(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007195
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用ラミネート外装材、蓄電デバイス及び組蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/105 20210101AFI20240111BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240111BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20240111BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20240111BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20240111BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20240111BHJP
H01G 9/08 20060101ALI20240111BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240111BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/129
H01M50/131
H01M50/178
H01M50/188
H01M50/211
H01G9/08 E
H01G11/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108500
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】丁 冬
(72)【発明者】
【氏名】大間 敦史
(72)【発明者】
【氏名】八戸 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】室屋 祐二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳史
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H040
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AA11
5E078AB01
5E078HA02
5E078HA12
5E078HA13
5E078HA26
5H011AA01
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011KK00
5H040AA14
5H040AT04
5H040AY06
5H040LL10
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスの充放電による体積膨張を吸収し、蓄電要素に加わる応力を低減し得る蓄電デバイス用ラミネート外装材、これを備えた蓄電デバイス及び組蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】蓄電デバイス用ラミネート外装材は、外層、内層及びこれらの間に配置されたバリア層を有する。外層及び内層のうちの少なくとも一方の層が、多孔質層を含む。
蓄電デバイスは、正極と負極と電解質を有する蓄電要素と、蓄電要素を外装し、外層、内層及びこれらの間に配置されたバリア層を有する蓄電デバイス用ラミネート外装材と、を備え、正極の正極タブ及び負極の負極タブを外部に導出したまま、蓄電要素の周囲に沿って蓄電デバイス用ラミネート外装材の内層同士を封止して成る。外層及び内層のうちの少なくとも一方の層が、多孔質層を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層、内層及びこれらの間に配置されたバリア層を有する蓄電デバイス用ラミネート外装材であって、
上記外層及び上記内層のうちの少なくとも一方の層が、多孔質層を含む
ことを特徴とする蓄電デバイス用ラミネート外装材。
【請求項2】
上記多孔質層の空隙率が、50体積%以上80体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用ラミネート外装材。
【請求項3】
正極と負極と電解質を有する蓄電要素と、該蓄電要素を外装し、外層、内層及びこれらの間に配置されたバリア層を有する蓄電デバイス用ラミネート外装材と、を備え、
上記正極及び上記負極のタブを外部に導出したまま、上記蓄電要素の周囲に沿って上記蓄電デバイス用ラミネート外装材の内層同士を封止して成る蓄電デバイスであって、
上記外層及び上記内層のうちの少なくとも一方の層が、多孔質層を含む
ことを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項4】
上記内層同士のうちの少なくとも一方の層が、上記多孔質層を含み、
上記内層による上記正極及び/又は上記負極のタブの封止領域において、上記多孔質層の空隙が潰れ変形している
ことを特徴とする請求項3に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
扁平形状をなす複数の蓄電デバイスが該蓄電デバイスの厚さ方向に積層されて成る組蓄電デバイスであって、
上記蓄電デバイスは、正極と負極と電解質を有する蓄電要素と、該蓄電要素を外装し、外層、内層及びこれらの間に配置されたバリア層を有する蓄電デバイス用ラミネート外装材と、を備え、
上記正極及び上記負極のタブを外部に導出したまま、上記蓄電要素の周囲に沿って上記蓄電デバイス用ラミネート外装材の内層同士を封止して成り、
上記複数の蓄電デバイスのうちの少なくとも1つの蓄電デバイスにおいて、上記外層及び上記内層のうちの少なくとも一方の層が、多孔質層を含む
ことを特徴とする組蓄電デバイス。
【請求項6】
上記蓄電デバイス間において、対向配置された外層のうちの少なくとも一方の層が、上記多孔質層を含むことを特徴とする請求項5に記載の組蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用ラミネート外装材、蓄電デバイス及び組蓄電デバイスに係り、さらに詳細には、蓄電デバイスの充放電による体積膨張を吸収し、蓄電要素に加わる応力を低減し得る蓄電デバイス用ラミネート外装材、これを備えた蓄電デバイス及び組蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内側層から外側層に転写される滑剤の転写量を制御して、粘着テープの密着性を低下させないラミネート材が提案されている(特許文献1参照)。このラミネート材は、外側層と、内側層と、外側層と内側層との間に配設された金属箔層とを含む。内側層は、1層ないし複数層からなる。内側層の最内層が、熱融着性樹脂と滑剤とを含み、滑剤濃度が、1000ppm~5000ppmの樹脂組成物からなる。内側層は、その最内層の表面に、表面高さの平均値を基準高さとするとき、1mm2につき基準高さよりも0.3μm以上高い凸部を有している。
【0003】
また、従来、滑り性が高く且つ粘着テープとの密着性も高い表面を有する蓄電デバイス用外装材が提案されている(特許文献2参照)。この蓄電デバイス用外装材は、最外層と、シーラント層と、両層間に配置されたバリア層とを積層状に備える。最外層は、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム及びポリオレフィンフィルムからなる群より選択される少なくとも一つからなる。最外層の表面の表面性状において、算術平均高さSaが0.03~0.20μmの範囲であり、Saの基準面から+0.1μmの高さ位置の断面積が7500μm2以上である凸部を山と定義するとき、山の数が1mm2当たり5~30個の範囲である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-11409号公報
【特許文献2】特開2020-21727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されたような表面に凹凸構造を有するラミネート外装材を、充放電によって体積膨張する蓄電デバイスに用いた場合、蓄電デバイスの体積膨張によって蓄電要素に加わる応力が高くなってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、蓄電デバイスの充放電による体積膨張を吸収し、蓄電要素に加わる応力を低減し得る蓄電デバイス用ラミネート外装材、これを備えた蓄電デバイス及び組蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、蓄電デバイス用ラミネート外装材の外層及び内層のうちの少なくとも一方の層が多孔質層を含む構成とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の蓄電デバイス用ラミネート外装材は、外層、内層及びこれらの間に配置されたバリア層を有する。
外層及び内層のうちの少なくとも一方の層が、多孔質層を含む。
【0009】
また、本発明の蓄電デバイスは、正極と負極と電解質を有する蓄電要素と、蓄電要素を外装し、外層、内層及びこれらの間に配置されたバリア層を有する蓄電デバイス用ラミネート外装材と、を備え、正極及び負極のタブを外部に導出したまま、蓄電要素の周囲に沿って蓄電デバイス用ラミネート外装材の内層同士を封止して成る。
外層及び内層のうちの少なくとも一方の層が、多孔質層を含む。
【0010】
また、本発明の組蓄電デバイスは、扁平形状をなす複数の蓄電デバイスが蓄電デバイスの厚さ方向に積層されて成る。
この蓄電デバイスは、正極と負極と電解質を有する蓄電要素と、蓄電要素を外装し、外層、内層及びこれらの間に配置されたバリア層を有する蓄電デバイス用ラミネート外装材と、を備え、正極及び負極のタブを外部に導出したまま、蓄電要素の周囲に沿って蓄電デバイス用ラミネート外装材の内層同士を封止して成る。
複数の蓄電デバイスのうちの少なくとも1つの蓄電デバイスにおいて、外層及び内層のうちの少なくとも一方の層が、多孔質層を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蓄電デバイス用ラミネート外装材の外層及び内層のうちの少なくとも一方の層が多孔質層を含む構成としたため、蓄電デバイスの充放電による体積膨張を吸収し、蓄電要素に加わる応力を低減し得る蓄電デバイス用ラミネート外装材、これを備えた蓄電デバイス及び組蓄電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の蓄電デバイスの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した蓄電デバイスのII-II線に沿った模式的な断面図である。
【
図3】
図1に示した蓄電デバイス用ラミネート外装材のIII線で囲んだ部分を模式的に示す部分断面図である。
【
図4】蓄電デバイス用ラミネート外装材の第1変形例の一部を模式的に示す部分断面図である。
【
図5】蓄電デバイス用ラミネート外装材の第2変形例の一部を模式的に示す部分断面図である。
【
図6】蓄電デバイス用ラミネート外装材の第3変形例の一部を模式的に示す部分断面図である。
【
図7】
図1に示した蓄電デバイスを模式的に示す側面図である。
【
図8】本発明の組蓄電デバイスの一実施形態の一部を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の蓄電デバイス用ラミネート外装材、蓄電デバイス及び組蓄電デバイスについて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、蓄電デバイス及び組蓄電デバイスとしてリチウムイオン二次電池及びその組電池を例示して説明するが、本発明はこれらに限定されない。また、以下「リチウムイオン二次電池用ラミネート外装材」を単に「ラミネート外装材」ということがある。さらに、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0014】
[蓄電デバイス]
図1は、蓄電デバイスの一実施形態であるリチウムイオン二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示したリチウムイオン二次電池のII-II線に沿った模式的な断面図である。
図3は、
図1に示したリチウムイオン二次電池用ラミネート外装材のIII線で囲んだ部分を模式的に示す部分断面図である。
【0015】
図1~
図3に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、蓄電要素の一実施形態である電池要素10と、電池要素10を外装するラミネート外装材20とを備えている。このリチウムイオン二次電池1は、電池要素10に取り付けられた正極タブ11C及び負極タブ12Cを外部に導出したまま、電池要素10の周囲に沿ってラミネート外装材20の内層22,22同士を封止した構成を有している。なお、このようなラミネート外装材20は、例えば、従来と同じように袋状に形成されたり、成形金型を用いた成形加工により容器状に形成されたりして、その内部に電池要素10が収容されて熱封止される。
【0016】
電池要素10は、正極集電体11Aの両方の表面に正極活物質層11Bが形成された正極11と、電解質層13と、負極集電体12Aの両方の表面に負極活物質層12Bが形成された負極12とを複数積層した構成を有している。このとき、一の正極11の正極集電体11Aの片方の表面に形成された正極活物質層11Bと該一の正極11に隣接する負極12の負極集電体12Aの片方の表面に形成された負極活物質層12Bとが電解質層13を介して向き合うように、正極、電解質層、負極の順に複数積層されている。
【0017】
これにより、隣接する正極活物質層11B、電解質層13及び負極活物質層12Bは、1つの単電池層14を構成する。従って、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、単電池層14が複数積層されることにより、電気的に並列接続された構成を有するものとなる。なお、電池要素10の最外層に位置する負極集電体12aには、片面のみに、負極活物質層12Bが形成されている。また、単電池層の外周には、隣接する正極集電体や負極集電体の間を絶縁するための絶縁層(図示せず)が設けられていてもよい。
【0018】
図3に示すラミネート外装材20は、リチウムイオン二次電池1におけるラミネート外装材20の外面を形成する外層21、内面を形成する内層22及びこれらの間に配置されたバリア層23を有し、これらが積層一体化されている。なお、バリア層23と外層21との間及びバリア層23と内層22との間には、これらを強固に積層一体化するための接着層24が設けられている。
【0019】
そして、
図3に示すラミネート外装材20においては、外層21及び内層22の双方が、空隙25aを有する多孔質層25を含んでいる。
【0020】
図4~
図6は、
図3に示したラミネート外装材の第1~第3変形例の
図3と同様の部分を模式的に示す部分断面図である。
図7は、
図1に示したリチウムイオン二次電池の負極タブ側を模式的に示す側面図である。以下の説明では、上述した構成部位と同じ構成部位に同一符号を付して詳細な発明を省略する。
【0021】
図4に示すラミネート外装材20Aにおいては、外層21及び内層22のうちの外層21が多孔質層25を含んでおり、
図5に示すラミネート外装材20Bにおいては、外層21及び内層22のうちの内層22が多孔質層25を含んでいる。
【0022】
図6に示すラミネート外装材20Cにおいては、空隙25aを有する多孔質層25を含む外層21、空隙25aを有する多孔質層25を含む内層22、及びバリア層23以外に保護層26を更に有している。このように、ラミネート外装材は、外層21、内層22のそれぞれが多層構造を有していてもよい。なお、
図6に示すように、バリア層23と保護層26との間及び保護層26と内層22との間にも、これらを強固に積層一体化するための接着層24が設けられている。
【0023】
さらに、
図7に示すように、内層22,22の双方が、多孔質層25を含み、内層22,22による負極タブ12Cの両方の側面の封止領域20sにおいて、多孔質層25の空隙25aが潰れ変形している。なお、図示しないが、内層による正極タブの封止領域においても、多孔質層の空隙が潰れ変形している。
【0024】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、ラミネート外装材20,20A,20B,20Cにおける外層21及び内層22の少なくとも一方が多孔質層25を含むので、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスの充放電による体積膨張を吸収し、電池要素等の蓄電要素に加わる応力を低減できるという利点がある。また、体積膨張を吸収させるための厚さを有する外層や内層は耐傷付き性に優れるという副次的な利点もある。さらに、内層が多孔質層を含む構成は、電池要素が電解液を含む場合には電解液分解により生じた分解ガスを空隙に保持し得るという副次的な利点もある。
【0025】
また、本実施形態においては、多孔質層の空隙率が、50体積%以上80体積%以下であることが好ましい。多孔質層の空隙率が50体積%未満の場合、圧縮率が低下してクッションパッド性能が低下する可能性がある。一方、多孔質層の空隙率が80体積%を超える場合、圧縮された場合に生じる反力が弱くなり、衝撃などによって外部入力が有った場合に電池要素の固定性が低下する可能性がある。
【0026】
さらに、
図7、さらには
図3、
図5及び
図6に示した例によれば、ラミネート外装材20,20B,20Cにおける内層22,22が多孔質層25を含み、内層22による負極タブ12Cとの両側の封止領域20sや図示しない正極タブとの両側の封止領域において多孔質層25の空隙25aが潰れ変形しているので、ラミネート外装材20と負極タブ12Cや正極タブとの密着性がさらに向上し、例えば、電池要素が電解液を含む場合には電解液の漏えいリスクを低減できるという利点がある。また、多孔質層25の空隙25aが潰れ変形する構成は、特殊形状を有する金型を用いる必要なく形成できるという副次的な利点もある。
【0027】
[組蓄電デバイス]
図8は、組蓄電デバイスの一実施形態であるリチウムイオン二次電池1の組電池50の一部を模式的に示す部分断面図である。
【0028】
図8に示すように、リチウムイオン二次電池1の組電池50は、扁平形状をなす複数のリチウムイオン二次電池1がリチウムイオン二次電池1の厚さ方向(
図8中の矢印Zで示す左右方向)に積層されて成る。なお、リチウムイオン二次電池1は、上述した第1変形例のラミネート外装材20Aを適用したものである。また、
図8中では省略しているが、リチウムイオン二次電池1は、
図8中の電池要素10の上側及び下側、紙面に対して垂直な方向の手前側及び奥側において、電池要素10の周囲に沿ってラミネート外装材20の内層22,22同士を封止した構成を有している。
【0029】
次に、本実施形態の利点について説明する。
本実施形態によれば、ラミネート外装材20Aにおける外層21が多孔質層25を含むので、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスの充放電による体積膨張を吸収し、電池要素等の蓄電要素に加わる応力を低減できるだけでなく、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイス同士の間に効率の良い熱発散パスを形成できるという利点がある。また、組電池を組み立てる際に、クッション機能等を有する他の部材を設置する必要がないので、組み立てコストを低減できるという副次的な利点もある。
【0030】
ここで、各構成要素の仕様や材種について更に詳細に説明する。
【0031】
(正極集電体)
正極集電体11Aは、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス鋼(SUS)箔などの導電性の材料により構成されている。しかしながら、これらに限定されず、リチウムイオン二次電池用の集電体として用いられる従来公知の材料を用いることができる。
【0032】
(正極活物質層)
正極活物質層12Aは、正極活物質として、従来公知のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含んでおり、必要に応じて、バインダや導電助剤を含んでいてもよい。
【0033】
正極活物質としては、例えば、容量、出力特性の観点からリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えばリチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物、リチウムと遷移金属元素とを含む硫酸化合物、リチウムと遷移金属元素と含む固溶体が挙げられるが、より高い容量、出力特性を得る観点からは、特にリチウム-遷移金属複合酸化物が好ましい。特に、電解液を用いたリチウムイオン二次電池の充放電によって正極において充電末期に電解液が分解しやすい高電位正極活物質を好適に用いることができる。このような高電位正極活物質としては、5V級正極活物質として知られているスピネル型LiMn1.5Ni0.5O4を例示することができる。
【0034】
バインダとしては、リチウムイオン二次電池用のバインダとして用いられる従来公知の材料を用いることができる。これらのバインダは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
導電助剤としては、リチウムイオン二次電池用の導電助剤として用いられる従来公知の材料を用いることができる。これらの導電助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(正極タブ)
正極タブ11Cは、例えば、アルミニウムや銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などの材料により構成されている。しかしながら、これらに限定されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして用いられる従来公知の材料を用いることができる。
【0037】
(負極集電体)
負極集電体12Aは、例えば、上述した正極集電体11Aと同様の材質のものを適用することができる。なお、負極集電体は、正極集電体と同一材質のものを用いてもよく、異なる材質のものを用いてもよい。
【0038】
(負極活物質層)
負極活物質層12Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料のいずれか1種又は2種以上を含んでおり、必要に応じて、バインダや導電助剤を含んでいてもよい。なお、バインダや導電助剤は上記説明したものを用いることができる。
【0039】
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、リチウムイオン二次電池用の負極材料として用いられる従来公知の材料を用いることができる。特に、高容量を有する負極材料としては、ケイ素を含有する負極材料を好適に用いることができる。リチウムイオン二次電池の充放電によって、ケイ素を含有する負極、いわゆるシリコン負極は、従来の黒鉛を用いた負極より激しい膨張収縮が起こるので本発明のラミネート外装材を適用することによる効果が得られやすい。
【0040】
(負極タブ)
負極タブ12Cは、例えば、上述した正極タブ11Cと同様の材質のものを適用することができる。なお、負極タブは、正極タブと同一材質のものを用いてもよく、異なる材質のものを用いてもよい。
【0041】
(電解質層)
電解質層13としては、リチウムイオン二次電池用の電解質層として用いられる従来公知の材料を用いることができる。例えば、セパレータに保持させた電解液や高分子ゲル電解質、固体高分子電解質を用いて層構造を形成したもの、更には、高分子ゲル電解質や固体高分子電解質を用いて積層構造を形成したものなどを挙げることができる。
【0042】
(絶縁層)
絶縁層は、電解質層13などに含まれる電解質を保持し、単電池層14の外周に、例えば電解液の液漏れを防止する樹脂やゴムなどの材料により形成されることが好ましい。
【0043】
(外層)
外層21は、ラミネート外装材の基材層とも呼ばれており、外層としては、例えば、ポリアミド(ナイロン)フィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。特に、外層としては、ポリアミド(ナイロン)フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の耐熱性樹脂フィルムを用いることが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。外層の厚さは限定されるものではなく、通常、50~200μmである。
【0044】
(内層)
内層22は、腐食性の強い電解液等に対して優れた耐薬品性を有することが好ましく、また、ラミネート外装材にヒートシール性を付与するものであることが好ましい。内層としては、例えば、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)などのポリプロピレンフィルムや、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム)などのポリエチレンフィルム等を用いることができる。
【0045】
(バリア層)
バリア層23は、通常、金属箔からなる。金属箔としては、例えば、アルミニウム(その合金を含む)箔、銅(その合金を含む)箔、ニッケル(その合金を含む)箔、チタン(その合金を含む)箔、ステンレス鋼箔等を用いることができ、特にアルミニウム箔を好適に用いることができる。また、金属箔は、その片面又は両面に化成皮膜などの腐食防止処理層が形成されたものであってもよい。バリア層の厚さは限定されるものではなく、通常、15~150μmであり、特に15~40μmであることが好ましい。バリア層の厚さが15μm未満の場合、詳しくは後述する製造工程中に変形や亀裂が生じるおそれがある。一方、バリア層の厚さが150μmを超える場合、材料としてのコスト、柔軟性、成形性、重量増加の観点から好ましくない。
【0046】
(接着層)
接着層24は、外層21(内層22)とバリア層23を接着可能な接着剤からなるものであれば限定されない。例えば、このような接着剤としては、ポリエステル系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤、エポキシ含有ポリエステルポリウレタン系接着剤等のドライラミネート用接着剤を用いることが好ましい。接着層は、例えば、外層と接着される層であるバリア層上に外側接着層の接着剤を所定の塗工方法によって塗工することにより形成される。接着層の接着剤の塗工方法としては、例えば、グラビア塗工法、スプレー塗工法、ドクターブレード塗工法等を用いることができる。
【0047】
(多孔質層)
多孔質層25としては、例えば、高分子多孔質膜を挙げることができ、その構造は特に限定されない。例えば、多孔質層は、独立孔のみを有していてもよく、連通孔のみを有していてもよく、独立孔と連通孔とを有していてもよい。その中でも、多孔質層は、固形分が三次元的に網目状に広がっている三次元網目状構造、又は多数の球状若しくは略球状の固形分が、直接若しくは筋状の固形分を解して連結している球状構造を有する三次元多孔質構造を有することが好ましい。また、これらの両方の構造を有していてもよい。多孔質層の厚さは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましい。多孔質層の厚さが5μm未満の場合、クッションパッド性能が低下する可能性があり、外部応力によりバリア層が傷つきやすくなる可能性がある。一方、多孔質層の厚さが200μmを超える場合、蓄電デバイスのエネルギー体積密度が低下する可能性がある。
【0048】
上述のような多孔質層は、従来公知の製造方法で得ることができる。例えば、多孔質層は、特開昭55-131028号公報に記載されているような湿式法による微多孔フィルムの製造方法によって得ることができる。具体的には、多孔質層は、微多孔フィルムを形成するマトリクス樹脂であるポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂に添加物を添加して混合した混合物を用いてフィルムを製膜する工程と、シート化した後に、マトリクス樹脂と添加物とからなるフィルムから添加物を抽出することで、マトリクス樹脂中に空隙を形成する工程を経て得ることができる。添加物としては、樹脂と混和する溶媒、可塑剤、無機微粒子等を挙げることができる。また、例えば、多孔質層は、特公昭55-32531号公報に記載されているような乾式法による多孔フィルムの製造方法によって得ることができる。具体的には、溶融押出時に高ドラフト比を採用することにより、シート化した延伸前のフィルム中のラメラ構造を制御し、これを一軸延伸することでラメラ界面での開裂を発生させ、空隙を形成することによって得ることができる。なお、本発明における多孔質層の形成方法は、これらの方法に限定されない。例えば、発泡プラスチックを利用することも可能である。
【0049】
(保護層)
保護層26としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミド(ナイロン)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルムを用いることができ、多孔質構造を有さない緻密質な樹脂フィルムを好適に用いることができる。これにより、バリア層の電解液耐性や耐傷付き性を向上させることができる。
【0050】
(ラミネート外装材の製造方法)
ここで、若干の例を挙げてラミネート外装材の製造方法を説明する。
まず、外層21として厚さが100μmの多孔質のポリプロピレンフィルム、内層22として厚さが100μmの多孔質のポリエチレンフィルム、バリア層23として厚さが40μmの金属箔(アルミニウム箔)を準備する。次いで、アルミニウム箔の両面にそれぞれ化成皮膜を形成する。具体的には、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水及びアルコールを含む化成処理をアルミニウム箔の両面に塗布し、180℃で乾燥して、化成皮膜を形成する。しかる後、アルミニウム箔の両面の化成皮膜の表面にポリアクリル接着剤を塗布して接着剤層を形成し、厚さが100μmの多孔質のポリプロピレンフィルム、厚さが100μmの多孔質のポリエチレンフィルムをそれぞれ貼り合わせて、
図3に示すようなラミネート外装材を得る。
【0051】
また、外層21として厚さが100μmの多孔質のポリプロピレンフィルム、内層22として厚さが50μmのポリエチレンフィルム、バリア層23として厚さが40μmの金属箔(アルミニウム箔)を準備する。次いで、上述の操作と同様の操作によりアルミニウム箔の両面にそれぞれ化成皮膜を形成する。しかる後、アルミニウム箔の両面の化成皮膜の表面にポリアクリル接着剤を塗布して接着剤層を形成し、厚さが100μmの多孔質のポリプロピレンフィルム、厚さが50μmのポリエチレンフィルムをそれぞれ貼り合わせて、
図4に示すようなラミネート外装材を得る。
【0052】
さらに、外層21として厚さが50μmのポリプロピレンフィルム、内層22として厚さが100μmの多孔質のポリエチレンフィルム、バリア層23として厚さが40μmの金属箔(アルミニウム箔)を準備する。次いで、上述の操作と同様の操作によりアルミニウム箔の両面にそれぞれ化成皮膜を形成する。しかる後、アルミニウム箔の両面の化成皮膜の表面にポリアクリル接着剤を塗布して接着剤層を形成し、厚さが50μmのポリプロピレンフィルム、厚さが100μmの多孔質のポリエチレンフィルムをそれぞれ貼り合わせて、
図5に示すようなラミネート外装材を得る。
【0053】
また、外層21として厚さが100μmの多孔質のポリプロピレンフィルム、内層22として厚さが100μmの多孔質のポリエチレンフィルム、バリア層23として厚さが40μmの金属箔(アルミニウム箔)、保護層26として厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備する。次いで、上述の操作と同様の操作によりアルミニウム箔の両面にそれぞれ化成皮膜を形成する。さらに、アルミニウム箔の両面の化成皮膜の表面にポリアクリル接着剤を塗布して接着剤層を形成し、厚さが100μmの多孔質のポリプロピレンフィルム、厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをそれぞれ貼り合わせる。しかる後、ポリエチレンフィルムの表面にポリアクリル接着剤を塗布して接着剤層を形成し、厚さが100μmの多孔質のポリエチレンフィルムを貼り合わせて、
図6に示すようなラミネート外装材を得る。
【0054】
以上、本発明を若干の実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0055】
本発明においては、蓄電デバイスの充放電による体積膨張を吸収し、蓄電要素に加わる応力の低減を実現すべく、蓄電デバイス用ラミネート外装材の外層及び内層のうちの少なくとも一方の層に多孔質層を設けたことを骨子とする。
【0056】
従って、蓄電デバイスの充放電による体積膨張を吸収して、蓄電要素に加わる応力を低減する効果が得られれば、蓄電デバイスの種類は特に限定されない。例えば、上述した各実施形態においては、単電池層が複数積層され、電気的に並列接続された通常型の発電要素を例示して説明したが、単電池層が複数積層され、電気的に直列接続された双極型の発電要素にすることも可能である。また、例えば、上述した各実施形態においては、いわゆる積層型の発電要素を例示したが、本発明の蓄電デバイスは、積層構造を含むいわゆる捲回型の発電要素に適用することも可能である。
【0057】
さらに、例えば、上述した各実施形態においては、蓄電デバイスとしてリチウムイオン二次電池を例示して説明したが、蓄電デバイスは、リチウムイオンキャパシタのような電気二重層キャパシタであっても良く、全固体電池であっても良い。
【0058】
さらに、例えば、上述した構成要素は、各実施形態に示した構成に限定されるものではなく、ラミネート外装材の仕様や材質の細部を変更することや、1つの例の構成要素を他の例の構成要素と入れ替えて又は組み合わせて適用することも可能である。例えば、ラミネート外装材20と負極タブ12Cや正極タブとの密着性を向上させる場合、封止される内層同士のうちの少なくとも一方の層が多孔質層を含んでいれば良い。また、例えば、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイス同士の間に効率の良い熱発散パスを形成させる場合、蓄電デバイス間において対向配置された外層のうちの少なくとも一方の層が多孔質層を含んでいれば良いが、全外層のうちの50%程度が多孔質層を含んでいることが好ましく、全外層が多孔質層を含んでいることがより好ましい。
【符号の説明】
【0059】
1 リチウムイオン二次電池(蓄電デバイス)
10 電池要素(蓄電要素)
11 正極
11A 正極集電体
11B 正極活物質層
11C 正極タブ
12,12a 負極
12A 負極集電体
12B 負極活物質層
12C 負極タブ
13 電解質層
14 単電池層
20,20A~20C ラミネート外装材(蓄電デバイス用ラミネート外装材)
20s 封止領域
21 外層
22 内層
23 バリア層
24 接着層
25 多孔質層
25a 空隙
26 保護層
30 リチウムイオン二次電池の組電池(組蓄電デバイス)