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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072023
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】地中熱利用システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20240520BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20240520BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20240520BHJP
   F24F 11/875 20180101ALI20240520BHJP
   F24F 11/85 20180101ALI20240520BHJP
   F24F 11/84 20180101ALI20240520BHJP
   F28D 21/00 20060101ALI20240520BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20240520BHJP
   F28F 23/00 20060101ALI20240520BHJP
   F24T 50/00 20180101ALI20240520BHJP
【FI】
F24F5/00 102Z
F24F3/00 B
F24F11/46
F24F11/875
F24F11/85
F24F11/84
F28D21/00 Z
F28D20/00 A
F28F23/00 A
F24T50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182598
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】篠島 隆司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 聡之
(72)【発明者】
【氏名】松倉 想馬
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎
(72)【発明者】
【氏名】天雲 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 研二
【テーマコード(参考)】
3L053
3L054
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BA01
3L053BA06
3L054BG08
3L054BG09
3L054BG10
3L054BH07
3L260AB06
3L260AB09
3L260AB20
3L260BA02
3L260BA13
3L260BA41
3L260BA45
3L260CB81
3L260FA03
3L260FA10
3L260FB45
3L260FB59
(57)【要約】
【課題】構成の複雑化を招くことなく、更なる省エネルギー化を図る。
【解決手段】地中6に配設される蓄熱部2と、その蓄熱部2に蓄熱された熱を利用して外気を空調処理する外調機3と、蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送する熱搬送部4と、蓄熱部2、熱搬送部4及び外調機3の作動状態を制御する制御部5とが備えられ、蓄熱部2は、温熱を蓄熱する温熱用蓄熱部21と冷熱を蓄熱する冷熱用蓄熱部22とを有し、制御部5は、熱搬送部4によって温熱用蓄熱部21に蓄熱された温熱を外調機3に熱搬送する温熱供給作動、外調機3によって、空調処理として外気を加熱する加熱処理を行い、加熱処理後の空気を外部に排気する温熱排気作動、及び、熱搬送部4によって外調機3の加熱処理にて発生する冷熱を冷熱用蓄熱部21に熱搬送する冷熱還元作動を行う冷熱蓄熱運転を実行可能に構成されている。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に配設される蓄熱部と、
その蓄熱部に蓄熱された熱を利用して外気を空調処理する外調機と、
前記蓄熱部と前記外調機との間で熱搬送する熱搬送部と、
前記蓄熱部、前記熱搬送部及び前記外調機の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記蓄熱部は、温熱を蓄熱する温熱用蓄熱部と冷熱を蓄熱する冷熱用蓄熱部とを有し、
前記制御部は、前記熱搬送部によって前記温熱用蓄熱部に蓄熱された温熱を前記外調機に熱搬送する温熱供給作動、前記外調機によって、空調処理として外気を加熱する加熱処理を行い、加熱処理後の空気を外部に排気する温熱排気作動、及び、前記熱搬送部によって前記外調機の加熱処理にて発生する冷熱を前記冷熱用蓄熱部に熱搬送する冷熱還元作動を行う冷熱蓄熱運転を実行可能に構成されている地中熱利用システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記熱搬送部によって前記冷熱用蓄熱部に蓄熱された冷熱を前記外調機に熱搬送する冷熱供給作動、前記外調機によって、空調処理として外気を冷却する冷却処理を行い、冷却処理後の空気を外部に排気する冷熱排気作動、及び、前記熱搬送部によって前記外調機の冷却処理にて発生する温熱を前記温熱用蓄熱部に熱搬送する温熱還元作動を行う温熱蓄熱運転を実行可能に構成されている請求項1に記載の地中熱利用システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記熱搬送部によって前記冷熱用蓄熱部に蓄熱された冷熱を前記外調機に熱搬送する冷熱供給作動、前記外調機によって、空調処理として外気を冷却する冷却処理を行い、冷却処理後の空気を空調対象空間に供給する冷房作動、及び、前記熱搬送部によって前記外調機の冷却処理にて発生する温熱を前記温熱用蓄熱部に熱搬送する温熱還元作動を行う冷熱利用運転と、
前記熱搬送部によって前記温熱用蓄熱部に蓄熱された温熱を前記外調機に熱搬送する温熱供給作動、前記外調機によって、空調処理として外気を加熱する加熱処理を行い、加熱処理後の空気を空調対象空間に供給する暖房作動、及び、前記熱搬送部によって前記外調機の加熱処理にて発生する冷熱を前記冷熱用蓄熱部に熱搬送する冷熱還元作動を行う温熱利用運転とを実行可能に構成されている請求項2に記載の地中熱利用システム。
【請求項4】
前記外調機を含めて、空調処理を行う空調装置が複数備えられ、
それら複数の空調装置の夫々に対して、空調処理用の熱媒体を供給可能な熱源機が備えられ、
前記熱搬送部は、前記蓄熱部と前記外調機との間で熱搬送する第1熱搬送状態と、前記蓄熱部と前記熱源機との間で熱搬送する第2熱搬送状態とに切替可能に構成され、
前記熱源機は、第2熱搬送状態の前記熱搬送部にて搬送される熱を用いて、前記空調装置に供給する空調処理用の熱媒体を生成可能に構成され、
前記複数の空調装置の夫々は、前記熱源機にて供給される空調処理用の熱媒体を用いて空調処理を実行可能に構成され、
前記制御部は、前記熱搬送部を第1熱搬送状態に切り替えて、前記蓄熱部と前記外調機との間で熱搬送しながら、前記外調機を作動状態とする外調機利用状態と、前記熱搬送部を第2熱搬送状態に切り替えて、前記蓄熱部と前記熱源機との間で熱搬送しながら、前記熱源機を作動状態とし且つ前記空調装置での空調処理を実行可能とする熱源機利用状態とに切替可能に構成されている請求項1~3の何れか1項に記載の地中熱利用システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱を利用して空調を行う地中熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地中熱利用システムとして、地中に配設された蓄熱部と、その蓄熱部に蓄熱された熱を利用して空調を行う空調装置とが備えられた地中熱利用システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の地中熱利用システムでは、蓄熱部として、温熱を蓄熱する温熱用蓄熱部と冷熱を蓄熱する冷熱用蓄熱部とが備えられている。例えば、夏期には、空調装置が、冷熱用蓄熱部に蓄熱された冷熱を利用して冷房運転を行い、その冷房運転にて発生する温熱を温熱用蓄熱部に蓄熱している。逆に、冬期には、空調装置が、温熱用蓄熱部に蓄熱された温熱を利用して暖房運転を行い、その暖房運転にて発生する冷熱を冷熱用蓄熱部に蓄熱している。このように、夏期に蓄熱した温熱を冬期に利用して暖房を行い、冬期に蓄熱した冷熱を夏期に利用して冷房を行い、年間を通じて空調を行いながら、省エネルギー化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-173257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の地中熱利用システムでは、空調を行うため等にヒートポンプ装置や冷却塔が備えられていることから、それらヒートポンプ装置や冷却塔を用いて、蓄熱部に蓄熱しているが、更なる省エネルギー化を図ることが難しかったり、構成の複雑化を招くものとなっている。
【0006】
ヒートポンプ装置を冷房運転や暖房運転させる際には、凝縮器や蒸発器に空気を通風させるためのエネルギーだけでなく、冷媒回路にて冷媒を循環させるために圧縮機を作動させるためのエネルギーも必要となり、消費エネルギーが増加することになる。
【0007】
冷却塔は、蒸発潜熱を利用し冷熱を生成できるものの、温熱を生成することができないので、蓄熱部に温熱を蓄熱する際には、他の温熱機器が必要となり、それだけ構成の複雑化を招くことになる。また、外気が有する温熱を冷却塔の冷却水等に熱伝達させる場合には、蒸発潜熱により熱が取られてしまうため、温熱の熱伝達を効率よく行うことができないので、外気が有する温熱を蓄熱部に蓄熱させる際に、効率よく行い難く、省エネルギー化の点でも不利な部分があった。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、構成の複雑化を招くことなく、更なる省エネルギー化を図ることができる地中熱利用システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、地中に配設される蓄熱部と、
その蓄熱部に蓄熱された熱を利用して外気を空調処理する外調機と、
前記蓄熱部と前記外調機との間で熱搬送する熱搬送部と、
前記蓄熱部、前記熱搬送部及び前記外調機の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記蓄熱部は、温熱を蓄熱する温熱用蓄熱部と冷熱を蓄熱する冷熱用蓄熱部とを有し、
前記制御部は、前記熱搬送部によって前記温熱用蓄熱部に蓄熱された温熱を前記外調機に熱搬送する温熱供給作動、前記外調機によって、空調処理として外気を加熱する加熱処理を行い、加熱処理後の空気を外部に排気する温熱排気作動、及び、前記熱搬送部によって前記外調機の加熱処理にて発生する冷熱を前記冷熱用蓄熱部に熱搬送する冷熱還元作動を行う冷熱蓄熱運転を実行可能に構成されている点にある。
【0010】
本構成によれば、外調機では、外気が有する熱を有効に活用しながら、温熱排気作動させるための消費エネルギーの削減を図りながら、蓄熱部への蓄熱を行うことができる。温熱排気作動では、例えば、熱搬送部にて熱搬送された温熱と外気とを熱交換させるだけで、加熱処理を行うことができながら、その加熱処理にて外気から冷熱を取得することができる。これにより、外調機では、例えば、外気を通風させるだけのエネルギーにて温熱排気作動を行うことができるので、ヒートポンプ装置のように冷媒回路を作動させるための大きなエネルギーを必要とせず、外気が有する熱を有効に活用して蓄熱部への蓄熱を行うことができ、更なる省エネルギー化を図ることができる。
【0011】
しかも、例えば、冬期の暖房負荷よりも夏期の冷房負荷の方が大きい建物等では、夏期の冷房負荷を賄うために、より多くの冷熱が必要となるが、冬期に、制御部が冷熱蓄熱運転を行うことで、夏期に必要となるより多くの冷熱を冷熱用蓄熱部に蓄熱しておくことができる。このように、冬期の暖房負荷よりも夏期の冷房負荷の方が大きい建物等でも、その暖房負荷と冷房負荷の大小の違いにも柔軟に対応することができる。更に、冷熱蓄熱運転では、外調機を温熱排気作動させて、加熱処理後の空気を空調対象空間に供給するのではなく、外部に排気しているので、空調対象空間に暖房負荷が無い夜間等の時間帯を有効に活用して、夜間の温度の低い外気が有する冷熱を効果的に冷熱用蓄熱部に蓄熱することができる。
【0012】
よって、冷熱用蓄熱部に冷熱を蓄熱するために、外調機を用いることで、構成の複雑化を招くことなく、更なる省エネルギー化を図ることができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記制御部は、前記熱搬送部によって前記冷熱用蓄熱部に蓄熱された冷熱を前記外調機に熱搬送する冷熱供給作動、前記外調機によって、空調処理として外気を冷却する冷却処理を行い、冷却処理後の空気を外部に排気する冷熱排気作動、及び、前記熱搬送部によって前記外調機の冷却処理にて発生する温熱を前記温熱用蓄熱部に熱搬送する温熱還元作動を行う温熱蓄熱運転を実行可能に構成されている点にある。
【0014】
本構成によれば、上述の第1特徴構成における外調機の温熱排気作動と同様に、冷熱排気作動では、例えば、熱搬送部にて熱搬送された冷熱と外気とを熱交換させるだけで、冷却処理を行うことができながら、その冷却処理にて外気から温熱を取得することができる。これにより、外調機では、例えば、外気を通風させるだけのエネルギーにて冷熱排気作動を行うことができるので、ヒートポンプ装置のように冷媒回路を作動させるための大きなエネルギーを必要とせず、外気が有する熱を有効に活用して蓄熱部への蓄熱を行うことができ、更なる省エネルギー化を図ることができる。
【0015】
しかも、例えば、冬期の暖房負荷が大きくなるような場合や温熱用蓄熱部の蓄熱量が少ない場合等には、夏期や中間期等に、制御部が温熱蓄熱運転を行うことで、温熱用蓄熱部に温熱を追加して蓄熱させて、冬期の暖房負荷を適切に賄うことができる。更に、温熱蓄熱運転では、外調機を冷熱排気作動させて、冷却処理後の空気を空調対象空間に供給するのではなく、外部に排気しているので、空調対象空間に冷房負荷が無い夜間等の時間帯を有効に活用して、温熱用蓄熱部に温熱を蓄熱することができる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、前記制御部は、
前記熱搬送部によって前記冷熱用蓄熱部に蓄熱された冷熱を前記外調機に熱搬送する冷熱供給作動、前記外調機によって、空調処理として外気を冷却する冷却処理を行い、冷却処理後の空気を空調対象空間に供給する冷房作動、及び、前記熱搬送部によって前記外調機の冷却処理にて発生する温熱を前記温熱用蓄熱部に熱搬送する温熱還元作動を行う冷熱利用運転と、
前記熱搬送部によって前記温熱用蓄熱部に蓄熱された温熱を前記外調機に熱搬送する温熱供給作動、前記外調機によって、空調処理として外気を加熱する加熱処理を行い、加熱処理後の空気を空調対象空間に供給する暖房作動、及び、前記熱搬送部によって前記外調機の加熱処理にて発生する冷熱を前記冷熱用蓄熱部に熱搬送する冷熱還元作動を行う温熱利用運転とを実行可能に構成されている点にある。
【0017】
本構成によれば、例えば、夏期等に制御部が冷熱利用運転を行うことで、冷熱用蓄熱部に蓄熱された冷熱を利用して空調対象空間を冷房しながら、温熱用蓄熱部に温熱を蓄熱することができる。冬期等に制御部が温熱利用運転を行うことで、温熱用蓄熱部に蓄熱された温熱を利用して空調対象空間を暖房しながら、冷熱用蓄熱部に冷熱を蓄熱することができる。これにより、夏期に蓄熱した温熱を冬期に利用して暖房を行い、冬期に蓄熱した冷熱を夏期に利用して冷房を行い、年間を通じて空調を行いながら、省エネルギー化を図ることができる。
【0018】
しかも、冷熱利用運転及び温熱利用運転の両運転において、外調機では、外気が有する熱を有効に活用しながら、冷房作動や暖房作動させるための消費エネルギーの削減を図ることができる。冷房作動では、例えば、熱搬送部にて熱搬送された冷熱と外気とを熱交換させるだけで、冷却処理を行うことができながら、その冷却処理にて外気から温熱を取得することができる。暖房作動でも、例えば、熱搬送部にて熱搬送された温熱と外気とを熱交換させるだけで、加熱処理を行うことができながら、その加熱処理にて外気から冷熱を取得することができる。これにより、外調機では、例えば、外気を通風させるだけのエネルギーにて冷房作動や暖房作動を行うことができるので、ヒートポンプ装置のように冷媒回路を作動させるための大きなエネルギーを必要とせず、外気が有する熱を有効に活用しながら、省エネルギー化を図ることができる。
【0019】
よって、冷房作動や暖房作動を行う外調機を備えることで、空調対象空間の空調を行いながら、構成の複雑化を招くことなく、更なる省エネルギー化を図ることができる。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、前記外調機を含めて、空調処理を行う空調装置が複数備えられ、
それら複数の空調装置の夫々に対して、空調処理用の熱媒体を供給可能な熱源機が備えられ、
前記熱搬送部は、前記蓄熱部と前記外調機との間で熱搬送する第1熱搬送状態と、前記蓄熱部と前記熱源機との間で熱搬送する第2熱搬送状態とに切替可能に構成され、
前記熱源機は、第2熱搬送状態の前記熱搬送部にて搬送される熱を用いて、前記空調装置に供給する空調処理用の熱媒体を生成可能に構成され、
前記複数の空調装置の夫々は、前記熱源機にて供給される空調処理用の熱媒体を用いて空調処理を実行可能に構成され、
前記制御部は、前記熱搬送部を第1熱搬送状態に切り替えて、前記蓄熱部と前記外調機との間で熱搬送しながら、前記外調機を作動状態とする外調機利用状態と、前記熱搬送部を第2熱搬送状態に切り替えて、前記蓄熱部と前記熱源機との間で熱搬送しながら、前記熱源機を作動状態とし且つ前記空調装置での空調処理を実行可能とする熱源機利用状態とに切替可能に構成されている点にある。
【0021】
本構成によれば、制御部が、熱搬送部を第1熱搬送状態に切り替えて、蓄熱部と外調機との間で熱搬送しながら、外調機を作動状態とする外調機利用状態に切り替えることで、冷熱蓄熱運転、温熱蓄熱運転、冷熱利用運転、温熱利用運転等、蓄熱部と外調機との間での熱搬送を行う各種の運転を行うことができる。
【0022】
制御部は、外調機利用状態だけでなく、熱搬送部を第2熱搬送状態に切り替えて、蓄熱部と熱源機との間で熱搬送しながら、熱源機を作動状態とし且つ空調装置での空調処理を実行可能とする熱源機利用状態にも切替可能である。これにより、熱源機では、蓄熱部に蓄熱された熱を用いて空調処理用の熱媒体を生成し、その生成した空調処理用の熱媒体を空調装置に供給して、空調装置での空調処理を行うことができる。しかも、熱源機にて空調処理用の熱媒体を生成する際に発生する熱を、蓄熱部に搬送して蓄熱部に蓄熱することができる。
【0023】
例えば、空調装置における空調負荷の条件、蓄熱部における蓄熱量等の蓄熱条件や外気温度の条件等、各種の条件に応じて、外調機利用状態と熱源機利用状態とのうち、どちらかを選択して切り替えることができるので、蓄熱部に蓄熱された熱を利用した空調や蓄熱部への蓄熱を効率よく効果的に行い、省エネルギー化を図ることができる地中熱利用システムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】地中熱利用システムの概略構成において冷熱利用運転での流体の流れ状態を示す図
図2】地中熱利用システムの概略構成において温熱利用運転での流体の流れ状態を示す図
図3】地中熱利用システムの概略構成において冷熱蓄熱運転での流体の流れ状態を示す図
図4】地中熱利用システムの概略構成において温熱蓄熱運転での流体の流れ状態を示す図
図5】第2実施形態の地中熱利用システムの概略構成において冷熱蓄熱運転での流体の流れ状態を示す図
図6】第2実施形態の地中熱利用システムの概略構成において冷熱利用冷房運転での流体の流れ状態を示す図
図7】別実施形態における地中熱利用システムの概略構成を示す図
図8】別実施形態における地中熱利用システムの概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る地中熱利用システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
この地中熱利用システム1は、図1に示すように、地中6に配設される蓄熱部2と、その蓄熱部2に蓄熱された熱を利用して外気A1を空調処理する外調機3と、蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送する熱搬送部4と、蓄熱部2、外調機3及び熱搬送部4の作動状態を制御する制御部5とが備えられている。
【0026】
図1図4の何れも、地中熱利用システム1の概略構成を示しているが、地中熱利用システム1は複数の運転を実行可能であることから、図1図4の夫々では、各運転において、蓄熱部2側の第1熱媒体B1、外調機3側の第2熱媒体B2や外気A1等の各流体がどのように通流するのかを、太線や矢印等を用いて示しており、外調機3側の第2熱媒体B2や空調処理後の空気A2については、通流していない部位を点線で示している。以下、図1に基づいて、地中熱利用システム1の概略構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、蓄熱部2は、地中6に配設されており、温熱を蓄熱する温熱用蓄熱部21と冷熱を蓄熱する冷熱用蓄熱部22とを有している。温熱用蓄熱部21は、温熱を有する第1熱媒体B1(例えば、水)を貯留可能な温熱用井戸にて構成されている。冷熱用蓄熱部22も、温熱用蓄熱部21と同様に、冷熱を有する第1熱媒体B1(例えば、水)を貯留可能な冷熱用井戸にて構成されている。
【0028】
外調機3は、外気導入路31を通して導入される外気A1を空調処理して、空調処理後の空気A2を空調空気供給路32を通して空調対象空間7に供給することで、空調対象空間7の空調を行う。図示は省略するが、外調機3は、蓄熱部2に蓄熱された熱の供給を受けて外気A1を空調処理する空調処理部(例えば、コイル)、空調処理後の空気A2を空調対象空間7に供給するためのファン等が備えられている。外調機3は、空調処理として、冷熱用蓄熱部22に蓄熱された冷熱の供給を受けて外気A1を冷却する冷却処理、温熱用蓄熱部21に蓄熱された温熱の供給を受けて外気A1を加熱する加熱処理等の処理を実行可能としている。
【0029】
熱搬送部4は、蓄熱部2側の第1熱媒体B1と外調機3側の第2熱媒体B2(例えば、水)とを熱交換させる熱交換部41と、蓄熱部2と熱交換部41との間で第1熱媒体B1を循環させる蓄熱部側循環回路42と、外調機3と熱交換部41との間で第2熱媒体B2を循環させる外調機側循環回路43とが備えられている。
【0030】
蓄熱部側循環回路42は、温熱用蓄熱部21と熱交換部41とを繋ぐ温熱側流路44と、その温熱側流路44を通して温熱用蓄熱部21における温熱を有する第1熱媒体B1を熱交換部41に供給する温熱側ポンプ45と、冷熱用蓄熱部22と熱交換部41とを繋ぐ冷熱側流路46と、その冷熱側流路46を通して冷熱用蓄熱部22における冷熱を有する第1熱媒体B1を熱交換部41に供給する冷熱側ポンプ47とが備えられている。
【0031】
蓄熱部側循環回路42は、例えば、図1に示すように、冷熱側ポンプ47を作動させることで、冷熱用蓄熱部22から取り出した第1熱媒体B1を冷熱側流路46を通して熱交換部41に供給し、熱交換部41を通過した第1熱媒体B1を温熱側流路44を通して温熱用蓄熱部21に戻す形態で、第1熱媒体B1を通流させている。蓄熱部側循環回路42は、例えば、図2に示すように、温熱側ポンプ45を作動させることで、温熱用蓄熱部21から取り出した第1熱媒体B1を温熱側流路44を通して熱交換部41に供給し、熱交換部41を通過した第1熱媒体B1を冷熱側流路46を通して冷熱用蓄熱部22に戻す形態で、第1熱媒体B1を通流させている。
【0032】
外調機側循環回路43には、第2熱媒体B2に搬送動力を付与する外調機側循環ポンプ48が備えられている。詳細な図示は省略するが、外調機側循環回路43は、分岐路やバイパス路等が備えられ、その分岐路やバイパス路の接続箇所に配設された切替弁を切り替えることで、第2熱媒体B2が流れる流路等の通流状態を切替可能となっている。
【0033】
例えば、図1では、外調機3から熱交換部41に第2熱媒体B2を供給するに当たり、熱交換部41に対して右側から供給して左側から排出している。それに対して、図2では、外調機3から熱交換部41に第2熱媒体B2を供給するに当たり、熱交換部41に対して左側から供給して右側から排出している。このように、外調機側循環回路43は、外調機3と熱交換部41との間で第2熱媒体B2を循環させるに当たり、外調機3及び熱交換部41に対する第2熱媒体B2の通流方向を第1方向(図1にて示す方向)とする第1通流状態(図1において太線にて示す通流状態)と、外調機3及び熱交換部41に対する第2熱媒体B2の通流方向を第1方向とは反対側の第2方向(図2にて示す方向)とする第2通流状態(図2において太線にて示す通流状態)とに切替可能に構成されている。ちなみに、図1及び図2において、第2熱媒体B2が通流していない流路等を点線にて示している。
【0034】
このように、熱搬送部4は、蓄熱部2から取り出した第1熱媒体B1を直接外調機3に供給するのではなく、熱交換部41を介して、第1熱媒体B1が有する熱を第2熱媒体B2に伝達し、第2熱媒体B2を外調機3に供給することで、蓄熱部2に蓄熱された熱を外調機3に搬送している。
【0035】
制御部5は、蓄熱部2、外調機3及び熱搬送部4の作動状態を制御することで、蓄熱部2に蓄熱された熱を利用して空調対象空間7の空調を行うための運転や、蓄熱部2に蓄熱させるための運転等の各種の運転を実行可能である。この実施形態では、制御部5が、図1にて示す冷熱利用運転、図2にて示す温熱利用運転、図3にて示す冷熱蓄熱運転、図4にて示す温熱蓄熱運転の各運転を実行可能に構成されているので、以下、図1図4の夫々を用いて各運転について説明する。
【0036】
(冷熱利用運転)
図1に示すように、この冷熱利用運転は、冷熱用蓄熱部22に蓄熱された冷熱を用いて外気A1を冷却し、その冷却された空気A2を空調対象空間7に供給して、空調対象空間7を冷房するものであり、外気A1を冷却する際に発生する温熱を温熱用蓄熱部21に蓄熱している。
【0037】
冷熱利用運転では、制御部5が、熱搬送部4によって冷熱用蓄熱部22に蓄熱された冷熱を外調機3に熱搬送する冷熱供給作動、外調機3によって、空調処理として外気A1を冷却する冷却処理を行い、冷却処理後の空気A2を空調対象空間7に供給する冷房作動、及び、熱搬送部4によって外調機3の冷却処理にて発生する温熱を温熱用蓄熱部21に熱搬送する温熱還元作動を行う。
【0038】
熱搬送部4については、制御部5が、蓄熱部側循環回路42において冷熱側ポンプ47を作動させ、外調機側循環回路43における第2熱媒体B2の通流状態を第1通流状態に切り替えて外調機側循環ポンプ48を作動させることで、熱搬送部4の冷熱供給作動及び温熱還元作動を行っている。
【0039】
外調機3については、制御部5が、外調機3において空調処理部(図示省略)にて冷熱の供給を受けて外気A1を冷却する冷却処理を行い、ファン(図示省略)を作動させることで、外調機3の冷房作動を行っている。
【0040】
冷熱利用運転では、熱搬送部4の冷熱供給作動によって、冷熱用蓄熱部22の第1熱媒体B1を取り出して熱交換部41に供給し、熱交換部41において第1熱媒体B1と第2熱媒体B2とを熱交換させて第2熱媒体B2を冷却し、その冷却された第2熱媒体B2を外調機3に供給している。外調機3の冷房作動によって、外調機3に供給された第2熱媒体B2にて外気A1を冷却し、その冷却された空気A2を空調対象空間7に供給して、空調対象空間7を冷房している。
【0041】
熱交換部41では、冷熱用蓄熱部22の冷熱を有する第1熱媒体B1と外調機3側の第2熱媒体B2とが熱交換されるので、第2熱媒体B2が冷却されるのに対して、第1熱媒体B1は加熱される。熱搬送部4の温熱還元作動によって、熱交換部41において加熱された第1熱媒体B1が温熱用蓄熱部21に搬送されて、温熱用蓄熱部21に温熱が蓄熱されている。
【0042】
熱交換部41では、第1熱媒体B1と第2熱媒体B2とが対向して通流するので、第1熱媒体B1と第2熱媒体B2との熱交換を効率よく行うことができる。よって、第1熱媒体B1が有する冷熱を第2熱媒体B2に効率よく伝達することができるので、第2熱媒体B2を所望温度まで十分に温度低下させることができながら、第1熱媒体B1を所望温度まで十分に温度上昇させて、空調対象空間7の冷房と温熱用蓄熱部21に対する温熱の蓄熱とを効果的に行うことができる。
【0043】
外気A1、第1熱媒体B1や第2熱媒体B2の温度について、例えば、冷熱用蓄熱部22から13℃の第1熱媒体B1を取り出し、熱交換部41において13℃の第1熱媒体B1と24℃の第2熱媒体B2とを熱交換させて、第2熱媒体B2を14℃に冷却し、第1熱媒体B1を23℃まで温度上昇させる。これにより、外気導入路31にて導入される30℃の外気A1を外調機3にて20℃に冷却して、20℃の空気A2を空調対象空間7に供給している。熱交換部41にて23℃まで温度上昇した第1熱媒体B1は、温熱用蓄熱部21に供給されて、その第1熱媒体B1が有する温熱を温熱用蓄熱部21に蓄熱している。
【0044】
このように、冷熱用蓄熱部22に蓄熱されている冷熱を用いて空調対象空間7の冷房を行っているが、それと同時に、外気A1が有する温熱を温熱用蓄熱部21に蓄熱している。温熱用蓄熱部21に供給する第1熱媒体B1の温度は、外気A1の温度に応じて変化するので、外気A1がより高温となると、それだけ高温の第1熱媒体B1を温熱用蓄熱部21に蓄熱することができる。よって、例えば、制御部5は、外気A1の温度が高いほど温熱用蓄熱部21に供給する第1熱媒体B1の温度を高くする形態で、外気A1の温度、及び、空調対象空間7の冷房要求温度に基づいて、温熱用蓄熱部21に供給する第1熱媒体B1の温度を設定することができる。このような設定を行った場合には、制御部5が、温熱用蓄熱部21に供給する第1熱媒体B1の温度が設定温度となるように、冷熱側ポンプ47や外調機側循環ポンプ48の回転速度を制御することができる。
【0045】
(温熱利用運転)
図2に示すように、この温熱利用運転は、温熱用蓄熱部21に蓄熱された温熱を用いて外気A1を加熱し、その加熱された空気A2を空調対象空間7に供給して、空調対象空間7を暖房するものであり、外気A1を加熱する際に発生する冷熱を冷熱用蓄熱部22に蓄熱している。
【0046】
温熱利用運転では、制御部5が、熱搬送部4によって温熱用蓄熱部21に蓄熱された温熱を外調機3に熱搬送する温熱供給作動、外調機3によって、空調処理として外気A1を加熱する加熱処理を行い、加熱処理後の空気A2を空調対象空間7に供給する暖房作動、及び、熱搬送部4によって外調機3の加熱処理にて発生する冷熱を冷熱用蓄熱部22に熱搬送する冷熱還元作動を行う。
【0047】
熱搬送部4については、制御部5が、蓄熱部側循環回路42において温熱側ポンプ45を作動させ、外調機側循環回路43における第2熱媒体B2の通流状態を第2通流状態に切り替えて外調機側循環ポンプ48を作動させることで、熱搬送部4の温熱供給作動及び冷熱還元作動を行っている。
【0048】
外調機3については、制御部5が、外調機3において空調処理部(図示省略)にて温熱の供給を受けて外気A1を加熱する加熱処理を行い、ファン(図示省略)を作動させることで、外調機3の暖房作動を行っている。
【0049】
温熱利用運転では、熱搬送部4の温熱供給作動によって、温熱用蓄熱部21の第1熱媒体B1を取り出して熱交換部41に供給し、熱交換部41において第1熱媒体B1と第2熱媒体B2とを熱交換させて第2熱媒体B2を加熱し、その加熱された第2熱媒体B2を外調機3に供給している。外調機3の暖房作動によって、外調機3に供給された第2熱媒体B2にて外気A1を加熱し、その加熱された空気A2を空調対象空間7に供給して、空調対象空間7を暖房している。
【0050】
熱交換部41では、温熱用蓄熱部21の温熱を有する第1熱媒体B1と第2熱媒体B2とが熱交換されるので、第2熱媒体B2が加熱されるのに対して、第1熱媒体B1は冷却される。熱搬送部4の冷熱還元作動によって、熱交換部41において冷却された第1熱媒体B1が冷熱用蓄熱部22に搬送されて、冷熱用蓄熱部22に冷熱が蓄熱されている。
【0051】
熱交換部41では、第1熱媒体B1と第2熱媒体B2とが対向して通流するので、第1熱媒体B1と第2熱媒体B2との熱交換を効率よく行うことができる。よって、第1熱媒体B1が有する温熱を第2熱媒体B2に効率よく伝達することができるので、第2熱媒体B2を所望温度まで十分に温度上昇させることができながら、第1熱媒体B1を所望温度まで十分に温度低下させて、空調対象空間7の暖房と冷熱用蓄熱部22に対する冷熱の蓄熱とを効果的に行うことができる。
【0052】
外気A1、第1熱媒体B1や第2熱媒体B2の温度について、例えば、温熱用蓄熱部21から23℃の第1熱媒体B1を取り出し、熱交換部41において23℃の第1熱媒体B1と12℃の第2熱媒体B2とを熱交換させて、第2熱媒体B2を22℃に加熱し、第1熱媒体B1を13℃まで温度低下させる。これにより、外気導入路31にて導入される3℃の外気A1を外調機3にて20℃に加熱して、20℃の空気A2を空調対象空間7に供給している。熱交換部41にて13℃まで温度低下した第1熱媒体B1は、冷熱用蓄熱部22に供給されて、その第1熱媒体B1が有する冷熱を冷熱用蓄熱部22に蓄熱している。
【0053】
このように、温熱用蓄熱部21に蓄熱されている温熱を用いて空調対象空間7の暖房を行っているが、それと同時に、外気A1が有する冷熱を冷熱用蓄熱部22に蓄熱している。冷熱用蓄熱部22に供給する第1熱媒体B1の温度は、外気A1の温度に応じて変化するので、外気A1がより低温となると、それだけ低温の第1熱媒体B1を冷熱用蓄熱部22に蓄熱することができる。よって、例えば、制御部5は、外気A1の温度が低いほど冷熱用蓄熱部22に供給する第1熱媒体B1の温度を低くする形態で、外気A1の温度、及び、空調対象空間7の暖房要求温度に基づいて、冷熱用蓄熱部22に供給する第1熱媒体B1の温度を設定することができる。このような設定を行った場合には、制御部5が、冷熱用蓄熱部22に供給する第1熱媒体B1の温度が設定温度となるように、温熱側ポンプ45や外調機側循環ポンプ48の回転速度を制御することができる。
【0054】
(冷熱蓄熱運転)
図3に示すように、この冷熱蓄熱運転は、外気A1が有する冷熱を冷熱用蓄熱部22に蓄熱するためのものであり、外気A1が有する冷熱を、外気A1→第2熱媒体B2→第1熱媒体B1の順に伝熱させて、冷熱用蓄熱部22に蓄熱している。
【0055】
冷熱蓄熱運転では、制御部5が、熱搬送部4によって温熱用蓄熱部21に蓄熱された温熱を外調機3に熱搬送する温熱供給作動、外調機3によって、空調処理として外気A1を加熱する加熱処理を行い、加熱処理後の空気A2を外部に排気する温熱排気作動、及び、熱搬送部4によって外調機3の加熱処理にて発生する冷熱を冷熱用蓄熱部22に熱搬送する冷熱還元作動を行う。
【0056】
熱搬送部4については、制御部5が、蓄熱部側循環回路42において温熱側ポンプ45を作動させ、外調機側循環回路43における第2熱媒体B2の通流状態を第2通流状態に切り替えて外調機側循環ポンプ48を作動させることで、熱搬送部4の温熱供給作動及び冷熱還元作動を行っている。
【0057】
外調機3については、制御部5が、外調機3において空調処理部(図示省略)にて温熱の供給を受けて外気A1を加熱する加熱処理を行い、その加熱された空気A2が、空調対象空間7ではなく、空調空気供給路32の途中部位から分岐する外部排気路33に通流させる状態に切り替えてファン(図示省略)を作動させることで、外調機3の温熱排気作動を行っている。
【0058】
図示は省略するが、空調空気供給路32において外部排気路33の分岐箇所にはダンパー等の通流状態切替部が配設されている。この通流状態切替部が、外調機3からの空気A2を空調対象空間7に供給する第1切替状態(図1図2参照)と、外調機3からの空気A2を外部排気路33に通流させる第2切替状態(図3参照)とに切替可能に構成されている。図1の冷熱利用運転や図2の温熱利用運転では、制御部5が通流状態切替部を第1切替状態に切り替えており、図3の冷熱蓄熱運転では、制御部5が通流状態切替部を第2切替状態に切り替えることで、空気A2を外部排気路33に通流させる状態に切り替えている。
【0059】
冷熱蓄熱運転では、外調機3の温熱排気作動によって、冷熱を有する外気A1を外調機3に取り込み、外調機3において外気A1にて第2熱媒体B2を冷却し、温度上昇した空気A2を外部排気路33を通して室外等の外部に排気している。熱搬送部4の温熱供給作動によって、温熱用蓄熱部21の第1熱媒体B1を取り出して熱交換部41に供給し、熱交換部41において冷熱を有する第2熱媒体B2と第1熱媒体B1とを熱交換させて第1熱媒体B1を冷却している。
【0060】
熱交換部41では、第1熱媒体B1と第2熱媒体B2とが対向して通流するので、第1熱媒体B1と第2熱媒体B2との熱交換を効率よく行うことができる。熱搬送部4の冷熱還元作動によって、熱交換部41において冷却された第1熱媒体B1が冷熱用蓄熱部22に搬送されて、冷熱用蓄熱部22に冷熱が蓄熱されている。
【0061】
外気A1、第1熱媒体B1や第2熱媒体B2の温度について、例えば、3℃の外気A1を外調機3に取り込み、その3℃の外気A1にて第2熱媒体B2を12℃まで冷却させる。熱交換部41において23℃の第1熱媒体B1と12℃の第2熱媒体B2とを熱交換させて、第1熱媒体B1を13℃まで冷却させる。その13℃の第1熱媒体B1を、冷熱用蓄熱部22に供給して、その第1熱媒体B1が有する冷熱を冷熱用蓄熱部22に蓄熱している。
【0062】
このように、外気A1が有する冷熱を冷熱用蓄熱部22に蓄熱する際に、冷熱用蓄熱部22に供給する第1熱媒体B1の温度は、外気A1の温度に応じて変化するので、外気A1がより低温となると、それだけ低温の第1熱媒体B1を冷熱用蓄熱部22に蓄熱することができる。よって、例えば、制御部5は、外気A1の温度が低いほど冷熱用蓄熱部22に供給する第1熱媒体B1の温度を低くする形態で、外気A1の温度に基づいて、冷熱用蓄熱部22に供給する第1熱媒体B1の温度を設定することができる。このような設定を行った場合には、制御部5が、冷熱用蓄熱部22に供給する第1熱媒体B1の温度が設定温度となるように、温熱側ポンプ45や外調機側循環ポンプ48の回転速度を制御することができる。
【0063】
(温熱蓄熱運転)
図4に示すように、この温熱蓄熱運転は、外気A1が有する温熱を温熱用蓄熱部21に蓄熱するためのものであり、外気A1が有する温熱を、外気A1→第2熱媒体B2→第1熱媒体B1の順に伝熱させて、温熱用蓄熱部21に蓄熱している。
【0064】
温熱蓄熱運転では、制御部5が、熱搬送部4によって冷熱用蓄熱部22に蓄熱された冷熱を外調機3に熱搬送する冷熱供給作動、外調機3によって、空調処理として外気A1を冷却する冷却処理を行い、冷却処理後の空気A2を外部に排気する冷熱排気作動、及び、熱搬送部4によって外調機3の冷却処理にて発生する温熱を温熱用蓄熱部21に熱搬送する温熱還元作動を行う。
【0065】
熱搬送部4については、制御部5が、蓄熱部側循環回路42において冷熱側ポンプ47を作動させ、外調機側循環回路43における第2熱媒体B2の通流状態を第1通流状態に切り替えて外調機側循環ポンプ48を作動させることで、熱搬送部4の冷熱供給作動及び温熱還元作動を行っている。
【0066】
外調機3については、制御部5が、外調機3において空調処理部(図示省略)にて冷熱の供給を受けて外気A1を冷却する冷却処理を行い、その冷却された空気A2が、空調対象空間7ではなく、外部排気路33に通流させる状態に切り替えてファン(図示省略)を作動させることで、外調機3の冷熱排気作動を行っている。ちなみに、図3の冷熱蓄熱運転と同様に、制御部5が空調空気供給路32の通流状態切替部(図示省略)を第2切替状態に切り替えることで、空気A2を外部排気路33に通流させる状態に切り替えている。
【0067】
温熱蓄熱運転では、外調機3の冷熱排気作動によって、温熱を有する外気A1を外調機3に取り込み、外調機3において外気A1にて第2熱媒体B2を加熱し、温度低下した空気A2を外部排気路33を通して室外等の外部に排気している。熱搬送部4の冷熱供給作動によって、冷熱用蓄熱部22の第1熱媒体B1を取り出して熱交換部41に供給し、熱交換部41において温熱を有する第2熱媒体B2と第1熱媒体B1とを熱交換させて第1熱媒体B1を加熱している。
【0068】
熱交換部41では、第1熱媒体B1と第2熱媒体B2とが対向して通流するので、第1熱媒体B1と第2熱媒体B2との熱交換を効率よく行うことができる。熱搬送部4の温熱還元作動によって、熱交換部41において加熱された第1熱媒体B1が温熱用蓄熱部21に搬送されて、温熱用蓄熱部21に温熱が蓄熱されている。
【0069】
外気A1、第1熱媒体B1や第2熱媒体B2の温度について、例えば、30℃の外気A1を外調機3に取り込み、その30℃の外気A1にて第2熱媒体B2を24℃まで加熱させる。熱交換部41において13℃の第1熱媒体B1と24℃の第2熱媒体B2とを熱交換させて、第1熱媒体B1を23℃まで加熱させる。その23℃の第1熱媒体B1を、温熱用蓄熱部21に供給して、その第1熱媒体B1が有する温熱を温熱用蓄熱部21に蓄熱している。
【0070】
このように、外気A1が有する温熱を温熱用蓄熱部21に蓄熱する際に、温熱用蓄熱部21に供給する第1熱媒体B1の温度は、外気A1の温度に応じて変化するので、外気A1がより高温となると、それだけ高温の第1熱媒体B1を温熱用蓄熱部21に蓄熱することができる。よって、例えば、制御部5は、外気A1の温度が高いほど温熱用蓄熱部21に供給する第1熱媒体B1の温度を高くする形態で、外気A1の温度に基づいて、温熱用蓄熱部21に供給する第1熱媒体B1の温度を設定することができる。このような設定を行った場合には、制御部5が、温熱用蓄熱部21に供給する第1熱媒体B1の温度が設定温度となるように、冷熱側ポンプ47や外調機側循環ポンプ48の回転速度を制御することができる。
【0071】
上述の如く、制御部5は、図1にて示す冷熱利用運転、図2にて示す温熱利用運転、図3にて示す冷熱蓄熱運転、図4にて示す温熱蓄熱運転の各運転を実行可能であり、各運転をどのようなタイミングにて実行するかについて説明する。
【0072】
例えば、空調対象空間7において冷房負荷や暖房負荷があるか否かの負荷条件、運転させる日付けや時間帯等の日時条件、外気A1がどのような温度であるかの外気条件等、各種の条件に基づいて、制御部5が、冷熱利用運転、温熱利用運転、冷熱蓄熱運転、温熱蓄熱運転から選択した1つの運転を実行可能に構成されている。
【0073】
例えば、空調対象空間7において冷房負荷が生じる夏期や中間期の昼間等の時間帯等では、制御部5が冷熱利用運転を選択して実行することで、冷房負荷を賄いながら、温熱用蓄熱部21に温熱を蓄熱することができる。逆に、空調対象空間7において暖房負荷が生じる冬期の朝方等の時間帯では、制御部5が温熱利用運転を選択して実行することで、暖房負荷を賄いながら、冷熱用蓄熱部22に冷熱を蓄熱することができる。このように、夏期に冷熱利用運転を行い、冬期に温熱利用運転を行うことで、夏期に蓄熱した温熱を用いて冬期に暖房負荷を賄うことができ、冬期に蓄熱した冷熱を用いて夏期に冷房負荷を賄うことができ、年間を通じて空調を行いながら、省エネルギー化を図ることができる。
【0074】
上述の如く、冷房負荷が生じている場合には、基本的に、制御部5が冷熱利用運転を選択して実行することができる。しかしながら、外気A1の温度によっては、温熱用蓄熱部21に供給する第1熱媒体B1の温度が温熱用所定温度以上にならず、温熱用蓄熱部21への温熱の蓄熱を適切に行えない場合がある。そこで、冷房負荷が生じていても、外気A1の温度等の外気条件(外気A1の温度が温熱用所定温度以下)によっては、制御部5が冷熱利用運転の実行を禁止している。また、暖房負荷が生じている場合も、同様に、外気A1の温度によっては、冷熱用蓄熱部22に供給する第1熱媒体B1の温度が冷熱用所定温度以下にならず、冷熱用蓄熱部22への冷熱の蓄熱を適切に行えない場合がある。よって、暖房負荷が生じていても、外気A1の温度等の外気条件(外気A1の温度が冷熱用所定温度以上)によっては、制御部5が温熱利用運転の実行を禁止している。
【0075】
外気A1の温度が低い冬期の夜間等では、暖房負荷がなければ、制御部5が冷熱蓄熱運転を選択して実行することで、外気A1が有する冷熱を効率よく冷熱用蓄熱部22に蓄熱することができる。逆に、外気A1の温度が高い夏期の夜間等では、冷房負荷がなければ、制御部5が温熱蓄熱運転を選択して実行することで、外気A1が有する温熱を効率よく温熱用蓄熱部21に蓄熱することができる。例えば、商業施設やオフィス等では、夜間等の時間帯に暖房負荷や冷房負荷等の空調負荷がなくなるので、この夜間等の時間帯を有効に活用して、外気A1が有する冷熱や温熱の蓄熱を効率よく行うことができる。
【0076】
冷熱蓄熱運転及び温熱蓄熱運転については、制御部5が、温熱用蓄熱部21及び冷熱用蓄熱部22における蓄熱量等の蓄熱条件に応じて実行することができる。例えば、冷熱用蓄熱部22における冷熱の蓄熱量が所定冷熱量以下となると、暖房負荷がないときに、制御部5が冷熱蓄熱運転を選択して実行することで、冷熱用蓄熱部22における冷熱の蓄熱量を増加させて、所定冷熱量以上の蓄熱量を確保することができる。同様に、温熱用蓄熱部21における温熱の蓄熱量が所定温熱量以下となると、冷房負荷がないときに、制御部5が温熱蓄熱運転を選択して実行することができる。
【0077】
例えば、年間を通して必要となる暖房負荷及び冷房負荷を賄うために、温熱用蓄熱部21における温熱の蓄熱量と冷熱用蓄熱部22における冷熱の蓄熱量とを比較して、どちらかが不足している場合には、その不足している側の蓄熱量を増加させるように運転することもできる。例えば、温熱用蓄熱部21における温熱の蓄熱量に対して冷熱用蓄熱部22における冷熱の蓄熱量の方が不足している場合には、暖房負荷がないときに、制御部5が積極的に冷熱蓄熱運転を選択して実行することで、冷熱用蓄熱部22における冷熱の蓄熱量を増加させて、冷熱と温熱との年間熱量バランスを取ることができる。
【0078】
ここで、年間を通して必要となる冷房負荷や暖房負荷は、例えば、過去の実績等に基づいて学習しておくことができる。温熱用蓄熱部21や冷熱用蓄熱部22における蓄熱量は、第1熱媒体B1の温度や貯留量を検出することで、温熱用蓄熱部21や冷熱用蓄熱部22における蓄熱量を求めることができる。
【0079】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、図1図4に示すように、蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送する運転として、冷熱利用運転、温熱利用運転、冷熱蓄熱運転、温熱蓄熱運転の各運転を中心に説明するために、空調処理を行う空調装置として、外調機3のみが備えられているものを例示して、地中熱利用システム1の概略構成のシンプル化を図っている。
【0080】
しかしながら、実際、各種の建物では、空調装置として、外調機3以外にも他の空調装置が複数備えられている。そこで、第2実施形態では、図5及び図6に示すように、空調装置として、外調機3だけでなく、他の空調装置も適用した複数の空調装置8が備えられた地中熱利用システム1について説明する。
【0081】
この第2実施形態における地中熱利用システム1では、図5及び図6に示すように、複数の空調装置8が備えられているだけでなく、それら複数の空調装置8の熱源となる熱媒体を供給可能な熱源機9が備えられており、蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送する状態(図5参照)と、蓄熱部2と熱源機9との間で熱搬送する状態(図6参照)とに切替可能となっている。
【0082】
以下、図5及び図6を用いて、複数の空調装置8や熱源機9に関連する構成を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同符号を記す等により説明を省略する。図5図6とは、どちらも、第2実施形態における地中熱利用システム1の概略構成を示しているが、蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送を行う場合(図5参照)と、蓄熱部2と熱源機9との間で熱搬送を行う場合(図6参照)とでは、熱媒体B1~B3が通流する部位が異なるので、図5図6とでは、熱媒体B1~B3が通流する部位を太線にて示し、熱媒体B1~B3が通流しない部位を点線で示している。
【0083】
第2実施形態における地中熱利用システム1では、図5及び図6に示すように、空調装置8として、外調機3に加えて、空調機81、ファンコイルユニット82等が備えられ、それら複数の空調装置8の夫々に対して、空調処理用の熱媒体B3を供給可能な熱源機9が備えられている。空調装置8としては、外調機3、空調機81、ファンコイルユニット82に限るものではなく、各種の空調装置を適用可能である。
【0084】
ちなみに、外調機3、空調機81、ファンコイルユニット82等の空調装置8は、空調対象空間7(図1参照)を空調するものであるので、空調対象空間に対応して配置されている。例えば、同一の空調対象空間に対して、外調機3、空調機81、ファンコイルユニット82等の複数の空調装置8を備えさせることができるが、外調機3を備えさせる空調対象空間と、空調機81を備えさせる空調対象空間とを異なる空調対象空間とすることもできる。よって、複数の空調装置8を備えるに当たり、空調対象空間に対してどのような対応関係で配置させるかは適宜変更が可能である。
【0085】
図6に示すように、熱源機9から空調装置8に空調処理用の熱媒体B3を供給するために、熱源機9と空調装置8との間で空調処理用の熱媒体B3を循環させる空調装置側循環回路91が備えられている。空調装置側循環回路91には、空調装置8への熱媒体B3の供給側の流路に空調装置側循環ポンプ92が配設され、外調機3、空調機81、ファンコイルユニット82等の複数の空調装置8が並列状態で備えられている。
【0086】
外調機3、空調機81、ファンコイルユニット82等の空調装置8の夫々は、図6に示すように、熱源機9にて供給される空調処理用の熱媒体B3を用いて空調処理を実行可能に構成されている。外調機3では、熱源機9にて供給される空調処理用の熱媒体B3と外気とを熱交換させる等により、空調処理として、外気を冷却する冷却処理や外気を加熱する加熱処理を行うことができる。空調機81は、例えば、圧縮式ヒートポンプ装置を備えており、熱源機9にて供給される空調処理用の熱媒体B3が有する熱を熱源として、圧縮式ヒートポンプ装置にて、空調処理として、空調対象空間を冷房する冷房処理や空調対象空間を暖房する暖房処理を行うことができる。ファンコイルユニット82では、熱源機9にて供給される空調処理用の熱媒体B3と空調対象空間の空気とを熱交換させる等により、空調処理として、空調対象空間を冷房する冷房処理や空調対象空間を暖房する暖房処理を行うことができる。
【0087】
図5及び図6に示すように、熱搬送部4として、空調装置側循環回路91、熱交換部41及び蓄熱部側循環回路42に加えて、第2熱媒体B2の通流状態を外調機通流状態(図5参照)と熱源機通流状態(図6参照)とに切替可能な通流状態切替循環回路49が備えられている。
【0088】
この通流状態切替循環回路49は、通流状態を切り替えるために、空調装置側循環回路91に接続された第1接続流路49aと、熱源機9に接続された第2接続流路49bとを有しており、第2熱媒体B2に搬送動力を付与する通流状態切替循環ポンプ50が備えられている。通流状態切替循環回路49は、図5に示すように、第1接続流路49aに第2熱媒体B2を通流させる状態に切り替えることで、熱交換部41と外調機3との間で第2熱媒体B2を循環させる外調機通流状態に切替可能となっている。また、通流状態切替循環回路49は、図6に示すように、第2接続流路49bに第2熱媒体B2を通流させる状態に切り替えることで、熱交換部41と熱源機9との間で第2熱媒体B2を循環させる熱源機通流状態に切替可能となっている。
【0089】
熱搬送部4は、通流状態切替循環回路49を備えることで、蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送する第1熱搬送状態(図5参照)と、蓄熱部2と熱源機9との間で熱搬送する第2熱搬送状態(図6参照)とに切替可能に構成されている。第1熱搬送状態では、図5に示すように、通流状態切替循環回路49が、第1接続流路49aに第2熱媒体B2を通流させる外調機通流状態に切り替えられる。第2熱搬送状態では、図6に示すように、通流状態切替循環回路49が、第2接続流路49bに第2熱媒体B2を通流させる熱源機通流状態に切り替えられる。
【0090】
熱源機9は、図6に示すように、第2熱搬送状態の熱搬送部4にて搬送される熱を用いて、空調装置8に供給する空調処理用の熱媒体B3を生成可能に構成されている。熱源機9は、第2熱搬送状態の熱搬送部4にて搬送される熱と空調処理用の熱媒体B3とを熱交換させる等により、空調処理用の熱媒体B3を冷却又は加熱し、その冷却又は加熱された空調処理用の熱媒体B3を、空調装置側循環回路91を通して空調装置8に供給可能としている。これにより、蓄熱部2に蓄熱された熱を利用しながら、空調装置8を冷却処理させる冷房作動や空調装置8を加熱処理させる暖房作動を行い、空調対象空間の冷房や暖房を行うようにしている。
【0091】
この第2実施形態では、制御部5が、蓄熱部2、外調機3及び熱搬送部4の作動状態に加えて、熱源機9や空調装置側循環回路91等の作動状態も制御可能となっている。これにより、制御部5は、蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送を行う運転(図5参照)に加えて、蓄熱部2と熱源機9との間で熱搬送を行う運転(図6参照)等も実行可能としている。以下、蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送を行う運転と、蓄熱部2と熱源機9との間で熱搬送を行う運転とに分けて説明を追加する。
【0092】
<蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送を行う運転>
蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送を行う運転として、制御部5は、第1実施形態と同様に、冷熱利用運転、温熱利用運転、冷熱蓄熱運転、温熱蓄熱運転を実行可能としている。図5では、冷熱蓄熱運転を実行する場合を示しているので、以下、図5に基づいて、冷熱蓄熱運転について説明する。
【0093】
(冷熱蓄熱運転)
冷熱蓄熱運転では、第1実施形態と同様に、制御部5が、熱搬送部4を温熱供給作動及び冷熱還元作動させ、外調機3を温熱排気作動させることで、図5に示すように、外調機3にて外気から取得した冷熱を、第2熱媒体B2→第1熱媒体B1の順に伝熱させて、冷熱用蓄熱部22に蓄熱している。
【0094】
熱搬送部4については、制御部5が、蓄熱部側循環回路42において温熱側ポンプ45を作動させ、通流状態切替循環ポンプ50を作動させる状態で通流状態切替循環回路49を外調機通流状態に切り替え、空調装置側循環ポンプ92を作動させることで、熱搬送部4を第1熱搬送状態に切り替えて、熱搬送部4の温熱供給作動及び冷熱還元作動を行っている。このとき、通流状態切替循環ポンプ50による搬送動力だけで、外調機3と熱交換部41との間で第2熱媒体B2を循環させることができる場合には、空調装置側循環ポンプ92を作動停止させることも可能である。
【0095】
外調機3については、第1実施形態と同様に、図3を参照すると、制御部5が、温熱の供給を受けて外気A1を加熱する加熱処理を行い、その加熱された空気A2が、空調対象空間7ではなく、空調空気供給路32の途中部位から分岐する外部排気路33に通流させる状態に切り替えてファン(図示省略)を作動させることで、外調機3の温熱排気作動を行っている。
【0096】
冷熱蓄熱運転では、熱搬送部4による第1熱搬送状態での温熱供給作動によって、外調機3にて外気A1(図3参照)から取得した冷熱を有する第2熱媒体B2が、空調装置側循環回路91及び通流状態切替循環回路49を通して、外調機3から熱交換部41に循環供給されている。熱交換部41には、温熱用蓄熱部21の第1熱媒体B1を取り出して熱交換部41に供給し、熱交換部41において冷熱を有する第2熱媒体B2と第1熱媒体B1とを熱交換させて第1熱媒体B1を冷却している。熱搬送部4による第1熱搬送状態での冷熱還元作動によって、熱交換部41にて冷却された第1熱媒体B1が冷熱用蓄熱部22に搬送されて、冷熱用蓄熱部22に冷熱が蓄熱されている。
【0097】
冷熱蓄熱運転を行うに当たり、制御部5は、熱搬送部4について、第1熱搬送状態に切り替えて、温熱供給作動及び冷熱還元作動を行っているので、蓄熱部2と外調機3との間で熱搬送しながら、外調機3を作動状態とする外調機利用状態に切り替えている。このように、第2実施形態では、第1実施形態と比較すると、熱搬送部4を作動させるに当たり、熱搬送部4を第1熱搬送状態に切り替える点が異なっている。
【0098】
第2実施形態では、冷熱蓄熱運転以外の、冷熱利用運転、温熱利用運転、温熱蓄熱運転の各運転を行う場合にも、制御部5が、熱搬送部4を作動させるに当たり、熱搬送部4を第1熱搬送状態に切り替えており、この点だけが異なっている。よって、冷熱利用運転、温熱利用運転、温熱蓄熱運転の各運転については、説明や図示は省略する。
【0099】
<蓄熱部2と熱源機9との間で熱搬送を行う運転>
蓄熱部2と熱源機9との間で熱搬送を行う運転として、制御部5は、冷熱用蓄熱部22に蓄熱された冷熱を用いて複数の空調装置8を冷房作動させる冷熱利用冷房運転と、温熱用蓄熱部21に蓄熱された温熱を用いて複数の空調装置8を暖房作動させる温熱利用暖房運転とを実行可能としている。図6では、冷熱利用冷房運転を実行する場合を示しているので、以下、図6に基づいて、冷熱利用冷房運転について説明する。
【0100】
(冷熱利用冷房運転)
冷熱利用冷房運転では、図6に示すように、熱搬送部4について、制御部5が、熱搬送部4を第2熱搬送状態に切り替えて、熱搬送部4によって冷熱用蓄熱部22に蓄熱された冷熱を熱源機9に熱搬送する熱源機用冷熱供給作動、及び、熱搬送部4によって熱源機9にて発生する温熱を温熱用蓄熱部21に熱搬送する熱源機用温熱還元作動を行う。制御部5が、蓄熱部側循環回路42において冷熱側ポンプ47を作動させ、通流状態切替循環ポンプ50を作動させる状態で通流状態切替循環回路49を熱源機通流状態に切り替えることで、熱搬送部4を第2熱搬送状態に切り替えて、熱搬送部4の熱源機用冷熱供給作動及び熱源機用温熱還元作動を行っている。
【0101】
熱源機9及び空調装置側循環回路91について、制御部5が、熱源機9を作動させて空調処理用の熱媒体B3を生成し、空調装置側循環ポンプ92を作動させて、その生成された空調処理用の熱媒体B3を、空調装置側循環回路91を通して空調装置8に供給している。
【0102】
空調装置8について、制御部5が、複数の空調装置8のうち、冷房負荷がある空調装置8を、空調処理として冷却処理を行う冷房作動を行っている。ちなみに、図6では、外調機3、空調機81、ファンコイルユニット82の全ての空調装置8を冷房作動させている場合を示している。
【0103】
冷熱利用冷房運転では、熱搬送部4による第2熱搬送状態での熱源機用冷熱供給作動によって、冷熱用蓄熱部22の第1熱媒体B1を取り出して熱交換部41に供給し、熱交換部41において第1熱媒体B1と第2熱媒体B2とを熱交換させて第2熱媒体B2を冷却し、その冷却された第2熱媒体B2を熱源機9に供給している。熱源機9では、第2熱媒体B2が有する冷熱を用いて空調処理用の熱媒体B3を冷却している。その冷却された空調処理用の熱媒体B3は、空調装置側循環回路91を通して空調装置8に供給されている。空調装置8の冷房作動によって、空調処理用の熱媒体B3が有する冷熱を用いて、空調対象空間が冷房されている。熱搬送部4による第2搬送状態での熱源機用温熱還元作動によって、熱交換部41において加熱された第1熱媒体B1が温熱用蓄熱部21に搬送されて、温熱用蓄熱部21に温熱が蓄熱されている。
【0104】
冷熱利用冷房運転を行うに当たり、制御部5は、熱搬送部4について、第2熱搬送状態に切り替えて、熱源機用冷熱供給作動及び熱源機用温熱還元作動を行っているので、蓄熱部2と熱源機9との間で熱搬送しながら、熱源機9を作動状態とし且つ空調装置8での空調処理を実行可能とする熱源機利用状態に切り替えている。
【0105】
(温熱利用暖房運転)
温熱利用暖房運転では、冷熱利用冷房運転に対して、蓄熱部側循環回路42において冷熱側ポンプ47と温熱側ポンプ45とのどちらを作動させるかという点と、空調装置8において冷房作動と暖房作動とのどちらを行うかという点だけが異なり、図6において、蓄熱部側循環回路42における第1熱媒体B1の通流方向が反対側となるだけであるので、新たな図示は省略して、図6を参照しながら説明する。
【0106】
温熱利用暖房運転では、熱搬送部4について、制御部5が、熱搬送部4を第2熱搬送状態に切り替えて、熱搬送部4によって温熱用蓄熱部21に蓄熱された温熱を熱源機9に熱搬送する熱源機用温熱供給作動、及び、熱搬送部4によって熱源機9にて発生する冷熱を冷熱用蓄熱部22に熱搬送する熱源機用冷熱還元作動を行う。制御部5が、蓄熱部側循環回路42において冷熱側ポンプ47を作動させ(温熱側ポンプ45を作動させる図6とは逆となる)、通流状態切替循環ポンプ50を作動させる状態で通流状態切替循環回路49を熱源機通流状態に切り替えることで、熱搬送部4を第2熱搬送状態に切り替えて、熱搬送部4の熱源機用温熱供給作動及び熱源機用冷熱還元作動を行っている。冷熱側ポンプ47を作動させるので、蓄熱部側循環回路42における第1熱媒体B1の通流方向が、図6に示すものとは反対側となる。
【0107】
熱源機9及び空調装置側循環回路91について、制御部5が、熱源機9を作動させて空調処理用の熱媒体B3を生成し、空調装置側循環ポンプ92を作動させて、その生成された空調処理用の熱媒体B3を、空調装置側循環回路91を通して空調装置8に供給している。空調装置8について、制御部5が、複数の空調装置8のうち、暖房負荷がある空調装置8を、空調処理として加熱処理を行う暖房作動を行っている。
【0108】
温熱利用暖房運転では、熱搬送部4による第2熱搬送状態での熱源機用温熱供給作動によって、温熱用蓄熱部21の第1熱媒体B1を取り出して熱交換部41に供給し(図6とは第1熱媒体B1の通流方向が反対側となる)、熱交換部41において第1熱媒体B1と第2熱媒体B2とを熱交換させて第2熱媒体B2を加熱し、その加熱された第2熱媒体B2を熱源機9に供給している。熱源機9では、第2熱媒体B2が有する温熱を用いて空調処理用の熱媒体B3を加熱している。その加熱された空調処理用の熱媒体B3は、空調装置側循環回路91を通して空調装置8に供給されている。空調装置8の暖房作動によって、空調処理用の熱媒体B3が有する温熱を用いて、空調対象空間が暖房されている。熱搬送部4による第2搬送状態での熱源機用冷熱還元作動によって、図6とは第1熱媒体B1の通流方向が反対側となり、熱交換部41において冷却された第1熱媒体B1が冷熱用蓄熱部22に搬送されて、冷熱用蓄熱部22に冷熱が蓄熱されている。
【0109】
第2実施形態における地中熱利用システム1では、図5及び図6に示すように、通流状態切替循環回路49の第2熱媒体B2を冷却可能な冷却塔10が備えられている。これにより、例えば、図6に示すように、熱搬送部4を第2熱搬送状態に切り替えた場合に、必要に応じて、制御部5が冷却塔10を作動させることで、熱源機9と熱交換部41との間で循環される第2熱媒体B2を冷却させることができる。
【0110】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0111】
(1)上記実施形態では、外調機3と蓄熱部2との組を1つ備えた例を示したが、外調機3と蓄熱部2との組を複数備えることもできる。
例えば、外調機3と蓄熱部2との組を2つ備えた場合を図7に示している。図7は、図1~4の別実施形態を図示したものであるが、図示は省略するが、図5及び6の別実施形態として、空調装置8と蓄熱部2との組を複数備えることもできる。
【0112】
図7では、図中右側に位置する蓄熱部2(温熱用蓄熱部21及び冷熱用蓄熱部22)を、図中左側に位置する蓄熱部2(温熱用蓄熱部21及び冷熱用蓄熱部22)よりも蓄熱部2の深さを深くしている。このように、外調機3(空調装置8)と蓄熱部2との組を複数備える場合には、外調機3と蓄熱部2との組によって、蓄熱部2の深さを変えることができる。
【0113】
(2)上記実施形態では、外調機3を1台備えた例を示したが、外調機3を複数台備えることもできる。
例えば、図8に示すように、外調機3を複数備える場合(図8では3台)には、外調機側循環回路43に、複数の外調機3を並列状態で備えさせる。これにより、複数の外調機3を各別に作動させることができながら、冷熱利用運転、温熱利用運転、冷熱蓄熱運転、温熱蓄熱運転等の各種の運転を行うことができる。例えば、複数の外調機3を作動させながら、冷熱蓄熱運転や温熱蓄熱運転を行うことで、複数の外調機3の夫々にて取得した熱を蓄熱部2に蓄熱することができ、より多くの熱を効果的に蓄熱することができる。
ちなみに、図8は、図1~4の別実施形態を図示したものであるが、図示は省略するが、図5及び6の別実施形態として、複数の外調機3を並列状態で備えることもできる。
【符号の説明】
【0114】
1 地中熱利用システム
2 蓄熱部
3 外調機
4 熱搬送部
5 制御部
7 空調対象空間
8 空調装置
9 熱源機
21 温熱用蓄熱部
22 冷熱用蓄熱部
B3 空調処理用の熱媒体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8