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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071989
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】キサゲ加工装置及びキサゲ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/00 20060101AFI20240520BHJP
   B23D 79/06 20060101ALI20240520BHJP
   B23P 23/00 20060101ALI20240520BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20240520BHJP
   B23D 79/10 20060101ALI20240520BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B24B27/00 A
B23D79/06
B23P23/00 Z
B24B9/00 602B
B23D79/10
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182550
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 正
(72)【発明者】
【氏名】町田 港
【テーマコード(参考)】
3C049
3C050
3C158
3C707
【Fターム(参考)】
3C049AA02
3C049AA12
3C049AA18
3C049AC02
3C049BA07
3C049CB03
3C050FC09
3C158AA02
3C158AA12
3C158AA18
3C158AC02
3C158BA07
3C158CB03
3C158DA13
3C707AS12
3C707BS12
3C707KS34
3C707KX06
3C707LT08
3C707LU08
3C707MT06
(57)【要約】
【課題】キサゲ加工により生じたバリを除去するバリ取り作業を自動的に行うことのできるキサゲ加工装置を提供する。
【解決手段】スクレーパ22により加工された加工対象面11を研磨する砥石を有する砥石ユニット50と、スクレーパ22を有するスクレーパユニット20と砥石ユニット50が着脱自在に構成され、かつ、スクレーパユニット20と砥石ユニット50を移動させるためのロボットアーム200と、を備えるキサゲ加工装置1であって、砥石ユニット50は、前記砥石の研磨面が加工対象面11に倣って追従するように前記砥石の向きを変更可能に前記砥石を保持する保持機構を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクレーパにより加工された加工対象面を研磨する砥石を有する砥石ユニットと、
前記スクレーパを有するスクレーパユニットと前記砥石ユニットが着脱自在に構成され、かつ、前記スクレーパユニットと前記砥石ユニットを移動させるための移動機構と、
を備えるキサゲ加工装置であって、
前記砥石ユニットは、前記砥石の研磨面が前記加工対象面に倣って追従するように前記砥石の向きを変更可能に前記砥石を保持する保持機構を備えることを特徴とするキサゲ加工装置。
【請求項2】
前記保持機構は、
第1の軸部によって、前記砥石を揺動自在に支持する第1の支持部材と、
第2の軸部によって、前記第1の支持部材を揺動自在に支持する第2の支持部材と、
を備え、
前記研磨面に垂直な方向に見た場合に、前記第1の軸部の中心軸線と前記第2の軸部の中心軸線が直交するように、前記第1の軸部と前記第2の軸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキサゲ加工装置。
【請求項3】
前記第1の支持部材と前記第2の軸部は板バネを介して連結されていることを特徴とする請求項2に記載のキサゲ加工装置。
【請求項4】
前記保持機構は、
前記砥石を支持するための支持部材と、
前記支持部材と前記砥石とを連結するための自在継手と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のキサゲ加工装置。
【請求項5】
前記支持部材と前記自在継手の間隔が一定範囲内で変更可能に構成されると共に、
前記支持部材と前記自在継手の間に、前記間隔の変更に伴って伸縮するバネが設けられていることを特徴とする請求項4に記載のキサゲ加工装置。
【請求項6】
スクレーパにより加工された加工対象面を研磨する砥石を有する砥石ユニットと、
前記スクレーパを有するスクレーパユニットと前記砥石ユニットが着脱自在に構成され、かつ、前記スクレーパユニットと前記砥石ユニットを移動させるための移動機構と、
を備え、前記砥石ユニットは、前記砥石の研磨面が前記加工対象面に倣って追従するように前記砥石の向きを変更可能に前記砥石を保持する保持機構を有するキサゲ加工装置を用いたキサゲ加工方法であって、
前記移動機構によって、前記砥石の研磨面を前記加工対象面に押し当てて倣わせた状態で前記砥石ユニットを移動させて前記加工対象面を研磨することを特徴とするキサゲ加工方法。
【請求項7】
前記スクレーパユニットにより前記加工対象面を加工するキサゲ工程と、
前記移動機構に取り付けられた前記スクレーパユニットを前記砥石ユニットに交換した後に、前記砥石ユニットによって前記加工対象面を研磨加工する研磨工程と、
を有することを特徴とする請求項6に記載のキサゲ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサゲ加工装置及びキサゲ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属を削る手持ち工具の一種で、キサゲと呼ばれる工具が知られている。キサゲ加工の本来の目的は、摺動面を高精度な平面に仕上げることにある。キサゲ加工によって摺動面に形成されたミクロン単位の微小な凹みは、摺動時に潤滑油の油溜まりの作用をするため、摺動面の潤滑性が向上し、摺動時のリンギングを防止する効果がある。このような、手作業によるキサゲ加工は、熟練が要求される作業であり、また、大変な重労働でもあった。そこで、キサゲ加工を自動で行うキサゲ加工装置の開発が進んでいる(特許文献1参照)。
【0003】
上記のキサゲ加工装置によって、加工対象面に加工を行うと、加工後の加工対象面にバリが生じることがある。従来、砥石を用いて手作業によりバリを除去しており、作業性が低下する原因になっている。なお、回転する砥石を用いて自動的にバリ取りを行う装置も知られているが(特許文献2,3参照)、平面状の加工対象面に生じたバリを、これらの特許文献に開示された技術を用いて除去するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-58975号公報
【特許文献2】特開2017-7041号公報
【特許文献3】特開2016-49609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、キサゲ加工により生じたバリを除去するバリ取り作業を自動的に行うことのできるキサゲ加工装置及びキサゲ加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
本発明のキサゲ加工装置は、
スクレーパにより加工された加工対象面を研磨する砥石を有する砥石ユニットと、
前記スクレーパを有するスクレーパユニットと前記砥石ユニットが着脱自在に構成され、かつ、前記スクレーパユニットと前記砥石ユニットを移動させるための移動機構と、
を備えるキサゲ加工装置であって、
前記砥石ユニットは、前記砥石の研磨面が前記加工対象面に倣って追従するように前記砥石の向きを変更可能に前記砥石を保持する保持機構を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、移動機構によりスクレーパユニットを移動させることで、加工対象面に対してキサゲ加工を行うことができる。そして、スクレーパユニットを砥石ユニットに交換して、移動機構により砥石ユニットを移動させることで、研磨加工を行うことができる。従って、キサゲ加工により生じたバリを除去することができる。また、キサゲ加工装置は、上記のように構成された保持機構を備えているので、砥石の研磨面の全体が加工対象面に接した状態で研磨加工がなされる。
【0009】
前記保持機構は、
第1の軸部によって、前記砥石を揺動自在に支持する第1の支持部材と、
第2の軸部によって、前記第1の支持部材を揺動自在に支持する第2の支持部材と、
を備え、
前記研磨面に垂直な方向に見た場合に、前記第1の軸部の中心軸線と前記第2の軸部の中心軸線が直交するように、前記第1の軸部と前記第2の軸部が設けられているとよい。
【0010】
これにより、砥石ユニットにおいては、砥石の研磨面が加工対象面に倣って追従するように砥石の向きが変わる。
【0011】
前記第1の支持部材と前記第2の軸部は板バネを介して連結されているとよい。
【0012】
これにより、適度な力で砥石の研磨面が加工対象面に接するようにすることができる。
【0013】
前記保持機構は、
前記砥石を支持するための支持部材と、
前記支持部材と前記砥石とを連結するための自在継手と、
を備えることも好適である。
【0014】
これにより、砥石ユニットにおいては、砥石の研磨面が加工対象面に倣って追従するように砥石の向きが変わる。
【0015】
前記支持部材と前記自在継手の間隔が一定範囲内で変更可能に構成されると共に、
前記支持部材と前記自在継手の間に、前記間隔の変更に伴って伸縮するバネが設けられているとよい。
【0016】
これにより、適度な力で砥石の研磨面が加工対象面に接するようにすることができる。
【0017】
また、本発明のキサゲ加工方法は、
スクレーパにより加工された加工対象面を研磨する砥石を有する砥石ユニットと、
前記スクレーパを有するスクレーパユニットと前記砥石ユニットが着脱自在に構成され、かつ、前記スクレーパユニットと前記砥石ユニットを移動させるための移動機構と、
を備え、前記砥石ユニットは、前記砥石の研磨面が前記加工対象面に倣って追従するように前記砥石の向きを変更可能に前記砥石を保持する保持機構を有するキサゲ加工装置を用いたキサゲ加工方法であって、
前記移動機構によって、前記砥石の研磨面を前記加工対象面に押し当てて倣わせた状態で前記砥石ユニットを移動させて前記加工対象面を研磨することを特徴とする。
【0018】
前記スクレーパユニットにより前記加工対象面を加工するキサゲ工程と、
前記移動機構に取り付けられた前記スクレーパユニットを前記砥石ユニットに交換した後に、前記砥石ユニットによって前記加工対象面を研磨加工する研磨工程と、
を有するとよい。
【0019】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、キサゲ加工により生じたバリを除去するバリ取り作業を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の実施形態に係るキサゲ加工装置の概略構成を示す図である。
図2図2はロボットハンドに保持されたスクレーパユニットを示す図である。
図3図3はスクレーパの刃をワークの加工対象面に当接させた状態を示す図である。
図4図4は制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は制御装置の機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図6図6は本発明の実施例1に係る研磨ユニットの概略構成図である。
図7図7は本発明の実施例1に係る研磨ユニットの概略構成図である。
図8図8は本発明の実施例2に係る研磨ユニットの概略構成図である。
図9図9は本発明の実施例2に係る研磨ユニットの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための実施形態及び実施例について詳しく説明する。ただし、この実施形態及び実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
(実施形態)
図1図5を参照して、本発明の実施形態に係るキサゲ加工装置及びキサゲ加工方法について説明する。
【0024】
<加工装置の概略構成>
図1は本発明の実施形態に係るキサゲ加工装置1の概略構成を示す図であり、各種構成を斜視図にて示している。図中、矢印Zは鉛直方向を示し、矢印X,Yは、Z方向に垂直かつ互いに直交する方向を示している。なお、X,Y方向を含む面は水平面に対して平行な面である。キサゲ加工装置1は、制御装置100と、移動機構としてのロボットアーム200と、三次元形状計測器300とを備えている。
【0025】
キサゲ加工装置1は、加工対象であるワーク10の加工対象面11に対してキサゲ加工を自動で行う装置である。ワーク10は、例えば、工作機械等を構成する金属製の摺動部材であり、その摺動面を加工対象面11とすることができる。キサゲ加工は金属加工の一種であり、キサゲ工具であるスクレーパ22を用いて加工対象面11の凸部を削り取り、加工対象面11の平面度を高め、さらに油溜まりを形成することによって摺動摩擦係数を低減させることができる。なお、キサゲ加工の本来の目的は、摺動面を高精度な平面に仕上げることにある。キサゲ加工においては、摺動面の摺動時にリンギング(wringing)現象が発生することを防止すべく、キサゲの仕上加工において、摺動面にミクロン単位の微小な多数の窪みを潤滑油の油溜まりとして形成し、摺動面の潤滑性を向上させるようにしている。
【0026】
ロボットアーム200は、例えば、6軸の多関節ロボットアームであり、制御装置100によって制御される。ロボットアーム200は、その先端側にロボットハンド210を有し、このロボットハンド210にスクレーパユニット20やハンドチャック30を着脱自在に保持することが可能である。すなわち、ロボットアーム200は、ロボットハンド210にスクレーパユニット20及びハンドチャック30を選択的に付け替えることができる。そして、ロボットアーム200は、各関節(例えば、第1軸~第6軸)をサーボモータ等によって駆動することで、ロボットハンド210をXYZ三次元直交座標系の任意の位置へと移動させることができる。
【0027】
図2はロボットハンド210に保持されたスクレーパユニット20を示す斜視図である。スクレーパユニット20は、ロボットハンド210に着脱自在なホルダ部21と、ホル
ダ部21と一体に設けられたキサゲ工具であるスクレーパ22とを有するアタッチメントである。スクレーパ22は、可撓性を有する金属材料により形成された略帯板形状のスクレーパ本体23と、スクレーパ本体23の先端側に取り付けられた刃24を有している。刃24は、例えば超硬合金によって形成されており、例えば鋳物で形成されたワーク10の加工対象面11を切削することが可能である。図中の符号Wは刃24の幅寸法を示している。本実施形態に係る刃24の先端25の形状は、弧状(例えば、円弧状や楕円弧状)である。ただし、刃24の先端25の形状はV字状であってもよい。例えば、ロボットハンド210には、刃24の幅寸法W、及び先端25の寸法形状が異なるスクレーパユニット20を付け替えることができる。
【0028】
ワーク10の加工対象面11に対するキサゲ加工は、例えば図1に示す加工用架台C1にワーク10を固定し、ロボットハンド210にスクレーパユニット20を保持した状態でロボットアーム200を制御することによって行われる。加工用架台C1の表面は、X-Y平面に平行な平面状に形成されている。
【0029】
図3は、スクレーパ22の刃24をワーク10の加工対象面11に当接させた状態を側方から見た図である。キサゲ加工では、加工対象面11に刃24を斜めに当てがい、ロボットハンド210を-Z方向に駆動して加工対象面11に刃24を押し付けた状態からロボットハンド210をX-Y平面と平行に、図3中矢印方向に移動させる。これにより、加工対象面11は、ミクロンオーダーあるいはサブミクロンオーダーの厚さずつ切削される。
【0030】
なお、図3に示す符号θは、加工対象面11を刃24によって切削する際に刃24とX-Y平面とがなす角度である(以下、「工具角度」という)。ロボットアーム200は、例えば、キサゲ加工時における工具角度θとロボットハンド210の垂直押し込み量(-Z方向への変位量)δzを制御パラメータとすることで、スクレーパ22における1行程の切削加工で、加工対象面11を切削する切削深さΔDS、及び切削幅WCを調整することができる。ここで、ロボットハンド210の垂直押し込み量(-Z方向への変位量)δzは、例えば、三次元形状計測器300によって計測される加工対象面11の基準点における高さを基準高さ(ゼロ点)として設定される。加工対象面11における基準点の位置(XY座標)は特に限定されない。例えば、加工対象面11の隅部を基準点に設定し、その表面高さを基準高さとしてもよい。なお、スクレーパ本体23は上記の通り可撓性を有するため、スクレーパ本体23が撓んだ状態で加工対象面11の切削が行われる。そのため、加工対象面11の切削深さがミクロンオーダーあるいはサブミクロンオーダーの寸法であるのに対して、切削時におけるロボットハンド210の垂直押し込み量δzはミリオーダーの変位量として設定することができる。
【0031】
次に、ハンドチャック30について説明する。ハンドチャック30は、架台間でワーク10を移動させる際に、ワーク10を把持するためのアタッチメントであり、ロボットハンド210に着脱自在となっている。図1に示すレイアウトでは、例えば、加工用架台C1及び計測用架台C2間でワーク10を移動させる際に用いられる。すなわち、ロボットアーム200は、ロボットハンド210に装着したハンドチャック30によってワーク10を把持することで、加工用架台C1及び計測用架台C2間でワーク10を自由に移動させることができる。
【0032】
計測用架台C2は、三次元形状計測器300を用いてワーク10における加工対象面11の三次元形状を計測する際に、ワーク10を載置するための架台である。計測用架台C2の表面も、X-Y平面に平行な平面状に形成されている。
【0033】
三次元形状計測器300は、例えば、白色光干渉方式の計測器であり、加工対象面11
の三次元形状データ(凹凸形状データ)を高精度に取得することができる。但し、三次元形状計測器300は、加工対象面11の凹凸形状データ(高さデータ)を計測できれば特に限定されず、例えば三次元レーザスキャナ等を用いてもよい。また、三次元形状計測器300は、加工対象面11の凹凸形状データを非接触で取得する「非接触式」の計測器であってもよいし、加工対象面11にプローブ等を接触させることで当該加工対象面11の凹凸形状データを取得する「接触式」の計測器であってもよい。その他、キサゲ加工装置1は、スクレーパユニット20を載置するための工具載置用架台C3や、ハンドチャック30を載置するためのハンドチャック用架台C4等を備えていてもよい。
【0034】
また、ロボットアーム200は、更に、力覚センサ220を備えている。力覚センサ220は、キサゲ加工時に、スクレーパ22に作用する負荷(抵抗)を検出するセンサである。キサゲ加工装置1の制御装置100は、力覚センサ220が出力するキサゲ加工中における負荷の状態を監視(モニタリング)し、必要に応じて、負荷の強弱に基づいたフィードバック制御を行うことができる。なお、上述したロボットアーム200は本発明に係る移動機構の一例であり、移動機構はロボットアーム200に限定されない。本発明に係る移動機構は、保持したスクレーパを動作させることによってワーク10の加工対象面11に対して自動でキサゲ加工を行うことができる構成であれば特に限定されない。
【0035】
そして、本実施形態に係るキサゲ加工装置1は、スクレーパ22により加工された後の加工対象面11に生じ得るバリを除去する砥石ユニット50を備えている。この砥石ユニット50は、スクレーパユニット20等と同様に、ロボットハンド210に着脱自在に保持可能に構成されている。また、キサゲ加工装置1は、砥石ユニット50を載置する砥石用架台C5を備えている。キサゲ加工(キサゲ工程)が終了した後に、ロボットハンド210に装着されていたスクレーパユニット20は取り外されて、ロボットハンド210に砥石ユニット50が装着される。つまり、ロボットハンド210に取り付けられたスクレーパユニット20が砥石ユニット50に交換される。その後、キサゲ加工が行われた加工対象面11に対して研磨加工が行われて(研磨工程)、バリが除去される。なお、加工用架台C1に固定されたワーク10に対して、キサゲ加工が終了した後に、そのまま研磨加工を行ってもよいし、別の架台(不図示)にキサゲ加工後のワーク10を移動させて研磨加工を行うようにしてもよい。
【0036】
<制御装置>
キサゲ加工装置1の制御装置100について説明する。制御装置100は、加工指示データに従ってロボットアーム200を制御し、その結果、ワーク10の加工対象面11に対して加工指示データに応じたキサゲ加工及び研磨加工が行われる。また、制御装置100は、ロボットアーム200を制御するための加工指示データを生成する。すなわち、制御装置100は、ロボットアーム200を制御する装置として機能すると共に、ロボットアーム200を制御する際に用いる加工指示データを生成するための情報処理装置として機能する。但し、ロボットアーム200を制御するための加工指示データは、制御装置100とは別の情報処理装置によって生成されてもよい。この場合、当該情報処理装置が生成した加工指示データを制御装置100が取得し、取得した加工指示データに従って制御装置100がロボットアーム200を制御する。なお、情報処理装置から制御装置100への加工指示データの送信は有線通信または無線通信のいずれによって行われてもよい。
【0037】
図4は制御装置100の構成の一例を示すブロック図である。制御装置100は、例えば、一般的なコンピュータである。制御装置100を構成するコンピュータは、通信インターフェース(通信I/F)101、記憶装置102、入出力装置103、及びプロセッサ104を備え、これらが通信バス105を介して接続されている。
【0038】
通信I/F101は、例えばネットワークカードや通信モジュールであってもよく、所
定のプロトコルに基づき、他のコンピュータ、機器等と通信を行う。例えば、制御装置100は、通信I/F101を介してワーク10における加工対象面11の三次元形状情報を三次元形状計測器300から受信する。
【0039】
記憶装置102は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の主記憶装置、及びHDD(Hard-Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置(二次記憶装置)を含んでいる。主記憶装置は、プロセッサ104が読み出すプログラムや他のコンピュータとの間で送受信する情報を一時的に記憶したり、プロセッサ104の作業領域を確保したりする。補助記憶装置は、プロセッサ104が実行するプログラムや他のコンピュータとの間で送受信する情報等を記憶する。また、補助記憶装置は、リムーバブルメディア(可搬記録媒体)を含んでいてもよい。リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、SDカード、または、CD-ROM、DVDディスク、若しくはブルーレイディスクのようなディスク記録媒体である。記憶装置102(例えば、補助記憶装置)には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、および各種情報テーブル等が格納されている。
【0040】
入出力装置103は、例えば、キーボード、マウス等の入力装置、モニタ等の出力装置、タッチパネルのような入出力装置等のユーザインターフェースである。
【0041】
プロセッサ104は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の演算処理装置であり、プログラムを実行することにより本実施形態に係る各処理を行う。例えば、プロセッサ104が、記憶装置102の補助記憶装置に記憶されたプログラムを主記憶装置にロードして実行することによって、加工指示データを生成するための加工指示データ生成処理等といった各種の処理が実現される。
【0042】
なお、制御装置100は、必ずしも単一の物理的構成によって実現される必要はなく、互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。
【0043】
次に、制御装置100の機能構成について図5に基づいて説明する。図5は、制御装置100の機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御装置100は、加工指示データ生成部110と、制御部111を機能部として有している。制御装置100のプロセッサ104は、記憶装置102の補助記憶装置に記憶されたプログラムを主記憶装置にロードして実行することにより、上述した各機能部を実現する。加工指示データ生成部110は、加工指示データを生成する加工指示データ生成処理を実行する。制御部111は、データ生成部110が生成した加工指示データを取得し、当該加工指示データに従ってロボットアーム200を制御する。
【0044】
以下、上述の研磨加工を行う際に用いる砥石ユニットの具体的な例(実施例)について説明する。
【0045】
(実施例1)
図6及び図7を参照して、本発明の実施例1に係る砥石ユニットについて説明する。図6及び図7は本発明の実施例1に係る研磨ユニットの概略構成図であり、図6(a)は研磨ユニットの平面図、同図(b)は研磨ユニットの裏面図、図7(a)は研磨ユニットの正面図、同図(b)は研磨ユニットの側面図である。
【0046】
砥石ユニット50は、砥石の研磨面がワーク10の加工対象面11に倣って追従するように砥石の向きを変更可能に砥石を保持する保持機構を備えている。この点について、よ
り詳細に説明する。
【0047】
砥石ユニット50は、ロボットハンド210に着脱自在なホルダ部51と、砥石52aを有する砥石部品52と、上記の保持機構とを備えている。この保持機構は、第1の軸部53によって、砥石52a(砥石52a有する砥石部品52)を揺動自在に支持する第1の支持部材54と、第2の軸部55によって、第1の支持部材54を揺動自在に支持する第2の支持部材56とを備えている。なお、第2の支持部材56はホルダ部51に固定されている。
【0048】
第1の軸部53は、砥石部品52に固定された軸部材により構成して、この軸部材を第1の支持部材54に設けられた軸孔(軸受)に対して回転自在に構成することができる。また、第1の軸部53は、第1の支持部材54に固定された軸部材により構成して、この軸部材を砥石部品52に設けられた軸孔(軸受)に対して回転自在に構成することもできる。要は、第1の支持部材54に対して砥石部品52が回転可能になるように第1の軸部53が設けられればよい。また、本実施例においては、第1の支持部材54に、砥石部品52の回転を一定範囲に規制するためのストッパ54a,54bが設けられている。なお、砥石部品52の回転を一定範囲に規制するための構成は、図示の例に限らず、各種公知技術を採用し得る。このように、砥石部品52は、第1の支持部材54に対して回転範囲が一定範囲に規制される。つまり、砥石部品52は、第1の支持部材54に対して揺動自在に支持されるということができる。以上のように、第1の軸部53によって、第1の支持部材54は、砥石52a(砥石52a有する砥石部品52)を揺動自在に支持する。
【0049】
第2の支持部材56は、第2の軸部55(軸部材)を回転自在に支持する軸受56aを備えている。第1の支持部材54と第2の軸部55は板バネ57によって連結されている。なお、本実施例では、第1の支持部材54と第2の軸部55が板バネ57によって直接連結される構成を採用しているが、第1の支持部材54と第2の軸部55が板バネ57を介して連結されていれば、第1の支持部材54と第2の軸部55との間に他の部材が介在されていても構わない。そして、第2の支持部材56に第1の支持部材54の回転を一定範囲に規制するためのストッパ56bが設けられている。なお、第1の支持部材54の回転を一定範囲に規制するための構成は、図示の例に限らず、各種公知技術を採用し得る。このように、第1の支持部材54は、第2の支持部材56に対して回転範囲が一定範囲に規制される。つまり、第1の支持部材54は、第2の支持部材56に対して揺動自在に支持されるということができる。以上のように、第2の軸部55によって、第2の支持部材56は、第1の支持部材54を揺動自在に支持する。
【0050】
ここで、本実施例においては、砥石52aの表面(研磨面)は平面状に構成されている。なお、完全な平面であることを意味している訳ではなく、研磨する機能を発揮するために、表面に微小な凹凸が設けられていることは言うまでもない。そして、砥石52aの研磨面に垂直な方向に見た場合に、第1の軸部53の中心軸線と第2の軸部55の中心軸線が直交するように、第1の軸部53と第2の軸部55は配されている。
【0051】
以上のように構成される砥石ユニット50によれば、ロボットハンド210によって、ワーク10の加工対象面11に向かって砥石ユニット50が移動すると、砥石52aが加工対象面11に突き当たる。更に、ロボットハンド210によって、砥石ユニット50が押されると、板バネ57が撓むことで、砥石ユニット50は弾性的に加工対象面11を押圧する。そして、砥石部品52は、第1の軸部53の中心軸線と第2の軸部55の中心軸線の双方に対して回転(揺動)可能に構成されている(砥石部品52は、ローリング方向とピッチング方向の双方に揺動可能に構成されていると言うこともできる)。そのため、砥石52aの研磨面がワーク10の加工対象面11に倣って追従するように、砥石52aの向きが変わる。より具体的には、平面状の研磨面の全体が、平面状の加工対象面11に
接するように、砥石52aの向きが変わる。そして、制御装置100によって、所定の押圧力で砥石ユニット50を押圧した状態で、例えば、直線的に砥石ユニット50を往復移動させることで、砥石52aの研磨面の全体が加工対象面11に接した状態のまま砥石52aが往復移動する。これにより、加工対象面11が研磨されてバリは除去される。
【0052】
(実施例2)
図8及び図9を参照して、本発明の実施例2に係る砥石ユニットについて説明する。図8及び図9は本発明の実施例2に係る研磨ユニットの概略構成図であり、図8(a)は研磨ユニットの平面図、同図(b)は研磨ユニットの裏面図、図9は研磨ユニットの正面図である。
【0053】
本実施例に係る砥石ユニット50Xにおいても、砥石の研磨面がワーク10の加工対象面11に倣って追従するように砥石の向きを変更可能に砥石を保持する保持機構を備えている。この点について、より詳細に説明する。
【0054】
砥石ユニット50Xは、ロボットハンド210に着脱自在なホルダ部51Xと、砥石52Xaを有する砥石部品52Xと、上記の保持機構とを備えている。なお、本実施例においても、砥石52Xaの表面(研磨面)は平面状に構成されている。保持機構は、砥石52Xaを支持するための支持部材55Xと、支持部材55Xと砥石52Xa(砥石52Xa有する砥石部品52X)とを連結するための自在継手53Xとを備えている。支持部材55Xはホルダ部51Xに固定されている。自在継手53Xについては、各種公知技術を採用し得る、ここでは、その一例を簡単に説明する。
【0055】
図示の自在継手53Xは、砥石部品52Xに固定される第1の継手部品53Xaと、自在継手53Xを支持部材55Xに取り付けるための軸部材54Xに固定される第2の継手部品53Xbと、第1の継手部品53Xaと第2の継手部品53Xbとを連結するための第3の継手部品53Xcとを備えている。第1の継手部品53Xaは第1の軸部53Xdの中心軸線を中心に第3の継手部品53Xcに対して揺動自在(一定の範囲で回転自在)に構成されている。また、第3の継手部品53Xcは第2の軸部53Xeの中心軸線を中心に第2の継手部品53Xbに対して揺動自在(一定の範囲で回転自在)に構成されている。第1の軸部53Xdの中心軸線と第2の軸部53Xeの中心軸線は、直交するように構成されている。以上の構成により、砥石部品52Xは、第1の軸部53Xdの中心軸線と第2の軸部53Xeの中心軸線の双方に対して揺動自在である。これにより、砥石部品52Xは、ローリング方向とピッチング方向の双方に揺動可能となっている。
【0056】
第2の継手部品53Xbに固定された軸部材54Xは、支持部材55Xに設けられた貫通孔55Xaに挿通されている。軸部材54Xの外周面と貫通孔55Xaの内周面との間にはクリアランス(環状の隙間)が設けられており、軸部材54Xは貫通孔55Xa内を直線的に移動可能に構成されている。また、軸部材54Xにはストッパ54Xaが取り付けられることで、軸部材54Xは支持部材55Xから抜け落ちないように構成されている。以上の構成により、第2の継手部品53Xbは、支持部材55Xに対して近づいたり離れたりすることができる。つまり、支持部材55Xと自在継手53Xは、その間隔が一定範囲内で変更可能に構成されている。そして、支持部材55Xと自在継手53Xの間に、上記の間隔の変更に伴って伸縮するバネ56Xが設けられている。具体的には、バネ56X(スプリングバネ)に軸部材54Xが挿通し、かつ、バネ56Xの一端が支持部材55Xに接し、バネ56Xの他端が第2の継手部品53Xbに接するように、バネ56Xが設けられている。
【0057】
以上のように構成される砥石ユニット50Xによれば、ロボットハンド210によって、ワーク10の加工対象面11に向かって砥石ユニット50Xが移動すると、砥石52X
aが加工対象面11に突き当たる。更に、ロボットハンド210によって、砥石ユニット50Xが押されると、バネ56Xが縮むことで、砥石ユニット50Xは弾性的に加工対象面11を押圧する。そして、砥石部品52Xは、第1の軸部53Xdの中心軸線と第2の軸部53Xeの中心軸線の双方に対して回転(揺動)可能に構成されている。そのため、砥石52Xaの研磨面がワーク10の加工対象面11に倣って追従するように砥石52Xaの向きが変わる。より具体的には、平面状の研磨面の全体が、平面状の加工対象面11に接するように、砥石52Xaの向きが変わる。そして、制御装置100によって、所定の押圧力で砥石ユニット50Xを押圧した状態で、例えば、直線的に砥石ユニット50Xを往復移動させることで、砥石52Xaの研磨面の全体が加工対象面11に接した状態のまま砥石52Xaが往復移動する。これにより、加工対象面11が研磨されてバリは除去される。
【0058】
<本実施形態に係るキサゲ加工装置の優れた点>
本実施形態に係るキサゲ加工装置1によれば、ロボットアーム200によりスクレーパユニット20を移動させることで、加工対象面11に対してキサゲ加工を行うことができる。そして、スクレーパユニット20を砥石ユニット50に交換して、ロボットアーム200により砥石ユニット50を移動させることで、研磨加工を行うことができる。従って、キサゲ加工により生じたバリを除去することができる。また、キサゲ加工装置は、実施例1や実施例2で示した保持機構を備えているので、砥石の研磨面の全体が加工対象面11に接した状態で研磨加工がなされる。これにより、平面状の加工対象面11に対しても適切に研磨加工がなされる。以上のように、本実施形態に係るキサゲ加工装置1においては、キサゲ加工により生じたバリを除去するバリ取り作業を自動的に行うことができるので、作業性を向上させることができる。
【0059】
(その他)
保持機構については、上記実施例1,2に示す構成に限定されることはない。砥石の研磨面がワークの加工対象面に倣って追従するように砥石の向きを変更可能に砥石を保持可能であれば、各種公知の機構を採用し得る。
【符号の説明】
【0060】
1:キサゲ加工装置
10:ワーク
11:加工対象面
20:スクレーパユニット
21:ホルダ部
22:スクレーパ
23:スクレーパ本体
24:刃
25:先端
30:ハンドチャック
50,50X:砥石ユニット
51,51X:ホルダ部
52,52X:砥石部品
52a,52Xa:砥石
53:第1の軸部
53X:自在継手
53Xa:第1の継手部品
53Xb:第2の継手部品
53Xc:第3の継手部品
53Xd:第1の軸部
53Xe:第2の軸部
54:第1の支持部材
54X:軸部材
54a,54b,54Xa:ストッパ
55:第2の軸部
55X:支持部材
55Xa:貫通孔
56:第2の支持部材
56a:軸受
56b:ストッパ
56X:バネ
57:板バネ
100:制御装置
200:ロボットアーム
210:ロボットハンド
220:力覚センサ
300:三次元形状計測器
C1:加工用架台
C2:計測用架台
C3:工具載置用架台
C4:ハンドチャック用架台
C5:砥石用架台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9