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特開2024-7205水性粘着剤組成物、粘着シート、および水性粘着剤組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007205
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】水性粘着剤組成物、粘着シート、および水性粘着剤組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20240111BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240111BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J7/38
C08F220/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108517
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】檜 剛
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J004AB01
4J040BA202
4J040DF021
4J040DF031
4J040DF061
4J040GA07
4J040JA03
4J040JB09
4J040KA26
4J040KA27
4J040KA38
4J040LA02
4J040LA03
4J040LA11
4J040MA11
4J100AJ02Q
4J100AL04P
4J100AL05P
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA09
4J100DA25
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA20
4J100JA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、粘着付与樹脂を添加しなくてもポリオレフィンに対して十分な粘着力を発揮する事ができ、機械安定性が良好で、加工性に優れた、バイオマス度の高い水性粘着剤組成物及び粘着シートの提供と、該水性粘着剤組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】アクリル系エマルジョン(A)を含む水性粘着剤組成物であって、前記アクリル系エマルジョン(A)は、モノマー混合物の乳化重合物であり、前記モノマー混合物100質量%中、(a-1)アルキルの炭素数8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル80~99.5質量%と、(a-2)不飽和カルボン酸0.5~3質量%とを含み、前記水性粘着剤組成物からなる塗膜のバイオマス度が60%以上であり、粘着付与樹脂を含まないことを特徴とする水性粘着剤組成物により解決できる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系エマルジョン(A)を含む水性粘着剤組成物であって、
前記アクリル系エマルジョン(A)は、モノマー混合物の乳化重合物であり、
前記モノマー混合物100質量%中、(a-1)アルキルの炭素数8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル80~99.5質量%と、(a-2)不飽和カルボン酸0.5~3質量%とを含み、
前記水性粘着剤組成物からなる塗膜のバイオマス度が60%以上であり、
粘着付与樹脂を含まないことを特徴とする水性粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系エマルジョン(A)は、D50平均粒子径が2μmを超えて15μm以下のモノマー混合物の乳化重合物である請求項1記載の水性粘着剤組成物。
【請求項3】
ポリエチレン板に対する粘着力が10N/25mm以上である、請求項1記載の水性粘着剤組成物。
【請求項4】
基材上に、請求項1~3いずれか1項に記載の水性粘着剤組成物からなる膜が設けられた粘着シート。
【請求項5】
請求項4の粘着シートがラベル用途である、粘着シート。
【請求項6】
請求項1記載の水性粘着剤組成物の製造方法であって、
モノマー混合物をD50平均粒子径が2μmを超えて15μm以下となるように微細化して得たアクリル系モノマーのエマルジョンを、攪拌翼の周速度が0.1~2.5m/秒未満で乳化重合する工程を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性粘着剤組成物、粘着シート、および水性粘着剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着シートの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物には、有機溶剤型とエマルジョン型の粘着剤組成物が用いられていた。しかし有機溶剤型の場合、塗工の際に乾燥工程において有機溶剤を揮発させる事が環境保護の観点で問題であった。
一方、エマルジョン型の粘着剤組成物は、有機溶剤型の粘着剤組成物に比べて、環境面に加え安全面、衛生面等の観点において優れているため、近年では粘着シートの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物として、エマルジョン型の粘着剤組成物を用いる事が多くなっている。
【0003】
粘着シートが用いられる産業界において、石油資源の枯渇や、石油由来製品の燃焼による二酸化炭素の排出が問題視されている。そこで、包装材分野を中心に、石油由来材料に代えて生物由来材料を用いる事により、石油資源を節約する試みがなされている。このような試みは、あらゆる分野に波及しており、粘着剤や粘着テープの分野でも生物由来材料の使用が求められている。
【0004】
包装材分野で用いられる基材の一つとして、ポリオレフィン基材が挙げられる。ポリオレフィン基材は、主に食品等の容器及び包装に用いられる事が多い。しかしながらポリオレフィン自体には極性がなく、接着しがたい性能を有している。一般的なアクリル粘着剤においては必要な接着性を確保できないために、粘着付与樹脂を配合する事で接着力を得ているのが現状である。
【0005】
一方、水性粘着剤組成物を塗工する際に、塗膜欠陥が発生する場合がある。塗膜欠陥とは、塗膜の均一性が何らかの原因で損なわれている状態を言い、例えば「スジ」が挙げられる。塗工機のヘッド部分の吐出口に塗液の凝集物が発生し、固化することで、それが原因となりスジ上の塗膜欠陥が生じる。このような生産性の低下を抑制するための粘着剤の性能として、機械安定性が求められている。
【0006】
例えば特許文献1では、植物由来の成分であるバイオマス材料として粘着付与樹脂を配合する事によって、化石資源系材料の使用量を減らし、焼却処分時等に温室効果ガスの排出量を低減する事ができる粘着シートが開示されている。
【0007】
また特許文献2では、植物由来の成分であるバイオマス材料として、モノマーとして炭素原子数12以上のアルキル(メタ)アクリレートを使用する事によって、化石資源系材料の使用量を低減できる粘着剤組成物が提案されている。
【0008】
そして特許文献3では、植物由来の成分であるバイオマス材料として、モノマーとして炭素原子数9~13の長鎖アルキル(メタ)アクリル酸エステルが主成分である混合物を乳化分散して0.1~2μmに微粒子化し、乳化重合を行う製造方法が提案されている。
【0009】
例えば特許文献4では、植物由来の成分であるバイオマス材料として、モノマーとして(メタ)アクリル酸ラウリルを使用し、攪拌翼の周速度が2.5m/秒以上となる攪拌条件下で、重合を行う製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-189932号公報
【特許文献2】特開2020-105308号公報
【特許文献3】特開平7-330813号公報
【特許文献4】特開平11-286503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、長鎖アルキル(メタ)アクリル酸エステルは難水溶性のモノマーであるため、合成時に重合反応が進みにくく、多くの凝集物が発生すると、製品濾過時には多量の濾過材を使用しなければならず、加えて反応収率が低いため量産に課題があり、エマルジョン型の粘着剤組成物の実用化には問題があった。
一方、粘着剤組成物にバイオマス材料として粘着付与樹脂を配合する事でバイオマス度を向上させると同時に、接着しがたいポリオレフィンへの接着性を確保できるメリットはあるものの、ポリマーの凝集力不足から、最終ユーザーで粘着ロール製造工程においてせん断加工工程や粘着シート作成時の打ち抜き加工工程にて、粘着剤がはみ出して部材に付着することで部材自体が使用できなくなり、歩留まりが低下したり、加工刃に粘着剤が付着することで、加工刃の洗浄頻度が高くなり、生産効率が低下したりするなどの問題(加工性不足)が起きるという問題があった。
【0012】
したがって、本発明は、粘着付与樹脂を添加しなくてもポリオレフィンに対して十分な粘着力を発揮する事ができ、機械安定性が良好で、加工性に優れた、バイオマス度の高い水性粘着剤組成物及び粘着シートの提供と、該水性粘着剤組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するために、アクリル系エマルジョン(A)を含む水性粘着剤組成物であって、前記アクリル系エマルジョン(A)は、モノマー混合物の乳化重合物であり、前記モノマー混合物100質量%中、(a-1)アルキルの炭素数8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル80~99.5質量%と、(a-2)不飽和カルボン酸0.5~3質量%とを含み、前記水性粘着剤組成物からなる塗膜のバイオマス度が60%以上であり、粘着付与樹脂を含まないことを特徴とする水性粘着剤組成物を見出した。
【0014】
即ち、本発明は以下の[1]~[6]に関する。
【0015】
[1]アクリル系エマルジョン(A)を含む水性粘着剤組成物であって、前記アクリル系エマルジョン(A)は、モノマー混合物の乳化重合物であり、前記モノマー混合物100質量%中、(a-1)アルキルの炭素数8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル80~99.5質量%と、(a-2)不飽和カルボン酸0.5~3質量%とを含み、前記水性粘着剤組成物からなる塗膜のバイオマス度が60%以上であり、粘着付与樹脂を含まないことを特徴とする水性粘着剤組成物。
【0016】
[2]アクリル系エマルジョン(A)は、D50平均粒子径が2μmを超えて15μm以下のモノマー混合物の乳化重合物である[1]記載の水性粘着剤組成物。
【0017】
[2]ポリエチレン板に対する粘着力が11N/25mm以上である、[1]記載の水性粘着剤組成物。
【0018】
[3]基材上に、[1]~[3]いずれかに記載の水性粘着剤組成物からなる膜が設けられた粘着シート。
【0019】
[4][4]の粘着シートがラベル用途である、粘着シート。
【0020】
[5][1]記載の水性粘着剤組成物の製造方法であって、
モノマー混合物をD50平均粒子径が2μmを超えて15μm以下となるように微細化して得たアクリル系モノマーのエマルジョンを、攪拌翼の周速度が0.1~2.5m/秒未満で乳化重合する工程を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0021】
上記構成の本発明によれば、粘着付与樹脂を添加しなくてもポリオレフィンに対して十分な粘着力が確保されており、機械安定性が良好で、加工性に優れ、しかもバイオマス度も高い、水性粘着剤及び粘着シートを得ることができた。
【0022】
また、乳化液のD50平均粒子径を、2μmを超えて15μm以下に微細化したものを用い、攪拌翼の周速度を0.1~2.5m/秒未満に制御しながら重合反応する事で、通常の乳化重合では製造できなかった長鎖(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする水性粘着剤組成物を、高反応率にて凝集物が発生する事なく、製造する事ができた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る水性粘着剤組成物、及び粘着シートについて順に説明する。 なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの各々を表し、「(メタ)アクリル」等もこれに準ずる。
本明細書において、炭素数nの直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート を、Cnアルキル(メタ)アクリレートということがある。例えば、ラウリル(メタ)アクリレートは、C12アルキル(メタ)アクリレートということがある。なおnは1以上 の整数である。 また、ガラス転移温度をTgと記載する場合がある。
本明細書においては数値範囲を示す「~」は特に断りのない限りその下限値及び上限値を含むものとする。
【0024】
本明細書において、「バイオマス」とは、本願明細書では、生物由来の資源の意味で用い、「バイオマス(メタ)アクリル共重合体」とは、生物由来の資源から得られたモノマーを含む成分を重合して得られる(メタ)アクリル共重合体を意味する。
また、本発明で用いる場合、「バイオマス度」とは、ASTM D 6866 「Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of Natural Range Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis(放射性炭素と同位体比率重量分析を用いた自然領域の材料のバイオベース率の決定試験法)」によって求められる、「バイオマス(メタ)アクリル共重合体」全体の総炭素質量に対する天然高級アルコールに由来する炭素質量の比率を意味する
【0025】
<アクリル系エマルジョン(A)>
アクリル系エマルジョン(A)は、モノマー混合物の乳化重合物である。本発明では、アクリル系エマルジョン(A)の原料となるモノマーは、動植物等から採取される飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸を原料として、これをアルコール化、エステル化する事により、安価かつ用意に入手する事が可能である。植物由来の炭素を含むモノマーを用いれば、もともと大気中の二酸化炭素を取り込んで生成される資源である事から、これを燃焼させても総量としては大気中の二酸化炭素を増やす事はない。
【0026】
<(a-1)アルキルの炭素数8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル>
(a-1)アルキルの炭素数8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n―オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n―デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらモノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。なかでも、入手が容易でホモポリマーのガラス転移温度が低く、かかるモノマーから構成される粘着性能を発現しやすい事から、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましく、特にラウリルメタクリレート(Tg:-65℃)が好ましい。
【0027】
(a-1)アルキルの炭素数8~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率は、モノマー混合物100質量%中、80~99.5質量%である。85~99.5質量%が好ましく、90~99.5質量%がより好ましく、97~99重量%が特に好ましい。80~99.5質量%の範囲である事で、高バイオマス度で強粘着力を発現する粘着剤組成物を得る事ができる。
【0028】
<(a-2)不飽和カルボン酸>
(a-2)不飽和カルボン酸は、例えば、アクリル酸(Tg:106℃)、メタクリル酸(Tg:186℃)、イタコン酸(Tg:100℃)、マレイン酸(Tg:130℃)などが挙げられる。これらの中では、水性粘着剤組成物にて粘着性能を発現するのに必須性能である凝集力の観点から、またアクリル系エマルジョン(A)合成時に凝集物発生を抑制するため、粒子の安定化の観点から、アクリル酸を使用する事が最も好ましい。
【0029】
(a-2)不飽和カルボン酸の含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.5~3質量%である。0.8~2質量%が好ましく、1~2質量%がより好ましい。0.5~3質量%の範囲にあることで重合安定性および粘着剤層の凝集力をより向上できる。
【0030】
上記アクリル系エマルジョン(A)は、場合により上記モノマー(a-1)、(a-2)以外のその他モノマーを使用しても良い。その他モノマーは、(a-1)、(a-2)と共重合可能な(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびその他ビニル系モノマーが好ましい。
【0031】
前記その他モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル(Tg:8℃)、アクリル酸エチル(Tg:-22℃)、アクリル酸ブチル(Tg:-52℃)、アクリル酸-2-エチルヘキシル(Tg:-70℃)等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル(Tg:105)、メタクリル酸エチル(Tg:65℃)、メタクリル酸ブチル(Tg 20℃)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(Tg -10℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg:66℃)等のメタクリル酸エステル類が挙げられる。
その他ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン(Tg:65℃)、α-メチルスチレン(Tg:168℃)、ベンジルメタクリレート(Tg:54℃)等の芳香族モノマー;、酢酸ビニル(Tg:29℃)等のビニルエステル類;、ビニルピロリドン(Tg:180℃)の如き複素環式ビニル化合物;、グリシジルメタクリレート(Tg:41℃)等のグリシジル基含有モノマー;、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Tg:55℃)等の水酸基含有モノマー;、ジメチルアミノエチルメタクリレート(Tg:18℃)等のアミノ基含有モノマー;アクリルアミド(Tg:153℃)等のカルボン酸アミド基含有モノマー;、アクリロニトリル(Tg:100℃)等のシアノ基含有モノマー;、ジアリルフタレート(Tg:90℃)等の多官能ビニルモノマー;などが挙げられる。
【0032】
前記その他モノマーは、モノマー混合物100質量%中、0.5~20質量%使用する事ができ、1~5質量%がより好ましい。0.5~20質量%の範囲で使用する事で粘着力と凝集力のバランスが取り易くなる。
【0033】
アクリル系エマルジョン(A)のTgは、-60℃以下が好ましい。かかるTgにより被着体に対するタックをより向上できる。
【0034】
本発明でアクリル系エマルジョン(A)のガラス転移温度(Tg)は、下記数式(1)(Fox式)に基づいて計算された計算値である。

式(1)
1/Tg=[(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・(Wn/Tgn)]/100

ただし、W1:モノマー1の重量%、Tg1:モノマー1のみから形成され得るホモポリマーのガラス転移温度(K)、W2:モノマー2の重量%、Tg2:モノマー2のみから形成され得るホモポリマーのガラス転移温度(K)、Wn:モノマーnの重量%、Tgn:モノマーnのみから形成され得るホモポリマーのガラス転移温度(K)。なお、W1+W2+・・・・+Wn=100である。また、Tgの計算にはモノマーのみを使用し、共重合可能であっても反応性乳化剤は含めない。
【0035】
本発明においてホモポリマーのガラス転移温度は、『北岡協三著、「塗料用合成樹脂入門」、高分子刊行会、昭和49年5月25日発行』に記載の数値を使用した。
またラウリルメタクリレートについては、共栄社化学株式会社ホームページから商品名ライトエステルLに記載の数値を使用した。
【0036】
<乳化剤>
本発明のアクリル系エマルジョン(A)を得るためには乳化剤を使用することができる。使用する乳化剤としては、アニオン乳化剤、ノニオン乳化剤、カチオン乳化剤等があるが、安定したアクリルエマルジョンを製造するためにはアニオン乳化剤を単独で使用ことが好ましい。
アニオン乳化剤は、エチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤、およびエチレン性不飽和基を有さない非反応性乳化剤のどちらを使用しても良い。
【0037】
前記反応性アニオン乳化剤としては、例えばビニルスルホン酸ソーダ、アクリル酸ポリオキシエチレン硫酸アンモニウム、メタクリル酸ポリオキシエチレンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルケニルフェニル硫酸ソーダ、ナトリウムアリルアルキルスルホサクシネート、メタクリル酸ポリオキシプロピレンスルホン酸ソーダ等の乳化剤などが挙げられる。
【0038】
前記非反応性アニオン乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の乳化剤などが挙げられる
【0039】
前記乳化剤は、モノマー混合物100質量%に対し、0.1~10質量%が使用することが好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。0.1~10質量%の範囲にあることで反応率(重合率)および重合安定性をより向上できる。
【0040】
移動しました
<ラジカル重合開始剤>
本発明のアクリル系エマルジョン(A)を製造する際に重合開始剤を使用することができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル及びその塩酸塩、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサド等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。
また、これらラジカル開始剤と還元剤とを併用し、レドックス重合することもできる。併用可能な還元剤としては、ピロ亜硫酸ソーダ、L-アスコルビン酸等が挙げられる。
【0041】
ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー混合物100質量部に対し0.2~1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.25~0.5質量部である。使用量を0.2~1質量部とすることで重合安定性に優れ、高い凝集力を発現する粘着剤組成物を製造することができる。
【0042】
<連鎖移動剤>
本発明において乳化重合の際、分子量の調節のため、連鎖移動剤を使用してもよい。
前記連鎖移動剤は、例えば、チオール基や水酸基を有する化合物が一般に知られている。チオール基を有する化合物としては、例えば、ラウリルメルカプタン、2-メルカプトエチルアルコール、ドデシルメルカプタン、メルカプトコハク酸等のメルカプタン類、メルカプトプロピオン酸n-ブチルやメルカプトプロピオン酸オクチル等のメルカプトプロピオン酸アルキル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル等のメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルが挙げられる。水酸基を有する化合物としてはメチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0043】
前記連鎖移動剤は、モノマー混合物100質量部に対して0.01~0.2質量部が好ましく、0.03~0.09質量部がより好ましい。0.01~0.2質量部の範囲にあることで所望の分子量に調整し易くなる。
【0044】
<中和剤>
アクリル系エマルジョン(A)を製造する際に中和剤を使用することができる。中和剤として、は塩基性化合物が好ましい。塩基性化合物としては、アンモニアや、アミン類として、モノエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミン等が好ましい。
【0045】
本発明において乳化重合で使用する溶媒は水が好ましい。
【0046】
≪アクリル系エマルジョン(A)の製造方法≫
アクリル系エマルジョン(A)の製法としては、モノマー、乳化剤、水の各成分をディスパー、パドル翼等を取り付けた攪拌装置を用いて予備乳化を実施し、油滴径のD50平均粒子径を50μ前後に調整する。その後、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等の乳化機を使用して粒子の微細化を行う。最終的な油滴径のD50平均粒子径は2μmを超えて15μm以下に調整する。2μmを超えて8μm以下がより好ましい。2μmを超えて15μm以下の範囲にあると重合時に発生しやすい凝集物生成を抑制する事ができる。
【0047】
本発明でD50平均粒子径は、光散乱式粒子径測定装置「マイクロトラックMT300II」(商品名);日機装(株)製〕等で測定できる。なお測定は、水で希釈を行い、測定濃度は画面に表示される最適濃度ゲージ幅に入るように調整を行う。
【0048】
乳化重合の反応温度は70℃以上が好ましく、80℃以上で90℃以下がより好ましい。
【0049】
使用される重合装置としては、ディスパー、パドル翼等を取り付けた攪拌装置を用いる。乳化重合において、D50平均粒子径は2μmを超えて15μm以下に調整した乳化液を滴下時及びその後の熟成反応時の攪拌条件としては、攪拌翼の周速度が0.1~2.5m/秒未満で使用する事が好ましく、0.5~2.0m/秒がより好ましい。0.1~2.5m/秒の範囲にあると、乳化重合中に粒子衝突による凝集物発生が抑制され、一方で充分な分散性で、モノマー溜まり等による反応停止を起こさない。
【0050】
本発明で攪拌翼の周速度は、秒速(m/秒)で示す。周速度は、周速をV(m/秒)、攪拌翼直径をD(mm)、回転数をN(min-1 )とすると、次の式(2)で求める事ができる。
式(2)
V(m/秒)=π×D(mm)×N/1000×60
【0051】
アクリル系エマルジョン(A)のゲル分率は、10~50重量%が好ましく、20~40重量%がより好ましい。10~50重量%の範囲にあることで、強粘着力の性能を発揮するのに加えて、粘着剤と基材との密着性(投錨性ともいう)がより向上する事から、剥離時に凝集破壊~被着体への転着を防ぎ、基材破断~界面剥離と永久接着性能を発揮する事ができる。
【0052】
ゲル分率(重量%)の測定方法は、次の通りである。すなわち、水性再剥離型粘着剤をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに乾燥膜厚が約200μmとなるように塗工後、23℃で7日間乾燥させる。次に200メッシュ金網の重量を測定する(その重量をMとする)。粘着シートを5cm×5cmの大きさに切断し、200メッシュ金網に貼り合わせた試験片の重量を測定する(その重量をAとする)。なお200メッシュはJIS G-3555で規定されたメッシュである。
その試験片を50mlの酢酸エチル中に50℃で1日放置する。その後取り出し、100℃にて20分間乾燥させた後、重量を測定する(その重量をTとする)。
続いて試験片からポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを取り出し、酢酸エチルを用い、粘着剤層を除去し、PETフィルムの重量を測定する(その重量をKとする)。得られた数値を下記式(3)に代入してゲル分率を求める。
式(3)
(T-M-K)×100/(A-M-K)
【0053】
アクリル系エマルジョン(A)の重合率は、99%以上である事が好ましく、より好ましくは99.0~99.5%である。99%以上あることで、凝集物が発生しづらくなる。
【0054】
アクリル系エマルジョン(A)の重合率とは、モノマー混合物が乳化重合してポリマーとなった割合を意味する。重合率の算出方法の詳細は実施例の欄において記載する。
【0055】
アクリル系エマルジョン(A)の凝固率は、0.03%以下である事が好ましく、好ましくは0.005~0.0125%である。0.03%以下では、反応釜内での凝集物付着が少なく、濾過時のフィルター使用本数削減ができ、製造面及びコスト面の問題が解決できる。
【0056】
アクリル系エマルジョン(A)の凝固率とは、反応物中に生じた凝集物を濾別した際の、反応物の重量に対する残渣量の割合を指す。凝固率の算出方法の詳細は実施例の欄において記載する。
凝集物とは、反応中に粒子が衝突し粒子が合一化したものである。重合安定性が良好な系では合一がしにくく、分散しやすいため凝集が解けやすい。しかしながら機械的安定性が不安定な系では多量の凝集物を発生し、反応釜壁面及び攪拌翼に多量に付着したり、濾過時にフィルター詰まりを起こしたり、と製造面で問題が多い。
【0057】
≪水性粘着剤組成物≫
本発明の水性粘着剤組成物は、アクリル系エマルジョン(A)を含み、粘着付与樹脂を含まない。アクリル系エマルジョン(A)を含み、粘着付与樹脂を含まないことで、ポリオレフィンに対する十分な粘着力の確保と加工性を両立することができる。
【0058】
本発明の水性粘着剤組成物からなる塗膜のバイオマス度は60%以上であり好ましくは、65%である。一般的な水性粘着剤の場合、バイオマス度は30%以下である中にて、バイオマス度が60%以上であることで、将来的には包装材分野を中心に、石油資源を節約することが期待される。
【0059】
本発明の水性粘着剤組成物には、必要に応じて、一般の水性粘着剤に使用される種々の添加剤、例えば消泡剤、湿潤剤、着色顔料、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤などを配合することができる。
【0060】
水性感圧式接着剤の製造方法としては、公知の方法を使用することができ、前記アクリル系エマルジョン(A)に公知の中和剤を公知の方法で混合し、さらにレベリング剤、消泡剤、粘度調整剤、防腐剤を配合する方法が用いられる。
【0061】
本発明の水性粘着剤組成物はポリエチレン板に対する粘着力が10N/25mm以上であることが好ましい。10N/25mm以上であれば、一般用途において使用時の粘着シートの脱落を防止することができる。強粘着用途に用いる場合は、15N/25mm以上が好ましい。
【0062】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、水性粘着剤組成物を剥離性シートに塗工し、乾燥した後に、基材と貼り合わせることで製造できる。または基材に直接塗工し、乾燥後に剥離性シートと貼り合わせる方法により製造できる。
【0063】
本発明の粘着シートは、基材および、水性粘着剤組成物から形成した粘着剤層を有する。なお、本発明の粘着シートは、粘着フィルム、粘着テープまたは粘着ラベルということがある。
【0064】
<基材>
基材は、紙またはプラスチック等を用いることができる。紙の基材としては、例えば、上質紙、コート紙、含浸紙および合成紙等が使用できる。また紙にサイズ剤を定着させる方法により酸性紙、中性紙がある。プラスチックの基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド等がある。
【0065】
<剥離性シート>
剥離性シートは、シリコーン等で剥離処理された紙およびプラスチックフィルム等を使用できる。
【0066】
水性粘着剤組成物の塗工は、例えばコンマコーター、ブレードコーター、グラビアコーター等のロールコーター、スロットダイコーター、リップコーター、カーテンコーター等の公知の塗工装置を使用できる。また、粘着剤層の厚みは、0.1~200μmが好ましい。
【0067】
本発明の粘着シートは、さらにアンカー層、印刷層、オーバーコート層等を備えることができる。
【0068】
本発明の粘着シートは、配送の荷札ラベル、産業用、家庭用のシール・ラベル、建材用、家庭用のマスキングテープなどに広くに使用できる。
【実施例0069】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の みに限定されるものではない。また重合や配合時における水以外の材料の数値は不揮発分換算値である。なお、実施例において「部」は、「質量部」、「%」は、「質量%」を示す。
【0070】
[製造例1](アクリル系エマルジョン(A-1)の製造)
還流冷却器、攪拌機、温度計、窒素導入管、原料投入口、バトル翼を具備する容積2Lの反応容器に、イオン交換水54部を入れ、窒素を導入しつつ周速度0.84m/秒で攪拌しながら、内温が80℃になるまで加熱した。
次に別の容器に、ライトエステルL(ラウリルメタクリレート、共栄社化学社製)98部、AA(アクリル酸)2部、乳化剤としてアクアロンKH-10(アニオン反応性乳化剤、第一工業製薬社製)4部、イオン交換水33部の混合物をプロペラ翼にて乳化させた。その後、ホモミキサーを用いて微細化を進め、最終定な油滴径のD50平均粒子径3.7μmのモノマーエマルジョンを得て、滴下容器に仕込んだ。
前記反応容器に、水溶性重合開始剤として3%過硫酸カリウム(以後、「KPS」と略す)水溶液2部を添加して乳化重合を開始した。
前記水溶性重合開始剤の添加から10分後に、上記モノマーエマルジョン及び3%KPS水溶液6部を共に4時間かけて滴下した。この間反応温度を80℃に保った。
滴下終了30分後から、3%KPS水溶液8部を15分毎に3回分割添加した。その後80℃で60分間反応を継続した。その後冷却を開始し、常温でアンモニア水を添加し中和することで、不揮発分50.3%(理論不揮発分50.5%)、pH7.5、 粘度450mPa・s、D50平均粒子径0.25μmのアクリル系エマルジョン(A-1)を得た。モノマー組成から算出されるガラス転移温度の理論Tgは-63.1℃であった。
【0071】
得られたアクリル系エマルジョンの重合率及び凝固率を以下の方法で算出した。
【0072】
<重合率>
重合率は不揮発分から算出した。不揮発分は、金属缶の重さ(A)、金属缶に反応物を約1g添加した重さ(B)、反応物を入れた金属管を105℃で20分間放置後に放冷した際の重さ(C)を、それぞれ電子化学天秤を用いて秤量した。
不揮発分(%)=(C-A)/(B―A)×100
100%反応したと仮定した時の不揮発分(理論不揮発分とする)を計算し、理論不揮発分に対する実際の反応物の不揮発分(測定不揮発分とする)の割合を算出した。
重合率(%)=測定不揮発分/理論不揮発分×100
【0073】
<凝固率>
2kgスケールで重合した後、アクリル系エマルジョンを保管用容器に移す際に、重合用容器及び濾布に残留した凝集物を180メッシュ(目開き90μm)で濾過し、100℃で1時間乾燥後の残渣量(g)を測定した。
凝固率を下記式から算出した。
凝固率(%)=(P/Q)×100
P:残渣量(g)
Q:反応物の重量(g)
【0074】
[製造例2~22](アクリル系エマルジョン(A-2)~(A-18)、(A’-1)~(A’-4)の製造)
モノマー混合物の組成を表1の通りに変更した以外は、製造例1と同様にしてアクリル系エマルジョン(A-2)~(A-18)、(A’-1)~(A’-4)を製造し、ガラス転移温度、重合率、凝固率を算出した。結果を表1に記載する。
【0075】
表1、2に記載の略号および使用材料について説明する。
<a-1>
LMA:ラウリルメタクリレート(ライトエステルL、Tg-65℃、バイオマス度75%、共栄社化学社製)
LA:ラウリルアクリレート(ライトエステルL-A、Tg-3℃、バイオマス度80%、共栄社化学社製)
NOAA:n-オクチルアクリレート(NOAA、Tg-65℃、バイオマス度72%、大阪有機化学工業社製)
<a-2>
AA:アクリル酸(Tg106℃、バイオマス度0%)
MAA:メタクリル酸(Tg130℃、バイオマス度0%)
(その他モノマー)
BA:ブチルアクリレート(Tg-54℃、バイオマス度0%)
<開始剤>
KPS:過硫酸カリウム
<乳化剤>
アクアロンKH-10(アニオン反応性乳化剤、不揮発分99%、バイオマス度0%、第一工業製薬社製)
レベノールWX(アニオン非反応性乳化剤、不揮発分26%、バイオマス度5%、花王社製)
ハイテノールNF-08(アニオン非反応性乳化剤、不揮発分95%、バイオマス度0%、)第一工業製薬社製)
エマルゲン1118S-70(ノニオン非反応性乳化剤、不揮発分70%、バイオマス度0%花王社製)
<連鎖移動剤>
OTG(チオグリコール酸オクチル、大阪有機化学工業社製)
<粘着付与樹脂>
SN-EX4066(重合ロジンエステル、不揮発分50%、バイオマス度43%、サンノプコ社製)
【0076】
[実施例1]
「水性粘着剤組成物の製造」
得られたアクリルエマルジョン(A-1)100重量部(不揮発分換算)に対して、防腐剤としてレバナックスBX-150(昌栄化学株式会社製)0.05部、消泡剤としてSNデフォマー364(サンノプコ株式会社製)0.5部を加えパドル翼にて増粘剤およびアンモニア水を使用して、不揮発分49.6%、pH7.5、 粘度5000mPa・sの水性粘着剤組成物を得た。
【0077】
[実施例2~18、比較例1~5]
実施例2~18、比較例1~5については表2に従い、実施例1と同様の所作により、粘着剤組成物を得た。
【0078】
<バイオマス度>
本発明のバイオマス度は下記式から算出した。
水性粘着剤組成物のバイオマス度(%)=(X/Y)×100
X:原料のバイオマス度(割合)の質量(g)
Y:水性粘着剤組成物の質量(g)
評価基準は以下の通りである。
・◎(優良):65%以上
・〇(良好):60%以上、65%未満
・△(使用可):50%以上、60%未満
・×(使用不可):50%未満
【0079】
<機械安定性>
水性粘着剤100gにイオン交換水10gで希釈し、充分に攪拌・混合し、200 メッシュ金網でろ過した後、その50gを用い、マーロン試験安定性試験機(テスター産業社製)にて機械安定性試験(機械的な力を加えたときに凝集物が発生する程度を評価)をおこなった。
台ばかり目盛り15kg、円盤回転数1000min-1、回転時間10分、試験温度2 5℃条件にて試験終了後、その水性粘着剤を直ちに200メッシュ金網でろ過し、100 ℃オーブンで1時間乾燥させた。以下の式にて凝集率を算出し、評価を行った。
凝集率(%)=(乾燥後の金網の重量(g)-乾燥前の金網の重量(g))/50(g)×100
・◎(優良):0.001%未満
・〇(良好):0.001%以上、0.01%未満
・△(使用可):0.01%以上、0.1%未満
・×(使用不可):0.1%以上、1%未満
【0080】
[粘着シートの作製]
実施例および比較例で得られた水性粘着剤組成物を、ドクターブレードを用いて市販剥離性シートに、乾燥後の厚さが15μmになるように塗工し、105℃の乾燥オーブンで2分間乾燥する事で粘着剤層を形成した。次いで粘着剤層に市販感熱紙に貼り合わせ、粘着シートを作製した。
【0081】
<粘着力>
得られた粘着シートを幅25mm×長さ100mmに切断し、試験片とした。被着体は、ステンレス鋼板(SUS304鋼板、360番研磨)及びポリエチレン板とした。23℃50%RH環境下で、JIS Z0237に準拠し、試験片と被着体は30分以上に放置してから貼合わせ2kgロールで1往復圧着後測定した。測定は引っ張り試験機を用い試料を180度方向に折り返し、同方向へ300mm/minの速度で引き剥がし、その強度を表示する。評価基準は以下の通りである。
・◎(優良):21N/25mm以上
・〇(良好):15N/25mm以上、21N/25mm未満
・△(使用可):10N/25mm以上、15N/25mm未満
・×(使用不可):10N/25mm未満
【0082】
<加工性>
得られた粘着シートを幅10mm×長さ10mmの大きさに切りだした。粘着シートから剥離性シートを剥がして、上下を厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)で挟み、プレス試験機を用いて40℃の環境下、50Kg/cmの圧力を加え、2時間放置した。試験終了後サンプルを取り出し試験片端部からはみ出している粘着剤の幅(最大値)を測定した。
・◎(優良):はみ出しが0.4mm未満
・〇(良好):はみ出しが0.4mm以上、0.6mm未満
・△(使用可):はみ出しが0.6mm以上、0.8mm未満
・×(使用不可):はみ出しが0.8mm以上
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表1中、乳化剤および連鎖移動剤の使用量は、全モノマーの合計100部に対する、それぞれの不揮発分で換算した量を示す。また、表2における粘着付与樹脂の使用量は、アクリルエマルジョン100部に対する、不揮発分量を示した。
【0086】
表2の結果から、本発明の水性粘着剤を用いた実施例は、高反応率で凝集物が発生する事なく製造する事ができ、粘着付与樹脂を添加しなくてもポリオレフィンに対して十分な粘着力を発揮する事ができ、機械安定性が良好で、加工性に優れ、その上高バイオマス度を達成できた。一方、比較例は、上記の課題のいずれかを解決する事ができなかった。