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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007190
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】熱収縮性筒状ラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/04 20060101AFI20240111BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240111BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G09F3/04 C
B65D65/40 A
G09F3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108486
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓也
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA22
3E086AB01
3E086AD16
3E086BA15
3E086BA33
3E086BA35
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB41
3E086BB55
3E086BB58
3E086BB63
3E086BB67
3E086CA11
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】超音波溶着による熱収縮性筒状ラベルを効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、以下のことを含む。第1方向、及び第1方向に直交する第2方向を有し、熱収縮性筒状ラベルとなる部分を、第2方向に沿って複数含む熱収縮性フィルムを準備すること。熱収縮性フィルムの一端部と他端部とを、熱収縮性フィルムの表面及び裏面が対面するように重ね合わせることにより、第2方向に沿って延びる重畳部を形成し、少なくとも一部を第2方向に連続して超音波溶着し、第2方向に沿って連続的に延びるシールラインを形成すること。シールラインを形成することは、熱収縮性フィルムを、超音波溶着機の加振子に対して第2方向に沿って一定速度で搬送することを含み、速度は、100m/分以上、600m/分未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、
主収縮方向である第1方向、及び前記第1方向に直交する第2方向を有し、前記熱収縮性筒状ラベルとなる部分を、前記第2方向に沿って複数含む熱収縮性フィルムを準備することと、
前記熱収縮性フィルムの前記第1方向における一端部と他端部とを、前記熱収縮性フィルムの表面及び裏面が対面するように重ね合わせることにより、前記第2方向に沿って延びる重畳部を形成するとともに、前記重畳部の少なくとも一部を前記第2方向に連続して超音波溶着し、前記第2方向に沿って連続的に延びるシールラインを形成すること
を含み、
前記シールラインを形成することは、前記熱収縮性フィルムを、超音波溶着機の加振子に対して前記第2方向に沿って一定速度で搬送することを含み、
前記速度は、100m/分以上、600m/分未満である、
熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項2】
前記加振子の発振振動数は、20kHz以上である、
請求項1に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項3】
前記加振子の発振振動数は、40kHz以下である、
請求項1または2に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項4】
前記シールラインの前記第1方向に沿った幅は、10mm以下である、
請求項1または2に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項5】
前記シールラインのシール強度は、1.5N/10mm以上である、
請求項1または2に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項6】
前記シールラインを形成することは、前記重畳部の外面側に前記加振子を配置するとともに、前記重畳部の内面側において、前記加振子と対面する位置に前記超音波溶着機のアンビルを配置することと、
前記重畳部が前記加振子と前記アンビルとの間に挟まれ、かつ前記アンビルに接触した状態で前記熱収縮性フィルムを搬送することと
をさらに含み、
前記アンビルは、前記熱収縮性フィルムの搬送に連動して回転するローラの形態であり、前記ローラの外周面には、凹凸が形成されている、
請求項1または2に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項7】
前記シールラインにおける外側面の表面粗さ(μm)をRa1とし、前記シールラインにおける内側面の表面粗さ(μm)をRa2とすると、
Ra1<Ra2である、
請求項1または2に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項8】
前記熱収縮性フィルムを90℃の温水中に10秒間浸漬した場合の前記主収縮方向の熱収縮率は、20%以上である、
請求項1または2に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱収縮性筒状ラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、多層構造のポリプロピレン系の熱収縮フィルムから構成される筒状シュリンクラベルの製造方法を開示する。特許文献1によれば、上記熱収縮フィルムを、熱収縮方向の両端部同士を重ね合わせることにより筒状に形成する。そして、その重ね合わせ部分を多数の突条を備えたローレットで圧接するとともに、超音波溶着機の加振子を圧接し、シール部を形成する。これにより、レトルト殺菌処理において層間のズレによる外観の悪化が生じない筒状シュリンクラベルが提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-291252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の方法では、熱収縮フィルムの両端部を超音波シールすることにより、1つの筒状シュリンクラベルが製造される。しかし、筒状シュリンクラベルを量産する場合、個々の熱収縮フィルムに対して超音波シールを行うのでは、効率が低下しかねない問題がある。特許文献1では、この問題が考慮されていない。
【0005】
本開示は、超音波溶着による熱収縮性筒状ラベルを効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、以下のことを含む。
・主収縮方向である第1方向、及び前記第1方向に直交する第2方向を有し、前記熱収縮性筒状ラベルとなる部分を、前記第2方向に沿って複数含む熱収縮性フィルムを準備すること
・前記熱収縮性フィルムの前記第1方向における一端部と他端部とを、前記熱収縮性フィルムの表面及び裏面が対面するように重ね合わせることにより、前記第2方向に沿って延びる重畳部を形成するとともに、前記重畳部の少なくとも一部を前記第2方向に連続して超音波溶着し、前記第2方向に沿って連続的に延びるシールラインを形成すること
さらに、前記シールラインを形成することは、前記熱収縮性フィルムを、超音波溶着機の加振子に対して前記第2方向に沿って一定速度で搬送することを含み、前記速度は、100m/分以上、600m/分未満である。
【0007】
本開示の第2観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記加振子の発振振動数は、20kHz以上である。
【0008】
本開示の第3観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点または第2観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記加振子の発振振動数は、40kHz以下である。
【0009】
本開示の第4観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第3観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記シールラインの前記第1方向に沿った幅は、10mm以下である。
【0010】
本開示の第5観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第4観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記シールラインのシール強度は、1.5N/10mm以上である。
【0011】
本開示の第6観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第5観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記シールラインを形成することは、前記重畳部の外面側に前記加振子を配置するとともに、前記重畳部の内面側において、前記加振子と対面する位置に前記超音波溶着機のアンビルを配置することと、前記重畳部が前記加振子と前記アンビルとの間に挟まれ、かつ前記アンビルに接触した状態で前記熱収縮性フィルムを搬送することとをさらに含む。前記アンビルは、前記熱収縮性フィルムの搬送に連動して回転するローラの形態であり、前記ローラの外周面には、凹凸が形成されている。
【0012】
本開示の第7観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第6観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記シールラインにおける外側面の表面粗さ(μm)をRa1とし、前記シールラインにおける内側面の表面粗さ(μm)をRa2とすると、Ra1<Ra2である。
【0013】
本開示の第8観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第7観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記熱収縮性フィルムを90℃の温水中に10秒間浸漬した場合の前記主収縮方向の熱収縮率は、20%以上である。
【発明の効果】
【0014】
上記観点によれば、超音波溶着によるシールが形成された熱収縮性筒状ラベルを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】熱収縮性筒状ラベルの製造方法を説明する図。
図2】熱収縮性フィルムを含む印刷済みフィルム等の断面模式図。
図3】熱収縮性筒状ラベルの製造方法の流れを示すフローチャート。
図4】超音波溶着機を用いたシール方法を説明する図。
図5A】シールラインの横断面模式図。
図5B】シールラインの横断面模式図。
図6】シールラインの不具合を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法、及び熱収縮性筒状ラベルを構成する熱収縮性フィルムについて、図を参照しながら説明する。なお、以下の図は、説明の便宜上適宜デフォルメされており、必ずしも実際の寸法やその比率を反映したものではない。
【0017】
<1.概要>
図1は、熱収縮性筒状ラベル1(以下、単に「筒状ラベル1」とも称する)の製造方法を説明する図である。筒状ラベル1は、典型的には、ペットボトルを含むプラスチック製の容器、金属製の容器及びガラス製の容器等の外側に装着されるシュリンクラベルである。筒状ラベル1は、複数のラベルデザインが規則的に印刷された熱収縮性フィルム10(以下、単に「フィルム10」とも称する)から作製される。
【0018】
フィルム10は、主として熱可塑性樹脂から構成されるフィルムであり、熱収縮性を有する。フィルム10は、幅方向(第1方向)と、幅方向に直交する長手方向(第2方向)とを有する。図1では、矢印A1が幅方向を示し、矢印A2が長手方向を示す。以下では、図1に示す方向を基準に説明する。
【0019】
図2は、フィルム10の断面模式図である。図2に示すように、本実施形態のフィルム10は3層構成であり、中間層11と、中間層11の両面に隣接してそれぞれ積層される2つの表層12とを備える。中間層11及び表層12は、それぞれ熱可塑性樹脂を主として含有する層である。フィルム10の各層を構成する熱可塑性樹脂及びその他の材料については、後述する。
【0020】
フィルム10は、一方の表層12の表面上に積層されるインキ層13をさらに備える。インキ層13は、1または複数種の印刷用インキにより構成される層であり、フィルム10の長手方向に沿って、複数の同じラベルデザインを繰り返し表示する規則的なパターンを表層12上に形成する。以下、インキ層13を備える面をフィルム10の裏面120と称し、インキ層13を備えない面をフィルム10の表面121と称する。フィルム10は、かかるインキ層13が構成されることにより、後に筒状ラベル1となる部分を長手方向に沿って複数含む。なお、本実施形態のラベルデザインは、筒状ラベル1の軸方向が長手方向に、周方向が幅方向に、それぞれ一致するように配置される。また、本実施形態のフィルム10は、長手方向に巻かれたロールの状態で準備される。
【0021】
フィルム10は、本実施形態では延伸フィルムである。フィルム10のMD(machine direction)方向は長手方向と一致し、TD(transverse direction)方向は幅方向と一致する。本実施形態では、TD方向が主収縮方向である。フィルム10を90℃の温水中に10秒間浸漬し、その後すぐに取り出して20℃の水に浸漬し、その10秒後に取り出した時のTD方向の熱収縮率は、20%以上であることが好ましい。
【0022】
フィルム10の総厚みは、20μm以上、70μm以下であることが好ましく、30μm以上、60μm以下であることがより好ましく、35μm以上、55μm以下であることがさらに好ましい。
【0023】
<2.筒状ラベルの製造方法>
[準備工程]
図3は、筒状ラベル1の製造方法の流れを示すフローチャートである。筒状ラベル1の製造方法では、まず、上述したようなフィルム10のロールが準備される(ステップS1)。ロールは、例えば図示しない搬送装置にセットされる。このような搬送装置では、ロールを一方向に回転させることにより、平面状のフィルム10が連続して繰り出される。
【0024】
[搬送開始工程]
続いて、一定の搬送速度で、長手方向に沿ってフィルム10の搬送を開始する(ステップS2)。これにより、フィルム10の複数のラベル表示部分が、図1の矢印A2の方向に沿って順次繰り出される。搬送速度は、100m/分以上、600m/分未満であることが好ましく、100m/分以上、400m/分以下であることがより好ましく、100m/分以上、200m/分以下であることがさらに好ましい。搬送速度を上記範囲とすることで、生産効率を維持することができる一方、後に形成されるシールライン101のシール強度を確保することができ、また、シールライン101の破れ、シワ、波打ち等の外観不良が抑制される。なお、本実施形態では、フィルム10の搬送速度は、シールライン101の形成速度と一致する。
【0025】
[重畳部形成工程]
フィルム10は、上述したように搬送されながら、表面121及び裏面120が対面するように、幅方向における一端部と他端部とを重ね合わせられる。これにより、長手方向に沿って延びる重畳部100が形成される(ステップS3)。本実施形態では、表面121が重畳部100の外側面となり、裏面120が重畳部100の内側面となるような態様でフィルム10の端部同士の重ね合わせが行われる。
【0026】
[シールライン形成工程]
続いて、重畳部100におけるフィルム10を、超音波溶着機を用いて連続的に超音波溶着することにより、長手方向に沿って連続的に延びるシールライン101を形成する(ステップS4)。本実施形態の超音波溶着機は、図示しない発振器と、加振子2と、アンビル3とを備える(図4参照)。加振子2は、発振器から所定の電圧を印加されて振動する振動子と、振動子の振幅を増幅させ、溶着対象物に圧力を加えつつ振動子の振動を伝えるホーンとを含む。加振子2は、重畳部100の外面側における定位置に予め配置される。これにより、重畳部100を含むフィルム10は、加振子2に対して一定速度で搬送される。本実施形態の加振子2は、フィルム10の搬送に連動して回転するロータリーホーンを含んでいる。
【0027】
本実施形態のアンビル3は、重畳部100の内面側において、加振子2と対面する位置に予め配置される。アンビル3は、溶着対象物を挟んで加振子2からの加圧力を受ける剛性の部材であり、本実施形態では、フィルム10の搬送に連動して回転するローラの形態に構成される。図4に示すように、アンビル3の外周面30には、凹凸が形成されている。重畳部100は、加振子2とアンビル3との間に加圧されながら挟まれ、かつ外周面30に接触した状態で搬送される。これにより、重畳部100において、加振子2とアンビル3との間に挟まれている部分の熱可塑性樹脂が互いに溶着したシールライン101が形成される。シールライン101には、アンビル3の外周面30の凹凸に対応したアンビル痕が形成される。これにより、加振子2とアンビル3との間に挟まれている部分において、機械的振動に起因して発生する摩擦熱により溶融したフィルム10同士の接触面積がより大きくなり、シール強度が向上する。
【0028】
シールライン101は、重畳部100の幅方向全体に亘って形成されていなくてもよく、重畳部100の幅方向の少なくとも一部に亘って形成されていればよい。また、図5Aに示すように、シールライン101は、少なくともフィルム10の外端100aに達するように形成されることが好ましい。しかし、例えば図5Bに示すように、シールライン101は、フィルム10の外端100aに達さず、外端100aと内端100bとの間に形成されてもよい。
【0029】
なお、シール強度を向上させる観点からは、シールライン101となる範囲において、表層12を構成する熱可塑性樹脂が、直接対面することが好ましい。すなわち、シールライン101は、互いに対面する裏面120と、表面121との間に、インキ層13やオーバーコート剤を含まないで形成されることが好ましい。
【0030】
加振子2の発信振動数は、20kHz以上、40kHz以下であることが好ましく、25kHz以上、35kHz以下であることがより好ましい。加振子2の発信振動数を上記範囲とすることで、筒状ラベル1を容器に装着し、熱収縮させた後のシールライン101の不具合が生じにくくなる。熱収縮後の不具合としては、シールライン101のそのものの剥離、及びシールライン101におけるフィルム10の層間の剥離が挙げられ、以下ではこれらをシールラインの「ずれ」と称することがある(図6参照)。
【0031】
シールライン101の幅方向に沿った幅(シール幅)W1は、0.5mm以上、15mm以下であることが好ましく、1mm以上、10mm以下であることが好ましく、2mm以上、7mm以下であることがさらに好ましい。シール幅W1を上記下限以上とすることで、シールライン101のシール強度を確保することができる。一方、シール幅W1を上記上限以下とすることで、筒状ラベル1の外観を良好に保ちながら、筒状ラベル1を効率的に製造することができる。
【0032】
上記のように、外周面30に凹凸が形成されたアンビル3を用いる場合の凹凸の形状は特に限定されないが、シールライン101における外側面1010の算術平均粗さ(表面粗さ)Ra1(μm)及びシールライン101における内側面1011の算術平均粗さ(表面粗さ)Ra2(μm)は、Ra1<Ra2の関係を満たすことが好ましい。算術平均粗さRa(μm)は、JIS B 0601に準拠する方法で測定することができる。なお、測定範囲は、シールライン101において、アンビル痕が形成された箇所を含む範囲とし、基準長さは、シールライン101の延びる方向に沿って10mmとする。
【0033】
なお、落下等の衝撃によるシールライン101の破損を抑制する観点からは、シールライン101における算術平均粗さRa1(μm)及び算術平均粗さRa2(μm)、ならびに最大高さRz1(μm)及び最大高さRz2(μm)は小さいことが好ましい。
【0034】
シールライン101のシール強度(180°剥離力)は、1.5N/10mm以上であることが好ましい。シール強度が1.5N/10mm以上であると、筒状ラベル1を容器に装着し、熱収縮させた後でも上述したようなシールライン101の不具合が生じにくくなる。
【0035】
[巻き取り工程]
本実施形態では、シールライン101が形成され、長尺筒状体となったフィルム10は、図示しない巻き取りロールによって、筒を平たく折り畳まれた状態で先端から連続して巻き取られる(ステップS5)。これにより、巻き取りロールにおいては、複数の筒状ラベル1が長手方向に連続する、長尺筒状体のロールが形成される。
【0036】
[搬送終了工程]
ロールから繰り出されたフィルム10の最後までシールライン101が形成され、長尺筒状体として巻き取りロールによって巻き取られると、1ロール分のフィルム10の搬送が終了する(ステップS6)。
【0037】
[カット工程]
ステップS6の後、得られた長尺筒状体のロールにおいて、隣接する筒状ラベル1と筒状ラベル1との間をそれぞれカットすると、軸方向に延びるシールライン101を有する、複数の個片化された筒状ラベル1が得られる(ステップS7)。
【0038】
<3.熱収縮性フィルムの構成>
フィルム10は、オレフィン系樹脂を主成分とするオレフィン系フィルム、スチレン系樹脂を主成分とするスチレン系フィルム、及びエステル系樹脂を主成分とするエステル系フィルムのいずれであってもよいが、オレフィン系フィルムが好ましい。
【0039】
オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂及びこれらのうち少なくとも2種類が混合された混合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、中間層11及び表層12のいずれにも用いることができる。フィルム10は、これらの樹脂を用いて、全体としての比重が1未満となるように構成されることが特に好ましい。以下、それぞれの樹脂について説明する。
【0040】
[エチレン系樹脂]
エチレン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、及びこれらの混合物等が挙げられる。この中では、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。エチレン系樹脂を含有することにより、環状オレフィン系樹脂の皮脂白化を抑制することができる。
【0041】
直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。α-オレフィンとしては、具体的には、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等からなるものが好ましく、2種類以上のα-オレフィンを含んでいても良い。直鎖状低密度ポリエチレンの比重は、通常0.910~0.940である。
【0042】
上述したような直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の市販品としては、エボリュー(プライムポリマー社製)、ユメリット(宇部丸善ポリエチレン社製)、ノバテック(日本ポリエチレン社製)等が挙げられる。
【0043】
フィルム10は、表層12にプロピレン系樹脂を含有することが好ましく、表層12及び中間層11にプロピレン系樹脂を含有することがより好ましい。プロピレン系樹脂としては、プロピレンを主成分として、α-オレフィンを共重合成分とするプロピレン系2元共重合樹脂、または、プロピレン系3元共重合樹脂が好ましく、プロピレン系3元ランダム共重合樹脂が特に好ましい。共重合成分であるα-オレフィンの比率は1~10モル%であるのが好ましい。また、プロピレン系樹脂は、異なるプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体の混合物であってもよい。α-オレフィンについては、上述したとおりである。プロピレン系樹脂の比重は、通常0.900~0.910である。また、プロピレン系樹脂には、長鎖分岐ポリプロピレン、プロピレン系エラストマー等が含まれていてもよい。
【0044】
プロピレン系共重合樹脂は、環状オレフィン系樹脂の皮脂白化を抑制し、フィルム10の熱収縮性を向上させる。また、ホモプロピレンと比較して融点が低いことにより、シールライン101の接触界面における溶着性を向上させる。さらに、表面粗さを低下させ、これにより落下等の衝撃によるシールライン101の破損を抑制する。
【0045】
表層12及び中間層11がともにプロピレン系3元共重合樹脂を含有する場合、中間層11に含有される熱可塑性樹脂全体に対する、中間層11のプロピレン系3元共重合樹脂の含有割合は、表層12に含有される熱可塑性樹脂全体に対する表層12のプロピレン系3元共重合樹脂の含有割合よりも高いことが好ましい。より厚みが大きい中間層11の方が、高い割合でプロピレン系3元共重合樹脂を含有することにより、フィルム10の熱収縮性をより確実に向上させることができる。
【0046】
[環状オレフィン系樹脂]
環状オレフィン系樹脂は、非晶性の樹脂であり、フィルム10の結晶性を低下させ、熱収縮率を高めるとともに、製造時の延伸性も高めることができる。環状オレフィン系樹脂とは、例えば(a)エチレンまたはプロピレンと環状オレフィンとのランダム共重合体、(b)該環状オレフィンの開環重合体またはα-オレフィンとの共重合体、(c)上記(b)の重合体の水素添加物、(d)不飽和カルボン酸及びその誘導体等による(a)~(c)のグラフト変性物等である。
【0047】
環状オレフィンとしては特に限定されず、例えば、ノルボルネン、6-メチルノルボルネン、6-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、6-nーブチルノルボルネン、1-メチルノルボルネン、7-メチルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン等、ノルボルネン及びその誘導体が挙げられる。さらに、テトラシクロドデセン、8-メチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチルテトラシクロ-3-ドデセン、5,10-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン等、テトラシクロドデセン及びその誘導体が挙げられる。α-オレフィンについては、上述したとおりである。
【0048】
表層12は、環状オレフィン系樹脂を含有する場合、表層12に含有される熱可塑性樹脂全体に対し、環状オレフィン系樹脂を55重量部未満含有することが好ましく、45重量部未満含有することがより好ましい。環状オレフィン系樹脂は、非晶性樹脂であることにより超音波溶着性に優れているが、一方で皮脂白化を起こしやすい。環状オレフィン系樹脂の含有量を上記上限以下とすることで、皮脂白化を抑制することができる。
【0049】
上述したような環状オレフィン系樹脂の市販品としては、アペル(三井化学社製)、TOPAS COC(ポリプラスチックス社製)、ZEONOR(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0050】
[石油樹脂]
石油樹脂は、ナフサの熱分解によってエチレン、プロピレン、ブタジエン等を取り去った残りのC4~C5留分(主としてC5留分)やC5~C9留分(主としてC9留分)、あるいはこれらの混合物を重合して得られる樹脂であり、例えばシクロペンタジエンまたはその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂が挙げられる。フィルム10の100℃以下における軟化を抑制したり、透明性や剛性を確保する観点からは、一部または完全に水素化された脂環構造を有する、水添脂環式石油樹脂が好ましい。また、C5留分やC9留分中の単一、または複数の成分を精製し重合したものであっても同じく使用することができる。
【0051】
上述したような石油樹脂の市販品としては、例えばアイマーブ(出光興産社製)、アルコン(荒川化学工業社製)、Regalite(Eastman社製)等が挙げられる。
【0052】
[テルペン樹脂等]
テルペン樹脂としては、αピネンまたはβピネンからのテルペン樹脂、αピネン及びβピネン等の共重合物、芳香族変性テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、及び水添テルペン樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、グリセリンやペンタエリスリトール等で変性したエステル化ロジン、及び水添ロジン系樹脂等が挙げられる。
【0053】
[その他の成分]
その他、フィルム10には、必要に応じて、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0054】
<4.フィルムの製造方法>
フィルム10を製造する方法は特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好ましい。上記共押出法がTダイによる共押出である場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、または、これらを併用した方法のいずれであってもよい。
【0055】
具体的には、例えば、中間層11及び表層12を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、ダイスによりシート状に押出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸または2軸に延伸する方法が挙げられる。上記延伸の方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法またはこれらの組み合わせを用いることができる。延伸温度は、フィルム10を構成する樹脂の軟化温度、フィルム10に要求される収縮特性等に応じて変更されるが、65℃以上、120℃以下であることが好ましく、70℃以上、115℃以下であることがより好ましい。
【0056】
主収縮方向の延伸倍率は、フィルム10を構成する樹脂、延伸手段、延伸温度等に応じて変更されるが、3倍以上、7倍以下が好ましく、4倍以上、6倍以下がより好ましい。
【0057】
<5.特徴>
本実施形態に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法によれば、筒状ラベル1となるべき部分を多数含むフィルム10から、筒状ラベル1が複数連続した長尺筒状体が、まず作製される。このため、フィルム10を個々のラベル単位に予め切り離し、これらを個別に超音波溶着機にセットし、両端部をシールするよりも効率的に筒状ラベル1を製造することができる。また、フィルム10の搬送速度を100m/分以上、600m/分未満とすることで、フィルム10の両端部が確実に固着されたシールライン101を効率よく形成することができる。
【0058】
上記製造方法では、超音波溶着によるシール方式が採用されている。これにより、テープや溶剤等のシール剤を使用せずに済み、溶剤による温室効果ガスの排出を抑えることができる。溶剤を使用したシール方式では、溶剤が膨潤することがあり、巻き取り工程において、折り畳まれた長尺筒状体のシールラインと、シールラインに対向する部分との間でブロッキングが生じやすい問題もある。超音波溶着によるシール方式では、このような溶剤の膨潤に起因するブロッキングを回避することができる。また、筒状ラベル1のシールライン101は、表面121と裏面120との間にシール剤の層を有さないため、リサイクルの効率及び品質を向上させることができる。
【0059】
一方、フィルム10に熱を加えるヒートシール方式では、フィルム10を溶着するために多くの熱を必要とする上に、シール後には冷却のための時間を必要とするが、上記方法では、多くの熱及び冷却時間を必要としない。このため、省エネルギーと製造効率性の観点においても上記製造方法は優れている。
【0060】
上記製造方法において、フィルム10の搬送速度に加え、加振子2の発信振動数を20kHz以上、40kHz以下とし、さらに外周面30に凹凸が形成されたアンビル3によるローレット加工を行うことにより、シール強度が1.5N/10mm以上であり、熱収縮後の不具合が少ない筒状ラベル1を製造することができる。
【0061】
<6.変形例>
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0062】
<6-1>
アンビル3の外周面30の断面形状は、特に限定されない。シールライン101のシール強度を好ましい範囲とする観点からは、アンビル3は、アンビル3の径方向外側に突出する複数の凸部を備えていることが好ましい。
【0063】
<6-2>
フィルム10は、上記のような3層構成に限定されず、例えば単層であってもよいし、5層構成であってもよい。また、フィルム10は、二軸延伸フィルムであってもよく、一軸延伸フィルムであってもよい。
【0064】
<6-3>
上記実施形態では、シールライン101が形成され、長尺筒状体となったフィルム10は、巻き取りロールによって巻き取られた。しかしながら、巻き取り工程を省略し、長尺筒状体となったフィルム10の先端から、順次筒状ラベル1を切り離して個別化された筒状ラベル1を得てもよい。
【0065】
<6-4>
上記実施形態では、インキ層13を備える裏面120が内側面となり、表面121が外側面となるように重畳部100が形成された。しかしながら、裏面120が外側面となり、表面121が内側面となるように重畳部100が形成されてもよい。
【0066】
<6-5>
フィルム10の搬送速度は、加振子2に対する相対的な速度を意味する。すなわち、上記実施形態では、搬送されるフィルム10に対し、加振子2の位置が固定されていたが、加振子2が一定速度で長手方向に沿って移動しながらシールライン101を形成してもよく、加振子2に対するフィルム10の相対搬送速度が100m/分以上、600m/分未満であればよい。
【0067】
<6-6>
筒状ラベル1のラベルデザインは、筒状ラベル1の軸方向が幅方向に、周方向が長手方向に、それぞれ一致するように配置されてもよい。
【実施例0068】
以下、本開示の実施例について詳細に説明する。但し、本開示は、これらの実施例に限定されない。
【0069】
<1.実施例及び参考例の準備>
中間層、及び中間層の両面に隣接して積層される表層を構成する原料として、表1に示す物性を有する原料を表2に示す割合で配合し、実施例1~7及び比較例1に係る熱収縮性フィルムの中間層及び表層を構成する樹脂組成物をそれぞれ作製した。
【表1】
【表2】
【0070】
上記樹脂組成物を、中間層及び表層を構成する樹脂組成物ごとに溶融させ、Tダイから共押出して、30℃に冷却したロールで冷却固化し、未延伸の樹脂フィルムを作製した。これを温度95℃のテンター式延伸機でTD方向に5倍に延伸し、中間層の両面に隣接して表層が積層された3層構成の熱収縮性フィルムを作製した。熱収縮性フィルム全体の長さ、幅、厚み、中間層の厚み、及び表層の厚みは、実施例1~7及び比較例1で共通とした。各熱収縮性フィルムの幅は、市販のペットボトル装着用の筒状ラベルを想定した幅とし、幅方向はTD方向と一致させた。
【0071】
実施例1~7及び比較例1に係る熱収縮性フィルムを、それぞれ表3に示す搬送速度で超音波溶着機(DUKANE社 超音波シールユニット)に対して搬送し、表3に示す条件で幅3mmのシールラインが形成された長尺筒状体を作製した。実施例6では、発信振動数(周波数)を15kHzとした。実施例7では、ローレット加工を省略した。比較例1では、搬送速度を600m/sとした。
【表3】
【0072】
<2.評価>
実施例1~7及び比較例1に係る熱収縮性フィルム、長尺筒状体及び筒状ラベルについて、以下の評価を行った。
【0073】
<2-1.熱収縮率>
実施例1~7及び比較例1に係る熱収縮性フィルムの任意の箇所から、TD方向100mm、MD方向100mmのサンプルをそれぞれ5枚ずつ切り出した。各サンプルを90℃の温水に10秒間浸漬し、その後すぐに取り出して20℃の水に浸漬し、10秒後に取り出した。その後、各サンプルのTD方向の長さL(mm)を測定し、以下の式に従ってTD方向の収縮率(%)をそれぞれ算出した。実施例1~7及び比較例1に係る熱収縮性フィルムにつき、各サンプルの収縮率の平均値を熱収縮率とした。
収縮率(%)={(100-L)/100}×100
【0074】
熱収縮率の評価は、以下の通りとした。
評価A:熱収縮率が20%以上(熱収縮性が充分である)
評価B:熱収縮率が20%未満(熱収縮性が不充分である)
【0075】
<2-2.シール強度>
実施例1~7及び比較例1に係る長尺筒状体から、長手方向の長さが10mmとなる筒状のサンプルを5枚ずつ切り出し、各々、シールラインの反対側を切り開いて、シールラインが中心に配置された20cm程度の短冊状のサンプルを作製した。このサンプルを用いて、離着性強度試験機(HEIDON TYPE17、新東科学社製)により180°方向の剥離力を測定し、5枚のサンプルの平均値を実施例1~7及び比較例1のシール強度とした。好ましいシール強度は、1.5N/10mm以上とした。
【0076】
<2-3.シールラインの表面粗さ>
実施例1~7及び比較例1に係る長尺筒状体から、シールラインの部分を含む平面状のサンプルを5枚ずつ切り出した。これらのサンプルについて、JIS B 0601に準拠し、シールラインの外側面における表面粗さと内側面とにおける表面粗さとをそれぞれ測定した(基準長さ10mm)。これらの測定値から、サンプル5枚の平均値を算出し、それぞれの外側面の表面粗さRa1(μm)及び内側面の表面粗さRa2(μm)とした。
【0077】
<2-4.シールラインの最大高さ>
実施例1~7及び比較例1に係る長尺筒状体から、シールラインの部分を含む平面状のサンプルを5枚ずつ切り出した。これらのサンプルについて、シールラインの外側面の最大高さと内側面の最大高さとをそれぞれ測定した(基準長さ10mm)。これらの測定値から、サンプル5枚の平均値を算出し、それぞれの外側面の最大高さRz1(μm)及び内側面の最大高さRz2(μm)とした。
【0078】
<2-5.シールラインの外観検査>
実施例1~7及び比較例1に係る長尺筒状体から、筒状のサンプルを5枚ずつ切り出し、シールラインに破け、シワ及び波打ちが発生しているか否かを確認した。外観の評価は、以下の通りとした。
評価A:5枚のサンプル全てにおいて、破け、シワ及び波打ちのいずれも確認されなかった。
評価B:破け、シワ及び波打ちの少なくとも1つが確認されたサンプルが存在した。
【0079】
<2-6.熱収縮後のずれ検査>
実施例1~7及び比較例1に係る長尺筒状体から、折径108.5mm、長手方向の長さ100mmの筒状のサンプルを5枚ずつ切り出し、筒状ラベルとした。これを一般的な飲料用のボトル缶(蓋を閉めた状態)に被せ、まず筒状ラベルの下端を100℃沸騰水に1秒間浸漬し、筒状ラベルをボトル缶に固定した後、ボトル缶から筒状ラベルがずれないように全体を沸騰水に30秒間浸漬した。その後、筒状ラベルをカッターで切り開いてボトル缶から取り外し、水分を拭き取った。切り開いた筒状ラベルから、ボトル缶の形状に由来して折れ曲がった部位を取り除き、シールラインを含むサンプルを切り出して両面テープで台紙に貼り付け、顕微鏡によりシールラインにずれがないかを確認した。ずれの評価は、以下の通りとした。
評価A:サンプル全てにおいて、ずれが確認されなかった。
評価B:ずれが確認されたサンプルが存在した。
【0080】
<2-7.耐寒屈曲ずれ検査>
実施例1~7及び比較例1に係る長尺筒状体から、折径108.5mm、長手方向の長さ100mmの筒状のサンプルを4枚ずつ切り出し、筒状ラベルとした。これらの筒状ラベルを、5℃に設定した恒温恒湿室に1時間静置した。続いて、同じ環境下で、各筒状ラベルのシールラインを挟むように持ち、長手方向に対して-90°から90°の範囲で折り曲げ、20回屈曲させた。この屈曲動作をシールラインの長手方向の4か所について均等に行った後、恒温恒湿室を23℃50%RHの環境とし、その中に各筒状ラベルを1時間静置した。そして、各筒状ラベルを一般的な飲料用のボトル缶(蓋を閉めた状態)に被せ、まず筒状ラベルの下端を100℃沸騰水に1秒間浸漬し、筒状ラベルをボトル缶に固定した後、ボトル缶から筒状ラベルがずれないように全体を沸騰水に10秒間浸漬した。その後は熱収縮後のずれ検査と同様、顕微鏡によりシールラインを観察し、ずれがないかを確認した。ずれの評価は、熱収縮後のずれ検査と同様とした。
【0081】
<2-8.屈曲耐熱ずれ検査>
熱収縮後のずれ検査及び耐寒屈曲ずれ検査と同様に、実施例1~7及び比較例1に係る筒状ラベルを作製した。23℃の環境下で、耐寒屈曲ずれ検査と同様の要領で、各筒状ラベルのシールラインの長手方向の5か所を20回ずつ屈曲させた。その後、各筒状ラベルをガラス瓶に被せ、熱旋風式シュリンク装置(トルネード2001 日本テクノロジーソリューション社製)を用いて、余熱部温度140℃、風量30Hz、加熱部温度250℃、風量40Hz、トンネル通過時間33secの条件で筒状ラベルをガラス瓶に収縮装着させた。なお、熱旋風式シュリンク装置内でのガラス瓶の向きは、熱風が筒状ラベルのシールラインに直接当たるように調整した。
【0082】
その後、筒状ラベルをカッターで切り開いてガラス瓶から取り外し、生じたシールラインのずれの長手方向に沿った長さW2を測定した(図6参照)。ただし、ずれが長手方向に断続的に生じた場合は、各ずれの長さW2を合計したものをずれの長さとした。同じ試験を20回行い、ずれの長さ(長さW2の合計)の平均値を算出した。ずれの長さの評価は、以下の通りとした。
評価A:ずれの長さが10mm未満であった(ずれが抑制できていた)。
評価B:ずれの長さが10mm以上であった(ずれが生じ易かった)。
【0083】
<3.評価結果>
評価結果は以下の表4の通りとなった。
【表4】
【0084】
比較例1では、180°剥離力が極めて弱く、シールラインの溶着が維持できなかったため、外観検査及び装着後の評価を行うことができなかった。このため、搬送速度は600m/分未満が良いことが確認された。また、実施例6及び7は、外観検査では問題がなかったが、装着後の評価がいずれも評価Bとなった。これは、実施例6では発振振動数を15kHzとし、実施例7ではアンビル加工を行わなかったため、シールラインに凹凸が十分に形成されず、180°剥離力が1.5N/10mmに満たなかったためと考えられる。一方、180°剥離力が1.5N/10mm以上である実施例1~5では、ボトルに装着し、熱収縮させた後のシールラインのずれが充分に抑制された。なお、実施例1~5の結果からは、180°剥離力が比較的大きいとRa1<Ra2となり、180°剥離力が大きくなるに従い、表面粗さRa1及びRa2、並びに最大高さRz1及びRz2が大きくなる傾向が見られた。
【符号の説明】
【0085】
1 筒状ラベル
2 加振子
3 アンビル
10 熱収縮性フィルム
11 中間層
12 表層
13 インキ層
30 外周面
100 重畳部
101 シールライン
120 裏面
121 表面
1010 外側面
1011 内側面
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6