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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072012
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】帯電装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/14 20060101AFI20240520BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20240520BHJP
   B03C 3/28 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B01D39/14 E
B01D39/16 A
B03C3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182580
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 義則
(72)【発明者】
【氏名】増亦 泰壽
(72)【発明者】
【氏名】菅沢 幸大
【テーマコード(参考)】
4D019
4D054
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BB02
4D019BB03
4D019BC01
4D019CB06
4D019CB07
4D054BC16
(57)【要約】
【課題】フィルター材の帯電効率を向上させることのできる帯電装置を提供する。
【解決手段】帯電装置10の搬送部20は、フィルター材11が載せられた状態で同フィルター材11を搬送する。ノズル部30は、搬送部20の上方に設けられて、水Wを下方に向けて噴射する。吸引部40は、搬送部20の下方に設けられる。吸引部40は、ベース部41、吸引孔44、吸引通路43を有する。ベース部41は、搬送部20によるフィルター材11の搬送方向Xにおいて延在する。吸引孔44は、ベース部41における搬送部20に対向する部分を上下方向Zに貫通する。吸引通路43は、吸引孔44を介して水Wを吸引する。吸引通路43は、一端が吸引孔44によって構成されるとともに他端が水Wを吸引する吸引装置45に連通される。吸引通路43における吸引孔44の側の部分は、同吸引孔44から離間するに連れて流路断面積が徐々に大きくなる形状をなしている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルター材が載せられた状態で同フィルター材を搬送する搬送部と、
前記搬送部の上方に設けられ、流体を下方に向けて噴射するノズル部と、
前記搬送部の下方に設けられ、前記搬送部による前記フィルター材の搬送方向において延在するベース部、及び、前記ベース部における前記搬送部に対向する部分を上下方向に貫通する吸引孔、及び、一端が前記吸引孔によって構成されるとともに他端が前記流体を吸引する吸引装置に連通されて前記吸引孔を介して前記流体を吸引する吸引通路、を有する吸引部と、を備え、
前記吸引通路における前記吸引孔の側の部分は、同吸引孔から離間するに連れて流路断面積が徐々に大きくなる形状をなしている、帯電装置。
【請求項2】
前記吸引通路における前記吸引孔の側の部分の内面は、段差の無い面によって構成されている
請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記吸引通路は、一方向に湾曲して延びる曲げ部を有するとともに、前記曲げ部よりも前記流体の流れ方向上流側に設けられて前記吸引通路の内部を前記曲げ部の曲げ方向の内側にあたる内側通路と前記曲げ方向の外側にあたる外側通路とに仕切る仕切壁を有し、
前記外側通路の前記流れ方向上流側の端部における流路断面積は、前記内側通路の前記流れ方向上流側の端部における流路断面積よりも大きくなっている
請求項1に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記内側通路における前記流体の流れ方向下流側の部分の流路断面積と、前記外側通路における前記流れ方向下流側の部分の流路断面積と、が同一になっている
請求項3に記載の帯電装置。
【請求項5】
前記吸引孔は、前記搬送方向と交差する方向において延びるスリットであり、
前記吸引通路における前記スリットの側の部分は、前記スリットから離間するに連れて同スリットの短手方向における前記吸引通路の通路幅が徐々に大きくなる形状をなすとともに、前記スリットから離間するに連れて同スリットの長手方向における前記吸引通路の通路幅が徐々に小さくなる形状をなしている
請求項1に記載の帯電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター材を帯電状態にする帯電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタ装置に設けられるフィルター材(例えば、不織布)のダスト捕集効率を高めるために、同フィルター材を帯電させる帯電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、帯電装置として、搬送コンベアなどの搬送部によって搬送されるフィルター材に対してノズルから流体(具体的には、水)を吹き付ける装置が記載されている。また特許文献1には、流体に浸された状態のフィルター材の下方に設けられた吸引部(詳しくは、スリット状をなす吸引孔)を介して流体を吸引する帯電装置が記載されている。いずれの装置においても、フィルター材の内部を流体が通過する際に発生する静電気を利用して、同フィルター材が帯電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-131485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記帯電装置によるフィルター材の帯電効率を向上させるためには、フィルター材の内部における流体の流速を高くすることが好ましい。上記帯電装置のように、吸引部にスリット状の吸引孔を設けるとともに同吸引孔を介して流体を吸引することで、同吸引孔が流体の流路を部分的に狭める絞り部として作用するため、流体の流速を高めることができる。
【0006】
ただし、この場合には、吸引部内における流体の流路が上記吸引孔の下流側の端部において拡大する構造になる。そのため、吸引部内における上記吸引孔の下流側の部分において剥離渦が発生するなどして、吸引部内における流体の流速が低下するおそれがある。この場合、フィルター材の内部を通過する流体の流速の低下を招いてしまう。この点において上記帯電装置は改善の余地を残すものになっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための帯電装置は、フィルター材が載せられた状態で同フィルター材を搬送する搬送部と、前記搬送部の上方に設けられ、流体を下方に向けて噴射するノズル部と、前記搬送部の下方に設けられ、前記搬送部による前記フィルター材の搬送方向において延在するベース部、及び、前記ベース部における前記搬送部に対向する部分を上下方向に貫通する吸引孔、及び、一端が前記吸引孔によって構成されるとともに他端が前記流体を吸引する吸引装置に連通されて前記吸引孔を介して前記流体を吸引する吸引通路、を有する吸引部と、を備え、前記吸引通路における前記吸引孔の側の部分は、同吸引孔から離間するに連れて流路断面積が徐々に大きくなる形状をなしている、帯電装置。
【0008】
上記構成では、ノズル部から噴射供給される流体は、搬送部によって搬送されるフィルター材の内部を通過するとともに、吸引部の吸引孔を介して吸引通路の内部に吸引される。上記構成では、吸引通路の流路断面積が上記吸引孔の下流側において拡大する構造になる。とはいえ、上記構成では、吸引通路の流路断面積が上記吸引孔の下流側の部分において徐々に拡大する構造になっている。そのため、吸引通路の流路断面積が上記吸引孔の下流端において一気に大きくなるものと比較して、吸引通路内における剥離渦の発生を抑えることができる。これにより、吸引通路の内部における流体の流速の低下を抑えることができるため、フィルター材の内部を通過する流体の流速の低下を抑えて同流速を高くすることができる。したがって上記構成によれば、帯電装置によるフィルター材の帯電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の帯電装置の側断面図である。
図2】フィルター材、搬送部、および吸引部の平面図である。
図3】吸引部の平面図である。
図4】吸引部の図3における4矢視図である。
図5】吸引部の図3における5矢視図である。
図6】仕切壁の上端部分およびその周辺を拡大して示す側断面図である。
図7】吸引部の吸引孔およびその周辺を拡大して示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、帯電装置の一実施形態について、図1図7を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態の帯電装置10は、フィルター材11の内部を流体(本実施形態では、水W)が通過する際に発生する静電気を利用して、同フィルター材11を帯電させるための装置である。フィルター材11は、通気性および通水性を有する不織布によって構成されている。帯電装置10は、搬送部20と、ノズル部30と、吸引部40とを有する。
【0011】
<搬送部>
図1および図2に示すように、搬送部20は、ベルトコンベア装置によって構成されている。搬送部20は、搬送ベルト21を有している。搬送ベルト21は、通気性および通水性を有している。搬送ベルト21には、フィルター材11が載せられる。搬送部20が作動することにより、搬送ベルト21はフィルター材11が載せられた状態で一方向(図1における右方向)に移動するようになっている。搬送部20は、搬送ベルト21にフィルター材11が載せられた状態で同フィルター材11を搬送するものである。
【0012】
<ノズル部>
図1に示すように、ノズル部30は、搬送部20の上方に設けられている。帯電装置10によってフィルター材11を帯電させる際には、ノズル部30から下方に向けて水Wが噴射される。
【0013】
ノズル部30の内部には、上下方向Zに延びる流体通路31が設けられている。流体通路31の一端(図1における上端)は圧送部32に連通されている。圧送部32は、水Wを圧送する圧送ポンプによって構成されている。流体通路31の他端(図1における下端)は、水Wを噴射する噴射口33になっている。本実施形態では、圧送部32からノズル部30に圧送供給される水Wが、同ノズル部30の噴射口33から下方(詳しくは、搬送部20およびフィルター材11)に向けて噴射される。
【0014】
<吸引部>
吸引部40は、搬送部20の下方に設けられている。帯電装置10によってフィルター材11を帯電させる際には、吸引部40によって水Wが吸引される。吸引部40は、ベース部41と、吸引通路43とを有する。
【0015】
<ベース部>
図1および図2に示すように、ベース部41は、搬送部20によるフィルター材11の搬送方向X(図1の左右方向)において延在している。ベース部41は、搬送部20の搬送ベルト21と略平行に延びる略矩形平板状をなしている。本実施形態では、ベース部41の上面と搬送ベルト21の下面とが対向する状態になっている。
【0016】
ベース部41には吸引孔44が設けられている。吸引孔44は、ベース部41を上下方向Zに貫通する貫通孔である。吸引孔44は、搬送ベルト21の下面に対して開口している。吸引孔44は、上記搬送方向Xと直交する直交方向Y(図2の上下方向)において直線状に延びるスリットである。吸引孔44の断面形状は、上記直交方向Yを長手方向とする長方形状をなしている。
【0017】
本実施形態では、ノズル部30の噴射口33とベース部41の吸引孔44とが上下方向Zにおいて並ぶように配置されている。そして、ノズル部30による水Wの噴射は、同水Wが噴射口33から直交方向Yにおいて扇状に広がる態様で実行される。本実施形態では、ノズル部30の噴射口33から噴射される水Wが吸引孔44の開口全体に吹き付けられるように、それらノズル部30および吸引孔44は配置されている。
【0018】
<吸引通路>
図1図3図5に示すように、吸引通路43は、内部を水Wが通過する管状をなしている。吸引通路43はベース部41の下方において延びている。吸引通路43の一端(図1における上端)は吸引孔44によって構成されている。すなわち、吸引通路43は、吸引孔44を同吸引通路43の上端開口とする態様で延びている。吸引通路43の他端(図1における下端)は吸引装置45に連通されている。吸引装置45は、水Wを吸引する吸引ポンプによって構成されている。吸引通路43は、吸引孔44を介して水Wを吸引するための通路を構成している。
【0019】
吸引通路43における上記吸引孔44の側の部分、すなわち吸引通路43の上部43Aは、同吸引孔44から離間するに連れて流路断面積が徐々に大きくなる形状をなしている。吸引通路43の上部43Aの内面は段差の無い面によって構成されている。図5に示すように、吸引通路43の上部43Aは、スリットからなる吸引孔44から離間するに連れて、同スリットの短手方向(図5の左右方向)における吸引通路43の通路幅W1が徐々に大きくなるテーパ形状をなしている。図4に示すように、吸引通路43の上部43Aは、スリットからなる吸引孔44から離間するに連れて、同スリットの長手方向(図4の左右方向)における吸引通路43の通路幅W2が徐々に小さくなるテーパ形状をなしている。
【0020】
図1図3図5に示すように、吸引通路43における上記吸引孔44から離間する側の部分、すなわち吸引通路43の下部43Bは円筒状をなしている。吸引通路43の下部43Bは、水Wの流れ方向上流側(以下、上流側)から順に、曲げ部51、および下流部52を有する。曲げ部51は、前記上部43Aの下端を始点に、吸引通路43を所定角度(本実施形態では、90度)に曲げる態様で、一方向(図1における左側)に湾曲して延びている。下流部52は、搬送方向Xにおいて直線状に延びている。
【0021】
<仕切壁>
図1図4および図5に示すように、吸引通路43の上部43Aには、同吸引通路43の内部を2つの通路(内側通路53、外側通路54)に仕切る仕切壁55が設けられている。仕切壁55は、上下方向Zおよび直交方向Yに延在する略平板状をなしている。本実施形態では、この仕切壁55により、吸引通路43の内部が、前記曲げ部51の曲げ方向の内側(図1における左側)にあたる内側通路53と曲げ方向の外側(図1における右側)にあたる外側通路54とに仕切られている。
【0022】
図1および図6に示すように、仕切壁55の上端部分は、先細の形状をなしている。詳しくは、仕切壁55における上記内側通路53側の第1面56は、上下方向Zおよび直交方向Yに延びる平面によって構成されている。一方、仕切壁55における上記外側通路54側の第2面57は、その上端部分57Aが角の丸められたいわゆるR形状になっている。また、仕切壁55の第2面57における上端部分57A以外の部分は、上下方向Zおよび直交方向Yに延びる平面によって構成されている。本実施形態では、仕切壁55の上端部分を上述した先細の形状にすることにより、外側通路54の上流側の端部54A(図6)における流路断面積S1が、内側通路53の上流側の端部53Aにおける流路断面積S2よりも大きくなっている。
【0023】
図1図4および図5に示すように、本実施形態では、内側通路53における水Wの流れ方向下流側(以下、下流側)の部分の流路断面積と外側通路54における下流側の部分の流路断面積とが同一になる態様で、仕切壁55は設けられている。具体的には、吸引通路43の上部43Aは、上下方向Zおよび直交方向Yに延びる平面を対称面とする面対称の形状をなしている。そして、こうした吸引通路43の上部43Aに、上記対称面において延びる態様で、仕切壁55は設けられている。本実施形態では、内側通路53における下流側の部分と外側通路54における下流側の部分とが同一の形状、詳しくは上下方向Zおよび直交方向Yに延びる平面を対称面とする面対称の形状をなしている。
【0024】
<帯電装置10の作動態様>
以下、本実施形態の帯電装置10の作動態様について説明する。
帯電装置10によってフィルター材11を帯電させる際には、フィルター材11が搬送ベルト21に載せられるとともに、搬送部20による同フィルター材11の搬送が開始される。また、圧送部32による水Wの圧送と吸引部40による水Wの吸引とが開始される。
【0025】
これにより、ノズル部30の噴射口33から水Wが噴射されるとともに、この水Wが、搬送ベルト21に載せられた状態で搬送されているフィルター材11に対して上方から吹き付けられるようになる。
【0026】
フィルター材11に吹き付けられた水Wは、同フィルター材11の内部を下方に向けて通過する。このとき、フィルター材11の内部(詳しくは、不織布の繊維の表面)を水Wが流動する際に発生する静電気を利用して、同フィルター材11が帯電される。
【0027】
フィルター材11の内部を通過した水Wは、搬送ベルト21を下方に向けて通過した後に、吸引部40によって吸引される。これにより、上記水Wは周囲の空気Aとともにベース部41の吸引孔44を介して吸引通路43に流入するようになる。そして、同水Wおよび空気Aは、吸引通路43の上部43A、下部43Bの曲げ部51、および下流部52の順に流れることで、下流側に送られる。
【0028】
<作用効果>
以下、本実施形態の帯電装置10による作用効果について説明する。
(1)本実施形態の帯電装置10では、ノズル部30から噴射供給される水Wは、搬送部20によって搬送されるフィルター材11の内部を通過するとともに、吸引部40の吸引孔44を介して吸引通路43の内部に吸引される。図7に示すように、本実施形態では、吸引通路43の流路断面積が上記吸引孔44の下流側において拡大する構造になっている。
【0029】
吸引通路43の流路断面積が上記吸引孔44の下流端において一気に大きくなる構造の帯電装置を「比較例の装置」とする。比較例の装置では、吸引通路43における上記吸引孔44の下流側の部分において、水Wや空気Aの流れの一部が大きく曲がるため、剥離流や剥離渦が発生し易い。そして、同部分において剥離渦が発生すると、これに起因して吸引通路43における水Wの流速が低下するおそれがある。
【0030】
図7に示すように、本実施形態の帯電装置10では、吸引通路43の上部43Aが、上記吸引孔44から離間するに連れて流路断面積が徐々に大きくなる形状をなしている。本実施形態の帯電装置10は、吸引通路43の上部43Aの流路断面積が上記吸引孔44の下流側の部分において徐々に大きくなる構造をなしている。
【0031】
こうした構造を採用することにより、吸引孔44の下流側の部分において、水Wや空気Aの流れの一部が大きく曲がる現象の発生(一例を図7中に矢印F1で示す)が抑えられる。そのため本実施形態によれば、比較例の装置と比べて、上記吸引孔44の下流側の部分における剥離渦の発生が抑えられるようになる。これにより、吸引通路43の上部43Aにおける水Wおよび空気Aの流速の低下を抑えることができるため、同吸引通路43の上流側に配置されるフィルター材11の内部を通過する水Wの流速の低下を抑えて同流速を高くすることができる。したがって、帯電装置10によるフィルター材11の帯電効率を向上させることができる。
【0032】
(2)吸引通路43の上部43Aの内面は段差の無い面によって構成されている。そのため、吸引通路43の上部43Aの内面に段差が形成される場合と比較して、吸引通路43を水Wおよび空気Aがスムーズに流れるようになるため、同吸引通路43の内部における水Wおよび空気Aの流速の低下を好適に抑えることができる。
【0033】
(3)吸引通路43の上部43Aには、同吸引通路43の内部を前記曲げ部51の曲げ方向の内側にあたる内側通路53と曲げ方向の外側にあたる外側通路54とに仕切る仕切壁55が設けられている。本実施形態では、外側通路54の上流側の端部54Aにおける流路断面積S1が、内側通路53の上流側の端部53Aにおける流路断面積S2よりも大きくなっている。
【0034】
図1および図6に示すように、本実施形態によれば、外側通路54の入口部分の開口面積(上記流路断面積S1)を、内側通路53の入口部分の開口面積(上記流路断面積S2)よりも大きくすることができる。これにより、吸引孔44を介して吸引通路43に吸引された水Wおよび空気Aが、内側通路53よりも外側通路54に流入し易い構造にすることができる。したがって、水Wおよび空気Aを、内側通路53と比べて外側通路54に多く流入させることができる。
【0035】
また、外側通路54の入口部分の開口面積を内側通路53の入口部分の開口面積よりも大きくすることにより、吸引通路43の上部43Aに、空気Aを外側通路54に積極的に流入させる流れF2(図6中に白抜きの矢印で示す流れ)が形成されるようになる。ここで、空気Aは、質量が小さいために、一方向への流れができると、これに追従して同じ方向に流れる傾向(性質)がある。本実施形態では、吸引孔44を介して吸引通路43に流入する空気Aは、上記流れF2に追従して同じ方向に流れるようになる。これにより、吸引孔44を介して吸引通路43に流入する空気Aの大部分が、外側通路54に流入するようになる。
【0036】
図1に示すように、外側通路54を通過した空気Aは、主に、曲げ部51における同外側通路54が連なる部分、すなわち曲げ部51における曲げ方向外側の部分(以下、第1部分Ao)を流れるようになる。また、内側通路53を通過した空気Aは、主に、曲げ部51における同内側通路53が連なる部分、すなわち曲げ部51の曲げ方向内側の部分(以下、第2部分Ai)を流れるようになる。したがって、本実施形態では、曲げ部51を通過する空気Aの大部分が、曲げ方向外側の第1部分Aoを流れるようになる。
【0037】
上記曲げ部51においては、曲げ方向外側の第1部分Aoにおける空気Aの流れの曲がり度合いが、曲げ方向内側の第2部分Aiにおける空気Aの流れの曲がり度合いよりも小さくなる。そのため、曲げ方向内側の第2部分Aiと比較して、曲げ方向外側の第1部分Aoにおいては圧力損失が小さくなり易い。
【0038】
本実施形態によれば、仕切壁55を設けることで、そうした曲げ部51における曲げ方向外側の第1部分Ao、すなわち圧力損失が小さくなり易い部分に、吸引通路43を流れる空気Aのうちの多くを流すことができる。したがって、曲げ部51を有する吸引通路43に対して、圧力損失を抑えながら、水Wおよび空気Aを下流側に流すことができる。これにより、吸引通路43の内部における水Wおよび空気Aの流速の低下を好適に抑えることができる。
【0039】
(4)本実施形態では、内側通路53における下流側の部分の流路断面積と外側通路54における下流側の部分の流路断面積とが同一になる態様で、仕切壁55が設けられている。
【0040】
ここで、仮に内側通路53の流路断面積を大きくして外側通路54の流路断面積を小さくすると、空気Aが曲げ部51における曲げ方向内側の第2部分Aiに流れ易くなるため、圧力損失が大きくなり易くなる。また、仮に内側通路53の流路断面積を小さくして外側通路54の流路断面積を大きくすると、曲げ部51における曲げ方向外側の第1部分Aoを空気Aが流れ易くなるため、圧力損失を小さくすることが可能になる。ただし、この場合には、内側通路53の流路断面積が小さくなる分だけ、曲げ部51における曲げ方向内側の第2部分Aiを流れる空気Aの流速が高くなるため、同第2部分Aiにおける圧力損失が大きくなり易くなる。
【0041】
本実施形態によれば、内側通路53における下流側の部分の流路断面積と外側通路54における下流側の部分の流路断面積とが同一になっている。そのため、曲げ部51における曲げ方向内側の第2部分Aiにおいて空気Aの流速が高くなることを抑えつつ、曲げ部51における曲げ方向外側の第1部分Aoにおいて空気Aの流量を多くすることができる。これにより、吸引通路43の全体における圧力損失をバランスよく抑えることができる。したがって、吸引通路43の内部における水Wおよび空気Aの流速の低下を好適に抑えることができる。
【0042】
(5)吸引孔44は、直交方向Yにおいて延びるスリットである。吸引通路43の上部43Aは、スリット状の吸引孔44から離間するに連れて同スリットの短手方向における同吸引通路43の通路幅W1が徐々に大きくなる形状をなしている。吸引通路43の上部43Aは、スリット状の吸引孔44から離間するに連れて、同スリットの長手方向における同吸引通路43の通路幅W2が徐々に小さくなる形状をなしている。本実施形態によれば、こうした構造を採用することにより、吸引通路43の形状を、圧力損失が大きくなるスリット形状から同圧力損失が小さくなる円筒形状に徐々に変化する形状にすることができる。
【0043】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・吸引通路43の上部43Aの内面は、段差の無い面によって構成することに限らず、階段状をなす面によって構成したり波形状をなす面によって構成したりするなど、任意形状の面によって構成することができる。要は、吸引通路43の上部43Aが、吸引孔44から離間するに連れて流路断面積が徐々に大きくなる形状になっていればよい。
【0045】
・外側通路54の上流側の端部54Aにおける流路断面積S1が内側通路53の上流側の端部53Aにおける流路断面積S2よりも大きくなるのであれば、仕切壁55の上端部分の形状は任意に変更することができる。例えば、仕切壁55の上端部分を、内側通路53の側に突出する凸部を有する形状にしたり、内側通路53の側に曲がった形状にしたりすることができる。
【0046】
・内側通路53における下流側の部分の流路断面積と外側通路54における下流側の部分の流路断面積とを非同一にする態様で、仕切壁55を設けるようにしてもよい。例えば、仕切壁55を湾曲した形状にしたり、吸引通路43の上部43Aの形状を面対称ではない形状にしたりすることができる。
【0047】
・仕切壁55を省略することができる。
・吸引孔44を、搬送方向Xに対して斜めに交差する方向において延びるスリットにしてもよい。
【0048】
・吸引孔44の断面形状は、断面円形状にしたり断面楕円形状にしたりするなど、任意に変更可能である。
・帯電装置によって帯電させるフィルター材としては、不織布からなるフィルター材11の他、織布からなるフィルター材や編み物からなるフィルター材を採用することができる。
【0049】
・フィルター材11を帯電させるための流体として水Wを用いる帯電装置10に限らず、水W以外の液体(例えばオイル)を用いる帯電装置や、空気等の気体を用いる帯電装置にも、上記実施形態にかかる帯電装置は適用することができる。
【0050】
<付記>
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]フィルター材が載せられた状態で同フィルター材を搬送する搬送部と、前記搬送部の上方に設けられ、流体を下方に向けて噴射するノズル部と、前記搬送部の下方に設けられ、前記搬送部による前記フィルター材の搬送方向において延在するベース部、及び、前記ベース部における前記搬送部に対向する部分を上下方向に貫通する吸引孔、及び、一端が前記吸引孔によって構成されるとともに他端が前記流体を吸引する吸引装置に連通されて前記吸引孔を介して前記流体を吸引する吸引通路、を有する吸引部と、を備え、前記吸引通路における前記吸引孔の側の部分は、同吸引孔から離間するに連れて流路断面積が徐々に大きくなる形状をなしている、帯電装置。
【0051】
[付記2]前記吸引通路における前記吸引孔の側の部分の内面は、段差の無い面によって構成されている、[付記1]に記載の帯電装置。
[付記3]前記吸引通路は、一方向に湾曲して延びる曲げ部を有するとともに、前記曲げ部よりも前記流体の流れ方向上流側に設けられて前記吸引通路の内部を前記曲げ部の曲げ方向の内側にあたる内側通路と前記曲げ方向の外側にあたる外側通路とに仕切る仕切壁を有し、前記外側通路の前記流れ方向上流側の端部における流路断面積は、前記内側通路の前記流れ方向上流側の端部における流路断面積よりも大きくなっている、[付記1]または[付記2]に記載の帯電装置。
【0052】
[付記4]前記内側通路における前記流体の流れ方向下流側の部分の流路断面積と、前記外側通路における前記流れ方向下流側の部分の流路断面積と、が同一になっている、[付記3]に記載の帯電装置。
【0053】
[付記5]前記吸引孔は、前記搬送方向と交差する方向において延びるスリットであり、前記吸引通路における前記スリットの側の部分は、前記スリットから離間するに連れて同スリットの短手方向における前記吸引通路の通路幅が徐々に大きくなる形状をなすとともに、前記スリットから離間するに連れて同スリットの長手方向における前記吸引通路の通路幅が徐々に小さくなる形状をなしている、[付記1]~[付記4]のいずれか一つに記載の帯電装置。
【符号の説明】
【0054】
10 帯電装置
11 フィルター材
20 搬送部
21 搬送ベルト
30 ノズル部
31 流体通路
32 圧送部
33 噴射口
40 吸引部
41 ベース部
43 吸引通路
43A 上部
43B 下部
44 吸引孔
45 吸引装置
51 曲げ部
52 下流部
53 内側通路
53A 端部
54 外側通路
54A 端部
55 仕切壁
56 第1面
57 第2面
57A 上端部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7