(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071958
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】卒塔婆の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 33/00 20060101AFI20240520BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20240520BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A47G33/00 P
B41M3/00 Z
B41J2/01 127
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182503
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】591287417
【氏名又は名称】アルマーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】星野 義裕
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
【Fターム(参考)】
2C056FB01
2C056FD20
2C056HA41
2H113AA04
2H113FA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】にじみが少なく、木材の素地の質感や色が大きく変わらない印刷をおこなう。
【解決手段】卒塔婆用の板材3を準備し、表面3aにチョークを固定のまま、こすりつけることにより、へこんだ領域にチョーク粉5が入り込むように塗布する。この状態で、表面に透明のUV硬化インクを塗布するとともに、UVランプにて、このUV硬化インクを硬化させる。これにより、チョークの粉の上に透明の層7が形成される。硬化させた層7の上に、インクジェットプリンタにて、文字9を印刷する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷がされていない卒塔婆の文字印刷予定面に白色のチョーク粉を乾燥塗布するチョーク塗布ステップ、
前記文字印刷予定面にUV硬化インクを塗布するUV硬化インク塗布ステップ、
紫外線を照射することにより、前記UV硬化インクを硬化させる硬化ステップ、
前記硬化させたUV硬化インク面に、インクジェットプリンタで文字を印刷する印刷ステップ、
を備えた卒塔婆の製造方法。
【請求項2】
請求項1の卒塔婆の製造方法において、
前記チョーク塗布ステップは、固形の白色チョークを前記文字印刷予定面にこすりつけることにより実行されること、
を特徴とする卒塔婆の製造方法。
【請求項3】
印刷がされていない木材の印刷予定面に乾燥した粉を塗布する粉塗布ステップ、
前記印刷予定面にUV硬化インクを塗布するUV硬化インク塗布ステップ、
紫外線を照射することにより、前記UV硬化インクを硬化させる硬化ステップ、
前記硬化させたUV硬化インク面に、インクジェットプリンタで印刷する印刷ステップ、
を備えた木材への印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木材への印刷方法に関し、特に、質感を保ちつつ、にじみの少ない印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
お寺では、卒塔婆を月に数百本以上作成する必要がある。特許文献1には、かかる作業を機械化するための卒塔婆用プリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかるプリンタは、熱転写式であるので、転写シートが無駄となる。また、被対象物が卒塔婆であるので、押しつけるローラの圧が変わることにより、うまく印刷できないという問題があった。また、かかる問題が無いスクリーン印刷も考えられるが、いちいち版を作る必要がある。
【0005】
そこで、発明者は、卒塔婆の上に透明のUVコート処理を行い、その上からインクジェットプリンタで文字を卒塔婆に印刷することを考えた。
【0006】
しかしながら、前記UVコート処理後、インクジェットプリンタで文字を印刷すると、卒塔婆の質感がかなり変化するとともに、文字がにじむという問題があった。特に、にじみの問題は、斜めの成分がある文字部分については特にその傾向が強くなる。
【0007】
また、UV硬化インクの前に、砥の粉を目止め剤として用いることも考えられるが、これらは一旦、水で溶いて表面3aに塗布することとなる。したがって、乾燥処理が必要となるだけでなく、薄い板材だと、乾燥後のそり等が生ずるおそれがある。
【0008】
かかる問題は、卒塔婆以外の木材に印刷する場合には同様に問題となる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決し、木材の質感を残しつつ、にじみの少ない印刷が可能な木材の印刷方法および印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明にかかる卒塔婆の製造方法は、印刷がされていない卒塔婆の文字印刷予定面に白色のチョーク粉を乾燥塗布するチョーク塗布ステップ、前記文字印刷予定面にUV硬化インクを塗布するUV硬化インク塗布ステップ、紫外線を照射することにより、前記UV硬化インクを硬化させる硬化ステップ、前記硬化させたUV硬化インク面に、インクジェットプリンタで文字を印刷する印刷ステップ、を備えている。
【0011】
このように、UV硬化インク面の前処理として、白色のチョーク粉を乾燥塗布することにより、インクジェットプリンタで印刷をしても、木材の質感を残しつつ、にじみの少ない卒塔婆を提供することができる。また、斜めの線に関して、にじみがより少ないと感じる印刷方法う提供することができる。
【0012】
(2)本発明にかかる卒塔婆の製造方法においては、前記チョーク塗布ステップは、固形の白色チョークを前記文字印刷予定面にこすりつけることにより実行される。したがって、簡単に白色のチョーク粉を乾燥塗布することができる。
【0013】
(3)本発明にかかる木材への印刷方法は、印刷がされていない木材の印刷予定面に乾燥した粉を塗布する粉塗布ステップ、前記印刷予定面にUV硬化インクを塗布するUV硬化インク塗布ステップ、紫外線を照射することにより、前記UV硬化インクを硬化させる硬化ステップ、前記硬化させたUV硬化インク面に、インクジェットプリンタで印刷する印刷ステップを備えている。
【0014】
したがって、インクジェットプリンタで印刷する場合であっても、木材の質感を残しつつ、にじみの少ない木材の印刷方法を提供することができる。
【0015】
本明細書において「乾燥塗布」とは粉状物を乾燥状態で木材表面に塗布することをい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明にかかる卒塔婆の製造方法を説明する図である。
【
図3】板材3の表面3aの表面処理を変化させた場合のにじみの程度を説明する比較写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本発明にかかる卒塔婆に用いる板材3を示す。以下、
図2を用いて、卒塔婆の製造方法を説明する。
【0018】
図2Aは、
図1A-A断面図である。板材3は、長手方向が木目に沿うように形成されている。したがって、表面3aは、
図2Aに示すように表面がでこぼことなっている。
【0019】
表面3aにチョークを固定のまま、こすりつける。これにより、
図2Bに示すように、へこんだ領域にチョーク粉5が入り込むように塗布される。本実施形態においては、チョークとしては、白色の炭酸カルシウム製チョークを用いたがこれに限定されず、石膏(せっこう)カルシウム製チョークであってもよい。
【0020】
なお、チョークを塗布する方向は、板材3の木目に沿う方向、これに直角する方向、さらには、斜め、円形など、様々な歩行で刷り込みが可能である。
【0021】
この状態で、表面に透明のUV硬化インクを塗布するとともに、UVランプにてUV硬化インクを硬化させる(
図2C参照)。本実施形態においては、UV硬化インクの厚みは5~7μmとしたがこれに限定されない。なお、UV硬化インクによる塗膜の厚みががあまり厚くなると木材の風合いが感じにくくなる、また硬化時に収縮でひび等の表面の問題が発生する可能性がある。逆に薄すぎると、本件発明の効果であるにじみ低減効果が低下する。また、UV硬化インクとしてUnited Barcode System社製のUVクリアインクを採用したがこれに限定されない。これにより、チョークの粉の上から透明の層7が形成される。
【0022】
また、UVランプとしては、波長:380~420nm、単位面積当たりのエネルギー:10.8W/cm2のUV LEDランプを採用したが、これに限定されない。
【0023】
つぎに、硬化させた層7の上に、インクジェットプリンタにて、文字9を印刷する。本実施形態においては、印刷速度を向上させるために、板材3の短手方向に印刷ヘッドを複数並べて、幅方向の走査を不要とするようにした。
【0024】
図3を用いて、本件発明の効果について説明する。
図3A~Dは、いずれも板材3の長手方向に直行するように、0.5mmの幅の線の印刷を行った。
【0025】
図3Aは、板材3の表面3aに、加工することなく、インクジェットプリンタで印刷した場合であり、かなりのにじみが生じている。
図3Bは、板材3にUV硬化インクを塗布して硬化させた上に、インクジェットプリンタで印刷した場合であり、下地そのままに比べるとにじみは減っているが、依然として、全体的ににじみが生じている。また、この場合には、写真ではわかりにくいが、木材の素地の質感や色が暗くなった。
【0026】
図3Cは、板材3に白チョークをこすりつけた上に、インクジェットプリンタで印刷した場合であり、下地そのままに比べるとにじみは減っているが、依然として、全体的ににじみが生じている。
図3Dは、板材3に白チョークをこすりつけた上にUV硬化インクを塗布して硬化させてからインクジェットプリンタによる印刷を行った場合である。このように、他の場合と比べてかなり、にじみは減っている。また、白色チョーク粉をUV硬化インクの下層に塗布することで、板材3の素地の質感や表面の色の変化が少ない。すなわち、木材の素地の質感や色を大きく変えることがない。
【0027】
これにより、にじみが少なく、木材の素地の質感や色を大きく変わらない印刷が可能となる。
【0028】
特に、卒塔婆のように、斜めの線分を有する漢字を印刷する場合、にじみがより少ないと感じる印刷方法を提供することができる。
【0029】
本実施形態においては、板材3としてモミの無垢材を使用したが、複数の板材を積層・接着して擬似的に1枚の板材のようにする場合にも、本件発明は適用することができる。
【0030】
本実施形態においては、UV硬化インクの前処理として、チョークの粉を乾燥状態で木目を少し埋めるようにしている。これにより、全体として表面のてかりを防止でき、木の質感を保つことができる。また、白チョークを用いたので、表面のてかりを減らすことができる。なお、チョーク以外の白粉を乾燥状態で木目にこすりつけるようにしてもよいが、チョークの粉であれば、滑り特性がよいため、より好ましい。
【符号の説明】
【0031】
3・・・板材
3a・・・表面
5・・・チョーク粉
7・・・層
9 ・・・文字