(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071887
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】パッシブミキサ回路
(51)【国際特許分類】
H03D 7/00 20060101AFI20240520BHJP
H03D 7/14 20060101ALI20240520BHJP
H03D 7/12 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H03D7/00 D
H03D7/14 A
H03D7/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182378
(22)【出願日】2022-11-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】吉山 正之
(57)【要約】
【課題】温度変化に伴う周波数変換の線形性低下を抑制可能なパッシブミキサ回路を提供する。
【解決手段】パッシブミキサ回路は、高周波端子と、低周波端子と、局部発振周波数信号が入力される主MOSFETと、バイアス生成部と、を備え、前記バイアス生成部は、前記主MOSFETと同じ型の副MOSFETと、オペアンプを含むボルテージフォロワ回路と、抵抗素子と、を有し、前記副MOSFETのドレインおよびゲートは、ショートされるとともに、前記ボルテージフォロワ回路からの出力が直接または間接的に入力され、前記オペアンプの非反転入力端子にはリファレンス電圧が入力され、前記副MOSFETのゲート電圧に基づくゲートバイアス電圧が、前記主MOSFETのゲートに供給され、前記副MOSFETのソース電圧に基づくソース・ドレインバイアス電圧が、前記主MOSFETのソースまたはドレインに供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が入出力される高周波端子と、
前記高周波信号よりも周波数が低い低周波信号が入出力される低周波端子と、
局部発振周波数信号が入力されるゲートを有する主MOSFETと、
バイアス生成部と、を備え、
前記バイアス生成部は、
前記主MOSFETと同じ型の副MOSFETと、
オペアンプを含むボルテージフォロワ回路と、
前記副MOSFETのソースに直列接続された抵抗素子と、を有し、
前記副MOSFETのドレインおよびゲートは、ショートされるとともに、前記ボルテージフォロワ回路からの出力が直接または間接的に入力され、
前記オペアンプの非反転入力端子にはリファレンス電圧が入力され、
前記副MOSFETのゲート電圧に基づいて生成されるゲートバイアス電圧が、前記主MOSFETのゲートに供給され、
前記副MOSFETのソース電圧に基づいて生成されるソース・ドレインバイアス電圧が、前記主MOSFETのソースまたはドレインに供給される、パッシブミキサ回路。
【請求項2】
前記主MOSFETと前記副MOSFETとで、チャネル長が実質的に同じである、請求項1に記載のパッシブミキサ回路。
【請求項3】
前記主MOSFETと前記副MOSFETとで、チャネル幅が実質的に同じである、請求項2に記載のパッシブミキサ回路。
【請求項4】
前記バイアス生成部は、中間MOSFETと、カレントミラー回路と、を含み、
前記副MOSFETのドレインおよびゲートには、前記中間MOSFETおよび前記カレントミラー回路を介して、前記ボルテージフォロワ回路からの出力が間接的に入力される、請求項1から3のいずれか一項に記載のパッシブミキサ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブミキサ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高周波信号を低周波信号(ベースバンド信号)に変換するパッシブミキサ回路が開示されている。このパッシブミキサ回路では、MOSFETM1,M4のゲートに局部発振周波数信号が入力される。局部発振周波数信号を用いてMOSFETM1,M4がスイッチングを行うことで、周波数変換が行われる。このようなパッシブミキサ回路は、高周波信号の周波数変換を行うために、例えば高周波半導体回路に組み込まれて用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成において、局部発振周波数信号が入力されるMOSFETがスイッチとして機能するためには、ゲートバイアス電圧およびソース・ドレインバイアス電圧を最適値に設定する必要がある。一般的には、ゲートバイアス電圧をソース・ドレインバイアス電圧よりも、MOSFETの閾値電圧だけ大きい値に固定する。しかしながら、温度変化が生じると、MOSFETの閾値電圧が変動するため、周波数変換の線形性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、温度変化に伴う周波数変換の線形性低下を抑制可能なパッシブミキサ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様1は、高周波信号が入出力される高周波端子と、前記高周波信号よりも周波数が低い低周波信号が入出力される低周波端子と、局部発振周波数信号が入力されるゲートを有する主MOSFETと、バイアス生成部と、を備え、前記バイアス生成部は、前記主MOSFETと同じ型の副MOSFETと、オペアンプを含むボルテージフォロワ回路と、前記副MOSFETのソースに直列接続された抵抗素子と、を有し、前記副MOSFETのドレインおよびゲートは、ショートされるとともに、前記ボルテージフォロワ回路からの出力が直接または間接的に入力され、前記オペアンプの非反転入力端子にはリファレンス電圧が入力され、前記副MOSFETのゲート電圧に基づいて生成されるゲートバイアス電圧が、前記主MOSFETのゲートに供給され、前記副MOSFETのソース電圧に基づいて生成されるソース・ドレインバイアス電圧が、前記主MOSFETのソースまたはドレインに供給される。
【0007】
本発明の態様2は、態様1に係るパッシブミキサ回路であって、前記主MOSFETと前記副MOSFETとで、チャネル長が実質的に同じである。
【0008】
本発明の態様3は、態様1または2に係るパッシブミキサ回路であって、前記主MOSFETと前記副MOSFETとで、チャネル幅が実質的に同じである。
【0009】
本発明の態様4は、態様1から3のいずれかに係るパッシブミキサ回路であって、前記バイアス生成部は、中間MOSFETと、カレントミラー回路と、を含み、前記副MOSFETのドレインおよびゲートには、前記中間MOSFETおよび前記カレントミラー回路を介して、前記ボルテージフォロワ回路からの出力が間接的に入力される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、温度変化に伴う周波数変換の線形性低下を抑制可能なパッシブミキサ回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るパッシブミキサ回路の構成を示す図である。
【
図3】第2実施形態に係るパッシブミキサ回路の構成を示す図である。
【
図4】第2実施形態の変形例に係るパッシブミキサ回路の構成を示す図である。
【
図5】第3実施形態に係るバイアス生成部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態のパッシブミキサ回路について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、パッシブミキサ回路1Aは、高周波端子2と、低周波端子3と、LO端子4と、主MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)5と、バイアス生成部10Aと、を備える。このパッシブミキサ回路1Aは、例えば、一つの半導体チップ内に構成されてもよい。特に、主MOSFET5と、バイアス生成部10Aに含まれる副MOSFET11と、が一つの半導体チップ内に構成されることが好ましい。ただし、パッシブミキサ回路1Aに含まれる構成要素の一部が、他の構成要素とは異なるチップ(あるいは基板等)に設けられてもよい。
【0013】
高周波端子2には、高周波信号RFが入出力(入力または出力)される。低周波端子3には、低周波信号BBが入出力される。低周波信号BBは、高周波信号RFよりも周波数の低い信号であり、ベースバンド信号とも呼ばれる。パッシブミキサ回路1Aは、低周波信号BBを高周波信号RFに周波数変換するアップコンバージョン、あるいは、高周波信号RFを低周波信号BBに周波数変換するダウンコーバージョンを実行できるように構成されている。
【0014】
LO端子4には、不図示の局部発振器(LO:Local Oscillator)が接続される。LO端子4には、局部発振器によって生成された局部発振周波数信号LOが入力される。局部発振周波数信号LOの周波数は、低周波信号BBよりも大きい。局部発振周波数信号LOの周波数は、高周波信号RFより小さくてもよいし、高周波信号RFより大きくてもよい。
【0015】
主MOSFET5は、ゲート5g、ドレイン5d、およびソース5sに対応する3つの端子を有している。ゲート5gは、コンデンサC2を介して、LO端子4に接続されている。ゲート5gには局部発振周波数信号LOが入力される。ソース5sは、コンデンサC1を介して、高周波端子2に接続されている。ドレイン5dは、コンデンサC3を介して、低周波端子3に接続されている。
【0016】
主MOSFET5のゲート5gには、バイアス生成部10Aによって生成されたゲートバイアス電圧が供給される。主MOSFET5のドレイン5dまたはソース5sには、バイアス生成部10Aによって生成されたソース・ドレインバイアス電圧が供給される。本実施形態では、ゲートバイアス電圧とリファレンス電圧(詳細は後述)とがほぼ等しくなる。
【0017】
バイアス生成部10Aは、副MOSFET11と、オペアンプ12を含むボルテージフォロワ回路13と、抵抗素子14と、を有している。オペアンプ12は、非反転入力端子12aと、反転入力端子12bと、出力端子12cと、を有する。出力端子12cは反転入力端子12bにショートされており、これにより、ボルテージフォロワ回路13が構成されている。非反転入力端子12aには、バイアス生成部10Aの外部から、リファレンス電圧が供給される。
【0018】
副MOSFET11は、ゲート11gと、ドレイン11dと、ソース11sと、を有する。副MOSFET11は、ダイオード接続されている。つまり、ドレイン11dとゲート11gとがショートされている。このため、副MOSFET11では、ドレインソース間電圧とゲートソース間電圧とが等しくなる。ゲート11gには、オペアンプ12の出力端子12cが接続されている。これにより、ゲート11gおよびドレイン11dには、ボルテージフォロワ回路13からの出力が供給される。
【0019】
ソース11sおよび抵抗素子14は直列接続されている。抵抗素子14の第1の端子はソース11sに接続され、第2の端子はグラウンドに接続されている。ソース11sと抵抗素子14との間の部分は、抵抗R1を介して、主MOSFET5のドレイン5dに接続されている。ゲート11gの電圧(ゲート電圧)に基づくゲートバイアス電圧が主MOSFET5のゲート5gに供給され、ソース11sの電圧(ソース電圧)に基づくソース・ドレインバイアス電圧が主MOSFET5のドレイン5dに供給される。抵抗素子14の抵抗値は、副MOSFET11に流れる電流を決める要素となる。抵抗素子14の抵抗値は、パッシブミキサ回路1Aが使用される環境温度等に応じて決定される。
【0020】
図1に示されるコンデンサC1~C3は、不要なDC成分(直流成分)を除去する役割を有する。インピーダンス整合のために、コンデンサC1~C3の静電容量は信号経路ごとに設定される。インピーダンス整合のために、インダクタ(コイル)をコンデンサC1~C3に対して直列または並列に配置してもよい。抵抗R1、R2は、不要なAC成分(交流成分)を除去する役割を有する。抵抗R1、R2の抵抗値は、信号の周波数に応じて設定される。抵抗R1、R2の抵抗値は、例えば数百Ω~数キロΩである。
【0021】
ここで、主MOSFET5および副MOSFET11は、同じ型である。たとえば、主MOSFET5がp型であれば、副MOSFET11もp型である。また、主MOSFET5がn型であれば、副MOSFET11もn型である。
【0022】
図2に、n型MOSFETの一般的な構造を示す。
図2において、Wはいわゆるチャネル幅であり、Lはいわゆるチャネル長である。主MOSFET5および副MOSFET11は、チャネル長Lが実質的に同じであることが好ましい。さらに、主MOSFET5および副MOSFET11は、チャネル幅Wが実質的に同じであることが好ましい。本明細書において「実質的に同じ」とは、製造誤差を取り除けば同じであるとみなせることを言う。
【0023】
なお、
図2ではn型MOSFETを例にしたが、主MOSFET5および副MOSFET11がp型である場合も同様に、寸法L、Wが実質的に同じであることが好ましい。
【0024】
次に、以上のように構成されたパッシブミキサ回路1Aの作用について説明する。
【0025】
図1に示す通り、副MOSFET11はダイオード接続されている。このため、副MOSFET11のゲート-ソース間電圧は、副MOSFET11の閾値電圧に近い値となる。ここで、副MOSFET11の閾値電圧は、温度変化によって変動する。副MOSFET11の閾値電圧が変動すると、それに追従するように、副MOSFET11のゲート-ソース間電圧も変動する。そこで、副MOSFET11のゲート電圧に基づいてゲートバイアス電圧を生成し、副MOSFET11のソース電圧に基づいてソース・ドレインバイアス電圧を生成する。すると、ゲートバイアス電圧とソース・ドレインバイアス電圧との差分も、副MOSFET11の閾値電圧に追従するように変動する。
【0026】
ゲートバイアス電圧は、主MOSFET5のゲート5gに供給される。また、ソース・ドレインバイアス電圧は、主MOSFETのドレイン5dに供給される。主MOSFET5に供給されるゲートバイアス電圧とソース・ドレインバイアス電圧との差分が、スイッチとして主MOSFET5が機能する際のバイアスとして作用する。そして、このバイアスの大きさには、副MOSFET11において生じた閾値電圧の変動が反映される。
【0027】
主MOSFET5と副MOSFET11とは、同様の構造を有するから、両者の閾値電圧は等しいと考えられる。したがって、主MOSFET5の閾値電圧に変動が生じた際に、この変動に追従したバイアス電圧が主MOSFET5に加えられることとなり、閾値電圧の変動をキャンセルすることができる。このように、主MOSFET5の閾値電圧の変動をキャンセルすることで、環境温度に変化が生じたとしても、パッシブミキサ回路1Aにおける周波数変換の線形性を確保することが可能となる。
【0028】
特に、主MOSFET5および副MOSFET11が同一チップ内に設けられた場合には、両者に生じる温度変化も等しくなる。したがって、上記効果をより確実に得ることができる。さらに、主MOSFET5および副MOSFET11とで構造が同じ(チャネル長Lおよびチャネル幅Wが実質的に同じ)である場合、温度変化に伴う閾値電圧の変動が、より一致する。したがって、上記効果を、さらに確実に得ることができる。
【0029】
ただし、主MOSFET5および副MOSFET11の型が少なくとも同じであれば、両者に生じる閾値電圧の変動傾向は一致する。また、主MOSFET5および副MOSFET11が同一チップ内に設けられなくても、同様の温度変化を受ける環境であれば、閾値電圧の変動をキャンセルする効果は得られる。したがって、同一チップ内に設けられること、および、構造が同じであることは、必須の条件ではない。
【0030】
また、主MOSFET5および副MOSFET11が同一の製造プロセスを経て形成されたものであれば、製造ばらつきに伴う、設計値に対する閾値電圧のずれの大きさも、主MOSFET5と副MOSFET11とで同じである蓋然性が高い。本実施形態のパッシブミキサ回路1Aによれば、主MOSFET5の閾値電圧が、製造ばらつきによって設計値からずれたとしても、主MOSFET5および副MOSFET11が同一の製造プロセスを経て形成されていれば、そのずれをキャンセルできる。ずれをキャンセルするメカニズムは、温度変化によって閾値電圧が変化した場合と同様である。したがって、パッシブミキサ回路1Aの周波数変換特性の製造上のばらつきを抑制することができる。
【0031】
なお、
図1の例では、主MOSFET5のドレイン5dにソース・ドレインバイアス電圧を供給した。しかしながら、ソース5sにソース・ドレインバイアス電圧を供給した場合も、ゲートバイアス電圧とソース・ドレインバイアス電圧との差分に副MOSFET11の閾値電圧の変動が反映されれば、同様の作用、効果が得られる。したがって、ソース・ドレインバイアス電圧は、ドレイン5dまたはソース5sに供給されればよい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のパッシブミキサ回路1Aは、高周波信号RFが入出力される高周波端子2と、高周波信号RFよりも周波数が低い低周波信号BBが入出力される低周波端子3と、局部発振周波数信号LOが入力されるゲート5gを有する主MOSFET5と、バイアス生成部10Aと、を備える。バイアス生成部10Aは、主MOSFET5と同じ型の副MOSFET11と、オペアンプ12を含むボルテージフォロワ回路13と、副MOSFET11のソース11sに直列接続された抵抗素子14と、を有する。副MOSFET11のドレイン11dおよびゲート11gはショートされるとともに、ボルテージフォロワ回路13からの出力が直接入力される。オペアンプ12の非反転入力端子12aにはリファレンス電圧が入力される。副MOSFET11のゲート11gの電圧に基づいて生成されるゲートバイアス電圧が、主MOSFET5のゲート5gに供給される。副MOSFET11のソース11sの電圧に基づいて生成されるソース・ドレインバイアス電圧が、主MOSFET5のソース5sまたはドレイン5dに供給される。このような構成のパッシブミキサ回路1Aによれば、温度変化に伴う周波数変換の線形性低下を抑制できる。また、オペアンプ12における消費電力は小さいため、ゲートバイアス電圧およびソース・ドレインバイアス電圧の生成のための消費電力の増大量は小さい。また、抵抗素子14の第1の端子の電圧(抵抗素子14とソース11sとの間の電圧)は、主として、ダイオード接続された副MOSFET11の特性により定まる。このため、抵抗素子14の抵抗値が、温度変化等の要因で変動しても、パッシブミキサ回路1Aの線形性に与える影響は小さい。
【0033】
また、主MOSFET5と副MOSFET11とで、チャネル長Lが実質的に同じであってもよい。さらに、主MOSFET5と副MOSFET11とで、チャネル幅Wが実質的に同じであってもよい。これらの場合、主MOSFET5と副MOSFET11とで、閾値電圧の変動の大きさが、より一致する。したがって、温度変化に伴う周波数変換の線形性低下をより効果的に抑制することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、第1実施形態において説明したパッシブミキサ回路1Aを、ダブルバランスドミキサに応用した例を説明する。
図3に、ダウンコンバージョンを行うことが可能なパッシブミキサ回路1Bを示す。
【0035】
図3に示すように、本実施形態のパッシブミキサ回路1Bは、第1実施形態と同様のバイアス生成部10Aを有する。また、パッシブミキサ回路1Bは、一対の高周波端子2p、2nと、一対の低周波端子3p、3nと、一対のLO端子4p、4nと、4つの主MOSFET6~9と、を備える。一対の高周波端子2p、2nは、第1実施形態における高周波端子2に対応する。一対の低周波端子3p、3nは、第1実施形態における低周波端子3に対応する。一対のLO端子4p、4nは、第1実施形態におけるLO端子4に対応する。4つの主MOSFET6~9は、第1実施形態における主MOSFET5に対応する。
【0036】
高周波端子2pには高周波信号RF_pが入出力され、高周波端子2nには高周波信号RF_nが入出力される。低周波端子3pには低周波信号BB_pが入出力され、低周波端子3nには低周波信号BB_nが入出力される。LO端子4pには局部発振周波数信号LO_pが入力され、LO端子4nには局部発振周波数信号LO_nが入力される。ここで局部発振周波数信号LO_p、LO_nは、位相が180°ずれた、同一周波数の一対の信号である。第1の局部発振周波数信号LO_pは、コンデンサC2pを介して、主MOSFET6、9のゲートにそれぞれ入力される。第2の局部発振周波数信号LO_nはコンデンサC2nを介して、主MOSFET7、8のゲートにそれぞれ入力される。
【0037】
バイアス生成部10Aが生成したゲートバイアス電圧は、抵抗R2pを介して、主MOSFET6、9のゲートにそれぞれ供給される。また、バイアス生成部10Aが生成したゲートバイアス電圧は、抵抗R2nを介して、主MOSFET7、8のゲートにそれぞれ供給される。バイアス生成部10Aが生成したソース・ドレインバイアス電圧は、抵抗R1p,R1nを介して、主MOSFET6~9のドレインにそれぞれ供給される。
【0038】
パッシブミキサ回路1Bにおいて、高周波信号RF_p、RF_nは互いに位相が180°ずれた、同一周波数の一対の信号である。一対の高周波信号RF_p、RF_nが局部発振周波数信号LO_p、LO_nによってダウンコンバージョンされることで、互いに位相が180°ずれた一対の低周波信号BB_p、BB_nが生成される。
【0039】
主MOSFET6~9および副MOSFET11は、同じ型である。たとえば、主MOSFET6~9がp型であれば、副MOSFET11もp型である。また、主MOSFET6~9がn型であれば、副MOSFET11もn型である。本実施形態においても、主MOSFET6~9および副MOSFET11は、チャネル長Lが実質的に同じであることが好ましい。さらに、主MOSFET6~9および副MOSFET11は、チャネル幅Wが実質的に同じであることが好ましい。
【0040】
なお、パッシブミキサ回路1Bはアップコンバージョンを行うことも可能である。アップコンバージョンの場合は、
図3における端子2p、2nを低周波端子として機能させ、低周波信号を入力する。このとき、
図3における端子3p、3nが高周波端子として機能し、高周波信号が出力される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のパッシブミキサ回路1Bは、高周波信号RF_p、RF_nが入出力される高周波端子2p、2nと、高周波信号RF_p、RF_nよりも周波数が低い低周波信号BB_p、BB_nが入出力される低周波端子3p、3nと、局部発振周波数信号LO_p、LO_nが入力されるゲートを有する主MOSFET6~9と、バイアス生成部10Aと、を備える。バイアス生成部10Aは、主MOSFET6~9と同じ型の副MOSFET11と、オペアンプ12を含むボルテージフォロワ回路13と、副MOSFET11のソース11sに直列接続された抵抗素子14と、を有する。副MOSFET11のドレイン11dおよびゲート11gは、ショートされるとともに、ボルテージフォロワ回路13からの出力が直接入力される。オペアンプ12の非反転入力端子12aにはリファレンス電圧が入力される。副MOSFET11のゲート11gの電圧に基づいて生成されるゲートバイアス電圧が、主MOSFET6~9のゲートに供給される。副MOSFET11のソース11sの電圧に基づいて生成されるソース・ドレインバイアス電圧が、主MOSFET6~9のソースまたはドレインに供給される。第1実施形態と同様に、このような構成のパッシブミキサ回路1Bによれば、温度変化に伴う周波数変換の線形性低下を抑制できる。
【0042】
本実施形態の変形例として、アップコンバージョンを行うことが可能なパッシブミキサ回路1B’を、
図4に示す。
図4に示すように、パッシブミキサ回路1B’は、ダウンコンバージョンを行うパッシブミキサ回路1Bと比較して、ソース・ドレインバイアス電圧の供給先と、抵抗R1p、R1nの位置と、が異なる。具体的には、ソース・ドレインバイアス電圧は、抵抗R1p、R1nを介して、主MOSFET6~9のソースに供給される。
【0043】
パッシブミキサ回路1B’において、低周波信号BB_p、BB_nは互いに位相が180°ずれた、同一周波数の一対の信号である。一対の低周波信号BB_p、BB_nが局部発振周波数信号LO_p、LO_nによってアップコンバージョンされることで、互いに位相が180°ずれた一対の高周波信号RF_p、RF_nが生成される。
【0044】
パッシブミキサ回路1B’においても、温度変化に伴う周波数変換の線形性低下を抑制できる。
なお、パッシブミキサ回路1B’はダウンコンバージョンを行うことも可能である。ダウンコンバージョンの場合は、
図4における端子2p、2nを高周波端子として機能させ、高周波信号を入力する。このとき、
図4における端子3p、3nが低周波端子として機能し、低周波信号が出力される。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明するが、第1、第2実施形態と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、バイアス生成部の変形例について説明する。第1実施形態において説明したバイアス生成部10Aは、リファレンス電圧とゲートバイアス電圧とがほぼ等しくなる。
図5に示す本実施形態のバイアス生成部10Bは、リファレンス電圧とソース・ドレインバイアス電圧とがほぼ等しくなる。
【0046】
図5に示すように、バイアス生成部10Bは、オペアンプ12を含むボルテージフォロワ回路13と、中間MOSFET15と、副MOSFET16と、カレントミラー回路20と、抵抗素子17、18と、を備える。副MOSFET16は、第1実施形態における副MOSFET11に対応する。ただし、ボルテージフォロワ回路13からの出力は中間MOSFET15のゲートに入力され、中間MOSFET15はダイオード接続されていない。一方、副MOSFET16には、ボルテージフォロワ回路13からの出力が、カレントミラー回路20等を介して間接的に入力される。
【0047】
抵抗素子18は、第1実施形態における抵抗素子14に対応する。抵抗素子17、18は、抵抗値が互いに等しい。抵抗素子17は中間MOSFET15のソースに直列接続され、抵抗素子18は副MOSFET16のソースに直列接続されている。副MOSFET16はダイオード接続されている。
【0048】
カレントミラー回路20は、第1MOSFET21および第2MOSFET22を含んでいる。第1MOSFET21および第2MOSFET22は、いずれもp型である。第1MOSFET21はダイオード接続されている。第1MOSFET21のドレインは中間MOSFET15のドレインに接続され、第2MOSFET22のドレインは副MOSFET16のドレインに接続されている。第1MOSFET21のゲートは第2MOSFET22のゲートに接続されている。第1MOSFET21のソースおよび第2MOSFET22のソースには、共通の電圧源が接続される。
【0049】
中間MOSFET15および副MOSFET16は、型および構造(チャネル長Lおよびチャネル幅W)が互いに等しいことが好ましい。本実施形態のバイアス生成部10Bでは、副MOSFET16のゲート電圧に基づいてゲートバイアス電圧が生成され、副MOSFET16のソース電圧に基づいてソース・ドレインバイアス電圧が生成される。ゲートバイアス電圧およびソース・ドレインバイアス電圧の供給先は、第1、第2実施形態における説明と同様であるため、省略する。中間MOSFET15および副MOSFET16は、主MOSFETと同じ型である。
【0050】
続いて、本実施形態のバイアス生成部10Bの作用について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。オペアンプ12に入力されたリファレンス電圧は、中間MOSFET15および第1MOSFET21により、電流信号に変換される。第1MOSFET21と第2MOSFET22とはカレントミラー回路20を構成している。このため、第1MOSFET21、中間MOSFET15、および抵抗素子17を含むパスに流れる電流信号と、第2MOSFET22、副MOSFET16、および抵抗素子18を含むパスに流れる電流信号と、が等しくなる。第1MOSFET21と第2MOSFET22のチャネル幅W/チャネル長Lの値、抵抗素子17と抵抗素子18の抵抗値をそれぞれ等しく選ぶことで、副MOSFET16のソース電圧は、中間MOSFET15のソース電圧と等しい値となり、リファレンス電圧とも等しくなる。
【0051】
カレントミラー回路20では、電流信号をそのままコピーすることも可能であり、電流信号を増幅あるいは減衰させてコピーすることも可能である。電流信号をそのままコピーする場合は、第1MOSFET21のチャネル幅W/チャネル長Lの値と、第2MOSFET22のチャネル幅W/チャネル長Lの値を等しくすればよい。電流信号を増幅あるいは減衰させてコピーする場合は、第1MOSFET21のチャネル幅W/チャネル長Lの値と、第2MOSFET22のチャネル幅W/チャネル長Lの値と、を異ならせればよい。この特性を利用して、ゲートバイアス電圧およびソース・ドレインバイアス電圧の大きさを調整することが可能である。
【0052】
以上説明したように、本実施形態のバイアス生成部10Bは、主MOSFETと同じ型の副MOSFET16と、オペアンプ12を含むボルテージフォロワ回路13と、副MOSFET16のソースに直列接続された抵抗素子18と、を有する。副MOSFET16のドレインおよびゲートは、ショートされ、ボルテージフォロワ回路13からの出力が副MOSFET16のゲートに間接的に入力される。オペアンプ12の非反転入力端子12aにはリファレンス電圧が入力され、副MOSFET16のゲート電圧に基づいて生成されるゲートバイアス電圧が主MOSFETのゲートに供給され、副MOSFET16のソース電圧に基づいて生成されるソース・ドレインバイアス電圧が主MOSFETのソースまたはドレインに供給される。
【0053】
さらに本実施形態のバイアス生成部10Bは、中間MOSFET15と、カレントミラー回路20と、を含み、副MOSFET16のドレインおよびゲートには、中間MOSFET15およびカレントミラー回路20を介して、ボルテージフォロワ回路13からの出力が間接的に入力される。
【0054】
本実施形態のバイアス生成部10Bを用いた場合も、第1、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0055】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
例えば、
図1、
図3、
図4には表示されていない構成要素が、それぞれの回路に対して追加されてもよい。あるいは、各図に表示されている構成要素の一部が省略されてもよい。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0058】
例えば、
図1、
図3、
図4に示されるパッシブミキサ回路1A、1B、1B’において、バイアス生成部10Aを、第3実施形態に係るバイアス生成部10Bに置換してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1A、1B、1B’…パッシブミキサ回路 2、2p、2n…高周波端子 3、3p、3n…低周波端子 5~9…主MOSFET 5d…ドレイン 5g…ゲート 5s…ソース 6~9…主MOSFET 10A、10B…バイアス生成部 11、16…副MOSFET 11d…ドレイン 11g…ゲート 11s…ソース 12…オペアンプ 12a…非反転入力端子 12b…反転入力端子 13…ボルテージフォロワ回路 14、18…抵抗素子 15…中間MOSFET 20…カレントミラー回路 BB、BB_n、BB_p…低周波信号 L…チャネル長 LO、LO_n、LO_p…局部発振周波数信号 RF、RF_n、RF_p…高周波信号 W…チャネル幅
【手続補正書】
【提出日】2023-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が入出力される高周波端子と、
前記高周波信号よりも周波数が低い低周波信号が入出力される低周波端子と、
局部発振周波数信号が入力されるゲートを有する主MOSFETと、
バイアス生成部と、を備え、
前記バイアス生成部は、
前記主MOSFETとp型またはn型に関して同じ型の副MOSFETと、
オペアンプを含むボルテージフォロワ回路と、
前記副MOSFETのソースに直列接続された抵抗素子と、を有し、
前記副MOSFETのドレインおよびゲートは、ショートされるとともに、前記ボルテージフォロワ回路からの出力が直接または間接的に入力され、
前記オペアンプの非反転入力端子にはリファレンス電圧が入力され、
前記副MOSFETのゲート電圧に基づいて生成されるゲートバイアス電圧が、前記主MOSFETのゲートに供給され、
前記副MOSFETのソース電圧に基づいて生成されるソース・ドレインバイアス電圧が、前記主MOSFETのソースまたはドレインに供給される、パッシブミキサ回路。
【請求項2】
前記主MOSFETと前記副MOSFETとで、チャネル長が製造誤差を取り除けば同じである、請求項1に記載のパッシブミキサ回路。
【請求項3】
前記主MOSFETと前記副MOSFETとで、チャネル幅が製造誤差を取り除けば同じである、請求項2に記載のパッシブミキサ回路。
【請求項4】
前記バイアス生成部は、中間MOSFETと、カレントミラー回路と、を含み、
前記副MOSFETのドレインおよびゲートには、前記中間MOSFETおよび前記カレントミラー回路を介して、前記ボルテージフォロワ回路からの出力が間接的に入力される、請求項1から3のいずれか一項に記載のパッシブミキサ回路。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が入出力される高周波端子と、
前記高周波信号よりも周波数が低い低周波信号が入出力される低周波端子と、
局部発振周波数信号が入力されるゲートを有する主MOSFETと、
バイアス生成部と、を備え、
前記バイアス生成部は、
前記主MOSFETとp型またはn型に関して同じ型の副MOSFETと、
オペアンプを含むボルテージフォロワ回路と、
前記副MOSFETのソースに直列接続された抵抗素子と、を有し、
前記副MOSFETのドレインおよびゲートは、ショートされるとともに、前記ボルテージフォロワ回路からの出力が直接または間接的に入力され、
前記オペアンプの非反転入力端子にはリファレンス電圧が入力され、
前記副MOSFETのゲート電圧に基づいて生成されるゲートバイアス電圧が、前記主MOSFETのゲートに供給され、
前記副MOSFETのソース電圧に基づいて生成されるソース・ドレインバイアス電圧が、前記主MOSFETのソースまたはドレインに供給される、パッシブミキサ回路。
【請求項2】
前記主MOSFETと前記副MOSFETとで、チャネル長が同じである、請求項1に記載のパッシブミキサ回路。
【請求項3】
前記主MOSFETと前記副MOSFETとで、チャネル幅が同じである、請求項2に記載のパッシブミキサ回路。
【請求項4】
前記バイアス生成部は、中間MOSFETと、カレントミラー回路と、を含み、
前記副MOSFETのドレインおよびゲートには、前記中間MOSFETおよび前記カレントミラー回路を介して、前記ボルテージフォロワ回路からの出力が間接的に入力される、請求項1から3のいずれか一項に記載のパッシブミキサ回路。