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  • 特開-食材冷凍保存方法 図1
  • 特開-食材冷凍保存方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071889
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】食材冷凍保存方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/37 20060101AFI20240520BHJP
   A23L 3/365 20060101ALI20240520BHJP
   A23B 7/045 20060101ALI20240520BHJP
   A23B 7/05 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A23L3/37 A
A23L3/365
A23B7/045
A23B7/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182381
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】521061391
【氏名又は名称】株式会社ロックフローズン
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】増田 湧希
(72)【発明者】
【氏名】増田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 胡桃
(72)【発明者】
【氏名】須藤 清
【テーマコード(参考)】
4B022
4B169
【Fターム(参考)】
4B022LA03
4B022LA05
4B022LB04
4B022LJ06
4B022LN01
4B022LP01
4B022LT02
4B169CA05
4B169CA06
4B169KA07
4B169KB04
4B169KC03
(57)【要約】
【課題】風味等を冷凍前の状態に再現することができる食材冷凍保存方法を提供する。
【解決手段】食材冷凍保存方法は、食材が配置された袋体の内部を窒素に置換する窒素置換工程(S2)と、窒素置換工程を終えた袋体を-50℃以下に冷凍する冷凍工程(S3)と、冷凍工程を終えた袋体を-15℃以下で保存する保存工程(S4)と、保存工程後に、0℃以上で解凍する解凍工程(S5)を有する。解凍工程は、食材が袋体の内部に配置された状態で行われる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材が配置された袋体の内部を窒素に置換する窒素置換工程と、
前記窒素置換工程を終えた前記袋体を-50℃以下に冷凍する冷凍工程と、
前記冷凍工程を終えた前記袋体を-15℃以下で保存する保存工程と、
を有する食材冷凍保存方法。
【請求項2】
前記保存工程後に、0℃以上で解凍する解凍工程を有している請求項1に記載の食材冷凍保存方法。
【請求項3】
前記解凍工程は、前記食材が前記袋体の内部に配置された状態で行われる請求項2に記載の食材冷凍保存方法。
【請求項4】
前記窒素置換工程後の前記袋体の内部の酸素濃度は、1体積%以下とされている請求項1又は2に記載の食材冷凍保存方法。
【請求項5】
前記冷凍工程は、0℃から-5℃までを30分以下で急速冷凍する請求項1又は2に記載の食材冷凍保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、魚介類、食肉、フルーツ、ドーナツなどのスイーツ、米、麦等の食材を冷凍して保存する食材冷凍保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食材を45℃~90℃に加温した後に冷凍して保存する食材冷凍システムが知られている(例えば特許文献1)。食材は、水処理などの前処理を施した後にそのまま加温され、冷凍される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6010240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように食材をそのまま冷凍した冷凍品を解凍すると、冷凍前の風味、食味、食感、色が再現されていないことが知られている。また、冷凍前に食材を袋体内に配置して内部を真空にして冷凍した場合であっても、風味等を冷凍前の状態に再現することが難しい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、冷凍前の食材の風味等を維持することができる食材冷凍保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る食材冷凍保存方法は、食材が配置された袋体の内部を窒素に置換する窒素置換工程と、前記窒素置換工程を終えた前記袋体を-50℃以下に冷凍する冷凍工程と、前記冷凍工程を終えた前記袋体を-15℃以下で保存する保存工程と、を有する。
【0007】
袋体の内部を窒素で置換した後に-50℃以下の超低温まで冷凍することとした。これにより、食材の周囲に存在する酸素を排除することができ、食材の酸化を可及的に防止することができる。-50℃以下の超低温で食材を凍結させてしまえば、-15℃以下の温度で保存しても食材の保存状態を維持することができる。
なお、-18℃以下で保存しても良い。マグロ、カツオ、ブリなどのように-18℃程度でも変色する食材の場合は、-50℃以下または-60℃以下で保存することが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係る食材冷凍保存方法では、0℃以上で解凍する解凍工程を有している。
【0009】
保存工程後は0℃以上で解凍する。冷蔵庫で解凍することとしても良いが、室温で自然解凍することが好ましい。これにより、冷凍前の食材の風味等をより再現することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る食材冷凍保存方法では、前記解凍工程は、前記食材が前記袋体の内部に配置された状態で行われる。
【0011】
食材が袋体の内部に配置された状態で解凍が行われるので、解凍のときに食材が酸素に接触することが回避され、食材の酸化を防止することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る食材冷凍保存方法では、前記窒素置換工程後の前記袋体の内部の酸素濃度は、1体積%以下とされている。
【0013】
窒素置換工程後の酸素濃度を1体積%未満とすることによって、食材の酸化を可及的に防止することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る食材冷凍保存方法では、前記冷凍工程は、0℃から-5℃までを30分以下で急速冷凍する。
【0015】
0℃から-5℃までを30分以下で急速冷凍することによって、氷結生成温度帯で細胞膜が破壊されることを可及的に防止することができる。より好ましくは、0℃から-5℃までを10分以下で急速冷凍する。
【発明の効果】
【0016】
風味等を冷凍前の状態に再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る食材冷凍保存方法を実現する装置示した概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る食材冷凍保存方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の食材冷凍保存方法は、図1に示すように、超低温急速冷凍装置1と、冷凍庫2とを用いて行われる。本実施形態において食材には、野菜、魚介類、食肉、フルーツ、ドーナツなどのスイーツ、米、麦等のあらゆる食材が含まれる。
【0019】
超低温急速冷凍装置1は、例えば庫内で冷風を循環させて食材を冷凍するものであり、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが用いられる。この場合、超低温急速冷凍装置1は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮された冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、これらを制御する制御装置とを備えている。蒸発器によって冷媒が熱を奪うことによって冷風が創り出される。
【0020】
超低温急速冷凍装置1で冷却される食材の到達温度は、-50℃から-80℃の範囲とされ、例えば-60℃が用いられる。0℃から-5℃までを30分以下で食材を急速冷凍できる冷凍速度が用いられる。好ましくは、0℃から-5℃までを10分以下、より好ましくは5分以下で急速冷凍する。
【0021】
冷凍庫2は、急速冷凍された食材を冷凍保存する。冷凍庫2の保存温度としては、-15℃以下とされる。なお、-18℃以下で保存しても良い。マグロ、カツオ、ブリなどのように-18℃程度でも変色する食材の場合は、-50℃以下または-60℃以下で保存することが好ましい。冷凍庫2としては、超低温急速冷凍装置1のような高能力は要求されず、所定の保存温度で維持できる程度の能力を有する一般的な冷凍庫が用いられる。
【0022】
次に、図2を用いて本実施形態の食材冷凍保存方法を説明する。
図2に示すように、先ず、袋体内に食材を配置する(ステップS1)。袋体は、樹脂製とされ、ポリプロピレン、ポリエチレン等が用いられる。
【0023】
そして、食材が配置された袋体の内部を窒素に置換する(ステップS2)。例えば、袋体の一部に小孔を設け、他の位置にノズルを差し込んでノズルから窒素を供給する。これにより、小孔から既存の空気が排出され袋体の内部にはノズルから供給された窒素が充満する。その後、小孔をシール等によって塞ぐとともにノズルを抜き出す。ノズルを抜き出した穴もシール等によって塞いで袋体の内部を窒素が充填された状態で密閉する。充填された窒素の圧力は、大気圧とされている。負圧とすると空気中の酸素を袋体内に導いてしまうので好ましくなく、また、正圧とすると食材が変形したり、食感が損なわれたりしてしまうからである。袋体の内部の酸素濃度は、1体積%以下、より好ましくは0.3体積%未満とされる。
【0024】
そして、超低温急速冷凍装置1の庫内に袋体を配置して、超低温急速冷凍を行う(ステップS3)。このとき、食材は、窒素が充填された袋体の中で0℃から-5℃までを30分以下で急速冷凍される。そして、例えば-60℃まで冷凍凍結される。
【0025】
-60℃等の所定の冷凍凍結温度で冷凍された袋体は、超低温急速冷凍装置1から取り出され、冷凍庫2内で保存される(ステップS4)。冷凍庫2内では-15℃以下で保存される。冷凍庫2内では、食材が利用されるときまで保存される。
【0026】
食材が利用されるタイミングに近づくと、ステップS5に進み、袋体が冷凍庫2から取り出され、室内で自然解凍される。なお、自然解凍ではなく、0℃以上の冷蔵庫で解凍を行っても良い。解凍は、食材を袋体の中に入れたままで行われる。
解凍が終了すると、袋体を破って食材を取り出し、利用に供する。
【0027】
なお、上述した窒素に置換するステップS2(図2参照)において、十分に窒素ガスで置換することが困難な包装商品については、脱酸素剤を併用しても良い。このような包装商品としては、例えば、和菓子、スイーツ、土産物のお菓子などが挙げられる。脱酸素剤としては、例えば、鉄粉を主成分とし、塩、水、天然鉱石(ゼオライト等)を混合したものが用いられる。
【実施例0028】
食材として、シャインマスカットとドーナツを用いて実験を行った。冷凍工程(図2のステップS3)の到達温度としては、-60℃とした。解凍(図2のステップS5)は室温(25℃)で自然解凍とした。
【0029】
実施例1及び2は、本実施形態のように窒素充填(図2のステップS2)を行った。
参考例1及び2は、窒素充填を行わず、袋に食材を配置せずにそのまま冷凍を行った。冷凍及び保存の条件は実施例1及び2と同じである。
実験結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
参考例1及び2は、食味、食感、色ともに冷凍前の食材を再現するには遠く及ばなかった。具体的には、シャインマスカットの場合(参考例1)、食味は水っぽく、食感はズルけた感じになり、色は黒みがかっていた。
これに対して、実施例1及び2は、シャインマスカット及びドーナツのいずれの場合であっても、食味、食感、色ともに変化が殆どなく、冷凍前の食材が再現されていた。
【0032】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
袋体の内部を窒素で置換した後に-50℃以下の超低温まで冷凍することとした。これにより、食材の周囲に存在する酸素を排除することができ、食材の酸化を可及的に防止することができる。-50℃以下の超低温で食材を凍結させてしまえば、-15℃以下の温度で保存しても食材の保存状態を維持することができる。
【0033】
保存工程後は0℃以上で解凍する。冷蔵庫で解凍することとしても良いが、室温で自然解凍することが好ましい。これにより、冷凍前の食材の風味等をより再現することができる。
【0034】
食材が袋体の内部に配置された状態で解凍が行われるので、解凍のときに食材が酸素に接触することが回避され、食材の酸化を防止することができる。
【0035】
窒素置換工程後の酸素濃度を1体積%未満とすることによって、食材の酸化を可及的に防止することができる。
【0036】
0℃から-5℃までを30分以下で急速冷凍することによって、氷結生成温度帯で細胞膜が破壊されることを可及的に防止することができる。より好ましくは、0℃から-5℃までを10分以下で急速冷凍する。
【符号の説明】
【0037】
1 超低温急速冷凍装置
2 冷凍庫
図1
図2