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特開2024-71883建設作業施工方法及び建設作業施工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071883
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】建設作業施工方法及び建設作業施工装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20240520BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
E04G21/16
E04F13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182372
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】511100693
【氏名又は名称】株式会社三松
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上田 航平
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田名部 徹朗
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昭
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA13
2E174DA52
(57)【要約】
【課題】建築部材の施工対象面に対して的確に処理を実行する建設作業施工方法及び建設作業施工装置を提供する。
【解決手段】吹付け装置20は、ロボットアーム25の先端部26に取り付けられた吹付け部40及び距離計測部30を備える。吹付け部40は、梁10の施工対象面11aに吹付け材を吐出するガンヘッド42を備える。吹付け装置20の制御部51は、z軸を中心として先端部26を回転させながら計測した先端部26から施工対象面11aまでの複数の距離を用いて、施工対象面11aまでの最短距離となる第1角度を取得する。制御部51は、取得した第1角度に設定した上で、x軸を中心として、先端部26を回転させながら計測した複数の距離を用いて施工対象面11aまでの最短距離となる第2距離及び第2角度を取得する。制御部51は、第2距離と第1角度及び第2角度を用いて修正して、ガンヘッド42から吹付け材を吹付ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端部の位置に基づいて、建築部材の施工対象面に対する建設作業を施工する建設作業施工方法であって、
前記先端部の距離計測器により、第1軸回りに走査した第1距離分布と、前記第1軸とは異なる第2軸回りで走査した第2距離分布とを用いて、前記ロボットアームの配置を特定し、前記配置に応じて調整した前記先端部の位置を用いて、前記施工対象面に対して施工を行なうことを特徴とする建設作業施工方法。
【請求項2】
前記第1距離分布は、前記第1軸を中心として前記先端部を回転させながら、前記先端部から前記施工対象面までの複数の第1距離を計測することにより取得し、
前記計測した複数の第1距離を用いて前記施工対象面までの最短距離となる第1角度を取得し、
前記第2距離分布は、前記第1軸における前記先端部の向きを前記第1角度に設定した上で、前記第1軸と直交する第2軸を中心として前記先端部を回転しながら複数の第2距離を計測することにより取得し、
前記計測した複数の第2距離を用いて前記施工対象面までの最短距離となる第2距離及び第2角度を取得し、
前記第2距離と、前記第1角度及び前記第2角度とを用いて前記施工対象面に対する前記先端部の位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の建設作業施工方法。
【請求項3】
前記先端部には、前記施工対象面を被覆する吹付け材を吐出する吐出部を取り付け、
前記吐出部から前記吹付け材を吹付ける作業を、前記建設作業として行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の建設作業施工方法。
【請求項4】
ロボットアームの先端部の位置に基づいて、建築部材の施工対象面に対する建設作業を施工する建設作業施工装置であって、
前記先端部に距離計測器を設け、
前記距離計測器により、第1軸回りに走査した第1距離分布と、前記第1軸とは異なる第2軸回りで走査した第2距離分布とを用いて、前記ロボットアームの配置を特定し、前記配置に応じて調整した前記先端部の位置を用いて、前記施工対象面に対して施工を行なうことを特徴とする建設作業施工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築部材の施工対象面に対して吹付け材を吹付ける吹付け方法等の建設作業施工方法及び建設作業施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームを利用して、梁に耐火被覆材を吹付ける場合、吹付け作業対象面に対して実施する吹付け内容に基づいて作成されるジョブファイルを用いることがある(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の建設作業装置は、ロボットアームの動作を制御するアーム制御装置を備える。アーム制御装置は、作業対象面を設定された建築部材の設計情報と、作業対象面に対して実施する作業内容とに基づいて作成されるジョブファイルに従って、ロボットアームを動作させる。更に、アーム制御装置は、設計情報と現実の表面形状に係る計測データとに基づいて、位置及び姿勢に係る施工誤差を検出し、この検出された施工誤差に基づいて、ジョブファイルを修正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-56277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、位置及び姿勢に係わる施工誤差の検出に、施工対象の天井梁を含む作業周辺領域の3次元形状モデルとしての点群モデルを生成する。このため、点群モデルの生成のためには、3次元の点群を取得する必要がある。この場合、1軸回りに回転させながらレーザ光を照射させた層を複数、取得する。このため、施工誤差を特定するために、手間や時間が掛かっていた。更に、この点群モデルを用いて位置を推定した場合には、数cm~数十cmの誤差が生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する建設作業施工方法は、ロボットアームの先端部の位置に基づいて、建築部材の施工対象面に対する建設作業を施工する建設作業施工方法であって、前記先端部の距離計測器により、第1軸回りに走査した第1距離分布と、前記第1軸とは異なる第2軸回りで走査した第2距離分布とを用いて、前記ロボットアームの配置を特定し、前記配置に応じて調整した前記先端部の位置を用いて、前記施工対象面に対して施工を行なう。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、建築部材の施工対象面に対して的確に処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態における吹き付け装置の構成を説明する模式図である。
図2】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
図3】実施形態における移動後の吹付け工程の作業手順を示す流れ図である。
図4】実施形態における移動後の配置に応じた修正処理の処理手順を示す流れ図である。
図5】実施形態において吹付け装置の移動を説明する説明図である。
図6】実施形態において第1軸回りに先端部を回転させた状態を説明する説明図である。
図7】実施形態において第1軸回りに先端部を回転させた状態のレーザ光の軌跡と最短距離との関係を説明する説明図である。
図8】実施形態において第1角度に設定した後、第2軸回りに先端部を回転させた状態を説明する説明図である。
図9】実施形態において第2軸回りに先端部を回転させた状態のレーザ光の軌跡と最短距離との関係を説明する説明図である。
図10】実施形態において吹付け処理を実行した状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図10を用いて、建設作業施工方法及び建設作業施工装置を具体化した実施形態を説明する。本実施形態では、建設作業として建築部材に対する仕上げ作業等の施工方法及び施工装置として、吹付け対象としての梁の施工対象面に吹付け材を吹付ける吹付け方法及び吹付け装置として説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の吹付け装置20は、本体部21及び端末装置50を備えている。端末装置50は、吹付け装置20の本体部21に内蔵されている。
(ハードウェア構成例)
図2は、端末装置50等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
【0010】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0011】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインターフェースであり、例えばネットワークインターフェースや無線インターフェース等である。
【0012】
入力装置H12は、ユーザの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。
表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
記憶装置H14は、端末装置50の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0013】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、端末装置50における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、CPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、端末装置50のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0014】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0015】
(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路
【0016】
(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサH15は、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0017】
(吹付け装置20の構成)
図1に示すように、吹付け装置20は、本体部21、横行装置及びロボットアーム25を備える。本体部21には、ロボットアーム25の昇降装置が内蔵されている。本体部21の下方に設けられた横行装置は、回転可能な離間した4個の車輪22を有する。これら車輪22には回転を不能にするストッパ(図示せず)が設けられており、移動先等の任意の位置で吹付け装置20を据え付けることができる。
【0018】
更に、本体部21の上面には、ロボットアーム25が固定されている。
ロボットアーム25は、6軸自由度の多関節構造を有する。具体的には、このロボットアーム25は、本体部21に固定された位置において、鉛直方向に延在する第1軸を中心として回転可能な回転機構を有している。ここで、第1軸とは、吹付け装置20の上面に対して直交する第1軸となるローカル座標のz軸である。このローカル座標(x,y,z)は、吹付け装置20における座標であって、例えば、本体部21におけるロボットアーム25の固定部を、ローカル座標の原点(x=0,y=0,z=0)とする。
【0019】
更に、このロボットアーム25は、先端部26の中心軸を、本体部21の上面と平行となるように延在した状態において、水平方向に延在する第2軸を中心として回転可能な回転機構を有している。ここで、本実施形態において、第2軸とは、吹付け装置20の上面(水平面)に含まれる軸であって、吹付け装置20の長手方向に延在するローカル座標のx軸である。このx軸は、吹付け装置20の短手方向に延在するローカル座標のy軸と、ローカル座標のz軸と直交する。
【0020】
そして、ロボットアーム25の先端部26の位置は、端末装置50によって制御される。
ロボットアーム25の先端部26には、距離計測部30及び吹付け部40が固定されている。具体的には、距離計測部30は、レーザ光を用いて距離を計測するレーザ計測器である。この距離計測部30は、ロボットアーム25の先端部26の中心軸を通過するレーザ光LL1を、先端から照射する。そして、距離計測部30は、照射したレーザ光LL1が施工対象面11aにおいて反射されることにより戻ってきた時間を用いて施工対象面11aまでの距離を特定する。ここで、施工対象面11aは、梁10における吹付け装置20側のウェブである。
【0021】
吹付け部40は、ロボットアーム25の先端部26において、距離計測部30の上方の位置に、取付部材27を介して取り付けられる。吹付け部40は、筒状の本体部41及び吐出部としてのガンヘッド42を備える。ガンヘッド42は、本体部41の先端(施工対象面11a側)に固定される。本体部41のガンヘッド42と反対側には、吹付け材を供給する供給ホースが連結される。本実施形態のガンヘッド42は、距離計測部30のレーザ光の照射方向と平行となる方向で、吹付け材を施工対象面11aに向けて噴出(吐出)する。ここで、吹付け材としては、グラスウールやモルタル等の耐火被覆材を用いる。
【0022】
(端末装置50の構成)
端末装置50は、制御部51及びジョブデータ記憶部52を備える。
この制御部51は、後述する処理(移動制御段階、計測段階、修正段階及び吹付け制御段階等を含む処理)を行なう。このための吹付け処理プログラムを実行することにより、制御部51は、移動制御部511、計測部512、修正部513及び吹付け制御部514等として機能する。
【0023】
移動制御部511は、吹付け装置20の横行移動及び停止(据え付け)を制御する。
計測部512は、距離計測部30を用いて梁10の施工対象面11aまでの距離を取得する。
【0024】
修正部513は、計測部512が取得した距離を用いて、現在の吹付け装置20に対する梁10の相対位置及び姿勢を特定する。更に、この修正部513は、特定した梁10の相対位置及び姿勢を用いて、ジョブデータ記憶部52に記憶したジョブファイルを修正する。
【0025】
吹付け制御部514は、ジョブファイルに基づいて、吹付け部40のガンヘッド42から吹付け材を吐出して吹付け処理を実行する。
ジョブデータ記憶部52は、ジョブファイルを記憶している。本実施形態では、ジョブファイルとして、予定位置における修正前のジョブファイルと、修正後のジョブファイルとを記憶している。各ジョブファイルには、吹付け装置20の固定位置と、この固定位置に関連付けられたロボットアーム25の先端部26の作業位置情報とが含まれる。ここで、吹付け装置20の固定位置とは、吹付け装置20が作業するために据え付けられる位置であり、横行装置で移動して停止する予定位置である。また、作業位置情報は、吹付け処理を行なう位置情報である。修正前のジョブファイルの作業位置情報には、固定位置において吹付け処理を行なうときのガンヘッド42からの施工対象面11aまでの設定距離と、このときに施工対象面11aにガンヘッド42のローカル座標(x,y,z)とが含まれる。修正後のジョブファイルの作業位置情報には、移動後の吹付け装置20の配置に応じて修正された設定距離と、先端部26のローカル座標(x,y,z)とが含まれる。
【0026】
(吹付け処理)
次に、図3図10を用いて、上述した構成の吹付け装置20の吹付け処理について説明する。図3は、吹付け工程における全体の流れ図、図4は、図3における移動後の配置に応じた修正処理の詳細を説明する流れ図である。なお、図5図6及び図8においては、取付部材27及び吹付け部40の図示を省略している。
【0027】
まず、端末装置50の制御部51は、吹付け位置への移動処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部51の移動制御部511は、吹付け装置20の車輪22を駆動することにより、吹付け作業を行なう固定位置に吹付け装置20を移動させる。
【0028】
例えば、図5に示すように、梁10と対向して位置P1に据え付けられていた吹付け装置20を、梁10の延在方向の予定位置P3に移動させる場合を想定する。ここでは、制御部51の移動制御部511は、予定位置P3に移動したと判断した場合、車輪22のストッパを用いて、吹付け装置20を固定する。この場合、予定位置P3に対して、梁10の延在方向に対して少し傾斜した位置P2に移動した場合について説明する。
【0029】
次に、端末装置50の制御部51は、移動後の配置に応じた修正処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部51の距離計測部30は、移動した移動先の実際の配置に応じて、ジョブファイル中の作業位置情報を修正する。この具体的な処理の詳細については、後述する。
【0030】
そして、端末装置50の制御部51は、吹付け処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部51の吹付け制御部514は、ジョブデータ記憶部52に記憶された修正後のジョブファイルを用いて、吹付け材をガンヘッド42から吐出することにより吹付け処理を実行する。
この場合、図10に示すように、ガンヘッド42を梁10の施工対象面11aに対向させて吹付け処理を実行する。
【0031】
(移動後の配置に応じた修正処理)
次に、図4図9を用いて、上述した移動後の配置に応じた修正処理(ステップS12)の詳細について説明する。ここでは、図5の位置P2に移動した場合について説明する。
【0032】
まず、端末装置50の制御部51は、ジョブファイルにおいて、吹付け装置20が予定位置P3に配置されたときのガンヘッド42の吹付け開始位置に、ロボットアーム25の先端部26を配置する。
【0033】
そして、制御部51は、z軸回りに回転させて距離・角度の計測処理を実行する(ステップS21)。
具体的には、図6に示すように、制御部51の計測部512は、ロボットアーム25の先端を、z軸を中心として矢印方向R1に旋回させながら、距離計測部30からレーザ光を照射して、梁10の施工対象面11aとの距離及び角度を計測する。
【0034】
例えば、図6では、距離計測部30は、レーザ光を照射して、複数(ここでは5箇所を示す)の向きのそれぞれの距離L11,L12,L13,L14,L15及びそれぞれの角度を計測する。ここで、それぞれの角度は、ロボットアーム25のz軸回りに回転する回転機構の中心からの角度である。なお、距離L13は、吹付け装置20におけるローカル座標x=0の位置における距離である。そして、計測部512は、計測した複数の距離L11~L15及び角度から最短距離L1を特定する。この最短距離L1は、梁10の延在方向に直交する方向に延在し、ロボットアーム25の先端部26から梁10の施工対象面11aまでの距離である。
【0035】
この場合、図7に示すように、例えば、吹付け装置20が傾いていることによりz軸回りのレーザ光が傾いている場合には、照射したレーザ光の軌跡T1は、図5の現場座標(X,Y,Z)のYZ垂直面において、吹付け装置20の傾きに応じて斜めになる。従って、現場座標のYZ垂直面に対して軌跡T1に応じた傾き分を一連で修正する。なお、位置Pc1は、軌跡T1上で最短距離L1を取得したときの位置である。
【0036】
次に、制御部51は、第1軸方向の最短距離の第1角度の取得処理を実行する(ステップS22)。
具体的には、図6に示すように、制御部51の計測部512は、y軸(距離L13の延在方向)と、最短距離L1の延在方向とがなす第1角度θ1を特定する。
【0037】
次に、制御部51は、第1角度に設定した上で、x軸回りに回転させて距離・角度の計測処理を実行する(ステップS23)。
具体的には、図8に示すように、制御部51の計測部512は、ロボットアーム25の先端部26を、x軸を中心として矢印方向R2に旋回させながら、距離計測部30からレーザ光を照射して、梁10の施工対象面11aとの距離及び角度を計測する。この場合、距離計測部30が照射したレーザ光が施工対象面11aに反射する範囲で、ロボットアーム25を回転させる。
【0038】
例えば、図8では、レーザ光を照射して、複数(ここでは3箇所)の向きのそれぞれの距離L21,L22,L23及びそれぞれの角度を計測する。ここでは、吹付け装置20の上部が梁10側に傾いている状態を示している。なお、距離L22は、吹付け装置20における先端部26の中心軸がローカル座標y=一定値となる線上における距離である。
【0039】
そして、計測した複数の距離L21~L23及び角度から最短距離L2を特定する。この最短距離L2は、最短距離L1と同様に、梁10の延在方向に直交する方向に延在し、ロボットアーム25の先端部26から梁10の施工対象面11aまでの距離である。
【0040】
この場合、図9に示すように、x軸回りに回転させたときのレーザ光の軌跡T2は、z軸回りに回転させたときのレーザ光の軌跡T1と直交する方向であって、最短距離L1を通過する。従って、現場座標のYZ垂直面に対して軌跡T2に応じた傾き分を一連で修正する。なお、位置Pc2は、軌跡T2上で、最短距離L2を取得したときの位置である。そして、この位置Pc2は、予定位置P3におけるロボットアーム25の先端部26の位置である。
【0041】
そして、制御部51は、第2軸方向の最短距離と第2角度の取得処理を実行する(ステップS24)。
具体的には、図8に示すように、制御部51の計測部512は、ローカルの鉛直方向の座標zを設定高さとした先端部26の中心軸方向(距離L22の延在方向)に対して最短距離L2となった方向との第2角度Φ1を特定する。
【0042】
次に、制御部51の修正部513は、距離のズレ量、姿勢のズレ量を用いてジョブファイルの修正処理を実行する(ステップS25)。具体的には、制御部51の修正部513は、計測した最短距離L2と、ジョブファイルに記憶されている設定距離との差分(距離のズレ量Δy)を算出する。
【0043】
次に、修正部513は、この予定位置P3におけるジョブファイルを、ジョブデータ記憶部52から抽出する。そして、修正部513は、取得した各ジョブファイルにおける吹付け処理の作業のローカル座標(x,y,z)を極座標(θ,Φ,r)に変換する。この場合、ローカル座標(x,y,z)の原点(0,0,0)を、極座標(θ,Φ,r)の原点(0,0,0)として用いる。
【0044】
次に、修正部513としては、変換した極座標θにおいて、第1角度θ1分、逆に旋回し、極座標Φにおいて第2角度Φ1分、逆に旋回し、半径rが最短距離L2に移動したときの極座標を算出する。ここで、最短距離L2は、設定距離からズレ量Δyずらした値である。すなわち、予定位置P3が位置P2の配置になった状態で、予定位置P3におけるジョブファイルにおけるガンヘッド42からの吹付け処理が実行できるように修正を行なう。
そして、修正部513は、算出した極座標を、吹付け装置20のローカル座標(x,y,z)に変換する。これによって、修正部513は、吹付け装置20が予定位置P3における施工対象面11aの予定姿勢に対して、水平方向のズレ量ΔRx及び垂直方向のズレ量ΔRzを取得する。結果として、移動後に用いるジョブファイル全体において、上述した軌跡T1,T2に応じた一連の位置座標を修正することになる。
そして、修正部513は、変換したローカル座標を、ジョブデータ記憶部52に、修正後のデータとして記録する。
【0045】
(作用)
吹付け装置20の制御部51は、z軸回りに回転させながら取得した第1距離分布(L11~L15)を用いて第1角度θ1を取得し、x軸回りに回転させながら第2距離分布(L21~L23)を用いてy軸方向の最短距離L2と第2角度Φ1を取得する。そして、制御部51は、取得した最短距離L2、第1角度θ1及び第2角度Φ1を用いてジョブファイルを修正する。従って、異なる2軸回りにそれぞれ1回ずつレーザ光照射を行なって計測するだけで、移動後の吹付け装置20の配置に応じた施工対象面11aの相対位置及び姿勢の修正を行なう。
【0046】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、吹付け装置20の制御部51は、z軸回りに旋回させることにより取得した複数の距離L11~L15及び角度を用いて第1角度θ1を取得する。更に、制御部51は、第1角度θ1に設定した上で、x軸回りに旋回させながら複数の距離L21~L23及び角度を用いてy軸方向の最短距離L2と第2角度Φ1を取得する。そして、制御部51は、取得したy軸方向の最短距離L2及び第1角度θ1、第2角度Φ1を用いてジョブファイルを修正し、このジョブファイルを用いて吹付け処理を実行する。このため、効率的に修正を行なって、的確な吹付け処理を行なうことができる。
【0047】
(2)本実施形態では、吹付け装置20のロボットアーム25は、吹付け装置20におけるローカル座標のz軸回りに回転可能な回転機構と、先端においてx軸回りに回転可能な回転機構とを有する。従って、これら回転機構でロボットアーム25を回転させて最短距離及び角度を取得するので、姿勢(第1角度θ1及び第2角度Φ1)の誤差を精度よく取得することができる。
【0048】
(3)本実施形態では、吹付け装置20のロボットアーム25の先端部26の中心に合わせて距離計測部30を設ける。このため、先端部26からの施工対象面11aまでの距離を精度よく計測することができる。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、端末装置50の制御部51は、取得した最短距離L2、第1角度θ1及び第2角度Φ1を用いて修正したジョブファイルを用いて吹付け処理を実行した。ジョブファイルを修正する代わりに、吹付け処理を行なう際に、算出したズレ量(Δy,ΔRx,ΔRz)とジョブファイルとを用いて修正を行なってもよい。
【0050】
・上記実施形態において、ロボットアーム25の先端部26に、距離計測部30及び吹付け部40を設けた。これら両方を設けずに、先端部26に片方ずつ交換して取り付ける構成としてもよい。また、吹付け部40からの吹付け材が、距離計測部30に付着しないように、吹付け処理中は、距離計測部30を覆う被覆部材を設けてもよい。
【0051】
・上記実施形態の吹付け装置20は、z軸回りに回転させて距離・角度の計測を行なって取得した第1角度θ1に設置した上で、x軸回りに回転させて距離・角度の計測処理を実行した。回転させる軸の順番は、これに限られない。例えば、最初にx軸に回転させながら距離計測部30を用いて第1角度を取得し、この第1角度に設定した上で、z軸回りに回転させながら距離計測部30を用いて第2角度を取得してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、梁10に対して、平行に移動させたい吹付け装置20が移動後に予定位置P3からズレたり傾いたりした場合について説明した。吹付け装置20がズレたり傾いたりした場合だけでなく、梁10が予定位置からズレたり傾いて配置された場合においても、同様に適用することができる。
・上記実施形態では、建設作業施工方法として吹付け方法を行なった。施工方法は、これに限らず、例えば建築部材の表面に付着、孔開口、表面ならし等、位置決めをしながら建築部材に対して施工を行なう建設作業施工方法であればよい。
【0053】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記ロボットアームは、前記吹付け装置において鉛直軸回りに回転可能な構成と、前記吹付け装置における水平軸回りに回転可能な構成を有することを特徴とする請求項3に記載の吹付け装置。
【0054】
(b)ロボットアームの先端部の位置に基づいて、施工対象面との距離、前記施工対象面に対する前記先端部の位置を修正するための修正方法であって、前記ロボットアームの先端部の距離計測器により、第1軸回りに走査した第1距離分布と、前記第1軸とは異なる第2軸で走査した第2距離分布とを用いて、前記ロボットアームの配置を特定し、前記配置に応じて前記先端部の位置を調整することを特徴とする修正方法。
【符号の説明】
【0055】
θ1…第1角度、Φ1…第2角度、Δy,ΔRx,ΔRz…ズレ量、L1,L2…最短距離、P1,P2…位置、P3…予定位置、T1,T2…軌跡、LL1…レーザ光、L11,L12,L13,L14,L15,L21,L22,L23…距離、10…梁、11a…施工対象面、20…吹付け装置、21…本体部、22…車輪、25…ロボットアーム、26…先端部、27…取付部材、30…距離計測部、40…吹付け部、41…本体部、42…ガンヘッド、50…端末装置、51…制御部、52…ジョブデータ記憶部、511…移動制御部、512…計測部、513…修正部、514…吹付け制御部。
図1
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