IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人山形大学の特許一覧

<>
  • 特開-二重関節機構 図1
  • 特開-二重関節機構 図2
  • 特開-二重関節機構 図3
  • 特開-二重関節機構 図4
  • 特開-二重関節機構 図5
  • 特開-二重関節機構 図6
  • 特開-二重関節機構 図7
  • 特開-二重関節機構 図8
  • 特開-二重関節機構 図9
  • 特開-二重関節機構 図10
  • 特開-二重関節機構 図11
  • 特開-二重関節機構 図12
  • 特開-二重関節機構 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071978
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】二重関節機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20240520BHJP
   F16H 1/36 20060101ALI20240520BHJP
   F16H 55/17 20060101ALI20240520BHJP
   F16H 55/08 20060101ALI20240520BHJP
   H02K 7/116 20060101ALN20240520BHJP
【FI】
B25J17/00 E
F16H1/36
F16H55/17 Z
F16H55/08 Z
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182531
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】多田隈 理一郎
(72)【発明者】
【氏名】山廼邉 和史
【テーマコード(参考)】
3C707
3J027
3J030
5H607
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS09
3C707CX01
3C707CX03
3C707CY36
3C707CY39
3C707HS27
3C707HT22
3C707HT23
3C707HT25
3J027FA36
3J027FB32
3J027GA01
3J027GB05
3J027GC15
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE14
3J030BA01
3J030BA03
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE33
5H607EE34
(57)【要約】
【課題】複数のモータを根本側に固定しながら、小型かつ手先側の可動範囲を大きくすることができる多自由度の関節機構を提供すること。
【解決手段】二重関節機構10は、本体フレーム20に回転可能に設けられた回転内軸30と、固定歯車31と、駆動ピニオンギア90と、太陽歯車40と、遊星キャリア50と、中間遊星ピニオン55と、第1遊星歯車60と、第2遊星歯車62と、可動フレーム62と、を備えている。回転内軸30及び駆動ピニオンギア90の2つの回転入力に対して、可動フレーム62が回転内軸30と同軸のロール軸回転及び遊星キャリア50を介して二重のピッチ軸回転の2つの回転出力を行う。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームに設けられ中空部分を有する回転内軸と、前記回転内軸の端部にこの回転内軸の軸直交方向に一体的設けられた固定歯車と、前記回転内軸の中空部分にこの回転内軸の軸直交方向に回転可能に設けられ駆動力を伝達する駆動ピニオンギアと、前記固定歯車に同軸で回転可能に設けられ前記駆動ピニオンギアに噛み合う太陽歯車と、前記太陽歯車の軸に一端部が回転可能に設けられた遊星キャリアと、前記遊星キャリアの長手方向途中に回転可能に設けられ前記太陽歯車に噛み合う中間遊星ピニオンと、前記遊星キャリアの他端部に回転可能に設けられ前記中間遊星ピニオンに噛み合う第1遊星歯車と、前記第1遊星歯車に同軸で一体的に設けられ前記固定歯車に噛み合う第2遊星歯車と、前記第2遊星歯車に一体的に設けられた可動フレームと、を備え、
前記駆動ピニオンギアの回転入力に対して、前記可動フレームが前記遊星キャリアを介して二重のピッチ軸回転の回転出力を行うことを特徴とする二重関節機構。
【請求項2】
請求項1記載の二重関節機構であって、
前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車は、前記遊星キャリアにベアリングを介して回転可能に設けられていることを特徴とする二重関節機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の二重関節機構であって、
前記遊星キャリアは、一端側の柄部と他端側の円環部とからなる虫メガネ形状に形成され、前記円環部の内側に前記第1遊星歯車が配置されていることを特徴とする二重関節機構。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の二重関節機構であって、
前記太陽歯車の歯数は、前記第1遊星歯車の歯数と同じであることを特徴とする二重関節機構。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の二重関節機構であって、
前記回転内軸は前記本体フレームに回転可能に設けられ、
前記回転内軸及び前記駆動ピニオンギアの2つの回転入力に対して、前記可動フレームが前記回転内軸と同軸のロール軸回転及び前記遊星キャリアを介して二重のピッチ軸回転の2つの回転出力を行うことを特徴とする二重関節機構。
【請求項6】
請求項5記載の二重関節機構であって、
前記駆動ピニオンギアをロール軸回転及びピッチ軸回転の2つの回転入力を行う差動機構を備え、
前記差動機構は、前記本体フレームと、前記回転内軸と、円筒状に形成されて前記回転内軸の外周を覆い且つ前記回転内軸の同軸上に回転可能に設けられ前記円筒状の内側にらせん状に歯が形成された内ウォームギアと、前記回転内軸にこの回転内軸の軸直交方向に回転可能に設けられ前記内ウォームギアに噛み合う前記駆動ピニオンギアと、を備え、
前記回転内軸及び前記内ウォームギアの2つの回転入力に対して、前記駆動ピニオンギアが前記回転内軸と同軸のロール軸回転及びピッチ軸回転の2つの回転出力を行うことを特徴とする二重関節機構。
【請求項7】
請求項6記載の二重関節機構であって、
前記駆動ピニオンギアは、その歯面が、円筒歯面、または球面状のクラウニング歯面を有した平歯車であることを特徴とする二重関節機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動機構と遊星歯車機構により駆動力を伝達して回動させる関節機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームに代表されるような多関節リンクは、一般に手先アクチュエータの荷重や慣性負荷を根本側のアクチュエータが負担する構造になる。
【0003】
例えば、ロボットの関節機構では、根本側アームに対して手先側アームを、歯車機構を用いてアクチュエータ(以下、モータという)の駆動力を伝達して回動させる。このような歯車機構を用いた関節機構として、特許文献1の関節機構が知られている。
【0004】
特許文献1の関節機構は、根本側アームの端部と手先側アームの端部とが互いに可動自在に連結されている。そして、平歯車である第1歯車及び第2歯車の2つ直径(中心)を共有するように交差させ一体化した交差歯車と、根本側アームに回転可能に設けられ第1歯車と噛み合う根元側第3歯車と、手先側アームに回転可能に設けられ第2歯車と噛み合う手先側第4歯車を備える。交差歯車は、関節部に配置される。根本側アームに設けたモータによる駆動力を介して第3歯車を回転すると、根元側アームに対して手先側アームが可動する。手先側アームに設けたモータによる駆動力を介して第4歯車を回転すると、手先側アームに対して根本側アームが可動する。
【0005】
しかし、特許文献1の関節機構は、根本側アームにモータが設けられているだけでなく、手先側アームにもモータが設けられており、手先側モータの荷重や慣性負荷を根本側のモータが負担する構造になる。これは、根本側モータの高容量化を招き、経済的でない。そのため、複数のモータを根本側に固定しながら、手先側へ多自由度を出力できる関節機構が求められる。また、特許文献1の関節機構は、円筒状の根本側アーム内にモータが設けられると共に円筒状の手先側アーム内にモータが設けられており、根本側アームに対して手先側アームをある程度回動させると、根本側アームの端部が手先側アームの端部に接触するため、手先側アームの回転角度が制限されてしまう。そのため、根本側アームに対して手先側アームの回転角度を大きくすることができる多自由度の関節機構が求められる。
【0006】
ところで、発明者らは、1段で直交2自由度への回転動作が可能な歯車差動機構であるいわゆる内ウォーム差動機構を採用した関節機構を研究しており、円筒の内面にウォームギアが形成された内ウォームギアと、その円筒の内側に配置されるウォームピニオンとを用いた内ウォーム差動機構を採用したものである。これは傘歯車など他の差動装置と比較して小型に製作することができる。しかし、出力歯車が内ウォーム差動機構に埋まるように配置されるため、手先側の回転角度が制限されてしまう。
【0007】
また、広可動域関節の実現のため、オフセット関節や水平多関節方式のロボットアームがあるが、非オフセット方向での可動域減少、関節高さの増加といった課題がある。そのため、二重関節を用いて広可動域関節を実現することが考えられる。周知技術では、ワイヤ駆動によるものや、空気圧駆動によるものがあるが、大きな駆動力を伝達するには好ましくない。また、モータ駆動の二重関節を、クローラロボットのジョイントとして利用した技術もあるが、関節の両方向にアクチュエータを配置する必要があり、やはり根本側モータの高容量化を招き、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-113195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、複数のモータを根本側に固定しながら、小型かつ手先側の可動範囲を大きくすることができる多自由度の関節機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本体フレームに設けられ中空部分を有する回転内軸と、前記回転内軸の端部にこの回転内軸の軸直交方向に一体的設けられた固定歯車と、前記回転内軸の中空部分にこの回転内軸の軸直交方向に回転可能に設けられ駆動力を伝達する駆動ピニオンギアと、前記固定歯車に同軸で回転可能に設けられ前記駆動ピニオンギアに噛み合う太陽歯車と、前記太陽歯車の軸に一端部が回転可能に設けられた遊星キャリアと、前記遊星キャリアの長手方向途中に回転可能に設けられ前記太陽歯車に噛み合う中間遊星ピニオンと、前記遊星キャリアの他端部に回転可能に設けられ前記中間遊星ピニオンに噛み合う第1遊星歯車と、前記第1遊星歯車に同軸で一体的に設けられ前記固定歯車に噛み合う第2遊星歯車と、前記第2遊星歯車に一体的に設けられた可動フレームと、を備え、
前記駆動ピニオンギアの回転入力に対して、前記可動フレームが前記遊星キャリアを介して二重のピッチ軸回転の回転出力を行うことを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、本体フレームに設けられた回転内軸と、固定歯車と、駆動ピニオンギアと、太陽歯車と、遊星キャリアと、中間遊星ピニオンと、第1遊星歯車と、第2遊星歯車と、可動フレームと、を備えている。中間遊星ピニオンを有するいわゆる2K-H型遊星歯車機構により、入力となる太陽歯車と同じ方向に、第1遊星歯車及び第2遊星歯車を回転可能に支持する遊星キャリアを回転させている。このため、入力となる太陽歯車の回転角度θ1と、遊星キャリアを介した可動フレームの回転角度θ2とを同じ方向にすることができる。遊星キャリアを介して2つの回転軸を持つ二重関節を、遊星歯車機構を用いて実現している。これにより、歯車伝達機構のみで「ある回転関節の回転角を任意の倍率で拡大できる」という可動範囲の拡大を可能にし、可動フレームが設けられた第2遊星歯車から出力を取り出して手先側である可動フレームの可動範囲を大きくできる二重関節機構となる。
【0012】
[2]好ましくは、前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車は、前記遊星キャリアにベアリングを介して回転可能に設けられている。
【0013】
かかる構成によれば、第1遊星歯車及び第2遊星歯車は、遊星キャリアにベアリングを介して回転可能に設けられているので、遊星キャリアに対する第1遊星歯車及び第2遊星歯車の回転を円滑にし、回転内軸に固定された固定歯車に第2遊星歯車を噛み合わせて第2遊星歯車から出力を取り出すことができる。
【0014】
[3]好ましくは、前記遊星キャリアは、一端側の柄部と他端側の円環部とからなる虫メガネ形状に形成され、前記円環部の内側に前記第1遊星歯車が配置されている。
【0015】
かかる構成によれば、遊星キャリアは、一端側の柄部と他端側の円環部とからなる虫メガネ形状に形成され、円環部の内側に第1遊星歯車が配置されているので、遊星キャリアのスペース内に第1遊星歯車を配置してスペースを有効に活用し関節機構の小型化を図ることができる。
【0016】
[4]好ましくは、前記太陽歯車の歯数は、前記第1遊星歯車の歯数と同じである。
【0017】
かかる構成によれば、太陽歯車の歯数は、第1遊星歯車の歯数と同じであるので、中間遊星ピニオンを介して入力となる太陽歯車の回転角度θ1と、遊星キャリアを介した可動フレームの回転角度θ2とを同じ方向にすることができ、遊星キャリアを介した可動フレームの回転角度θ2を太陽歯車の回転角度θ1の2倍にすることができる。
【0018】
[5]好ましくは、前記回転内軸は前記本体フレームに回転可能に設けられ、
前記回転内軸及び前記駆動ピニオンギアの2つの回転入力に対して、前記可動フレームが前記回転内軸と同軸のロール軸回転及び前記遊星キャリアを介して二重のピッチ軸回転の2つの回転出力を行う。
【0019】
かかる構成によれば、回転内軸は本体フレームに回転可能に設けられている。駆動ピニオンギアを回転内軸の軸直交方向に回転可能に設け、本体フレームに回転可能に設けられた回転内軸に固定歯車を一体的に設けたので、回転内軸をこの回転内軸の軸(縦軸)回りに回転させることで、固定歯車をねじる方向に回動することができる。結果、複数のモータを根本側に固定しながら、小型かつ手先側の可動範囲を大きくすることができる多自由度の関節機構を提供することができる。
【0020】
[6]好ましくは、前記駆動ピニオンギアをロール軸回転及びピッチ軸回転の2つの回転入力を行う差動機構を備え、
前記差動機構は、前記本体フレームと、前記回転内軸と、円筒状に形成されて前記回転内軸の外周を覆い且つ前記回転内軸の同軸上に回転可能に設けられ前記円筒状の内側にらせん状に歯が形成された内ウォームギアと、前記回転内軸にこの回転内軸の軸直交方向に回転可能に設けられ前記内ウォームギアに噛み合う前記駆動ピニオンギアと、を備え、
前記回転内軸及び前記内ウォームギアの2つの回転入力に対して、前記駆動ピニオンギアが前記回転内軸と同軸のロール軸回転及びピッチ軸回転の2つの回転出力を行う。
【0021】
かかる構成によれば、差動機構は、円筒状に形成されて回転内軸の外周を覆い且つ回転内軸の同軸上に回転可能に設けられ円筒状の内側にらせん状に歯が形成された内ウォームギアと、回転内軸にこの回転内軸の軸に対してねじれの位置で直交する軸まわりに回転可能に設けられ内ウォームギアに噛み合う駆動ピニオンギアと、を備えている。内ウォームギアは円筒状部分の内側にらせん状の歯が形成され、内ウォームギアの内側に駆動ピニオンギアが配置されているので、差動機構を小型化することができる。さらに、本発明では、内ウォームギアの外形を形成する円筒状部分の内側に直接らせん状に歯を形成するので、伝達要素(部品点数)を少なくして差動誤差を減少させることができる。このように、本発明では、小型で差動誤差を減少させることができる2自由度の差動機構を提供することができる。
【0022】
[7]好ましくは、前記駆動ピニオンギアは、その歯面が、円筒歯面、または球面状のクラウニング歯面を有した平歯車である。
【0023】
かかる構成によれば、駆動ピニオンギアのピニオン(歯)の歯面が、円筒歯面、または球面状のクラウニング歯面であるので、ピッチ円上において駆動ピニオンギアの軸に対して傾斜する内ウォームギアの歯面に滑らかに噛み合うことでき、且つ、伝達先の平歯車の歯面にも滑らかに噛み合うことができる。このため、従来の伝達要素との親和性が高いだけでなく、バックドライバビリティを発現させることもできる。
【発明の効果】
【0024】
複数のモータを根本側に固定しながら、小型かつ手先側の可動範囲を大きくすることができる多自由度の二重関節機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る二重関節機構の一例を示す部分断面斜視図である。
図2図1の二重関節機構の概念図である。
図3】差動機構の基本構成を説明する斜視図である。
図4】本発明に係る駆動ピニオンギアを示す説明図である。
図5図4の駆動ピニオンギアの各部を示す断面図である。
図6】本発明に係る内ウォームギアを示す説明図である。
図7図6の内ウォームギアの各部を示す断面図である。
図8】本発明に係る駆動ピニオンギアと内ウォームギアの噛み合い状態を示す説明図である。
図9】比較例に係る関節機構の作用と本発明の実施例に係る二重関節機構の作用を説明する図である。
図10】本発明に係る二重関節機構のピッチ軸方向の作用図である。
図11】本発明に係る二重関節機構のロール軸(ねじり)方向の作用図である。
図12】本発明に係る二重関節機構のコマ送り作用図である。
図13】本発明に係る二重関節機構をアームに使用した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は、本発明に係る二重関節機構を概念的(模式的)に示す図面も含むものとする。また、一実施形態として回転内軸の軸と同軸をロール軸と呼び、このロール軸に対して90度方向をピッチ軸と呼ぶことがある。また、一実施形態としての直交する2つの軸を「r軸」及び「e軸(r軸に対してねじれの位置で直交する方向の軸)」と呼ぶことがある。
【実施例0027】
図1図3に示すように、二重関節機構10は、本体フレーム20に対して可動フレーム62をピッチ軸回転とロール軸回転を行うものである。二重関節機構10は、本体フレーム20に回転可能に設けられ中空部分を有する回転内軸30と、回転内軸30の端部にこの回転内軸30の軸直交方向に一体的に設けられた固定歯車31と、回転内軸30の中空部分にこの回転内軸30の軸直交方向に回転可能に設けられ駆動力を伝達する駆動ピニオンギア90と、固定歯車31に同軸で軸41を介して回転可能に設けられ駆動ピニオンギア90に噛み合う太陽歯車40と、回転内軸30をロール軸回転させる軸回転用モータ72と、駆動ピニオンギア90を駆動させる歯車回転用モータ73と、を備えている。
【0028】
また、二重関節機構10は、太陽歯車40の軸41に一端部が回転可能に設けられ柄部51及び円環部52から構成される遊星キャリア50と、遊星キャリア50の長手方向途中に軸56を介して回転可能に設けられ太陽歯車40に噛み合う中間遊星ピニオン55と、遊星キャリア50の他端部に軸63を介して回転可能に設けられ中間遊星ピニオン55に噛み合う第1遊星歯車60と、第1遊星歯車60に同軸で一体的に設けられ固定歯車31に噛み合う第2遊星歯車61と、第2遊星歯車61に一体的に設けられた可動フレーム62と、を備えている。
【0029】
また、遊星キャリア50は、一端側の柄部51と他端側の円環部52とからなる虫メガネ形状に形成され、円環部52の内側に第1遊星歯車60が配置されている。第1遊星歯車60及び第2遊星歯車61は、遊星キャリア50に設けた軸63にベアリングを介して回転可能に設けられている。
【0030】
二重関節機構10は、出力歯車として太陽歯車40をもつ内ウォーム差動機構と、太陽歯車40を入力軸、第1遊星歯車60と第2遊星歯車61を出力軸とするいわゆる2K-H型遊星歯車機構と、を備えている。
【0031】
軸回転用モータ72の出力軸は、回転内軸30と直結している。歯車回転用モータ73の出力軸は、平歯車であるウォーム駆動歯車73aを介して内ウォームギア80を駆動する。回転内軸30と内ウォームギア80は、いずれも同軸回りに回転する。内ウォームギア80は円筒の内側に螺旋状の歯が形成されており、内側に配置された駆動ピニオンギア90と噛み合う。駆動ピニオンギア90は、太陽歯車40、中間遊星ピニオン55、第1遊星歯車60(第2遊星歯車61)、固定歯車31の順に回転を伝達する。このとき、固定歯車31は回転内軸30に固定されているため、自由回転を行わない。したがって、第1遊星歯車60及び第2遊星歯車61に設けられた手先側の可動フレーム62は、第1遊星歯車60の回転軸回りの自転と、太陽歯車40回りの公転を行い、大きな可動範囲を得る。
【0032】
また、第1遊星歯車60と第2遊星歯車61は同軸上に一体化して設け、手先として可動フレーム62を取り付けている。太陽歯車40から中間遊星ピニオン55を介して伝達された回転運動は、第1遊星歯車60の自転(θ2-θ1)に加えて、第2遊星歯車61は回転内軸30に固定された固定歯車31の円周上を公転(θ1)する。これにより、従来の差動機構における機構同士の干渉を回避し、可動範囲を拡大することができる。
【0033】
また、一例として、太陽歯車40の歯数は、第1遊星歯車60の歯数と同じである。これにより、中間遊星ピニオン55を介して入力となる太陽歯車40の回転角度θ1と、遊星キャリア50を介した可動フレーム62(第1遊星歯車60、第2遊星歯車61)の回転角度θ2とを同じ方向にすることができ、遊星キャリア50に設けられた第2遊星歯車61を介した可動フレーム62の回転角度θ2を太陽歯車40の回転角度θ1の2倍にすることができる。
【0034】
なお、実施例では、太陽歯車40の歯数を第1遊星歯車60の歯数と同じにしたが、これに限定されず、太陽歯車40の歯数を第1遊星歯車60の歯数と異なる歯数にしてもよい。第2遊星歯車61に設けられた可動フレーム62(アーム)は、太陽歯車40を中心とした回転(公転)θ1と、第1遊星歯車60の回転軸を中心とした回転(自転)θ2を同時に行う。これにより、可動フレーム62の回転角は、2つの角度の和となり任意の角度への回転が可能となる。このとき、θ1とθ2の比は、遊星歯車機構の平歯車の歯数によって任意に設計することができ、設計の自由度を向上させることができる。
【0035】
以上に述べた構成にすることで、回転内軸30及び駆動ピニオンギア90の2つの回転入力に対して、可動フレーム62が回転内軸30と同軸のロール軸回転及び遊星キャリア50を介して二重のピッチ軸回転の2つの回転出力を行うことができる。
【0036】
次に差動機構70について説明する。
二重関節機構10は、駆動ピニオンギア90をロール軸回転及びピッチ軸回転の2つの回転入力を行う差動機構70を備えている。差動機構70は、この差動機構70を駆動するための駆動部71を備えている。
【0037】
駆動部71は、本体フレーム20と、回転内軸30に接続されこの回転内軸30をロール軸回りに回転駆動するための軸回転用モータ72と、ピッチ軸回りに歯車回転させるための歯車回転用モータ73と、この歯車回転用モータ73に設けられたウォーム駆動歯車73aと、このウォーム駆動歯車73aに噛み合い内ウォームギア80を回転させるウォーム従動歯車73bと、を備えている。
【0038】
差動機構70は本体フレーム20に回転可能に設けられた回転内軸30と、円筒状に形成されて回転内軸30の外周を覆い且つ回転内軸30の同軸上(軸r上)に回転可能に設けられ円筒状の内側にらせん状に歯81が形成された内ウォームギア80と、回転内軸30にこの回転内軸30の軸rに対してねじれの位置で直交するe軸(回転内軸30の軸直交方向)に回転可能に設けられ内ウォームギア80に噛み合う駆動ピニオンギア90と、を備えている。
【0039】
この構成により、回転内軸30及び内ウォームギア80の2つの回転入力に対して、駆動ピニオンギア90が回転内軸30と同軸rのロール軸回転及びピッチ軸回転の2つの回転出力を行う。
【0040】
内ウォームギア80は、ウォーム従動歯車73bと一体に回転するように設けられた回転部材82を備え、この回転部材82に内ウォームギア80の基端部分が設けられている。回転部材82の中央部分に貫通孔83が形成されており、この貫通孔83に回転内軸30が回転可能に挿通されている。また、回転内軸30は、軸回転用モータ72の回転軸と一体に回転するように設けられている。
【0041】
以上のように、二重関節機構10は、出力歯車として太陽歯車40をもつ内ウォームギア80を備えた差動機構70と、太陽歯車40を入力軸、第1遊星歯車60と第2遊星歯車61を出力軸とするいわゆる2K-H型遊星歯車機構によって構成されている。第1遊星歯車60と第2遊星歯車61は同軸上に一体化して固定され、手先となる可動フレーム62が取り付けられる。太陽歯車40の回転運動は、中間遊星ピニオン55を介して手先側に取り付けられた第1遊星歯車60に伝達される。このとき、第1遊星歯車60の回転(自転)に合わせて、第2遊星歯車61は回転内軸30に設けられた固定歯車31の円周上を移動する(公転)。
【0042】
次に駆動ピニオンギア90について説明する。なお、図4(A)は駆動ピニオンギア90の斜視図、図4(B)は駆動ピニオンギア90の正面図、図5(A)は図4(B)の5A-5A線断面図、図5(B)は図4(B)の5B-5B線断面図、図5(C)は図4(B)の5C-5C線断面図、図5(D)は駆動ピニオンギア90の要部断面図である。
【0043】
図4(A)~図5(D)に示すように、駆動ピニオンギア90は、その歯92の歯面93が球面状のクラウニング歯面を有した平歯車である。駆動ピニオンギア90の断面形状は平歯車の断面形状と一致している。これにより、駆動ピニオンギア90は、その次の伝達先にある平歯車と噛み合うことができる。
【0044】
なお、実施例では、駆動ピニオンギア90は、その歯92の歯面93が球面状のクラウニング歯面を有した平歯車としたが、これに限定されず、ウォームギアの進み角に一致したねじれ角を有するはすば歯車としてもよい。この場合、駆動ピニオンギア90は、その次の伝達先にある、はすば歯車と噛み合うことができる。
【0045】
ここで、一般的な入力軸と出力軸が直交する差動機構では、入力軸及び出力軸のそれぞれに傘歯車が使用されているところ、傘歯車は平歯車と噛み合うことができない。このため、出力軸に設けられた傘歯車から次の平歯車へ伝えるためには、同じ出力軸に別途、平歯車を追加しなければならない。しかも、別途追加する平歯車は入力軸と衝突しないように配置する必要があり、傘歯車を使用した差動機構では大型になる。
【0046】
この点、本発明の駆動ピニオンギア90は、平歯車、又は、はすば歯車に直接噛み合えるため、差動機構70は内ウォームギア80と駆動ピニオンギア90との1対の歯車ペアのみで構成することができ、差動機構70全体として小型化することができる。さらに、駆動ピニオンギア90から、次の伝達要素に直接噛み合わせることができる。
【0047】
また、駆動ピニオンギア90は、ホイール軸91(図1参照)に回転可能に支持される環状部94と、この環状部94の外周に放射状に設けられた8個の歯92と、を備えている。
【0048】
なお、実施例では、駆動ピニオンギア90の歯92の歯面93は球面状のクラウニング歯面としたが、これに限定されず、歯面93は円筒状の円筒歯面としてもよい。また、実施例では、駆動ピニオンギア90の歯数を8個としたが、これに限定されず、6個、7個、9個、10個などでもよく、内ウォームギア80の直径と条数に応じて適宜変更してよい。これにより、減速比やバックドライバビリティの発現を任意に設計することができる。
【0049】
また、一般的に傘歯車が使用される差動機構では、その配置と減速比の間に強い制約がある。すなわち、ある減速比を得ようとすると、必然的に歯車と軸の配置が決定される。この点、本発明では、内ウォームギア80の条数を変えたり、駆動ピニオンギア90の歯数を変えたりしても、内ウォームギア80の内側に駆動ピニオンギア90が入りさえすれば、配置の制約がないので、配置の自由性が高く、しかも減速比を幅広く決定できる。
【0050】
次に内ウォームギア80について説明する。なお、図6(A)は内ウォームギア80の基端側からの斜視図、図6(B)は内ウォームギア80の先端側からの斜視図、図6(C)は内ウォームギア80の正面図、図6(D)は基端側からの部分断面図、図6(E)は内ウォームギア80の側面図、図7(A)は図6(E)の7A-7A線断面図、図7(B)は図7(A)の7B-7B線断面図、図7(C)は図6(D)の7C-7C線断面図、図7(D)は図6(D)の7D-7D線断面図である。
【0051】
内ウォームギア80は、円筒状を呈し、この円筒状の内側にr軸に沿ってらせん状に歯81が形成されている。内ウォームギア80の内径は、回転内軸(図1参照)の中間部の外径よりも大きい。内ウォームギア80は、条数が2である。なお、実施例では、内ウォームギア80の条数を2としたが、これに限定されず、条数を1や3以上などに変更してもよい。
【0052】
内ウォームギア80の条数を1にするなど、進み角を小さくすることで、一般的なウォームギア同様に、セルフロックができる。内ウォームギア80の条数を2以上とすることで、内ウォームギア80の大きさを抑えつつ進み角を大きくすることができる。このように、内ウォームギア80の条数に範囲を持たせることで、条数と内ウォームギア80の直径に応じてバックドライバビリティの発現を任意に設計することができる。
【0053】
また、内ウォームギア80は、回転部材82(図1参照)に固定するための固定溝84が形成されている。例えば、内ウォームギア80の外周側から板状のナットを固定溝84に入れて、回転部材82側から締結部材で締結することで、回転部材82に内ウォームギア80が固定される。なお、固定方向はこれに限定されない。
【0054】
次に駆動ピニオンギア90の歯92のクラウニング量について説明する。なお、図8(A)は、内ウォームギア80と駆動ピニオンギア90の噛み合い部分の断面図であり、図8(B)は図7(D)の部分拡大図であり、図8(C)は駆動ピニオンギア90のピッチ円上の歯92の断面図である。
【0055】
図5(D)、図8(A)~図8(C)を参照する。例えば図8(A)では、内ウォームギア80と太陽歯車40とは噛み合っているが、この太陽歯車40を通常の平歯車のときは、それと噛み合うために駆動ピニオンギア90の断面形状が平歯車の断面形状と一致することが1つの設計条件となる。
【0056】
すると、図8(A)のような断面における、歯92の厚みが決定される。この場合、ウォームホイール90の基準ピッチ円上の歯92の厚み t [mm]は、
t = m *π / 2
と決定される。ここで、mは歯のモジュールである。これは一般的な歯車の式である。ただし、図8(A)の断面図の位置は正確ではなく、説明上、理解するためのものである。本来は円筒状の内ウォームギア80のピッチ円筒面で断面をとるものとする。さらに、歯の厚み t は、図5(D)の基準ピッチ円上における長さとなる。
【0057】
次に、内ウォームギア80の歯81の進み角つるまき線の傾き角度α[deg]を求める。この角度は歯の条数 n 、歯81のモジュールm [mm]、内ウォームギア80のピッチ円筒面の直径 d [mm]で決定される。m は駆動ピニオンギア90と同一のものである。例えば、n=1の場合、内ウォームギア80が一周したときの、駆動ピニオンギア90の円周方向の移動量b[mm]は1ピッチ移動する。すなわち、次のようになる。
b = π* m
【0058】
もしn=2であれば2ピッチ、n=3であれば3ピッチ移動するので、一周したときの移動量は、次のようになる。
b = π* m * n
【0059】
すると、ピッチ円筒面上のウォーム歯81の歯すじの傾き角(進み角)αは次式として得られる。
α = arctan( b / (π* d) ) = arctan(π* m * n / (π* d) ) = arctan( m * n / d )
【0060】
これは、一周するときの横方向のスライド移動量π* d [mm]と、縦方向の送り量b [mm]によって形成される三角形の角度を意味する。
【0061】
次に、幾何学的に設計パラメータを算出する。決定したいパラメータは、歯幅w [mm]、クラウニング半径 r [mm]、及び内ウォームギア80の谷の幅 s [mm]である。
【0062】
クラウニングの目的は、内ウォーム歯面とのなめらかな接触であり、図8(C)の接点Pは、歯幅w のいずれかの場所に有るべきである。つまり、次の関係になる。
h < w/2
【0063】
ここで、設計上限を求めるとすると、
h = w / 2
となる。するとクラウニング量r との関係は、
h = r sin(α) = w / 2
従って、
r = w / ( 2 * sin(α) )
ただし、r の最小値はt の半分であるので、次の条件を満たすものとする。
r >= t / 2
【0064】
もしr = t/2 であるならば、この駆動ピニオンギア90の歯は円錐となる。t が固定のため、内ウォームギア80の歯溝の幅を調整する必要がある。つまり、本来は、図9(B)の内ウォームギア80の断面形状は、通常のラックギヤとは異なり、マイナスに転位された歯形状を持つべきであることを意味する。
【0065】
理論上の歯の溝の幅 u [mm]は、
u = π* m / 2
となり、ピッチ幅の半分を意味する。通常の歯車の場合、s = u が理論値となる。一方、本発明の内ウォームギア80の歯の溝の幅s [mm]は、これまでの幾何学的な検討にもとづいて、
s = 2 r - ( 2 r - t ) cos(α)
となる。例えば、α=0、つまり進み角度が存在しない内ラックギヤの回転体の場合、s = t = π* m / 2 となり、s = u が得られる(これは歯を送ることができないことを意味する)。
【0066】
一方、通常の平歯車とラックギヤの距離を離すと、相対的にラックの歯溝の幅を広げたことと等価になる。従って、本発明の内ウォームギア80と駆動ピニオンギア90の場合も同様に距離を離すことで、わざわざ s に基づいた特殊な内ウォーム歯面を削らなくとも、噛み合いを可能にすることができる。このときの広げるべき幅 e [mm]は、
e = s - u
で得られ、片側の歯面のみを考えれば、e / 2 の歯溝の拡張が必要となる。
【0067】
ラックギアの歯の角度、歯圧角は20°であるので、内ウォームギア80と駆動ピニオンギア90との距離の増分 y [mm]は、以下のように表現される。
y = ( e / 2 ) / tan( 20°)
【0068】
まとめると次のようになる。
設定値は、モジュールm、条数n、内ウォームギアピッチ円筒内径 d、歯幅 wである。
歯の厚みt [mm] t = m *π / 2
傾き角α[rad] α = arctan( m * n / d )
クラウニング量r [mm] r < w / ( 2 * sin(α) )
ウォームギア歯溝幅 s[mm] s = 2 r - ( 2 r - t ) cos(α)
軸間距離の増分 y[mm] y = ( e / 2 ) / tan( 20°)
【0069】
ただし、内ウォームギアの歯先内径da = d - 2 * m、内ウォームホイールのピッチ円直径 Dp = z * mは、Dp < da である。
【0070】
次に比較例に係る関節機構の作用と本発明の実施例に係る二重関節機構の作用を説明する。
【0071】
図9(A)は比較例に係る関節機構100の作用を説明する模式図である。比較例に係る関節機構100の内ウォーム差動機構は、回転内軸130と、円筒状に形成されて回転内軸130の外周を覆い且つ回転内軸130の同軸上に回転可能に設けられ円筒状の内側にらせん状に歯が形成された内ウォームギア180と、回転内軸130の軸直交方向に回転可能に設けられ駆動力を伝達するとともに内ウォームギア180に噛み合う駆動ピニオンギア190と、駆動ピニオンギア190に噛み合う遊星歯車160と、この遊星歯車160に一体的に設けられた出力アーム162と、を備えている。しかし、比較例に係る関節機構100では、内ウォーム差動機構と出力アーム162との干渉を回避するため、出力アーム162の回転角を大きくとることができない。
【0072】
図9(B)は実施例に係る二重関節機構10の作用を説明する模式図である。実施例に係る二重関節機構10では、太陽歯車40と第1遊星歯車60との2つの回転軸をもつ二重関節を、遊星歯車機構を用いて実現している。すなわち、歯車伝達機構のみで回転関節の回転角を任意の倍率で拡大できるという、可動範囲の拡大を可能としている。これにより、ロボットアームの動作範囲の拡大が可能となる。
【0073】
次に二重関節機構10のピッチ軸方向の作用について説明する。
図10(A)に示すように、二重関節機構10は、本体フレーム20に対して、可動フレーム62が左側に平行になる角度まで曲げられている。歯車回転用モータ73を駆動させて可動フレーム62を矢印(1)のように移動させる。
【0074】
図10(B)に示すように、二重関節機構10は、本体フレーム20に対して、可動フレーム62が略直線状となる位置にある。歯車回転用モータ73を駆動させて可動フレーム62を矢印(2)のように移動させる。すると、図10(C)に示すように、二重関節機構10は、本体フレーム20に対して、可動フレーム62が右側に平行になる角度まで曲げられている。このように、二重関節機構10では、本体フレーム20に対して可動フレーム62を折り畳むことができる。
【0075】
次に二重関節機構10のロール軸方向の作用について説明する。
図11(A)に示すように、二重関節機構10は、本体フレーム20に対して、可動フレーム62がロール軸回転方向において基準位置にある。軸回転用モータ72を駆動させて回転内軸30をロール軸回りに回転させ、手先側となる可動フレーム62を矢印(3)のように回転させる。すると、図11(B)に示すように、二重関節機構10は、本体フレーム20に対して可動フレーム62がロール軸回転方向において90度回転した位置になる。
【0076】
次に二重関節機構10の作用をコマ送りで説明する。
図12(A)~図12(I)に示すように、図12(A)において二重関節機構10では、本体フレーム20に対して可動フレーム62は左側に平行な位置にある。固定歯車31に第2遊星歯車61が噛み合っている。本体フレーム20に対して可動フレーム62を回転させると、図12(B)~図12(H)に示すように、可動フレーム62が徐々に回転し、図12(I)における二重関節機構10のように本体フレーム20に対して可動フレーム62が右側に平行な位置に移動する。
【0077】
このように、大きな可動範囲を実現可能な直交回転2自由度を出力する差動機構として、本発明の二重関節機構10は、内ウォームギア(内ウォームギア80)、ピニオン(駆動ピニオンギア90)、平歯車(太陽歯車40)という3つの機構要素のみで実現されている。比較的小型で低誤差でありながら、歯数によって回転角を自由に設計することができる。これにより、ロボットの関節機構の可動範囲拡大による機構の小型化ができる。さらに、二重関節により、2つのリンクを平行に配置できる関節機構を設計でき、ロボットに使用した場合には関節折り畳み動作を実現し、設置面積(設置スペース)を小さくすることができる。
【0078】
次に二重関節機構10をロボットアームに使用した例について説明する。
図13(A)に示すように、ロボットアームは折り畳まれた状態であり、第1アーム11と第2アーム12との間に二重関節機構10が設けられており、さらに第2アーム12と第3アームとの間にも二重関節機構10が設けられている。関節を挟む2つのリンク(アーム)を平行になる角度まで曲げることができるので、ロボットアームを折り畳み、設置時の投影面積(占有面積)を小さくすることができ、収納性を向上させることができる。
【0079】
図13(B)に示すように、ロボットアームは作業時の姿勢であり、第1アーム11と第2アーム12とが二重関節機構10を介して開いた状態である。また第2アーム12と第3アーム13とが二重関節機構10を介して開いた状態である。二重関節機構10は、歯車により駆動力を伝達するので、他の周知技術のようなワイヤ駆動によるものや、空気圧駆動によるものに比較して、大きな力を伝達することができる。
【0080】
次に、以上に述べた二重関節機構10の効果について説明する。
【0081】
本発明の実施例の構成において、二重関節機構10は、本体フレーム20に設けられた回転内軸30と、固定歯車31と、駆動ピニオンギア90と、太陽歯車40と、遊星キャリア50と、中間遊星ピニオン55と、第1遊星歯車60と、第2遊星歯車61と、可動フレーム62と、を備えている。中間遊星ピニオン55を有するいわゆる2K-H型遊星歯車機構により、入力となる太陽歯車40と同じ方向に、第1遊星歯車60及び第2遊星歯車61を回転可能に支持する遊星キャリア50を回転させている。このため、入力となる太陽歯車40の回転角度θ1と、遊星キャリア50を介した可動フレーム62の回転角度θ2とを同じ方向にすることができる。遊星キャリア50を介して2つの回転軸を持つ二重関節を、遊星歯車機構を用いて実現している。これにより、歯車伝達機構のみで「ある回転関節の回転角を任意の倍率で拡大できる」という可動範囲の拡大を可能にし、可動フレーム62が設けられた第2遊星歯車61から出力を取り出して手先側である可動フレーム62の可動範囲を大きくできる二重関節機構となる。
【0082】
さらに、第1遊星歯車60及び第2遊星歯車61は、遊星キャリア50にベアリングを介して回転可能に設けられているので、遊星キャリア50に対する第1遊星歯車60及び第2遊星歯車61の回転を円滑にし、回転内軸30に固定された固定歯車31に第2遊星歯車61を噛み合わせて第2遊星歯車61から出力を取り出すことができる。
【0083】
さらに、遊星キャリア50は、一端側の柄部51と他端側の円環部52とからなる虫メガネ形状に形成され、円環部52の内側に第1遊星歯車60が配置されているので、遊星キャリア50のスペース内に第1遊星歯車60を配置してスペースを有効に活用し関節機構の小型化を図ることができる。
【0084】
さらに、太陽歯車の歯数40は、第1遊星歯車60の歯数と同じであるので、中間遊星ピニオン55を介して入力となる太陽歯車40の回転角度θ1と、遊星キャリア50を介した可動フレーム62(第2遊星歯車61)の回転角度θ2とを同じ方向にすることができ、遊星キャリア50を介した可動フレーム62の回転角度θ2を太陽歯車40の回転角度θ1の2倍にすることができる。
【0085】
さらに、回転内軸31は本体フレーム20に回転可能に設けられている。駆動ピニオンギア90を回転内軸30の軸直交方向に回転可能に設け、本体フレーム20に回転可能に設けられた回転内軸30に固定歯車31を一体的に設けたので、回転内軸30をこの回転内軸31の軸(縦軸)回りに回転させることで、固定歯車31をねじる方向に回動することができる。結果、複数のモータを根本側に固定しながら、小型かつ手先側の可動範囲を大きくすることができる多自由度の関節機構を提供することができる。
【0086】
さらに、差動機構70は、円筒状に形成されて回転内軸30の外周を覆い且つ回転内軸30の同軸上に回転可能に設けられ円筒状の内側にらせん状に歯が形成された内ウォームギア80と、回転内軸30にこの回転内軸30の軸に対してねじれの位置で直交する軸まわりに回転可能に設けられ内ウォームギア80に噛み合う駆動ピニオンギア90と、を備えている。内ウォームギア80は円筒状部分の内側にらせん状の歯が形成され、内ウォームギア80の内側に駆動ピニオンギア90が配置されているので、差動機構70を小型化することができる。さらに、本発明では、内ウォームギア80の外形を形成する円筒状部分の内側に直接らせん状に歯を形成するので、伝達要素(部品点数)を少なくして差動誤差を減少させることができる。このように、本発明では、小型で差動誤差を減少させることができる2自由度の差動機構を提供することができる。
【0087】
さらに、駆動ピニオンギア90のピニオン(歯)の歯面が、円筒歯面、または球面状のクラウニング歯面であるので、ピッチ円上において駆動ピニオンギア90の軸に対して傾斜する内ウォームギア80の歯面に滑らかに噛み合うことでき、且つ、伝達先の平歯車の歯面にも滑らかに噛み合うことができる。このため、従来の伝達要素との親和性が高いだけでなく、バックドライバビリティを発現させることもできる。
【0088】
尚、本発明は、実施例では駆動ピニオンギア90を駆動させるために内ウォームギア80を用いたが、これに限定されず、内ウォームギア80を使用せずに駆動ピニオンギア90を直接モータで駆動させる形式や、モータから平歯車やはすば歯車を介して駆動ピニオンギア90を駆動させてもよい。この場合、駆動ピニオンギア90の歯形は噛み合う歯車の歯形に合わせればよい。
【0089】
また、実施例では太陽歯車40の歯数と第1遊星歯車60の歯数を同数にし、第1遊星歯車60の回転角θ2を太陽歯車40の回転角θ1の2倍となるように設定したが、これに限定されず、太陽歯車40の歯数と第1遊星歯車60の歯数を異なる数にして、太陽歯車40の回転角θ1に対する第1遊星歯車60の回転角θ2を0.5倍、1倍、3倍など、2倍以外となるように設定してもよい。
【0090】
また、実施例では回転内軸31を本体フレーム20に軸回転可能に設けたが、回転内軸31を本体フレーム20に軸回転可能とせずに設け、駆動ピニオンギア90の回転入力に対して可動フレーム62が遊星キャリア50を介して二重のピッチ軸回転の回転出力を行うようにし、歯車伝達機構のみで可動フレーム62の可動範囲を大きくできる二重関節機構としてもよい。
【0091】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、差動機構と遊星歯車機構により駆動力を伝達して回動させる関節機構に好適である。
【符号の説明】
【0093】
10…二重関節機構、20…本体フレーム、30…回転内軸、31…固定歯車、40…太陽歯車、50…遊星キャリア、55…中間遊星ピニオン、60…第1遊星歯車、61…第2遊星歯車、62…可動フレーム、70…差動機構、71…駆動部、72…軸回転用モータ、72…歯車回転用モータ、80…内ウォームギア、81…内ウォームギアの歯、90…駆動ピニオンギア(ウォームホイール)、92…ウォームホイールの歯、93…歯面(クラウニング歯面)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13