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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071954
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240520BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20240520BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01L29/80 L
H01L29/80 H
H01L29/44 S
H01L29/44 P
H01L29/58 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182496
(22)【出願日】2022-11-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「100GHz以上の高周波数帯通信デバイスに関する研究開発」研究開発委託契約に基づく開発項目「高出力送信を可能とする化合物系半導体技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 祐介
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 史朗
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】中舍 安宏
(72)【発明者】
【氏名】多木 俊裕
【テーマコード(参考)】
4M104
5F102
【Fターム(参考)】
4M104BB02
4M104BB05
4M104BB09
4M104BB14
4M104CC01
4M104CC03
4M104DD01
4M104DD08
4M104DD09
4M104DD34
4M104DD68
4M104DD79
4M104DD99
4M104EE06
4M104EE16
4M104EE17
4M104EE18
4M104EE20
4M104FF07
4M104FF11
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GR09
5F102GS07
5F102GV01
5F102GV05
5F102GV06
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC10
5F102HC15
5F102HC19
5F102HC24
(57)【要約】
【課題】ゲート電極の電気抵抗の高周波信号への影響を抑制することができる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、電子走行層及び電子供給層を含む半導体層と、前記半導体層の上に設けられたゲート電極、ソース電極及びドレイン電極と、前記ゲート電極に接続された金属膜と、を有し、前記半導体層は、活性領域と、平面視で前記活性領域を囲む不活性領域と、を有し、前記ゲート電極は、平面視で、前記活性領域と重なる第1領域と、前記第1領域を間に挟み、いずれも前記不活性領域と重なる2つの第2領域と、を有し、前記金属膜は、2つの前記第2領域に接触する。半導体装置は、携帯電話通信用の基地局、電波天文学用の通信装置、衛星通信用の通信装置に使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子走行層及び電子供給層を含む半導体層と、
前記半導体層の上に設けられたゲート電極、ソース電極及びドレイン電極と、
前記ゲート電極に接続された金属膜と、
を有し、
前記半導体層は、
活性領域と、
平面視で前記活性領域を囲む不活性領域と、
を有し、
前記ゲート電極は、平面視で、
前記活性領域と重なる第1領域と、
前記第1領域を間に挟み、いずれも前記不活性領域と重なる2つの第2領域と、
を有し、
前記金属膜は、2つの前記第2領域に接触することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属膜を支持する絶縁膜を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁膜は、比誘電率が3.0以下の低誘電率膜を含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極と前記低誘電率膜との間に空洞が存在することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
平面視で、前記ソース電極及び前記ドレイン電極が並ぶ方向における前記第2領域の寸法は、2μm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
平面視で、前記ソース電極及び前記ドレイン電極が並ぶ方向において、前記第1領域の寸法は、前記第2領域の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記金属膜の電気抵抗は、前記第1領域の電気抵抗よりも低いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体層は、前記活性領域を複数有し、
前記ゲート電極は、前記活性領域毎に前記第1領域を有し、
隣り合う2つの前記第1領域の間に前記第2領域があることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体層を覆い、ゲート開口部が形成されたパッシベーション膜を有し、
前記ゲート電極は、前記ゲート開口部を通じて前記半導体層にショットキー接触し、
前記ゲート電極は、
前記ゲート開口部よりも前記ソース電極側で前記パッシベーション膜の上面に接触する第1面と、
前記ゲート開口部よりも前記ドレイン電極側で前記パッシベーション膜の上面に接触する第2面と、
を有し、
平面視で、前記第2面の前記ドレイン電極側の端部は、前記第1面の前記ソース電極側の端部よりも前記ゲート開口部から離れていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
電子走行層及び電子供給層を含む半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の上にゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記ゲート電極に接続される金属膜を形成する工程と、
を有し、
前記半導体層は、
活性領域と、
平面視で前記活性領域を囲む不活性領域と、
を有し、
前記ゲート電極は、平面視で、
前記活性領域と重なる第1領域と、
前記第1領域を間に挟み、いずれも前記不活性領域と重なる2つの第2領域と、
を有し、
前記金属膜は、2つの前記第2領域に接触することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)が、マイクロ波又はミリ波等の周波数帯域用の増幅器、及び、光通信における信号処理回路等に多用されている。高周波帯域で用いられるHEMTにおいては、ゲート電極の電気抵抗の高周波信号への影響が顕著になりやすい。そこで、高周波特性と機械的強度との両立を目的として下部ゲート電極及び上部ゲート電極を備えたHEMTが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-182057号公報
【特許文献2】特開2004-95637号公報
【特許文献3】特開2000-353708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のHEMTには、上部ゲート電極とソース電極及びドレイン電極との間の寄生容量を抑制するために、上部ゲート電極用にアスペクト比が大きい開口部が必要とされる。このようなアスペクト比が大きい開口部を、実際に高精度で製造することは極めて困難である。特に、サブテラヘルツ帯で使用されるHEMTにおいては、寄生容量の低減のためにゲート長が100nm以下程度と小さく、また、ソース電極とドレイン電極との間の距離も小さいため、アスペクト比が大きい開口部の形成は特に困難である。
【0005】
本開示の目的は、ゲート電極の電気抵抗の高周波信号への影響を抑制することができる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、電子走行層及び電子供給層を含む半導体層と、前記半導体層の上に設けられたゲート電極、ソース電極及びドレイン電極と、前記ゲート電極に接続された金属膜と、を有し、前記半導体層は、活性領域と、平面視で前記活性領域を囲む不活性領域と、を有し、前記ゲート電極は、平面視で、前記活性領域と重なる第1領域と、前記第1領域を間に挟み、いずれも前記不活性領域と重なる2つの第2領域と、を有し、前記金属膜は、2つの前記第2領域に接触する半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ゲート電極の電気抵抗の高周波信号への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る半導体装置における電極及び金属膜のレイアウトを示す図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図(その1)である。
図3】第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図(その2)である。
図4】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図6】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図7】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図8】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図9】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図10】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
図11】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
図12】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
図13】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
図14】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その11)である。
図15】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その12)である。
図16】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その13)である。
図17】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その14)である。
図18】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その15)である。
図19】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その16)である。
図20】第2実施形態に係る半導体装置における電極及び金属膜のレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。本明細書及び図面において、X1-X2方向、Y1-Y2方向、Z1-Z2方向を相互に直交する方向とする。X1-X2方向及びY1-Y2方向を含む面をXY面とし、Y1-Y2方向及びZ1-Z2方向を含む面をYZ面とし、Z1-Z2方向及びX1-X2方向を含む面をZX面とする。便宜上、Z1方向を上方向、Z2方向を下方向とする。また、本開示において平面視とは、Z1側から対象物を視ることをいう。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を含む半導体装置に関する。図1は、第1実施形態に係る半導体装置における電極及び金属膜のレイアウトを示す図である。図2及び図3は、第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。図2図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。図3図1中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
【0011】
第1実施形態に係る半導体装置100は、図1図3に示すように、基板101と、基板101の上に設けられた半導体層109とを有する。半導体層109は、初期層102、電子走行層103、スペーサ層104及び電子供給層105を含む。初期層102は基板101上に形成されている。電子走行層103は初期層102上に形成されている。スペーサ層104は電子走行層103上に形成されている。電子供給層105はスペーサ層104上に形成されている。
【0012】
基板101は、例えばSiC基板、Si基板、サファイア基板、GaN基板、AlN基板又はダイヤモンド基板である。初期層102は、例えばAlN層、GaN層又はAlGaN層である。初期層102がAlN層、GaN層又はAlGaN層の2種以上を複数含む積層構造を有していてもよい。電子走行層103は、例えば意図的なドーピングが行われていないノンドープのGaN層である。スペーサ層104は、例えばAlN層又はAlGaN層である。電子供給層105は、例えば
AlGaN層、InAlN層、InAlGaN層、AlN層又はScAlN層である。
【0013】
半導体層109は、活性領域161と、平面視で活性領域161を囲む不活性領域162とを有する。図2に示すように、活性領域161では、電子走行層103のスペーサ層104との界面の近傍に二次元電子ガス(2DEG)150が存在する。一方、図3に示すように、不活性領域162内には、2DEG150が存在しない。不活性領域162により活性領域161が画定される。
【0014】
活性領域161で半導体層109の上にソース電極112及びドレイン電極113が形成されている。ソース電極112及びドレイン電極113は、Y1-Y2方向に平行に延び、X1-X2方向に並んでいる。ソース電極112及びドレイン電極113は、例えば厚さが2nm~50nmのTi膜及びその上の厚さが100nm~300nmのAl膜を含み、半導体層109とオーミック接触している。ソース電極112の一部及びドレイン電極113の一部が不活性領域162で半導体層109の上にあってもよい。
【0015】
電子供給層105上に、ソース電極112及びドレイン電極113を覆うパッシベーション膜121が形成されている。パッシベーション膜121は、例えばSi、Al、Hf、Zr又はTaの酸化物、窒化物又は酸窒化物を含む。パッシベーション膜121は、好ましくはSiN膜である。パッシベーション膜121がこれら材料の絶縁膜を複数含む積層構造を有していてもよい。パッシベーション膜121の厚さは、例えば2nm~100nmであり、好ましくは50nm程度である。
【0016】
パッシベーション膜121に、平面視でソース電極112とドレイン電極113との間に位置するゲート開口部121Gが形成されている。パッシベーション膜121上にゲート電極111が形成されている。ゲート電極111は、Y1-Y2方向に平行に延び、平面視でソース電極112とドレイン電極113との間に位置する。ゲート電極111は、ゲート開口部121Gを通じて電子供給層105と接する。ゲート電極111は、例えば厚さが5nm~30nmのNi膜及びその上の厚さが100nm~300nmのAu膜を含む。
【0017】
ゲート電極111は、平面視で、活性領域161と重なる第1領域171と、第1領域171を間に挟み、いずれも不活性領域162と重なる2つの第2領域172とを有する。ゲート電極111の長手方向(Y1-Y2方向に平行な方向)で、第1領域171は2つの第2領域172の間にある。X1-X2方向に平行な方向、すなわち、ソース電極112及びドレイン電極113が並ぶ方向において、第1領域171の寸法は第2領域172の寸法よりも小さい。X1-X2方向に平行な方向における第2領域172の寸法は、好ましくは2μm以上である。また、X1-X2方向に平行な方向における第1領域171の最下部の寸法、すなわちゲート長は、例えば100nm以下である。
【0018】
ゲート電極111は、ゲート開口部121Gよりもソース電極112側でパッシベーション膜121の上面に接触する第1面111Sと、ゲート開口部121Gよりもドレイン電極113側でパッシベーション膜121の上面に接触する第2面111Dとを有する。平面視で、第2面111Dのドレイン電極113側の端部は、第1面111Sのソース電極112側の端部よりもゲート開口部121Gから離れている。
【0019】
パッシベーション膜121上に、ゲート電極111を覆う絶縁膜122が形成されている。絶縁膜122は、例えばSi、Al、Hf、Zr又はTaの酸化物、窒化物又は酸窒化物を含む。絶縁膜122は、好ましくはSiN膜である。絶縁膜122がこれら材料の絶縁膜を複数含む積層構造を有していてもよい。絶縁膜122の厚さは、例えば2nm~100nmであり、好ましくは50nm程度である。
【0020】
絶縁膜122上に低誘電率膜123が形成されている。低誘電率膜123は、比誘電率が3.0以下の絶縁膜である。低誘電率膜123の材料は、例えばベンゾシクロブテン(BCB)又はメチルシルセスキオキサン(MSQ)である。低誘電率膜123の比誘電率は、好ましくは2.5以下である。低誘電率膜123の厚さは、例えば1500nm~2000nmであり、好ましくは1900nm程度である。
【0021】
絶縁膜122と低誘電率膜123との間に空洞125がある。空洞125はゲート電極111の周囲にある。より具体的には、ゲート電極111の周囲で、絶縁膜122の上面が空洞125に面している。絶縁膜122のゲート電極111に直接接触する部分の上面は低誘電率膜123から離れている。空洞125の高さは、最も高い部分で500nm~1000nmであり、好ましくは700nm程度である。
【0022】
低誘電率膜123上に絶縁膜124が形成されている。絶縁膜124は、例えばSi、Al、Hf、Zr又はTaの酸化物、窒化物又は酸窒化物を含む。絶縁膜124は、好ましくはSiN膜である。絶縁膜124がこれら材料の絶縁膜を複数含む積層構造を有していてもよい。絶縁膜124の厚さは、例えば200nm~500nmであり、好ましくは300nm程度である。
【0023】
パッシベーション膜121、絶縁膜122、低誘電率膜123及び絶縁膜124から積層絶縁膜129が構成されている。積層絶縁膜129に、ソース電極112に達する開口部129Sと、ドレイン電極113に達する開口部129Dと、ゲート電極111に達する開口部129Gとが形成されている。開口部129Gは、ゲート電極111の2つの第2領域172に達する。
【0024】
絶縁膜124上に、金属膜131、132及び133が形成されている。金属膜131は、開口部129Gを通じてゲート電極111に直接接触する。金属膜131は2つの第2領域172に直接接触する。金属膜132は開口部129Sを通じてソース電極112に直接接触する。金属膜133は開口部129Dを通じてドレイン電極113に直接接触する。金属膜131、132及び133は、例えばシード層及びその上のめっき層を含む。シード層は、例えばTi層、Au層又はCu層を含む。めっき層は、例えばAu層又はCu層を含む。第1領域171の長手方向に垂直な断面において、金属膜131の断面積はゲート電極111の第1領域171の断面積よりも大きい。また、金属膜131の電気抵抗は第1領域171の電気抵抗よりも低い。
【0025】
金属膜131はゲートパッド(図示せず)に接続され、金属膜132はソースパッド(図示せず)に接続され、金属膜133はドレインパッド(図示せず)に接続される。
【0026】
次に、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法について説明する。図4図19は、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法を示す断面図である。図4図12は、図1中のII-II線に沿った断面の変化を示し、図13図19は、図1中のIII-III線に沿った断面の変化を示す。
【0027】
まず、図4に示すように、基板101上に半導体層109を形成する。半導体層109の形成では、初期層102、電子走行層103、スペーサ層104及び電子供給層105を、例えば有機金属化学気相堆積(metal organic chemical vapor deposition:MOCVD)法により形成する。電子走行層103のスペーサ層104との界面の近傍に2DEG150が生じる。
【0028】
次いで、図5及び図13に示すように、半導体層109に不活性領域162を形成する。不活性領域162の形成では、例えば、不活性領域162を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを半導体層109上に形成し、このパターンをマスクとしてAr等のイオン注入を行う。不活性領域162では、2DEG150が消失する。このパターンをエッチングマスクとして塩素系ガスを用いた反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)等のドライエッチングを行ってもよい。不活性領域162の形成に伴って、不活性領域162に画定された活性領域161が形成される。不活性領域162の形成後、レジストのパターンを除去する。
【0029】
その後、図5に示すように、ソース電極112及びドレイン電極113を形成する。ソース電極112及びドレイン電極113は、例えばリフトオフ法により形成することができる。すなわち、ソース電極112及びドレイン電極113を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法により金属膜を形成し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、Ti膜を形成し、その上にAl膜を形成する。次いで、例えば、窒素雰囲気中にて500℃~650℃で熱処理(合金化処理)を行い、オーミック接触を確立する。
【0030】
続いて、図5及び図13に示すように、電子供給層105上にパッシベーション膜121を形成する。パッシベーション膜121は、例えばプラズマCVD法により形成することができる。パッシベーション膜121は、原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)法又はスパッタ法により形成してもよい。
【0031】
次いで、図6及び図14に示すように、パッシベーション膜121にゲート開口部121Gを形成する。ゲート開口部121Gの形成では、例えば、フォトリソグラフィによりゲート開口部121Gを形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンをパッシベーション膜121上に形成し、このパターンをエッチングマスクとして弗素系ガスを用いたドライエッチングを行う。ドライエッチングに代えて、弗酸又はバッファード弗酸等を用いたウェットエッチングを行ってもよい。
【0032】
その後、図6及び図14に示すように、ゲート電極111を、一部がパッシベーション膜121上に位置するように形成する。ゲート電極111は、例えばリフトオフ法により形成することができる。すなわち、ゲート電極111を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法により金属膜を形成し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、Ni膜を形成し、その上にAu膜を形成する。
【0033】
続いて、図7に示すように、空洞125を形成するための犠牲層128を形成する。犠牲層128は、例えばポリメチルグルタルイミド(PMGI)層である。犠牲層128の形成では、PMGIの塗布を行い、空洞125を形成する部分を残してPMGIを除去する。
【0034】
次いで、図8及び図15に示すように、絶縁膜122の上に低誘電率膜123を形成する。低誘電率膜123は犠牲層128を覆うように形成する。その後、低誘電率膜123の上に絶縁膜124を形成する。パッシベーション膜121、絶縁膜122、低誘電率膜123及び絶縁膜124から構成された積層絶縁膜129が得られる。
【0035】
続いて、図9及び図16に示すように、絶縁膜124の上にレジストパターン181を形成する。レジストパターン181は、開口部129Sを形成する部分に開口部181Sを有し、開口部129Dを形成する部分に開口部181Dを有し、開口部129Gを形成する部分に開口部181Gを有する。
【0036】
次いで、図10及び図17に示すように、積層絶縁膜129のレジストパターン181から露出した部分をエッチングにより除去することにより、開口部129S、129D及び129Gを形成する。
【0037】
その後、図11及び図18に示すように、レジストパターン181及び犠牲層128を除去する。レジストパターン181を犠牲層128よりも先に除去してもよく、犠牲層128をレジストパターン181よりも先に除去してもよい。
【0038】
続いて、図12及び図19に示すように、金属膜131、132及び133を形成する。金属膜131、132及び133の形成では、上面の全体にシード層を形成し、シード層の上にレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、金属膜131を形成する部分と、金属膜132を形成する部分と、金属膜133を形成する部分とに開口部を有する。そして、これら開口部内にめっき層を形成する。その後、レジストパターンを除去し、レジストパターンに覆われていたシード層を、ミリング等により除去する。金属膜131、132及び133を同時に形成してもよく、金属膜131を金属膜132及び133よりも先に形成してもよく、金属膜132及び133を金属膜131よりも先に形成してもよい。
【0039】
このようにして、第1実施形態に係る半導体装置100を製造することができる。
【0040】
半導体装置100においては、2DEG150が存在する領域がチャネルとして機能し、ゲート電極111によりチャネルの電位が制御される。ゲート電極111には、ゲートパッドから金属膜131を介して制御信号(高周波信号)が入力される。本実施形態では、ゲート電極111が、第1領域171を間に挟む2つの第2領域172を有し、金属膜131が2つの第2領域172に接触している。このため、第1領域171には、両端から高周波信号が入力される。従って、ゲート電極111内での高周波信号の位相のずれが抑制され、ゲート電極111の電気抵抗の高周波信号への影響を抑制することができる。すなわち、第1実施形態によれば、優れた高周波特性を得ることができる。例えば、最大発振周波数を向上することができる。例えば、周波数が100GHz以上のサブテラヘルツ帯の高周波信号に対し、ゲイン及び効率を向上することができる。
【0041】
また、第2領域172は不活性領域162の上に設けられているため、第2領域172はソース電極112及びドレイン電極113から離れている。従って、第2領域172を広く形成しても、ゲート電極111及び金属膜131とソース電極112及びドレイン電極113との間の寄生容量を低く抑えることができる。第2領域172が広いことで、開口部129Gのアスペクト比を小さく抑え、開口部129Gを高精度で形成することができる。
【0042】
更に、主に低誘電率膜123及び絶縁膜124により金属膜131が支持される。このため、良好な機械的強度を確保することができる。
【0043】
なお、ゲート開口部121Gは活性領域161の上で形成されていればよく、半導体層109の不活性領域162はパッシベーション膜121により覆われていてもよい。すなわち、ゲート電極111の第2領域172は不活性領域162に接している必要はなく、パッシベーション膜121の上に形成されていてもよい。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主として活性領域及び不活性領域のレイアウトの点で第1実施形態と相違する。図20は、第2実施形態に係る半導体装置における電極及び金属膜のレイアウトを示す図である。
【0045】
第2実施形態に係る半導体装置200では、図20に示すように、複数の活性領域161がY1-Y2方向に平行に並んで配置されている。そして、隣り合う活性領域161の間に不活性領域162がある。ゲート電極111は、活性領域161毎に第1領域171を有する。また、隣り合う第1領域171の間に第2領域172がある。
【0046】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0047】
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様に、ゲート電極111の電気抵抗の高周波信号への影響を抑制することができ、優れた高周波特性を得ることができる。また、開口部129Gを高精度で形成することができる。
【0048】
半導体装置は、例えば、携帯電話通信用の基地局、電波天文学用の通信装置、衛星通信用の通信装置に使用することができる。
【0049】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0050】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0051】
(付記1)
電子走行層及び電子供給層を含む半導体層と、
前記半導体層の上に設けられたゲート電極、ソース電極及びドレイン電極と、
前記ゲート電極に接続された金属膜と、
を有し、
前記半導体層は、
活性領域と、
平面視で前記活性領域を囲む不活性領域と、
を有し、
前記ゲート電極は、平面視で、
前記活性領域と重なる第1領域と、
前記第1領域を間に挟み、いずれも前記不活性領域と重なる2つの第2領域と、
を有し、
前記金属膜は、2つの前記第2領域に接触することを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記金属膜を支持する絶縁膜を有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記絶縁膜は、比誘電率が3.0以下の低誘電率膜を含むことを特徴とする付記2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記ゲート電極と前記低誘電率膜との間に空洞が存在することを特徴とする付記3に記載の半導体装置。
(付記5)
平面視で、前記ソース電極及び前記ドレイン電極が並ぶ方向における前記第2領域の寸法は、2μm以上であることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記6)
平面視で、前記ソース電極及び前記ドレイン電極が並ぶ方向において、前記第1領域の寸法は、前記第2領域の寸法よりも小さいことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記7)
前記金属膜の電気抵抗は、前記第1領域の電気抵抗よりも低いことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記8)
前記半導体層は、前記活性領域を複数有し、
前記ゲート電極は、前記活性領域毎に前記第1領域を有し、
隣り合う2つの前記第1領域の間に前記第2領域があることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記9)
前記半導体層を覆い、ゲート開口部が形成されたパッシベーション膜を有し、
前記ゲート電極は、前記ゲート開口部を通じて前記半導体層にショットキー接触し、
前記ゲート電極は、
前記ゲート開口部よりも前記ソース電極側で前記パッシベーション膜の上面に接触する第1面と、
前記ゲート開口部よりも前記ドレイン電極側で前記パッシベーション膜の上面に接触する第2面と、
を有し、
平面視で、前記第2面の前記ドレイン電極側の端部は、前記第1面の前記ソース電極側の端部よりも前記ゲート開口部から離れていることを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記10)
電子走行層及び電子供給層を含む半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の上にゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記ゲート電極に接続される金属膜を形成する工程と、
を有し、
前記半導体層は、
活性領域と、
平面視で前記活性領域を囲む不活性領域と、
を有し、
前記ゲート電極は、平面視で、
前記活性領域と重なる第1領域と、
前記第1領域を間に挟み、いずれも前記不活性領域と重なる2つの第2領域と、
を有し、
前記金属膜は、2つの前記第2領域に接触することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0052】
100、200:半導体装置
103:電子走行層
105:電子供給層
109:半導体層
111:ゲート電極
111S:第1面
111D:第2面
112:ソース電極
113:ドレイン電極
121:パッシベーション膜
121G:ゲート開口部
122、124:絶縁膜
123:低誘電率膜
125:空洞
131、132、133:金属膜
161:活性領域
162:不活性領域
171:第1領域
172:第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
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