(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072050
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】指紋検出シート
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1172 20160101AFI20240520BHJP
【FI】
A61B5/1172
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182640
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】508372412
【氏名又は名称】サトダサイエンス合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(72)【発明者】
【氏名】里田 誠
(72)【発明者】
【氏名】金子 恵美子
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038FF03
4C038FG04
4C038FG06
(57)【要約】
【課題】検出液の蒸発を抑制し、長時間視認可能な指紋検出シートを提供する。
【解決手段】指紋検出シート1は、基材シート2と、基材シート2に積層される指紋転写シート3と、指紋転写シート3に積層されるカバーフィルム4と、を備える。指紋転写シート3は、所定の採取対象物に押圧され、採取対象物に付着した指紋が転写された後に、検出液が塗布されることで転写された指紋が可視化されるものであり、カバーフィルム4と基材シート2とで指紋転写シート3を密閉し、検出液の蒸発を抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シートに積層される指紋転写シートと、
前記指紋転写シートに積層されるカバーフィルムと、を備え、
前記指紋転写シートは、所定の採取対象物に押圧され、前記採取対象物に付着した指紋が転写された後に、検出液が塗布されることで転写された前記指紋が可視化されるものであり、
前記カバーフィルムと前記基材シートとで前記指紋転写シートを密閉し、前記検出液の蒸発を抑制する、
ことを特徴とする指紋検出シート。
【請求項2】
前記基材シートは前記指紋転写シートの縁から面方向にはみ出す余白部を有しており、
前記余白部に前記カバーフィルムが粘着して前記指紋転写シートを密閉する、
ことを特徴とする請求項1に記載の指紋検出シート。
【請求項3】
前記基材シート及び前記カバーフィルムの縁に嵌め込まれる封止部材を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の指紋検出シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋検出シートに関する。
【背景技術】
【0002】
指紋とは、指先の皮膚にある汗腺の開口部が隆起した線(隆線)によりできる紋様、または、この隆線の形作る模様が物体の表面に付着した跡をいう。指紋は、犯罪の捜査、立証において重要な証拠となるため、犯罪捜査の現場では指紋の検出が行われる。
【0003】
指紋の検出方法は、アルミニウム等の微粉末を用いた粉末法やニンヒドリン等の試薬を用いた液体法など、様々な方法がある。また、特許文献1のように、親油性と親水性を併せ持つ転写媒体を用いて、採取対象物表面から指紋を転写し、検出液を塗布することで指紋を検出する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、転写媒体に検出液を塗布した後に現れる指紋は、検出液の蒸発が進行し過ぎると消失して視認できなくなる。
【0006】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、検出液の蒸発を抑制し、長時間視認可能な指紋検出シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る指紋検出シートは、
基材シートと、
前記基材シートに積層される指紋転写シートと、
前記指紋転写シートに積層されるカバーフィルムと、を備え、
前記指紋転写シートは、所定の採取対象物に押圧され、前記採取対象物に付着した指紋が転写された後に、検出液が塗布されることで転写された前記指紋が可視化されるものであり、
前記カバーフィルムと前記基材シートとで前記指紋転写シートを密閉し、前記検出液の蒸発を抑制する、
ことを特徴とする。
【0008】
また、前記基材シートは前記指紋転写シートの縁から面方向にはみ出す余白部を有しており、
前記余白部に前記カバーフィルムが粘着して前記指紋転写シートを密閉してもよい。
【0009】
また、前記基材シート及び前記カバーフィルムの縁に嵌め込まれる封止部材を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検出液の蒸発を抑制し、長時間視認可能な指紋検出シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(A)は、指紋検出シートの斜視図、
図1(B)は
図1(A)のA-A’断面図である。
【
図2】
図2(A)~(D)は、指紋検出シートの使用方法を示す斜視図である。
【
図3】
図3(A)、(B)は、他の形態に係る指紋検出シートの斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、他の形態に係る指紋検出シートの斜視図、
図4(B)は
図4(A)のA-A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を参照しつつ、本実施の形態に係る指紋検出シートについて説明する。指紋検出シート1は、
図1(A)、(B)に示すように、基材シート2、指紋転写シート3、カバーフィルム4、及び、粘着剤層5を備える。
【0013】
基材シート2は、指紋転写シート3が積層される基台となるシートであり、指紋転写シート3のひび割れや欠けなどを抑える。基材シート2には、ウレタン、塩化ビニル等の樹脂製や紙製のシートが用いられる。また、基材シート2の裏面(指紋転写シート3が配置されない面)には、指紋の採取日や採取場所、採取物件等の情報を記入できるようラベルシートが設けられていてもよい。
【0014】
指紋転写シート3は、粘着剤層5を介して基材シート2に積層配置されている。指紋転写シート3は、指紋が転写され、転写された指紋を可視化させる。指紋転写シート3に指紋が転写された後、指紋転写シート3に検出液を塗布すると、転写された指紋が現れる機能を果たす。より具体的には、指紋転写シート3の表面には、微小な疎水部と親水部とがマトリクス状に存在しており、指紋転写シート3に指紋が転写されると、指紋を形成する皮脂成分が疎水性相互作用によって結合する。指紋が転写された指紋転写シート3に検出液を塗布すると、指紋転写シート3からの検出液の蒸発速度の差によって、転写された指紋が可視化される。
【0015】
指紋転写シート3は、このような機能を発揮するならば、特に制限されず、例えば、親油性と親水性を併せ持つ転写媒体、具体的にはセルロース混合エステル製の転写媒体等、公知のものを用いることができる。また、検出液として、水やトリフェニルメタン系色素溶液が用いられる。
【0016】
カバーフィルム4は、基材シート2及び指紋転写シート3の上に積層配置されている。カバーフィルム4は、ポリエチレンテレフタラート等、無色透明または有色透明の透光性の樹脂シートである。カバーフィルム4のサイズは、指紋転写シート3を十分にカバーできるよう、指紋転写シート3よりも大きく、基材シート2と同程度である。
【0017】
カバーフィルム4は、指紋転写シート3を密閉し、指紋転写シート3に現れた指紋が検出液の蒸発によって消失することを抑制する機能を果たす。
【0018】
基材シート2は、指紋転写シート3の縁から面方向にはみ出す余白部を有していることが好ましい。余白部は、配置されている指紋転写シート3の縁全周に渡って存在していることが好ましい。
【0019】
ここでは、基材シート2の全面に粘着剤層5が塗工されており、粘着剤層5を介して指紋転写シート3が基材シート2に設置されている。そして、基材シート2の余白部に露出している粘着剤層5を介して、基材シート2とカバーフィルム4とが粘着され、その間に配置されている指紋転写シート3が基材シート2とカバーフィルム4とで密閉される。粘着剤層5は、基材シート2とカバーフィルム4とが十分に粘着され、複数回の剥離、粘着が可能であるとともに、指紋転写シート3が剥離しなければ、ウレタン系粘着剤やシリコーン系粘着剤等、どのような粘着剤が用いられていてもよい。
【0020】
続いて、指紋検出シート1の使用方法について説明する。まず、カバーフィルム4を剥離し、指紋転写シート3を露出させる。そして、
図2(A)に示すように、指紋が付着しているドアノブ等の採取対象物に指紋転写シート3を当接し、押圧する。これにより、採取対象物に付着している指紋、より詳細には皮脂成分が指紋転写シート3に転写される。
【0021】
次いで、
図2(B)に示すように、指紋転写シート3に検出液を塗布する。検出液の塗布は、検出液を指紋転写シート3に滴下することで行い得る。
【0022】
検出液を塗布した後、しばらく放置しておくと検出液の蒸発速度の差によって、
図2(C)に示すように、指紋転写シート3に指紋が現れる。
【0023】
指紋転写シート3に指紋が現れている状態で、
図2(D)に示すように、カバーフィルム4を基材シート2に貼り付け、指紋転写シート3を密閉する。
【0024】
指紋転写シート3に塗布した検出液の蒸発が進行し過ぎると、現れた指紋が消失し、視認できなくなるが、本実施の形態では、基材シート2とカバーフィルム4とで指紋転写シート3を密閉することにより、過度の検出液の蒸発が抑制され、現れた指紋の可視化を長時間にわたって維持することができる。
【0025】
また、カバーフィルム4は、
図3(A)、(B)に示すように、基材シート2よりも面積が大きく、カバーフィルム4の基材シート2からはみ出した部分が基材シート2の背面に回り込み、基材シート2の背面に貼り付けられる形態であってもよい。カバーフィルム4が指紋転写シート3の密閉状態をより高め、検出液の蒸発をより抑制することができる。これにより、紙面転写シート2に現れた指紋の視認可能時間を更に長くすることができる。なお、この場合、カバーフィルム4の基材シート2からはみ出した部分には粘着剤層5が設けられる。
【0026】
また、
図4(A)、(B)に示す指紋検出シート1のように、封止部材6を備えていてもよい。封止部材6は、基材シート2及びカバーフィルム4の側部に向けて、断面がコの字状に開口した形状をしている。封止部材6は、プロピレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムや天然ゴムなど、伸縮可能な弾性素材から形成されている。封止部材6の開口部に、基材シート2及びカバーフィルム4の縁が全周に渡って嵌め込まれることで、指紋転写シート3の密閉状態が更に高められる。これにより、検出液の蒸発を更に抑制することができ、指紋転写シート3に現れた指紋を更に長時間にわたって視認可能にすることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 指紋検出シート
2 基材シート
3 指紋転写シート
4 カバーフィルム
5 粘着剤層
6 封止部材