(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071953
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】流水方向表示装置及び流水方向表示プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240520BHJP
【FI】
G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182495
(22)【出願日】2022-11-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年7月19日にウェブサイトにて発表 令和4年6月9日に苫小牧道路事務所インフラDX及びゼロカーボンマネジメント会議第5回にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】599143416
【氏名又は名称】株式会社 三英技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050AA07
5B050BA09
5B050BA17
5B050BA18
5B050BA20
5B050CA07
5B050CA08
5B050EA26
5B050FA02
(57)【要約】
【課題】3次元モデル上で流水方向を簡単にかつ正確に取得できるようにする。
【解決手段】現況の地形及び計画を表す3次元モデル上に流水方向を表示する表示部を備えた流水方向表示装置は、3次元モデルを取得する3次元モデル取得部と、3次元モデル取得部が取得した3次元モデルに基づいて、所定ピッチで等高線105を計算する等高線計算部と、等高線計算部によって計算された複数本の等高線105うち、隣合う等高線105の高低関係を判別する高低判別部と、高低判別部によって判別された高低関係に基づいて相対的に低い方を示す高低表示106を3次元モデルと共に表示部11に表示させる表示制御部とを備えている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現況の地形及び計画を表す3次元モデル上に流水方向を表示する表示部を備えた流水方向表示装置であって、
前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得部と、
前記3次元モデル取得部が取得した前記3次元モデルに基づいて、所定ピッチで等高線を計算する等高線計算部と、
前記等高線計算部によって計算された複数本の等高線のうち、隣合う等高線の高低関係を判別する高低判別部と、
前記高低判別部によって判別された前記高低関係に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を前記3次元モデルと共に前記表示部に表示させる表示制御部とを備えていることを特徴とする流水方向表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流水方向表示装置において、
等高線のピッチを入力する入力部を備え、
前記等高線計算部は、前記入力部により入力されたピッチで等高線を計算することを特徴とする流水方向表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の流水方向表示装置において、
前記表示制御部は、相対的に高い方から低い方に向かう矢印を前記高低表示として前記3次元モデルと共に前記表示部に表示させることを特徴とする流水方向表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流水方向表示装置において、
前記表示制御部は、複数の前記矢印を同時に前記表示部に表示させることを特徴とする流水方向表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流水方向表示装置において、
前記表示制御部は、等高線の密度が高ければ高いほど、前記矢印の間隔が狭くなるように当該矢印を前記表示部に表示させることを特徴とする流水方向表示装置。
【請求項6】
請求項4に記載の流水方向表示装置において、
前記表示制御部は、等高線の密度が高ければ高いほど、前記矢印の長さが長くなるように前記表示部に表示させることを特徴とする流水方向表示装置。
【請求項7】
現況の地形及び計画を表す3次元モデル上に流水方向を表示させる流水方向表示プログラムであって、
前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、
前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、所定ピッチで等高線を計算する等高線計算工程と、
前記等高線計算工程で計算された複数本の等高線のうち、隣合う等高線の高低関係を判別する高低判別工程と、
前記高低判別工程で判別された前記高低関係に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を前記3次元モデルと共に表示部に表示させる表示工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする流水方向表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば道路や宅盤、宅地造成、河川などの設計に用いられる流水方向表示装置及び流水方向表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、現況の地形データに基づいて道路及びその周辺の計画設計を行うとともに、各種図面データを生成する道路計画設計支援システムが開示されている。特許文献1の道路計画設計支援システムでは、現況の地形及び計画を表す現況3次元データとして、等高線データを取得し、取得された等高線データに基づいて3次元メッシュデータを生成した後、作成された3次元メッシュデータに基づいて鳥瞰データを生成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既存の道路や宅盤、宅地造成、河川などの2次元設計では縦断勾配、横断勾配などの勾配情報から、どこが高くどこが低いのかを求めるため非常に手間が掛かり、さらには縦横断勾配の双方が複雑に絡まりあった場合、勾配の方向を間違えてしまう事も多くあった。
【0005】
各地点の勾配の方向は、特に雨の多い日本では非常に重要な情報であり、勾配情報に基づいて各種設計が行われることがある。よって、各地点の勾配の方向を間違うと、それに基づいた設計が不適切なものになるので、設計技術者の負荷は大きなものであった。
【0006】
一方、3次元設計システムは各種検討されているが、特許文献1のように等高線データに基づいて生成した3次元メッシュデータを利用して鳥瞰データを生成するに留まっており、3次元モデルから流水方向を簡単に求めるシステムは存在しない。鳥瞰データを見ても、縦横断勾配の双方が複雑に絡まりあった場合には勾配の方向を正確に判断するのは難しく、設計技術者の負荷は大きなままである。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流水方向を簡単にかつ正確に取得できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上に流水方向を表示する表示部を備えた流水方向表示装置を前提とすることができる。流水方向表示装置は、前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得部と、前記3次元モデル取得部が取得した前記3次元モデルに基づいて、所定ピッチで等高線を計算する等高線計算部と、前記等高線計算部によって計算された複数本の等高線のうち、隣合う等高線の高低関係を判別する高低判別部と、前記高低判別部によって判別された前記高低関係に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を前記3次元モデルと共に前記表示部に表示させる表示制御部とを備えている。
【0009】
この構成によれば、現況の地形及び計画を表す3次元モデルを3次元モデル取得部が取得すると、取得した3次元モデルに基づいて等高線計算部が所定ピッチの等高線を複数本計算する。すると、隣合う等高線の高低関係が高低判別部によって判別されるので、隣合う等高線のうち、一方の等高線が他方の等高線に比べて高いか、または低いかを判別でき、その判別の結果、相対的に低い方を示す高低表示として3次元モデルと共に表示部に表示される。つまり、設計技術者が各地点の勾配の方向を求めなくても、流水方向表示装置が等高線に基づいて正確な高低表示を行うので、設計技術者は、表示部を見ることで、正確な流水方向を簡単にかつ正確に取得することが可能になる。
【0010】
また、流水方向表示装置は、等高線のピッチを入力する入力部を備えていてもよい。この場合、前記等高線計算部は、前記入力部により入力されたピッチで等高線を計算するので、所望のピッチの等高線を得ることができる。
【0011】
また、前記表示制御部は、相対的に高い方から低い方に向かう矢印を前記高低表示として前記3次元モデルと共に前記表示部に表示させてもよい。この構成によれば、高低表示が矢印として表示されるので、設計技術者は隣合う等高線の高低関係を素早くかつ間違うことなく把握できる。
【0012】
また、前記表示制御部は、複数の前記矢印を同時に前記表示部に表示させてもよい。この構成によれば、3次元モデル上の複数の地点の勾配の方向や高低を把握できる。
【0013】
また、前記表示制御部は、等高線の密度が高ければ高いほど、前記矢印の間隔が狭くなるように前記表示部に表示させてもよい。これにより、当該地点の勾配の度合いを把握でき、その結果、流水量の予測が可能になる。また、前記表示制御部は、等高線の密度が高ければ高いほど、前記矢印の長さが長くなるように前記表示部に表示させてもよい。
【0014】
本開示の別の態様では、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上に流水方向を表示させる流水方向表示プログラムを前提とすることができる。流水方向表示プログラムは、前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、所定ピッチで等高線を計算する等高線計算工程と、前記等高線計算工程で計算された複数本の等高線のうち、隣合う等高線の高低関係を判別する高低判別工程と、前記高低判別工程で判別された前記高低関係に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を前記3次元モデルと共に表示部に表示させる表示工程とをコンピュータに実行させることができる。
【0015】
本開示のさらに別の態様では、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上に流水方向を表示させる流水方向表示方法を前提とすることができる。流水方向表示方法は、前記3次元モデルを取得する3次元モデル取得工程と、前記3次元モデル取得工程で取得した前記3次元モデルに基づいて、所定ピッチで等高線を計算する等高線計算工程と、前記等高線計算工程で計算された複数本の等高線のうち、隣合う等高線の高低関係を判別する高低判別工程と、前記高低判別工程で判別された前記高低関係に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を前記3次元モデルと共に表示部に表示させる表示工程とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、3次元モデルに基づいて所定ピッチの等高線を計算し、計算された複数本の等高線のうち、隣合う等高線の高低関係を判別し、判別された高低関係に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を3次元モデルと共に表示部に表示させることができるので、流水方向を簡単にかつ正確に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る流水方向表示装置の構成図である。
【
図3】流水方向の表示手順を示すフローチャートである。
【
図6】3次元ポリゴン表示形態の例を示す図である。
【
図7】3次元ポリゴン表示形態の拡大表示の例を示す図である。
【
図8】等高線のピッチを入力するための入力ウインドウの例を示す図である。
【
図9】等高線を3次元モデル上に重畳表示した例を示す図である。
【
図10】等高線及び矢印を3次元モデル上に重畳表示した例を示す図である。
【
図11】
図10に示す表示領域の一部を拡大した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る流水方向表示装置1の構成図であり、
図2は、流水方向表示装置1のブロック図である。流水方向表示装置1は、パーソナルコンピュータで構成されており、本体部10と、表示部11と、操作部12と、記憶装置13とを備えている。本体部10は、制御部10Aと通信モジュール10Bを有している。制御部10Aは、例えばCPU(中央演算処理装置)、ROM及びRAM(メモリ)等で構成されており、プログラムに従って動作する。メモリは、CPUが流水方向表示プログラムを実行する際に当該プログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記憶するためのバッファメモリである。また、通信モジュール10Bは、例えばインターネット等を介して外部の端末と通信する部分であり、データの送信、データの受信等が行えるように構成されている。
【0020】
制御部10Aにより、後述する3次元モデル取得部10a、入力部10b、等高線計算部10c、高低判別部10d、表示制御部10e等が構成されている。3次元モデル取得部10a、入力部10b、等高線計算部10c、高低判別部10d及び表示制御部10eは、制御部10Aを構成しているハードウェアのみで構成されていてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成されていてもよい。例えば、CPUが流水方向表示プログラムを実行することで、3次元モデル取得部10a、入力部10b、等高線計算部10c、高低判別部10d、表示制御部10eの各機能を制御部10Aが実現可能になる。
【0021】
表示部11は、例えば液晶ディスプレイ装置や有機ELディスプレイ装置等で構成されている。表示部11は、制御部10Aの表示制御部10eに接続されており、表示制御部10eによって制御され、各種設定画面、入力画面、設計画面、解析画面、等高線表示画面、勾配表示画面等の表示が可能になっている。
【0022】
操作部12は、ユーザが流水方向表示装置1を操作するための機器で構成されている。操作部12には、例えばキーボード12a及びマウス12bが含まれているが、これら以外にも表示部11に組み込まれたタッチ操作パネルや、各種ポインティングデバイス等が含まれていてもよい。操作部12は、制御部10Aに接続されており、ユーザの操作部12による操作が制御部10Aで検出可能になっている。
【0023】
記憶装置13は、各種データやプログラム等を記憶可能なハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等で構成されている。記憶装置13は制御部10Aに接続されており、制御部10Aからの指示に従い、送られてきたデータの記憶、及び記憶されているデータの読み出しを実行する。記憶装置13は、本体部10に内蔵されていてもよいし、本体部10の外部に設けられていてもよい。また、記憶装置13は、外部のサーバや、いわゆるクラウド型のストレージシステムであってもよい。また、記憶装置13の一部のみ本体部10に内蔵し、他を外部に設けてもよい。
【0024】
記憶装置13には、後述する各工程をコンピュータに実行させる流水方向表示プログラムが記憶されている。この流水方向表示プログラムのユーザへの提供形態は特に限定されるものではなく、例えば
図1に示すようにCD-ROMやDVD-ROMなどのような記録媒体Aに記録された状態でユーザに提供されてもよいし、インターネット等を介して外部サーバからダウンロード可能な形態でユーザに提供されてもよい。提供された流水方向表示プログラムを汎用のパーソナルコンピュータにインストールすることで、当該パーソナルコンピュータを流水方向表示装置1として使用することが可能になる。
【0025】
尚、汎用のパーソナルコンピュータに流水方向表示プログラムをインストールする際には記憶装置13にインストールすればよい。また、汎用のパーソナルコンピュータを、流水方向表示プログラムがインストールされた外部サーバにアクセスさせることで、流水方向表示装置1として使用することも可能であり、流水方向表示プログラムのインストール場所は特に限定されるものではない。
【0026】
流水方向表示装置1は、例えば道路や宅盤、宅地造成、河川などの各種地形及び計画を表す3次元モデルにおいて、水の流れる方向や量を視覚的に確認するために3次元モデルから等高線を生成し、等高線の間に高い方から低い方へ向いた矢印(高低表示の一例)を計算し、この矢印を流水方向や流量を示す手段の一つとして表示する装置である。より具体的には、流水方向表示装置1は、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上に勾配の方向を、上記矢印を用いて表示することにより、3次元モデル上の各地点が上り勾配であるか、下り勾配であるか、または水平であるかをユーザに提示する装置である。水は地面の下っている方向に向かって流れるので、3次元モデル上に表示された勾配は水の流れ方向を表示していることになり、したがって、流水方向表示装置1は、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上に流水方向を表示する装置である。また、流水方向表示プログラムは、コンピュータを以下のように動作させることにより、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上に流水方向を表示させることが可能なプログラムである。流水方向表示装置1を使用することで、現況の地形及び計画を表す3次元モデル上に流水方向を表示させる表示方法を実行することもできる。
【0027】
流水方向表示装置1の各部の構成について、
図1、
図2、
図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
図2に示す3次元モデル取得部10aは、現況の地形及び計画を表す3次元モデルを取得する部分である。3次元モデルは、任意の形式のデータとして、例えば記憶装置13、外部サーバ、CD-ROMやDVD-ROMなどのような記録媒体等(以下、これらをまとめて記憶装置13等という)に保存されている。流水方向表示装置1のユーザは、操作部12を操作して所望の3次元モデルのデータを記憶装置13等から読み込む操作を行うことで、3次元モデル取得部10aが3次元モデルを取得する。記憶装置13等に複数の3次元モデルのデータが保存されている場合には、ユーザが所望の3次元モデルのデータを選択する操作を操作部12で行った後、読み込む操作を行えばよい。3次元モデルを取得する工程は、
図3に示すフローチャートのステップS1で実行される3次元モデル取得工程である。
【0028】
ステップS1で取得された3次元モデルのデータは、流水方向表示装置1の内部に一時的に保存される。
図2に示す表示制御部10eは、一時的に保存されている3次元モデルのデータを読み込んで、
図4に示す3次元表示形態、
図5に示す平面表示形態、
図6に示す3次元ポリゴン表示形態に変換して表示部11に表示させる。3次元表示形態で表示させるか、平面表示形態で表示させるか、それとも3次元ポリゴン表示形態で表示させるかについては、ユーザが操作部12を操作することで選択可能である。尚、
図3~
図6において、符号101で示す部分は道路である。
【0029】
図2に示す表示制御部10eは、ユーザにより3次元表示形態が選択された場合には、表示部4を制御して
図4に示す3次元表示形態で3次元モデルを表示させるので、ユーザは地形を立体的に把握できる。また、表示制御部10eは、ユーザにより平面表示形態が選択された場合には、表示部4を制御して
図5に示す平面表示形態で3次元モデルを表示させるので、ユーザは地形を平面的に把握できる。また、表示制御部10eは、ユーザにより3次元ポリゴン表示形態が選択された場合には、表示部4を制御して
図6に示す3次元ポリゴン表示形態で3次元モデルを表示させるので、ユーザは地形を3次元ポリゴンの集合体として把握できる。3次元モデルを表示部11に表示させる工程は3次元モデル表示工程である。
【0030】
3次元モデル表示工程では、表示部11に表示されている3次元モデルの一部を拡大表示させることもできる。例えば
図7に示すように、3次元ポリゴン表示形態で表示されている3次元データを拡大表示させることで、細部を詳細に確認することができる。ユーザが操作部12を操作することで、拡大したい部分の選択、拡大率の選択が行えるようになっており、任意の部分を任意の拡大率で拡大できる。拡大後の縮小も可能である。また、3次元モデルを表示部11上でスクロールして表示させることも可能である。
【0031】
図7に示すように、道路101には道路中心線形101aが設定されている。この例では、道路101の両側には盛土102と、切土103とがある。
図7における道路101よりも下の盛土102の間には、小段104がある。このように、盛土102、切土103及び小段104を3次元モデル上で把握することはできるが、各部の勾配の方向及び勾配の度合いについては3次元モデル上で正確に把握するのが困難であった。特に、縦横断勾配の双方が複雑に絡まりあった地点の勾配は誤って把握してしまうおそれがあった。本発明は、以下の工程を経ることで、
図7に示すような3次元モデル上であっても、流水方向をユーザに対して正確に把握させることができるものである。
【0032】
図2に示す入力部10bは、等高線のピッチを入力する部分である。等高線のピッチを入力する際にはユーザが操作部12を操作する。操作部12でどのような操作が行われたかは、制御部10Aの入力部10bで検出される。入力部10bは、操作部12の操作を検出することで、等高線のピッチの入力を受け付ける。
【0033】
等高線のピッチを入力する際には、表示制御部10eが入力用のユーザインターフェースとして
図8に示すような入力ウインドウ100を生成し、表示部11に表示させる。入力ウインドウ100には、等高線のピッチを数値(例えばm単位)で入力可能な入力領域100aが設けられている。この入力領域100aには、ユーザが操作部12を操作して任意の数値を入力可能になっている。入力された数値は、等高線を計算する際の計算ピッチとして流水方向表示装置1の内部に一時的に記憶される。等高線のピッチを入力する際には、例えば0.1m間隔で入力することができるが、これに限られるものではない。この工程は、
図3に示すフローチャートのステップS2で実行される等高線の計算ピッチ指定工程である。
【0034】
図2に示す等高線計算部10cは、3次元モデル取得部10aが取得した3次元モデルに基づいて、所定ピッチで等高線を計算する部分である。具体的には、まず、等高線計算部10cは、3次元モデル取得部10aが取得した3次元モデルを読み込む。3次元モデルは、当該モデル内の各地点の高さ情報を含んでいるので、等高線計算部10cは、各地点の高さ情報を取得し、同じ高さの地点同士を連結する線、即ち等高線を計算する。このとき、等高線計算部10cは、入力部10bにより入力されたピッチで等高線を計算する。等高線は、所定ピッチで計算されるので、複数本計算される。各等高線には、高さ情報が付与されている。表示制御部10eは、等高線に付与されている高さ情報を等高線の高さとして、当該等高線と共に、表示部11の3次元モデル上に数値で表示させることができる。
【0035】
図9は、3次元ポリゴン表示形態で表示されている3次元モデル上に、等高線計算部10cが計算した複数本の等高線105を重畳表示した例を示している。この図に示しているのは一例であり、実際の等高線の形状は複雑になることがあるとともに、勾配が急になれば等高線105の密度が高くなったり、勾配が緩ければ等高線105の密度が低くなったりする。等高線105の密度は、単位面積あたりの等高線105の本数で表すことができる。この工程は、
図3に示すフローチャートのステップS3の等高線105の計算工程、即ち、ステップS1の3次元モデル取得工程で取得した3次元モデルに基づいて、所定ピッチで等高線105を計算する工程である。
【0036】
図2に示す高低判別部10dは、等高線計算部10cによって計算された複数本の等高線105のうち、隣合う等高線105の高低関係を判別する部分である。具体的には、まず、等高線計算部10cが隣合う2本の等高線105を任意に特定する。等高線計算部10cは、特定した2本の等高線105にそれぞれ付与されている高さ情報に基づいて、2本の等高線105のうち、どちらが高いか、またはどちらが低いかを判別する。1つのペアの判別が終わると、別の隣合う等高線105の高低関係を同様にして判別する。これを繰り返すことにより、
図9に示す全ての等高線105の高低関係を判別できる。高低関係の判別結果は、流水方向表示装置1の内部に一時的に保存される。上述した判別方法は一例であり、他の方法を用いて隣合う等高線105の高低関係を判別してもよい。この工程は、
図3に示すフローチャートのステップS4の工程、即ち、ステップS3の等高線計算工程で計算された複数本の等高線105うち、隣合う等高線105の高低関係を判別する高低判別工程である。
【0037】
図10や、
図10の一部を拡大表示した場合を示す
図11に表しているように、表示制御部10eは、高低判別部10dによって判別された高低関係に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を3次元モデルと共に表示部11に表示させる。本実施形態では、表示制御部10eは、相対的に高い方から低い方に向かう複数の矢印106を高低表示として3次元モデルと共に表示部11に表示させるように構成されている。複数の矢印106は同時に表示させる。
【0038】
矢印106の方向は、
図3に示すフローチャートのステップS5において高低判別部10dが計算する。この工程は矢印106の方向計算工程である。すなわち、高低判別部10dは、上述のようにして判別した隣合う等高線の高低関係に基づいて、矢印106の方向を計算する。このとき、隣合う等高線のうち、高い方に始点が位置し、低い方に終点が位置するように矢印106の方向を計算する。これにより、低い方に向く矢印106が得られる。矢印106の始点は、高い方の等高線105上に位置していてもよいし、高い方の等高線105から低い方に離れた所に位置していてもよい。また、矢印106の始点は、低い方の等高線105上に位置していてもよいし、低い方の等高線105から高い方に離れた所に位置していてもよい。矢印106の指す方向と、等高線105とは直交するように設定される。
【0039】
ステップS6では、矢印106の長さを計算するか否かを判定する。本実施形態では、ユーザが操作部12を操作することで、矢印106の長さを計算するか否かの選択が可能になっている。矢印106の長さを計算する場合には、ステップS7の矢印の長さ計算工程に進む。
【0040】
ステップS7では、高低判別部10dが、等高線105の密度が高ければ高いほど、矢印106の長さが長くなるように計算する。言い換えると、高低判別部10dは、等高線105の密度が低ければ低いほど、矢印106の長さが短くなるように計算する。等高線105の密度が高いということは、その地点の勾配が急であるということであり、流速は増加する。反対に、等高線105の密度が低いということは、その地点の勾配が緩やかであるということであり、流速は減少する。すなわち、流水量を視覚的に示すため、流水量が多ければ多いほど矢印106の長さが長くなり、流水量が少なければ少ないほど矢印106の長さが短くなるようにする。
【0041】
ステップS8では、表示制御部10eが、等高線105の密度によって異なる長さの矢印106を表示部11に表示させる。つまり、表示制御部10eは、等高線105の密度が高ければ高いほど、矢印106の長さが長くなるように表示部11に表示させるので、ユーザは表示部11に表示されている矢印106を見るだけでその地点の流水量を正確に予測できる。
【0042】
ステップS6で矢印106の長さを計算しないと判定された場合には、矢印106の長さ計算をすることなく、ステップS9に進む。ステップS9では、表示制御部10eが、一定の長さの矢印106を表示部11に表示させる。ステップS8及びステップS9は、ステップS4の高低判別工程で判別された高低関係に基づいて相対的に低い方を示す高低表示を3次元モデルと共に表示部11に表示させる表示工程である。
【0043】
高低判別部10dは、矢印106の間隔を計算してもよい。例えば、高低判別部10dは、等高線105の密度が高ければ高いほど、矢印106の間隔が狭くなるように当該間隔を計算する。言い換えると、高低判別部10dは、等高線105の密度が低ければ低いほど、矢印106の間隔が広くなるように当該間隔を計算する。この工程は矢印の間隔計算工程である。
【0044】
矢印106の間隔を計算した場合、表示制御部10eは、等高線105の密度が高ければ高いほど、矢印106の間隔が狭くなるように当該矢印106を表示部11に表示させる。これにより、矢印106の密度が高い地点では流水量が多くなること、矢印106の密度が低い地点では流水量が少なくなることを把握できる。
【0045】
図3に示すフローチャートでは、ステップS5とステップS7とを分けているが、ステップS5で矢印106の長さを計算してもよい。また、ステップS5で矢印106の間隔を計算してもよい。さらに、ステップS5で矢印106の長さと矢印106の間隔の両方を計算してもよく、この場合、後の表示ステップで、長さが異なり、かつ、間隔が異なる複数の矢印106を表示させることができる。
【0046】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る流水方向表示装置1によれば、現況の地形及び計画を表す3次元モデルを3次元モデル取得部10aが取得すると、取得した3次元モデルに基づいて、等高線計算部10cがユーザによって指定された所定ピッチの等高線105を複数本計算する。すると、各等高線105に付与された高さ情報に基づいて、隣合う等高線105の高低関係が高低判別部10dによって判別されるので、隣合う等高線105のうち、一方の等高線105が他方の等高線105に比べて高い、または低いかを正確に判別できる。その判別の結果を利用することで、相対的に低い方を示す矢印106の方向や長さ、密度を計算することができる。この矢印106が各地点の高低表示として3次元モデルと共に表示部11に表示される。
【0047】
これにより、設計技術者が各地点の勾配の方向を求めなくても、流水方向表示装置1が等高線105に基づいて正確な高低表示を行うので、設計技術者は、表示部11を見ることで、正確な流水方向を簡単にかつ正確に取得することができる。
【0048】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本開示に係る流水方向表示装置及び流水方向表示プログラムは、例えば道路や宅盤、宅地造成、河川などの各種設計に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 流水方向表示装置
10a 3次元モデル取得部
10b 入力部
10c 等高線計算部
10d 高低判別部
10e 表示制御部