(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071966
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】複合加工機用洗浄ツール
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20240520BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B23Q11/00 N
B23Q3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182512
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】余湖 健志
【テーマコード(参考)】
3C011
3C016
【Fターム(参考)】
3C011BB11
3C016FA00
(57)【要約】
【課題】複数のノズルを設けることなく複合加工機内の切り屑を好適に除去することができ、複合加工機の大型化を回避し且つ製造コストの削減を図る。
【解決手段】本発明にかかる複合加工機用洗浄ツール(洗浄ツール100)は、工具主軸210に着脱自在であるとともに内部にクーラントの流路114が形成されたツールホルダ110と、ツールホルダに連続して配置されたケース120と、を含み、ケース120は、流路114に連通する球状の内部空間122と、内部空間における異なる箇所に形成されケースの外部と連通している2つの吐出ノズル(第1吐出ノズル124a・第2吐出ノズル124b)と、各吐出ノズルの内部空間側の開口それぞれに形成されたくぼみ(第1くぼみ126a・第2くぼみ126b)と、内部空間に収容され各くぼみのいずれかに嵌まって吐出ノズルの栓として機能する球体130と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合加工機の工具主軸に着脱自在であるとともに内部にクーラントの流路が形成されたツールホルダと、
前記ツールホルダに連続して配置されたケースと、
を含み、
前記ケースは、
前記流路に連通する球状の内部空間と、
前記内部空間における異なる箇所に形成され前記ケースの外部と連通している2つの吐出ノズルと、
前記各吐出ノズルの前記内部空間側の開口にそれぞれ形成されたくぼみと、
前記内部空間に収容され前記各くぼみのいずれかに嵌まって前記吐出ノズルの栓として機能する球体と、
を備えたことを特徴とする複合加工機用洗浄ツール。
【請求項2】
前記2つの吐出ノズルは、前記ツールホルダの中心軸に対する傾き角が異なる箇所に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合加工機用洗浄ツール。
【請求項3】
前記2つの吐出ノズルのうち一方は、前記ツールホルダの中心軸上に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合加工機用洗浄ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合加工機の工具主軸に取り付けられる複合加工機用洗浄ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
複合加工機では、工具によってワークを加工する際に切り屑が生じる。この切り屑が、複合加工機の内部に残留していると、ワークを交換する際にワークとワーク主軸のチャックとの間に入り込む可能性があり、その場合、加工精度の低下を招いてしまう。このため、ワークを交換する前には、工具や複合加工機の内部を洗浄し、切り屑の除去を行うことが望ましい。
【0003】
例えば特許文献1には、「加工室を画定する側壁と、前記加工室内に配置される架台と、工具を保持する主軸と、前記加工室の中心に前後方向に延びる排出樋と、前記排出樋の上方に配置され、前後方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルの下方に配置され、下向きに洗浄流体を噴出する第1ノズルと、前記第1ノズルに接続され、前記洗浄流体を供給するポンプと、前記洗浄流体の噴出を制御する制御装置と、を有する工作機械」が開示されている。
【0004】
また、上述のように下向きに配置された第1ノズルを用いて洗浄流体を噴出する構成であると、工作機械の加工室の下部の領域では切り屑を好適に除去できるが、それ以外の領域の切り屑を除去することは難しい。このため特許文献1では、右側第2ノズル、右側第3ノズル、左側第2ノズルおよび左側第3ノズルを更に追加で設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1のように加工室内に複数のノズルを設けると装置構成が複雑化し、且つ装置の製造コストが増大してしまうばかりか装置の大型化を招いてしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、複数のノズルを設けることなく複合加工機内の切り屑を好適に除去することができ、複合加工機の大型化を回避し且つ製造コストの削減を図ることが可能な複合加工機用洗浄ツールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる複合加工機用洗浄ツールの代表的な構成は、複合加工機の工具主軸に着脱自在であるとともに内部にクーラントの流路が形成されたツールホルダと、ツールホルダに連続して配置されたケースと、を含み、ケースは、流路に連通する球状の内部空間と、内部空間における異なる箇所に形成されケースの外部と連通している2つの吐出ノズルと、各吐出ノズルの内部空間側の開口それぞれに形成されたくぼみと、内部空間に収容され各くぼみのいずれかに嵌まって吐出ノズルの栓として機能する球体と、を備える。
【0009】
上記2つの吐出ノズルは、ツールホルダの中心軸に対する傾き角が異なる箇所に形成されているとよい。また上記2つの吐出ノズルのうち一方は、ツールホルダの中心軸上に形成されているとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のノズルを設けることなく複合加工機内の切り屑を好適に除去することができ、複合加工機の大型化を回避し且つ製造コストの削減を図ることが可能な複合加工機用洗浄ツールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態の複合加工機用洗浄ツールが着脱自在な複合加工機の構成を例示する斜視図である。
【
図2】本実施形態にかかる複合加工機用洗浄ツールを説明する図である。
【
図3】
図2の洗浄ツールの使用態様を説明する図である。
【
図4】
図2の洗浄ツールの
図3とは異なる使用態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施の形態の複合加工機用洗浄ツールが着脱自在な複合加工機の構成を例示する斜視図である。
図1に例示するように複合加工機200は、壁202aにおいてコラム204がレール230aによってZ軸方向(左右方向)に走行可能に備えられている。コラム204には、回転テーブル206がY軸方向(上下方向)に移動可能に備えられている。
【0014】
回転テーブル206には工具主軸210が取り付けられていて、回転テーブル206がR方向に回転することによって工具主軸210の角度(姿勢)を設定することができる。工具主軸210には工具(不図示)が交換可能に取り付けられる(
図1では後述する洗浄ツール100を取り付けて示している)。工具主軸210はモータを内蔵していて、工具を回転させて切削などの加工を行うことができる。
【0015】
ワーク主軸220は壁202bに形成されたレール230bによってX軸方向(前後方向)に移動可能である。ワーク主軸220はモータを内蔵していて、交換可能に取り付けたワーク(不図示)を回転させることができる。以下、複合加工機200において工具主軸210やワーク主軸220が配置されている空間を加工室200aと称する。
【0016】
図2は、本実施形態にかかる複合加工機用洗浄ツール(以下、洗浄ツール100と称する)を説明する図であり、
図1に示す洗浄ツールの模式的な断面を例示している。本実施形態の洗浄ツール100は、
図1に示すように複合加工機200の工具主軸210に取り付けられ、クーラントを噴射して加工室200aを洗浄する。
【0017】
図2に示すように本実施形態の100は、ツールホルダ110およびケース120を含んで構成される。ツールホルダ110は、ツール交換時に使用されるATC用溝112を有する。これにより、ツールホルダ110は複合加工機200の工具主軸210に着脱自在となる。またツールホルダ110の内部には、クーラントが通過する流路114が形成されていて、工具主軸210を通じてクーラントが供給される(いわゆるセンタースルークーラント)。
【0018】
ケース120は、ツールホルダ110に連続して配置されていて、ツールホルダ110の流路114に連通する球状の内部空間122を有する。内部空間122には、内部空間122から外部すなわち加工室200aと連通している2つの吐出ノズル(第1吐出ノズル124a・第2吐出ノズル124b)がそれぞれ異なる場所に形成されている。第1吐出ノズル124a・第2吐出ノズル124bの内部空間122側の開口には、球面のくぼみ(第1くぼみ126a・第2くぼみ126b)がそれぞれ形成されている。
【0019】
またケース120の内部空間122には球体130が収容されている。かかる球体130は、第1くぼみ126a・第2くぼみ126bのいずれかに嵌まって第1吐出ノズル124a・第2吐出ノズル124bの一方の栓として機能する。
【0020】
詳細には、第1吐出ノズル124a・第2吐出ノズル124b(2つの吐出ノズル)は、ツールホルダ110の中心軸Sに対する傾き角が異なる箇所に形成されている。これにより、球体130が嵌るくぼみを異ならせることで、複数の方向にクーラントを吐出することができる。
【0021】
本実施形態では特に、第1吐出ノズル124aはツールホルダ110の中心軸S上、すなわちツールホルダ110の中心軸Sに対する傾き角が0°の位置に形成されている。第2吐出ノズル124bは、ツールホルダ110の中心軸Sから傾き角θ(図示では約60°)の位置に形成されている。
【0022】
図2に示すように工具主軸210が垂直な状態となっていると、第1吐出ノズル124aは内部空間122の下部に位置し、第2吐出ノズル124bは第1吐出ノズル124aの側方に位置する。そして球体130は、重力によって第1くぼみ126aに嵌った状態となる。第2くぼみ126bには球体130は嵌っていないため、第2吐出ノズル124bは加工室200aと連通された状態となっている。
【0023】
この状態で工具主軸210からクーラントが供給されると、クーラントは、流路114を通過して内部空間122に流れる。内圧によって球体130が第1くぼみ126aに押し付けられて第1吐出ノズル124aを塞ぐため、第1吐出ノズル124aの栓として機能する。したがってクーラントは、第2吐出ノズル124bのみから吐出される。これにより、加工室200a内の側方の切り屑が除去される。
【0024】
図3は、
図2の洗浄ツール100の使用態様を説明する図である。
図2に示したように内圧をかけた状態では、球体130が第1くぼみ126aに固定されている。内圧をかけたまま回転テーブル206を回転させて工具主軸210の傾きを変えると、
図3(a)に示すように洗浄ツール100も傾斜する。すると球体130が第1くぼみ126aに嵌った状態が維持されたまま、第2吐出ノズル124bから吐出するクーラントの方向を変更することができる。
【0025】
さらに
図3(a)に示す状態から工具主軸210によって洗浄ツール100を回転させると、第2吐出ノズル124bを
図3(b)に示すように第1吐出ノズル124aの上方に向けたり、加工室200aの前方や後方に向けたりすることができる。このように、内圧をかけている限りは、工具主軸210の可動範囲(Y軸、Z軸、R方向回転)と工具主軸210による洗浄ツール100の回転によって第2吐出ノズル124bを向けることが可能な全方向に第2吐出ノズル124bからクーラントを吐出することができる。
【0026】
図4は、
図2の洗浄ツール100の
図3とは異なる使用態様を説明する図である。
図4(a)では、回転テーブル206を回転させて、工具主軸210および洗浄ツール100を水平状態としている。
図4(a)では、第2くぼみ126bを下方に配置することによって球体130が第2くぼみ126bに嵌っている。この状態でクーラントが内部空間122に供給されると、内圧によって球体130が第2くぼみ126bに押し付けられて第2吐出ノズル124bを塞ぐため、球体130が第2吐出ノズル124bの栓として機能する。したがってクーラントは第1吐出ノズル124aのみから洗浄ツール100の先端方向(中心軸S方向)に吐出される。
【0027】
図4(a)に示す状態から、内圧をかけたまま回転テーブル206を回転させて工具主軸210を傾斜させると、
図4(b)に示すように洗浄ツール100が立った状態となっても球体130は第2くぼみ126bに嵌まった状態が維持される。このように、内圧をかけている限りは、工具主軸210の可動範囲(Y軸、Z軸、R方向回転)によって第1吐出ノズル124aを向けることが可能な全方向に第1吐出ノズル124aからクーラントを吐出することができる。
【0028】
上記説明したように本実施形態の洗浄ツール100によれば、内圧をかけずに洗浄ツール100の姿勢を変化させることにより、球体130が嵌るくぼみを変えることができ、内圧をかければ球体130の位置を固定することができる。これにより、第1吐出ノズル124a・第2吐出ノズル124bの内部空間122との連通および封止を適宜変更することができ、1つの洗浄ツール100で複数の方向へクーラントを吐出することが可能となる。
【0029】
また2つの吐出ノズルを、工具主軸210のツールホルダ110の中心軸Sに対する傾き角が異なる箇所に形成することにより、加工室200a内の広い範囲を網羅することができる。したがって、複数のノズルを設けることなく装置内(加工室200a)の切り屑を好適に除去することができ、装置の大型化を回避し且つ装置コストの削減を図ることが可能である。
【0030】
また本実施形態では、洗浄用のノズルを加工室200a内に固定設置するのではなく、洗浄ツール100を工具に替えて工具主軸210に取り付ける。したがって、洗浄用のノズルを固定設置する場合に比して、装置の小型化を図ることが可能である。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、複合加工機の工具主軸に取り付けられる複合加工機用洗浄ツールとして利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
100…洗浄ツール、110…ツールホルダ、112…ATC用溝、114…流路、120…ケース、122…内部空間、124a…第1吐出ノズル、124b…第2吐出ノズル、126a…第1くぼみ、126b…第2くぼみ、130…球体、200…複合加工機、200a…加工室、202a…壁、202b…壁、204…コラム、206…回転テーブル、210…工具主軸、220…ワーク主軸、230a…レール、230b…レール、S…中心軸