(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007194
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】熱収縮性筒状ラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 3/04 20060101AFI20240111BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240111BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G09F3/04 C
B65D65/40 A
G09F3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108498
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓也
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA22
3E086AB01
3E086AD16
3E086BA15
3E086BA33
3E086BA35
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB41
3E086BB55
3E086BB58
3E086BB63
3E086BB67
3E086CA11
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】十分なシール強度を有する熱収縮性筒状ラベルを製造する方法を提供する。
【解決手段】熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、熱収縮性フィルムを準備することと、インキ層が積層された印刷領域を含む印刷済みフィルムを作製することと、熱収縮性筒状ラベルとなる部分が複数連続したスリットフィルムを作製することと、及びスリットフィルムの一端部と他端部とを、スリットフィルムの第1面と、第1面の裏側の第2面とが対面するように重ね合わせることにより、重畳部を形成するとともに、重畳部の少なくとも一部を連続して超音波溶着し、連続的に延びるシールラインを形成することとを含み、シールラインは、互いに対面する第1面と第2面との間に、印刷領域を含まない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、
主収縮方向である第1方向、及び前記第1方向に直交する第2方向を有する熱収縮性フィルムを準備することと、
前記熱収縮性フィルムの第1面に、1または複数のインキ層を積層することにより、前記熱収縮性筒状ラベルのデザインを表示するラベル領域であって、前記第1方向及び前記第2方向に沿って複数配列されるラベル領域が形成された印刷済みフィルムを作製することと、
前記印刷済みフィルムを、前記ラベル領域が一列となるように前記第2方向に切り離し、前記第2方向に沿って前記熱収縮性筒状ラベルとなる部分が複数連続したスリットフィルムを作製することと、
前記スリットフィルムの前記第1方向における一端部と他端部とを、前記スリットフィルムの第1面と、前記第1面の裏側の第2面とが対面するように重ね合わせることにより、前記第2方向に沿って延びる重畳部を形成するとともに、前記重畳部の少なくとも一部を前記第2方向に連続して超音波溶着し、前記第2方向に沿って連続的に延びるシールラインを形成することと
を含み、
前記ラベル領域は、前記インキ層が積層された印刷領域と、前記インキ層が積層されず、少なくとも前記第2方向に延びる非印刷領域とを含み、
前記シールラインは、互いに対面する前記第1面と前記第2面との間に、前記印刷領域を含まない、
熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項2】
前記印刷済みフィルムを作製することは、前記ラベル領域の前記第2面側において、オーバーコート剤が積層されたオーバーコート領域と、前記オーバーコート剤が積層されず、少なくとも前記第2方向に沿って延びる非オーバーコート領域とを形成することを含み、
前記シールラインは、互いに対面する前記第1面と前記第2面との間に、前記オーバーコート領域を含まない、
請求項1に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項3】
前記シールラインを形成することは、前記第1面が内側を向き、前記第2面が外側を向くように前記重畳部を形成することを含む、
請求項1または2に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項4】
前記熱収縮性フィルムは、熱可塑性樹脂を主として含有する中間層と、熱可塑性樹脂を主として含有し、前記中間層の表面及び裏面にそれぞれ隣接して積層される表層とを備える、
請求項1または2に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項5】
前記表層は、プロピレン系樹脂を含有する、
請求項4に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項6】
前記プロピレン系樹脂は、プロピレン系3元共重合樹脂及びプロピレン系2元共重合樹脂の少なくとも一方を含む、
請求項5に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項7】
前記表層と、前記中間層とは、ともにプロピレン系3元共重合樹脂を含有し、
前記中間層に含有される熱可塑性樹脂全体に対する、前記中間層に含有されるプロピレン系3元共重合樹脂の割合は、前記表層に含有される熱可塑性樹脂全体に対する、前記表層に含有されるプロピレン系3元共重合樹脂の割合よりも高い、
請求項4に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項8】
前記表層の厚みを1とする前記中間層の厚みは、3以上、8以下である、
請求項7に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項9】
前記表層は、前記表層に含有される熱可塑性樹脂全体を100重量部とした場合に、環状オレフィン系樹脂を55重量部未満含有する、
請求項4に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項10】
前記熱収縮性フィルムは、前記第1面を構成する層と、前記第2面を構成する層とにおいて、環状オレフィン系樹脂を含まない、
請求項1または2に記載の熱収縮性筒状ラベルの製造方法。
【請求項11】
熱収縮性筒状ラベルであって、
主収縮方向に離れた一端部及び他端部を有する熱収縮性フィルムと、
前記熱収縮性フィルムの第1面に積層されるインキ層と、
前記一端部及び他端部が重ね合わされた重畳部と、
前記重畳部おいて、前記一端部及び他端部の少なくとも一部が筒の軸方向に連続してシールされたシールラインと
を備え、
前記熱収縮性フィルムは、前記第1面において、前記インキ層で構成される印刷領域と、前記インキ層が積層されず、少なくとも前記軸方向に延びる非印刷領域とを含み、
前記第1面と、前記第1面の裏側の第2面とは、前記重畳部において対面し、
前記シールラインは、互いに対面する前記第1面と前記第2面との間にシール剤の層及び前記印刷領域を含まず、
前記シールラインのシール強度は、1.5N/10mm以上である、
熱収縮性筒状ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱収縮性筒状ラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、カップ入り商品等をオーバーラップ包装する場合の熱収縮性フィルムのシール方法を開示する。このシール方法では、熱収縮性フィルムからなる長尺帯状の包材を連続的に繰り出しながら、その幅方向の両端同士を、印刷層同士が接触するように重ね合わせる。そして、その重ね合わせ部分を、包材の繰り出し方向に沿って所定幅で溶着し、包材を筒状に形成する。形成された筒状包材の内部にカップ入り商品等を一定間隔で供給した後、筒状包材を隣接するカップ入り商品等の間で順次溶断シールし、その後、包材を加熱収縮させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、包材の印刷層同士の重ね合わせ部分をホーンとアンビルローラとで挟み込み、超音波溶着することで、印刷インキが溶着部分の外側に移動する。これにより、フィルム基材の表面の樹脂が確実に溶着され、溶着部分の十分なシール強度が確保される。しかしながら、十分なシール強度を有する溶着部分の形成と、印刷インキの移動の制御とを両立させることは容易ではなく、印刷インキによりシール強度が低下することは依然として起こり得る。
【0005】
本開示は、ラベルデザインの印刷を有する熱収縮性フィルムから、十分なシール強度を有する熱収縮性筒状ラベルを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、以下のことを含む。
・主収縮方向である第1方向、及び前記第1方向に直交する第2方向を有する熱収縮性フィルムを準備すること
・前記熱収縮性フィルムの第1面に、1または複数のインキ層を積層することにより、前記熱収縮性筒状ラベルのデザインを表示するラベル領域であって、前記第1方向及び前記第2方向に沿って複数配列されるラベル領域が形成された印刷済みフィルムを作製すること
・前記印刷済みフィルムを、前記ラベル領域が一列となるように前記第2方向に切り離し、前記第2方向に沿って前記熱収縮性筒状ラベルとなる部分が複数連続したスリットフィルムを作製すること
・前記スリットフィルムの前記第1方向における一端部と他端部とを、前記スリットフィルムの第1面と、前記第1面の裏側の第2面とが対面するように重ね合わせることにより、前記第2方向に沿って延びる重畳部を形成するとともに、前記重畳部の少なくとも一部を前記第2方向に連続して超音波溶着し、前記第2方向に沿って連続的に延びるシールラインを形成すること。
なお、前記ラベル領域は、前記インキ層が積層された印刷領域と、前記インキ層が積層されず、少なくとも前記第2方向に延びる非印刷領域とを含み、前記シールラインは、互いに対面する前記第1面と前記第2面との間に、前記印刷領域を含まない。
【0007】
本開示の第2観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記印刷済みフィルムを作製することは、前記ラベル領域の前記第2面側において、オーバーコート剤が積層されたオーバーコート領域と、前記オーバーコート剤が積層されず、少なくとも前記第2方向に沿って延びる非オーバーコート領域とを形成することを含み、前記シールラインは、互いに対面する前記第1面と前記第2面との間に、前記オーバーコート領域を含まない。
【0008】
本開示の第3観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点または第2観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記シールラインを形成することは、前記第1面が内側を向き、前記第2面が外側を向くように前記重畳部を形成することを含む。
【0009】
本開示の第4観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第3観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記熱収縮性フィルムは、熱可塑性樹脂を主として含有する中間層と、熱可塑性樹脂を主として含有し、前記中間層の表面及び裏面にそれぞれ隣接して積層される表層とを備える。
【0010】
本開示の第5観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第4観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記表層は、プロピレン系樹脂を含有する。
【0011】
本開示の第6観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第5観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記プロピレン系樹脂は、プロピレン系3元共重合樹脂及びプロピレン系2元共重合樹脂の少なくとも一方を含む。
【0012】
本開示の第7観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第6観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記表層と、前記中間層とは、ともにプロピレン系3元共重合樹脂を含有し、前記中間層に含有される熱可塑性樹脂全体に対する、前記中間層に含有されるプロピレン系3元共重合樹脂の割合は、前記表層に含有される熱可塑性樹脂全体に対する、前記表層に含有されるプロピレン系3元共重合樹脂の割合よりも高い。
【0013】
本開示の第8観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第7観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記表層の厚みを1とする前記中間層の厚みは、3以上、8以下である。
【0014】
本開示の第9観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第8観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記表層は、前記表層に含有される熱可塑性樹脂全体を100重量部とした場合に、環状オレフィン系樹脂を55重量部未満含有する。
【0015】
本開示の第10観点に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法は、第1観点から第9観点のいずれかに係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法であって、前記熱収縮性フィルムは、前記第1面を構成する層と、前記第2面を構成する層とにおいて、環状オレフィン系樹脂を含まない。
【0016】
本開示の第11観点に係る熱収縮性筒状ラベルは、主収縮方向に離れた一端部及び他端部を有する熱収縮性フィルムと、前記熱収縮性フィルムの第1面に積層されるインキ層と、前記一端部及び他端部が重ね合わされた重畳部と、前記重畳部おいて、前記一端部及び他端部の少なくとも一部が筒の軸方向に連続してシールされたシールラインとを備える。前記熱収縮性フィルムは、前記第1面において、前記インキ層で構成される印刷領域と、前記インキ層が積層されず、少なくとも筒の軸方向に延びる非印刷領域とを含む。前記第1面と、前記第1面の裏側の第2面とは、前記重畳部において対面する。前記シールラインは、互いに対面する前記第1面と前記第2面との間にシール剤の層及び前記印刷領域を含まず、前記シールラインのシール強度は、1.5N/10mm以上である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、ラベルデザインの印刷を有する熱収縮性フィルムから、十分なシール強度を有する熱収縮性筒状ラベルを製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】熱収縮性筒状ラベルの製造方法(主に印刷領域形成工程)を説明する図。
【
図2】熱収縮性筒状ラベルの製造方法を説明する図。
【
図3】熱収縮性フィルムを含む印刷済みフィルム等の断面模式図。
【
図4】熱収縮性筒状ラベルの製造方法の流れを示すフローチャート。
【
図7】超音波溶着機を用いたシール方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法、及び熱収縮性筒状ラベルを構成する熱収縮性フィルムについて、図を参照しながら説明する。なお、以下の図は、説明の便宜上適宜デフォルメされており、必ずしも実際の寸法やその比率を反映したものではない。
【0020】
<1.概要>
図1及び2は、熱収縮性筒状ラベル1(以下、単に「筒状ラベル1」とも称する)の製造方法を説明する図である。筒状ラベル1は、典型的には、ペットボトルを含むプラスチック製の容器、金属製の容器及びガラス製の容器等の外側に装着されるシュリンクラベルである。筒状ラベル1は、熱収縮性フィルム10(以下、単に「フィルム10」とも称する)から作製される。
【0021】
フィルム10は、主として熱可塑性樹脂から構成されるフィルムであり、熱収縮性を有する。フィルム10は、幅方向(第1方向)と、幅方向に直交する長手方向(第2方向)とを有する。
図1では、矢印A1が幅方向を示し、矢印A2が長手方向を示す。以下では、
図1に示す方向を基準に説明する。
【0022】
本実施形態のフィルム10は3層構成であり、中間層11と、中間層11の表面及び裏面に隣接してそれぞれ積層される2つの表層12とを備える(
図3参照)。中間層11及び表層12は、それぞれ熱可塑性樹脂を主として含有する層である。表層12は、それぞれフィルム10の外側面を構成する。表層12により構成されるフィルム10の片面を第1面120と称し、第1面120の裏側の面を第2面121と称する。フィルム10の各層を構成する熱可塑性樹脂及びその他の材料については、後述する。
【0023】
フィルム10は、本実施形態では延伸フィルムである。フィルム10のMD(machine direction)方向は長手方向と一致し、TD(transverse direction)方向は幅方向と一致する。本実施形態では、TD方向が主収縮方向である。フィルム10を90℃の温水中に10秒間浸漬し、その後すぐに取り出して20℃の水に浸漬し、その10秒後に取り出した時のTD方向の熱収縮率は、20%以上であることが好ましい。
【0024】
フィルム10の総厚みは、20μm以上、70μm以下であることが好ましく、30μm以上、60μm以下であることがより好ましく、35μm以上、55μm以下であることがさらに好ましい。また、表層12の厚みを1とした場合の中間層11の厚みは、3以上、8以下であることが好ましく、4以上、7以下であることがより好ましい。
【0025】
<2.筒状ラベルの製造方法>
[準備工程]
図4は、筒状ラベル1の製造方法の流れを示すフローチャートである。筒状ラベル1の製造方法では、まず、上述したようなフィルム10が準備される(ステップS1)。フィルム10は、本実施形態では長手方向に巻かれたロールの形態で準備され、ロールは、例えば図示しない搬送装置にセットされる。このような搬送装置では、ロールを一方向に回転させることにより、平面状のフィルム10が連続して繰り出される。
【0026】
[印刷領域形成工程]
続いて、
図1に示すように、一定の搬送速度でフィルム10を長手方向に沿って搬送しながら、印刷装置4を用いて第1面120上に複数のラベルデザインの印刷を行う(ステップS2)。印刷方法は、フレキソ印刷、平版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等、特に限定されない。印刷装置4は、搬送されるフィルム10に対し、幅方向に複数配列される筒状ラベル1のデザインを同時に印刷するように構成される。これにより、フィルム10から印刷済みフィルム10Aが作製される。
【0027】
印刷済みフィルム10Aは、筒状ラベル1のデザインを表示し、後に個々の筒状ラベル1となるラベル領域1Aが、幅方向及び長手方向に沿って規則的に複数配列されたフィルムである。なお、図においては、複数のラベル領域1Aのうち、代表的なものにのみ符号を付している。本実施形態のラベル領域1Aは、筒状ラベル1の軸方向が長手方向に、周方向が幅方向に、それぞれ一致するように配列される。
【0028】
第1面120におけるラベル領域1Aは、幅方向の一端を含む印刷領域13Aと、幅方向の他端を含む非印刷領域13Bとを含むように構成される。なお、図においては、複数の印刷領域13A及び非印刷領域13Bのうち、代表的なものにのみ符号を付している。本実施形態のラベル領域1Aにおいては、幅方向の一端側が長手方向に延びる非印刷領域13Bとなる。
【0029】
印刷領域13Aは、第1面120に1または複数のインキ層が積層されて形成される領域である。一方、非印刷領域13Bは、1または複数のインキ層が積層されず、余白部分として残る領域である(
図3参照)。上述したように、個々のラベル領域1Aにおいて、非印刷領域13Bは幅方向の一端側に、長手方向に延びるように形成される。これにより、複数のラベル領域1Aが規則的に配列される第1面120には、少なくとも長手方向に延びる非印刷領域13Bが形成される。
【0030】
[オーバーコート領域形成工程]
続いて、印刷済みフィルム10Aに対し、第2面121上にオーバーコート領域14Aを形成する(ステップS3)。オーバーコート領域14Aは、第2面121を保護するためのオーバーコート剤が積層された領域である。オーバーコート剤は、例えばメジウムと称される、透明性の無色インキから構成される。オーバーコート剤としては、ウレタン系樹脂を含むものや、アクリル系樹脂を含むものがあるが、特に限定されない。一方、非オーバーコート領域14Bは、オーバーコート剤が積層されず、余白部分として残る領域である(
図3参照)。
【0031】
図1に示すように、ラベル領域1Aは、第2面121において、幅方向の一端を含むオーバーコート領域14Aと、幅方向の他端を含む非オーバーコート領域14Bとを含む。好ましくは、非印刷領域13Bの裏側にオーバーコート領域14Aが配置され、非オーバーコート領域14Bの裏側に印刷領域13Aが配置される。なお、
図1においては、複数のオーバーコート領域14A及び非オーバーコート領域14Bのうち、代表的なものにのみ符号を付している。また、
図2においては、説明の便宜上、これらの図示を省略している。
【0032】
オーバーコート領域14Aの形成は、
図5に示すように、例えば印刷済みフィルム10Aを裏返した後、ステップS2で行ったのと同様に、印刷済みフィルム10Aを一方向に搬送しながら行うことができる。オーバーコート領域14Aの形成方法は特に限定されず、例えばメジウム印刷に使用される公知の塗布装置5を用いて、第2面121にオーバーコート剤を塗布することにより形成されてもよい。本実施形態の塗布装置5は、幅方向に所定の余白を空けてオーバーコート剤を塗布するように構成される。これにより、第2面121上には、長手方向に延びるオーバーコート領域14Aと、オーバーコート剤が積層されない余白部分であって、少なくとも長手方向に延びる非オーバーコート領域14Bとが形成される。
【0033】
[スリットフィルム作製工程]
続いて、印刷領域13A及びオーバーコート領域14Aが形成された後の印刷済みフィルム10Aをスリットし、複数のスリットフィルム10Bを作製する(ステップS4)。スリットの方法は、ラベル領域1Aが、一列分ずつ長手方向に切り離されるような方法であれば、特に限定されない。スリットフィルム10Bは、それぞれ、長手方向に巻き取られてロールの形態にされてもよい。
【0034】
このようにして作製されたスリットフィルム10Bは、第1面120においては幅方向の一端側で長手方向に連続した非印刷領域13Bを含み、第2面121においては幅方向の他端側で長手方向に連続した非オーバーコート領域14Bを含む。
【0035】
[搬送開始工程]
続いて、一定の搬送速度で、長手方向に沿ってスリットフィルム10Bの搬送を開始する(ステップS5)。搬送は、例えばスリットフィルム10Bのロールを図示しない搬送装置にセットし、ロールを一方向に回転させ、平面状のスリットフィルム10Bを連続して繰り出すことにより行うことができる。これにより、スリットフィルム10Bの複数のラベル領域1Aが、
図2の矢印A2の方向に沿って順次繰り出される。
【0036】
搬送速度は、100m/分以上、600m/分未満であることが好ましく、100m/分以上、400m/分以下であることがより好ましく、100m/分以上、200m/分以下であることがさらに好ましい。搬送速度を上記範囲とすることで、生産効率を維持することができる一方、後に形成されるシールライン101のシール強度を確保することができ、また、シールライン101の破れ、シワ、波打ち等の外観不良が抑制される。なお、本実施形態では、スリットフィルム10Bの搬送速度は、シールライン101の形成速度と一致する。
【0037】
[重畳部形成工程]
スリットフィルム10Bは、上述したように搬送されながら、第1面120及び第2面121が対面するように、幅方向における一端部と他端部とを重ね合わせられる。これにより、長手方向に沿って延びる重畳部100が形成される(ステップS6)。本実施形態では、第2面121が外側を向く重畳部100の外側面となり、第1面120が内側を向く重畳部100の内側面となるような態様でスリットフィルム10Bの端部同士の重ね合わせが行われる。このとき、
図6Aに示すように、重畳部100においては、非印刷領域13Bと、非オーバーコート領域14Bとが、少なくとも部分的に対面する。
【0038】
シールライン101は、非印刷領域13Bと、非オーバーコート領域14Bとが対面する範囲に形成されるため、これらの領域13B、14Bが対面する幅は、シールライン101の幅W1に対して充分に大きいことが好ましい。一方、領域13B、14Bが対面する幅が充分に確保されていれば、重畳部100において対面する第1面120及び第2面121の間に、印刷領域13A及びオーバーコート領域14Aが含まれていてもよい。
【0039】
[シールライン形成工程]
続いて、重畳部100におけるスリットフィルム10Bを、超音波溶着機を用いて連続的に超音波溶着することにより、長手方向に沿って連続的に延びるシールライン101を形成する(ステップS7)。本実施形態の超音波溶着機は、図示しない発振器と、加振子2と、アンビル3とを備える(
図7参照)。加振子2は、発振器から所定の電圧を印加されて振動する振動子と、振動子の振幅を増幅させ、溶着対象物に圧力を加えつつ振動子の振動を伝えるホーンとを含む。加振子2は、重畳部100の外面側における定位置に予め配置される。これにより、重畳部100を含むスリットフィルム10Bは、加振子2に対して一定速度で搬送される。本実施形態の加振子2は、スリットフィルム10Bの搬送に連動して回転するロータリーホーンを含んでいる。
【0040】
本実施形態のアンビル3は、重畳部100の内面側において、加振子2と対面する位置に予め配置される。アンビル3は、溶着対象物を挟んで加振子2からの加圧力を受ける剛性の部材であり、本実施形態では、スリットフィルム10Bの搬送に連動して回転するローラの形態に構成される。
図7に示すように、アンビル3の外周面30には、凹凸が形成されている。重畳部100は、加振子2とアンビル3との間に加圧されながら挟まれ、かつ外周面30に接触した状態で搬送される。これにより、重畳部100において、加振子2とアンビル3との間に挟まれている部分の熱可塑性樹脂が互いに溶着したシールライン101が形成される。シールライン101には、アンビル3の外周面30の凹凸に対応したアンビル痕が形成される。これにより、加振子2とアンビル3との間に挟まれている部分において、機械的振動に起因して発生する摩擦熱により溶融したスリットフィルム10B同士の接触面積がより大きくなり、シール強度が向上する。
【0041】
上述したように、シールライン101は、重畳部100のうち、非印刷領域13Bと、非オーバーコート領域14Bとが対面する範囲に形成される。言い換えると、シールライン101は、互いに対面する第1面120及び第2面121の間に、印刷領域13A及びオーバーコート領域14Aを含まないように形成される。これにより、第1面120及び第2面121を構成する熱可塑性樹脂が、界面において直接的に溶け合って混ざり合うことが促進される一方、夾雑物である印刷用インキやオーバーコート剤が混入することが抑制される。このため、シールライン101のシール強度をさらに向上させることができる。
【0042】
また、シールライン101は、重畳部100の幅方向全体に亘って形成されていなくてもよく、重畳部100の幅方向の少なくとも一部に亘って形成されていればよい。
図8Aに示すように、シールライン101は、少なくともスリットフィルム10Bの外端100aに達するように形成されることが好ましい。しかし、例えば
図8Bに示すように、シールライン101は、スリットフィルム10Bの外端100aに達さず、外端100aと内端100bとの間に形成されてもよい。
【0043】
加振子2の発信振動数は、20kHz以上、40kHz以下であることが好ましく、25kHz以上、35kHz以下であることがより好ましい。加振子2の発信振動数を上記範囲とすることで、筒状ラベル1を容器に装着し、熱収縮させた後のシールライン101の不具合が生じにくくなる。熱収縮後の不具合としては、シールライン101のそのものの剥離、及びシールライン101におけるフィルム10の層間の剥離が挙げられ、以下ではこれらをシールラインの「ずれ」と称することがある(
図10参照)。
【0044】
シールライン101の幅方向に沿った幅(シール幅)W1は、0.5mm以上、15mm以下であることが好ましく、1mm以上、10mm以下であることが好ましく、2mm以上、7mm以下であることがさらに好ましい。シール幅W1を上記下限以上とすることで、シールライン101のシール強度を確保することができる。一方、シール幅W1を上記上限以下とすることで、筒状ラベル1の外観を良好に保ちながら、筒状ラベル1を効率的に製造することができる。
【0045】
上記のように、外周面30に凹凸が形成されたアンビル3を用いる場合の凹凸の形状は特に限定されないが、シールライン101における外側面1010の算術平均粗さ(表面粗さ)Ra1(μm)及びシールライン101における内側面1011の算術平均粗さ(表面粗さ)Ra2(μm)は、Ra1<Ra2の関係を満たすことが好ましい。算術平均粗さRa(μm)は、JIS B 0601に準拠する方法で測定することができる。なお、測定範囲は、シールライン101において、アンビル痕が形成された箇所を含む範囲とし、基準長さは、シールライン101の延びる方向に沿って10mmとする。
【0046】
なお、落下等の衝撃によるシールライン101の破損を抑制する観点からは、シールライン101における算術平均粗さRa1(μm)及び算術平均粗さRa2(μm)、ならびに最大高さRz1(μm)及び最大高さRz2(μm)は小さいことが好ましい。
【0047】
シールライン101のシール強度(180°剥離力)は、1.5N/10mm以上であることが好ましい。シール強度が1.5N/10mm以上であると、筒状ラベル1を容器に装着し、熱収縮させた後でも上述したようなシールライン101の不具合が生じにくくなる。
【0048】
[巻き取り工程]
再び
図4を参照して、本実施形態では、シールライン101が形成され、長尺筒状体となったスリットフィルム10Bは、図示しない巻き取りロールによって、筒を平たく折り畳まれた状態で先端から連続して巻き取られる(ステップS8)。これにより、巻き取りロールにおいては、複数の筒状ラベル1が長手方向に連続する、長尺筒状体のロールが形成される。
【0049】
[搬送終了工程]
ロールから繰り出されたスリットフィルム10Bの最後までシールライン101が形成され、長尺筒状体として巻き取りロールによって巻き取られると、1ロール分のスリットフィルム10Bの搬送が終了する(ステップS9)。
【0050】
[カット工程]
ステップS9の後、得られた長尺筒状体のロールにおいて、隣接する筒状ラベル1と筒状ラベル1との間をそれぞれカットすると、軸方向に延びるシールライン101を有する、複数の個片化された筒状ラベル1が得られる(ステップS10)。
【0051】
<3.熱収縮性フィルムの構成>
フィルム10は、オレフィン系樹脂を主成分とするオレフィン系フィルム、スチレン系樹脂を主成分とするスチレン系フィルム、及びエステル系樹脂を主成分とするエステル系フィルムのいずれであってもよいが、オレフィン系フィルムが好ましい。
【0052】
オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂及びこれらのうち少なくとも2種類が混合された混合樹脂等が挙げられる。フィルム10は、これらの樹脂を用いて、全体としての比重が1未満となるように構成されることが特に好ましい。以下、それぞれの樹脂について説明する。
【0053】
[エチレン系樹脂]
エチレン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、及びこれらの混合物等が挙げられる。この中では、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。エチレン系樹脂を含有することにより、環状オレフィン系樹脂の皮脂白化を抑制することができる。
【0054】
直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。α-オレフィンとしては、具体的には、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等からなるものが好ましく、2種類以上のα-オレフィンを含んでいても良い。直鎖状低密度ポリエチレンの比重は、通常0.910~0.940である。
【0055】
上述したような直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の市販品としては、エボリュー(プライムポリマー社製)、ユメリット(宇部丸善ポリエチレン社製)、ノバテック(日本ポリエチレン社製)等が挙げられる。
【0056】
[プロピレン系樹脂]
フィルム10は、表層12にプロピレン系樹脂を含有することが好ましく、表層12及び中間層11にプロピレン系樹脂を含有することがより好ましい。プロピレン系樹脂としては、プロピレンを主成分として、α-オレフィンを共重合成分とするプロピレン系2元共重合樹脂、または、プロピレン系3元共重合樹脂が好ましく、プロピレン系3元ランダム共重合樹脂が特に好ましい。共重合成分であるα-オレフィンの比率は1~10モル%であるのが好ましい。また、プロピレン系樹脂は、異なるプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体の混合物であってもよい。α-オレフィンについては、上述したとおりである。プロピレン系樹脂の比重は、通常0.900~0.910である。また、プロピレン系樹脂には、長鎖分岐ポリプロピレン、プロピレン系エラストマー等が含まれていてもよい。
【0057】
プロピレン系共重合樹脂は、環状オレフィン系樹脂の皮脂白化を抑制し、フィルム10の熱収縮性を向上させる。また、プロピレン系共重合樹脂は、ホモプロピレンと比較して融点が低いことにより、シールライン101の接触界面における溶着性を向上させる。さらに、表面粗さを低下させ、これにより落下等の衝撃によるシールライン101の破損を抑制する。
【0058】
表層12及び中間層11がともにプロピレン系3元共重合樹脂を含有する場合、中間層11に含有される熱可塑性樹脂全体に対する、中間層11のプロピレン系3元共重合樹脂の含有割合は、表層12に含有される熱可塑性樹脂全体に対する表層12のプロピレン系3元共重合樹脂の含有割合よりも高いことが好ましい。より厚みが大きい中間層11の方が、高い割合でプロピレン系3元共重合樹脂を含有することにより、フィルム10の熱収縮性をより確実に向上させることができる。
【0059】
上述したようなプロピレン系樹脂の市販品としては、例えばAdsyl(Basell社製)、ノバテック(日本ポリプロ社製)、ウェイマックス(日本ポリプロ社製)、タフマー(三井化学社製)等が挙げられる。
【0060】
[環状オレフィン系樹脂]
環状オレフィン系樹脂は、非晶性の樹脂であり、フィルム10の結晶性を低下させ、熱収縮率を高めるとともに、製造時の延伸性も高めることができる。環状オレフィン系樹脂とは、例えば(a)エチレンまたはプロピレンと環状オレフィンとのランダム共重合体、(b)該環状オレフィンの開環重合体またはα-オレフィンとの共重合体、(c)上記(b)の重合体の水素添加物、(d)不飽和カルボン酸及びその誘導体等による(a)~(c)のグラフト変性物等である。
【0061】
環状オレフィンとしては特に限定されず、例えば、ノルボルネン、6-メチルノルボルネン、6-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、6-nーブチルノルボルネン、1-メチルノルボルネン、7-メチルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン等、ノルボルネン及びその誘導体が挙げられる。さらに、テトラシクロドデセン、8-メチルテトラシクロ-3-ドデセン、8-エチルテトラシクロ-3-ドデセン、5,10-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン等、テトラシクロドデセン及びその誘導体が挙げられる。α-オレフィンについては、上述したとおりである。
【0062】
表層12は、環状オレフィン系樹脂を含有する場合、表層12に含有される熱可塑性樹脂全体100重量部に対し、環状オレフィン系樹脂を55重量部未満含有することが好ましく、45重量部未満含有することがより好ましい。環状オレフィン系樹脂は、非晶性樹脂であることにより超音波溶着性に優れているが、一方で皮脂白化を起こしやすい。環状オレフィン系樹脂の含有量を上記上限以下とすることで、皮脂白化を抑制することができる。ただし、表層12は、必ずしも環状オレフィン系樹脂を含有していなくてもよい。
【0063】
上述したような環状オレフィン系樹脂の市販品としては、アペル(三井化学社製)、TOPAS COC(ポリプラスチックス社製)、ZEONOR(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0064】
[石油樹脂]
石油樹脂は、ナフサの熱分解によってエチレン、プロピレン、ブタジエン等を取り去った残りのC4~C5留分(主としてC5留分)やC5~C9留分(主としてC9留分)、あるいはこれらの混合物を重合して得られる樹脂であり、例えばシクロペンタジエンまたはその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂が挙げられる。フィルム10の100℃以下における軟化を抑制したり、透明性や剛性を確保する観点からは、一部または完全に水素化された脂環構造を有する、水添脂環式石油樹脂が好ましい。また、C5留分やC9留分中の単一、または複数の成分を精製し重合したものであっても同じく使用することができる。
【0065】
上述したような石油樹脂の市販品としては、例えばアイマーブ(出光興産社製)、アルコン(荒川化学工業社製)、Regalite(Eastman社製)等が挙げられる。
【0066】
[テルペン樹脂等]
テルペン樹脂としては、αピネンまたはβピネンからのテルペン樹脂、αピネン及びβピネン等の共重合物、芳香族変性テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、及び水添テルペン樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、グリセリンやペンタエリスリトール等で変性したエステル化ロジン、及び水添ロジン系樹脂等が挙げられる。
【0067】
[その他の成分]
その他、フィルム10には、必要に応じて、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0068】
<4.フィルムの製造方法>
フィルム10を製造する方法は特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好ましい。上記共押出法がTダイによる共押出である場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、または、これらを併用した方法のいずれであってもよい。
【0069】
具体的には、例えば、中間層11及び表層12を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、ダイスによりシート状に押出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸または2軸に延伸する方法が挙げられる。上記延伸の方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法またはこれらの組み合わせを用いることができる。延伸温度は、フィルム10を構成する樹脂の軟化温度、フィルム10に要求される収縮特性等に応じて変更されるが、65℃以上、120℃以下であることが好ましく、70℃以上、115℃以下であることがより好ましい。
【0070】
主収縮方向の延伸倍率は、フィルム10を構成する樹脂、延伸手段、延伸温度等に応じて変更されるが、3倍以上、7倍以下が好ましく、4倍以上、6倍以下がより好ましい。
【0071】
<5.特徴>
本実施形態に係る熱収縮性筒状ラベルの製造方法によれば、スリットフィルム10Bにシールライン101を形成する際に、互いに対面する第1面120及び第2面121の間に印刷領域13A及びオーバーコート領域14Aが含まれない。このため、夾雑物となる印刷用インキやオーバーコート剤が溶着の界面に混入することが抑制され、スリットフィルム10Bの熱可塑性樹脂同士を確実に溶融混合することができ、シール強度を向上させることができる。また、容器に装着して、熱収縮させた後も不具合が生じにくい筒状ラベル1が提供される。
【0072】
上記製造方法では、超音波溶着によるシール方式が採用されている。これにより、テープや溶剤等のシール剤を使用せずに済み、溶剤による温室効果ガスの排出を抑えることができる。溶剤を使用したシール方式では、溶剤が膨潤することがあり、巻き取り工程において、折り畳まれた長尺筒状体のシールラインと、シールラインに対向する部分との間でブロッキングが生じやすい問題もある。超音波溶着によるシール方式では、このような溶剤の膨潤に起因するブロッキングを回避することができる。また、筒状ラベル1のシールライン101は、対面する第1面120と第2面121との間にシール剤の層を有さないため、リサイクルの効率及び品質を向上させることができる。
【0073】
一方、スリットフィルム10Bに熱を加えるヒートシール方式では、スリットフィルム10Bを溶着するために多くの熱を必要とする上に、シール後には冷却のための時間を必要とするが、上記方法では、多くの熱及び冷却時間を必要としない。このため、省エネルギーと製造効率性の観点においても上記製造方法は優れている。
【0074】
<6.変形例>
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0075】
<6-1>
アンビル3の外周面30の断面形状は、特に限定されない。シールライン101のシール強度を好ましい範囲とする観点からは、アンビル3は、アンビル3の径方向外側に突出する複数の凸部を備えていることが好ましい。
【0076】
<6-2>
フィルム10は、上記のような3層構成に限定されず、例えば単層であってもよいし、5層構成であってもよい。また、フィルム10は、二軸延伸フィルムであってもよく、一軸延伸フィルムであってもよい。
【0077】
<6-3>
上記実施形態では、シールライン101が形成され、長尺筒状体となったスリットフィルム10Bは、巻き取りロールによって巻き取られた。しかしながら、巻き取り工程を省略し、長尺筒状体となったスリットフィルム10Bの先端から、順次筒状ラベル1を切り離して個別化された筒状ラベル1を得てもよい。
【0078】
<6-4>
上記実施形態では、第1面120が内側面となり、第2面121が外側面となるように重畳部100が形成された。しかしながら、第1面120が外側面となり、第2面121が内側面となるように重畳部100が形成されてもよい。この場合、
図6Bに示すように、重畳部100において、非印刷領域13Bと非オーバーコート領域14Bとが少なくとも部分的に対面し、これらの領域が対面する範囲においてシールライン101が形成されればよい。
【0079】
<6-5>
フィルム10の搬送速度は、加振子2に対する相対的な速度を意味する。すなわち、上記実施形態では、搬送されるフィルム10に対し、加振子2の位置が固定されていたが、加振子2が一定速度で長手方向に沿って移動しながらシールライン101を形成してもよく、加振子2に対するフィルム10の相対搬送速度が100m/分以上、600m/分未満であればよい。
【0080】
<6-6>
ラベル領域1Aは、筒状ラベル1の軸方向が幅方向に、周方向が長手方向に、それぞれ一致するように配置されてもよい。
【0081】
<6-7>
オーバーコート領域14A及び非オーバーコート領域14Bの形成は、印刷領域13A及び非印刷領域13Bの形成と同時に行われてもよいし、印刷領域13A及び非印刷領域13Bの形成の前に行われてもよい。また、オーバーコート領域14A及び非オーバーコート領域14Bの形成自体を省略することもできる。
【0082】
<6-8>
上記実施形態では、ラベル領域1Aにおいて、印刷領域13Aが幅方向の一端を含み、非印刷領域13Bが幅方向の他端を含むように形成された。しかしながら、印刷領域13A及び非印刷領域13Bの配置はこれに限られない。例えば、
図9に示すように、大きさの異なる2つの印刷領域13Aが、それぞれ幅方向の端を含むように形成され、幅方向において一端側に偏った位置に非印刷領域13Bが配置されるようにしてもよい。また、オーバーコート領域14A及び非オーバーコート領域14Bも、第2面121において同様の配置関係となるように形成されてよい。
【実施例0083】
以下、本開示の実施例について詳細に説明する。但し、本開示は、これらの実施例に限定されない。
【0084】
<1.実施例及び参考例の準備>
中間層、及び中間層の両面に隣接して積層される表層を構成する原料として、表1に示す物性を有する原料を表2に示す割合で配合し、熱収縮性フィルムの中間層及び表層を構成する樹脂組成物をそれぞれ作製した。
【表1】
【表2】
【0085】
上記樹脂組成物を、中間層及び表層を構成する樹脂組成物ごとに溶融させ、Tダイから共押出して、30℃に冷却したロールで冷却固化し、未延伸の樹脂フィルムを作製した。これを温度95℃のテンター式延伸機でTD方向に5倍に延伸し、中間層の両面に隣接して表層が積層された3層構成の熱収縮性フィルムを作製した。熱収縮性フィルム全体の長さ、幅、厚み、中間層の厚み、及び表層の厚みは、実施例1~6及び比較例1で共通とした。各熱収縮性フィルムの幅方向はTD方向と一致させた。また、熱収縮性フィルムの比重は、いずれも0.94以下であった。
【0086】
上記熱収縮性フィルムの片面にインキ層を形成することにより、長手方向及び幅方向に規則的に配列された複数のラベルデザインが印刷された印刷済みフィルムを作製した。実施例1~6では、1つの筒状ラベルとなるラベル領域は、
図1のように印刷領域が幅方向の一端を含み、非印刷領域が他端を含むように構成した。比較例1では、非印刷領域を形成せず、ラベル領域の幅方向全体に亘って(つまり、熱収縮性フィルムの幅方向全体に亘って)インキ層を積層し、印刷領域を形成した。これらの印刷済みフィルムを、ラベル領域1列分の幅で長手方向にスリットし、長手方向にラベル領域が連続するスリットフィルムを作製した。なお、オーバーコート領域の形成は省略した。
【0087】
実施例1~5及び比較例1に係るスリットフィルムを、それぞれ表3に示す搬送速度で超音波溶着機(DUKANE社 超音波シールユニット)に対して搬送し、表3に示す条件で幅3mmのシールラインが形成された長尺筒状体を作製した。各スリットフィルムでは、印刷領域が形成された面(第1面)が内側を向くように重畳部を形成し、実施例1~6では、第1面と第2面とが対面する部分において、印刷領域が含まれないようにシールラインを形成した。比較例1では、第1面と第2面とが対面する部分において、印刷領域が含まれた状態でシールラインを形成した。
【表3】
【0088】
<2.評価>
実施例1~6及び比較例1に係る熱収縮性フィルム、長尺筒状体及び筒状ラベルについて、以下の評価を行った。
【0089】
<2-1.熱収縮率>
実施例1~6及び比較例1に係る熱収縮性フィルムの任意の箇所から、TD方向100mm、MD方向100mmのサンプルをそれぞれ5枚ずつ切り出した。各サンプルを90℃の温水に10秒間浸漬し、その後すぐに取り出して20℃の水に浸漬し、10秒後に取り出した。その後、各サンプルのTD方向の長さL(mm)を測定し、以下の式に従ってTD方向の収縮率(%)をそれぞれ算出した。実施例1~6及び比較例1に係る熱収縮性フィルムにつき、各サンプルの収縮率の平均値を熱収縮率とした。
収縮率(%)={(100-L)/100}×100
【0090】
熱収縮率の評価は、以下の通りとした。
評価A:熱収縮率が20%以上(熱収縮性が充分である)
評価B:熱収縮率が20%未満(熱収縮性が不充分である)
【0091】
<2-2.シール強度>
実施例1~6及び比較例1に係る長尺筒状体から、長手方向の長さが10mmとなる筒状のサンプルを5枚ずつ切り出し、各々、シールラインの反対側を切り開いて、シールラインが中心に配置された20cm程度の短冊状のサンプルを作製した。このサンプルを用いて、離着性強度試験機(HEIDON TYPE17、新東科学社製)により180°方向の剥離力を測定し、5枚のサンプルの平均値を実施例1~6及び比較例1のシール強度とした。好ましいシール強度は、1.5N/10mm以上とした。
【0092】
<2-3.シールラインの表面粗さ>
実施例1~6及び比較例1に係る長尺筒状体から、シールラインの部分を含む平面状のサンプルを5枚ずつ切り出した。これらのサンプルについて、JIS B 0601に準拠し、シールラインの外側面における表面粗さと内側面とにおける表面粗さとをそれぞれ測定した(基準長さ10mm)。これらの測定値から、サンプル5枚の平均値を算出し、それぞれの外側面の表面粗さRa1(μm)及び内側面の表面粗さRa2(μm)とした。
【0093】
<2-4.シールラインの最大高さ>
実施例1~6及び比較例1に係る長尺筒状体から、シールラインの部分を含む平面状のサンプルを5枚ずつ切り出した。これらのサンプルについて、シールラインの外側面の最大高さと内側面の最大高さとをそれぞれ測定した(基準長さ10mm)。これらの測定値から、サンプル5枚の平均値を算出し、それぞれの外側面の最大高さRz1(μm)及び内側面の最大高さRz2(μm)とした。
【0094】
<2-5.シールラインの外観検査>
実施例1~6及び比較例1に係る長尺筒状体から、筒状のサンプルを5枚ずつ切り出し、シールラインに破け、シワ及び波打ちが発生しているか否かを確認した。外観の評価は、以下の通りとした。
評価A:5枚のサンプル全てにおいて、破け、シワ及び波打ちのいずれも確認されなかった。
評価B:破け、シワ及び波打ちの少なくとも1つが確認されたサンプルが存在した。
【0095】
<2-6.熱収縮後のずれ検査>
実施例1~6及び比較例1に係る長尺筒状体から、折径108.5mm、長手方向の長さ100mmの筒状のサンプルを5枚ずつ切り出し、筒状ラベルとした。これを一般的な飲料用のボトル缶(蓋を閉めた状態)に被せ、まず筒状ラベルの下端を100℃沸騰水に1秒間浸漬し、筒状ラベルをボトル缶に固定した後、ボトル缶から筒状ラベルがずれないように全体を沸騰水に30秒間浸漬した。その後、筒状ラベルをカッターで切り開いてボトル缶から取り外し、水分を拭き取った。切り開いた筒状ラベルから、ボトル缶の形状に由来して折れ曲がった部位を取り除き、シールラインを含むサンプルを切り出して両面テープで台紙に貼り付け、顕微鏡によりシールラインにずれがないかを確認した。ずれの評価は、以下の通りとした。
評価A:サンプル全てにおいて、ずれが確認されなかった。
評価B:ずれが確認されたサンプルが存在した。
【0096】
<2-7.耐寒屈曲ずれ検査>
実施例1~6及び比較例1に係る長尺筒状体から、折径108.5mm、長手方向の長さ100mmの筒状のサンプルを4枚ずつ切り出し、筒状ラベルとした。これらの筒状ラベルを、5℃に設定した恒温恒湿室に1時間静置した。続いて、同じ環境下で、各筒状ラベルのシールラインを挟むように持ち、長手方向に対して-90°から90°の範囲で折り曲げ、20回屈曲させた。この屈曲動作をシールラインの長手方向の4か所について均等に行った後、恒温恒湿室を23℃50%RHの環境とし、その中に各筒状ラベルを1時間静置した。そして、各筒状ラベルを一般的な飲料用のボトル缶(蓋を閉めた状態)に被せ、まず筒状ラベルの下端を100℃沸騰水に1秒間浸漬し、筒状ラベルをボトル缶に固定した後、ボトル缶から筒状ラベルがずれないように全体を沸騰水に10秒間浸漬した。その後は熱収縮後のずれ検査と同様、顕微鏡によりシールラインを観察し、ずれがないかを確認した。ずれの評価は、熱収縮後のずれ検査と同様とした。
【0097】
<2-8.屈曲耐熱ずれ検査>
熱収縮後のずれ検査及び耐寒屈曲ずれ検査と同様に、実施例1~6及び比較例1に係る筒状ラベルを作製した。23℃の環境下で、耐寒屈曲ずれ検査と同様の要領で、各筒状ラベルのシールラインの長手方向の5か所を20回ずつ屈曲させた。その後、各筒状ラベルをガラス瓶に被せ、熱旋風式シュリンク装置(トルネード2001 日本テクノロジーソリューション社製)を用いて、余熱部温度140℃、風量30Hz、加熱部温度250℃、風量40Hz、トンネル通過時間33secの条件で筒状ラベルをガラス瓶に収縮装着させた。なお、熱旋風式シュリンク装置内でのガラス瓶の向きは、熱風が筒状ラベルのシールラインに直接当たるように調整した。
【0098】
その後、筒状ラベルをカッターで切り開いてガラス瓶から取り外し、生じたシールラインのずれの長手方向に沿った長さW2を測定した(
図10参照)。ただし、ずれが長手方向に断続的に生じた場合は、各ずれの長さW2を合計したものをずれの長さとした。同じ試験を20回行い、ずれの長さ(長さW2の合計)の平均値を算出した。ずれの長さの評価は、以下の通りとした。
評価A:ずれの長さが10mm未満であった(ずれが抑制できていた)。
評価B:ずれの長さが10mm以上であった(ずれが生じ易かった)。
【0099】
<3.評価結果>
評価結果は以下の表4の通りとなった。
【表4】
【0100】
比較例1は、実施例4と同じ組成の熱収縮性フィルムを用いたにも関わらず、180°剥離力が比較例1~6と比較して弱くなった。これにより、シールラインにおいて、対面する表面と裏面との間に印刷領域を含まないことが、シール強度を向上させることが確認された。また、比較例1は、外観検査においては実施例1~6と変わらなかったが、装着後の評価がいずれも評価Bとなり、熱収縮後にずれを生じやすいことが確認された。なお、表層にプロピレン系樹脂を用いた実施例4及び5では、シールラインの外側面及び内側面における表面粗さRa1及びRa2、ならびに最大高さRz1及びRz2が実施例1~3と比較して小さいことが確認された。