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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072052
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/80 20170101AFI20240520BHJP
   B60Q 3/283 20170101ALI20240520BHJP
   B60Q 3/217 20170101ALI20240520BHJP
   B60Q 3/16 20170101ALI20240520BHJP
【FI】
B60Q3/80
B60Q3/283
B60Q3/217
B60Q3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182642
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 峻
(72)【発明者】
【氏名】野倉 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】佐山 仁康
(72)【発明者】
【氏名】近 翔太
(72)【発明者】
【氏名】籔田 由紀子
【テーマコード(参考)】
3K040
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040BA00
3K040CA05
3K040DA05
3K040DB00
3K040EA03
3K040EA05
3K040GA04
3K040GB02
3K040GB08
3K040GC01
3K040GC04
3K040GC05
3K040GC11
3K040GC14
(57)【要約】
【課題】乗員に意識させることなく適切な照明を行うことができる照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置1は、車両9内の複数の照明領域に対応して配置された照明部2と、照明領域を動的に変化させる予め定められた複数の照明モードを記憶する記憶部3と、照明部2を制御して車両9の状況に応じて記憶部3に記憶された複数の照明モードから乗員に適切な照明モードを選択して照明する制御部5と、を備えて概略構成されている。この照明装置1は、乗員に意識させることなく適切な照明を行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の複数の照明領域に対応して配置された照明部と、
前記照明領域を動的に変化させる予め定められた複数の照明モードを記憶する記憶部と、
前記照明部を制御して前記車両の状況に応じて前記記憶部に記憶された複数の前記照明モードから乗員に適切な前記照明モードを選択して照明する制御部と、
を備えた照明装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記乗員を高揚させる場合、予め定められた基準距離よりも前記乗員までの視距離を遠くする前記照明モードに基づいて前記照明部を制御する、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記乗員をリラックスさせる場合、予め定められた基準視線を基準とした前記乗員の視線の角度である俯角を大きくする前記照明モードに基づいて前記照明部を制御する、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記乗員を集中させる場合、予め定められた基準幅よりも照明の光の幅を太くする前記照明モードに基づいて前記照明部を制御する、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記制御部は、さらに点灯状態を変化させる、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記制御部は、さらに前記照明領域に投影する図柄を変化させる、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記照明部は、前記車両の床、前記車両の天井、ステアリング、インストルメントパネル、及び左右のドアの少なくとも2つに配置された、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、車室内で光を発すると共に、発する光の色を任意に変更可能とされた照明部と、車室内に設定された検出領域で検出対象物の色を検出する色検出部と、照明部が発する光の色を、色検出部が検出した色に変更する制御部と、を備えた車室内照明装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
乗員は、気分や好みに応じた色の検出対象物(例えば、上記乗員が好きな色の服やサンプル)を上記検出領域に配置させて、当該検出対象物の色を色検出部に検出させることにより、車室内の照明を上記検出対象物の色に変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-69933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車室内照明装置は、乗員自ら意識して検出領域に検出対象物を配置しなければならず、煩わしい問題がある。
【0006】
従って本発明の目的は、乗員に意識させることなく適切な照明を行うことができる照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、車両内の複数の照明領域に対応して配置された照明部と、照明領域を動的に変化させる予め定められた複数の照明モードを記憶する記憶部と、照明部を制御して車両の状況に応じて記憶部に記憶された複数の照明モードから乗員に適切な照明モードを選択して照明する制御部と、を備えた照明装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗員に意識させることなく適切な照明を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、実施の形態に係る照明装置が配置された車両内の一例を示す図であり、図1(b)は、照明装置のブロック図の一例であり、図1(c)は、照明装置を含む車両照明システムのブロック図の一例である。
図2図2(a)は、実施の形態に係る照明装置の照明領域の一例を示す図であり、図2(b)は、照明と乗員に与える心理的効果との関係の一例を説明するための図である。
図3図3(a)は、実施の形態に係る照明装置の視距離の一例について説明するための図であり、図3(b)は、視距離の心理的効果の一例について説明するための図である。
図4図4(a)は、実施の形態に係る照明装置の俯角の一例について説明するための図であり、図4(b)は、俯角の心理的効果の一例について説明するための図である。
図5図5(a)は、実施の形態に係る照明装置の光の幅の一例について説明するための図であり、図5(b)は、光の幅の心理的効果の一例について説明するための図である。
図6図6(a)は、実施の形態に係る照明装置の点灯状態の変化の一例について説明するための図であり、図6(b)は、点灯状態の変化による心理的効果の一例について説明するための図である。
図7図7(a)は、実施の形態に係る照明装置の図柄の変化の一例について説明するための図であり、図7(b)は、図柄の変化による心理的効果の一例について説明するための図である。
図8図8(a)~図8(e)は、実施の形態に係る照明装置が投影する図柄の一例を示す図である。
図9図9は、実施の形態に係る照明装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る照明装置は、車両内の複数の照明領域に対応して配置された照明部と、照明領域を動的に変化させる予め定められた複数の照明モードを記憶する記憶部と、照明部を制御して車両の状況に応じて記憶部に記憶された複数の照明モードから乗員に適切な照明モードを選択して照明する制御部と、を備えて概略構成されている。
【0011】
この照明装置は、車両の状況に応じて照明を行うので、この構成を採用しない場合と比べて、乗員に意識させることなく適切な照明を行うことができる。
【0012】
[実施の形態]
(照明装置1の概要)
図1(a)は、実施の形態に係る照明装置が配置された車両内の一例を示す図であり、図1(b)は、照明装置のブロック図の一例であり、図1(c)は、照明装置を含む車両照明システムのブロック図の一例である。図2(a)は、実施の形態に係る照明装置の照明領域の一例を示す図であり、図2(b)は、照明と乗員に与える心理的効果との関係の一例を説明するための図である。なお以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率や形状は、実際の比率や形状とは異なる場合がある。また図2(b)は、官能評価の結果をマップ化するため、横軸が相反する感情である「不快」と「快」であり、縦軸が相反する感情である「沈静」と「活動」を示している。さらに図1(b)及び図1(c)では、主な信号や情報の流れを矢印で示している。
【0013】
照明装置1は、図1(a)~図2(a)に示すように、車両9内の複数の照明領域に対応して配置された照明部2と、照明領域を動的に変化させる予め定められた複数の照明モードを記憶する記憶部3と、照明部2を制御して車両9の状況に応じて記憶部3に記憶された複数の照明モードから乗員に適切な照明モードを選択して照明する制御部5と、を備えて概略構成されている。
【0014】
照明部2は、車両9の床96、車両9の天井97、ステアリング95、インストルメントパネル94、及び左右のドア(左ドア92及び右ドア93)の少なくとも2つに配置されている。本実施の形態の照明部2は、一例として、図1(a)に示すように、車両9の床96、車両9の天井97、ステアリング95、インストルメントパネル94、左ドア92のドアトリム92a、及び右ドア93のドアトリム93aに配置されているがこれに限定されない。
【0015】
照明装置1は、一例として、図1(c)に示すように、車両制御装置98と共に車両照明システム900を構成している。車両照明システム900は、車両9の状況に応じて乗員の心理的効果を演出するように構成されている。車両情報Sは、車両9の状況に関する情報を含んでいる。車両9の状況とは、例えば、ドアのアンロック、イグニッションスイッチの操作、走行モードの選択、電気自動車における充電、走行中の周囲の状況、乗員の数、乗員の様子などである。なお変形例として照明装置1は、車両9の状況を検出する検出部を備えた構成とされても良い。
【0016】
車両制御装置98は、車両9を総合的に制御するマイクロコンピュータであり、自動運転の制御、各種センサを用いた車両9の走行のアシストなどを行うように構成されている。
【0017】
照明装置1は、車両情報Sに基づく車両9の状況に応じて車両9の空間を最適化し、乗員に適切な照明を提供するように構成されている。
【0018】
(照明部2の構成)
照明部2は、一例として、複数の照明部として第1の照明部21~第5の照明部25を有している。なお照明部2は、第1の照明部21~第5の照明部25に限定されず、照明領域に応じて配置される。
【0019】
第1の照明部21及び第2の照明部22は、図1(a)に示すように、左ドア92のドアトリム92a、インストルメントパネル94、及び右ドア93のドアトリム93aと繋がる線状の照明を形成するように配置されている。この第1の照明部21及び第2の照明部22は、制御部5から出力される照明信号S及び照明信号Sに応じて点灯、消灯及び線の幅を変えることができるように構成されている。第1の照明部21及び第2の照明部22は、一例として、白色の複数のLED(Light-Emitting Diode)素子を有して構成されているがこれに限定されず、異なる色のLED素子であっても良いし、複数の色を切り替えられるように構成されても良い。
【0020】
第1の照明部21は、図2(a)に示すように、線状の照明領域210を照明する。この照明領域210は、一例として、左ドア92のドアトリム92aの上部92c、インストルメントパネル94の上部94a、及び右ドア93のドアトリム93aの上部93cにわたる領域となっている。この第1の照明部21は、乗員から見て前方方向に最も遠方となる照明領域210を形成するように構成されている。第1の照明部21は、照明領域210の線幅を細くしたり太くしたりできるように構成されている。
【0021】
第2の照明部22は、図2(a)に示すように、線状の照明領域220を照明する。この照明領域220は、一例として、左ドア92のドアトリム92aの側面部92b、インストルメントパネル94の前面部94b、及び右ドア93のドアトリム93aの側面部93bにわたる領域となっている。第2の照明部22は、照明領域220の線幅を細くしたり太くしたりできるように構成されている。照明領域220は、第1の照明部21の照明領域210よりも下方に位置している。
【0022】
第3の照明部23は、図1(a)に示すように、助手席90及び運転席91の床96を照明するようにインストルメントパネル94の下部94cに配置されている。従って第3の照明部23は、図2(a)に示すように、乗員の足元を照明領域230としている。
【0023】
この第3の照明部23は、後述するように、床96に動的な複数の図柄を投影可能に構成されている。第3の照明部23は、制御部5から出力される照明信号Sに応じて動的な図柄の投影、図柄の切り替えを行うように構成されている。第3の照明部23は、一例として、白色の複数のLED素子を有して構成されているがこれに限定されず、異なる色のLED素子であっても良いし、複数の色を図柄に応じて切り替えられるように構成されても良い。
【0024】
第4の照明部24は、図1(a)に示すように、ステアリング95の上部95aに配置されている。この第4の照明部24は、ステアリング95の形状に応じた照明領域240を照明する。第4の照明部24は、制御部5から出力された照明信号Sに応じて点灯、消灯することができるように構成されている。第4の照明部24は、一例として、白色の複数のLED素子を有して構成されているがこれに限定されず、異なる色のLED素子であっても良いし、複数の色を切り替えられるように構成されても良い。またステアリング95の形状は、真円形状に限定されず、異形ステアリングであっても良い。なお第4の照明部24は、線の幅を変えられるように構成されても良い。
【0025】
第5の照明部25は、図1(a)に示すように、天井97に配置されている。この第5の照明部25は、天井97を照明領域250としている。第5の照明部25は、制御部5から出力された照明信号Sに応じて点灯、消灯することができるように構成されている。第4の照明部24は、一例として、白色の複数のLED素子を有して構成されているがこれに限定されず、異なる色のLED素子であっても良いし、複数の色を切り替えられるように構成されても良い。なお第5の照明部25は、照明領域250の面積や形状を変えられるように構成されても良い。
【0026】
(記憶部3の構成)
記憶部3は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置である。この記憶部3には、複数の照明モードの情報を含む照明モード情報30が記憶されている。なお記憶部3は、制御部5と一体とされた半導体メモリとして構成されても良い。
【0027】
(通信部4の構成)
通信部4は、車両9の車両制御装置98と情報や信号の交換を可能に構成されている。通信部4は、車両制御装置98を介して車両情報Sを取得するように構成されている。
【0028】
(制御部5の構成)
制御部5は、例えば、記憶されたプログラムに従って、取得したデータに演算、加工などを行うCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などから構成されるマイクロコンピュータである。このROMには、例えば、制御部5が動作するためのプログラムが格納されている。RAMは、例えば、一時的に演算結果などを格納する記憶領域として用いられる。
【0029】
制御部5は、乗員までの視距離L、乗員の視線の角度である俯角θ、照明の光の幅W、点灯状態、及び図柄の少なくとも1つに基づく照明モードに基づいて照明部2を制御するように構成されている。
【0030】
図2(b)は、照明と乗員の心理について「喜び・高揚」、「集中・緊張」、「寛ぎ・落ち着き」、「快適」及び「好み」の5つのアンケートに基づいて官能評価を行ない、横軸を相反する感情である「不快」と「快」、縦軸を相反する感情である「沈静」と「活動」として官能評価の結果をマップ化するための図である。このマップでは、「快」かつ「活動」を第1象限11、「不快」かつ「活動」を第2象限12、「不快」かつ「沈静」を第3象限13、及び「快」かつ「沈静」を第4象限14としている。
【0031】
さらにマップは、一例として、「沈静」、「活動」、「不快」及び「快」をその大きさに応じて2つに分け、便宜的に「沈静」を「沈静小」と「沈静大」、「活動」を「活動小」と「活動大」、「不快」を「不快小」と「不快大」、及び「快」を「快小」と「快大」として16の領域に分けるものとする。
【0032】
第1象限11は、図2(b)に示すように、さらに第1の領域11a~第4の領域11dに分けられている。第2象限12は、さらに第1の領域12a~第4の領域12dに分けられている。第3象限13は、さらに第1の領域13a~第4の領域13dに分けられている。第4象限14は、さらに第1の領域14a~第4の領域14dに分けられている。
【0033】
以下では、照明部2の配置の違いに対する心理的効果の一例として乗員を高揚させる場合、リラックスさせる場合、集中させる場合について説明する。
【0034】
・乗員を高揚させる場合
図3(a)は、実施の形態に係る照明装置の視距離の一例について説明するための図であり、図3(b)は、視距離の心理的効果の一例について説明するための図である。図3(b)、後述する図4(b)及び図5(b)は、横軸が「不快」と「快」、縦軸が「沈静」と「活動」を示している。
【0035】
制御部5は、図3(a)及び図3(b)に示すように、乗員8を高揚させる場合、予め定められた基準距離Lよりも乗員までの視距離Lを遠くする照明モード300に基づいて照明部2を制御するように構成されている。また制御部5は、乗員8を沈静させる場合、視距離Lを近づける照明モード301を選択する。図3(a)では、選択された照明モードの視距離Lに対して当該照明モードの符号を付している。
【0036】
視距離Lは、図3(a)に示すように、運転席91に着座する乗員8からの照明部2までの距離である。基準距離Lは、一例として、運転席91の前方のインストルメントパネル94の前面部94bの第2の照明部22までの距離である。視距離Lは、運転席91の前方の最も遠い視距離Lがインストルメントパネル94の上部94aの第1の照明部21までの距離であり、運転席91の前方の最も近い視距離Lがステアリング95の第4の照明部24までの距離である。
【0037】
つまり基準距離Lは、乗員8から照明領域220までの距離である。視距離Lは、乗員8から照明領域210までの距離である。視距離Lは、乗員8から照明領域240までの距離である。
【0038】
視距離Lは、官能評価により、一例として、図3(b)に矢印で示すように、近くから遠くなると第3象限13から第1象限11に向かって乗員の心理が「喜び・高揚」に近づく傾向が得られた。つまり照明装置1は、照明部2を遠方に配置することにより、乗員の高揚感を向上させることができる。
【0039】
乗員を「喜び・高揚」させる車両9の状況とは、一例として、ドアのアンロック、イグニッションスイッチの操作、スポーツ走行に適した走行モードの選択、多数の乗員の乗車などである。制御部5は、車両情報Sに基づいて乗員を「喜び・高揚」させる照明モード300を照明モード情報30から選択して照明を行う。
【0040】
・乗員をリラックスさせる場合
図4(a)は、実施の形態に係る照明装置の俯角の一例について説明するための図であり、図4(b)は、俯角の心理的効果の一例について説明するための図である。
【0041】
制御部5は、図4(a)及び図4(b)に示すように、乗員8をリラックスさせる場合、予め定められた基準視線32aを基準とした乗員8の視線の角度である俯角θを大きくする照明モード302に基づいて照明部2を制御するように構成されている。また制御部5は、乗員8を活動的にさせる場合、俯角θを小さくする照明モード303を選択する。図4(a)では、選択された照明モードの俯角θに対して当該照明モードの符号を付している。
【0042】
俯角θは、図4(a)に一点鎖線で示すように、運転席91に着座する乗員8の基準視線32aからの角度である。この俯角θは、基準視線32aから上方向が正、下方向が負とされているがリラックスさせる場合、絶対値が大きくされる。
【0043】
俯角θは、基準視線32aから天井97に配置された第5の照明部25の照明領域250までの角度である。俯角θは、基準視線32aからインストルメントパネル94の上部94aに配置された第1の照明部21の照明領域210までの角度である。俯角θは、基準視線32aから運転席91の前方のインストルメントパネル94の前面部94bに配置された第2の照明部22の照明領域220、又はステアリング95の上部95aに配置された第4の照明部24の照明領域240までの角度である。俯角θは、基準視線32aから運転席91の前方のインストルメントパネル94の下部94cに配置された第3の照明部23の照明領域230までの角度である。
【0044】
俯角θは、官能評価により、一例として、図4(b)に矢印で示すように、小さい角度から大きい角度になると第2象限12から第4象限14に向かって乗員の心理が「寛ぎ・落ち着き」に近づく傾向が得られた。つまり照明装置1は、俯角θの絶対値が大きくなるように照明部2を配置することにより、乗員の落ち着きを向上させることができる。
【0045】
乗員を「寛ぎ・落ち着き」させる車両9の状況とは、一例として、電気自動車における充電、乗員の休憩、乗員の仕事などである。制御部5は、車両情報Sに基づいて乗員を「寛ぎ・落ち着き」させる照明モード302を照明モード情報30から選択して照明を行う。
【0046】
・乗員を集中させる場合
図5(a)は、実施の形態に係る照明装置の光の幅の一例について説明するための図であり、図5(b)は、光の幅の心理的効果の一例について説明するための図である。
【0047】
制御部5は、図5(a)及び図5(b)に示すように、乗員8を集中させる場合、予め定められた基準幅Wよりも照明の光の幅Wを太くする照明モード304に基づいて照明部2を制御するように構成されている。また制御部5は、乗員8を活動的にさせる場合、光の幅Wを細くする照明モード305を選択する。図5(a)では、選択された照明モードの光の幅Wに対して当該照明モードの符号を付している。
【0048】
光の幅Wは、図5(a)に示すように、運転席91に着座する乗員8から見た幅である。光の幅Wは、照明領域の幅であり、基準幅Wよりも太い幅を幅W、細い幅を幅Wとしている。
【0049】
光の幅Wは、官能評価により、一例として、図5(b)に矢印で示すように、細い幅から太い幅になると第1象限11から第2象限12に向かって乗員の心理として「集中・緊張」が高まる傾向が得られた。つまり照明装置1は、照明部2の光の幅Wを太くすることにより、乗員の集中・緊張を向上させることができる。
【0050】
乗員を「集中・緊張」させる車両9の状況とは、一例として、他の車両や障害物の接近、運転者への注意喚起などである。制御部5は、車両情報Sに基づいて乗員を「集中・緊張」させる照明モード304を照明モード情報30から選択して照明を行う。
【0051】
続いて以下では、照明部2の光り方の違いに対する心理的効果の一例について説明する。
【0052】
・点灯状態を変化させる場合
図6(a)は、実施の形態に係る照明装置の点灯状態の変化の一例について説明するための図であり、図6(b)は、点灯状態の変化による心理的効果の一例について説明するための図である。
【0053】
制御部5は、さらに点灯状態を変化させるように構成されている。例えば、制御部5は、図6(a)に示すように、第1の照明部21の照明領域210において中央の点灯領域210aを点灯させ、この点灯領域210aを左ドア92及び右ドア93に移動させる。制御部5は、照明モード306として点灯領域210aの中央から左ドア92及び右ドア93への移動を繰り返すように制御する。図6(a)では、選択された照明モードの照明領域210に対して当該照明モードの符号を付している。
【0054】
乗員の心理は、視距離Lが遠方であり、かつ通常点灯、つまり変化がない場合、一例として、図6(b)に示すように、官能評価により、第3象限13の第1の領域13aの「不快大」と「沈静大」であった。
【0055】
また乗員の心理は、点灯状態を中央から全体に広がるように変えた場合、図6(b)に示すように、官能評価により、第3象限13の第1の領域13aの「不快大」と「沈静大」から第2象限12の第3の領域12cの「不快小」と「活動大」へと変化した。
【0056】
さらに乗員の心理は、点灯状態をゆっくり点灯させるように変えた場合、官能評価により、第3象限13の第1の領域13aの「不快大」と「沈静大」から第1象限11の第2の領域11bの「快大」と「活動小」へと変化した。
【0057】
またさらに乗員の心理は、点灯状態をさらにゆっくり点灯させるように変えた場合、官能評価により、第3象限13の第1の領域13aの「不快大」と「沈静大」から第4象限14の第2の領域14bの「快大」と「沈静大」へと変化した。
【0058】
つまり点灯状態が中心から全体へ変わる場合、動きのある照明や流れる照明がなされた場合、「喜び・高揚」の心理的効果が得られる傾向にあった。また点灯状態がゆっくり点灯する状態である場合、「快適」の心理的効果が得られる傾向にあった。点灯状態がさらにゆっくり点灯する状態である場合、「リラックス」の心理的効果が得られる傾向にあった。
【0059】
上記では、視距離Lが遠方の場合であったがこれに限定されず、照明装置1は、視距離L、俯角θ、光の幅W、及び図柄の変化を組み合わせて所望の心理的効果を得られる照明モードを有するように構成されても良い。
【0060】
・図柄を変化させる場合
図7(a)は、実施の形態に係る照明装置の図柄の変化の一例について説明するための図であり、図7(b)は、図柄の変化による心理的効果の一例について説明するための図である。図8(a)~図8(e)は、実施の形態に係る照明装置が投影する図柄の一例を示す図である。
【0061】
制御部5は、さらに照明領域に投影する図柄を変化させるように構成されている。照明装置1の第3の照明部23が図柄を投影可能に構成された場合、一例として、図7(a)に示すように、制御部5は、床96の照明領域230に図柄を投影し、動きのある照明モード307により照明を行う。図7(a)における照明領域230の図柄は、図8(d)に示す図柄23dである。図7(a)では、選択された照明モードの照明領域230に対して当該照明モードの符号を付している。
【0062】
乗員の心理は、図柄がなく、また照明の動きがない場合、一例として、図7(b)に示すように、官能評価により、第4象限14の第4の領域14dの「快大」と「沈静小」であった。
【0063】
乗員の心理は、図柄が図8(a)に示す「オーロラ」の図柄23aであり、動きがある場合、一例として、図7(b)に示すように、官能評価により、第4象限14の第4の領域14dの「快小」と「沈静小」から第2象限12の第3の領域12cの「不快小」と「活動大」へと変化した。なお動きがあるとは、「オーロラ」の図柄23a、「星空」の図柄23b、「水面」の図柄23c、及び「木漏れ日」の図柄23dが動的に変化する状態を示している。
【0064】
乗員の心理は、図柄が図8(b)に示す「星空」の図柄23bであり、動きがある場合、一例として、図7(b)に示すように、官能評価により、第4象限14の第4の領域14dの「快小」と「沈静小」から第1象限11の第4の領域11dの「快小」と「活動大」へと変化した。
【0065】
乗員の心理は、図柄が図8(c)に示す「水面」の図柄23cであり、動きがある場合、一例として、図7(b)に示すように、官能評価により、第4象限14の第4の領域14dの「快小」と「沈静小」から第1象限11の第2の領域11bの「快大」と「活動小」へと変化した。
【0066】
乗員の心理は、図柄が図8(d)に示す「木漏れ日」の図柄23dであり、動きがある場合、一例として、図7(b)に示すように、官能評価により、第4象限14の第4の領域14dの「快小」と「沈静小」から第4象限14の第3の領域14cの「快大」と「沈静小」へと変化した。
【0067】
つまり乗員の心理は、投影される図柄が「オーロラ」の図柄23a及び「星空」の図柄23bである場合、「喜び・高揚」の心理的効果が得られる傾向にあった。この心理的効果では、非日常空間の演出により、一例として、乗員が多数いる場合に適している。
【0068】
また乗員の心理は、投影される図柄が「水面」の図柄23c及び「木漏れ日」の図柄23dである場合、「快適」の心理的効果が得られる傾向にあった。この心理的効果では、自然の癒し空間の演出により、一例として、乗員が気分転換したい場合に適している。なお図8(e)に示す図柄23eは、一例として、自然の癒し空間を演出する「草原」を示している。
【0069】
さらに乗員の心理は、図柄がなく、動きもない場合、「リラックス」の心理的効果が得られる傾向にあった。この心理的効果では、刺激を抑制した空間の演出により、一例として、乗員が集中して車両9内で仕事などを行いたい場合に適している。
【0070】
なお制御部5は、図3(b)、図4(b)、図4(b)のマップに示す傾向に基づいて車両9の状況をさらに細かく分け、視距離L、俯角θ、光の幅W、照明部2の光り方、及び投影される図柄の変化を組み合わせて照明部2を制御して照明する。組み合わせた照明モードは、照明モード情報30として記憶部3に記憶される。制御部5は、車両情報Sに基づいて照明モード情報30から適切な照明モードを選択して照明部2を制御する。
【0071】
制御部5は、例えば、運転のやる気を活性化する場合、遠方の高い位置に動きのある照明を行う照明モードに従って照明部2を制御する。また制御部5は、例えば、注意喚起を行う場合、近い位置に早く光る照明モードに従って照明部2を制御する。さらに制御部5は、例えば、心身を癒し、気持ちを切り替えさせる場合、足元にゆったりとした動きのある照明モードに従って照明部2を制御する。またさらに制御部5は、例えば、仲間と過ごす非日常の体験を演出する場合、足元やドアに動きがあり、非日常空間を作り出す照明モードに従って照明部2を制御する。
【0072】
以下に、本実施の形態の照明装置1の照明開始までの動作の一例について図9のフローチャートに従って説明する。
【0073】
(動作)
照明装置1の制御部5は、ステップ1の「Yes」が成立する、つまり通信部4を介して取得した車両情報Sに基づいて車両9の状況を取得すると(Step1:Yes)、記憶部3に記憶された照明モード情報30から車両9の状況に応じた照明モードを選択して照明を行う(Step2)。
【0074】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る照明装置1は、乗員に意識させることなく適切な照明を行うことができる。具体的には、照明装置1は、車両情報Sに基づいた車両9の状況に応じて照明モードを選択するので、この構成を採用しない場合と比べて、乗員が照明モードを選択する煩わしさがなく、乗員が意識しなくても最適な照明がなされる。
【0075】
照明装置1は、視距離L、俯角θ、光の幅W、光り方、及び投影される図柄の変化を組み合わせて動的な照明を行うので、この構成を採用しない場合と比べて、より乗員の心理に適切な照明を行うことができる。
【0076】
照明装置1は、視距離L、俯角θ、光の幅W、光り方、及び投影される図柄の変化を組み合わせて動的な照明を行うので、この構成を採用しない場合と比べて、より状況に応じた多様性のある照明を行うことができる。
【0077】
照明装置1は、視距離L、俯角θ、光の幅W、光り方、及び投影される図柄の変化を組み合わせて動的な照明を行うので、車両9の状況に応じた乗員の感情を変動させる照明を行うことができる。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…照明装置、2…照明部、3…記憶部、4…通信部、5…制御部、8…乗員、9…車両、11a~11d…第1の領域~第4の領域、12a~12d…第1の領域~第4の領域、13a~13d…第1の領域~第4の領域、14a~14d…第1の領域~第4の領域、23a~23e…図柄、21~25…第1の照明部~第5の照明部、30…照明モード情報、32a…基準視線、90…助手席、91…運転席、92…左ドア、92a…ドアトリム、92b…側面部、92c…上部、93…右ドア、93a…ドアトリム、93b…側面部、93c…上部、94…インストルメントパネル、94a…上部、94b…前面部、94c…下部、95…ステアリング、95a…上部、96…床、97…天井、98…車両制御装置、210…照明領域、210a…点灯領域、220…照明領域、230…照明領域、240…照明領域、250…照明領域、300~307…照明モード、900…車両照明システム
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