(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071943
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】作業機械及び作業機械支援システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240520BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240520BHJP
F15B 11/02 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/20 H
F15B11/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182472
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】呉 春男
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB07
2D003BA01
2D003BA06
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB02
3H089AA60
3H089BB15
3H089CC01
3H089CC08
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB32
3H089DB75
3H089JJ01
(57)【要約】
【課題】非熟練者でも効率よく操作を行うことが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】オペレータが操作子を操作する。スプール弁が、油圧アクチュエータに供給する作動油の流量を変化させる。操作子の操作量に応じてスプール弁のスプールが変位し、スプール変位量に応じて作動油が通過する経路の開口面積が変化する。スプール弁は、プールの変位量の増分に対する開口面積の増分の比が一定ではない特性を有している。制御装置が、操作子の操作量に依存する物理量と開口面積に依存する物理量との対応関係を、現在の操作子の操作量と関連付けて表示装置に表示する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが操作する操作子と、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータに供給する作動油の流量を変化させるスプール弁と、
表示装置と、
制御装置と
を備え、
前記操作子の操作量に応じて前記スプール弁のスプールが変位し、スプール変位量に応じて前記作動油が通過する経路の開口面積が変化し、
前記スプール弁は、前記スプール変位量の増分に対する前記開口面積の増分の比が一定ではない特性を有しており、
前記制御装置は、前記操作子の操作量に依存する物理量と前記開口面積に依存する物理量との対応関係を、現在の前記操作子の操作量と関連付けて前記表示装置に表示する作業機械。
【請求項2】
前記操作子の操作量に依存する物理量と前記開口面積に依存する物理量との関係は、横軸及び縦軸の一方を前記操作子の操作量に依存する物理量とし、他方を前記開口面積に依存する物理量とするグラフで表され、
前記グラフ上に、現在の前記操作子の操作量に対応する位置を認識可能に表示する請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記操作子の操作量に依存する物理量は、前記スプール変位量である請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記開口面積に依存する物理量は、前記開口面積の大きさ、または前記油圧アクチュエータのロッドの速度である請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記スプールは、前記操作子の操作量に応じて変化するパイロット圧によって変位し、
前記制御装置は、さらに、前記パイロット圧と、前記スプール変位量との関係を、現在の前記操作子の操作量と関連付けて前記表示装置に表示する請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項6】
請求項1または2に記載の作業機械と、
前記作業機械と通信し、表示画面を含む外部装置と
を備え、
前記作業機械は、前記操作子の操作量に依存する物理量と前記開口面積に依存する物理量との対応関係を定義する情報、及び現在の前記操作子の操作量を示す情報を前記外部装置に送信し、
前記外部装置は、前記操作子の操作量に依存する物理量と前記開口面積に依存する物理量との対応関係を、現在の前記操作子の操作量と関連付けて前記表示画面に表示する作業機械支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械及び作業機械支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧アクチュエータ等を備えたショベル等の作業機械においては、レバー操作によりスプール弁が開き、油圧アクチュエータに作動油が流入して油圧アクチュエータが駆動される。下記の特許文献1に、油圧アクチュエータの操作性を改善できるショベルが開示されている。このショベルにおいては、ブーム制御弁を通して、ブーム制御用の油圧シリンダに作動油が流れる。ブーム制御弁のスプール変位量の増加に対する開口面積の増加の比が、所定点で変化する開口特性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ショベルの微操作を行う必要がある床掘等の作業を行うには、オペレータに高い熟練度が必要とされる。特許文献1に開示されたショベルを非熟練者が操作する場合、操作レバーの微調整が難しいため、作業効率が低下してしまう。本発明の目的は、非熟練者でも効率よく操作を行うことが可能な作業機械を提供することである。本発明の他の目的は、この作用機械を含む作業機械支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によると、
オペレータが操作する操作子と、
油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータに供給する作動油の流量を変化させるスプール弁と、
表示装置と、
制御装置と
を備え、
前記操作子の操作量に応じて前記スプール弁のスプールが変位し、スプール変位量に応じて前記作動油が通過する経路の開口面積が変化し、
前記スプール弁は、前記スプール変位量の増分に対する前記開口面積の増分の比が一定ではない特性を有しており、
前記制御装置は、前記操作子の操作量に依存する物理量と前記開口面積に依存する物理量との対応関係を、現在の前記操作子の操作量と関連付けて前記表示装置に表示する作業機械が提供される。
【0006】
本発明の他の観点によると、
前記作業機械と、
前記作業機械と通信し、表示画面を含む外部装置と
を備え、
前記作業機械は、前記操作子の操作量に依存する物理量と前記開口面積に依存する物理量との対応関係を定義する情報、及び現在の前記操作子の操作量を示す情報を前記外部装置に送信し、
前記外部装置は、前記操作子の操作量に依存する物理量と前記開口面積に依存する物理量との対応関係を、現在の前記操作子の操作量と関連付けて前記表示画面に表示する作業機械支援システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
操作子の操作量に依存する物理量と開口面積との対応関係を、現在の操作子の操作量と関連付けて表示された画像を見ることにより、非熟練者であっても効率的に操作を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施例によるショベルの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した実施例によるショベルの駆動系を示すブロック図である。
【
図3】
図3Aは、パイロット圧とスプール変位量との対応関係の一例を、グラフ形式で示す図であり、
図3Bは、スプール変位量と開口面積との対応関係の一例を、グラフ形式で示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した実施例によるショベルの制御装置が表示装置に表示した画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した実施例の変形例による作業機械の制御装置が表示装置に表示した画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例の他の変形例による作業機械の制御装置が表示装置に表示した画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例のさらに他の変形例による作業機械の制御装置が表示装置に表示した画像の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、さらに他の実施例によるショベルの駆動系を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、さらに他の実施例による作業機械支援システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図4を参照して、一実施例による作業機械について、ショベルを例にとって説明する。
図1は、本実施例によるショベルの側面図である。ショベル10の下部走行体11に、旋回機構12を介して上部旋回体13が旋回可能に搭載されている。上部旋回体13に、ブーム14が取り付けられている。ブーム14の先端にアーム15が取り付けられ、アーム15の先端にエンドアタッチメントとしてのバケット16が取り付けられている。
【0010】
ブーム14はブームシリンダ17で駆動され、アーム15はアームシリンダ18で駆動され、バケット16はバケットシリンダ19で駆動される。ブームシリンダ17、アームシリンダ18、及びバケットシリンダ19として、油圧シリンダが用いられる。
【0011】
図2は、本実施例によるショベル10の駆動系を示すブロック図である。
図2において、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御系をそれぞれ二重線、太い実線、細い実線、及び破線で示す。ショベル10の駆動系は、エンジン21、メインポンプ24、パイロットポンプ25、コントロールバルブ27、操作装置26、吐出圧センサ38、操作圧センサ39、制御装置40、及び表示装置42等を含む。
【0012】
エンジン21は、例えば、所定の回転数を維持するように動作する内燃機関、例えばディーゼルエンジンである。エンジン21の出力軸が、メインポンプ24及びパイロットポンプ25のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0013】
メインポンプ24は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ27に供給する。メインポンプ24として、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプが用いられる。 パイロットポンプ25は、パイロットラインを介して操作装置26に1次パイロット圧を供給する。パイロットポンプ25として、例えば固定容量型油圧ポンプが用いられる。
【0014】
コントロールバルブ27に、ブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19、左走行油圧モータ11L、右走行油圧モータ11R、及び旋回油圧モータ12A等の油圧アクチュエータが接続されている。ブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19として、片ロッド複動型の油圧シリンダが用いられる。
【0015】
コントロールバルブ27は、メインポンプ24が吐出する作動油の流れを制御する複数のスプール弁を含む。複数のスプール弁は、例えば、ブーム制御弁27A、アーム制御弁27B、バケット制御弁27C、左走行モータ制御弁27D、右走行モータ制御弁27E及び旋回制御弁27Fを含む。コントロールバルブ27は、スプール弁を通じ、メインポンプ24が吐出する作動油を複数の油圧アクチュエータに選択的に供給する。
【0016】
操作装置26は、オペレータによって操作される複数の操作子26A、例えば操作レバー、操作ペダル等を含む。操作装置26は、パイロットポンプ25から与えられた1次パイロット圧を、操作内容に応じて2次パイロット圧に変換し、2次パイロット圧を、油圧アクチュエータのそれぞれに対応するスプール弁のパイロットポートに供給する。2次パイロット圧は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作子26Aの操作方向及び操作量に応じて変化する。
【0017】
スプール弁は、操作装置26を介して供給される2次パイロット圧に応じて、油圧アクチュエータに供給される作動油の流量及び流れの方向を変化させる。
【0018】
複数のスプール弁のそれぞれに供給される2次パイロット圧を、パイロット圧センサ28A~28Fが測定し、測定結果が制御装置40に入力される。パイロット圧センサ28A、28B、28Cは、それぞれブーム制御弁27A、アーム制御弁27B、及びバケット制御弁27Cに供給される2次パイロット圧を測定する。パイロット圧センサ28D、28E、28Fは、それぞれ左走行モータ制御弁27D、右走行モータ制御弁27E、及び旋回制御弁27Fに供給される2次パイロット圧を測定する。
【0019】
吐出圧センサ38は、メインポンプ24が吐出する作動油の圧力を検出する。吐出圧センサ38が検出した圧力の測定値が制御装置40に取り込まれる。操作圧センサ39は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応して操作装置26が生成する2次パイロット圧を検出する。操作圧センサ39が検出した2次パイロット圧の測定値が制御装置40に取り込まれる。なお、操作装置26の操作内容は、圧力センサ以外の他のセンサを用いて検出してもよい。
【0020】
表示装置42は制御装置40からの指令によって、画像、文字等を表示することにより、ショベル10のオペレータに種々の情報を通知する。
【0021】
制御装置40は、例えば、中央処理ユニット(CPU)、メモリ等を備えたコンピュータで構成される。CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することにより、ショベル10を動作させるための種々の機能が実現される。
【0022】
制御装置40のメモリに、コントロールバルブ27の複数のスプール弁のそれぞれについて、2次パイロット圧とスプール変位量(スプールストローク)との対応関係を定義する情報、及びスプール変位量と開口面積との対応関係を定義する情報が格納されている。ここで、「開口面積」とは、スプール弁の内部の作動油の流路の絞り部分の流路断面積を意味する。また、これらの対応関係は、例えば参照テーブルの形式でメモリに格納されている。本明細書において、2次パイロット圧を、単にパイロット圧という場合がある。
【0023】
制御装置40は、パイロット圧とスプール変位量との対応関係、及びパイロット圧センサ28A~28Fの測定値に基づいて、スプール弁のそれぞれのスプール変位量を求めることができる。さらに、スプール変位量と開口面積との対応関係、及びパイロット圧から求められたスプール変位量に基づいて、開口面積を求めることができる。
【0024】
図3Aは、パイロット圧とスプール変位量との対応関係の一例を、グラフ形式で示す図である。横軸はパイロット圧を表し、縦軸はスプール変位量を表す。パイロット圧がP
0以下の範囲では、スプールは変位しない。パイロット圧がP
0以上になると、スプールが変位し始める。スプール変位量とパイロット圧とは、ほぼ線形の関係を有する。
【0025】
図3Bは、スプール変位量と開口面積との対応関係の一例を、グラフ形式で示す図である。横軸はスプール変位量を表し、縦軸は開口面積を表す。スプール変位量がD
0以下の範囲では、スプール弁は閉じた状態を維持する。スプール変位量がD
0以上になると、スプール弁が開き始める。スプール変位量がD
0以上D
1以下の範囲で、スプール変位量の増分に対する開口面積の増分の比(以下、開口面積の増加率という。)はほぼ一定である。スプール変位量がD
1以上の範囲でも、スプール変位量の増分に対する開口面積の増加率はほぼ一定であるが、スプール変位量がD
0以上D
1以下の範囲における増加率より大きい。
【0026】
これは、スプール変位量がD
0以上D
1以下の範囲では、スプール変位量がD
1以上の範囲よりも、スプール変位量の増分に対する作動油の流量の増分の比が小さいことを意味する。なお、スプール変位量と開口面積との対応関係は、
図3Bに示すように折れ線グラフになるように設定されていてもよいし、任意の関数となるように設定されていてもよい。すなわち、スプール弁は、スプール変位量の増分に対する開口面積の増分の比が一定ではない特性を有している。
【0027】
次に、
図4を参照してオペレータがショベル10のブームを駆動する操作を行ったときに、制御装置40が行う制御について説明する。
【0028】
図4は、制御装置40が表示装置42に表示する画像の一例を示す図である。制御装置40は、ブーム制御弁27Aについて、
図3Aに示したパイロット圧とスプール変位量との対応関係、及び
図3Bに示したスプール変位量と開口面積との対応関係を、グラフ形式で表示装置42に表示する。
【0029】
オペレータが操作装置26に対してブームを駆動する操作を行うと、操作装置26は、ブーム制御弁27Aに、操作に応じたパイロット圧を供給する。ブーム制御弁27Aのスプールが、
図3Aに示した対応関係に基づいて変位する。ブーム制御弁27Aのスプールが変位すると、
図3Bに示した対応関係に基づいて、ブーム制御弁27Aの開口面積が変化する。開口面積の変化に応じて、ブームシリンダ17(
図2)に作動油が流れ、ブーム14が駆動される。
【0030】
制御装置40は、パイロット圧センサ28Aによって測定されたブーム制御弁27Aのパイロット圧の現時点の測定値を取得する。
図3Aに示したパイロット圧とスプール変位量との対応関係を用いて、現時点のスプール変位量を求める。表示装置42に表示されているパイロット圧とスプール変位量との対応関係を示すグラフを、現時点のパイロット圧とスプール変位量とに対応する位置を認識可能に表示する。例えば、現時点のパイロット圧とスプール変位量とに対応する位置に、丸記号等のマーク45を表示する。
【0031】
パイロット圧は、操作子26Aの操作量に応じて変化するため、マーク45の位置は、現在の操作子26Aの操作量を反映したものである。すなわち、制御装置40は、パイロット圧とスプール変位量との対応関係を、現時点の操作子26Aの操作量と関連付けて表示装置42に表示する。
【0032】
現時点のスプール変位量が求まると、
図3Bに示したスプール変位量と開口面積との対応関係を用いて、現時点の開口面積を求める。さらに、表示装置42に表示されているスプール変位量と開口面積との対応関係を示すグラフを、現時点のスプール変位量と開口面積に対応する位置を認識可能に表示する。例えば、現時点のスプール変位量と開口面積に対応する位置に丸記号等のマーク46を表示する。マーク45の位置は、現在の操作子26Aの操作量を反映したものである。
【0033】
操作子26Aの操作量が変化すると、制御装置40は、パイロット圧とスプール変位量との対応関係が示されたグラフに沿って、マーク45を移動させる。さらに、制御装置40は、スプール変位量と開口面積との対応関係を示すグラフに沿って、マーク46を移動させる。
【0034】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
オペレータは、表示装置42に表示された画像(
図4)から、パイロット圧とスプール変位量との対応関係を示すグラフ、及びスプール変位量と開口面積との対応関係を示すグラフ上で、操作子26Aの現在の操作量がどの位置に相当するかを容易に知ることができる。
【0035】
例えば、操作子26Aを操作し始めたときに、パイロット圧が徐々に増加し、スプールが変位し始める時点を容易に知ることができる。さらに、スプールが変位し始めた後、開口面積が立ち上がる時点を容易に知ることができる。操作子26Aの操作量をさらに大きくするとき、スプール変位量の増分に対する開口面積の増分の比が大きくなる時点を容易に知ることができる。
【0036】
オペレータは、操作子26Aの操作量と、スプール弁の動作状況とを関連付けて認識することができる。その結果、早期に、操作のコツをつかむことができる。
【0037】
次に、本実施例の種々の変形例について説明する。
本実施例では、
図4に示すように、スプール変位量と開口面積との対応関係、及びスプール変位量とパイロット圧との対応関係を、操作子26Aの操作量と関連付けて表示するが、いずれか一方の対応関係のみを表示するようにしてもよい。
【0038】
本実施例では、ショベルのブーム14(
図1)を駆動する操作を行う例について説明したが、その他の駆動要素、例えばアーム15、バケット16、下部走行体11、上部旋回体13を駆動する操作を行う場合にも、本実施例を適用することができる。例えば、アーム15を駆動する場合には、アーム制御弁27B(
図2)について、パイロット圧、スプール変位量、及び開口面積の対応関係を、表示装置42に表示するとよい。バケット16、下部走行体11、上部旋回体13を駆動する操作を行う場合も同様である。
【0039】
本実施例では、開口面積と対応付ける物理量として、スプール変位量を採用しているが、操作量に依存するその他の物理量を採用してもよい。操作量に依存するその他の物理量として、例えばパイロット圧、操作子26Aの倒し角等を採用することができる。
【0040】
また、本実施例では、
図3Aに示した対応関係を用いて、パイロット圧からスプール変位量を求めているが、その他の方法でスプール変位量を求めてもよい。例えば、コントロールバルブ27の複数のスプール弁のそれぞれに。スプール変位量を測定する変位センサを取り付けて、変位センサの測定値からスプール変位量を求めてもよい。
【0041】
表示装置42に、スプール変位量と開口面積との対応関係、及びスプール変位量とパイロット圧との対応関係を、操作子26Aの操作量と関連付けて表示する機能を、一時的に停止することができるようにするとよい。例えば、オペレータが表示装置42にメニュー画面を表示させ、メニュー画面から種々の機能のオンオフを行うことができるようにするとよい。熟練者がショベル10を操作している場合は、この機能を一時的に停止させるとよい。この表示機能は、熟練者にとっては煩わしいだけであり、操作に有益な情報にならない場合がある。このような場合に、この表示機能をオフにすることにより、熟練者は、不要な表示に煩わされることなく、ショベル10を操作することができる。
【0042】
本実施例では、作業機械としてショベルを例にとって説明しているが、油圧アクチュエータを備えた他の作用機械の油圧システムにも、本実施例を適用することが可能である。
【0043】
次に、
図5を参照して、本実施例の他の変形例による作業機械について説明する。
図5は、本変形例による作業機械の制御装置40が表示装置42に表示した画像の一例を示す図である。
図4に示した実施例では、1つのスプール弁に関して、スプール変位量と開口面積との対応関係、及びスプール変位量とパイロット圧との対応関係を、操作子26Aの操作量と関連付けて表示している。ところが、ショベル10による作業では、ブーム14、アーム15、バケット16の駆動、及び旋回動作を同時に行う場合がある。
【0044】
図5に示した実施例では、ブーム制御弁27A,アーム制御弁27B、バケット制御弁27C、及び旋回制御弁27Fの4つのスプール弁に関して、スプール変位量と開口面積との対応関係、及びスプール変位量とパイロット圧との対応関係を、操作子26Aの操作量と関連付けて表示する。これにより、オペレータは、ブーム14、アーム15、バケット16の駆動、及び旋回動作を同時に行っている場合に、現時点の操作状態と、ブーム制御弁27A、アーム制御弁27B、バケット制御弁27C、及び旋回制御弁27Fの動作状況とを関連付けて、同時に知ることができる。
【0045】
次に、
図6を参照して本実施例のさらに他の変形例による作業機械について説明する。
図6は、本変形例による作業機械の制御装置40が表示装置42に表示した画像の一例を示す図である。本変形例では、スプール変位量と開口面積との対応関係を示すグラフ中に、アクチュエータ速度(例えばブームシリンダ17等の油圧シリンダのロッドの速度、旋回油圧モータ12R等の油圧モータの回転速度)を、数字で表示している。アクチュエータ速度の表示位置は、マーク46の移動と共に、移動する。
【0046】
アクチュエータ速度は、油圧シリンダの伸縮長の時間変化を計算することにより求めることができる。その他に、ブーム制御弁27A等を流れる作動油の流量から、アクチュエータ速度を計算することも可能である。作動油の流量は、ブーム制御弁27A等の作動油の入側の圧力と出側の圧力との差、及び開口面積から計算することができる。
【0047】
本変形例では、オペレータは、ブーム14等の動作に直結するアクチュエータ速度を容易に知ることができる。さらに、マーク46の移動により、操作子26Aの操作量をさらに大きくするとき、スプール変位量の増分に対するアクチュエータ速度の増分の比が大きくなる時点を容易に知ることができる。
【0048】
次に、
図7を参照して本実施例のさらに他の変形例による作業機械について説明する。
図7は、本変形例による作業機械の制御装置40が表示装置42に表示した画像の一例を示す図である。本変形例では、スプール変位量と開口面積との対応関係を示すグラフに代えて、スプール変位量とアクチュエータ速度との対応関係を示すグラフが表示される。このグラフ上の現時点のスプール変位量とアクチュエータ速度に対応する位置に丸記号等のマーク47を表示する。
【0049】
本変形例においては、オペレータは、アクチュエータ速度をより直感的に把握することができる。
【0050】
アクチュエータ速度は、開口面積に依存する物理量である。このように、表示装置42に表示するグラフの一方の軸として、開口面積の大きさに代えて、開口面積に依存する物理量を採用してもよい。
【0051】
次に、
図8を参照してさらに他の実施例による作業機械について説明する。以下、
図1~
図4を参照して説明した実施例による作業機械と共通の構成については説明を省略する。
【0052】
図8は、本実施例によるショベル10の駆動系を示すブロック図である。
図2に示した実施例では、パイロットポンプ25で発生した1次パイロット圧が、操作装置26によって2次パイロット圧に変換されて、コントロールバルブ27の複数のスプール弁に供給される。これに対して
図8に示した実施例では、油圧制御弁35が、パイロットポンプ25で発生した1次パイロット圧を2次パイロット圧に変換してコントロールバルブ27の複数のスプール弁に供給する。油圧制御弁35として、電磁比例弁が用いられる。
【0053】
操作装置26の操作子26Aの操作量が、操作圧センサ39によって電気信号に変換され、制御装置40に入力される。制御装置40は、操作圧センサ39から取得した電気信号に基づいて、油圧制御弁35を制御する。このように、制御装置40が油圧制御弁35を制御することによって、コントロールバルブ27の複数のスプール弁に供給される2次パイロット圧が発生する。
【0054】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においても、
図1~
図4を参照して説明した実施例と同様に、オペレータは、早期に操作のコツをつかむことができる。また、
図8に示した実施例では、操作装置26と類似の遠隔操作装置を用いて、ショベル10を遠隔から操作することも可能である。この場合には、遠隔操作装置から制御装置40に、操作量を示す電気信号を送信すればよい。
【0055】
次に、
図9を参照してさらに他の実施例による作業機械支援システムについて説明する。
図9は、本実施例による作業機械支援システムの概略図である。本実施例による作業機械支援システムは、
図1~
図4を参照して説明した実施例による作業機械、例えばショベル10の他に、支援用の外部装置50を含む。外部装置50として、例えばタブレット端末、ノートパソコン、デスクトップパソコン等を用いることができる。
【0056】
ショベル10は、外部装置50と通信するための通信装置43を備えている。外部装置50とショベル10とが、相互にデータ通信を行うことができる。このデータ通信に、WiFi等の近距離無線通信方式を利用してもよいし、インターネット等の公衆通信網を利用してもよい。
【0057】
ショベル10の制御装置40は、スプール変位量と開口面積との対応関係、及びスプール変位量とパイロット圧との対応関係を定義する情報を、外部装置50に送信する。外部装置50は、これらの対応関係を、ショベル10の機種ごとに記憶する。さらに、ショベル10の制御装置40は、操作子26Aの操作量を示す情報を、外部装置50に周期的に送信する。外部装置50は、ショベル10から受信したこれらの情報に基づいて、スプール変位量と開口面積との対応関係、及びスプール変位量とパイロット圧との対応関係を、操作子26A(
図2)の操作量と関連付けて表示画面に表示する。
【0058】
外部装置50は、さらに、操作子26Aの操作量の履歴を記録する。外部装置50は、操作量の履歴、スプール変位量と開口面積との対応関係、及びスプール変位量とパイロット圧との対応関係を定義する情報に基づいて、スプール変位量と開口面積との対応関係、及びスプール変位量とパイロット圧との対応関係を、操作子26A(
図2)の操作量と関連付けて表示画面に再表示する機能を有する。
【0059】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
熟練者が、画面に表示された情報を見て、ショベル10を操作しているオペレータの技能を評価することができる。例えば、
図3Bに示した開口面積の増加率が変化する点(スプール変位量がD
1の点)を跨いで操作する回数が必要以上に多い場合は、オペレータの技能が低いと評価される。
【0060】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0061】
10 ショベル
11 下部走行体
11L 左走行油圧モータ
11R 右走行油圧モータ
12 旋回機構
12A 旋回油圧モータ
13 上部旋回体
14 ブーム
15 アーム
16 バケット
17 ブームシリンダ
18 アームシリンダ
19 バケットシリンダ
21 エンジン
24 メインポンプ
25 パイロットポンプ
26 操作装置
26A 操作子
27 コントロールバルブ
27A ブーム制御弁
27B アーム制御弁
27C バケット制御弁
27D 左走行モータ制御弁
27E 右走行モータ制御弁
27F 旋回油圧モータ制御弁
28A~28F 変位センサ
35 油圧制御弁
38 吐出圧センサ
39 操作圧センサ
40 制御装置
42 表示装置
43 通信装置
45 現時点のパイロット圧とスプール変位量とに相当する位置に表示されるマーク
46 現時点のスプール変位量と開口面積に相当する位置に表示されるマーク
47 現時点のスプール変位量とアクチュエータ速度に相当する位置に表示されるマーク
50 外部装置