(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071983
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20240520BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240520BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240520BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240520BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20240520BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/36
A61K8/34
A61Q17/04
A61Q1/02
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182538
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】八木 政幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 祐伽
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC471
4C083AC472
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD112
4C083CC03
4C083CC12
4C083CC19
4C083CC32
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】溶解状態のフェルラ酸を高濃度で含む水中油型乳化化粧料組成物を提供すること。
【解決手段】フェルラ酸とジプロピレングリコールとを含む水中油型乳化化粧料組成物であって、該組成物中のフェルラ酸の含有量が4~10質量%であり、該組成物中のフェルラ酸に対するジプロピレングリコールの含有質量比が少なくとも3倍であり、フェルラ酸が上記組成物中に溶解している、水中油型乳化化粧料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルラ酸とジプロピレングリコールとを含む水中油型乳化化粧料組成物であって、該組成物中のフェルラ酸の含有量が4~10質量%であり、該組成物中のフェルラ酸に対するジプロピレングリコールの含有質量比が少なくとも3倍であり、フェルラ酸が前記組成物中に溶解している、水中油型乳化化粧料組成物。
【請求項2】
フェルラ酸とブチレングリコールとを含む水中油型乳化化粧料組成物であって、該組成物中のフェルラ酸の含有量が4~10質量%であり、該組成物中のフェルラ酸に対するブチレングリコールの含有質量比が少なくとも3.5倍であり、フェルラ酸が前記組成物中に溶解している、水中油型乳化化粧料組成物。
【請求項3】
SPF値が20~40である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料組成物。
【請求項4】
フェルラ酸以外の紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤をいずれも含まない、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料組成物。
【請求項5】
日焼け止め化粧料、リキッドファンデーション、化粧下地、ヘアミスト、ヘアミルク、又はヘアエッセンスである、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルラ酸を溶解状態で含む水中油型乳化化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高SPF値が表示されている日焼け止め化粧料には、紫外線防御機能を持つ成分として、一般に紫外線散乱剤及び化学合成の紫外線吸収剤が配合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェルラ酸は、紫外線吸収作用があり、コメヌカ等の植物から得ることができる成分である。しかしながら、フェルラ酸は溶媒に溶けにくく、析出しやすいという問題がある。
【0005】
例えば特許文献1には、フェルラ酸及びポリオールを含む化粧料組成物が記載されている。しかしながら、その組成は限られている。
【0006】
本発明は、溶解状態のフェルラ酸を高濃度で含む水中油型乳化化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の[1]~[5]に関する。
[1]フェルラ酸とジプロピレングリコールとを含む水中油型乳化化粧料組成物であって、該組成物中のフェルラ酸の含有量が4~10質量%であり、該組成物中のフェルラ酸に対するジプロピレングリコールの含有質量比が少なくとも3倍であり、フェルラ酸が上記組成物中に溶解している、水中油型乳化化粧料組成物。
[2]フェルラ酸とブチレングリコールとを含む水中油型乳化化粧料組成物であって、該組成物中のフェルラ酸の含有量が4~10質量%であり、該組成物中のフェルラ酸に対するブチレングリコールの含有質量比が少なくとも3.5倍であり、フェルラ酸が上記組成物中に溶解している、水中油型乳化化粧料組成物。
[3]SPF値が20~40である、[1]又は[2]に記載の水中油型乳化化粧料組成物。
[4]フェルラ酸以外の紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤をいずれも含まない、[1]~[3]のいずれか一つに記載の水中油型乳化化粧料組成物。
[5]日焼け止め化粧料、リキッドファンデーション、化粧下地、ヘアミスト、ヘアミルク、又はヘアエッセンスである、[1]~[4]のいずれか一つに記載の水中油型乳化化粧料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、溶解状態のフェルラ酸を高濃度で含む水中油型乳化化粧料組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
第一の実施形態に係る水中油型乳化化粧料組成物は、フェルラ酸とジプロピレングリコールとを含み、該組成物中のフェルラ酸の含有量が4~10質量%であり、該組成物中のフェルラ酸に対するジプロピレングリコールの含有質量比が少なくとも3倍であり、フェルラ酸が組成物中に溶解している。
【0011】
第二の実施形態に係る水中油型乳化化粧料組成物は、フェルラ酸とブチレングリコールとを含み、該組成物中のフェルラ酸の含有量が4~10質量%であり、該組成物中のフェルラ酸に対するブチレングリコールの含有質量比が少なくとも3.5倍であり、フェルラ酸が組成物中に溶解している。本明細書において「ブチレングリコール」は「1,3-ブチレングリコール」を指す。
【0012】
第一の実施形態及び第二の実施形態(以下、両者を合わせて本実施形態ともいう。)に係る組成物は、ジプロピレングリコール又はブチレングリコールを用いることにより、少ない溶媒量でも十分量のフェルラ酸を溶解状態で含むことができる。
【0013】
第一の実施形態において、組成物中のフェルラ酸に対するジプロピレングリコールの含有質量比は、例えば、3倍超、3.1倍以上、3.2倍以上、又は3.5倍以上であってよく、5倍以下、4倍以下、4倍未満、3.5倍以下、3.2倍以下、3.1倍以下であってよい。
【0014】
第二の実施形態において、組成物中のフェルラ酸に対するブチレングリコールの含有質量比は、例えば、3.5倍超、3.6倍以上、3.8倍以上、又は4倍以上であってよく、5.5倍以下、5倍以下、4倍以下、4倍未満、3.5倍以下、3.2倍以下、3.1倍以下であってよい。
【0015】
第一の実施形態において、ジプロピレングリコールの含有量は、組成物全量に対して、例えば、12質量%以上、15質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、23質量%以上、25質量%以上、28質量%以上、又は30質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0016】
第二の実施形態において、ブチレングリコールの含有量は、組成物全量に対して、例えば、14質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、23質量%以上、25質量%以上、28質量%以上、30質量%以上、又は35質量%以上であってよく、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってよい。
【0017】
本実施形態の組成物におけるフェルラ酸の含有量は4~10質量%の範囲である。10質量%という上限濃度は、日本国厚生省(現厚生労働省)による「化粧品基準」(2000年)にて定められた、化粧品におけるフェルラ酸の最大許容含有量である。本実施形態に係る組成物は、溶解状態のフェルラ酸を少なくとも4質量%以上含むため、組成物がフェルラ酸以外の紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤を含んでいない場合でも、高いSPF値を達成することができる。
【0018】
フェルラ酸はUVA及びUVB吸収作用がある。フェルラ酸は植物の細胞壁等において植物自身を紫外線から防御する役割を有すると考えられている。本実施形態の組成物において、フェルラ酸は、合成品であってもよく、天然由来であってもよい。天然由来のフェルラ酸としては、例えばコメヌカ等の植物由来のフェルラ酸であってよい。
【0019】
本実施形態に係る組成物は、フェルラ酸を溶解状態で含む。フェルラ酸は溶媒の種類によっては、溶解しづらい、析出しやすいといった問題がある。日焼け止め化粧料等の組成物中にフェルラ酸が析出した状態で存在すると、フェルラ酸を溶解状態で含む場合よりも、組成物中に局所的にSPF値の高い部分や低い部分が生じると考えられる。一方、本実施形態に係る組成物は、フェルラ酸を溶解状態で含んでいるため、SPF値を組成物全体において均一に発揮することができると考えられる。
【0020】
本実施形態の組成物において、フェルラ酸は実質的に全量が組成物中に溶解していることが好ましい。本実施形態に係る組成物において、フェルラ酸が溶解しているかどうかは、目視で確認することができる。フェルラ酸が溶解せずに全部又は一部が析出した場合には、析出物を目視で確認することができる。
【0021】
本実施形態に係る組成物におけるフェルラ酸の含有量は、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、9.5質量%以上、9.8質量%以上、又は9.9質量%以上であってよい。本実施形態に係る組成物におけるフェルラ酸の含有量は、9.9質量%以下、9.8質量%以下、9.5質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、又は5質量%以下であってもよい。本実施形態に係る組成物におけるフェルラ酸の含有量は、4~10質量%、5~10質量%、6~10質量%、7~10質量%、8~10質量%、9~10質量%、又は9.5~10質量%であってよい。
【0022】
第一の実施形態において、組成物全量に対する、フェルラ酸及びジプロピレングリコールの合計含有量は、16質量%以上であり、18質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、又は55質量%以上であってよく、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下であってよい。
【0023】
第二の実施形態において、組成物全量に対する、フェルラ酸及びブチレングリコールの合計含有量は、18質量%以上であり、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、又は55質量%以上であってよく、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下であってよい。
【0024】
本実施形態に係る組成物は、フェルラ酸以外の、化粧料に用いられる紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤をいずれも含まなくてもよい。紫外線散乱剤を含まないことにより、組成物を皮膚塗布後に白くなりにくい、衣服等に白移りしにくいといった有利な点がある。紫外線吸収剤は、化学合成紫外線吸収剤であってよい。紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤は、例えば日本国厚生省(現厚生労働省)による「化粧品基準」(2000年)の別表第4に定められたものであってよい。本実施形態に係る組成物は、フェルラ酸以外の、化粧料に用いられる紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤を含んでもよい。
【0025】
化粧料に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸ホモメンチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸2-エチルヘキシルエステル(別名オクトクリレン)、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリスビフェニルトリアジン、パラアミノ安息香酸及びそのエステル、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、4-(2-β-グルコピラノシロキシ)プロポキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、サリチル酸オクチル、2,5-ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、シノキサート、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、テトラヒドロキシベンゾフェノン、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、ドロメトリゾールトリシロキサン、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、フェルラ酸、2,2’-メチレンビス(6-(2Hベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、4-メトキシケイ皮酸2-メチルフェニルが挙げられる。化粧料に用いられる紫外線散乱剤としては、例えば、酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、低温焼成酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム等が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係る組成物のSPF値は、20~40の範囲であってよい。紫外線散乱剤及び化学合成紫外線吸収剤を使用しない既存の日焼け止め化粧料は、SPF値が12~18程度である。一方、本実施形態に係る組成物は高濃度のフェルラ酸を溶解状態で含むため、他の紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤を含まない場合であっても、高いSPF値を達成することが可能である。本実施形態に係る組成物のSPF値は、20以上、25以上、30以上、又は35以上であってよく、40以下、35以下、又は30以下であってよい。
【0027】
組成物のSPF値は、SPFアナライザー(UV-2000s、labsphere社)を用いて測定することができる。
【0028】
本実施形態に係る組成物は、例えば皮膚に塗布して使用することができる。本実施形態に係る組成物は水中油型であるため、肌に塗った後、クレンジング剤を用いなくても、例えば石けんにより、容易に肌から洗い流すことが可能である。
【0029】
本実施形態に係る組成物は水を含むことができる。組成物中の水の量は、例えば、組成物全量に対して30~60質量%であってよく、40~50質量%であってよい。
【0030】
本実施形態に係る組成物は、ジプロピレングリコール及びブチレングリコール以外のポリオールを更に含んでもよい。
【0031】
本実施形態に係る組成物は、上述の成分に加え、さらにその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、乳化剤、乳化安定剤、油剤、皮膚コンディショニング剤、保湿剤、エモリエント剤、閉塞剤、調整剤、整肌成分、香料、防腐剤、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤等が挙げられる。
【0032】
本実施形態に係る組成物のpHは、例えば3~7であってよく、3~5であることが好ましい。
【0033】
本実施形態に係る組成物は、例えば、クリーム、乳液、スプレー等の形態であってよい。
【0034】
本実施形態に係る組成物は、例えば、皮膚、髪、又はその両方に適用されるものであってよい。本実施形態に係る組成物は、例えば、日焼け止め化粧料、リキッドファンデーション、化粧下地、ヘアミスト、ヘアミルク、ヘアエッセンス等であってよい。
【0035】
本実施形態に係る組成物の製造方法は、例えば、ジプロピレングリコール又はブチレングリコールであるポリオールにフェルラ酸を溶解してフェルラ酸のポリオール溶液を得ることと、フェルラ酸の溶解状態を維持したまま、水中油型乳化化粧料組成物を構成するその他成分と該ポリオール溶液を混合して混合液を得ることと、該混合液を乳化して水中油型乳化化粧料組成物を得ることとを含む。
【0036】
本実施形態に係る組成物は、具体的には例えば以下の方法により製造することができる。まず、フェルラ酸と、ジプロピレングリコール又はブチレングリコールであるポリオールとを加熱混合してフェルラ酸を溶解し、フェルラ酸のポリオール溶液を得る。加熱混合時の温度は88~92℃であってよく、89~91℃であることが好ましい。
【0037】
つぎに、フェルラ酸の溶解状態を維持したまま、フェルラ酸のポリオール溶液をその他成分と混合して混合液を得る。フェルラ酸の溶解状態を保つため、フェルラ酸のポリオール溶液をその他成分と混合する際は、混合後の液が70℃以上、例えば70~80℃を保つように加温して行うことが好ましい。
【0038】
その後、混合液を乳化して水中油型乳化化粧料組成物を得る。乳化は、例えばホモミキサーを用いて3000rpmにて混合液を撹拌することにより行うことができる。乳化によって得られる乳化物の温度が高い場合は、乳化物の冷却を行ってもよい。
【0039】
あらかじめ溶媒としてのポリオールにフェルラ酸全量を溶解させておき、その後フェルラ酸が溶解したままの状態で、その他成分と混合し、さらにその後乳化を行うことで、得られる水中油型乳化化粧料組成物を室温に冷却した後でも、組成物中でフェルラ酸が析出せずに溶解状態を保つことができる。
【0040】
本実施形態の組成物の製造方法において、ポリオールがジプロピレングリコールである場合、上記ポリオール溶液におけるフェルラ酸に対するジプロピレングリコールの含有質量比は少なくとも3倍であることが好ましく、ポリオールがブチレングリコールである場合、上記ポリオール溶液におけるフェルラ酸に対するブチレングリコールの含有質量比は少なくとも3.5倍であることが好ましい。
【実施例0041】
(試験例1)
各種ポリオール類について、フェルラ酸10gを溶解するために要した量を調べた。フェルラ酸としては、コメヌカ由来の抽出精製品(築野食品工業社)を用いた。ポリオールとしては、ジプロピレングリコール(DPG-FC、AGC社)及び1,3-ブチレングリコール(1,3BG-UK、ダイセル社)を用いた。各溶媒にフェルラ酸10gを添加し、90℃に加熱して撹拌し、フェルラ酸全量が溶解するまで溶媒を添加し、フェルラ酸溶解に必要な溶媒の量を求めた。結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
(試験例2)
各種ポリオールにおけるフェルラ酸の溶解性を調べた。表2に示すポリオールとフェルラ酸とを3:1の質量比で混合し、90℃に加熱して撹拌し、フェルラ酸の溶解状態を下記の基準で評価した。ポリオールとしては、ジプロピレングリコール(DPG-FC、AGC社)、1,3-ブチレングリコール(1,3BG-UK、ダイセル社)、グリセリン(ADEKAケミカルサプライ社)、ジグリセリン(ジグリセリンS、阪本薬品工業社)、ペンチレングリコール(Hydrolite 5 green、シムライズ社)、プロピレングリコール(プロピレングリコール(外原規)、AGC社)、及びポリエチレングリコール(PEG#20000、日油社)を用いた。溶解状態は、混合物を90℃に加温した状態で目視にて確認した。結果を表2に示す。
○:完全に溶解、△:溶解しているが一部析出、▲:析出、×:不溶
【0044】
【0045】
(試験例3)
表3に示す配合割合(質量%)の処方で、以下の手順にて処方例1、2の水中油型乳化化粧料組成物をそれぞれ調製した。
(1)表3中のA成分を混合し、90℃に加熱してフェルラ酸を溶解させた。
(2)表3中のB成分を混合して70~80℃に加熱した後、(1)の溶解液に加えた。
(3)(2)の混合物に表3中のC成分を加え、撹拌混合した。
(4)表3中のD成分を混合して70~80℃に加熱した後、(3)の混合物に加えた。
(5)表3中のE成分を70~80℃に加熱した後、(4)の混合物に加えた。
(6)ホモミキサーを用いて(5)の混合物を3000rpmで乳化混合した。得られた乳化物を室温に冷却し、水中油型乳化化粧料組成物を得た。
【0046】
【0047】
得られた処方例1、2の水中油型乳化化粧料組成物のpHは、それぞれ3.61、3.71であった。いずれの水中油型乳化化粧料組成物でも、室温でフェルラ酸の析出は確認されなかった。