IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人同志社の特許一覧

<>
  • 特開-スイング解析装置 図1
  • 特開-スイング解析装置 図2
  • 特開-スイング解析装置 図3
  • 特開-スイング解析装置 図4
  • 特開-スイング解析装置 図5
  • 特開-スイング解析装置 図6
  • 特開-スイング解析装置 図7
  • 特開-スイング解析装置 図8
  • 特開-スイング解析装置 図9
  • 特開-スイング解析装置 図10
  • 特開-スイング解析装置 図11
  • 特開-スイング解析装置 図12
  • 特開-スイング解析装置 図13
  • 特開-スイング解析装置 図14
  • 特開-スイング解析装置 図15
  • 特開-スイング解析装置 図16
  • 特開-スイング解析装置 図17
  • 特開-スイング解析装置 図18
  • 特開-スイング解析装置 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071991
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】スイング解析装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
A63B69/36 541P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182552
(22)【出願日】2022-11-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物名 シンポジウム:スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス2022 講演論文集、Vol.31、No.22(2022)、B-7-1 発行者名 日本機械学会 発行日 令和4年10月28日 学会名 シンポジウム:スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス2022 開催日 令和4年11月5日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 弘祐
(72)【発明者】
【氏名】植田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】辻内 伸好
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰人
(57)【要約】
【課題】 打具によるスイングを解析する。
【解決手段】 打具3を使用したプレーヤーの複数のスイング群を、任意の方法で、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類したときの、それぞれのスイング群の共通点を抽出するためのスイング解析装置1であって、打具3のスイング中の加速度、角速度及び角加速度の少なくとも1つの時系列変化を示す波形をウェーブレット変換する変換部と、前記ウェーブレット変換結果に基づいて、各周波数帯域の強度の最大値を抽出する抽出部と、前記抽出された強度の最大値に基づいて、統計解析を行う解析部と、前記統計解析の結果から、前記それぞれのスイング群の共通点を決定する決定部とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打具を使用したプレーヤーの複数のスイング群を、任意の方法で、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類したときの、それぞれのスイング群の共通点を抽出するためのスイング解析装置であって、
前記打具のスイング中の加速度、角速度及び角加速度の少なくとも1つの時系列変化を示す波形をウェーブレット変換する変換部と、
前記ウェーブレット変換された結果に基づいて、各周波数帯域の強度の最大値を抽出する抽出部と、
前記抽出された強度の最大値に基づいて、統計解析を行う解析部と、
前記統計解析の結果から、前記それぞれのスイング群の共通点を決定する決定部とを含む、
スイング解析装置。
【請求項2】
前記打具は、シャフトを備えたゴルフクラブである、請求項1に記載のスイング解析装置。
【請求項3】
前記任意の方法は、前記ゴルフクラブのスイング中の挙動を計測した計測データを取得するステップと、
前記計測データに基づいて、特性が異なるシャフトモデルを備えた少なくとも2種類のゴルフクラブモデルでスイングシミュレーションを行い、それぞれの前記シャフトモデルのスイング中の変形を解析するステップと、
前記解析するステップで得られたそれぞれの前記シャフトモデルの変形挙動に基づいて、前記スイング群を第1タイプ又は第2タイプに分類するステップとを含む、請求項2に記載のスイング解析装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つのゴルフクラブモデルは、先調子シャフトモデルを有する第1ゴルフクラブモデルと、元調子シャフトモデルを有する第2ゴルフクラブモデルとを含む、請求項3に記載のスイング解析装置。
【請求項5】
前記統計解析は、前記最大値を応答変数とする多因子分散分析を含む、請求項1又は2に記載のスイング解析装置。
【請求項6】
前記決定部は、多重比較検定により前記共通点を決定する、請求項1又は2に記載のスイング解析装置。
【請求項7】
前記スイング群は、複数のプレーヤーのスイングを計測したスイング群である、請求項1に記載のスイング解析装置。
【請求項8】
打具を使用したプレーヤーの複数のスイング群を、任意の方法で、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類したときの、それぞれのスイング群の共通点を抽出するためのスイング解析方法であって、
前記打具のスイング中の加速度、角速度及び角加速度の少なくとも1つの時系列変化を示す波形をウェーブレット変換するステップと、
前記ウェーブレット変換された結果に基づいて、各周波数帯域の強度の最大値を抽出するステップと、
前記抽出された強度の最大値に基づいて、統計解析を行うステップと、
前記統計解析の結果から、前記それぞれのスイング群の共通点を決定するステップとを含む、
スイング解析方法。
【請求項9】
打具を使用したプレーヤーの複数のスイング群を、任意の方法で、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類したときの、それぞれのスイング群の共通点を抽出するためのスイング解析プログラムであって、
前記打具のスイング中の加速度、角速度及び角加速度の少なくとも1つの時系列変化を示す波形をウェーブレット変換するステップと、
前記ウェーブレット変換された結果に基づいて、各周波数帯域の強度の最大値を抽出するステップと、
前記抽出された強度の最大値に基づいて、統計解析を行うステップと、
前記統計解析の結果から、前記それぞれのスイング群の共通点を決定するステップと
をコンピュータに実行させる、
スイング解析プログラム。
【請求項10】
スイング解析システムであって、
前記打具のスイングを計測する計測装置と、
請求項1に記載されたスイング解析装置とを含み、
前記スイング解析装置は、前記複数のスイング群を、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類する判別部を含む、スイング解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイング解析装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、下記特許文献1及び2により、ゴルフクラブ等の打具のスイング中の挙動を解析するための装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6851038号公報
【特許文献2】特許第6845433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、特許文献1及び2の技術により、様々な打具について、スイング中の挙動が解析されている。また、近年では、上記解析等を用いて、計測された複数のスイング群を、いくつかのスイング群に分類することが試みられている。この場合、それぞれのスイング群の共通点を抽出して、これを知ることができれば、プレーヤーへの打具のフィッティングや指導等をより効果的に行い得る利点がある。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、任意の方法で分類されたそれぞれのスイング群について、共通点を抽出することができるスイング解析装置等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、打具を使用したプレーヤーの複数のスイング群を、任意の方法で、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類したときの、それぞれのスイング群の共通点を抽出するためのスイング解析装置であって、
前記打具のスイング中の加速度、角速度及び角加速度の少なくとも1つの時系列変化を示す波形をウェーブレット変換する変換部と、
前記ウェーブレット変換された結果に基づいて、各周波数帯域の強度の最大値を抽出する抽出部と、
前記抽出された強度の最大値に基づいて、統計解析を行う解析部と、
前記統計解析の結果から、前記それぞれのスイング群の共通点を決定する決定部とを含む、
スイング解析装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスイング解析装置は、上記の構成を採用したことにより、任意の方法で分類されたそれぞれのスイング群について、共通点を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のスイング解析システムの全体構成図である。
図2】本実施形態のスイング解析方法の手順を示すフローチャートである。
図3】打具としてのゴルフクラブの斜視図である。
図4】先調子シャフトと元調子シャフトの静解析の結果を示すグラフである。
図5】スイング解析装置の一例を示すブロック構成図である。
図6】スイングシミュレーションで用いられるゴルフクラブモデルの概略図である。
図7】(A)は、ゴルフクラブモデルの要部拡大図、(B)はゴルフクラブモデルをグリップエンド側から見た上面図である。
図8】スイングシミュレーションにおける全体座標系及び局所座標系を説明する斜視図である。
図9】スイングシミュレーションによって得られたシャフトモデルの先端の局所座標系x軸方向の変形量と時刻との関係を示すグラフである。
図10】スイングシミュレーションによって得られたシャフトモデルの先端の局所座標系y軸方向の変形量と時刻との関係を示すグラフである。
図11】ゴルファーAのスイングシミュレーションの結果であり、(A)はシャフトモデルの先端の局所座標系x軸方向の変形量と時刻との関係を示すグラフであり、(B)はシャフトモデルの先端の局所座標系y軸方向の変形量と時刻との関係を示すグラフである。
図12】ゴルファーBのスイングシミュレーションの結果であり、(A)はシャフトモデルの先端の局所座標系x軸方向の変形量と時刻との関係を示すグラフであり、(B)はシャフトモデルの先端の局所座標系y軸方向の変形量と時刻との関係を示すグラフである。
図13】本実施形態のスイングタイプの判別の手順を示すフローチャートである。
図14】本実施形態のスイング解析方法を活用した推奨シャフトのマップ図である。
図15】本実施形態のスイングの共通点を抽出する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図16】(A)は、あるスイングシミュレーションのシャフトモデルの先端の局所座標系y軸方向の加速度と、時刻との関係を示すグラフ、(B)は、(A)のグラフ波形をウェーブレット変換したカラーマップである。
図17】シャフトモデルの先端の加速度の波形のウェーブレット解析結果の多因子分散分析結果を示し、(A)はx軸方向、(B)はy軸方向、(C)はz軸方向の結果をそれぞれ示す。
図18】シャフトモデルの先端の角速度の波形のウェーブレット解析結果の多因子分散分析結果を示し、(A)はx軸周り、(B)はy軸周り、(C)はz軸周りの結果をそれぞれ示す。
図19】シャフトモデルの先端の角加速度の波形のウェーブレット解析結果の多因子分散分析結果を示し、(A)はx軸周り、(B)はy軸周り、(C)はz軸周りの結果をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が説明される。以下の実施形態で説明された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、これらの具体的な実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0010】
[スイング解析システム]
図1は、本実施形態のスイング解析装置1を含むスイング解析システム100の全体構成図を示す。スイング解析システム100は、例えば、スイング解析装置1と計測装置2とを含んで構成される。スイング解析装置1は、シャフト31を備える打具3のスイング中の挙動を解析するための装置である。
【0011】
本実施形態のスイング解析システム100では、打具3として、ゴルフクラブ30が使用される。したがって、本実施形態のスイング解析システム100は、プレーヤーとしてのゴルファーに対するゴルフクラブ30のスイング解析に好適に実施される。以下の説明は、その態様を前提としている点に留意されたい。ただし、打具3としては、ゴルフクラブ以外にも、各種のラケット等が採用されても良い。
【0012】
[スイング解析の流れ]
図2は、本実施形態のスイング解析システム100を用いたスイング解析の手順を示すフローチャートであり、その概要は、次のとおりである。
(1)スイングの分類(ステップS1):
まず、複数のスイング群が、任意の方法で、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類される。
(2)スイング群の共通点の抽出(ステップS400):
次に、スイング解析装置1は、分類された第1タイプのスイング群の共通点、及び、第2タイプのスイング群の共通点をそれぞれ抽出する。
(3)解析結果の出力(ステップS500):
スイング解析装置1は、スイング群のそれぞれの共通点等を出力する。
【0013】
ゴルファーのスイングをいくつかに分類し、それぞれのスイング群の共通点を抽出することは、例えば、当該スイングに適したシャフトやゴルフクラブのフィッティング、スイングフォームの改善、さらには、ゴルフ用品の開発等、様々な用途に役立つ利点がある。以下、上記の各処理(1)ないし(3)の順に、本実施形態のスイング解析装置1、それを含むスイング解析システム100、スイング解析方法などが詳細に説明される。
【0014】
(1)スイングの分類(ステップS1):
本実施形態において、スイングの分類は、任意の方法を採用することができるが、本実施形態では、例えば、次の手順で行われる。
(1a)スイングの計測(ステップS100):
計測装置2は、スイング中のゴルフクラブ30の特定の部位(例えば、グリップ33やシャフト31等)の挙動を計測する。これにより、計測装置2は、ゴルフクラブ30のスイングを特定するための計測データを取得する。
(1b)複数種類の仮想打具を用いたシミュレーション(ステップS200):
スイング解析装置1は、計測データに基づき、仮想打具としてのゴルフクラブモデルを用いたシミュレーション(以下、「スイングシミュレーション」ということがある。)を行う。スイングシミュレーションでは、特性が異なるシャフトモデルを備えた少なくとも2種類のゴルフクラブモデルが使用される。この結果、少なくとも2種類のゴルフクラブモデルのそれぞれのシャフトモデルのスイング中の変形が解析され得る。
(1c)スイングのタイプの判別(ステップS300):
スイング解析装置1は、スイングシミュレーションで得られた少なくとも2種類のゴルフクラブモデルのシャフトモデルのそれぞれの変形挙動に基づき、スイングのタイプを判別する(S300)。
以下、これらの各内容が詳述される。
【0015】
[(1a)スイングの計測]
図1に示されるように、ゴルフクラブのスイングの計測は、例えば、ゴルファー5によるゴルフクラブ30の実際のスイングを計測することで行われる。一般に、ゴルファー5のスイングは、アドレス、トップ、インパクト、フィニッシュをその順に含む。本実施形態のスイングの計測は、アドレスからフィニッシュまでのスイングの全区間が、所定の短いサンプリング周期で計測される。なお、ボールインパクト時のスイングへの影響をなくすために、ゴルフボール6は、実際のゴルフボールに代えて、スポンジボール等の柔らかいボールが採用されても良い。
【0016】
ゴルファー5(以下、「テスター」という場合がある。)は、スイングのタイプを判別したい様々なゴルファーが対象である。したがって、計測対象のゴルファーは、特に制限されるものではない。
【0017】
図3は、典型的なゴルフクラブ30を示す。図3に示されるように、ゴルフクラブ30は、シャフト31と、シャフト31の一端(「先端」ということがある。)に固着されたクラブヘッド32(この例では、ウッド型である)と、シャフト31の他端に固着されたグリップ33とを含む。シャフト31は、ゴルフクラブ30のスイング中、特に大きく変形する部分である。
【0018】
ゴルフクラブ30は、ウッド型に制限されず、市販されている様々なものを用いることができる。他の例では、ゴルフクラブ30は、クラブヘッド着脱機構を備えることができる。このようなゴルフクラブ30は、クラブヘッド32として、テスターが通常使用しているクラブヘッドを装着することができ、テスターに普段通りのスイングを行わせるのに役立つ。
【0019】
スイング計測に使用されるゴルフクラブ30は、1種類でも良いし、2種類以上が準備されても良い。後者の場合、例えば、シャフト31の特性が異なるゴルフクラブを用意することができる。シャフトの特性としては、例えば、キックポイントが挙げられる。「キックポイント」は、シャフトの両端から軸方向の圧縮荷重を加えたときに最大撓みが発生する位置を意味し、このキックポイントがシャフトの軸方向中心よりもクラブヘッド側に位置するシャフトは先調子と呼ばれ、シャフトの軸方向中心よりもグリップ側に位置するシャフトは元調子と呼ばれる。一般に、先調子シャフトは、高い弾道を提供する傾向があり、元調子シャフトは、低い弾道を提供する傾向がある。図4は、シャフト31の曲げに関する特性を示すために、シャフト31を水平としてグリップ側の端部(Butt)を固定し、シャフトの反対側の端部(Tip)に7(N)の垂直荷重を付加したときの変形量を示すグラフである。横軸は、シャフト31の軸方向、縦軸は、シャフト31の垂直方向の変形量を示す。図4から明らかなように、元調子シャフトは、ゴルファーの手元側で変形が発生しやすいことから、たわみ角が大きく、全体的に変形量が大きい。スイング計測時には、ゴルファー5が自らのスイングに応じたゴルフクラブを適宜選択できる。
【0020】
スイングの計測は、ゴルフクラブ30の時系列の挙動であるスイングを計測できる限り、本願の出願前に知られている様々な方法及び装置が採用され得る。
【0021】
スイングの計測は、例えば、上記特許文献1(特許第6851038号公報)に記載された計測方法のいずれかが採用され得る。この計測方法の1つは、ゴルフクラブ30のシャフト31又はグリップ33等に取り付けられた慣性センサユニット(図示省略)を用いる方法である。慣性センサユニットにより、例えば、スイング中のグリップエンドに予め定義された局所座標系(後述)における3軸方向の加速度、角速度及び地磁気に関する時系列のデータ(計測データ)が取得され得る。
【0022】
スイング計測の他の例として、ゴルファー5のスイングを、距離画像センサ(図示省略)を用いて撮像する方法が挙げられる。距離画像センサにより、例えば、スイング中のゴルファー及びゴルフクラブを含むIR画像及び深度画像を含む2系統の時系列の動画データ(計測データ)が取得され得る。計測精度を高めるために、距離画像センサは、上記慣性センサユニットと併用されても良い。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態のスイング計測には、計測装置2として、例えば、光学式のモーションキャプチャーシステムが用いられる。このシステムでは、例えば、複数の反射マーカー2Cが取り付けられたゴルフクラブ30と、複数のカメラ2Aと、コンピュータ2Bとが使用される。ゴルファーが、反射マーカー2Cを備えたゴルフクラブ30でスイングすると、その様子が複数のカメラ2Aによって撮像される。モーションキャプチャーシステムのコンピュータ2Bは、各カメラ2Aで撮像された動画データを収集し、三角測量の原理で解析し、各反射マーカー2Cの三次元座標を計算する。これにより、計測データとして、スイング中のゴルフクラブ30の三次元座標が取得され得る。
【0024】
本実施形態では、各反射マーカー2Cの位置は、予め定められた絶対座標系(X-Y-Z)で特定される。図1に示されるように、絶対座標系は、原点Oが打撃されるゴルフボール6の中心とされ、X軸はゴルファー5の腹から背の方向(この方向が正)とされ、Y軸はゴルフボール6の飛球線(目標飛球線)の方向(この方向が正)とされ、Z軸は鉛直方向上向き(この方向が正)とされる。
【0025】
図3は、反射マーカー2Cの一例を示す。図3に示されるように、マーカー付きのゴルフクラブ30は、例えば、グリップ付近に治具2Dが装着される。治具2Dは、シャフト軸方向と直交する向きに突出する2本の棒状部材2Eを備える。2本の棒状部材2Eは、互いに直交している。棒状部材2Eの先端には、それぞれ球体状の反射マーカー2Cが固着されている。また、棒状部材2Eの根元位置、かつ、シャフト31を挟んで反対側の位置に、反射マーカー2Cが取り付けられている。さらに、シャフト31のクラブヘッド32側の端部にも、反射マーカー2Cが取り付けられている。
【0026】
本実施形態では、ゴルフクラブ30に局所座標系(x-y-z)が定義される。局所座標系は、原点oがゴルフクラブ30のグリップエンドとされ、x軸はクラブヘッド32のヒールHからトウTに向かう方向aとされ、y軸はクラブヘッド32のフェース32aに垂直かつ飛球線の方向bとされ、z軸はシャフト軸方向とされる。そして、2つの棒状部材2Eの軸方向は、局所座標系のx軸及びy軸とそれぞれ平行とされる。
【0027】
以上のような様々な方法で得られたスイングの計測データは、通信線、無線、記憶デバイス等を介して、スイング解析装置1へと提供される。
【0028】
[(1b)複数種類のゴルフクラブモデルを用いたシミュレーション]
次に、スイング解析装置1は、スイングの計測データに基づいて、特性が異なるシャフトモデルを備えた少なくとも2種類のゴルフクラブモデルを用いたスイングシミュレーションを行う。
【0029】
スイング解析装置1は、図1に例示されるように、例えば、汎用のコンピュータを用いて構成される。コンピュータは、例えば、デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォンを含む。これらのコンピュータデバイスに、本実施形態のスイング解析プログラムをインストールすることにより、スイング解析装置1が構成される。したがって、スイング解析プログラムは、計測装置から提供された計測データに基づいて、スイング解析装置1に後述する動作を実行させる。
【0030】
図5は、スイング解析装置1のブロック構成図である。図5に示されるように、スイング解析装置1は、表示部11、入力部12、記憶部13、制御部14及び通信部15を備える。これらの各部は、相互に通信可能なように、バス線16を介して接続される。
【0031】
表示部11は、例えば、ディスプレイ等で構成される。表示部11は、スイング解析結果等を視覚情報としてユーザーに表示する。ユーザーには、スイングを計測されたゴルファー、インストラクター、ゴルフ用品の開発者等、ゴルフスイングの解析結果を必要とするあらゆる者が含まれる。入力部12は、マウス、キーボード、タッチパネル等で構成される。スイング解析装置1は、入力部12を介して、ユーザーからの操作、指示等を受け取る。記憶部13は、ハードディスクやSSD等の不揮発性メモリ等で構成される。記憶部13には、スイング解析プログラム13aや、計測装置2から受け取った計測データ13b等が保存される。制御部14は、例えば、CPU、ROM及びRAM等から構成される。制御部14は、記憶部13からスイング解析プログラム13aを読み込んで所定の処理を実行するように機能する。これにより、制御部14は、仮想的に、取得部14a、解析部14b、判別部14c及び表示制御部14d等として機能する(詳細は後述)。通信部15は、計測装置2等の外部のデバイスとの間でデータを送受信するインターフェースである。
【0032】
[ゴルフクラブモデルの詳細]
スイングシミュレーションでは、上述の通り、特性が異なる少なくとも2種類のゴルフクラブモデル(仮想打具)が使用される。
【0033】
ゴルフクラブモデルは、有限要素法に基づいたシミュレーション用の数値モデルである。典型的なゴルフクラブモデルは、ゴルフクラブを、有限個の要素でモデル化することで得られる。そして、あるスイングを特定する1つの計測データが得られれば、当該計測データに基づいて、複数種類のゴルフクラブモデルをスイングさせるスイングシミュレーションが可能となる。これにより、簡単な方法で、複数種類のゴルフクラブについて、スイング中のシャフト等の変形挙動が解析可能となる。
【0034】
図6は、1つのゴルフクラブモデル20を視覚化して示す。本実施形態のゴルフクラブモデル20は、実際のゴルフクラブ30のシャフト31、クラブヘッド32及びグリップ33をそれぞれ有限要素法に従う要素でモデル化したシャフトモデル21、クラブヘッドモデル22及びグリップモデル23を含む。
【0035】
シャフトモデル21及びグリップモデル23は、例えば、それぞれ、シャフト軸方向において、オイラー・ベルヌーイ梁からなる複数の多段円筒梁要素で分割されている。本実施形態では、グリップモデル23は、シャフト軸方向に6個の要素に分割され、シャフトモデル21が16個の要素に分割されている。クラブヘッドモデル22は、シャフトモデル21の先端の節点からヘッド重心の位置までの剛体要素でモデル化されている。
【0036】
図7(A)は、図6のシャフトモデルのi番目の要素である第i要素を拡大して示す。図7(B)は、図7(A)の第i節点からクラブヘッドモデル22の側を、シャフト軸方向に見た図である。第i要素の両端の節点は、それぞれ、第i節点及び第(i+1)節点とされる。無変形時における第i節点(各節点)に物体固定の局所座標系が定義される。局所座標系は、先に説明したゴルフクラブに定義された局所座標系と同様であり、x軸はクラブヘッドモデル22のヒールからトウに向かう方向(この方向が正)とされ、y軸はクラブヘッドモデル22のフェースに垂直かつ飛球線の方向(この方向が正)とされ、z軸はシャフト軸方向であり、クラブヘッドモデル22からグリップモデル23へ向かう方向(この方向が正)とされる。
【0037】
また、本実施形態では、特性が異なるシャフトモデル21を備えた少なくとも2種類のゴルフクラブモデル20が用意される。前記特性は、例えば、キックポイントとされる。より具体的には、少なくとも2つのゴルフクラブモデル20は、図6にまとめて表示されるように、第1ゴルフクラブモデル20Aと、第2ゴルフクラブモデル20Bとを含み、第1ゴルフクラブモデル20Aは、先調子シャフトモデル21Aを有し、第2ゴルフクラブモデル20Bは、元調子シャフトモデル21Bを有する。これらの第1及び第2ゴルフクラブモデル20A及び20B(以下、これらを総称する場合、単にゴルフクラブモデル20という場合がある)は、各々のシャフトモデル21A及び21Bを構成する梁要素の物性値として、異なる曲げ剛性等を入力することにより、図4に示したように、互いに異なる曲げ特性を持つことができる。
【0038】
また、本実施形態において、第1ゴルフクラブモデル20A及び第2ゴルフクラブモデル20Bは、キックポイントの位置が互いに異なっているが、それ以外のシャフト重量、シャフト長さ等は、同一とされる。
【0039】
スイングシミュレーションでは、まず、スイング解析装置1の取得部14aが記憶部13からスイングの計測データ13bを読み込む。次に、スイング解析装置1の解析部14bは、計測データに基づいて、第1ゴルフクラブモデル20A及び第2ゴルフクラブモデル20Bを仮想的にスイングさせる。したがって、本実施形態では、1つのスイングに基づいて、特性が異なる少なくとも2つのゴルフクラブモデル20A及び20Bのスイングシミュレーションが行われ、このときの、それぞれのシャフトモデル21A及び21Bの変形挙動をそれぞれ得ることができる。
【0040】
上述のスイングシミュレーションは、特に制限されるものではなく、本願の出願前に公知である様々な方法を使用して実施され得る。好ましくは、上記特許文献1に記載された方法が採用される。さらに好ましくは、上記特許文献1に記載された方法に、上記特許文献2に記載された方法をさらに考慮したものとすることができる。これらについては、既に公知の方法であるため、以下、簡単に概要を述べる。
【0041】
スイングシミュレーションでは、ゴルフクラブモデル20について運動方程式が構築される。図8は、運動方程式を構築する際の絶対座標系と、局所座標系との関係を示す。図8に示されるように、絶対座標系は、図1のところで説明した座標系と一致している。すなわち、絶対座標系の原点Oは、打撃されることになる仮想ボール61の中心とされ、X軸は仮想ゴルファーの腹から背の方向(この方向が正)とされ、Y軸はボール飛球線の方向(この方向が正)とされ、Z軸は鉛直方向上向きの方向(この方向が正)とされる。一方、局所座標系は、ゴルフクラブモデル20に固定された座標系であり、原点oはグリップモデル23の後端であるグリップエンドである。
【0042】
ここで、絶対座標系の原点Oから局所座標系の原点oまでの幾何ベクトルをr、局所座標系の原点oからゴルフクラブモデル20の節点までの幾何ベクトルをρ、節点からの第i要素までの変位を表す幾何ベクトルをd、第i要素の形状関数を[N]とする。また、運動エネルギ、ひずみエネルギ、形状関数より、各要素の質量マトリク[M]、剛性マトリクス[K]を算出し、減衰マトリクス[C]はモード減衰を考慮して算出すると、第i要素における運動方程式は、以下によって表すことができる.
【0043】
【数1】
【0044】
次に、クラブヘッドモデル22の運動方程式が構築される。図8に示す局所座標系の原点oから無変形時のシャフトモデル21の先端の節点までの幾何ベクトルをρ、シャフトモデルの先端の節点からヘッド重心までの変位を表す幾何ベクトルをd、回転を表す幾何ベクトルをθとすると、クラブヘッドモデル22の運動方程式は式(2)及び(3)によって表される。
【0045】
【数2】
【0046】
式(3)において、[J]はクラブヘッドモデル22のヘッド重心周りの慣性モーメントテンソルを示す。式(1)~(3)によって示された各要素のマトリクスを全要素で加算すると、ゴルフクラブモデル20の全系の運動方程式は以下の式によって示される。
【0047】
【数3】
【0048】
式(6)の[C]は減衰マトリクスであり、シャフトモデル21の要素のM96×96、K96×96から、拘束モードマトリクス[φ]、固有角振動数、モード減衰比を対角にまとめたマトリクス[Ω]、[ζ]を算出することにより得られる。また、式(7)における[K]は、把持剛性を示す剛性マトリクスを示し、式(8)におけるFはスイング中のゴルフクラブモデル20の各要素に発生する慣性力を示す。
【0049】
スイングシミュレーションによる変形挙動の算出精度向上のために、例えば、実際のグリップ33の並進加速度がクラブヘッド32に与える慣性トルクを考慮することができる。クラブヘッド32はシャフト軸心からオフセットされていることから、グリップ33の並進加速度が発生した際には、ヘッド重心まわりに慣性トルクが発生すると考えられる。並進加速度によって発生するトルクTheadは、以下の式によって算出することができる。
【0050】
【数4】
【0051】
また、上述のゴルフクラブモデル20は、局所座標系の原点oがグリップエンドに設定されている。この場合、ゴルフクラブモデル20は、グリップエンドを中心に回転する。一方、実際のゴルフスイングでは、ゴルフクラブ30は、グリップ33の把持された部分を中心に回転する。したがって、より正確なスイングシミュレーションを行うために、式(8)及び(9)におけるグリップ並進加速度から、回転中心位置の差分によって発生する回転運動成分が除去されても良い。例えば、グリップエンドからグリップモデル23の把持部までの幾何ベクトルをhとすると、補正したグリップ並進加速度は以下の式で表される。
【0052】
【数5】
【0053】
次に、スイング解析装置1は、計測データ13bから、スイング中の局所座標系におけるグリップエンドの位置情報を取り出し、この位置情報を微分し、グリップエンドの速度、加速度を算出することができる。また、スイング解析装置1は、局所座標系でのゴルフクラブ30の姿勢をクォータニオンによって表現し、姿勢変化から角速度を算出し、微分によって、ゴルフクラブ30のグリップエンドでの角加速度を算出することができる。なお、本実施形態では、グリップエンドに反射マーカー2Cが設けられていないが、グリップエンドと反射マーカー2Cが設けられた治具2Dとの軸方向の距離は既知であるため、グリップエンドでの位置情報を容易に導出することができる。例えば、2本の棒状部材2Eに沿った2つのベクトルの外積のベクトルを求め、このベクトルと前記位置関係とから、グリップエンドの位置情報を導出することができる。
【0054】
本実施形態のスイング解析装置1の解析部14bは、上で求めたグリップエンドの加速度を式(10)によって補正し、角速度、角加速度とともに式(8)に入力することでスイング中に発生する慣性力を算出する。また、解析部14bは、算出した慣性力を式(4)の運動方程式に入力し、ニューマークβ法(β=0.25)によって数値積分を行い、それぞれのシャフトモデル21の変形挙動を求めることができる。以上のようなスイングシミュレーションは、第1ゴルフクラブモデル20A及び第2ゴルフクラブモデル20Bそれぞれについて行われる。
【0055】
[スイング局面]
本実施形態において、スイングの一連の動きから、ゴルフスイングを評価するためにスイングの局面が定義される。スイングの局面は、アドレスタイミング、トップオブスイングタイミング、ダウン9時タイミング及びインパクトタイミングを含む。
【0056】
アドレスタイミングは、ゴルフクラブの静止時からバックスイングが開始されたタイミングとして定義される。トップオブスイングタイミングは、バックスイング中において、ゴルファーを正面から見たときのグリップの平面角度が最大になり、かつ、静止したトップオブスイング(Top)のタイミングとして定義される。ダウン9時タイミング(Down 9)は、トップオブスイング以後、ダウンスイングが開始され、グリップが地面と平行になったタイミングとして定義される。インパクトタイミング(Impact)は、ボールがヘッドとの衝突(インパクト)によって動いたタイミングとして定義される。以後、スイングシミュレーションの結果データは、インパクトタイミングを時刻0として表示される。
【0057】
[スイングシミュレーション結果の概要]
図9及び図10は、スイングシミュレーションによって算出されたシャフトモデル21の先端(クラブヘッドモデル22との接続部)における変形挙動の一例である。図9は、局所座標系のx軸方向の変形挙動であり、図10は、同y軸方向の変形挙動である。また、図9及び図10は、実線でスイングシミュレーションの結果を示し、破線はモーションキャプチャーシステムで得られた計測データ(シャフト先端のマーカの位置データ)に基づいて算出されたシャフトの先端の変形挙動を示す。
【0058】
図9及び図10から明らかなように、スイングシミュレーションによって算出された変形挙動と、モーションキャプチャから求めた変形挙動とは近似している。両者の差の最大値は、トップオブスイング(Top)からダウン9時タイミング(Down 9)までの間で0.021mである。変形挙動の再現度を評価するために、アベレージゴルファー17名でスイング計測をそれぞれ8試行し、シャフトの変形挙動について、スイング計測の結果と、スイングシミュレーションの結果とからRMSE値(Root Mean Squared Error)が算出された。その結果、全試行におけるRMSE値の平均値は約0.014mであり、本実施形態のスイングシミュレーションは、スイング中の変形挙動を精度よく推定できていることが確認できる。
【0059】
[(1c)スイングのタイプの分類]
次に、スイング解析装置1の判別部14cは、スイングシミュレーションで得られた第1ゴルフクラブモデル20A及び第2ゴルフクラブモデル20Bのそれぞれのシャフトモデル21A及び21Bの変形挙動に基づき、スイングのタイプを分類ないし判別する(図2のステップS300)。
【0060】
実際のゴルフプレイでは、クラブヘッド32がゴルフボール6に衝突する(インパクト)ことでゴルフボール6を飛ばす。したがって、スイングタイプを判別する場合、インパクト付近のシャフト31の変形挙動に着目することが重要である。また、種々の研究の結果、シャフト31のキックポイントが変化すると、シャフト31の変形挙動が異なることも判明している。以上より、本実施形態では、スイングタイプを判別するために、キックポイントが変化した場合のインパクト付近のシャフトモデル21の変形挙動の違いに着目した。具体的には、キックポイントが変化した場合のインパクトタイミングでのシャフトモデル21の変形量の違いに着目する。
【0061】
図11(A)及び(B)は、ゴルファーAのスイングを、それぞれ第1ゴルフクラブモデル20A及び第2ゴルフクラブモデル20Bに適用してスイングシミュレーションを行ったときの、それぞれのシャフトモデル21の先端の変形挙動を示す。図12(A)及び(B)は、ゴルファーBのスイングを、それぞれ第1ゴルフクラブモデル20A及び第2ゴルフクラブモデル20Bに適用してスイングシミュレーションを行ったときのシャフトモデル21の先端の変形挙動を示す。図11(A)及び図12(A)において、縦軸は、局所座標系のx軸方向のシャフトモデル変形量であり、横軸はインパクトタイミングを0とした時刻である。また、図11(B)及び図12(B)において、縦軸は局所座標系のy軸方向のシャフトモデル変形量であり、横軸はインパクトタイミングを0とした時刻である。さらに、図11及び図12において、実線は、先調子シャフトモデル21Aを有する第1ゴルフクラブモデル20Aで解析を行った結果であり、破線は、元調子シャフトモデル21Bを有する第2ゴルフクラブモデル20Bで解析を行った結果である。なお、ゴルファーA及びBのスイングは、いずれも、先調子のシャフト31を有するゴルフクラブ30で計測された。
【0062】
まず、図11が参照される。ゴルファーAに関して、インパクトタイミングでのシャフトモデル変形量の絶対値は、x軸方向では、元調子シャフトモデル21Bを備えた第2ゴルフクラブモデル20Bの方が大きい一方、y軸方向では、先調子シャフトモデル21Aを備えた第1ゴルフクラブモデル20Aの方が大きい。
【0063】
次に、図12が参照される。ゴルファーBに関して、インパクトタイミングでのシャフトモデル変形量の絶対値は、x軸方向では、やはり元調子シャフトモデル21Bを備えた第2ゴルフクラブモデル20Bの方が大きいが、y軸方向では、ゴルファーAとは対照的に、元調子シャフトモデル21Bを備えた第2ゴルフクラブモデル20Bの方が大きい。つまり、ゴルファーBでは、x軸方向及びy軸方向ともに、元調子シャフトモデル21Bを備えた第2ゴルフクラブモデル20Bの方が、インパクトタイミングにおいて、変形量が大きいことが分かる。
【0064】
ここで、ゴルファーA及びB以外の15名のゴルファーについても同様の検証を行ったところ、シャフトモデル21の先端のx軸方向の変形量については、15名のゴルファー全員が、元調子シャフトモデル21Bを備えた第2ゴルフクラブモデル20Bの方が、先調子シャフトモデル21Aを備えた第1ゴルフクラブモデル20Aよりも大きくなった。これは、図4に示したように、実際の先調子シャフト及び元調子シャフトの静解析の結果と整合する。
【0065】
一方、シャフトモデルのy軸方向の変形量に関しては、ゴルファーA及びBを含む17名中、8名のゴルファーにおいて、先調子シャフトモデル21Aの変形量が大きく、図4に示した静解析の結果と異なる傾向がある。これらの8名のゴルファーは、インパクトタイミングにかけて、先調子シャフトのy軸方向(すなわち、飛球線方向)の変形量を、より増加させるスイングを行っていると推定される。
【0066】
したがって、シャフトモデルのy軸方向の変形の傾向は、ゴルファー(すなわち、スイング)により異なることが分かる。より詳しくは、あるスイングに基づいて、キックポイントが異なる第1及び第2ゴルフクラブモデル20A及び20Bでスイングシミュレーションを行った場合、シャフトモデルのy軸方向の変形量に関して、第1ゴルフクラブモデル20A又は第2ゴルフクラブモデル20Bのいずれが大きくなるかに着目することで、当該スイングを分類することができる。なお、全17名のゴルファーについて、元調子のシャフト31を備えたゴルフクラブでスイングを計測した計測データを使用して上記と同様の検証を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。
【0067】
[スイング判別手順]
本実施形態では、以上の検証結果を踏まえて、スイング解析装置1の判別部14cは、ゴルファーのスイングのタイプを、図13に示す手順により、第1タイプ又は第2タイプに判別する。
【0068】
まず、スイング解析装置1の判別部14cは、第1ゴルフクラブモデル20Aのスイングシミュレーションの結果から、先調子シャフトモデル21Aのインパクトタイミングにおけるy軸方向の変形量Dを取得する(ステップS301)。この値は、RAM等に記憶される。
【0069】
次に、判別部14cは、第2ゴルフクラブモデル20Bのスイングシミュレーションの結果から、元調子シャフトモデル21Bのスイング中のインパクトタイミングにおけるy軸方向の変形量Dを取得する(ステップS302)。この値は、RAM等に記憶される。
【0070】
次に、判別部14cは、上記2つの変形量D、Dを比較する(ステップS303)。判別部14cは、先調子シャフトモデル21Aのy軸方向の変形量Dが、元調子シャフトモデル21Bのy軸方向の変形量Dよりも大きいと判断した場合(ステップS303でYes)、当該スイングを第1タイプと判別する(ステップS304)。一方、判別部14cは、先調子シャフトモデル21Aのy軸方向の変形量Dが、元調子シャフトモデルのy軸方向ヘッド前後方向の変形量Dよりも大きくないと判断した場合(ステップS303でNo)、当該スイングを第2タイプと判別する(ステップS305)。
【0071】
以上のように、本実施形態のスイング解析装置1は、ゴルファーのスイングを、第1タイプ、又は、第2タイプに分類ないし判別することができる。ゴルファーのスイングのタイプを判別することにより、例えば、当該スイングに適したシャフトやゴルフクラブのフィッティングを行うことができる。一例として、第1タイプのスイングと判別されたゴルファーに対しては、インパクトタイミングのシャフトの飛球線方向の変位がより大きくなるように、先調子のシャフトを提案することができる。逆に、第2タイプのスイングと判別されたゴルファーに対しては、インパクトタイミングのシャフトの飛球線方向の変位がより大きくなるように、元調子のシャフトを提案することができる。
【0072】
[スイングタイプを活用したシャフトのフィッティング例]
図14は、上述のスイング解析装置1の結果を活用したシャフト31のフィッティングの一例として、推奨シャフトのマップを示す。図14において、横軸は、スイング解析装置1で判別されたスイングタイプを示す。横軸の原点よりも右側は、シャフトモデル変形量がD>Dとなる場合(すなわち、第1タイプ)を示し、変形量の差(D-D)は右側に向かうほど大きい。また、横軸の原点よりも左側は、シャフトモデル変形量がD<Dとなる場合(すなわち、第2タイプ)を示し、変形量の差(D-D)は左側に向かうほど大きい。また、縦軸は、本件出願人がすでに種々提案しているIFC(インターナショナル・フレックス・コード)を用いたフィッティング結果を示す。このフィッティングは、計測されたスイングを分析し、推奨されるシャフトを提案するものである。その際、推奨シャフトは、シャフトの曲げ剛性の軸方向の分布を4桁の数字で表したIFCを用いるものである。縦軸において、上側は、先調子シャフトが推奨される場合を示し、下側は、元調子シャフが推奨される場合を示す。
【0073】
図14において、第1象限に属するスイングに対しては、例えば、本実施形態のスイング解析装置及びIFCフィッティングの結果がともに示す、先調子のシャフトが提案され得る。また、第2象限に属するスイングについては、IFCフィッティングの結果を優先しつつスイング解析装置の判別結果を踏まえ、先調子のシャフトの中でもやや元調子のシャフトが提案され得る。第3象限に属するスイングについては、本実施形態のスイング解析装置及びIFCフィッティングの結果がともに示す、元調子のシャフトが提案され得る。さらに、第4象限に属するスイングに対しては、IFCフィッティングの結果を優先しつつスイング解析装置の判別結果を踏まえ、元調子の中でもやや先調子のシャフトが提案され得る。このように、本実施形態のスイング解析装置1の結果を用いることで、よりきめ細かいシャフト等のフィッティングが可能になる。
【0074】
[(2)スイング群の共通点の抽出(ステップS400)]
図5に示されるように、本実施形態のスイング解析装置1は、第1タイプに分類されたスイング群、及び、第2タイプに分類されたスイング群のそれぞれについて、スイングの共通点を抽出するための共通点抽出部17をさらに備える。本実施形態の共通点抽出部17は、例えば、変換部17a、抽出部17b、解析部17c及び決定部17dなどを含む。制御部14は、前述のスイング解析プログラム13aにより、仮想的に、共通点抽出部17の各部14aないし14dとして機能する(詳細は後述)。
【0075】
共通点抽出部17の機能は、上で分類された第1タイプのスイング群(インパクトタイミングにおいて先調子シャフトの変形量をより増加させるスイング)、及び、第2タイプのスイング群(インパクトタイミングにおいて元調子シャフトの変形量をより増加させるスイング)のそれぞれの共通点を、統計解析を利用して抽出する。ここで、上述の式(8)から理解されるように、スイング中のシャフト31の変形挙動は、シャフト31の各部に付加される慣性力によって決まる。したがって、本実施形態では、それぞれのスイング群の共通点を抽出するにあたり、前記慣性力を発生させるグリップエンドの加速度、角速度及び角加速度の少なくとも1つの時系列変化を示す波形、好ましくは2つ以上の波形、さらに好ましくは全ての波形に着目する。
【0076】
図15は、スイング群の共通点の抽出処理(ステップS400)の手順の概要を示すフローチャートである。図15に示されるように、共通点抽出部17の変換部17aは、まず、計測されたスイングの全試行(本実施形態では、8試行)について、シャフトの特定位置(例えば、グリップエンド)での加速度、角速度及び角加速度のそれぞれのx軸成分、y軸成分及びz軸成分の各波形をウェーブレット変換する(ステップS401)。
【0077】
図16(A)は、ある1つのスイングについて、グリップエンドのy軸方向の加速度の時系列変化を示す。図16(B)は、図16(A)の加速度の時系列変化の波形をウェーブレット変換して得られたカラーマップである。図16(B)において、左縦軸は周波数、横軸は時刻、右縦軸のカラーバーは強度を示す。本実施形態において、ウェーブレット変換は、MATLAB 2021a のcwt関数を使用し、ウェーブレット関数は一般化Morseウェーブレット関数が使用されている。
【0078】
図16(B)のカラーマップを参照することにより、スイング中のグリップエンドにおけるy軸方向の加速度の各周波数の時系列変化を抽出することができる。例えば、この例では、-0.4秒付近で、3~4Hzの周波数成分の強度が最大値を示している。また、ダウン9時(図16(B)のDown 9)からインパクト(図16(B)の時刻0)にかけて、3~6Hzの周波数成分の強度が最大値を示している。このように、ウェーブレット変換により、前記各波形からより詳細な情報を抽出することができる。
【0079】
次に、共通点抽出部17の抽出部17bは、上述の加速度(x、y及びz軸方向)、角速度(x、y及びz軸周り)、及び、角加速度(x、y及びz軸周り)をそれぞれウェーブレット変換したそれぞれのカラーマップについて、各周波数における強度の最大値を抽出する(ステップS502)。この処理は、例えば、カラーマップの各位置のピクセル情報を参照することにより行うことができる。
【0080】
次に、共通点抽出部17の解析部17cは、先のステップS402で得られた各周波数の強度の最大値からそれぞれのタイプのスイングの共通点を統計解析により抽出する。具体的には、解析部17cは、抽出された上記最大値を応答変数とし、因子を、スイングタイプ(第1タイプ及び第2タイプの2水準)、スイング試行数(8試行)、及び、上記周波数(2Hz、3Hz、4Hz、5Hz、6Hz、7Hz、8Hz、9Hz、10Hz、11Hz、12Hz、13Hz、14Hz、15Hz、16Hz、17Hz、19Hz及び20Hzの18水準)とする多因子分散分析を行う(ステップS403)。
【0081】
図17ないし図19は、解析部17cによる多因子分散分析の結果の一例を示す。図17の(A)、(B)及び(C)は、それぞれx軸方向、y軸方向及びz軸方向の加速度の強度の最大値を示す。各グラフにおいて、「Low>High」のグラフは第1タイプのスイング群を、「High>Low」のグラフは第2タイプのスイング群をそれぞれ示す。各グラフにおいて、縦軸は、第1タイプ及び第2タイプに属するスイング群のそれぞれの母集団の加速度の強度の最大値として推定された母平均推定量であり、横軸は周波数である。同様に、図18の(A)、(B)及び(C)は、それぞれx軸周り、y軸周り及びz軸周りの角速度の強度の最大値を示す。各グラフの縦軸は、第1タイプ及び第2タイプに属するスイング群のそれぞれの母集団の角速度の強度の最大値として推定された母平均推定量であり、横軸は周波数である。図19の(A)、(B)及び(C)は、それぞれx軸周り、y軸周り及びz軸周りの角加速度の強度の最大値を示す。各グラフの縦軸は、第1タイプ及び第2タイプに属するスイング群のそれぞれの母集団の角加速度の強度の最大値として推定された母平均推定量であり、横軸は、周波数である。また、図17ないし図19の各グラフにおいて、丸印のプロットは母平均推定量を示し、その上下にあるエラーバーは、前記推定量の95%信頼区間を示す。
【0082】
なお、図17ないし19の全波形において、スイングのタイプを因子とするp値(帰無仮説:第1タイプ及び第2タイプ間でウェーブレット変換より得られた周波数の強度の最大値に差がない。)は0.05未満であった。したがって、これらの結果によれば、第1タイプ及び第2タイプ間において、ウェーブレット変換より得られた周波数の強度の最大値に差があるといえる。
【0083】
次に、解析部17cは、さらに、多重比較検定を行う(ステップS404)。多重比較検定は、スイング群の第1タイプ、2間、及び、周波数間で行われる。各周波数について、第1タイプ及び第2タイプの母平均推定量の95%信頼区間同士が互いに重なっていなければ、そこには有意差があると評価できる。表1は、多重比較検定の結果をまとめたものを示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1において、縦軸項目は周波数を、横軸項目は、それぞれ、加速度、角速度及び角加速度を示す。また、加速度、角速度及び角加速度は、それぞれx軸成分、y軸成分及びz軸成分に区分されている。さらに、表1の各項目中、「Low」は、インパクトタイミングで先調子シャフトの変形量をより増加させる第1タイプと分類されたスイング群における母平均推定値が、第2タイプと判別されたスイング群の母平均推定値よりも大きかった結果を示す。また、「High」は、インパクトタイミングで元調子シャフトの変形量をより増加させる第2タイプと分類されたスイング群の母平均推定値が、第1タイプと判別されたスイング群の母平均推定値よりも大きかった結果を示す。さらに、「-」は、多重比較検定の結果、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群との間に、強度の最大値に関する有意差が見られなかったことを示す。
【0086】
図17図19及びそれを整理した表1から明らかなように、インパクトタイミングでシャフト先端の変形量が元調子シャフトでより大きい第2タイプのスイング群には、加速度のx軸成分について2Hz、4Hz及び5Hz、同y軸成分について3Hz、同z軸成分について3Hzの強度の母平均推定値が大きいという共通点が見られる。一方、インパクトタイミングでシャフト先端の変形量が先調子シャフトでより大きい第1タイプのスイング群には、加速度のy軸成分の5~8Hzの強度の母平均推定値が大きいいという共通点が見られる。また、第1タイプのスイング群には、角速度のx軸成分の3~13Hz、同y軸成分の3~12Hz、同z軸成分の2~16Hzの強度の母平均推定値が大きいという共通点が見られる。さらに、第1タイプのスイング群には、角加速度のx軸成分について4~20Hz、同y軸成分について4~20Hz、同z軸成分の3~19Hzの強度の母平均推定値が大きいという共通点が見られる。
【0087】
次に、共通点抽出部17の決定部17dは、例えば、表1で示したように、分類されたスイング群の間に有意差が認められた周波数を特定し、これらをそれぞれのスイング群の共通点として決定する(ステップS405)。例えば、決定部17dは、表1のような形式で共通点を整理しても良い。
【0088】
[(3)解析結果の出力(ステップS500)]
次に、スイング解析装置1の表示制御部14dは、各タイプに分類されたそれぞれのスイング群の共通点の結果を、表示部11に出力する(図2のステップS500)。したがって、ユーザーは、これらのデータを参照し、それぞれのスイング群の共通点を知ることができる。これは、より詳細なスイング分析等を行うのに役立つ。例えば、インパクトタイミングで元調子シャフトの変形量をより増加させる第2タイプのスイングは、2~5Hzの低周波数帯域での加速度を主に発揮する傾向にあることが分かり、これは「低周波加速度発揮タイプ」といえる。一方、インパクト付近で先調子シャフトにおける変形量をより増加させる第1タイプのスイングは、6~8Hzの加速度y軸成分のほか、全周波数域での角速度及び角加速度を主に発揮する傾向があることがわかり、これは「角速度・角加速度発揮タイプ」といえる。したがって、これらの情報に基づき、また、それぞれのスイング群のシャフト先端での速度やスイング軌道の関係を確認することにより、元調子シャフトや先調子シャフトの中でもよりスイング動作にあったシャフトを提供ないしフィッティングすることが可能になる。
【0089】
[他の実施形態]
上記実施形態では、スイング群を、第1タイプ又は第2タイプに分類する方法として、その処理の一部に、コンピュータによるシミュレーションが採用されたが、シミュレーションに代えて、ゴルファーによるスイングが直接計測されても良い。例えば、図1に示した計測装置2等を用いて、第1ゴルフクラブモデル20Aに対応する実際の第1ゴルフクラブ(図示省略)と、第2ゴルフクラブモデル20Bに対応する実際の第2ゴルフクラブ(図示省略)を用いて、それぞれのシャフトの挙動が計測され、その計測データを用いて、図13による第1タイプ又は第2タイプへの判別処理がなされても良い。
【0090】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。また、本発明は、その均等物を含むことは勿論である。
【0091】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0092】
[本発明1]
打具を使用したプレーヤーの複数のスイング群を、任意の方法で、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類したときの、それぞれのスイング群の共通点を抽出するためのスイング解析装置であって、
前記打具のスイング中の加速度、角速度及び角加速度の少なくとも1つの時系列変化を示す波形をウェーブレット変換する変換部と、
前記ウェーブレット変換された結果に基づいて、各周波数帯域の強度の最大値を抽出する抽出部と、
前記抽出された強度の最大値に基づいて、統計解析を行う解析部と、
前記統計解析の結果から、前記それぞれのスイング群の共通点を決定する決定部とを含む、
スイング解析装置。
[本発明2]
前記打具は、シャフトを備えたゴルフクラブである、本発明1に記載のスイング解析装置。
[本発明3]
前記任意の方法は、前記ゴルフクラブのスイング中の挙動を計測した計測データを取得するステップと、
前記計測データに基づいて、特性が異なるシャフトモデルを備えた少なくとも2種類のゴルフクラブモデルでスイングシミュレーションを行い、それぞれの前記シャフトモデルのスイング中の変形を解析するステップと、
前記解析するステップで得られたそれぞれの前記シャフトモデルの変形挙動に基づいて、前記スイング群を第1タイプ又は第2タイプに分類するステップとを含む、本発明2に記載のスイング解析装置。
[本発明4]
前記少なくとも2つのゴルフクラブモデルは、先調子シャフトモデルを有する第1ゴルフクラブモデルと、元調子シャフトモデルを有する第2ゴルフクラブモデルとを含む、本発明3に記載のスイング解析装置。
[本発明5]
前記統計解析は、前記最大値を応答変数とする多因子分散分析を含む、本発明1ないし4のいずれかに記載のスイング解析装置。
[本発明6]
前記決定部は、多重比較検定により前記共通点を決定する、本発明1ないし4のいずれかに記載のスイング解析装置。
[本発明7]
前記スイング群は、ゴルファーのスイングを計測したスイング群である、本発明1に記載のスイング解析装置。
[本発明8]
打具を使用したプレーヤーの複数のスイング群を、任意の方法で、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類したときの、それぞれのスイング群の共通点を抽出するためのスイング解析方法であって、
前記打具のスイング中の加速度、角速度及び角加速度の少なくとも1つの時系列変化を示す波形をウェーブレット変換するステップと、
前記ウェーブレット変換された結果に基づいて、各周波数帯域の強度の最大値を抽出するステップと、
前記抽出された強度の最大値に基づいて、統計解析を行うステップと、
前記統計解析の結果から、前記それぞれのスイング群の共通点を決定するステップとを含む、
スイング解析方法。
[本発明9]
打具を使用したプレーヤーの複数のスイング群を、任意の方法で、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類したときの、それぞれのスイング群の共通点を抽出するためのスイング解析プログラムであって、
前記打具のスイング中の加速度、角速度及び角加速度の少なくとも1つの時系列変化を示す波形をウェーブレット変換するステップと、
前記ウェーブレット変換された結果に基づいて、各周波数帯域の強度の最大値を抽出するステップと、
前記抽出された強度の最大値に基づいて、統計解析を行うステップと、
前記統計解析の結果から、前記それぞれのスイング群の共通点を決定するステップと
をコンピュータに実行させる、
スイング解析プログラム。
[本発明10]
スイング解析システムであって、
前記打具のスイングを計測する計測装置と、
本発明1に記載されたスイング解析装置とを含み、
前記スイング解析装置は、前記複数のスイング群を、第1タイプのスイング群と、第2タイプのスイング群とに分類する判別部を含む、スイング解析システム。
【符号の説明】
【0093】
1 スイング解析装置
2 計測装置
3 打具
13a スイング解析プログラム
17 共通点抽出部
17a 変換部
17b 抽出部
17c 解析部
17d 決定部
30 ゴルフクラブ
100 スイング解析システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19