(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071942
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の高所打撃検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/34 20060101AFI20240520BHJP
G01N 29/04 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
G01N29/34
G01N29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182471
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】593153428
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000115120
【氏名又は名称】ユニオンツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【弁理士】
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】久保 陽一
(72)【発明者】
【氏名】佐原 匡治
(72)【発明者】
【氏名】中田 章夫
(72)【発明者】
【氏名】川上 雄太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮介
(72)【発明者】
【氏名】坂田 勝亮
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA10
2G047BA04
2G047CA03
2G047CA07
2G047EA10
2G047GF26
(57)【要約】
【課題】検査面の状態に関わらず、コンクリート構造物における高い位置の部位の状態判定に十分な検査精度を得ることを可能とする高所打撃検査方法を提供する。
【解決手段】長尺の操作棒(2)の先端側に配置され検査面に打撃を与えるハンマーヘッド(30)が一方の端部に固定されている支持棒(31)の他方の端部を、駆動装置に連結された動力伝達部材(34)に対し回転軸(32)を介し相対回転動作が可能な状態で取り付ける。そして、ハンマーヘッドが回転軸よりも鉛直方向の下側に位置する打撃待機状態において、無線通信を使用して送受信される制御信号により駆動装置を動作させ、動力伝達部材と回転軸を介して、鉛直方向の加速度が重力加速度より大きくなる回転力をハンマーヘッドに与え、ハンマーヘッドにより検査面に打撃を与える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の操作棒の先端側に配置され検査面に打撃を与えるハンマーヘッドが一方の端部に固定されている支持棒の他方の端部を、駆動装置に連結された動力伝達部材に対し回転軸を介し相対回転動作が可能な状態で取り付け、
前記ハンマーヘッドが回転軸よりも鉛直方向の下側に位置する打撃待機状態において、無線通信を使用して送受信される制御信号により前記駆動装置を動作させ、前記動力伝達部材と前記回転軸を介して、鉛直方向の加速度が重力加速度より大きくなる回転力を前記ハンマーヘッドに与え、前記ハンマーヘッドにより前記検査面に打撃を与えることを特徴とする高所打撃検査方法。
【請求項2】
前記支持棒は、前記動力伝達部材に対し着脱自在に取り付けられている請求項1に記載の高所打撃検査方法。
【請求項3】
前記支持棒は、前記動力伝達部材の長手方向の一方の端部に取り付けられ、前記動力伝達部材の長手方向の他方の端部にバランスウェイトが取り付けられている請求項1又は2に記載の高所打撃検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物における高い位置の部位の状態を、検査面となる表面に与えた打撃により生じる現象を通して判定する、高所打撃検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の維持管理に必要とされる検査方法として、コンクリート構造物の状態を、検査面となる表面に与えた打撃により生じる現象を通して判定する、打撃検査方法が広く採用されている。そして、コンクリート構造物における高い位置の部位を検査するための様々な手法が提案されている。
【0003】
例えば、実用新案登録第3137559号では、操作者により取り扱われる棒状の支持手段に支持された打撃手段から、検査面に当接可能な少なくとも3本の脚を延出させ、各脚の先端と検査面との当接を検出する検出手段が当接を検出したときに、検査面の状態の判定が可能であることを表示する打検機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンクリート構造物における高い位置の部位の打撃検査を行うための、上記打検機を含む従来の手法では、検査面における凹凸の有無、表層剥離による「浮き」と称される部位の有無、打撃を与える治具への検査面からの反発力の大きさなど、検査面の状態により、そこに与える打撃力にばらつきが生じ、コンクリート構造物の状態判定に十分な検査精度を得られないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、検査面の状態に関わらず、コンクリート構造物における高い位置の部位の状態判定に十分な検査精度を得ることを可能とする高所打撃検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンクリート構造物の高所打撃検査方法では、長尺の操作棒の先端側に配置され検査面に打撃を与えるハンマーヘッドが一方の端部に固定されている支持棒の他方の端部を、駆動装置に連結された動力伝達部材に対し回転軸を介し相対回転動作が可能な状態で取り付ける。そして、前記ハンマーヘッドが回転軸よりも鉛直方向の下側に位置する打撃待機状態において、無線通信を使用して送受信される制御信号により前記駆動装置を動作させ、前記動力伝達部材と前記回転軸を介して、鉛直方向の加速度が重力加速度より大きくなる回転力を前記ハンマーヘッドに与え、前記ハンマーヘッドにより前記検査面に打撃を与える。
【0008】
前記支持棒は、前記動力伝達部材に対し着脱自在に取り付けられていてもよい。
【0009】
また、前記支持棒は、前記動力伝達部材の長手方向の一方の端部に取り付けられ、前記動力伝達部材の長手方向の他方の端部にバランスウェイトが取り付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検査面に打撃を与えるハンマーヘッドが一方の端部に固定されている支持棒の他方の端部を、駆動装置に連結された動力伝達部材に対し回転軸を介し相対回転動作が可能な状態で取り付けることにより、ハンマーヘッドが回転軸よりも鉛直方向の下側に位置する打撃待機状態において、支持棒の長さ寸法又はそれ以上の寸法を、検査面に打撃を与えるためのストロークとすることができる。そのため、適切な長さの支持棒を採用することにより、打撃力が分散する傾向にある凹凸面や表層剥離による「浮き」と称される部位の有る面に対しても、コンクリート構造物の状態判定に必要十分な打撃を与えることができる。
【0011】
また、反発力の大きい検査面では、検査面から跳ね返ったハンマーヘッドは、回転軸を中心として回転し検査面から離れる方向へ移動する。そのため、検査面からの反発力の大きい場合であっても、検査面に対し繰り返し衝突することを防止し、常に同じ打撃を与えることが可能となる。
【0012】
すなわち、検査面の状態により、そこに与える打撃力にばらつきが生じることを防ぎ、コンクリート構造物における高い位置の部位の状態判定に十分な検査精度を得ることが可能となる。
【0013】
更に、支持棒を、動力伝達部材に対し着脱自在に取り付けることにより、ハンマーヘッドと支持棒を適宜交換することが可能となる。すなわち、検査面に打撃を与えるためのストロークと質量を適宜設定することが可能となり、より高い検査精度を得ることが可能となる。
【0014】
更にまた、支持棒を、動力伝達部材の長手方向の一方の端部に取り付け、動力伝達部材の長手方向の他方の端部にバランスウェイトが取り付けることにより、打撃待機状態におけるハンマーヘッドの位置を調整することができる。すなわち、検査面に打撃を与えるためのストロークの調整が可能となり、より高い検査精度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る高所打撃検査方法に供する検査装置の実施形態の概観を示す斜視図である。
【
図2】検査装置の先端に配置される検査部の側面図である。
【
図4】ハンマーヘッドの動作を示し、(a)は打撃待機状態を示す側面図、(b)は検査面に打撃を与える前の状態を示す側面図、(c)は検査面に打撃を与えている状態を示す側面図、(d)はハンマーヘッドが検査面から跳ね返った状態を示す側面図、(e)は待機状態に移行している状態を示す側面図である。
【
図5】動力伝達部材の形状が異なる他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図を参照しながら、本発明に係る高所打撃検査方法の実施形態を説明する。
まず、高所打撃検査方法に供する検査装置の実施形態について説明する。この実施形態に係る検査装置1は、コンクリート構造物における高い位置の部位に到達する長さ寸法を有する伸縮自在の操作棒2と、操作棒2の先端側に配置される検査部3と、検査部3の近傍に配置される演算処理部4と、操作棒2の基端側に配置される遠隔操作部5とで構成されている。
【0017】
検査部3は、検査面に打撃を与えるハンマーヘッド30と、打撃により生じる現象に関する情報を取得する情報取得器40を備える。
【0018】
ハンマーヘッド30は支持棒31の一方の端部に固定されている。また、支持棒31の他方の端部には、回転軸32を挿通する軸受け33が設けられている。軸受け33には、回転軸32を挿通させる方向に延び、軸受け33の外周面から回転軸32の挿通孔に至るスリットが形成されている。そして、このスリットを使用することで、駆動装置に連結された動力伝達部材34に固定されている回転軸32を、軸受け33に挿通した状態とし、又は、軸受け33から外れた状態とすることが可能となっている。すなわち、支持棒31は、回転軸32を介し相対回転動作が可能な状態で、かつ、着脱自在に取り付けられている。
【0019】
動力伝達部材34は、駆動装置に対し連結軸35を介して連結されている。連結軸35は、動力伝達部材34に対し、軸受け36を介し相対回転動作が不可能な状態で固定されている。また、動力伝達部材34の、長手方向の支持棒31が取り付けられていない側の端部に、バランスウェイト37が取り付けられている
【0020】
連結軸35の、駆動装置側に配置される端部は、筐体38に収容されている駆動装置の駆動軸に対し、公知の接続機構を介して接続されている。なお、駆動装置及び接続機構に制限はなく、検査が実施される状況などを考慮し最適なものを採用すればよい。
【0021】
筐体38には、また、遠隔操作部5と無線通信を行う無線通信機と、駆動装置を作動・停止させる制御機が収容されている。そして、遠隔操作部5を介した駆動装置の作動と停止が可能とされている。
【0022】
情報取得器40は、状態判定に利用する情報の取得に対応する機器であり、この実施形態では、構造物を伝播する振動を捉える加速度センサが採用されている。そして、検査面に接触させる受振器41と、受振器41を介して取得した情報に必要な処理を加えて記憶する取得情報処理器42を備えている。
【0023】
演算処理部4は、情報取得器40との無線通信による情報の授受が可能とされている。そして、情報取得器40から出力された情報に基づき、コンクリート構造物の状態を判定するための処理を実行する。この実施形態では、打撃により加振された検査面から楮物の内部を伝播する振動の周波数や振幅の解析処理が実行するものとなっている。
【0024】
遠隔操作部5は、既述のように、検査部3の筐体38に収容されている無線通信機との無線通信が可能とされている。そして、検査部3の筐体38に収容されている制御機を介して駆動装置を作動・停止させるための操作スイッチを備えている。
【0025】
遠隔操作部5は、また、演算処理部4との無線通信による情報の授受が可能とされている。そして、演算処理部4から得た状態判定の結果を報知するものとなっている。なお、この実施形態では、状態判定の結果が表示パネルに文字で表示されるものとなっているが、状態判定の結果を報知する手法に制限はなく、ランプの点灯、音など、検査の実施状況に適した公知の手法を採用すればよい。
【0026】
検査装置1を使用した検査では、まず、操作棒2を伸縮調整し検査部3が検査面に到達する長さとする。次に、検査面に対し受振器41を垂直に当接させる。そして、遠隔操作部5の操作スイッチを使用して検査部3の駆動装置を作動させる。
【0027】
作動した駆動装置は、
図4(a)に示すように、回転軸32よりも鉛直方向の下側に位置する打撃待機状態にあるハンマーヘッド30に、動力伝達部材34と回転軸35を介して、鉛直方向の加速度が重力加速度より大きくなる回転力を与える。なお、
図4において、説明の便宜上、操作棒と情報取得器の図示は省略されている。
【0028】
駆動装置により回転力が与えられたハンマーヘッド30は、
図4(b)に示すように、回転軸32を中心にして回転し、検査面に向かって移動し、
図4(c)に示すように、検査面に衝突し打撃を与える。
【0029】
検査面に衝突した後のハンマーヘッド30は、重力と、検査面からの反発力がある場合にはその反発力により、
図4(d)に示すように、衝突前とは逆の方向へ回転する。このとき、動力伝達部材34は、ハンマーヘッド30が検査面に衝突した後も、
図4(e)に示すように、駆動装置の駆動力により同じ方向への回転を続ける。
【0030】
検査面への衝突前とは逆の方向へ回転したハンマーヘッド30は、動力伝達部材34と軸受け36に接触し、数回の跳ね返り動作を経て回転力を失い、動力伝達部材34の動きと重力に従って位置を変える状態となる。そして、駆動装置が停止し動力伝達部材34へ駆動力が供給されなくなったとき、ハンマーヘッド30は、バランスウェイト37との釣り合いにより、
図4(a)に示す、打撃待機状態に戻る。
【0031】
ハンマーヘッド30により検査面に与えられた打撃から生じ、構造物を伝播する振動に関する情報は、既述の通り、受振器41を介して取得される。そして、その情報に基づき、演算処理部40において、コンクリート構造物の状態を判定するための解析処理が実行されることになる。状態判定の結果は、遠隔操作部5の報知により得ることができる。
【0032】
なお、状態判定の結果により、検査面に与えた打撃に問題のあることが判明した場合は、ハンマーヘッド30、支持棒31、或いはバランスウェイト37を交換し、検査面に打撃を与えるためのストロークと質量を調整のうえ、再度、打撃を実行すればよい。
【0033】
この実施形態において、動力伝達部材34は、平行配置された一組の部材で構成されているが、
図5に示すように、単一の部材で構成してもよい。なお、
図5において、
図1~4に示す実施形態と実質的に同一な部位には同符号を付し、その説明は省略する。
【符号の説明】
【0034】
1 検査装置
2 操作棒
3 検査部
4 演算処理部
5 遠隔操作部
30 ハンマーヘッド
31 支持棒
32 回転軸
33、36 軸受け
34 動力伝達部材
35 連結軸
37 バランスウェイト
38 筐体
40 情報取得器
41 受振器
42 取得情報処理器