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特開2024-71980タイヤ騒音予測装置およびタイヤ騒音予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071980
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】タイヤ騒音予測装置およびタイヤ騒音予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240520BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240520BHJP
   G01H 3/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 Z
G01H3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182533
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥 祐樹
【テーマコード(参考)】
2G064
3D131
【Fターム(参考)】
2G064AA14
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB15
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
3D131LA34
(57)【要約】
【課題】簡易に精度良くタイヤの騒音を予測することができるタイヤ騒音予測装置を提供する。
【解決手段】タイヤの振動による騒音を予測するタイヤ騒音予測装置10であって、タイヤをモデル化したタイヤモデルM1を作成するタイヤモデル作成部21と、周波数を変化させてタイヤモデルM1の所定位置Pを加振した時のタイヤモデルM1の加振時表面振動を取得する表面振動取得部22と、タイヤの表面が振動した時のタイヤ表面の周囲の音圧分布をモデル化した音響空間モデルM3を作成する音響空間モデル作成部24と、音響空間モデルM3のタイヤ表面を加振時表面振動によって振動させた時の音圧分布を取得してタイヤの騒音を予測する騒音予測部25とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの振動による騒音を予測するタイヤ騒音予測装置であって、
前記タイヤをモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成部と、
周波数を変化させて前記タイヤモデルの所定位置を加振した時の前記タイヤモデルの加振時表面振動を取得する表面振動取得部と、
前記タイヤの表面が振動した時のタイヤ表面の周囲の音圧分布をモデル化した音響空間モデルを作成する音響空間モデル作成部と、
前記音響空間モデルの前記タイヤ表面を前記加振時表面振動によって振動させた時の音圧分布を取得して前記タイヤの騒音を予測する騒音予測部と、
を有する、
タイヤ騒音予測装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ騒音予測装置であって、
前記表面振動取得部では、所定領域の前記加振時表面振動のみを取得し、
前記騒音予測部では、前記タイヤ表面において前記所定領域以外を拘束する、
タイヤ騒音予測装置。
【請求項3】
タイヤの振動による騒音を予測するタイヤ騒音予測方法であって、
前記タイヤをモデル化したタイヤモデルを作成し、
周波数を変化させて前記タイヤモデルの所定位置を加振した時の前記タイヤモデルの加振時表面振動を取得し、
前記タイヤの表面が振動した時のタイヤ表面の周囲の音圧分布をモデル化した音響空間モデルを作成し、
前記音響空間モデルの前記タイヤ表面を前記加振時表面振動によって振動させた時の音圧分布を取得して前記タイヤの騒音を予測する、
タイヤ騒音予測方法。
【請求項4】
請求項3に記載のタイヤ騒音予測方法であって、
前記タイヤモデルの前記加振時表面振動を取得する時は、所定領域の前記加振時表面振動のみを取得し、
前記タイヤの騒音を予測する時は、前記タイヤ表面において前記所定領域以外を拘束する、
タイヤ騒音予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの振動による騒音を予測するタイヤ騒音予測装置およびタイヤ騒音予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ騒音予測装置は、タイヤの振動による騒音を予測する装置である。より詳細には、タイヤ騒音予測装置は、有限要素法(FEM(Finite Element Method))モデル等によってタイヤをモデル化したタイヤモデルの振動解析をすることによってタイヤの構造振動による放射音を予測する。例えば、特許文献1には、タイヤ振動の振動波長から音響放射効率を見積もり、振動振幅に重みづけした量に基づいて、騒音量を簡易評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-141198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されたタイヤ騒音予測装置では、タイヤ振動の結果のみから、音響放射効率と騒音量とを見積もっており、予測精度について改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、簡易に精度良くタイヤの騒音を予測することができるタイヤ騒音予測装置およびタイヤ騒音予測方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤ騒音予測装置は、タイヤの振動による騒音を予測するタイヤ騒音予測装置であって、タイヤをモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成部と、周波数を変化させてタイヤモデルの所定位置を加振した時のタイヤモデルの加振時表面振動を取得する表面振動取得部と、タイヤ表面が振動した時のタイヤ表面の周囲の音圧分布をモデル化した音響空間モデルを作成する音響空間モデル作成部と、音響空間モデルのタイヤ表面を加振時表面振動によって振動させた時の音圧分布を取得してタイヤの騒音を予測する騒音予測部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤ騒音予測装置およびタイヤ騒音予測方法によれば、簡易に精度良くタイヤの騒音を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例であるタイヤ騒音予測装置を示すブロック図である。
図2】制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】タイヤモデルを示す図である。
図4】表面振動取得部による処理を説明する図である。
図5】タイヤ表面モデルを示す図である。
図6】音響空間モデルを示す図である。
図7】評価点を説明する図である。
図8】評価点における周波数毎の音圧変化を示す図である。
図9】評価点におけるピーク周波数の音圧分布を示す図である。
図10】実施形態の一例であるタイヤ騒音予測方法の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0010】
[タイヤ騒音予測装置]
図1から図9を用いて、実施形態の一例であるタイヤ騒音予測装置10について説明する。
【0011】
タイヤ騒音予測装置10は、タイヤの振動による騒音を予測する装置である。より詳細には、タイヤ騒音予測装置10は、有限要素法(FEM(Finite Element Method))モデル等によってタイヤをモデル化したタイヤモデルM1の振動解析をすることによってタイヤの構造振動による放射音を予測する。タイヤ騒音予測装置10によれば、詳細は後述するが、簡易に精度良くタイヤの騒音を予測することができる。
【0012】
図1に示すように、タイヤ騒音予測装置10は、それぞれ後述する、プロセッサ12と、メモリ13とを有する制御装置11を備えたコンピュータで構成されている。タイヤ騒音予測装置10は、1つのコンピュータで構成されていてもよく、複数のコンピュータで構成されていてもよい。また、タイヤ騒音予測装置10の機能の一部が、通信網を介して接続されるサーバ等に存在していてもよい。
【0013】
プロセッサ12は、プログラム等を読み出し、処理を実行する。メモリ13は、例えばRAM、ROM、ハードディスクドライブ等により構成され、プログラム、データ等を含む振動解析および音響解析の実行に必要な各種設定情報を記憶している。
【0014】
タイヤ騒音予測装置10は、それぞれ後述する、入力装置14と、表示装置15とを備えている。入力装置14は、振動解析および音響解析の実行に必要な情報を入力するための入力インターフェイスである。入力装置14の一例としてキーボードが挙げられる。表示装置15は、入力画面、振動解析および音響解析の結果の出力画面等が生じされるディスプレイである。表示装置15の一例として液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等が挙げられる。入力装置14および表示装置15は、制御装置11に接続されている。
【0015】
図2に示すように、制御装置11は、それぞれ詳細は後述する、タイヤモデル作成部21と、表面振動取得部22と、タイヤ表面モデル作成部23と、音響空間モデル作成部24と、騒音予測部25とを有している。タイヤモデル作成部21、表面振動取得部22、タイヤ表面モデル作成部23、音響空間モデル作成部24および騒音予測部25は、プロセッサ12がメモリ13に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0016】
図3に示すように、タイヤモデル作成部21は、上述したようにタイヤをモデル化したタイヤモデルM1を作成する。本実施形態では、有限要素法による解析モデルを用いて、タイヤモデルM1を作成する。
【0017】
より具体的には、タイヤモデルM1は、タイヤの3次元形状が有限個の要素に分割された有限要素モデルである。タイヤモデルM1が有する要素は、例えば、四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素、三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで取り扱い得る要素とすることが望ましい。タイヤモデルM1の各要素には、要素番号、節点番号、節点座標、材料物性値(例えば密度、ヤング率、ポアソン比等)等が設定されている。
【0018】
タイヤモデルM1は、内周面側から一様に圧力を負荷する内圧充填処理(インフレート処理)がされた状態であることが好ましい。なお、タイヤモデルM1を構成する要素の形状または大きさについては、特に限定されるものではない。タイヤモデルM1を構成する要素の形状または大きさは、モデル化すべきタイヤの材料に応じて定められてもよい。
【0019】
なお、本発明のタイヤモデルM1は、本実施形態の有限要素法による解析モデルに限られない。例えば、有限差分法(FDM(Finite Differences Method))、境界要素法(BEM(Boundary Element Method))等による解析モデルであってもよい。また、境界条件等によって最も適当な解析手法を選択する、または複数の解析手法を組み合わせた解析モデルであってもよい。
【0020】
図4に示すように、表面振動取得部22は、タイヤモデルM1の所定位置Pを周波数変化させて加振したときの、タイヤモデルM1の所定領域Rの表面振動を取得する。より具体的には、表面振動取得部22は、タイヤモデルM1において所定荷重を周波数変化させて所定位置Pに入力し、タイヤモデルM1の所定領域Rの表面節点の振動特性(以下、単に加振時表面振動)を取得する。ここで、振動特性には、振動の振幅、位相、波長等が含まれる。
【0021】
表面振動取得部22では、粘弾性も考慮して加振時表面振動を取得することが好ましい。粘弾性とは、粘性と弾性の両方を合わせた性質である。本実施形態では、周波数に依存する特性を考慮して加振時表面振動を取得している。
【0022】
本実施形態の所定位置Pは、例えばブロック表面におけるタイヤ幅方向の赤道であって、実際のタイヤのブロック表面が路面から受ける加振を想定している。ただし、本発明の所定位置Pは、本実施形態のブロック表面におけるタイヤ幅方向の赤道に限定されるものではない。また、本実施形態の所定領域Rは、サイドウォールであって、実際のタイヤのサイドウォールの振動による騒音を想定している。ただし、本発明の所定領域Rは、本実施形態のサイドウォールに限定されるものではない。
【0023】
図5に示すように、タイヤ表面モデル作成部23は、上述したタイヤモデル作成部21によって作成されたタイヤモデルM1より表面部分のみを抽出したタイヤ表面モデルM2を作成する。
【0024】
本実施形態のタイヤ表面モデルM2は、上述したように有限要素法による解析モデルである。タイヤ表面モデルM2は、タイヤの3次元形状が有限個の要素に分割された有限要素モデルである。タイヤ表面モデルM2が有する要素は、例えば、三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで取り扱い得る要素とすることが望ましい。
【0025】
図6に示すように、音響空間モデル作成部24は、タイヤ表面モデル作成部23によって作成されたタイヤ表面モデルM2が振動した時のタイヤ表面の周囲の音圧分布をモデル化した音響空間モデルM3を作成する。音響空間モデルM3は、タイヤ表面モデルM2の周囲の気体が満たされる空間をモデル化したものである。本実施形態の音響空間モデルM3は、有限要素法による解析モデルである。
【0026】
より具体的には、音響空間モデルM3は、タイヤの3次元形状が有限個の要素に分割された有限要素モデルである。音響空間モデルM3が有する要素は、例えば、四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素、三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで取り扱い得る要素とすることが望ましい。
【0027】
なお、本発明の音響空間モデルM3は、本実施形態の有限要素法による解析モデルに限られない。例えば、有限差分法(FDM(Finite Differences Method))、境界要素法(BEM(Boundary Element Method))等による解析モデルであってもよい。また、境界条件等によって最も適当な解析手法を選択する、または複数の解析手法を組み合わせた解析モデルであってもよい。
【0028】
騒音予測部25は、音響空間モデルM3のタイヤ表面を上述した加振時表面振動によって振動させた時の音圧分布を取得してタイヤの騒音を予測する。より具体的には、騒音予測部25は、音響空間モデルM3のタイヤ表面モデルM2に表面振動取得部22によって取得した周波数変化させた時のタイヤモデルM1の所定領域Rの加振時表面振動の挙動を入力し、タイヤ表面モデルM2の周囲の音圧分布を取得してタイヤの騒音を予測する。
【0029】
騒音予測部25では、振動の挙動を設定しない所定領域以外の表面については拘束して音圧分布を取得する。これにより、所定位置Pの加振によって所定位置Pから発生する騒音が評価されてしまうことを防止することができる。
【0030】
図7に示すように、騒音予測部25では、例えばタイヤから所定距離だけ離れた評価点Qにおける音圧分布を取得してタイヤの騒音を予測する。図7の例示では、タイヤからタイヤ軸方向にaだけ離れ、かつ、タイヤの径方向の中心からタイヤ径方向にbだけ離れた地点を評価点Qとしている。
【0031】
図8に示すように、騒音予測部25では、例えば評価点Qにおいて周波数変化させた時の音圧の変化を取得する。図9に示すように、騒音予測部25では、評価点Qにおいて音圧がピークとなった周波数におけるタイヤ表面モデルM2の周囲の音圧分布を取得する。
【0032】
タイヤ騒音予測装置10によれば、簡易に精度良くタイヤの騒音を予測することができる。より具体的には、タイヤ騒音予測装置10によれば、タイヤ周囲の空間についても音響空間モデルM3としてモデル化しているため、精度良くタイヤの騒音を予測することができる。さらに、タイヤ騒音予測装置10によれば、各周波数帯において、タイヤ周囲の音圧分布を可視化することができるため、騒音の原因となるタイヤの部位を特定することができる。
【0033】
[タイヤ騒音予測工程]
図10を用いて、タイヤ騒音予測工程について説明する。
【0034】
タイヤ騒音予測方法としてのタイヤ騒音予測工程は、上述したタイヤ騒音予測装置10を用いてタイヤの騒音を予測する工程である。タイヤ騒音予測工程によれば、簡易に精度良くタイヤの騒音を予測することができる。
【0035】
ステップS11において、タイヤモデル作成部21によって、タイヤをモデル化したタイヤモデルM1を作成する。ステップS12において、表面振動取得部22によって、タイヤモデルM1の所定位置Pを周波数変化させて加振したときの、タイヤモデルM1の所定領域Rの加振時表面振動を取得する。
【0036】
ステップS13において、タイヤ表面モデル作成部23によって、タイヤモデル作成部21によって作成されたタイヤモデルM1よりタイヤ表面部分のみを抽出したタイヤ表面モデルM2を作成する。
【0037】
ステップS14において、音響空間モデル作成部24によって、タイヤ表面モデルM2が振動した時のタイヤ表面の周囲の音圧分布をモデル化した音響空間モデルM3を作成する。ステップS15において、騒音予測部25によって、音響空間モデルM3のタイヤ表面を加振時表面振動によって振動させた時の音圧分布を取得してタイヤの騒音を予測する。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
10タイヤ騒音予測装置、11 制御装置、12 プロセッサ、13 メモリ、14 入力装置、15 表示装置、21 タイヤモデル作成部、22 表面振動取得部、23 タイヤ表面モデル作成部、24 音響空間モデル作成部、25 騒音予測部、M1 タイヤモデル、M2 タイヤ表面モデル、M3 音響空間モデル、P 所定位置、Q 評価点、R 所定領域
図1
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図6
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