用ホース
LF 液体肥料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9