特開 2024-71965 ナチュラルクランプ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024071965

(43)【公開日】2024-05-27

(54)【発明の名称】ナチュラルクランプ

(51)【国際特許分類】

   B23Q 3/06 20060101AFI20240520BHJP

   B23Q 3/02 20060101ALI20240520BHJP

【ＦＩ】

B23Q3/06 304H

B23Q3/02 A

【審査請求】未請求

【請求項の数】2

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022182511

(22)【出願日】2022-11-15

(71)【出願人】

【識別番号】000005197

【氏名又は名称】株式会社不二越

(74)【代理人】

【識別番号】100120400

【弁理士】

【氏名又は名称】飛田 高介

(74)【代理人】

【識別番号】100124110

【弁理士】

【氏名又は名称】鈴木 大介

(72)【発明者】

【氏名】余湖 健志

【テーマコード（参考）】

3C016

【Ｆターム（参考）】

3C016BA05

3C016CC01

(57)【要約】

【課題】クランプ対象が低剛性ワークや異形ワークの場合であっても、変形を好適に防ぐことができ、加工精度の悪化や品質のバラつきを抑制することが可能なナチュラルクランプを提供する。
【解決手段】本発明にかかるナチュラルクランプ１００の構成は、ワークＷに向かって進退する方向に摺動自在であるとともに前記ワークに当接自在な複数のピストン１１０と、複数のピストンそれぞれをワークに接触するようワークＷに向かって付勢する複数の付勢部材１２０と、複数のピストンを収容するホルダ１３０と、複数のピストンを進退する方向に対して側方から加圧するロックシリンダ１４０と、を含み、複数のピストンは、ホルダ１３０内において互いに隣接して配列されていて、ロックシリンダ１４０が複数のピストンを加圧すると、ロックシリンダ１４０とホルダ１３０との間で複数のピストンが一括して固定される。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

ワークに向かって進退する方向に摺動自在であるとともに前記ワークに当接自在な複数のピストンと、
前記複数のピストンそれぞれを前記ワークに接触するよう前記ワークに向かって付勢する複数の付勢部材と、
前記複数のピストンを収容するホルダと、
前記複数のピストンを前記進退する方向に対して側方から加圧するロックシリンダと、
を含み、
前記複数のピストンは、前記ホルダ内において互いに隣接して配列されていて、
前記ロックシリンダが前記複数のピストンを加圧すると、前記ロックシリンダと前記ホルダとの間で前記複数のピストンが一括して固定されることを特徴とするナチュラルクランプ。

【請求項2】

前記複数のピストンは、前記ホルダ内において格子状に配列されていることを特徴とする請求項１に記載のナチュラルクランプ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ワーク加工の際にワークをクランプするナチュラルクランプに関する。

【背景技術】

【0002】

ワークを加工する際にワークをクランプする装置の１つとしてナチュラルクランプが知られている。ナチュラルクランプは主に、変形が生じやすいワーク（低剛性ワーク）や、形状が複雑なワーク（異形ワーク）を把持するために用いられる。ナチュラルクランプとしては、例えば特許文献１にナチュラルロック装置が開示されている。

【0003】

特許文献１のナチュラルロック装置は、「本体にワークを支える支持ロッドを垂直方向に移動自在に支持すると共に上方へ付勢し、この支持ロッドには、下方に向かって軸心に近づくように傾斜した係止斜面を設け、この係止斜面に、本体に設けたロックシリンダの動作によりロック部材のロック面を圧接して、ワーク下面に当接した位置の支持ロッドを固定してワークを支えるようにしたナチュラルロック装置において、係止斜面に圧接するロック部材のロック面を、垂直方向の円弧ロック面としたこと」を特徴としている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開平８－７１８７６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

特許文献１のように１つの支持ロッドによってワークを支える構成、すなわち一点クランプであると、クランプした際の低剛性ワークや異形ワークの歪を防止する効果が限定的となる。このため、このようなクランプでは、加工精度の悪化や品質のバラつきを十分に抑制することが難しい。またワークにおいてクランプ箇所が鋳肌の場合、鋳物特有のバラつきや金型によるパーティションラインに変化があることが多い。このような場合、クランプした際のワークの変形の仕方や変形量が変化しやすいため、やはり加工精度の悪化や品質のバラつきを十分に抑制することが難しい。

【0006】

ここで、従来のナチュラルクランプ１０の一例を、図２を用いて説明する。図２では、従来のナチュラルクランプ１０を用いてワークＷのクランプ面Ｗ１をクランプし、カッタ２０を図２（ｃ）に示すＤ１方向に移動させながらワークＷの加工面Ｗ２を加工する場合について例示する。なおワークＷとしては、加工反力によって変形が生じやすい低剛性ワークや、クランプ面Ｗ１の形状が複雑な異形ワークを例示することができるが、他のワークに対しても好適に適用することが可能である。

【0007】

図２（ａ）に示すように従来のナチュラルクランプ１０は、ピストン１２、クランプシリンダ１４およびロックシリンダ１６を含んで構成される。ピストン１２の先端には、ワークの加工面に接触する接触子１２ａが設けられている。なおクランプシリンダ１４およびロックシリンダ１６としてはエアシリンダを想定している。

【0008】

ワークＷをクランプする際には、図２（ｂ）に示すように、ピストン１２をクランプシリンダ１４によってワークＷに近接するＤ２方向に向かって付勢する。ピストン１２の接触子１２ａがワークＷのクランプ面Ｗ１に接触した後、図２（ｃ）に示すロックシリンダ１６のロック部材１６ａをＤ３方向に向かって移動し、ピストン１２を加圧して接触子１２ａをロックする。

【0009】

図２に示す従来のナチュラルクランプ１０の構成によれば、ワークＷをクランプしたピストン１２をロックシリンダ１６によってロックすることにより、加工時にワークＷの加工面Ｗ２にかかる加工反力Ｄ４によるワークＷの撓みを防ぐことができるとしていた。しかしながら、図２に示すナチュラルクランプ１０のように１つのピストン１２によるワークＷのクランプ、すなわち一点クランプであると、低剛性ワークや異形ワークの歪を十分に防止することや、クランプした際の変形の仕方や変形量が変化するワークに対応することが難しい。

【0010】

本発明は、このような課題に鑑み、クランプ対象が低剛性ワークや異形ワークの場合であっても、変形を好適に防ぐことができ、加工精度の悪化や品質のバラつきを抑制することが可能なナチュラルクランプを提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0011】

上記課題を解決するために、本発明にかかるナチュラルクランプの代表的な構成は、ワークに向かって進退する方向に摺動自在であるとともに前記ワークに当接自在な複数のピストンと、複数のピストンそれぞれをワークに接触するようワークに向かって付勢する複数の付勢部材と、複数のピストンを収容するホルダと、複数のピストンを進退する方向に対して側方から加圧するロックシリンダと、を含み、複数のピストンは、ホルダ内において互いに隣接して配列されていて、ロックシリンダが複数のピストンを加圧すると、ロックシリンダとホルダとの間で複数のピストンが一括して固定される。

【0012】

上記複数のピストンは、ホルダ内において格子状に配列されているとよい。

【発明の効果】

【0013】

本発明によれば、クランプ対象が低剛性ワークや異形ワークの場合であっても、変形を好適に防ぐことができ、加工精度の悪化や品質のバラつきを抑制することが可能なナチュラルクランプを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0014】

【図1】本実施形態にかかるナチュラルクランプを説明する図である。

【図2】従来のナチュラルクランプの一例を説明する図である。

【発明を実施するための形態】

【0015】

以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。

【0016】

図１は、本実施形態にかかるナチュラルクランプ１００を説明する図である。図１（ａ）は、本実施形態のナチュラルクランプ１００を説明する模式的な断面図である。図１（ｂ）は、図１（ａ）に示すナチュラルクランプ１００を接触子１１２側から観察した側面図である。図１（ｃ）および（ｄ）は、本実施形態のナチュラルクランプ１００の動作を説明する図である。

【0017】

本実施形態においても、図１（ｄ）に示すようにワークＷの加工面Ｗ２をカッタ２０によってＤ１方向に加工し、Ｄ４方向に加工反力が発生し、これに対抗してクランプ面Ｗ１をナチュラルクランプ１００によって支持する場合を想定する。

【0018】

図１（ａ）に示すように本実施形態のナチュラルクランプ１００は、複数のピストン１１０、複数の付勢部材１２０、ホルダ１３０およびロックシリンダ１４０を含んで構成される。複数のピストン１１０は、ワークＷに向かって進退する方向（Ｄ２方向およびその反対方向）に摺動自在であるとともにワークＷに当接自在であって、先端に接触子１１２が設けられている。

【0019】

本実施形態では、図１（ａ）の上下方向においてピストン１１０ａ、ピストン１１０ｂ、ピストン１１０ｃが３列で互いに隣接するように配置された状態でホルダ１３０の内部に収容されている。また本実施形態では図１（ｂ）に示すように３行のピストン１１０ａ－１１０ｃが６列配置されている。すなわち、ホルダ１３０の内部には１８個のピストン１１０が互いに隣接するように格子状に配列されて収容されている。

【0020】

以下、ピストン１１０ａ、ピストン１１０ｂ、ピストン１１０ｃのように個々のピストンを区別しない場合にはピストン１１０と称する。また本実施形態のピストン１１０の数（３行６列、計１８個）は例示に過ぎず、ピストン１１０の数はワークの形状や剛性に応じて適宜変更してよい。

【0021】

複数の付勢部材１２０は、複数のピストン１１０それぞれに連結されていて、それらをワークＷに接触するようワークＷに向かって付勢する。付勢部材１２０としては、例えばスプリングを好適に用いることができる。ただし、これに限定するものではなく、ピストン１１０を付勢可能であれば、発泡体やバルーンなど、既知の他の部品や装置を用いてもよい。

【0022】

ロックシリンダ１４０は、複数のピストン１１０を、複数のピストン１１０が進退する方向に対して側方から加圧する（図１ではピストン１１０を図中における上方から加圧する構成を例示している）。詳細にはロックシリンダ１４０は、その内部にピストン１４２が配置されていて、ピストン１４２には、ホルダ１３０に収容された加圧スライダ１４４が連結されている。

【0023】

本実施形態のナチュラルクランプ１００によってワークＷをクランプする際には、図１（ｃ）に示すように、複数のピストン１１０を複数の付勢部材１２０によってワークＷに近接するＤ２方向に向かって付勢する。すると移動した複数のピストン１１０の先端に設けられた複数の接触子１１２は、ワークＷのクランプ面Ｗ１の形状に追従した位置でワークＷのクランプ面Ｗ１に接触する。これにより、複数のピストン１１０によってワークＷがクランプされた状態となる。

【0024】

続いて図１（ｄ）に示すロックシリンダ１４０のピストン１４２によって加圧スライダ１４４をホルダ１３０の内部でＤ３方向に向かって移動させることにより、加圧スライダ１４４すなわちロックシリンダ１４０が複数のピストン１１０を加圧した状態となる。これにより、ロックシリンダ１４０とホルダ１３０との間で複数のピストン１１０が一括して固定される。

【0025】

上記説明したように本実施形態のナチュラルクランプ１００によれば、複数のピストン１１０によってワークＷがクランプされる。これにより、一点クランプの場合に比して、ピストン１１０からの荷重の局所的な集中を好適に防ぐことができる。したがって、ワークＷが低剛性ワークであった場合におけるワークＷの歪や変形を好適に防ぐことができる。

【0026】

またワークＷがクランプされる際に複数のピストン１１０（厳密にはその先端の接触子１１２）がワークＷのクランプ面Ｗ１の形状に追従することにより、ワークＷが異形ワークであっても、ピストン１１０によってクランプ面Ｗ１を均一な荷重でクランプすることができ、局所的な荷重集中を防ぐことができる。換言すれば、複数のピストン１１０によって多点でクランプすることにより、複雑な形状である異形ワークを面で支えることができる。したがって本実施形態のナチュラルクランプ１００によれば、クランプ対象が低剛性ワークや異形ワークの場合であっても、変形を好適に防ぐことができ、加工精度の悪化や品質のバラつきを抑制することが可能となる。

【0027】

更に本実施形態のナチュラルクランプ１００では、複数のピストン１１０は、ホルダ１３０の内部に格子状に配列されている。これにより、ワークＷのクランプ面Ｗ１が立体的な場合、すなわちクランプ面Ｗ１が３次元の場合であってもワークＷを良好にクランプすることが可能である。

【0028】

以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

【産業上の利用可能性】

【0029】

本発明は、ワーク加工の際にワークをクランプするナチュラルクランプとして利用することができる。

【符号の説明】

【0030】

Ｗ１…クランプ面、Ｗ２…加工面、１０…ナチュラルクランプ、１２…ピストン、１２ａ…接触子、１４…クランプシリンダ、１６…ロックシリンダ、１６ａ…ロック部材、２０…カッタ、１００…ナチュラルクランプ、１１０…ピストン、１１０ａ…ピストン、１１０ｂ…ピストン、１１０ｃ…ピストン、１１２…接触子、１２０…付勢部材、１３０…ホルダ、１４０…ロックシリンダ、１４２…ピストン、１４４…加圧スライダ、Ｗ…ワーク

【図1】

【図2】