(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072045
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20240520BHJP
F24F 1/0025 20190101ALI20240520BHJP
F24F 11/48 20180101ALI20240520BHJP
F04D 27/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H02P29/00
F24F1/0025
F24F11/48
F04D27/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182633
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】武藤 哲平
【テーマコード(参考)】
3H021
3L049
3L260
5H501
【Fターム(参考)】
3H021AA08
3H021BA17
3H021CA04
3H021DA06
3H021EA03
3H021EA07
3H021EA12
3L049BD02
3L260BA32
3L260BA80
3L260CB44
3L260DA05
3L260DA15
3L260FB12
3L260FB80
5H501AA08
5H501DD04
5H501FF07
5H501FF08
5H501JJ03
5H501LL37
(57)【要約】
【課題】ベアリング内において油膜が好適に形成されていない状態で、立ち上げ時の高回転数域でモータを駆動開始させると、ベアリング内の金属同士の接触が増え、モータ寿命低下の原因となってしまうという課題があった。
【解決手段】潤滑剤の封入されたベアリングにより回転軸が支持された、回転数可変のモータと、前記モータを回転駆動するモータ制御部とを備え、前記モータ制御部は、前記モータを所定の低回転数域で回転させる低回転数運転を行った場合、前記低回転数域よりも回転数が大きい高回転数域で前記モータを所定時間だけ回転させる油膜回復運転を実行することで、ベアリングの油膜が好適に形成させることができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤の封入されたベアリングにより回転軸が支持された、回転数可変のモータと、
前記モータを回転駆動するモータ制御部と
を備え、
前記モータ制御部は、
前記モータを所定の低回転数域で回転させる低回転数運転を行った場合、前記低回転数域よりも回転数が大きい高回転数域で前記モータを所定時間だけ回転させる油膜回復運転を実行することを特徴とする送風装置。
【請求項2】
外部からの空気を取り入れ可能な空気取入口及び取り入れられた空気を外部へ吹出し可能な空気吹出口が開けられているケースと、このケースに前記モータによって回転可能に支持され回転することにより送風を行なうファンと、前記ファンに付着した塵埃を除去可能なブラシ部とを有し、
前記モータ制御部は、前記ブラシ部を前記ファンに当接させた状態で、前記ファンを前記低回転数域で回転させることで前記ファンに付着した塵埃を除去する清掃運転時に前記低回転数運転を実行し、清掃運転終了後に前記油膜回復運転を実行することを特徴とする請求項1記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に送風するための送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2017-067046号公報)は、回転軸(モータ軸)とモータ軸を支持するベアリング(軸受)とを有し、軸受とモータ軸の端部との間に配置されモータ軸が貫通する筒状のスリーブと、スリーブとモータ軸の端部との間に配置されモータ軸が貫通する筒状のファンボスと、モータ軸の端部に配置される締結部材と、を備え、スリーブとファンボスが、軸受と締結部材とにより挟まれる送風装置(送風機)を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなモータに用いられるベアリングには、長期間にわたる潤滑を確保するために内部にグリス等の潤滑剤を封入できるタイプが存在する。粘度が高い潤滑剤を封入すると、低回転数でモータを駆動させた場合、ベアリング内において油膜が好適に形成されない場合がある。また、粘度が低い潤滑剤を封入する場合では、低回転数でモータを駆動させてもベアリング内において油膜が好適に形成されるが、高回転数でモータを駆動させた場合、油膜が好適に形成されない場合がある。
【0005】
また、ベアリング内において油膜が好適に形成されていない状態で、立ち上げ時の高回転数域でモータを駆動開始させると、ベアリング内の金属同士の接触が増え、モータ寿命低下の原因となってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る送風装置は、潤滑剤の封入されたベアリングにより回転軸が支持された、回転数可変のモータと、前記モータを回転駆動するモータ制御部とを備え、前記モータ制御部は、前記モータを所定の低回転数域で回転させる低回転数運転を行った場合、前記低回転数域よりも回転数が大きい高回転数域で前記モータを所定時間だけ回転させる油膜回復運転を実行する。
【0007】
また、外部からの空気を取り入れ可能な空気取入口及び取り入れられた空気を外部へ吹出し可能な空気吹出口が開けられているケースと、このケースに前記モータによって回転可能に支持され回転することにより送風を行なうファンと、前記ファンに付着した塵埃を除去可能なブラシ部とを有し、前記モータ制御部は、前記ブラシ部を前記ファンに当接させた状態で、前記ファンを前記低回転数域で回転させることで前記ファンに付着した塵埃を除去する清掃運転時に前記低回転数運転を実行し、清掃運転終了後に前記油膜回復運転を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ベアリングの油膜を好適に形成させることができる送風装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1による空調装置を模式的に示した図である。
【
図3】
図2に示された室内機に用いられているケースからファンが外された状態の斜視図である。
【
図4】
図2に示された室内機を右側面側から見た状態の断面図である。
【
図7】実施例1による空調装置の制御ブロック図である。
【
図10】実施例1による空調装置の制御例を表すフローチャート図である。
【
図11】自動清掃がON(入)であるときの冷房運転後の送風路を清掃するための制御例を説明するタイミングチャート図である。
【
図12】自動清掃がON(入)であるときの暖房運転後の送風路を清掃するための制御例を説明するタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図中Frは前、Rrは後、Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。
【0011】
図1を参照する。
図1には、本発明による空調装置10が示されている。空調装置10は、屋内Inを冷却する冷房機能と、屋内Inを暖房する暖房機能と、を備えている。
【0012】
また、
図7で後述するように、空調装置10は、制御部300を備え、制御部300は、冷暖房運転を実施することができる。
【0013】
図1において、空調装置10は、屋外Ouに設けられた室外機20及び屋内Inに設けられた室内機30を備えてなる。室外機20と、室内機30とは、冷媒を循環させることができるよう互いに接続されている。以下、特に説明のない限り、冷媒の循環する方向は、冷房運転時を基準とする。
【0014】
室外機20は、冷房運転時及び暖房運転時における冷媒の循環する方向を切り替える四路切替弁21と、この四路切替弁21を通過した冷媒が流され冷媒を圧縮する圧縮機22と、この圧縮機22において圧縮され高温高圧となった冷媒が流れる室外熱交換器23と、この室外熱交換器23に向かって送風を行う室外ファン24と、室外熱交換器23を通過した冷媒を減圧する膨張弁25と、を有する。
【0015】
室内機30は、屋内Inにおいて壁Waに掛けて用いられる。室内機30のケース40は、支持板を介して壁Waに固定されている。左右方向に延びるケース40には、屋内Inの空気をケース40内に取り込み屋内Inへ送風を行うファン33と、このファン33が取り込んだ空気と熱交換を行う熱交換器34と、ケース40の内部に付着した塵埃を払拭可能な払拭機構50と、が収納されている。
【0016】
冷房運転時において、圧縮機22で高温高圧とされた冷媒は、室外熱交換器23において外気と熱交換を行い、熱を放出する。このとき、室外ファン24が作動することによって、外気を強制的に室外熱交換器23の外周に流し、熱交換を促す。室外熱交換器23を通過し熱を放出した冷媒は、膨張弁25において減圧され、温度が低下する。温度が低下した冷媒は、室内機30に送られる。
【0017】
室内機30のケース40には、ファン33が作動することにより空気が導入される。導入された空気は、熱交換器34の外周を通過し、屋内Inに送風される。熱交換器34には、室外機20において冷却された冷媒が供給されている。熱交換器34の外周を通過する空気は、冷媒と熱交換を行い、冷却される。屋内Inには、冷却された空気が送風される。
【0018】
暖房運転時には、四路切替弁21が冷媒の流路を切り替え、冷房運転時とは逆方向に冷媒を循環させる。
【0019】
図2を参照する。ケース40の上面には、外部(屋内In)からの空気を取り入れ可能な空気取入口41が開けられている。ケース40の前下部には、外部(屋内In)へ空気を吹出し可能な空気吹出口42が開けられている。空気吹出口42には、空気吹出口42を開閉可能であるとともに、空気の吹き出す方向を上下方向に調整可能な上下ルーバー36が設けられている。
【0020】
図3及び
図4を参照する。また、上下ルーバー36(
図2参照)の後方には、空気の吹き出す方向を左右方向に調整可能な左右ルーバー37が設けられている。ケース40は、ファン33を回転可能に支持しているケース本体部43と、このケース本体部43に固定されケース本体部43の一部を覆っているカバー部44と、を有する。
【0021】
ケース40には、ファン33の送風する空気を空気吹出口42(
図2参照)に向かってガイドするガイド面部45が形成されている。ガイド面部45は、ファン33の軸線Cが延びる方向に沿ってケース40の長手方向に亘って形成されている。以下、ファン33とガイド面部45との間の空間を、送風された空気が流れる送風路APという。
【0022】
ガイド面部45は、ケース本体部43の前面とカバー部44の前面とによって形成されている。以下、ガイド面部45のうち、ケース本体部43によって構成されている部位を本体側ガイド面部43aといい、カバー部44によって構成されている部位をカバー側ガイド面部44aということがある。ガイド面部45という場合には、本体側ガイド面部43aとカバー側ガイド面部44aとの両方を含む。
【0023】
ケース本体部43には、払拭機構50の一部が収納されている伝達部収納部43bが形成されている。
【0024】
図4及び
図5を参照する。伝達部収納部43bは、ケース本体部43の下部において後方に略U字状に突出している部位であり、ケース本体部43の長手方向に亘って形成されている。伝達部収納部43bの前方はカバー部44によって覆われている。
【0025】
カバー部44は、カバー側ガイド面部44aの裏面から伝達部収納部43bに向かって突出しカバー部44を補強するリブ44bが形成されている。
【0026】
ケース本体部43とカバー部44との間には、所定の間隔の間隙である間隙部Spが形成されている。間隙部Spは、略同一の幅でケースの長手方向に亘って形成されている。
【0027】
払拭機構50は、駆動部60と、この駆動部60によって駆動されガイド面部45に沿って移動可能であるとともにガイド面部45に付着した塵埃を払拭可能な払拭部70と、払拭本体部74に着脱可能に設けられガイド面部45に付着した塵埃を払拭可能なシート75と、払拭本体部74からファン33まで延びファン33の清掃を行なうことが可能なブラシ部76と、を有する。
【0028】
図6を参照する。駆動部60は、ケース40の右端部に設けられ通電することにより作動する掃除用モータ61と、この掃除用モータ61に接続され払拭部70に掃除用モータ61の駆動力を伝達する駆動力伝達部62と、を有する。なお、掃除用モータ61は左端部に設けられていても良い。
【0029】
駆動力伝達部62は、伝達部収納部43bに収納されている。駆動力伝達部62は、掃除用モータ61の駆動力を伝達可能であり複数のギヤによって構成されるギヤ部62aと、このギヤ部62aに一体的に設けられギヤ部62aが回転することにより共に回転する駆動プーリ62bと、この駆動プーリ62bが回転することにより変位し払拭部70を支持している支持伝達部62cと、有する。
【0030】
また、駆動力伝達部62は、ケース本体部43の駆動プーリ62bが設けられるのとは逆側の端部に設けられている従動プーリを有する。
【0031】
支持伝達部62cには、歯付きロープ(シンクロメッシュロープ)を用いることができる。支持伝達部62cは、ケース本体部43の左右両端にそれぞれ設けられた駆動プーリ62bと従動プーリとに、環状に掛け渡されている。ロープ状の支持伝達部62cの両端は、それぞれ払拭部70に接続されて環状とされている、ということもできる。
【0032】
図4を参照する。払拭部70は、支持伝達部62cに接続され駆動部60が作動することにより左右方向に従動する従動部71と、この従動部71に回転可能に支持され上面が伝達部収納部43bに当接可能な第1ガイドローラ72と、従動部71に回転可能に支持され側面がリブ44bに当接している第2ガイドローラ73と、従動部71の先端に一体的に形成されガイド面部45に沿った形状を呈する払拭本体部74と、この払拭本体部74に設けられガイド面部45に当接しているシート75と、払拭本体部74からファン33に向かって延び先端がファン33に接触可能なブラシ部76と、を有する。
【0033】
従動部71には、ワイヤ状の支持伝達部62cの両端が接続されている。これにより、払拭部70と駆動部60とが連結されている。従動部71の先端は、間隙部Spを貫通して送風路APに臨んでいる。
【0034】
なお、払拭部70と駆動部60とは、ガイド面部45を挟んで磁石によって連結されていても良い。
【0035】
第1ガイドローラ72は、下面が伝達部収納部43bに当接していても良い。また、第2ガイドローラ73は、右側の側面が伝達部収納部43bに当接していても良い。なお、リブ44bが第2ガイドローラ73に当接可能な位置に形成されている場合には、カバー部44を補強するためのリブ44bによって、第2ガイドローラ73をガイドすることが可能となる。
【0036】
シート75は、不織布やスポンジ等によって構成することができる。シート75は、払拭本体部74に対して着脱可能に設けられている。
【0037】
ブラシ部76は、払拭本体部74に対して前後方向にスイング可能に設けられている。
【0038】
次に払拭機構50によるガイド面部45及びファン33の清掃について説明する。
【0039】
図6を参照する。例えば、空調装置10は、運転停止信号を受けた後や操作者の操作による清掃指示信号を受けた際に清掃を開始する。まず、掃除用モータ61が作動すると、ギヤ部62a及び駆動プーリ62bが回転する。駆動プーリ62bが回転すると、支持伝達部62c上に設けられている払拭部70が左右方向に移動する。
【0040】
図4及び
図5を参照する。ガイド面部45にはシート75が当接し、ファン33にはブラシ部76が当接している。この状態で払拭部70が間隙部Spに沿って移動することにより、ガイド面部45に付着した塵埃はシート75により払拭され、ファン33に付着した塵埃もブラシ部76によって払拭される。このとき、ファン33を回転させておくことにより全ての羽根を清掃することができる。
【0041】
払拭本体部74にシート75とブラシ部76の両方が設けられることにより、シート75とブラシ部76とは近接して配置されている。このため、ブラシ部76によってファン33からガイド面部45に塵埃を落とし、シート75によって払拭することができる。
【0042】
払拭機構50の空気流れ下流側に左右ルーバー37(
図3参照)が配置されているので、ファン33とガイド面部45との間の送風路APに手を入れて清掃することが困難であることから、ガイド面部45に沿って移動可能な払拭機構50を設けることで、簡易にガイド面部45に付着した塵埃を除去できる。
【0043】
次に、空調装置10(払拭機構50)の特徴を説明する。
【0044】
ファン33とガイド面部45との間の送風路APには、手を入れることが難しく、清掃を行うことが困難であり、塵埃が溜まりやすい。ガイド面部45に沿って移動可能な払拭機構50を設けることにより、ガイド面部45に付着した塵埃を払拭することができ、ガイド面部45を清掃することのできる空調装置を提供することができる。
【0045】
図5及び
図6を参照する。払拭機構50は、払拭本体部74を駆動するための駆動部60をさらに有する。また、駆動部60は、通電することにより作動する掃除用モータ61と、この掃除用モータ61に接続され払拭本体部74に掃除用モータ61の駆動力を伝達する駆動力伝達部62と、を含む。また、駆動力伝達部62(支持伝達部62c)は、ファン33の軸線Cに略平行に延びている。通常、空調装置10は、ファン33の軸線Cに沿う方向(左右方向)に長い。駆動力伝達部62を軸線Cに略平行に伸ばすことにより、払拭部70を長手方向に移動させながら清掃を行うことができる。幅方向(上下方向)に払拭部70を移動させる場合には、長手方向に亘って払拭部70を設ける必要がある。このため、払拭部70を幅方向に移動させる場合に比べて払拭部70の小型化を図ることができる。
【0046】
また、払拭本体部74にシート75とブラシ部76とを設けているため、1つの払拭本体部74を移動させることにより、清掃を行うことができる。払拭本体部74が1つであることにより、駆動部60も1つあれば良い。シート75とブラシ部76を駆動させるためにそれぞれ別の駆動部を設ける必要がない。空調装置10の構成を簡易にし、部品コストを安価にすることができる。
【0047】
次に
図8を参照する。
図8は、ファン33を回転駆動させるファンモータ80の断面図である(
図3ではファンモータ80は図示省略)。ファンモータ80は、駆動回路(図示省略)を備えた低回転数域(ここでは、50~100rpm)から高回転数域(ここでは、500~700rpm)まで回転数可変可能なブラシレスDCモータである。ファンモータ80は、制御部107の要求回転数により回転数が制御される。ファンモータ80は、
図8、
図9に示すように、主として、固定子81と、回転子82と、シャフト83と、2つのベアリング84と、ケーシング85と、リード線86と、クッションゴム87とを有している。ファンモータ80は、モータの一例である。また、室内機30内の制御は制御部107が一括して行っているが、制御部107とは別にファンモータ80を制御する専用のモータ制御部を備えても良い。
【0048】
固定子81は、略筒形状の部材であり、主として、磁性体からなる円筒形状の固定子鉄心81aと、固定子鉄心81aに巻回される固定子巻線81bと、を有している。
【0049】
ファンモータ80は、内部に設けられた固定子81や回転子82を外部からの影響を保護するためケーシング85を備えている。
【0050】
回転子82は、固定子81の内周側に所定の隙間が空いた状態で配置される円筒形状の部材である。
【0051】
ベアリング84は、シャフト83を回転子82に対して回転自在に保持する。
図9は、
図8のベアリング84を切断線Aで切断したときの断面図である。ベアリング84は、軌道輪(外輪)84aと、軌道輪(内輪)84bと、ボール84cと、保持器84dを有するボールベアリングである。軌道輪(外輪)84aの外周面はケーシング85内に固定されるとともに、軌道輪(内輪)84bの内周面がシャフト83の外周面に嵌合により固定されている。ベアリング84は、グリス等の潤滑剤84eが内部に充填された密封型のベアリングである。また、軌道輪(外輪)84a及び軌道輪(内輪)84bの、回転軸心の延伸方向における両端にボール84cが収容される空間を密封するためのシール部材が取付けられ、当該空間にグリス等の潤滑剤84eが充填される。潤滑剤84eは、限定するものではないが、たとえば、ウレア系やリチウム石鹸系のグリスである。ここで、潤滑剤84eは冷房運転及び暖房運転で使用される高回転数域において好適に油膜が形成される粘度を有している。
【0052】
図7を参照する。以下に、空調装置10の制御部300(107,207)の1構成例について、説明する。制御部300は、例えば2つの制御部(第1制御部及び第2制御部)で構成され、
図7において、制御部107(室内制御部)及び室外制御部207である。
【0053】
図7(又は
図1)の室内機30は、入力部301を備えることができ、入力部301は、例えば赤外線受信モジュールであるリモコン入力部(リモートコントローラ入力部)であるが、これに限定されるものではない。入力部301がリモコン入力部である場合に、操作者は、図示されないリモコン(リモートコントローラ)を介して、1例として、冷房運転又は暖房運転(運転モード)を選択可能である。これに応じて、制御部107は、入力部301又はリモコン入力部を介して、運転モードとして、冷房運転又は暖房運転を設定可能である。具体的には、操作者がリモコンの例えば冷房ボタン(図示せず)を押す場合に、冷房運転の選択を表す信号がリモコンから送信され、リモコン入力部がその信号を受信し、制御部107は、冷房運転の選択を認識又は判定し、制御部107に冷房運転が設定される。
【0054】
制御部107は、例えばCPU、ROM、RAM等で構成されるマイコン(マイクロコンピュータ)であるが、これに限定されるものではない。制御部107がマイコンである場合に、ROMは、CPUに所定の動作を実行させるプログラムを記憶し、RAMは、CPUのワーク領域を形成することができる。また、ROMは、制御部107に設定された運転及びその運転を実行するために必要なデータを記憶することができる。
【0055】
制御部107がマイコンである場合に、制御部107は、その内部に記憶部(図示せず)を備えているが、空調装置10(室内機30、室外機20)は、制御部107、室外制御部207等の制御部300の外部に記憶部(室内記憶部、室外記憶部)を有しても良い。言い換えれば、制御部300(制御部107,室外制御部207)は、様々なデータ(設定データを含む)を制御部300(制御部107,室外制御部207)の内部ないし外部に記憶することができる。
【0056】
制御部107に冷房運転が設定されるとき、制御部107は、冷房運転の開始を制御部300(配線109又は信号線を介して室外制御部207)に指示することができる。次に、操作者がリモコンの例えば暖房ボタン(図示せず)を押す場合に、制御部107に暖房運転が設定されて、制御部107は、暖房運転の開始を制御部300(室外制御部207)に指示することができる。代替的に、操作者がリモコンの例えば停止ボタン(図示せず)を押す場合に、制御部107に、現在実施されている運転モード(例えば、冷房運転又は暖房運転)の停止が設定されて、制御部107は、冷房運転又は暖房運転の停止を制御部300(室外制御部207)に指示することができる。
【0057】
なお、リモコンは、例えば温度設定ボタン(図示せず)を有してもよく、室内機30は、例えば室温を検出する検出部(温度センサ)を有してもよく、操作者からの設定温度が制御部107に設定されても良い。この場合、制御部107は、例えば室温に応じて、ファン33の回転数(冷房回転数、暖房回転数等)を調整しても良い。好ましくは、制御部107に設定温度が設定されて、制御部107は、例えば室温と設定温度との差に応じて、ファン33の回転数(冷房回転数、暖房回転数等)を調整することができる。このときファン33の回転数は高回転数域で調整される。
【0058】
好ましくは、リモコンは、例えば自動清掃設定ボタン(図示せず)を有し、操作者からの操作(自動清掃のON(入)又はOFF(切))が制御部107に設定される。自動清掃がONである場合、例えば冷房運転又は暖房運転が停止されるとき、室内機30は、少なくともファン33に付着した塵埃の除去を準備又は開始することができる。言い換えれば、室内機30は、ガイド面部45に付着した塵埃を払拭可能なシート75を有する払拭機構50の代わりに、ファン33の清掃を行なうことが可能なブラシ部76を有する清掃機構(第1清掃機構)を備えるだけでも良い。
【0059】
好ましくは、清掃機構(第1清掃機構)は、払拭機構50であり、自動清掃(払拭機構50の起動モード)がON(自動)である場合、例えば冷房運転又は暖房運転が停止されるとき、室内機30は、ファン33に付着した塵埃の除去だけでなく、ガイド面部45(ファン33とガイド面部45との間の送風路AP)に付着した塵埃の除去も準備又は開始する。
【0060】
好ましくは、空調装置10は、室内機30の内部を乾燥させる内部乾燥運転を実施することができる。制御部107に内部乾燥運転が設定されるとき、制御部107は、内部乾燥運転を制御部300に指示することができる。内部乾燥運転は、好ましくは、微弱な暖房運転(内部乾燥運転用の暖房運転)と送風運転(内部乾燥運転用の送風運転)とを交互に実施し、例えば、送風運転が3分間実施され、その後に、微弱な暖房運転が3分間実施される。送風運転及び微弱な暖房運転がそれぞれ合計10回実施され、内部乾燥運転が合計60分間実施される。
【0061】
図10、
図11及び
図12を参照する。室内機30が、清掃機構(第1清掃機構)として、シート75及びブラシ部76を有する払拭機構50を備え、且つ、制御部107に、操作者からの操作として、自動清掃のON(入)が設定される場合において、言い換えれば、冷房運転若しくは除湿運転又は暖房運転の停止後に送風路AP(ファン33及びガイド面部45)の清掃が自動で実施されるように設定される場合において、空調装置10の制御部300(107,207)の制御について、説明する。
【0062】
ファン33とガイド面部45との間の送風路APの清掃が自動に設定される場合において、例えば、操作者がリモコンの例えば停止ボタンを押すことによってリモコンで生成された運転停止信号は、入力部301に入力又は受信される。制御部107に設定された冷房運転が停止される場合、制御部107には、内部乾燥が設定される。
【0063】
1例として、制御部107は、冷房運転(又は除湿運転)が所定期間だけ実施されたか否かを判断してもよく、例えば10分間以上の冷房運転(又は除湿運転)が実施された後に、制御部107は、送風運転と微弱な暖房運転とを例えば3分間毎に交互に切り替え、例えば合計60分間の内部乾燥運転を実施する。
【0064】
冷房運転(又は除湿運転)によって、室内機30に結露が発生し得るので、内部乾燥運転は、ファン33、送風路AP等を乾かすとともに、ブラシ部76を暖めることができる。他方、暖房運転が実施されていた場合、室内機30に結露が発生しないので、制御部107に設定された暖房運転が停止される場合、制御部107には、内部乾燥が設定されない。
【0065】
内部乾燥運転が制御部107に設定される場合、制御部107は、設定回転数(所定回転数)でファン33を回転させながら、送風運転として、圧縮機22の停止(OFF)を制御部300(室外制御部207)に指示し、例えば3分後に、微弱な暖房運転(通常の暖房運転よりも暖房能力が低く、好ましくは、最低の暖房能力を有する)として、圧縮機22の起動(ON:好ましくは、コンプレッサの最低回転数又は最低周波数でのON)を制御部300(室外制御部207)に指示する。例えば合計60分間の内部乾燥運転(例えば最後の10回目の微弱な暖房運転)が実施された後、圧縮機22は、停止(OFF)されるとともに、ファン33の回転数は、ゼロに向けて制御され、制御部107は、内部乾燥運転を終了させる。
【0066】
なお、微弱な暖房運転は、ブラシ部76を含む室内機30の内部を暖める暖房運転であればよい。ここで、微弱な暖房運転は、通常の暖房運転のように室内へ温風を送風する運転に限られるものではない。具体的には、微弱な暖房運転中、制御部107は、空気吹出口42を開閉可能なルーバー(上下ルーバー36)を操作して、空気吹出口42を閉じてもよい。言い換えれば、微弱な暖房運転は、室内送風をしない暖房運転であってもよい。さらに、内部乾燥運転における暖房運転(ブラシ部76を含む室内機30の内部を暖める暖房運転)は、微弱な暖房運転に限らず、通常の暖房運転と同様の運転であってもよい。
【0067】
内部乾燥運転の終了後、又は、暖房運転の停止後、ファン33及び送風路APに付着した塵埃を除去するために、制御部107は、払拭部70を駆動部60(掃除用モータ61)で左方向に移動を開始させるとともに、ファン33を低回転数域である超低回転数(例えば、50rpm)で駆動する(送風路クリーニングを開始する)。
【0068】
送風路クリーニングの開始によって、払拭部70は、ファン33の右端から左端側に向い、その後にブラシ部76がファン33の左端に到達する場合、より具体的には、例えばステッピングモータで構成させる掃除用モータ61を例えば5000パルスだけ例えば反時計回りに回転させる場合、制御部107は、掃除用モータ61を例えば5000パルスだけ例えば時計回りに逆回転させて、払拭部70を駆動部60(掃除用モータ61)で右方向に移動させる。払拭部70が元の位置に戻るとき、制御部107は、払拭部70の駆動を終了(OFF)させるとともに、ファン33の駆動も終了(OFF)させる(送風路クリーニングを終了する)。
【0069】
送風路クリーニングが開始される前に、内部乾燥運転の微弱な暖房運転で、内部乾燥運転の前の冷房運転で冷たくなっていた(硬化した)ブラシ部76は、暖められている。ブラシ部76は、典型的には、化学繊維等で構成され、微弱な暖房運転によって、ブラシ部76が軟化している。これにより、ブラシ部76がファン33に当接するときに発生してしまう室内機30内の摩擦音を低減させることができる。同時に、ブラシ部76がファン33に当接するときに発生してしまうブラシ部76の劣化を低減させることができる。
【0070】
次に、送風路クリーニングが終了すると、制御部107は、ファンモータ80に指示し、ファン33の駆動を開始させて、送風路クリーニング時に低回転数を実行したことによる油膜の形成不良を回復させる油膜回復運転を行う。
【0071】
油膜回復運転は、ファンの回転数を暖房運転及び冷房運転時の回転数である高回転数域でファンモータ80を駆動させ、ベアリング84の油膜が好適に形成されるのに十分な時間である所定時間(ここでは10分)だけ行う。
【0072】
そして、油膜回復運転を実施してから所定時間が経過すると、ファン33の駆動も終了(OFF)させる(油膜回復運転を終了する)。
【0073】
このように、ファン33を低回転数域である超低回転数(例えば、50rpm)で駆動する送風路クリーニングを行うと、ベアリング84内部の潤滑剤84eの形成不良が起きてしまうので、送風路クリーニング終了後に、ベアリング84の油膜が好適に形成されるのに十分な時間である所定時間だけ高回転数域でファンモータ80を駆動させる油膜回復運転を行うことにより、ベアリング84の油膜が好適に形成させることができる。
【0074】
なお、本発明による空調装置は、冷房機能及び暖房機能の両方を備えた空気調和装置を例に説明したが、例えば冷房機能のみを有するものであっても適用可能である。さらに、本発明は、室外機及び室内機からなる空調装置のみならず、これらが一体化された空調装置にも適用可能である。また、ファン33の回転数を可変可能な送風装置でも適用可能である。
【0075】
また、本発明の油膜回復運転は、手動で送風路クリーニングの運転開始を行うことができる場合でもファン33を低回転数域である超低回転数(例えば、50rpm)で駆動しているため、送風路クリーニング終了後に自動で油膜回復運転を行うことで、確実にベアリング84の油膜を好適に形成させることができる。
【0076】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0077】
10…空調装置
33…ファン(室内ファン)
40…ケース
41…空気取入口
42…空気吹出口
45…ガイド面部
50…払拭機構
60…駆動部
61…モータ
62…駆動力伝達部
74…払拭本体部
75…シート
76…ブラシ部
80…ファンモータ
84…ベアリング
84c…ボール
84e…潤滑材