(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071997
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】X線装置及びX線を用いた材質分類方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20240520BHJP
【FI】
G01N23/04
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182559
(22)【出願日】2022-11-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】澤柳 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】森 光徳
(72)【発明者】
【氏名】川口 哲史
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA06
2G001EA08
2G001FA08
2G001HA13
2G001JA09
2G001LA02
2G001LA05
2G001PA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】X線を用いて検査を行うX線装置において、検査対象物の外形を確認しつつ、当該検査対象物を構成する材質を分類可能なX線装置及びそれを用いた材質分類方法を提供する。
【解決手段】所定の出力値でX線を出力するX線出力部と所定数の検出素子を一次元に配列し、1つの前記検出素子を1画素としてそれぞれの前記画素で前記X線を検出して、前記X線の全体のエネルギーの大きさを示す総エネルギー量と所定の値以上のエネルギーの大きさを示す高エネルギー量とに関する画素情報を取得するX線検出部と制御部とを備え、前記制御部は、搬送用コンベア上を移動してくる収納容器に前記X線を照射するとともに、前記収納容器を透過した透過X線を検出して前記透過X線に対する前記画素情報を前記X線検出部から取得し、前記画素情報に基づいて前記収納容器に収納された対象物の減弱係数の変化率を求め、前記対象物を所定の材質に分類することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の出力値でX線を出力するX線出力部と、
所定数の検出素子を一次元に配列し、1つの前記検出素子を1画素として、それぞれの前記画素で前記X線を検出して、前記X線の全体のエネルギーの大きさを示す総エネルギー量と、所定の値以上のエネルギーの大きさを示す高エネルギー量と、に関する画素情報を取得するX線検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記X線出力部に指示して、搬送用コンベア上を移動してくる収納容器に前記X線を照射するとともに、前記収納容器を透過した透過X線を検出して前記透過X線に対する前記画素情報を前記X線検出部から取得し、
前記画素情報に基づいて前記収納容器に収納された対象物の減弱係数の変化率を求め、
前記対象物を所定の材質の何れかに分類することを特徴とするX線装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線装置であって、
前記X線出力部は、前記搬送用コンベア上を移動してくる前記収納容器の始端部から終端部まで前記X線を照射することを特徴とするX線装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線装置であって、
前記所定の材質は、第一の材質、前記第一の材質とは異なる第二の材質、前記第一の材質および前記第二の材質とは異なる第三の材質の3つの材質であることを特徴とするX線装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線装置であって、
前記制御部は、前記X線検出部が前記始端部から前記終端部までスキャンすることにより前記収納容器全体の前記画素情報を取得し、
前記対象物を透過した前記透過X線に対応するそれぞれの前記画素情報に含まれる前記総エネルギー量と前記高エネルギー量に対して、前記対象物の存在しない空気部分のエネルギー量を示す空気部エネルギー量を最大値1としてスケーリングして、正規化総エネルギー量と正規化高エネルギー量とを算出し、
記憶部に第一の記憶領域T1と第二の記憶領域T2を設定し、
前記正規化総エネルギー量を前記T1に二次元配列して前記対象物の第一の画像情報を生成し、
前記正規化高エネルギー量を前記T2に二次元配列して前記対象物の第二の画像情報を生成することを特徴とするX線装置。
【請求項5】
請求項4に記載のX線装置であって、
前記制御部は、
前記T1のそれぞれの(X,Y)座標に配列した前記正規化総エネルギー量に対応する減弱係数を示す第一の減弱係数を算出し、
前記T2のそれぞれの(X,Y)座標に配列した前記正規化高エネルギー量に対応する減弱係数を示す第二の減弱係数を算出し、
それぞれの前記第二の減弱係数を、対応する(X,Y)座標の前記第一の減弱係数で除算してそれぞれの前記正規化総エネルギー量に対する前記正規化高エネルギー量の前記変化率を算出し、前記記憶部に設定した第三の記憶領域T3に配列することを特徴とするX線装置。
【請求項6】
請求項5に記載のX線装置であって、
前記制御部は、
前記T1のそれぞれの(X,Y)座標に配列している数値をX座標とし、前記T3のそれぞれの(X,Y)座標に配列している数値をY座標とする情報を、前記正規化総エネルギー量と前記減弱係数の変化率の相関を示す材質分類クラスタによりクラスタリングして、それぞれの(X,Y)座標を前記第一の材質または前記第二の材質または前記第三の材質の何れに属するか分類し、
前記記憶部に設定した第四の記憶領域を示すT4の対応する(X,Y)座標に前記第一の材質、前記第二の材質、前記第三の材質として材質分類情報を配列することを特徴とするX線装置。
【請求項7】
請求項6に記載のX線装置であって、
前記制御部は、
前記T4に配列した材質分類情報に基づき、前記T1に配列したそれぞれの(X,Y)座標を前記第一の材質、前記第二の材質および前記第三の材質に分類し、
前記第一の材質に属するそれぞれの(X,Y)座標に配列している前記正規化総エネルギー量を前記記憶部に設定した第五の記憶領域を示すT5に配列し、
前記第二の材質に属するそれぞれの(X,Y)座標に配列している前記正規化総エネルギー量を前記記憶部に設定した第六の記憶領域を示すT6に配列し、
前記第三の材質に属するそれぞれの(X,Y)座標に配列している前記正規化総エネルギー量を前記記憶部に設定した第七の記憶領域を示すT7に配列することを特徴とするX線装置。
【請求項8】
請求項7に記載のX線装置であって、
前記制御部は、
前記T5において、同じ値の前記正規化総エネルギー量(k)を有する(X,Y)座標の数をそれぞれカウントして第一の画素数Gh(k)を算出し、
前記T6において、同じ値の前記正規化総エネルギー量(k)を有する(X,Y)座標の数をそれぞれカウントして第二の画素数Gl(k)を算出し、
前記T7において、同じ値の前記正規化総エネルギー量(k)を有する(X,Y)座標の数をそれぞれカウントして第三の画素数Ga(k)を算出し、
前記対象物の質量を前記第一の画素数群と前記第二の画素数群と前記第三の画素数群の合計で除算して、前記第一の材質と前記第二の材質と前記第三の材質とに共通する単位質量係数(M)を算出することを特徴とするX線装置。
【請求項9】
請求項8に記載のX線装置であって、
前記制御部は、質量相関係数設定カーブを用いて、前記第一の材質、前記第二の材質、前記第三の材質のそれぞれの正規化総エネルギー量に対応する質量相関係数mh(k)、ml(k)、ma(k)(k:正規化フォトン数)を設定することを特徴とするX線装置。
【請求項10】
請求項9に記載のX線装置であって、
前記制御部は、次の演算式(1)から(3)により、
第一の材質の質量 = M(Gh(0.1)mh(0.1)+Gh(0.2)mh(0.2)+・・・+Gh(k)mh(k))・・・(1)
第二の材質の質量 = M(Gl(0.1)ml(0.1)+Gl(0.2)ml(0.2)+・・・+Gl(k)ml(k))・・・(2)
第三の材質の質量 = M(Ga(0.1)ma(0.1)+Ga(0.2)ma(0.2)+・・・+Ga(k)ma(k))・・・(3)
前記対象物の前記第一の材質の質量と前記第二の材質の質量と前記第三の材質の質量とを推定することを特徴とするX線装置。
【請求項11】
請求項1に記載のX線装置であって、
前記X線装置は、計測部と、
前記計測部より前記搬送用コンベアの後部位置に配置された収納容器センサと、を備え、
前記計測部により前記収納容器の質量を計測し、
前記計測部により前記収納容器の質量を計測した後に前記収納容器センサにより前記収納容器を検知した場合、前記制御部が前記X線出力部に指令信号を送信して前記X線の照射を開始することを特徴とするX線装置。
【請求項12】
請求項1に記載のX線装置であって、
前記X線装置は、前記収納容器に収納された複数の対象物から特定の対象物を選択する機能を備え、
前記制御部は、前記選択された対象物の前記画素情報に基づいて当該選択された対象物の減弱係数の変化率を求め、
前記選択された対象物を構成する複数の材質を、それぞれ前記所定の材質の何れかに分類することを特徴とするX線装置。
【請求項13】
X線を用いた材質分類方法であって、
(a)搬送用コンベア上を移動してくる収納容器にX線を照射するとともに、前記収納容器を透過した透過X線を検出して前記透過X線に対する画素情報を取得するステップと、
(b)前記(a)ステップで取得した前記画素情報に基づいて、前記収納容器に収納された対象物の減弱係数の変化率を求めるステップと、
(c)前記(b)ステップで求めた前記減弱係数の変化率に基づいて、前記対象物を所定の材質の何れかに分類するステップと、
を有することを特徴とする材質分類方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線装置の構成とそれを用いた材質分類方法に係り、特に、手荷物や宅配物などの荷物検査に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行場などの手荷物検査場において、収納容器に収納された対象物をチェックするためにX線装置が活用されている。通常、X線を収納容器に照射し、その透過X線を取得して対象物の外形を確認する。
【0003】
このような検査においては、対象物の外形が分かるだけであり、対象物の質量は確認できず、危険物なのか否かの判断が難しい。
【0004】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、「X線照射部から検査対象物にX線を照射して、検査対象物を透過した透過X線をX線検出部により取得し、取得した透過X線のX線量に基づいて検査対象物の質量を推定し、推定した検査対象物の質量が予め設定した所定範囲内の何れかの質量階級に属しているかを判定するX線検査装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術によれば、検査対象物が単一で存在する場合には、当該検査対象物の質量を推定することが可能である。
【0007】
しかしながら、検査対象物の材質が不明な場合や、同じ収納容器に複数の対象物が混在している場合には、それぞれの対象物の質量を推定することはできない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、X線を用いて検査を行うX線装置において、検査対象物の外形を確認しつつ、当該検査対象物を構成する材質を分類可能なX線装置及びそれを用いた材質分類方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、所定の出力値でX線を出力するX線出力部と、所定数の検出素子を一次元に配列し、1つの前記検出素子を1画素として、それぞれの前記画素で前記X線を検出して、前記X線の全体のエネルギーの大きさを示す総エネルギー量と、所定の値以上のエネルギーの大きさを示す高エネルギー量と、に関する画素情報を取得するX線検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記X線出力部に指示して、搬送用コンベア上を移動してくる収納容器に前記X線を照射するとともに、前記収納容器を透過した透過X線を検出して前記透過X線に対する前記画素情報を前記X線検出部から取得し、前記画素情報に基づいて前記収納容器に収納された対象物の減弱係数の変化率を求め、前記対象物を所定の材質の何れかに分類することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、X線を用いた材質分類方法であって、(a)搬送用コンベア上を移動してくる収納容器にX線を照射するとともに、前記収納容器を透過した透過X線を検出して前記透過X線に対する画素情報を取得するステップと、(b)前記(a)ステップで取得した前記画素情報に基づいて、前記収納容器に収納された対象物の減弱係数の変化率を求めるステップと、(c)前記(b)ステップで求めた前記減弱係数の変化率に基づいて、前記対象物を所定の材質の何れかに分類するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線を用いて検査を行うX線装置において、検査対象物の外形を確認しつつ、当該検査対象物を構成する材質を分類可能なX線装置及びそれを用いた材質分類方法を実現することができる。
【0012】
これにより、検査対象物の外形を確認するだけでなく、検査対象物の材質を分類して材質毎の質量を推定することで、検査対象物が危険なものか判断する支援をし、犯罪等を未然に防ぐことに貢献できる。
【0013】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1に係るX線装置の全体概要を示す図である。
【
図2】
図1のX線装置によるX線照射の様子を示す斜視図である。
【
図3】
図1のX線装置のX線照射部を示す図である。
【
図4】透過X線の総エネルギー量と高エネルギー量を記憶部に記憶する方法を示す図である。
【
図5】各画素情報の減弱係数の変化率を配列する方法を示す図である。
【
図6】材質分類クラスタにより材質分類する方法を示す図である。
【
図7】記憶領域T1のそれぞれの画素に対する材質分類情報を配列する方法を示す図である。
【
図8】正規化総エネルギーを材質毎に再配列する方法を示す図である。
【
図9】単位質量係数を算出する方法を示す図である。
【
図10】材質毎の質量相関係数設定カーブを示す図である。
【
図12】フォトンカウント法によるX線エネルギー量検出方法を示す図である。
【
図13】シンチレータ法によるX線エネルギー量検出方法を示す図である。
【
図14】本発明の実施例2に係る材質分類方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0016】
図1から
図13を参照して、本発明の実施例1に係るX線装置及びそれを用いた材質分類方法について説明する。
【0017】
先ず、
図12及び
図13を用いて、本発明の基本的なコンセプトを説明する。
【0018】
本発明は、収納容器にX線を照射して透過X線を取得し、単位時間内の透過X線の総エネルギー量と高エネルギー量とを取得して、総エネルギー量に対する減弱係数と高エネルギー量に対する減弱係数を算出し、高エネルギー量の減弱係数を総エネルギー量の減弱係数で除算して減弱係数の変化率を算出し、当該変化率に基づいて対象物の材質を推定するものである。
【0019】
電磁波の一種であるX線は、通常の光と同様に、波の働きと粒子の働きの二面性を有している。本発明は、粒子の働きを利用するものである。粒子線としてのX線は、粒子、つまりX線フォトンを有する。それぞれのX線フォトンはエネルギーを有している。なお、本発明では、複数のX線フォトンが集合して構成するエネルギーの集合体をエネルギー量とする。
【0020】
単位時間内に対象物に照射するX線のエネルギー量I0と、X線を対象物に照射して得られる対象物を透過した透過X線のエネルギー量Iとの間には、次の関係式が成り立つ。
【0021】
I = I0exp(-μx)
ここで、μ : 減弱係数、x : 対象物の厚み、を示す。
【0022】
従って、μ =- ln(I/I0)/x の式で減弱係数を算出できる。
【0023】
また、X線を出力するX線出力部から、一定の出力値でX線を照射しても、それぞれのX線フォトンが有するエネルギーは同一ではなく、大きなエネルギー(高エネルギー)を有するX線フォトンと、小さなエネルギー(低エネルギー)を有するX線フォトンとに分類される。
【0024】
本発明では、対象物を透過した透過X線を、全体のエネルギー量を示す総エネルギー量と、高エネルギーを有するX線フォトンの総量を示す高エネルギー量とを区別して取得し、それぞれの減弱係数を算出して、その変化率を算出する。
【0025】
さらに、予め減弱係数の変化率に応じて対象物を分類するクラスタを準備しておき、実際に算出した変化率がどのクラスタに属するかによって対象物の材質を分類する。
【0026】
総エネルギー量の減弱係数をμ1、高エネルギー量の減弱係数をμ2とすると、その変化率は、次の演算式により算出することができる。当該変化率をクラスタリングすることにより、属する材質を決定する。
【0027】
変化率=ln(I2/I0)/ln(I1/I0)
ここで、I1:透過X線に含まれる総フォトン数、I2:透過X線に含まれる高エネルギーのフォトン数、ln:自然対数、を示す。
【0028】
対象物を透過した透過X線から、総エネルギー量と高エネルギー量を取得する方法について説明する。
【0029】
この方法には、フォトンカウント法とシンチレータ法の2つの方法がある。
【0030】
先ず、フォトンカウント法について説明する。
図12に、フォトンカウント法によるX線エネルギー量検出方法を示す。
図12には、
図1を用いて後述する本実施例のX線装置1のX線検出部6により、透過X線のX線フォトン14を検出する例を示している。
【0031】
この方法では、単位時間内にX線検出部6に入力されたX線フォトン14を、所定の閾値を基準に高エネルギーのものと低エネルギーのものに分類し、全体のX線フォトンをカウントして総エネルギー量を算出し、高エネルギーを有するX線フォトンをカウントして高エネルギー量を算出し、総エネルギー量と高エネルギー量を出力することを特徴とするX線検出部6を使用する。
【0032】
次に、シンチレータ法について説明する。
図13に、シンチレータ法によるX線エネルギー量検出方法を示す。
図13には、
図1を用いて後述する本実施例のX線装置1のX線検出部6により、透過X線のX線フォトン14を検出する例を示している。
【0033】
この方法では、X線検出部6を、X線検出部6aとX線検出部6bの二つのX線検出部で構成し、その中間位置に銅板15を配置する。高エネルギーを有するX線フォトンは銅板15を透過するが、低エネルギーのX線フォトンは銅板15を透過しない。従って、X線検出部6aは、総エネルギー量を出力し、X線検出部6bは、銅板15を透過したX線、すなわちエネルギーの大きなX線フォトンを検出して高エネルギー量を出力する。
【0034】
次に、
図1から
図11を用いて、本実施例のX線装置の具体的な装置構成と、それを用いた材質分類方法について説明する。
【0035】
図1に、本実施例のX線装置1の全体構成図を示す。
図1では、X線装置1を横方向から見た図(横断面図)を示しており、Z方向はX線装置1が設置されている床面に対して垂直な方向であり、X方向は検査物10の搬送方向を示している。
【0036】
本実施例のX線装置1は、
図1に示すように、主要な構成として、装置本体2と、検査物10の質量を計測する計測部3と、装置本体2及び計測部3を制御する制御部4とを備えている。
【0037】
装置本体2は内部に、X線を出力するX線出力部5と、X線を検出するX線検出部6と、対象物の有無を検出する対象物検出部7とを有している。
【0038】
装置本体2は、内部を搬送用コンベア9が貫通するように配置されており、搬送用コンベア9により装置本体2内部に搬入された検査物10に対し、X線出力部5から出力されたX線11を照射し、検査物10を透過した透過X線をX線検出部6により検出する。
【0039】
装置本体2の搬送用コンベア9の貫通部には、X線出力部5から出力されたX線11が装置本体2の外部に漏れるのを防ぐため、遮蔽カーテン8が設置されている。
【0040】
本発明は、所定の出力値でX線を出力するX線出力部5と、所定数の検出素子を一次元に配列し、1つの検出素子を1画素として、X線11を検査物10に照射し透過した透過X線をそれぞれの画素で検出して、画素情報として透過X線の総エネルギー量と高エネルギー量を出力するX線検出部6と、物体の質量を計測する計測部3と、検査物10の存在を検出する対象物検出部7と、全体の動きを制御する制御部4とを含んで構成する。
【0041】
搬送用コンベア9上を、対象物(検査物10)を収納した収納容器が移動してくると、先ず、計測部3により収納容器の質量を計測し、その計測値を制御部4に送信する。さらに収納容器が移動して対象物検出部7の検出範囲に入ると、対象物検出部7は収納容器が移動してきたことを検知し、収納容器有の信号を制御部4に送信する。制御部4は、収納容器有の信号を取得すると、X線出力部5にX線11を出力する指令信号を送信し、さらに、単位時間当たりの透過X線の総エネルギー量と高エネルギー量をX線検出部6から取得するとともに、収納容器に収納された対象物(検査物10)の材質分類に必要な処理を開始する。
【0042】
制御部4における対象物(検査物10)の材質分類の処理について詳述する。
【0043】
図2に、収納容器12にX線11を照射してライン状に透過X線を検出する図を、
図3に、透過X線の総エネルギー量と高エネルギー量を取得する図をそれぞれ示す。
【0044】
X線出力部5は、搬送用コンベア9上を移動する収納容器12の始端部Aから終端部BまでX線11を連続的に照射する。X線検出部6は、搬送用コンベア9を挟んで、X線出力部5に対向する位置に配置され、対象物(検査物10)を透過した透過X線を検出する。
【0045】
X線検出部6は、1回の動作でライン上に透過X線を検出するが、収納容器12が搬送用コンベア9上を移動している間、連続的に透過X線を検出することで、収納容器12全体を二次元にスキャンすることが可能となる。その結果、X線検出部6を構成するそれぞれの1検出素子を1画素として、それぞれの画素が出力する画素情報(総エネルギー量と高エネルギー量で構成)を制御部4に出力し、制御部4は、これらの画素情報に基づき、収納容器12全体を二次元的に画素化する画素情報群を構成することができる。
【0046】
図4に、透過X線の総エネルギー量と高エネルギー量を記憶部に記憶する方法を示す。記憶部は、制御部4に含まれて構成されているものとする。
【0047】
図4の左図は、X線検出部6により取得した画素情報群を可視化したものであり、それぞれのマス目がX線検出部6の1検出素子13(すなわち1画素)に相当する。図中のCは、X線出力部5が1回で出力し、X線検出部6で透過X線を検出可能な範囲を示している。
【0048】
図4の右図は、左図の画素情報群に基づいて、記憶部に第1の記憶領域T1と第2の記憶領域T2を設定する様子を可視化したものであり、それぞれのマス目がX線検出部6の各検出素子に対応する記憶領域に相当する。具体的には、透過X線の正規化総エネルギー量と正規化高エネルギー量を記憶領域に配列して、右図のような画像情報を生成する。
【0049】
図4に示すように、全ての画素情報をある範囲内で単純化して取り扱うために、収納容器12において対象物(検査物10)の存在しない部位、すなわち空気の部位のエネルギー量を示す空気部エネルギーを最大値1として、対象物(検査物10)を透過した透過X線を構成する画素の画素情報をスケーリングして、それぞれの画素情報に対して正規化総エネルギー量と正規化高エネルギー量を算出し、記憶部に第1の記憶領域T1と第2の記憶領域T2を設定し、正規化総エネルギー量をT1に二次元的に配列して記憶し、正規化高エネルギー量をT2に二次元的に配列して記憶する。
【0050】
記憶領域T1及びT2の1つの(X,Y)座標が1画素に相当し、左図の原点と記したマス目がライン状のX線検出部6の始点であり、対向する最後のマス目がX線検出部6の最後であり、始点から最後に向かってX軸方向でありX座標は増えていく。また、左図のY軸方向と記載している方向、つまり搬送用コンベア9上を収納容器12が移動していく方向と反対方向にY座標は増えていく。
【0051】
図5に、各画素情報の減弱係数の変化率を配列する方法を示す。
【0052】
次に、制御部4は、それぞれの画素情報から減弱係数の変化率を算出する。既に述べたように、それぞれの画素情報の正規化高エネルギー量の減弱係数を正規化総エネルギー量の減弱係数で除算することにより、それぞれの画素情報における減弱係数の変化率を算出することができる。つまり、X軸方向にk番目、Y軸方向にk番目の座標(xk,yk)における画素情報の減弱係数の変化率は、正規化高エネルギー量の減弱係数をμ2(xk,yk)とし、正規化総エネルギー量の減弱係数をμ1(xk,yk)とすると、次の演算式により減弱係数の変化率を算出することができる。
【0053】
減弱係数の変化率=μ2(xk,yk)/μ1(xk,yk)
図5に示すように、これらの減弱係数の変化率を、記憶部に設定した第3の記憶領域T3における対応する(X,Y)座標に配列する。この状態において、記憶領域T1及びT2に属するそれぞれの画素に対して、記憶領域T3の対応する(X,Y)座標を参照することにより、材質の区別ができることになる。
【0054】
記憶領域T1内のそれぞれの正規化総エネルギー量に対する減弱係数をμ1、記憶領域T2内のそれぞれの正規化高エネルギー量に対する減弱係数をμ2としてその変化率を算出し、第3の記憶領域T3に記憶する。いわゆるデュアルエナジー法により、それぞれの減弱係数の変化率を算出することで、物質を区別する。
【0055】
次に、区別したそれぞれの材質が、つまり、記憶領域T1の属するそれぞれの画素が重金属の材質群を示す第一の材質に属するのか、軽金属の材質群を示す第二の材質に属するのか、又は樹脂の材質群を示す第三の材質に属するのかを決定する。
【0056】
図6に、材質分類クラスタにより材質分類する方法を示す。
【0057】
図6の右図は、X軸をT1に属する画素情報の正規化総エネルギー量として、Y軸をそれぞれの画素情報に対応する減弱係数の変化率として、二次元XY平面にプロットしたものである。
【0058】
記憶領域T1に記憶している正規化総エネルギー量T1(xk,yk)を横軸に、記憶領域T3に記憶している減弱係数の変化率T3(xk,yk)を縦軸にしてプロットし、それぞれの画素をクラスタリングする。
【0059】
なお、
図6の右図に折れ線で示すように、材質分類クラスタでは、予め、第一の材質と第二の材質と第三の材質を分類するための境界を記しておく。この処理により、記憶領域T1に属するそれぞれの画素が、第一の材質又は第二の材質又は第三の材質の何れに属するかを決定することができる。
【0060】
図7に、記憶領域T1のそれぞれの画素に対する材質分類情報を配列する方法を示す。
【0061】
図7に示すように、記憶領域T1のそれぞれの画素に対する材質の分類情報を記憶部に設定した第四の記憶領域T4に配列する。
【0062】
なお、材質分類クラスタは、次のようにして設定する。
【0063】
この処理は、実際に対象物(検査物10)を材質分類する前段階において行い、準備しておく必要がある。
図11を用いて後述するように、重金属(例えば鉄)、軽金属(例えばアルミニウム)、及び樹脂を、それぞれ複数個(例えばそれぞれ9個)、サンプルとして準備する。それぞれの形状は、四角柱または円柱などが良い。全てのサンプルの上面と底面の面積は同一として、高さを変える。
【0064】
これらのサンプルに対して、X線出力部5からX線を照射して、X線検出部6を介してそれぞれの画素情報を取得する。これらの画素情報に対して、正規化総エネルギー量と正規化高エネルギー量の減弱係数の変化率を算出する。そして、上記で説明した記憶領域T1及びT3を記憶部に作成する。さらに、
図6の右図のように、記憶領域T1の値をX軸に、記憶領域T3の値をY軸として二次元空間にプロットする。
【0065】
これにより、重金属、軽金属、樹脂のクラスタが形成できる。なお、それぞれのクラスタエリアをより明確にするために、重金属と軽金属のプロット点の中間点を線で結び、軽金属と樹脂とのプロット点の中間点を線で結ぶ。また、サンプル数を多くすれば、より精度良いクラスタを形成することができる。
【0066】
次に、3種類の材質に分類したそれぞれの対象物(検査物10)の質量を推定する。なお、簡易的に質量を推定するものであり、収納容器12の質量は無視する。
【0067】
ここでは、直接的にそれぞれの対象物(検査物10)の質量を推定することができないため、全体に共通の単位質量係数(M)を、つまり、それぞれの対象物(検査物10)に共通する1画素当たりの質量係数を設定する。
【0068】
単位質量係数(M)は、対象物の質量(第一の材質の質量と第二の材質の質量と第三の材質の質量の和)を対象物全体の総画素数(Σ第一の材質の画素数(Gh(k))とΣ第二の材質の画素数(Gl(k))とΣ第三の材質の画素数(Ga(k))の和)で除算して算出する。kは正規化総エネルギー量を示す。
【0069】
図8を用いて、具体的に説明する。
図8に、正規化総エネルギーを材質毎に再配列する方法を示す。
【0070】
先ず、
図8に示すように、記憶領域T4に配列した材質分類情報に基づき、記憶領域T1に配列した(X,Y)座標を第一の材質、第二の材質、及び第三の材質に分類して、記憶領域T1の第一の材質に属するそれぞれの(X,Y)座標に配列している正規化総エネルギー量を記憶部の中に設定した第5の記憶領域T5に配列し、記憶領域T1の第二の材質に属するそれぞれの(X,Y)座標に配列している正規化総エネルギー量を記憶部の中に設定した第6の記憶領域T6に配列し、記憶領域T1の第三の材質に属するそれぞれの(X,Y)座標に配列している正規化総エネルギー量を記憶部の中に設定した第7の記憶領域T7に配列する。
【0071】
つまり、記憶領域T1の情報に記憶領域T4の材質情報を適用し、材質毎に分類して別々の記憶領域に記憶する。対象物を、分類した材質毎に別々の記憶領域に記憶することで、物質を材質毎に単独で操作できるようにするためである。
【0072】
X線検出部6の1画素は、画素情報を配列している記憶エリアの1つの(X,Y)座標に相当する。従って、画素数は、記憶エリア内の対象とする(X,Y)座標をカウントすることで算出することができる。従って、第一の材質に分類される画素数は記憶領域T5に属する座標数をカウントし、第二の材質に分類される画素数は記憶領域T6に属する座標数をカウントし、第三の材質に分類される画素数は記憶領域T7に属する座標数をカウントすることで算出することができる。
【0073】
【0074】
これらの情報から、単位質量係数(M)は、
図9に示すように、次の演算式により算出することができる。
【0075】
単位質量係数(M)=(対象物の質量)/(第一の材質の専有面積+第二の材質の専有面積+第三の材質の専有面積)
ここで、第一の材質の専有面積:記憶領域T5に属する(X,Y)座標数、第二の材質の専有面積:記憶領域T6に属する(X,Y)座標数、第三の材質の専有面積:記憶領域T7に属する(X,Y)座標数、とする。
【0076】
次に、それぞれの材質の質量に関する相関係数(質量相関係数)を示す、第一の材質の質量相関係数(mh(k))、第二の材質の質量相関係数(ml(k))、及び第三の材質の質量相関係数(ma(k))を用いて、第一の材質の質量、第二の材質の質量、第三の材質の質量を推定する方法について詳述する。なお、kは単位質量係数(M)と同様に正規化総エネルギー量を示す。
【0077】
【0078】
質量相関係数は、
図10に示すように、同じ正規化総エネルギー量において、それぞれの材質の質量分布を示すものであって、同一の正規化総エネルギー量のときに、第一の材質、第二の材質、第三の材質が全体の質量の中でどれだけの分布容量を有するかを示すものである。
【0079】
これらのパラメータを使用すると次の演算式により、それぞれの材質の質量を推定することが可能となる。
【0080】
[質量推定式(1)]
第一の材質の推定質量=M×Σ(Gh(k)×mh(k))・・・(1)
Σ(Gh(k)×mh(k))は、次の演算式に相当し、それぞれの正規化総フォトン数に対応する画素数Gh(k)と質量相関係数mh(k)の積を合計したものである。
【0081】
Gh(0.1)×mh(0.2)+Gh(0.2)×mh(0.2)+・・・+Gh(k)×mh(k)
[質量推定式(2)]
第二の材質の推定質量=M×Σ(Gl(k)×ml(k))・・・(2)
Σ(Gl(k)×ml(k))は、次の演算式に相当し、それぞれの正規化総フォトン数に対応する画素数Gl(k)と質量相関係数ml(k)の積を合計したものである。
【0082】
Gl(0.1)×ml(0.2)+Gl(0.2)×ml(0.2)+・・・+Gl(k)×ml(k)
[質量推定式(3)]
第三の材質の推定質量=M×Σ(Ga(k)×ma(k))・・・(3)
Σ(Ga(k)×ma(k))は、次の演算式に相当し、それぞれの正規化総フォトン数に対応する画素数Ga(k)と質量相関係数ma(k)の積を合計したものである。
【0083】
Ga(0.1)×ma(0.2)+Ga(0.2)×ma(0.2)+・・・+Ga(k)×ma(k)
ここで、M:単位質量係数、Gh(k),Gl(k),Ga(k):正規化総エネルギー量に対応する第一の材質の画素数,第二の材質の画素数,及び第三の材質の画素数、mh(k),ml(k),ma(k):正規化総エネルギー量に対応する第一の材質の質量相関係数,第二の材質の質量相関係数,及び第三の材質の質量相関係数、を示す。
【0084】
単位質量係数(M)と、正規化総エネルギー量(k)に対応するそれぞれの材質の質量相関係数(第一の材質の質量相関係数mh(k),第二の材質の質量相関係数ml(k),第三の材質の質量相関係数ma(k))を設定する処理を説明する。以下のステップ1からステップ10までの処理を順に実施する。これらの処理も、実際に対象物の材質を分類する前段階において行い、準備しておく必要がある。
【0085】
[ステップ1]
図11に、材質分類クラスタの例を示す。
図11に示すように、第一の材質のサンプルと第二の材質のサンプルと第三の材質のサンプルを複数個(
図11ではそれぞれ9個)準備する。材質分類クラスタを準備した際に使用したサンプルで良い。
【0086】
また、X軸を正規化総エネルギー量(k)、Y軸を当該正規化総エネルギー量(k)に対応する質量相関係数m(k)とする二次元XY平面を準備し、当該二次元XY平面に第一の材質に関する質量相関係数mh(k)、第二の材質に関する質量相関係数ml(k)、及び第三の材質に関する質量相関係数ma(k)に関する仮の質量相関係数カーブを設定する。なお、この仮の質量相関係数カーブは初期値として設定するもので、直線状でよい。以降のステップから調整して実際のカーブとなるように修正する。
【0087】
[ステップ2]
ステップ1の処理で準備したサンプルの中から、同じ高さを有する第一の材質のサンプル、第二の材質のサンプル、及び第三の材質のサンプルをそれぞれ1個ずつ選び、3個のサンプルの組み合わせでグルーピングし、それぞれのグループの全体の質量を計測部3により計測し、制御部4で取得する。
【0088】
[ステップ3]
ステップ2の処理でグルーピングしたグループの中から、高さの大きい順で1つのグループを選択する。
【0089】
[ステップ4]
ステップ3の処理で選択したグループに、制御部4からX線出力部5に指令信号を送信してX線出力部5からX線を出力しながら当該グループ全体をスキャンする。(当該グループに属する第一の材質のサンプル、第二の材質のサンプル、及び第三の材質のサンプルに同時にX線を照射する。)
[ステップ5]
ステップ4の処理におけるスキャン時に、当該グループ内のそれぞれのサンプルを透過した透過X線をX線検出部6により検出し、X線検出部6から出力されるそれぞれの画素の画素情報を制御部4で取得する。
【0090】
[ステップ6]
ステップ5の処理により取得した第一の材質のサンプル、第二の材質のサンプル、及び第三の材質のサンプルのそれぞれの画素数と、それぞれの画素の画素情報とに基づき、正規化総フォトン数を算出し、それぞれの質量相関係数の仮の値を設定する。
【0091】
ここで、
第一の材質の正規化総エネルギー量:kh
第二の材質の正規化総エネルギー量:kl
第三の材質の正規化総エネルギー量:ka
khに対応する第一の材質の画素数Gh(kh)
klに対応する第二の材質の画素数Gl(kl)
kaに対応する第三の材質の画素数Ga(ka)
khに対応する第一の材質の質量相関係数mh(kh)
klに対応する第二の材質の質量相関係数ml(kl)
kaに対応する第三の材質の質量相関係数ma(ka)
とする。
【0092】
[ステップ7]
単位質量係数(M)を算出する。ステップ2の処理で計測した対象グループ全体の質量を、ステップ6の処理で算出した第一の材質のサンプルの画素数と第二の材質のサンプルの画素数と第三の材質のサンプルの画素数の和(対象グループ全体の画素数)で除算して算出する。
【0093】
単位質量係数(M)=対象グループ全体の質量÷対象グループ全体の画素数
[ステップ8]
ステップ7の処理で求めた単位質量係数(M)と、ステップ6の処理で求めた第一の材質の正規化エネルギー量(kh)における第一の材質の画素数Gh(kh)と質量相関係数mh(kh)と、第二の材質の正規化総エネルギー量(kl)における第二の材質の画素数Gl(kl)と質量相関係数ml(kl)と、第三の材質の正規化総エネルギー量(ka)における第三の材質の画素数Ga(ka)と質量相関係数ma(ka)とを次の式に代入して対象グループ全体の計算上の質量である仮質量を算出する。
【0094】
仮質量=M×(Gh(kh)×mh(kh)+Gl(kl)×ml(kl)+Ga(ka)×ma(ka))
対象グループ全体の実際の質量は、ステップ2の処理で計測しているので、
仮質量=対象グループ全体の実際の質量
となるように、mh、ml及びmaを調整し、それぞれの正規化総フォトン数kh、kl、kaにおける質量相関係数設定カーブ上のプロット位置を決定する。
【0095】
[ステップ9]
他のサンプルに対しても順番に、ステップ3からステップ7の処理を施して、それぞれの正規化総フォトン数における質量相関係数設定カーブ上のプロット位置を決定する。これにより、準備したサンプルに対する質量相関係数を設定することができる。
【0096】
[ステップ10]
全てのサンプルに対して、それぞれの正規化総フォトン数における質量相関係数設定カーブ上のプロット位置を決定したら、各ポイント間は数値補間してなだらかな曲線となるようにする。
【0097】
以上説明した本実施例のX線装置及びそれを用いた材質分類方法により、検査対象物の外形を確認しつつ、当該検査対象物を構成する材質を分類することができる。
一般に保安検査の一つである手荷物検査においては、検査装置を通過する手荷物にX線を照射し、画像処理により鮮明化された画像をもとに保安検査員が目視で危険物を検知している。
保安検査員は、このようなX線画像を見て、迅速かつ正確な検査を連続で行う必要がある一方、入念な検査によって混雑が生じると顧客の満足度が低下するという相反する環境から、保安検査員の肉体的・精神的負荷が高くなる。
そこで、本実施例では、X線装置1に、収納容器(スーツケース16)に収納された複数の対象物から特定の検査物10を選択する機能を設ける。この特定の検査物10を選択する機能は、例えば、保安検査員がモニタ上のX線画像を見ながら、パソコンのマウスなどの入力装置を使用して、安全性が懸念される対象物を枠線で囲むことで実現する。
選択された特定の検査物10に対し、X線装置1の制御部4は、実施例1で説明した材質分類方法及び重量推定方法を適用して、選択された検査物10の画素情報に基づいて当該選択された検査物10の減弱係数の変化率を求め、選択された検査物10を構成する複数の材質を、それぞれ所定の材質(例えば、第一の材質と第二の材質と第三の材質)の何れかに分類する。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。