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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072047
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】流体流通構造および往復動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/16 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
F04B53/16 B
F04B53/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182635
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】中西 寿朗
(72)【発明者】
【氏名】青山 良平
【テーマコード(参考)】
3H071
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB01
3H071CC26
3H071CC31
3H071CC32
3H071DD07
3H071DD08
3H071DD12
3H071DD13
3H071DD51
(57)【要約】
【課題】シール部材を挟持する部材間の間隙が大きくなることを抑制する流体流通機構を提供する。
【解決手段】一例の流体流通構造は、取付部材110と、取付部材110に対して軸方向に離間して配置され、流体の流路を画成するマニホールドユニット130と、取付部材110とマニホールドユニット130とに挟持され、マニホールドユニット130の流路に連通する内部空間をそれぞれ含む複数のシールケース160と、を備える。マニホールドユニット130は、第1傾斜面149を有する。シールケース160は、第1傾斜面149に対面する第2傾斜面169を有する。第1傾斜面149と第2傾斜面169との間には、無端状のシール部材171が配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材(110)と、
前記第1部材(110)に対して離間して配置され、流体の流路を画成する第2部材(130)と、
前記第1部材(110)と前記第2部材(130)とに挟持され、前記第2部材(130)の前記流路に連通する内部空間(S)をそれぞれ含む複数の第3部材(160)と、を備え、
前記第2部材(130)は、前記複数の第3部材(160)のそれぞれに対応して、前記第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第1傾斜面(149)を有し、
前記第3部材(160)は、前記第2部材(130)の前記第1傾斜面(149)に対面して、前記第1傾斜面(149)と同様に前記第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第2傾斜面(169)を有し、
前記第1傾斜面(149)と前記第2傾斜面(169)との間には、無端状のシール部材(171)が配置されている、流体流通構造。
【請求項2】
前記第2傾斜面(169)は、前記第2部材(130)に向かって拡開しており、
前記シール部材(171)は、前記第1傾斜面(149)と前記第2傾斜面(169)との間において、前記第3部材(160)の挟持方向の中央よりも前記第1部材(110)に近い位置に配置されている、請求項1に記載の流体流通構造。
【請求項3】
前記第1傾斜面(149)及び前記第2傾斜面(169)は、前記第3部材(160)の挟持方向に対して45°の角度で傾斜している、請求項1に記載の流体流通構造。
【請求項4】
前記第2傾斜面(169)には、前記シール部材(171)を保持する切欠状部分(169a)が形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の流体流通構造。
【請求項5】
軸方向に往復動するプランジャ(43)を有するクランクケース(10)の前端に固定された第1部材(110)と、
前記第1部材(110)に対して前記軸方向に離間して配置され、流体の流路を画成する第2部材(130)と、
前記第1部材(110)と前記第2部材(130)とに挟持され、前記第2部材(130)の前記流路に連通する内部空間(S)をそれぞれ含む複数の第3部材(160)と、を備え、
前記プランジャ(43)は、前記複数の第3部材(160)のそれぞれの前記内部空間(S)を往復動可能であり、
前記第2部材(130)は、前記複数の第3部材(160)のそれぞれに対応して、前記第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第1傾斜面(149)を有し、
前記第3部材(160)は、前記第2部材(130)の前記第1傾斜面(149)に対面して、前記第1傾斜面(149)と同様に前記第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第2傾斜面(169)を有し、
前記第1傾斜面(149)と前記第2傾斜面(169)との間には、無端状のシール部材(171)が配置されている、往復動ポンプ。
【請求項6】
前記第2部材(130)は、マニホールド(131)と、前記マニホールド(131)に固定された複数のバルブ(140)を含み、
前記第1傾斜面(149)は、前記複数のバルブ(140)のそれぞれに形成されている、請求項5に記載の往復動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体流通構造および往復動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、多連式往復動ポンプを開示している。このポンプでは、3つの並列するシリンダ室が設けられている。それぞれのシリンダ室には、往復動するプランジャが配置されている。シリンダ室が設けられているシリンダは、ハウジングとシリンダヘッドとの間で挟着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-85273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような多連式の往復動ポンプでは、複数の往復動部材のそれぞれが往復動可能となるように、複数の往復動部材をそれぞれ収容する複数のシールケース(シリンダ)を有することが考えられる。この場合、例えば、クランクケースに設けられた第1部材と流体の流路が形成された第2部材とによって複数のシールケース(第3部材)が挟持されることで、流体流通構造が構成され得る。それぞれのシールケースと第2部材との間にはOリングのようなシール部材が配置されてよい。ここで、シールケース、第1部材及び第2部材の軸方向のサイズには公差が生じるため、複数のシールケース同士の間において、第2部材との間の距離にバラツキが生じる。シールケースと第2部材との間の距離が大きくなると、流体の圧力変動に応じて、シール部材の配置位置にずれが生じることが考えられる。
【0005】
本開示は、シール部材を挟持する第2部材と第3部材との間の間隙が大きくなることを抑制する流体流通機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例の流体流通構造は、第1部材(110)と、第1部材(110)に対して離間して配置され、流体の流路を画成する第2部材(130)と、第1部材(110)と第2部材(130)とに挟持され、第2部材(130)の流路に連通する内部空間(S)をそれぞれ含む複数の第3部材(160)と、を備える。第2部材(130)は、複数の第3部材(160)のそれぞれに対応して、第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第1傾斜面(149)を有する。第3部材(160)は、第2部材(130)の第1傾斜面(149)に対面して、第1傾斜面(149)と同様に第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第2傾斜面(169)を有する。第1傾斜面(149)と第2傾斜面(169)との間には、無端状のシール部材(171)が配置されている。
【0007】
上記の流体流通構造では、シール部材(171)を挟持する第1傾斜面(149)と第2傾斜面(169)とが第3部材(160)の挟持方向に対して同様に傾斜している。この場合、第3部材(160)と第2部材(130)との間に形成される間隙の第1傾斜面(149)及び第2傾斜面(169)に直交する方向の大きさは、挟持方向に沿った大きさよりも小さくなる。このように、シール部材(171)を挟持する第2部材(130)と第3部材(160)との間の間隙が大きくなることが抑制される。
【0008】
第2傾斜面(169)は、第2部材(130)に向かって拡開しており、シール部材(171)は、第1傾斜面(149)と第2傾斜面(169)との間において、第3部材(160)の挟持方向の中央よりも第1部材(110)に近い位置に配置されていてもよい。この構成では、シール部材(171)のサイズ(周の長さ)を小さくすることができる。これにより、内圧がシール部材(171)に及ぼす力を低減することができる。
【0009】
第1傾斜面(149)及び第2傾斜面(169)は、第3部材(160)の挟持方向に対して45°の角度で傾斜していてもよい。この構成では、第1傾斜面(149)と第2傾斜面(169)とによって挟持されるシール部材(171)が均一に変形し易くなるため、シール部材(171)の劣化を抑制できる。なお、「45°の角度」は、厳密に45°を意味するものではなく、誤差を許容している。
【0010】
第2傾斜面(169)には、シール部材(171)を保持する切欠状部分(169a)が形成されていてもよい。特に、第2傾斜面(169)が第2部材(130)に向かって拡開している構成では、第2部材(130)と第3部材(160)との組立を容易に行うことができる。
【0011】
一例の往復動ポンプは、軸方向に往復動するプランジャ(43)を有するクランクケース(10)の前端に固定された第1部材(110)と、第1部材(110)に対して軸方向に離間して配置され、流体の流路を画成する第2部材(130)と、第1部材(110)と第2部材(130)とに挟持され、第2部材(130)の流路に連通する内部空間(S)をそれぞれ含む複数の第3部材(160)と、を備える。プランジャ(43)は、複数の第3部材(160)のそれぞれの内部空間(S)を往復動可能である。第2部材(130)は、複数の第3部材(160)のそれぞれに対応して、第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第1傾斜面(149)を有する。第3部材(160)は、第2部材(130)の第1傾斜面(149)に対面して、第1傾斜面(149)と同様に第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第2傾斜面(169)を有する。第1傾斜面(149)と第2傾斜面(169)との間には、無端状のシール部材(171)が配置されている。
【0012】
第2部材(130)は、マニホールド(131)と、マニホールド(131)に固定された複数のバルブ(140)を含み得る。第1傾斜面(149)は、複数のバルブ(140)のそれぞれに形成されてもよい。この構成では、複数のバルブ(140)の公差が間隙に与える影響を低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の流体流通機構によれば、シール部材を挟持する第2部材と第3部材との間の間隙が大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一例の往復動ポンプの外観を示す斜視図である。
図2】一例の往復動ポンプの断面図である。
図3】一例の往復動ポンプの要部を示す断面図である。
図4】一例の往復動ポンプの要部を示す断面図である。
図5図4に示す断面図の拡大図である。
図6】比較のための参考例に係る往復動ポンプの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一例の流体流通構造を有する往復動ポンプについて、添付図面を参照しながら説明する。便宜上、同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。本明細書では、一例の往復動ポンプとして、往復動部材を構成するプランジャが水平方向に3列並設された、いわゆる横型3連プランジャポンプについて説明する。なお、以下の説明において、「上」、「下」は、往復動ポンプが水平面に載置された状態を基準として定義され、「前」、「後」は、往復動部材の軸方向を基準として、ポンプ室側が前、クランクケース側が後として定義されている。「左」、「右」は、水平面に載置された往復動ポンプの前後方向を基準としている。
【0016】
図1は、一例の往復動ポンプの外観を示す斜視図である。図2は、往復動ポンプを水平に切断した断面図である。図3は、図2に示される往復動ポンプを構成するプランジャポンプの一つの要部を示す断面図である。図4は、往復動ポンプの要部を示す断面図である。図2図4では、往復動ポンプを構成するプランジャポンプの軸線に沿った断面が示されている。なお、往復動ポンプを構成する3つのプランジャポンプは互いに同様の構造を有している。したがって、以下の説明では、3つのプランジャポンプで共通する構成についての重複する説明を省略する。
【0017】
図1及び図2に示されるように、往復動ポンプ1は、クランクケース10と、取付部材110(第1部材)と、マニホールドユニット130(第2部材)と、シールケース160(第3部材)とを有する。クランクケース10は中空に構成されている。クランクケース10内には、クランク軸12、クランク軸12に回転可能に連結されたコンロッド13、コンロッド13にプランジャロッド41を回転可能に連結するピストンピン15等が配置され、これらにより、往復動部材40をX方向に延びる軸線に沿って往復駆動させる駆動部が構成されている。なお、プランジャロッド41は、往復動部材40の後半分を構成している。プランジャロッド41の前部には、往復動部材40の前半分を構成するプランジャ43が接続されている。図示例では、X方向に延在する3つの往復動部材40がY方向に並設されている。
【0018】
クランクケース10は、シリンダ部11を含む。シリンダ部11は、円筒状をなしており、クランクケース10の前方に向かって開口している。シリンダ部11の軸方向(X方向)は、クランク軸12の軸方向(Y方向)に直交している。シリンダ部11の内側には、ピストンピン15と、コンロッド13の先端とが配置され得る。図示例では、3つのシリンダ部11がY方向に並設されている。
【0019】
クランクケース10内には、駆動部の潤滑・冷却用のオイルが充填されている。シリンダ部11の内側には、クランクケース10内のオイルの漏出を防止するためのオイルシール16が配置されている。オイルシール16は、往復動部材40を構成するプランジャロッド41の外周面に液密に摺接する。そして、クランク軸12が回転することによってコンロッド13及びピストンピン15を介して、往復動部材40が前後方向に往復動する。
【0020】
取付部材110は、シールケース160をクランクケース10に固定するための部材である。取付部材110は、クランクケース10の前端に固定されている。例えば、取付部材110はボルト等の締結部材111によってクランクケース10に固定されてもよい。一例の取付部材110は、略直方体形状または略板状を呈しており、3つのプランジャ43に対応した位置に3つの貫通孔112を有する。すなわち、取付部材110をX方向に貫通する3つの貫通孔112は、Y方向に並んで形成されている。また、取付部材110は、3つのシールケース160が嵌合される3つの凹部113を有している。3つの凹部113は、取付部材110の前面に形成されている。3つの凹部113は、互いに同じ形状であり、図示例ではX方向からみて円形状を呈していてよい。3つの貫通孔112は、3つの凹部113の底面部分の中央にそれぞれ設けられている。
【0021】
マニホールドユニット130は、取付部材110に対してX方向に離間して配置されている。マニホールドユニット130は、流体(例えば水)の流路を画成する。一例のマニホールドユニット130は、マニホールド131と、マニホールド131に固定された複数のバルブ140とを含む。図示例のマニホールド131は、略直方体形状または略板状の外観を有しており、取付部材110との間に配置された複数(図示例では8つ)のスペーサ115を介して複数のボルト132によって取付部材110に固定されている。
【0022】
マニホールド131は、吸水口133と吐出口134とを含む。吸水口133は、マニホールド131の左右の側面において中央よりも後側に設けられている。吸水口133は、マニホールドユニット130を左右方向に延びる吸水流路135に接続されている。吐出口134は、マニホールド131の左右の側面において中央よりも前側に設けられている。吐出口134は、マニホールドユニット130を左右方向に延びる吐出流路136に接続されている。
【0023】
マニホールド131の後端面には、取付部材110の3つの凹部113に対面する位置に3つの凹部137が形成されている。それぞれの凹部137は軸方向から見て円形状を呈している。凹部137は、吸水流路135と吐出流路136とを互いに連通させている。それぞれの凹部137の中央にはバルブ140が収容されている。
【0024】
バルブ140は、いわゆるコンビネーションバルブであり、図3に示すように、吸水流路145と吐出流路146とを含む。一例のバルブ140は、本体141と、吸水弁142と、吐出弁143とを含む。本体141は、吸水流路145と、吐出流路146とを含む。吸水流路145は、マニホールド131の吸水流路135と後述するシールケース160の内部空間Sとを接続している。吐出流路146は、シールケース160の内部空間Sとマニホールド131の吐出流路136とを接続している。図示例の本体141は、軸方向から見て円形状を呈している。吐出流路146は、軸方向に延在しており、本体141を貫通している。複数の吸水流路145は、吐出流路146の周囲に形成されている。
【0025】
本体141において、内部空間Sに面する吸水流路145の開口は、吸水弁座145aを構成している。吸水弁142は、筒状の保持体152に保持されており、保持体152の内側に配置されたコイルバネ153によって、吸水弁座145aに向けて付勢されている。また、本体141において、マニホールド131の吐出流路136に面する本体141の吐出流路146の開口は、吐出弁座146aを構成している。吐出弁143は、例えば球形をなしており、筒状の保持体156に保持されている。吐出弁143は、保持体156の内側に配置されたコイルバネ156aによって、吐出弁座146aに向けて付勢されている。
【0026】
シールケース160は、取付部材110とマニホールドユニット130との間に挟持されている。シールケース160は、マニホールドユニット130の吸水流路145及び吐出流路146に連通する内部空間Sを含む。シールケース160の内部空間Sは、ポンプ室として機能する。図示例のシールケース160は、略円筒状を呈している。シールケース160の後端部は、取付部材110の凹部113に嵌合している。シールケース160の後端部の外周には複数のシール部材(Oリング)161が設けられており、このシール部材161によって、シールケース160の外周と取付部材110との間が封止されている。
【0027】
シールケース160の内周面には、中心に向かって突出する円環状の凸部162が形成されている。プランジャ43は、円環状の凸部162の内側を挿通されて、シールケース160の内側空間によって構成されるポンプ室に配置されている。プランジャ43は、シールケース160の内部空間Sを往復動可能となっている。シールケース160の内周には、凸部162に沿って高圧シール部材155が配置されており、この高圧シール部材155によって、シールケース160の内周とプランジャ43の外周との間が封止されている。なお、シールケース160の後端(凸部よりも後側の位置)には、高圧シール部材155よりも低い圧力でプランジャ43との間をシールする低圧シール部材164が設けられている。
【0028】
シールケース160の前端部は、バルブ140を囲むようにマニホールド131に形成された円形の凹部137に嵌合される。シールケース160の前端部の外周にはシール部材(Oリング)165が設けられており、このシール部材165によって、シールケース160の外周とマニホールド131との間が封止されている。
【0029】
上述した吸水弁142の保持体152は、シールケース160の内部空間Sの内周面に沿って配置されている。保持体152の中央よりも後側には、外径の小さい小径部152aが形成されており、この小径部152aの外周にはコイルバネ154が配置されている。すなわち、小径部152aはコイルバネ154の内側に位置しており、コイルバネ154と内部空間Sとを隔離している。保持体152およびコイルバネ154は、高圧シール部材155を後側(凸部162)に向けて付勢している。
【0030】
このような往復動ポンプ1では、クランク軸12が回転することによって、コンロッド13、ピストンピン15を介してクランク軸12に連結された往復動部材40が往復動する。吸水工程においては、往復動部材40が駆動部側へ向かい後退移動することによってポンプ室を構成する内部空間Sが負圧となる。内部空間Sが負圧となることによって、吸水弁142は開となり、吐出弁143は閉となる。これにより、使用液体は、吸水流路135,145を通じて内部空間Sへ吸入される。一方、吐出工程においては、往復動部材40がマニホールド131側へ前進移動することにより内部空間Sが加圧される。内部空間Sの加圧によって、吸水弁142は閉となり、吐出弁143は開となる。これにより、内部空間Sの使用液体は吐出流路146,136を通して吐出口134へ吐出される。
【0031】
マニホールドユニット130及びシールケース160について、さらに説明する。マニホールドユニット130は、複数のシールケース160のそれぞれに対応して、シールケース160の挟持方向に対して傾斜する枠状(円環状)の第1傾斜面149を有している。例えば、第1傾斜面149は、複数のバルブ140のそれぞれに形成されている。図示例では、バルブ140の本体141に第1傾斜面149が形成されている。第1傾斜面149は、吸水流路145及び吐出流路146の内部空間Sに面する開口を囲んでいる。また、第1傾斜面149は、吸水流路145における吸水流路135に面する開口よりも後側に形成されている。なお、一例の吸水流路135は、マニホールド131とシールケース160とが協働することにより構成されている。図示例では、凹部137に嵌合されるシールケース160の前端面が吸水流路145の一部を構成している。
【0032】
シールケース160は、マニホールドユニット130の第1傾斜面149に対面して、第1傾斜面149と同様にシールケース160の挟持方向に対して傾斜する枠状(円環状)の第2傾斜面169を有している。例えば、第2傾斜面169は、シールケース160の内周面から前端にかけて形成されている。すなわち、シールケース160の内部空間Sの前部は、前端縁に向かって拡径している。
【0033】
図5は、図4に示す領域Rの拡大図である。第1傾斜面149及び第2傾斜面169は、シールケース160の挟持方向(X方向)に対して所定の角度θで傾斜している。第1傾斜面149の傾斜角と第2傾斜面169の傾斜角とは互いに同じである。すなわち、第1傾斜面149と第2傾斜面169とは互いに平行な面であってよい。一例において、第1傾斜面149及び第2傾斜面169は、シールケース160の挟持方向に対して45°の角度で傾斜している。なお、第1傾斜面149及び第2傾斜面169の傾斜角は、45°に限定されるものではなく、例えば30°~60°程度あってもよい。また、この傾斜角は、30°未満であってもよいし、60°より大きくてもよい。
【0034】
第1傾斜面149と第2傾斜面169との間には、無端状のシール部材171が配置されている。図示例では、第1傾斜面149と第2傾斜面169とがX方向から見て円環状であるため、シール部材171としてOリングが使用され得る。シール部材171は、第1傾斜面149と第2傾斜面169との間を封止している。第1傾斜面149と第2傾斜面169との間は、吸水流路135と内部空間Sとを接続し得る間隙であるため、往復動ポンプ1の動作に応じて内部空間Sが加圧された場合、シール部材171を吸水流路135に向けて押し出すように力が働く。
【0035】
例えば、シール部材171は、第2傾斜面169に形成された円環状の切欠状部分169aに配置されている。切欠状部分169aは、マニホールドユニット130に向かって拡開する第2傾斜面169において、シールケース160の挟持方向の中央よりも取付部材110に近い位置に形成されていてよい。そのため、シール部材171は、第1傾斜面149と第2傾斜面169との間において、シールケース160の挟持方向の中央よりも取付部材110に近い位置に配置されている。図示例の切欠状部分169aは、第2傾斜面169において、最も取付部材110に近い位置(すなわち最も内側の位置)に形成されている。例えば、切欠状部分169aは、内周面に平行な面と、内周面に直交する面とによって画成されていてよい。
【0036】
以上説明のとおり、一例の往復動ポンプ1は、軸方向に往復動するプランジャ43を有するクランクケース10の前端に固定された取付部材110と、取付部材110に対して軸方向に離間して配置され、流体の流路を画成するマニホールドユニット130と、取付部材110とマニホールドユニット130とに挟持され、マニホールドユニット130の流路に連通する内部空間Sをそれぞれ含む複数のシールケース160と、を備える。プランジャ43は、複数のシールケース160のそれぞれの内部空間Sを往復動可能である。マニホールドユニット130は、複数のシールケース160のそれぞれに対応して、シールケース160の挟持方向に対して傾斜する枠状の第1傾斜面149を有する。シールケース160は、マニホールドユニット130の第1傾斜面149に対面して、第1傾斜面149と同様にシールケース160の挟持方向に対して傾斜する枠状の第2傾斜面169を有する。第1傾斜面149と第2傾斜面169との間には、無端状のシール部材171が配置されている。
【0037】
このような構成において、シールケース160は、シール部材171によって取付部材110に向けて押圧され、バルブ140の本体141はシール部材171によってマニホールド131の凹部137に向けて押圧される。この場合、各部材の公差の累積によって第1傾斜面149と第2傾斜面169との間の間隙が決定される。
【0038】
公差の累積について、より具体的に説明する。図4に示すように、取付部材110の凹部113の深さ(X方向の距離)をAとし、マニホールド131の凹部137の深さをBとし、マニホールド131から取付部材110までのX方向の距離をCとし、シールケース160のX方向の長さをDとする。また、バルブ140の本体141のX方向の長さを反映するEを設定する。例えば、長さEは、バルブ140の本体141のうちのマニホールド131の凹部137との当接面と、第1傾斜面149のうちで第2傾斜面169の外縁169gに軸方向(X方向)に対面する位置149g(図5参照)との距離であってよい。
【0039】
取付部材110の凹部113の深さA、マニホールド131の凹部137の深さB、シールケース160の軸方向の長さD、及び、バルブ140の本体141の軸方向の長さEは、公差を含み得るため、3つのプランジャポンプ間において異なる大きさになり得る。また、本形態においては、マニホールド131から取付部材110までの距離Cがスペーサ115によって一定に制御されている。この場合、D+E-A-Bの値が最大のプランジャポンプでは、第1傾斜面149と第2傾斜面169との間の距離が最小となり、D+E-A-Bの値が小さくなるほど、第1傾斜面149と第2傾斜面169との間の間隙が大きくなる。例えば、取付部材110の凹部113の深さAの最大値をAmax、マニホールド131の凹部137の深さBの最大値をBmax、シールケース160の軸方向の長さDの最小値をDmin、及び、バルブ140の本体141の軸方向の長さEの最小値をEminとしたとき、第1傾斜面149と第2傾斜面169との間の間隙の大きさG1の最大値は、Amax+Bmax+C-Dmin-Eminとなり得る。なお、第1傾斜面149と第2傾斜面169との間の間隙の大きさG1は、軸方向に沿った間隙の距離である。
【0040】
図6は、本開示に係る往復動ポンプ1との比較のための参考例に係る往復動ポンプ901の要部を示す断面図である。参考例の往復動ポンプ901は、第1傾斜面149及び第2傾斜面169を有していない点で、本開示の形態に係る往復動ポンプ1と相違している。すなわち、参考例の往復動ポンプ901では、バルブの本体941は、第1傾斜面149を有しておらず、軸方向に直交する第1端面949を有している。また、また、シールケース960の前端に第2傾斜面169が形成されておらず、シールケース960の前端は、軸方向に直交する第2端面969を有している。バルブの本体941に形成された第1端面949は、シールケース960の第2端面969に対面している。シールケース960の第2端面969の内周には切欠状部分が形成されており、この切欠状部分にOリング等のシール部材971が配置されている。このような参考例に係る往復動ポンプ901においても、本開示の形態に係る往復動ポンプ1と同様に各部材の公差に基づいて第1端面949と第2端面969との間に間隙が生じる。ポンプ動作によってポンプ室の内圧が上昇すると、シール部材971を間隙に押し出す方向に力が加わる。そのため、間隙が大きくなってしまうと、シール部材971が切欠状部分から外れてしまう虞がある。
【0041】
本開示の形態に係る往復動ポンプ1では、間隙が第1傾斜面149と第2傾斜面169との間に形成されており、第1傾斜面149と第2傾斜面169とがシールケース160の挟持方向(図示例ではX方向)に対して傾斜している。この場合、X方向に沿った間隙の大きさG1に比べて、第1傾斜面149及び第2傾斜面169に直交する方向に沿った間隙の大きさG2が小さくなる。より具体的には、大きさG2は、大きさG1のsinθ倍となる。このように、シール部材171を挟持する第1傾斜面149と第2傾斜面169との間の間隙が大きくなることが抑制されるため、シール部材171がずれることが抑制される。
【0042】
第2傾斜面169は、マニホールドユニット130に向かって拡開しており、シール部材171は、第1傾斜面149と第2傾斜面169との間において、シールケース160の挟持方向の中央よりも取付部材110に近い位置に配置されていてもよい。この構成では、シール部材171の周囲の長さを小さくすることができる。これにより、ポンプ室の内圧がシール部材171に及ぼす力を低減することができる。
【0043】
第1傾斜面149及び第2傾斜面169は、シールケース160の挟持方向に対して45°の角度で傾斜していてもよい。この構成では、シール部材171が均一に変形し易くなるため、シール部材171の劣化を抑制できる。
【0044】
第2傾斜面169には、シール部材171を保持する切欠状部分169aが形成されている。特に、第2傾斜面169がマニホールドユニット130に向かって拡開している構成では、組立作業を容易に行うことができる。すなわち、第2傾斜面169が上向きになるようにシールケース160を配置し、切欠状部分169aにシール部材171をセットしておけば、第2傾斜面169にバルブ140を載置するだけで組立を行うことができる。
【0045】
マニホールドユニット130は、マニホールド131と、マニホールド131に固定された複数のバルブ140を含んでいる。この構成では、第1傾斜面149は、複数のバルブ140のそれぞれに形成されてもよい。この場合、複数のバルブの公差が、上述した公差の累積に含まれることになる。すなわち、バルブの公差による不具合が緩和され得る。
【0046】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の具体的形態は上記の例に限定されない。
【0047】
例えば、切欠状部分169aが第2傾斜面169のうちの最も後側に形成されている例を示したが、切欠状部分は第2傾斜面のいずれの部分に形成されてもよい。例えば、切欠状部分は、第2傾斜面のX方向の中央に形成されてもよい。この場合、切欠状部分にシール部材を安定して保持することができる。
【0048】
また、シール部材171が第2傾斜面169に保持される例を示したが、シール部材171は第1傾斜面149に保持されてもよい。すなわち、第1傾斜面149にはシール部材171を保持するための切欠状部分が形成されてもよい。
【0049】
往復動ポンプを構成する流体流通構造について説明したが、流体流通構造は、往復動ポンプに限定されるものではなく、往復動ポンプ以外の各種ポンプや、ポンプ以外の装置の一部を構成してもよい。
【0050】
本開示の形態は以下のように記載され得る。
[1]
第1部材(110)と、
前記第1部材(110)に対して離間して配置され、流体の流路を画成する第2部材(130)と、
前記第1部材(110)と前記第2部材(130)とに挟持され、前記第2部材(130)の前記流路に連通する内部空間(S)をそれぞれ含む複数の第3部材(160)と、を備え、
前記第2部材(130)は、前記複数の第3部材(160)のそれぞれに対応して、前記第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第1傾斜面(149)を有し、
前記第3部材(160)は、前記第2部材(130)の前記第1傾斜面(149)に対面して、前記第1傾斜面(149)と同様に前記第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第2傾斜面(169)を有し、
前記第1傾斜面(149)と前記第2傾斜面(169)との間には、無端状のシール部材(171)が配置されている、流体流通構造。
[2]
前記第2傾斜面(169)は、前記第2部材(130)に向かって拡開しており、
前記シール部材(171)は、前記第1傾斜面(149)と前記第2傾斜面(169)との間において、前記第3部材(160)の挟持方向の中央よりも前記第1部材(110)に近い位置に配置されている、[1]に記載の流体流通構造。
[3]
前記第1傾斜面(149)及び前記第2傾斜面(169)は、前記第3部材(160)の挟持方向に対して45°の角度で傾斜している、[1]又は[2]に記載の流体流通構造。
[4]
前記第2傾斜面(169)には、前記シール部材(171)を保持する切欠状部分(169a)が形成されている、[1]~[3]のいずれか一項に記載の流体流通構造。
[5]
軸方向に往復動するプランジャ(43)を有するクランクケース(10)の前端に固定された第1部材(110)と、
前記第1部材(110)に対して前記軸方向に離間して配置され、流体の流路を画成する第2部材(130)と、
前記第1部材(110)と前記第2部材(130)とに挟持され、前記第2部材(130)の前記流路に連通する内部空間(S)をそれぞれ含む複数の第3部材(160)と、を備え、
前記プランジャ(43)は、前記複数の第3部材(160)のそれぞれの前記内部空間(S)を往復動可能であり、
前記第2部材(130)は、前記複数の第3部材(160)のそれぞれに対応して、前記第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第1傾斜面(149)を有し、
前記第3部材(160)は、前記第2部材(130)の前記第1傾斜面(149)に対面して、前記第1傾斜面(149)と同様に前記第3部材(160)の挟持方向に対して傾斜する枠状の第2傾斜面(169)を有し、
前記第1傾斜面(149)と前記第2傾斜面(169)との間には、無端状のシール部材(171)が配置されている、往復動ポンプ。
[6]
前記第2部材(130)は、マニホールド(131)と、前記マニホールド(131)に固定された複数のバルブ(140)を含み、
前記第1傾斜面(149)は、前記複数のバルブ(140)のそれぞれに形成されている、[5]に記載の往復動ポンプ。
【符号の説明】
【0051】
1…往復動ポンプ、110…取付部材(第1部材)、130…マニホールドユニット(第2部材)、149…第1傾斜面、160…シールケース(第3部材)、169…第2傾斜面、171…シール部材、S…内部空間(ポンプ室)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6