(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071956
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】電池の温度制御構造体
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6557 20140101AFI20240520BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240520BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20240520BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240520BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240520BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240520BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M10/613
H01M10/643
H01M10/6568
H01M10/625
H01M10/615
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182499
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000253075
【氏名又は名称】澤藤電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003890
【氏名又は名称】弁理士法人SIPPs
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸浩
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH08
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】モジュール化しやすく、かつ電池セルの回収もしやすい電池の温度制御構造体を提供すること。
【解決手段】電池の温度制御構造体10は、電池10の高さ方向に交差する横方向に並んだ複数の電池セル21を冷却するものであり、電池20の側方で電池20の高さ方向に上下に延び往復して配置され電池20を冷却する縦熱交換部材31と、縦熱交換部材31に接続され電池20の横方向に延びて配置され電池20を冷却する横熱交換部材32とを備えている。縦熱交換部材31と横熱交換部材32は交互に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の高さ方向に交差する横方向に並んだ複数の電池セルを冷却する電池の温度制御構造体であって、
前記電池の側方で前記電池の高さ方向に上下に延び往復して配置され、前記電池を冷却する縦熱交換部材を備えていることを特徴とする電池の温度制御構造体。
【請求項2】
請求項1記載の電池の温度制御構造体であって、
前記縦熱交換部材に接続され前記電池の横方向に延びて配置され前記電池を冷却する横熱交換部材を備え、前記縦熱交換部材と前記横熱交換部材が交互に配置されていることを特徴とする電池の温度制御構造体。
【請求項3】
請求項2記載の電池の温度制御構造体であって、
前記縦熱交換部材と前記横熱交換部材から熱交換部材が構成され、
前記熱交換部材の一方の端部と他方の端部は前記電池の横方向の両側に分かれて配置されていることを特徴とする電池の温度制御構造体。
【請求項4】
請求項3記載の電池の温度制御構造体であって、
前記縦熱交換部材の長さL1、及び、前記縦熱交換部材の上部に接続された前記横熱交換部材の上端から前記縦熱交換部材の下部に接続された前記横熱交換部材の下端までの距離H1は、前記電池の高さHCよりも短いことを特徴とする電池の温度制御構造体。
【請求項5】
請求項4記載の電池の温度制御構造体であって、
前記電池は、複数の前記電池セルを保持する電池ホルダを備え、
前記縦熱交換部材は前記電池ホルダに保持され、
前記横熱交換部材は前記電池ホルダの外側に配置されていることを特徴とする電池の温度制御構造体。
【請求項6】
請求項5記載の電池の温度制御構造体であって、
前記縦熱交換部材は、前記電池の側面視で前記電池セル間に配置されていることを特徴とする電池の温度制御構造体。
【請求項7】
請求項6記載の電池の温度制御構造体であって、
前記電池セルは、その表面が絶縁部材で覆われ、
前記絶縁部材は、前記電池ホルダに接着剤を介して固定され、
前記電池セルの列間には、治具を出し入れ可能な隙間が形成されていることを特徴とする電池の温度制御構造体。
【請求項8】
請求項6記載の電池の温度制御構造体であって、
前記縦熱交換部材及び前記横熱交換部材は、冷媒管であることを特徴とする電池の温度制御構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を温度制御する電池の温度制御構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車の電動化が加速する中で、車載用電池の発熱に起因する爆発や発火の防止、および電池寿命の延長のためには電池の温度管理が重要となっている。このような電池の温度管理を行う技術として電池を冷却して温度管理を行うエネルギー貯蔵パックが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1のエネルギー貯蔵パックは、冷却剤入口マニホールドと、冷却剤出口マニホールドと、冷却剤入口マニホールドと冷却剤出口マニホールドとの間に延在し、複数の熱交換管を通過する冷却剤と、エネルギー貯蔵パック内の複数の熱交換管に隣接してそれらの間に取り付けられた複数の電池セルとの間で熱交換する複数の熱交換管とを含んでいる。また、冷却剤入口マニホールドおよび冷却剤出口マニホールドの少なくとも一方は、複数の熱交換管終端構造体と、複数の熱交換管終端構造体を相互連結する複数のホースセグメントとを含んでいる。エネルギー貯蔵パックは、冷却剤入口マニホールド上に位置する冷却剤入口開口部と、冷却剤出口マニホールド上に位置する冷却剤出口開口部とをさらに含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のエネルギー貯蔵パックは、冷却剤入口マニホールド、冷却剤出口マニホールド、これらのマニホールド間に延在する複数の熱交換管、電池セルとの間で熱交換する複数の熱交換管、複数の熱交換管終端構造体およびホースセグメント等が複雑に配置されており、構造が複雑でモジュール化が容易ではない。また、特許文献1のエネルギー貯蔵パックを解体しようとした場合に、エネルギー貯蔵パックからの電池セルの回収作業が非常に複雑になる。
【0006】
このように従来技術では、空冷、水冷、冷媒直冷などの様々な方法で電池の冷却を行っているが、何れもシステムの構造が複雑であり、その構造が複雑になるほどコストが高くなるばかりでなく、熱交換効率やシステム効率の悪化を招きやすくなっている。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、比較的モジュール化しやすく、かつ電池セルの回収もしやすい電池の温度制御構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例によれば、電池の高さ方向に交差する横方向に並んだ複数の電池セルを冷却する電池の温度制御構造体であって、
前記電池の側方で前記電池の高さ方向に上下に延び往復して配置され、前記電池を冷却する縦熱交換部材を備えていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、電池の高さ方向に電池セルの長手方向が形成されているところ、電池を冷却する縦熱交換部材が電池(電池セル)の側方で電池の高さ方向に上下に延び往復して配置されているので、電池セルに接する冷却面の面積が増え、熱交換率を高めることができる。さらに、電池の側方に高さ方向に上下に延びる縦熱交換部材を配置するだけなので、取り付けが容易でモジュール化しやすい。結果、比較的モジュール化しやすく、かつ電池セルの回収もしやすい電池の温度制御構造体とすることができる。
【0010】
好ましくは、前記縦熱交換部材に接続され前記電池の横方向に延びて配置され前記電池を冷却する横熱交換部材を備え、前記縦熱交換部材と前記横熱交換部材が交互に配置されている。
【0011】
かかる構成によれば、縦熱交換部材に接続され電池の横方向に延びて配置され電池を冷却する横熱交換部材を備え、縦熱交換部材と横熱交換部材が交互に配置されているので、空いている空間を有効利用して縦熱交換部材だけでなく横熱交換部材も用いて熱交換効率を高めることができる。
【0012】
好ましくは、前記縦熱交換部材と前記横熱交換部材から熱交換部材が構成され、
前記熱交換部材の一方の端部と他方の端部は前記電池の横方向の両側に分かれて配置されている。
【0013】
かかる構成によれば、熱交換部材の一方の端部と他方の端部は電池の横方向の両側に分かれて配置されているので、熱交換部材を用いて電池から奪った熱を電池の横方向の両側に放出して熱交換効率をより高めることができる。
【0014】
好ましくは、前記縦熱交換部材の長さL1、及び、前記縦熱交換部材の上部に接続された前記横熱交換部材の上端から前記縦熱交換部材の下部に接続された前記横熱交換部材の下端までの距離H1は、前記電池の高さHCよりも短い。
【0015】
かかる構成によれば、縦熱交換部材の長さL1、及び、縦熱交換部材の上部に接続された横熱交換部材の上端から縦熱交換部材の下部に接続された横熱交換部材の下端までの距離H1は、電池の高さHCよりも短いので、熱交換部材が電池の高さよりも低い位置にあり、電池セルをバスバー(導体棒)で接続する作業の邪魔にならず、作業効率を向上させることができる。
【0016】
好ましくは、前記電池は、複数の前記電池セルを保持する電池ホルダを備え、
前記縦熱交換部材は前記電池ホルダに保持され、
前記横熱交換部材は前記電池ホルダの外側に配置されている。
【0017】
かかる構成によれば、縦熱交換部材は電池ホルダに保持され、横熱交換部材は電池ホルダの外側に配置されているので、横熱交換部材が冷却フィンの役割を果たして熱交換効率をより高めることができる。
【0018】
好ましくは、前記縦熱交換部材は、前記電池の側面視で前記電池セル間に配置されている。
【0019】
一般的に電池セルは円筒状であることが多く、電池セル間は窪んでデッドスペースとなる。かかる構成によれば、縦熱交換部材は、電池の側面視で電池セル間に配置されているので、電池セル間のデッドスペースを有効に活用して、電池の温度制御構造体全体として省スペース化を図ることができる。
【0020】
好ましくは、前記電池セルは、その表面が絶縁部材で覆われ、
前記絶縁部材は、前記電池ホルダに接着剤を介して固定され、
前記電池セルの列間には、治具を出し入れ可能な隙間が形成されている。
【0021】
かかる構成によれば、電池セルはその表面が絶縁部材で覆われ、絶縁部材は電池ホルダに接着剤を介して固定されているところ、電池セルの列間には治具を出し入れ可能な隙間が形成されているので、この隙間に治具を入れて絶縁部材を切断し、絶縁部材から電池セルの本体のみを容易に引き出して回収することができる。
【0022】
好ましくは、前記縦熱交換部材及び前記横熱交換部材は、冷媒管である。
【0023】
かかる構成によれば、縦熱交換部材及び横熱交換部材は、冷媒管であるので、冷媒を流して、熱交換効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
単純な構造で、モジュール化しやすい電池の温度制御構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る電池の温度制御構造体の斜視図である。
【
図2】本発明に係る縦熱交換部材、横熱交換部材及び電池ホルダを説明する図である。
【
図3】
図3(A)は本発明に係る縦熱交換部材、横熱交換部材及び電池ホルダの分解斜視図である。
図3(B)は熱交換部材の要部正面図である。
【
図4】本発明に係る電池セルと熱交換部材の分解斜視図である。
【
図5】別態様の実施例に係る電池の温度制御構造体の斜視図である。
【
図6】
図6(A)は実施例に係る電池セル及び電池ホルダの平面図である。
図6(B)は
図6(A)の要部拡大図である。
図6(C)は電池セル及び絶縁部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は、本発明に係る電池の温度制御構造体の一例の概略構成を概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例0027】
図1に示されるように、電池の温度制御構造体10は、電池20の高さ方向(Z軸方向)に直交する(交差する)横方向(X軸方向)に並んだ複数の電池セル21を冷却するものである。電池20は、例えば、電池20に充電された電気によって駆動するモータで走行する電動車両やいわゆるハイブリッド自動車、電気機械等に用いられる。なお、
図1の座標は、電池20の横方向をX軸方向、電池20の奥行き方向をY軸方向、電池20の高さ方向をZ軸方向として示されている。
【0028】
図1~
図4に示されるように、電池の温度制御構造体10は、電池20と、電池20を保持する電池ホルダ23と、電池ホルダ23に設けられ電池20(電池セル21)を冷却する熱交換部材30とを備えている。
【0029】
次に電池20について説明する。
電池20は、円柱状に形成され電気を充電・放電させる複数の電池セル21と、複数の電池セル21を接続して導通させるバスバー23aとを備えている。電池セル21は円筒状の軸が高さ方向(Z軸方向)となる姿勢で横方向(X軸方向)に複数個並べて一列に配置され、さらに奥行き方向(Y軸方向)に複数例並べて配置されている。電池20(電池セル21)の高さは、HCである。
【0030】
次に電池ホルダ23について説明する。
電池ホルダ23は、熱交換部材30を保持する横側壁24と、この横側壁24に90度折れ曲がり形成された前後側壁25と、横側壁24に縦方向へ溝状に形成され熱交換部材30を保持する溝部26とを備えている。電池ホルダ23の高さ方向の寸法は電池20(電池セル21)の高さHCよりも小さい。
【0031】
次に熱交換部材30について説明する。
熱交換部材30は、電池20の側方で電池20の高さ方向に上下に延び往復して配置され電池20を冷却する縦熱交換部材31と、この縦熱交換部材31に接続され電池20の横方向に延びて配置され電池20を冷却する横熱交換部材32とを備え、縦熱交換部材31と横熱交換部材32が交互に配置されている。縦熱交換部材31及び横熱交換部材32は、冷媒管である。熱交換部材30は冷媒管であるので、冷媒を流して、熱交換効率を向上させることができる。
【0032】
また、縦熱交換部材31の水路幅(径)W1は、横熱交換部材21の水路幅(径)W2以上の大きさである。このような水路幅W1、W2とすることで水路断面積を維持しつつ空間を有効活用することができる。なお、水路幅W1、W2とは、冷媒管(熱交換部材30)が円形の場合は直径を示し、冷媒管が扁平の場合は最小の幅の部分を示す。
【0033】
また、
図1に示されるように縦熱交換部材31を隣り合う電池セル21間毎に配置した場合は、縦熱交換部材31の長さL1を横熱交換部材32の長さL2よりも長く設定してもよい。縦熱交換部材31を横熱交換部材32よりも長く設定することで熱交換効率を高めることができる。
【0034】
また、縦熱交換部材31と横熱交換部材32から構成された熱交換部材30は、熱交換部材30の一方の端部33と他方の端部34が電池20の横方向の両側に分かれて配置されている。このように、熱交換部材30の一方の端部33と他方の端部34が電池20の横方向の両側に分かれて配置されているので、熱交換部材30を用いて電池20から奪った熱を電池20の横方向の両側に放出して熱交換効率をより高めることができる。
【0035】
また、縦熱交換部材31の長さL1、及び、縦熱交換部材31の上部に接続された横熱交換部材32の上端から縦熱交換部材31の下部に接続された横熱交換部材32の下端までの距離H1は、電池20の高さHCよりも短い。これにより、熱交換部材30が電池20の上端部よりも低い位置にあり、電池セル21をバスバー(導体棒)23aで接続する作業及び電池セル21をバスバー23aから取り外す作業の邪魔にならず、作業効率を向上させることができる。
【0036】
また、電池ホルダ23の高さ方向の寸法を縦熱交換部材31の長さL1と同等にすることで、電池20(電池セル21)の高さHCよりも小さくし、電池ホルダ23も電池セル21をバスバー(導体棒)23aで接続する作業及び電池セル21をバスバー23aから取り外す作業の邪魔にならず、より作業効率を向上させることができる。
【0037】
電池20は、複数の電池セル21を保持する電池ホルダ23を備えており、縦熱交換部材31は電池ホルダ23の溝部26に保持され、横熱交換部材32は電池ホルダ23の高さ方向の外側に配置されている。これにより、横熱交換部材32が冷却フィンの役割を果たして熱交換効率をより高めることができる。
【0038】
また、横熱交換部材32を例えばヒートシンク等の熱電導体で覆うことで放熱効率を上げて、全体として熱交換効率を高めてもよい。また、横熱交換部材32を蓄熱材で覆い、全体として熱交換効率を高めてもよい。
【0039】
図1~
図4、
図6に示されるように、縦熱交換部材31は、電池20の側面視で電池セル21間に配置されている。電池セル21が円筒状である場合、電池セル21間は窪んでデッドスペースとなる。この点、縦熱交換部材31は、電池20の側面視で電池セル21間に配置されているので、電池セル21間のデッドスペースを有効に活用して、電池の温度制御構造体10全体として省スペース化を図ることができる。
【0040】
また、
図4に示す熱交換部材31は、電池セル21の列を複数設けた場合のものを示しており、2列の電池セル21毎にその端部を覆うように縦熱交換部材31間を接続する横熱交換部材32aを備えている。なお、実施例では、2列の電池セル21毎に横熱交換部材32aを備えたが、これに限定されず、1列毎、3列毎、4列毎など、電池セル21の列を問わず、電池セル21の列の端部を覆うように横熱交換部材32を備えるものとしてもよい。
【0041】
次に電池セル21について説明する。
電池セル21は、その表面が絶縁部材22で覆われている。電池セル21を覆う絶縁部材28は、例えば絶縁フィルムで構成され、電池セル21の側面に直交する(交差する)方向および側面に平行な方向を拘束するように電池セル21の一部または全体に密着している。絶縁部材22には、切込み用スリットを設けてもよく、この切込み用スリットから容易に切断することができる。
【0042】
切込み用スリットは1か所または複数か所に設けてもよい。絶縁部材22は、電池ホルダ23の内側に形成されたセル保持部27に接着剤を介して固定されている。また、電池セル21の列間には、治具を出し入れ可能な隙間28が形成されている。この隙間28(複数の電池セル21が配置された場合の電池セル21間)は、電池セル21の側面方向に動かすことが可能な距離である。
【0043】
セル保持部27は、電池セル21との側面(曲面)と同一形状の接触部を有し、セル保持部27に連続した凹凸部分を形成することで接触部を電池セル21の直径周長の50%以下とする。また、セル保持部27のうち電池セル21を接触する接触部にのみ接着剤で固定する。これにより放熱効果を高めるとともに絶縁部材(絶縁フィルム)22をセル保持部27の接触部から剥がしやすくすることができる。
【0044】
また、絶縁部材22の切込み用スリット部分は、他の電池セル21及び電池ホルダ23が密着しない位置に向けて配置されている。このようにすることで、隙間28にフィルム切断用の治具を入れて絶縁部材22を切断し、電池セル21の上部または下部の少なくとも一方から治具を出し入れして電池セル21本体を取り出すことができる。
【0045】
次に実施例に係る電池の温度制御構造体10の別態様を説明する。
図5に示されるように、電池の温度制御構造体10は、電池20の電池セル21を上下で固定しており、電池セル21の上端部と下端部がそれぞれ電池ホルダ23により保持されている。
【0046】
以上に述べた電池の温度制御構造体10の効果について説明する。
本発明の実施例によれば、電池20の高さ方向に電池セル21の長手方向が形成されているところ、電池20を冷却する縦熱交換部材31が電池20(電池セル21)の側方で電池20の高さ方向に上下に延び往復して配置されているので、電池セル21に接する冷却面の面積が増え、熱交換率を高めることができる。さらに、電池20の側方に高さ方向に上下に延びる縦熱交換部材31を配置するだけなので、構造が単純であり、取り付けが容易でモジュール化しやすい。結果、単純な構造で、モジュール化しやすい電池の温度制御構造体10とすることができる。
【0047】
さらに、縦熱交換部材31に接続され電池20の横方向に延びて配置され電池20を冷却する横熱交換部材32を備え、縦熱交換部材31と横熱交換部材32が交互に配置されているので、空いている空間を有効利用して縦熱交換部材31だけでなく横熱交換部材32も用いて熱交換効率を高めることができる。
【0048】
さらに、熱交換部材30の一方の端部33と他方の端部34は電池20の横方向の両側に分かれて配置されているので、熱交換部材30を用いて電池20から奪った熱を電池20の横方向の両側に放出して熱交換効率をより高めることができる。
【0049】
さらに、縦熱交換部材31の長さL1、及び、縦熱交換部材31の上部に接続された横熱交換部材32の上端から縦熱交換部材31の下部に接続された横熱交換部材32の下端までの距離H1は、電池の高さHCよりも短いので、熱交換部材30が電池20の高さよりも低い位置にあり、電池セル21をバスバー(導体棒)23aで接続する作業の邪魔にならず、作業効率を向上させることができる。
【0050】
さらに、縦熱交換部材31は電池ホルダ23に保持され、横熱交換部材32は電池ホルダ23の外側に配置されているので、横熱交換部材32が冷却フィンの役割を果たして熱交換効率をより高めることができる。
【0051】
さらに、一般的に電池セル21は円筒状であることが多く、電池セル21間は窪んでデッドスペースとなる。かかる構成によれば、縦熱交換部材31は、電池20の側面視で電池セル21間に配置されているので、電池セル21間のデッドスペースを有効に活用して、電池の温度制御構造体全体10として省スペース化を図ることができる。
【0052】
さらに、電池セル21はその表面が絶縁部材22で覆われ、絶縁部材22は電池ホルダ23に接着剤を介して固定されているところ、電池セル21の列間には治具を出し入れ可能な隙間が形成されているので、この隙間に治具を入れて絶縁部材22を切断し、絶縁部材22から電池セル21の本体のみを容易に引き出して回収することができる。
【0053】
さらに、縦熱交換部材31及び横熱交換部材32は、冷媒管であるので、冷媒を流して、熱交換効率を向上させることができる。
【0054】
尚、本発明の実施例では、熱交換部材30の縦熱交換部材31を隣り合う電池セル21間毎に配置したが、これに限定されず、縦熱交換部材31を電池セル2つおき毎、3つおき毎、さらには間隔を違えて縦熱交換部材31を配置し、縦熱交換部材31の長さよりも横熱交換部材32の長さを長くしても差し支えない。
【0055】
また、本発明の実施例は、熱交換部材30を冷媒管としたが、これに限定されず、中実の部材や、冷凍回路およびヒートパイプなどにしてもよい。
【0056】
また、本発明の実施例は、電池セル21を円柱形状としたが、これに限定されず、電池セル21を角柱形状としてもよく、充放電できれば電池セル21の形状は問わない。
【0057】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0058】
例えば、寒冷地などで電池温度が低い場合は、熱交換部材30を利用して加熱して、電池を適正な温度に制御することも可能である。