(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072071
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】インクジェットシステム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/21 20060101AFI20240520BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240520BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20240520BHJP
G16Y 40/35 20200101ALI20240520BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/525
G16Y40/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182685
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 寿郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智良
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 暁良
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸朗
【テーマコード(参考)】
2C056
2C262
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB07
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC42
2C056EC72
2C056ED01
2C056EE02
2C056EE03
2C056EE08
2C056FA04
2C056FA10
2C262AA02
2C262AB11
2C262EA03
2C262EA11
2C262FA14
2C262GA29
2C262GA57
2C262GA59
(57)【要約】
【課題】ユーザーが所望する色を得るための調整にかかるユーザーの負担を軽減すること。
【解決手段】サーバーに通信可能なインクジェットシステムであって、第1種類のインクを記録媒体に吐出する第1ヘッドユニットと、第2種類のインクを前記記録媒体に吐出する第2ヘッドユニットと、前記第1ヘッドユニット及び前記第2ヘッドユニットに関する第1情報と、前記第1種類のインク及び前記第2種類のインクに関する第2情報と、のいずれか一方又は両方を取得する取得部と、前記サーバーに向けて、前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方を送信する送信部と、前記第1情報と前記第2情報といずれか一方又は両方に基づいて生成された、基準色を前記記録媒体上に形成するための基準色情報を、前記サーバーから受信する受信部と、を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバーに通信可能なインクジェットシステムであって、
第1種類のインクを記録媒体に吐出する第1ヘッドユニットと、
第2種類のインクを前記記録媒体に吐出する第2ヘッドユニットと、
前記第1ヘッドユニット及び前記第2ヘッドユニットに関する第1情報と、前記第1種類のインク及び前記第2種類のインクに関する第2情報と、のいずれか一方又は両方を取得する取得部と、
前記サーバーに向けて、前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方を送信する送信部と、
前記第1情報と前記第2情報といずれか一方又は両方に基づいて生成された、基準色を前記記録媒体上に形成するための基準色情報を、前記サーバーから受信する受信部と、
を有することを特徴とするインクジェットシステム。
【請求項2】
前記インクジェットシステムは、前記サーバーを含み、
前記サーバーにおいて、前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方に基づいて前記基準色情報を生成する生成部を、更に有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットシステム。
【請求項3】
前記生成部は、前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方に基づいて、前記第1ヘッドユニットに設けられたエネルギー生成素子に印加する駆動波形を調整する情報と前記第2ヘッドユニットに設けられたエネルギー生成素子に印加する駆動波形を調整する情報との一方又は両方を含む前記基準色情報を生成する、
ことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットシステム。
【請求項4】
前記生成部は、前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方に基づいて、前記第1ヘッドユニットに対応する画像データに行う画像処理を調整する情報と前記第2ヘッドユニットに対応する画像データに行う画像処理を調整する情報とのいずれか一方又は両方を含む前記基準色情報を生成する、
ことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットシステム。
【請求項5】
前記受信部は、前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方に基づいて生成された、前記基準色の近傍の色である第1近傍色を前記記録媒体上に形成するための第1近傍色情報を、前記サーバーから更に受信する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットシステム。
【請求項6】
前記受信部は、前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方に基づいて生成された、前記基準色の近傍の色であり、前記第1近傍色と異なる第2近傍色を前記記録媒体上に形成するための第2近傍色情報を、前記サーバーから更に受信する、
ことを特徴とする請求項5に記載のインクジェットシステム。
【請求項7】
前記第1ヘッドユニットが前記第1種類のインクを前記記録媒体に吐出し、且つ、前記第2ヘッドユニットが前記第2種類のインクを前記記録媒体に吐出することにより、前記記録媒体に画像を形成する印刷処理を実行し、
前記受信部が受信した前記基準色情報に対応する色をユーザーに提示する提示部と、
前記基準色情報に対する前記ユーザーの指示を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた結果に基づいて、前記印刷処理に使用する色情報を決定する決定部と、を更に有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットシステム。
【請求項8】
前記受付部は、前記ユーザーによる前記基準色情報を採用するか否かを示す可否情報を受け付け、
前記決定部は、前記可否情報が前記基準色情報を採用することを示す場合、前記基準色情報を前記印刷処理に使用する色情報に決定する、
ことを特徴とする請求項7に記載のインクジェットシステム。
【請求項9】
前記受付部は、前記ユーザーによる前記基準色情報を調整する調整情報を受け付け、
前記決定部は、前記調整情報に基づいて、前記印刷処理に使用する色情報を決定する、
ことを特徴とする請求項7に記載のインクジェットシステム。
【請求項10】
前記決定部によって決定された色情報を記憶する記憶部を更に有し、
前記決定部は、更新された前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方を前記取得部が取得するまでは、前記記憶部に記憶された前記色情報を前記印刷処理に使用する色情報に決定し、
前記送信部は、更新された前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方を取得した後、前記サーバーに向けて、前記更新された前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方を送信する、
ことを特徴とする請求項7に記載のインクジェットシステム。
【請求項11】
前記第1情報は、前記第1ヘッドユニットに関する情報と、前記第2ヘッドユニットに関する情報とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットシステム。
【請求項12】
前記第2情報は、前記第1種類のインクに関する情報と、前記第2種類のインクに関する情報とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットシステム。
【請求項13】
前記第1種類のインクと前記第2種類のインクとは、互いに異なる色のインクであって、
前記基準色は、多次色である、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを記録媒体に吐出するヘッドユニットを有するインクジェットプリンターが開示されている。例えば、特許文献1には、複数色のインクを吐出可能なインクジェットプリンターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、複数のヘッドユニットの夫々から、異なる種類のインクを組み合わせて形成される基準色を記録媒体上に形成した場合、複数のヘッドユニットの製造誤差、及び、複数種類のインクの特性の差によって、ユーザーが所望する色から大きく離れた色が記録媒体上に形成されることがあった。従って、上述した従来の技術では、記録媒体上に形成された色をユーザーが所望する色に調整する場合のユーザーの負担が過大になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係るインクジェットシステムは、サーバーに通信可能なインクジェットシステムであって、第1種類のインクを記録媒体に吐出する第1ヘッドユニットと、第2種類のインクを前記記録媒体に吐出する第2ヘッドユニットと、前記第1ヘッドユニット及び前記第2ヘッドユニットに関する第1情報と、前記第1種類のインク及び前記第2種類のインクに関する第2情報と、のいずれか一方又は両方を取得する取得部と、前記サーバーに向けて、前記第1情報と前記第2情報とのいずれか一方又は両方を送信する送信部と、前記第1情報と前記第2情報といずれか一方又は両方に基づいて生成された、基準色を前記記録媒体上に形成するための基準色情報を、前記サーバーから受信する受信部と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るインクジェットシステム10の構成例を示す概略図。
【
図4】インクジェットプリンター100の構成の一例を例示する模式図。
【
図5】インクジェットプリンター100の構成例を示すブロック図。
【
図8】所望色を得るための調整の一例を説明する図。
【
図9】インクジェットシステム10の機能を示す図。
【
図10】インクジェットシステム10の動作を示すフローチャートを示す図。
【
図11】基準色情報管理テーブルSTTの内容の一例を示す図。
【
図13】基準色情報STIに対応する色と、複数の近傍色情報NBIの夫々に対応する色とを提示する一例を示す図。
【
図15】基準色の第2実施形態に係る調整例を説明する図。
【
図16】第2実施形態に係る基準色情報STIの一例を示す図。
【
図17】第1変形例に係る基準色選択画面CD1-Bを示す図。
【
図18】第7変形例に係るインクジェットシステム10-Bの機能を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態に係るインクジェットシステム10の構成例を示す概略図である。インクジェットシステム10は、インクジェット方式による印刷処理によって画像を形成するシステムである。
図1に示す例では、インクジェットシステム10は、インクジェットプリンター100_1~100_3と処理装置200_1~200_3とサーバー300とを有する。
【0009】
ここで、インクジェットプリンター100_1~100_3は、インクジェットプリンター100_1~100_3のメーカーが提供する装置である。以下の記載では、インクジェットプリンター100_1~100_3の夫々を区別せずに、インクジェットプリンター100と総称することがある。インクジェットプリンター100は、液体の一例であるインクを吐出する液体吐出装置である。インクジェットプリンター100のメーカーは、インクジェットプリンター100を製造する業者である。インクジェットプリンター100のメーカーを、「プリンターメーカー」と記載することがある。インクジェットプリンター100_1~100_3の夫々は、同一のプリンターメーカーによって提供されてもよいし、異なるプリンターメーカーによって提供されてもよい。但し、インクジェットプリンター100_1~100_3に組み込まれるヘッドユニットHUは、ヘッドユニットHUのメーカーが提供する。ヘッドユニットHUのメーカーは、ヘッドユニットHUを製造する業者である。以下、ヘッドユニットHUのメーカーを、「ヘッドメーカー」と記載することがある。プリンターメーカーは、ヘッドメーカーからヘッドユニットHUの提供を受け、提供されたヘッドユニットHUをインクジェットプリンター100に組み込むことにより、インクジェットプリンター100を製造する。
【0010】
図1には、インクジェットプリンター100_1を使用するユーザーU_1と、インクジェットプリンター100_2を使用するユーザーU_2と、インクジェットプリンター100_3を使用するユーザーU_3と、を示してある。以下の記載では、ユーザーU_1~U_3の夫々を区別せずにユーザーUと総称することがある。ユーザーUは、例えば、プリンターメーカーに属する作業者がインクジェットプリンター100を使用する場合、この作業者がユーザーUである。また、例えば、プリンターメーカーからインクジェットプリンター100の提供を受けた第三者がインクジェットプリンター100を使用する場合、この第三者がユーザーUである。以下の記載では、プリンターメーカーからインクジェットプリンター100の提供を受けた第三者を、「エンドユーザー」と記載することがある。1から3までの夫々の整数iについて、ユーザーU_iは、インクジェットプリンター100_iに加えて、処理装置200_iを使用する。
【0011】
インクジェットプリンター100_1は、処理装置200_1に通信可能に接続される。インクジェットプリンター100_2は、処理装置200_2に通信可能に接続される。インクジェットプリンター100_3は、処理装置200_3に通信可能に接続される。このように、インクジェットプリンター100_1~100_3は、処理装置200_1~200_3に夫々対応しており、処理装置200_1~200_3に通信可能に接続される。以下の記載では、処理装置200_1~200_3の夫々を区別せずに、処理装置200と総称することがある。
【0012】
なお、
図1に示す例では、インクジェットシステム10が有するインクジェットプリンター100及び処理装置200の夫々の数が3個であるが、当該数は、これに限定されず、1個、2個又は4個以上でもよい。すなわち、インクジェットプリンター100及び処理装置200の組は、3組に限定されず、1組、2組又は4組以上でもよい。
【0013】
インクジェットプリンター100は、処理装置200からの記録データDPに基づく画像をインクジェット方式により印刷する液体吐出装置である。記録データDPは、インクジェットプリンター100で処理可能な形式の画像データである。
【0014】
インクジェットプリンター100は、複数のヘッドユニットHUを有する。以下では、インクジェットプリンター100を構成する要素のうちヘッドユニットHUを除く要素を「プリンター本体」という場合がある。なお、
図1に示す例では、説明の簡略化のため、1個のインクジェットプリンター100は2個のヘッドユニットHUとして、ヘッドユニットHU-1とヘッドユニットHU-2とを有するが、ヘッドユニットHUの個数は2個に限定されず、3個以上でもよい。なお、ヘッドユニットHU-1が、「第1ヘッドユニット」の一例であり、ヘッドユニットHU-2が、「第2ヘッドユニット」の一例である。
【0015】
処理装置200は、デスクトップ型又はノート型等のコンピューターである。処理装置200は、記録データDPを生成する画像処理と、インクジェットプリンター100による印刷を制御する処理と、を実行する。画像処理において、処理装置200は、例えば、PostScript、PDF、XPS等のファイル形式の画像データに対して、色変換処理及びRIP処理等の各種処理を実行することにより、記録データDPを生成する。PDFは、Portable Document Formatの略称である。XPSは、XML Paper Specificationの略称である。RIPは、Raster image processorの略称である。ファイル形式の画像データは、例えば、ユーザーUが印刷処理の対象に指示したデータである。色変換処理は、ファイル形式の画像データで表現されるRGB値を、ルックアップテーブルを参照して、インクジェットプリンター100が使用するインクの色であるCMYK値又はCMY値等に変換する処理である。以下の記載では、CMY値に変換する例を用いて説明を行う。ルックアップテーブルには、RGB値とCMY値との対応関係が規定されている。RIP処理は、ディザパターンを示す情報及び誤差拡散マトリクスを示す情報を用いて、インクジェットプリンター100で印刷可能なデータである記録データDPを生成する処理である。
【0016】
処理装置200は、LAN、WAN、及び、インターネット等のネットワークNWを介してサーバー300に通信可能に接続される。LANは、Local Area Networkの略称である。WANは、Wide Area Networkの略称である。
【0017】
サーバー300は、クラウドサーバーとして機能するコンピューターである。サーバー300は、例えば、ヘッドメーカー、プリンターメーカー、及び、エンドユーザーとは異なる事業者によって管理される。以下、サーバー300を管理する事業者を、「サーバー事業者」と記載することがある。ヘッドメーカーは、サーバー300の一部を利用する。
【0018】
1-2.サーバー300の構成
図2は、サーバー300の構成の一例を示す図である。サーバー300は、制御回路310と、記憶回路320と、通信装置380とを有する。制御回路310と、記憶回路320と、通信装置380とは、情報を通信するためのバス390により相互に接続される。
【0019】
制御回路310は、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。CPUは、Central Processing Unitの略称である。なお、制御回路310は、CPUに代えて、又は、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0020】
記憶回路320は、磁気記憶装置又はフラッシュROM等で構成される。記憶回路320は、制御回路310が読取可能な記録媒体であり、制御回路310が実行する仮想化プログラムVM及び制御プログラムPM1を含む複数のプログラム、及び、制御回路310が使用する各種の情報などを記憶する。仮想化プログラムVMは、サーバー300の制御回路310及び記憶回路320といったリソースを複数に分割し、分割したリソースの夫々をクラウドサーバーとして動作させる。ヘッドメーカーは、サーバー300の一部として、複数のクラウドサーバーのうち一部のクラウドサーバーを利用する。制御プログラムPM1は、ヘッドメーカーによって開発される。記憶回路320は、例えば、RAM等の揮発性の1又は複数のメモリーとROM、EEPROM又はPROM等の1又は複数の不揮発性メモリーとの一方又は両方の半導体メモリーを含む。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ROMは、Read Only Memoryの略称である。EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略称である。PROMは、Programmable ROMの略称である。
【0021】
但し、記憶回路320が仮想化プログラムVMを有さなくてもよく、処理装置200は、クラウドサーバーCSの替わりにサーバー300にアクセスしてもよい。
【0022】
通信装置380は、ネットワークNWを介して処理装置200と通信を行うための通信回路を有するハードウェアである。通信装置380は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラー、ネットワークカード又は通信モジュールとも表記される。
【0023】
1-3.処理装置200の構成
図3は、処理装置200の構成を示す図である。処理装置200は、制御回路210と、記憶回路220と、通信装置230と、入力装置260と、表示装置270とを有する。制御回路210と、記憶回路220と、通信装置230と、入力装置260と、表示装置270とは、情報を通信するためのバス290により相互に接続される。なお、記憶回路220は、「記憶部」の一例である。
【0024】
制御回路210は、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。なお、制御回路210は、CPUに代えて、又は、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0025】
記憶回路220は、磁気記憶装置又はフラッシュROM等で構成される。記憶回路220は、制御回路210が読取可能な記録媒体であり、制御回路210が実行するインクジェットプログラムPM2を含む複数のプログラム、及び、制御回路210が使用する各種の情報などを記憶する。記憶回路220は、例えば、RAM等の揮発性の1又は複数のメモリーとROM、EEPROM又はPROM等の1又は複数の不揮発性メモリーとの一方又は両方の半導体メモリーを含む。インクジェットプログラムPM2は、例えば、処理装置200がインクジェットプリンター100に接続した場合に、サーバー300からダウンロードされ、処理装置200にインストールされる。
【0026】
通信装置230は、ネットワークNWを介して処理装置200と通信を行うための通信回路を有するハードウェアである。通信装置230は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラー、ネットワークカード又は通信モジュールとも表記される。
【0027】
通信装置240は、インクジェットプリンター100と通信可能な回路である。例えば、通信装置240は、USB、又はBluetooth等のネットワークカードである。USBは、Universal Serial Busの略称である。USB及びBluetoothは、登録商標である。
【0028】
入力装置260は、ユーザーUの操作に応じた操作情報を出力するデバイスである。入力装置260は、例えば、マウス及びキーボードである。
【0029】
表示装置270は、何らかの情報を示す画像をユーザーUに表示する。表示装置270は、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及び、LCDである。ELは、Electro-Luminescenceの略称である。LEDは、Light Emitting Diodeの略称である。LCDは、Liquid Crystal Displayの略称である。また、入力装置260及び表示装置270が一体である構成でもよい。入力装置260及び表示装置270が一体である構成は、例えば、タッチパネルである。
【0030】
1-4.インクジェットプリンター100の構成
図4は、インクジェットプリンター100の構成の一例を例示する模式図である。
図5は、インクジェットプリンター100の構成例を示すブロック図である。以下の説明では、相互に直交するX軸とY軸とZ軸とを想定する。任意の地点からみてX軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向の反対の方向をX2方向と表記する。同様に、任意の地点からY軸に沿って相互に反対の方向をY1方向及びY2方向と表記し、任意の地点からZ軸に沿って相互に反対の方向をZ1方向及びZ2方向と表記する。X軸とY軸とを含むX-Y平面は水平面に相当する。Z軸は鉛直方向に沿う軸線であり、Z2方向は鉛直方向の下方に相当する。
【0031】
第1実施形態に係るインクジェットプリンター100は、ヘッドユニットHU-1及びヘッドユニットHU-2をX軸に沿って往復動させるシリアル方式の液体吐出装置である。具体的には、
図4に示すように、インクジェットプリンター100は、副走査方向であるY1方向に記録媒体PPを搬送し主走査方向であるX1方向及びX2方向にヘッドユニットHUを移動させつつ、ノズルNからインクを吐出することで、記録媒体PPに画像を形成する印刷処理を実行する。記録媒体PPは、インクジェットプリンター100が印刷可能な媒体であれば特に限定されず、例えば、各種紙、各種布又は各種フィルム等である。
図4では、ヘッドユニットHUが有する複数のノズルNのうちの一部のノズルNが代表的に図示される。
【0032】
図4及び
図5に示すように、インクジェットプリンター100は、ヘッドユニットHU-1と、ヘッドユニットHU-2と、液体容器120と、移動機構130と、搬送機構140と、通信装置150と、記憶回路160と、制御回路170とを有する。以下では、ヘッドユニットHU-1とヘッドユニットHU-2との夫々を区別せずにヘッドユニットHUと記載する場合がある。
【0033】
ヘッドユニットHUは、ヘッドチップ111と駆動回路112と電源回路113と駆動信号生成回路114とを有するアセンブリーである。
図5の例では、図示の煩雑化を避けるため、ヘッドユニットHU-2の内部要素を適宜省略してある。
【0034】
図5に示す例では、ヘッドユニットHUは、ヘッドチップ111及び駆動回路112を含む液体吐出ヘッド110aと、電源回路113及び駆動信号生成回路114を含む制御モジュール110bと、に区分される。なお、ヘッドユニットHUは、液体吐出ヘッド110aと制御モジュール110bに区分される態様に限定されず、例えば、制御モジュール110bの一部又は全部が液体吐出ヘッド110aに組み込まれてもよい。
【0035】
ヘッドチップ111は、インクを記録媒体PPに向けて吐出する。
図5では、ヘッドチップ111の構成要素のうち、複数の駆動素子111fが代表的に図示される。なお、ヘッドチップ111の詳細の一例については、後に
図6に基づいて説明する。
【0036】
駆動回路112は、制御回路170による制御のもと、ヘッドチップ111の有する複数の駆動素子111fの夫々について、駆動信号生成回路114から出力される駆動信号Comを駆動波形PDとして供給するか否かを切り替える。駆動回路112は、例えば、当該切り替えのためのトランスミッションゲート等のスイッチ群を含む。
【0037】
電源回路113は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、インクジェットプリンター100の各部に適宜に供給される。
図5に示す例では、電源回路113は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、ヘッドチップ111等に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路114等に供給される。
【0038】
駆動信号生成回路114は、ヘッドチップ111の有する各駆動素子111fを駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路114は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路114では、当該DA変換回路が制御回路170からの後述の波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路113からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することにより駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、駆動素子111fに実際に供給される波形の信号が駆動波形PDである。
【0039】
図5に示すように、ヘッドユニットHU-1内の各駆動素子111fを駆動するための駆動信号Comを、駆動信号Com-1と記載することがあり、駆動信号Com-1の基になる波形指定信号dComを、波形指定信号dCom-1と記載することがある。また、ヘッドユニットHU-2内の各駆動素子111fを駆動するための駆動信号Comを、駆動信号Com-2と記載することがあり、駆動信号Com-2の基になる波形指定信号dComを、波形指定信号dCom-2と記載することがある。以下では、駆動信号Com-1と駆動信号Com-2とを区別しない場合、駆動信号Comと記載することがあり、波形指定信号dCom-1と波形指定信号dCom-2とを区別しない場合、波形指定信号dComと記載することがある。
【0040】
図4に例示される通り、インクジェットプリンター100には、インクを貯留する液体容器120が設置される。例えばインクジェットプリンター100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、又は、インクを補充可能なインクタンクが、液体容器120として利用される。本実施形態では、液体容器120は、2種類のインクを貯留することを前提として説明する。液体容器120は、第1種類のインクを貯留する液体容器121と、第2種類のインクを貯留する液体容器122とを有する。第1実施形態において、第1種類のインクと第2種類のインクとは、例えば、互いに異なる色材を有するインクである。また、液体容器120が有するインクの種類は、2種類に限らず、1種類でもよいし、3種類以上でもよい。例えば、液体容器120は、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及び、ブラックインクという4種類のインクを貯留してもよい。
【0041】
移動機構130及び搬送機構140は、制御回路170の制御のもと、記録媒体PPと2個のヘッドユニットHUとの相対的な位置を移動させる。
【0042】
移動機構130は、制御回路170の制御のもと、2個のヘッドユニットHUをX軸に沿って往復させる。
図4に示すように、移動機構130は、ヘッドユニットHUを収容する略箱型のキャリッジ131と、キャリッジ131が固定された無端ベルト132とを具備する。なお、液体容器120をヘッドユニットHUとともにキャリッジ131に搭載した構成も採用され得る。
【0043】
搬送機構140は、制御回路170の制御のもと、記録媒体PPをY1方向に搬送する。具体的には、搬送機構140は、回転軸がX軸に平行な不図示の搬送ローラーと、搬送ローラーを制御回路170による制御のもとで回転させる不図示のモーターとを具備する。
【0044】
通信装置150は、処理装置200と通信可能な回路である。例えば、通信装置150は、USB、又はBluetooth等のネットワークカードである。また、通信装置150は、制御回路170と一体でもよい。
【0045】
記憶回路160は、制御回路170が実行する各種プログラムと、制御回路170が処理する記録データDP等の各種データと、を記憶する。記憶回路160は、例えば、RAM等の揮発性の1又は複数のメモリーとROM、EEPROM又はPROM等の1又は複数の不揮発性メモリーとの一方又は両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路160は、制御回路170の一部として構成されてもよい。
【0046】
制御回路170は、インクジェットプリンター100の各部の動作を制御する機能と、各種データを処理する機能と、を有する。制御回路170は、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。なお、制御回路170は、CPUに代えて、又は、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0047】
制御回路170は、記憶回路160に記憶されるプログラムを実行することにより、インクジェットプリンター100の各部の動作を制御する。ここで、制御回路170は、インクジェットプリンター100の各部の動作を制御するための信号として、制御信号Sk1、制御信号Sk2、印刷データ信号SI及び波形指定信号dCom等の信号を生成する。
【0048】
制御信号Sk1は、移動機構130の駆動を制御するための信号である。制御信号Sk2は、搬送機構140の駆動を制御するための信号である。印刷データ信号SIは、駆動回路112の駆動を制御するための信号である。具体的には、印刷データ信号SIは、駆動回路112が駆動信号生成回路114からの駆動信号Comを駆動波形PDとして駆動素子111fに対して供給するか否かを所定の単位期間ごとに指定する。この指定により、ヘッドチップ111から吐出されるインク量等が指定される。
図5に示すように、ヘッドユニットHU-1内の駆動回路112の駆動を制御するための印刷データ信号SIを、印刷データ信号SI-1と記載することがあり、ヘッドユニットHU-2内の駆動回路112の駆動を制御するための印刷データ信号SIを、印刷データ信号SI-2と記載することがある。以下では、印刷データ信号SI-1と印刷データ信号SI-2とを区別しない場合、印刷データ信号SIと記載することがある。波形指定信号dComは、駆動信号生成回路114で生成される駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。
【0049】
図6は、ヘッドチップ111の構成例を示す断面図である。但し、
図6では、ヘッドチップ111に加えて駆動回路112も図示してある。
【0050】
図6に示すように、ヘッドチップ111は、Y軸に沿う方向に配列される複数のノズルNを有する。当該複数のノズルNは、X軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1列L1と第2列L2とに区分される。第1列L1及び第2列L2の夫々は、Y軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。
【0051】
ヘッドチップ111は、X軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。ただし、第1列L1の複数のノズルNと第2列L2の複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置は、互いに一致してもよいし異なってもよい。
図6では、第1列L1の複数のノズルNと第2列L2の複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0052】
図6に示すように、ヘッドチップ111は、流路基板111aと圧力室基板111bとノズル板111cと吸振体111dと振動板111eと複数の駆動素子111fと保護板111gとケース111hと配線基板111iとを有する。
【0053】
流路基板111a及び圧力室基板111bは、この順でZ1方向に積層されており、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する。流路基板111a及び圧力室基板111bからなる積層体よりもZ1方向に位置する領域には、振動板111eと複数の駆動素子111fと保護板111gとケース111hと配線基板111iとが設置される。他方、当該積層体よりもZ2方向に位置する領域には、ノズル板111cと吸振体111dとが設置される。ヘッドチップ111の各要素は、概略的にはY方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により、互いに接合される。以下、ヘッドチップ111の各要素を順に説明する。
【0054】
ノズル板111cは、第1列L1及び第2列L2の夫々の複数のノズルNが設けられた板状部材である。複数のノズルNの夫々は、インクを通過させる貫通孔である。ここで、ノズル板111cのZ2方向を向く面がノズル面FNである。ノズル板111cは、例えば、ドライエッチング又はウェットエッチング等の加工技術を用いる半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、ノズル板111cの製造には、他の公知の方法及び材料が適宜に用いられてもよい。また、ノズルの断面形状は、典型的には円形状であるが、これに限定されず、例えば、多角形又は楕円形等の非円形状であってもよい。
【0055】
流路基板111aには、第1列L1及び第2列L2の夫々について、空間R1と複数の供給流路Raと複数の連通流路Naとが設けられる。空間R1は、Z軸に沿う方向でみた平面視で、Y軸に沿う方向に延びる長尺状の開口である。供給流路Ra及び連通流路Naの夫々は、ノズルNごとに形成された貫通孔である。各供給流路Raは、空間R1に連通する。
【0056】
圧力室基板111bは、第1列L1及び第2列L2の夫々について、キャビティと称される複数の圧力室CVが設けられた板状部材である。複数の圧力室CVは、Y軸に沿う方向に配列される。各圧力室CVは、ノズルNごとに形成され、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状の空間である。流路基板111a及び圧力室基板111b夫々は、前述のノズル板111cと同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、流路基板111a及び圧力室基板111bの夫々の製造には、他の公知の方法及び材料が適宜に用いられてもよい。
【0057】
圧力室CVは、流路基板111aと振動板111eとの間に位置する空間である。第1列L1及び第2列L2の夫々について、複数の圧力室CVがY軸に沿う方向に配列される。また、圧力室CVは、連通流路Na及び供給流路Raの夫々に連通する。したがって、圧力室CVは、連通流路Naを介してノズルNに連通し、かつ、供給流路Raを介して空間R1に連通する。
【0058】
圧力室基板111bのZ1方向を向く面には、振動板111eが配置される。振動板111eは、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板111eは、例えば、第1層と第2層とを有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。第1層は、例えば、酸化シリコン(SiO2)で構成される弾性膜である。当該弾性膜は、例えば、シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。第2層は、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)で構成される絶縁膜である。当該絶縁膜は、例えば、スパッタ法によりジルコニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。なお、振動板111eは、前述の第1層及び第2層の積層による構成に限定されず、例えば、単層で構成されてもよいし、3層以上で構成されてもよい。
【0059】
振動板111eのZ1方向を向く面には、第1列L1及び第2列L2の夫々について、互いにノズルNに対応する複数の駆動素子111fが配置される。各駆動素子111fは、駆動信号Comの供給により変形する受動素子である。各駆動素子111fは、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の駆動素子111fは、複数の圧力室CVに対応するようにY軸に沿う方向に配列される。駆動素子111fは、平面視で圧力室CVに重なる。
【0060】
各駆動素子111fは、圧電素子であり、図示しないが、第1電極と圧電体層と第2電極とを有し、この順でこれらがZ1方向に積層される。第1電極及び第2電極のうちの一方の電極は、駆動素子111fごとに互いに離間して配置される個別電極であり、当該一方の電極には、駆動波形PDが供給される。第1電極及び第2電極のうちの他方の電極は、複数の駆動素子111fにわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状の共通電極であり、当該他方の電極には、オフセット電位VBSが供給される。これらの電極の金属材料としては、例えば、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銅(Cu)等の金属材料が挙げられ、これらのうち、1種を単独で又は2種以上を合金又は積層等の態様で組み合わせて用いることができる。圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)等の圧電材料で構成されており、例えば、複数の駆動素子111fにわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状をなす。ただし、圧電体層は、複数の駆動素子111fにわたり一体でもよい。この場合、圧電体層には、互いに隣り合う各圧力室CVの間隙に平面視で対応する領域に、当該圧電体層を貫通する貫通孔がX軸に沿う方向に延びて設けられる。以上の駆動素子111fの変形に連動して振動板111eが振動すると、圧力室CV内の圧力が変動することで、インクがノズルNから吐出される。すなわち、駆動素子111fは、インクを吐出するためのエネルギーを生成する。より詳細には、駆動素子111fは、振動板111eを振動させるエネルギーを生成し、振動板111eの振動によって圧力室CV内のインクがノズルNから吐出する。駆動素子111fは、「エネルギー生成素子」の一例である。
【0061】
保護板111gは、振動板111eのZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の駆動素子111fを保護するとともに振動板111eの機械的な強度を補強する。ここで、保護板111gと振動板111eとの間には、複数の駆動素子111fが収容される。保護板111gは、例えば、樹脂材料で構成される。
【0062】
ケース111hは、複数の圧力室CVに供給されるインクを貯留するための部材である。ケース111hは、例えば、樹脂材料で構成される。ケース111hには、第1列L1及び第2列L2の夫々について、空間R2が設けられる。空間R2は、前述の空間R1に連通する空間であり、空間R1とともに、複数の圧力室CVに供給されるインクを貯留するリザーバーRとして機能する。ケース111hには、各リザーバーRにインクを供給するための導入口IHが設けられる。各リザーバーR内のインクは、各供給流路Raを介して圧力室CVに供給される。
【0063】
吸振体111dは、コンプライアンス基板とも称され、リザーバーRの壁面を構成する可撓性の樹脂フィルムであり、リザーバーR内のインクの圧力変動を吸収する。なお、吸振体111dは、金属製の可撓性を有する薄板であってもよい。吸振体111dのZ1方向を向く面は、流路基板111aに接着剤等により接合される。
【0064】
配線基板111iは、振動板111eのZ1方向を向く面に実装されており、ヘッドチップ111と駆動回路112及び制御モジュール110b等とを電気的に接続するための実装部品である。配線基板111iは、例えば、COF(Chip On Film)、FPC(Flexible Printed Circuit)又はFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板である。
【0065】
1-5.基準色の形成について
近年では、ヘッドメーカーがプリンターメーカーにヘッドユニットHUを提供し、プリンターメーカーは、プリンター本体にヘッドユニットHUを組み込むことにより、インクジェットプリンター100を製造するというビジネスモデルが存在する。ここで、一般的なプリンターでは、複数のインクを組み合わせて基準色を形成する。基準色は、人間にとって一般的に認知される代表的な色である。例えば、基準色は、赤、青、緑、紫、及び、黄色である。本実施形態では、基準色を、一般的に認知される色からユーザーUの好みの色に合わせることができるように処理を行う。但し、基準色は、赤色、青色、緑色、紫色、及び、黄色以外に限らない。
【0066】
インクジェットプリンター100は、基準色を、1種類のインク、又は、2種類以上のインクを組み合わせて形成する。1種類のインクによって形成される色を1次色、2種類以上のインクを組み合わせて形成される色を多次色と記載する。多次色には、2種類のインクを組み合わせて形成される2次色、3種類のインクを組み合わせて形成される3次色等がある。2種類以上のインクのドットを形成することにより、並置混色が生じて、ユーザーUは、2種類以上のインクのドットの面積比に応じた多次色を観察する。並置混色は、観察者が一定距離以上離れて並置した複数の色のドットを見た場合に、並置した複数の色が個々に識別されずに混じり合って見えることである。但し、2種類以上のインクのドットの一部又は全部が互いに重なる場合も存在し、2種類以上のインクのドットの一部又は全部が互いに重なる箇所では減法混色が生じる。減法混色は、特定の色の光を吸収する複数の物質を重ね合わせた場合に、この複数の物質に吸収されずに残った光の色を得ることである。
【0067】
基準色をユーザーUの好みに合わせる場合、ユーザーUの好みは様々考えられる。例えば、基準色が青色であっても、赤色よりの青色が好みである場合も考えられるし、薄い青色が好みである場合も考えられる。以下の記載では、ユーザーUが所望する色を「所望色」と記載することがある。例えば、基準色が青色である場合、基準色は、RGB値による表現であれば、(R,G,B)=(0,0,255)であり、CMY値による表現であれば、(C,M,Y)=(255,255,0)である。所望色が、マゼンタ色よりの青色である場合、一例としては、RGB値による表現であれば、(R,G,B)=(51,0,255)であり、CMY値による表現であれば、(C,M,Y)=(204,255,0)である。このように、所望色は、基準色とは異なるが、基準色から大きく離れる可能性は小さい。印刷処理では、所望色を用いて記録媒体PPに画像を形成する。
【0068】
ユーザーUの好みの所望色を形成するため、インクジェットプリンター100が一度基準色を試し打ちし、所望色を選択したり調整したりするという構成をとることができる。しかしながら、ヘッドメーカーがプリンターメーカーにヘッドユニットHUを提供し、プリンターメーカーがプリンター本体にヘッドユニットHUを組み込むビジネスモデルでは、所望色の調整にはユーザーUに過大の負担が生じ得ることがわかった。
【0069】
ヘッドユニットHUには、ある程度の製造誤差が生じ得る。そして、製造誤差によって2つのヘッドユニットHUの吐出量が互いに異なることが生じ得る。例えば、同一の駆動信号Comを2つのヘッドユニットHUの夫々に印加したとしても、製造誤差によって圧力室CVの形状等が互いに異なる結果、吐出特性が互いに異なることが発生し得る。ヘッドメーカーがインクジェットプリンター100を製造する場合であれば、製造誤差を相殺するような駆動信号Comを設計したり、製造誤差を相殺するような記録データDPを生成したりすることができる。しかしながら、プリンターメーカーでは、2つのヘッドユニットHUの間でどの程度製造誤差が発生しているのか不明であるため、ヘッドユニットHUの製造誤差を相殺させることができなかった。
【0070】
更に、インクジェットプリンター100が使用するインクの種類もプリンターメーカー又はエンドユーザーによって決められる。2種類のインクの特性の差によっても、同一の駆動信号Comによる吐出量は、互いに異なることが生じ得る。例えば、粘度が互いに異なる2種類のインクにおいて、高粘度のインクの吐出量は、低粘度のインクの吐出量よりも少ない傾向にある。ヘッドメーカーでは、どのようなインクが使用されるか不明であるため、インクの吐出量の差を相殺させることができなかった。
【0071】
2つのヘッドユニットHUの夫々の製造誤差、及び、2種類のインクの夫々の特性が不明であるため、基準色を試し打ちした場合、記録媒体PP上に形成される色が、ユーザーUの所望色から大きく離れてしまう場合がある。記録媒体PP上に形成される色が、所望色と大きく離れると、所望色の調整にかかるユーザーUの負担が過大になるという問題があった。
【0072】
そこで、第1実施形態に係る処理装置200は、2つのヘッドユニットHUの製造誤差を特定するためのヘッド情報HIと、2種類のインクの夫々の特性を特定するためのインク情報KIとをサーバー300に送信し、ヘッド情報HIとインク情報KIとに基づいて生成された基準色情報STIを得る。なお、ヘッド情報HIは「第1情報」の一例であり、インク情報KIは「第2情報」の一例である。
【0073】
基準色情報STIは、基準色を記録媒体PP上に形成するための情報である。更に、基準色情報STIは、2つのヘッドユニットHUの製造誤差、及び、2種類のインクの特性の差を相殺する情報である。第1実施形態に係る基準色情報STIは、ヘッドユニットHU-1の夫々の駆動素子111fに印加する駆動波形PDを調整する情報と、ヘッドユニットHU-2の夫々の駆動素子111fに印加する駆動波形PDを調整する情報との一方又は両方を含む情報である。駆動波形PDを調整する情報は、例えば、駆動波形PDを示す波形指定信号dComである。以下の説明では、第1実施形態に係る基準色情報STIは、ヘッドユニットHU-1の夫々の駆動素子111fに印加する駆動波形PDを示す波形指定信号dComと、ヘッドユニットHU-2の夫々の駆動素子111fに印加する駆動波形PDを示す波形指定信号dComとの両方を含む情報であるとして、説明を行う。
【0074】
図7は、調整前後の駆動波形PDの一例を示す図である。
図7の左側には、基準色情報STIによって調整する前の駆動信号Com-1と駆動信号Com-2とを示しており、
図7の右側には、基準色情報STIによって調整した後の駆動信号Com-1と駆動信号Com-2とを示してある。基準色情報STIによって調整する前では、駆動信号Com-1及び駆動信号Com-2は、同一の駆動波形PD0を有する。一方、基準色情報STIによって調整した後では、駆動信号Com-1は駆動波形PD1を有し、駆動信号Com-2は駆動波形PD2を有する。以下の記載では、基準色情報STIによって調整する前の駆動波形PD0と、基準色情報STIによって調整した後の駆動波形PD1及び駆動波形PD2と、駆動波形PDと総称することがある。
【0075】
図7の例では、ヘッドユニットHU-1の吐出量を増大させ、ヘッドユニットHU-2の吐出量を減少させる調整を行っている。
図7から理解されるように、駆動波形PD1の最低電位VL1と最高電位VH1との電位差ΔVh1は、駆動波形PD0の最低電位VL0と最高電位VH0との電位差ΔVh0より大きい。また、駆動波形PD2の最低電位VL2と最高電位VH2との電位差ΔVh2は、電位差ΔVh0より小さい。駆動波形PDの最低電位と最高電位との電位差を大きくすることによって吐出量を大きくし、前述の電位差を小さくすることによって吐出量を小さくできる。従って、ヘッドユニットHU-1の調整後の吐出量は、ヘッドユニットHU-1の調整前の吐出量よりも増加する。ヘッドユニットHU-2の調整後の吐出量は、ヘッドユニットHU-2の調整前の吐出量よりも減少する。
【0076】
図7から理解されるように、吐出量を多くするため、最高電位VH1は最高電位VH0よりも高く、且つ、最低電位VL1は最低電位VL0よりも低いが、吐出量を多くするための調整の態様はこれに限らない。例えば、最低電位を同一としたまま最高電位を高くしてもよいし、最高電位を同一としたまま最低電位を低くしてもよい。同様に、吐出量を少なくするため、最高電位VH2は最高電位VH0より低く、且つ、最低電位VL2は最低電位VL0よりも高いが、吐出量を少なくするための調整の態様はこれに限らない。例えば、最低電位を同一としたまま最高電位を低くしてもよいし、最高電位を同一としたまま最低電位を高くしてもよい。
【0077】
処理装置200は、基準色情報STIを用いることにより、ユーザーUが所望する所望色を得るための調整にかかるユーザーUの負担が軽減できる。
図8を用いて、所望色を得るための調整の一例を説明する。
【0078】
図8は、所望色を得るための調整の一例を説明する図である。
図8に示す基準色STCは、第1種類のインクと第2種類のインクとを組み合わせて形成される2次色である。
図8の例では第1種類のインクがシアンインクであり、第2種類のインクがマゼンタインクであり、基準色STCが、青色であるとする。更に、
図8に示す所望色HPCは、ユーザーUが所望する色である。
図8の例では、所望色HPCは、マゼンタ色よりの青色であることを前提とする。
図8に示す初期色INCは、2つのヘッドユニットHUの製造誤差及び2種類のインクの夫々の特性の差を何ら調整しない状態で形成された色である。
図8に示すように、初期色INC、基準色STC、及び、所望色HPCは、第1種類のインクが記録媒体PPに着弾したことにより形成された8つのシアン色のドットDt1と、第2種類のインクが記録媒体PPに着弾したことにより形成された8つのマゼンタ色のドットDt2との合計16のドットにより形成されている。
【0079】
図8における初期色INCでは、ヘッドユニットHU-1の吐出量がヘッドユニットHU-2の吐出量より大きく、且つ、第1種類のインクの粘度が第2種類のインクの粘度より低い状態を示す。従って、2つのヘッドユニットHUの製造誤差及び2種類のインクの夫々の特性の差を何ら調整しない状態では、初期色INCが示すように、ドットDt1がドットDt2より大きい。従って、ユーザーUは、初期色INCがシアン色よりの青色であると観察する。
【0080】
一方で
図8における所望色HPCに示すように、ユーザーUは、マゼンタ色よりの青色を所望している。
図8の場合、初期色INCと所望色HPCでは色差が大きく異なっている。通常の色調整では、初期色INCと、初期色INCを基準として若干異なる複数の色を示すテストパッチを記録媒体PP上に形成させ、複数の色の中から所望色HPCに近い色を選択するという調整操作を行う。色の微細な調整を目的とするため、この初期色INCを基準とした色は、初期色INCとの色差は小さい。しかしながら、
図8においては、初期色INCと所望色HPCとの色差が大きく離れているため、通常の色調整で作成した初期色INCを基準とした色の中に所望色HPCと十分に近い色が含まれない虞がある。そうすると、次は上記の初期色INCを基準とした色の中で最も所望色HPCに近い色を次の初期色INCとして、再度同様の調整操作を行う必要がある。その結果、初期色INCから所望色HPCを得るためには、調整操作を複数回繰り返す必要がある。
【0081】
これは、ヘッドユニットHUやインクに由来する初期色INCの色ずれと、ユーザーUの好みである所望色HPCの色ずれとが、互いに違う色方向となってしまった場合に発生する。例えば、
図8においては、初期色INCはシアンより、所望色HPCはマゼンタよりと、異なる色方向になっていることにより生じている。この点を鑑み、本実施形態では、初期色INCの色ずれを低減した上で色調整動作を行うよう制御する。
【0082】
基準色STCは、第1実施形態に係るインクジェットプリンター100によって吐出されており、基準色情報STIにより、2つのヘッドユニットHUの製造誤差及び2種類のインクの夫々の特性の差が相殺するように形成されている。2つのヘッドユニットHUの製造誤差及び2種類のインクの夫々の特性の差が相殺されるため、
図8の例では、基準色STCは、青色となる。上述したように、基準色が青色である場合のCMY値は、(C,M,Y)=(255,255,0)、即ち、シアンとマゼンタとが1対1であるから、基準色STCにおいて、シアンインクのドットDt1の大きさと、マゼンタインクのドットDt2の大きさとは略同一である。
【0083】
基準色STCから所望色HPCに調整するためには、ドットDt2を多少大きくなるように調整すればよい。具体的には、ユーザーUは、インクジェットプリンター100に、基準色STCを基準として若干異なる複数の色を示すテストパッチを記録媒体PP上に形成させ、複数の色の中から所望色HPCに近い色を選択するという調整操作を行う。ユーザーUによって所望色は異なるが、上述したように、所望色は基準色から大きく離れる可能性が小さい。従って、
図8に示す基準色STCから所望色HPCを得るためのユーザーUの調整操作の回数は、初期色INCから所望色HPCを得るためユーザーUの調整操作の回数より少ない。従って、第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、初期色INCから所望色HPCに調整する態様と比較して、所望色HPCを得るための調整にかかるユーザーUの負担を軽減できる。インクジェットシステム10の具体的な機能及び動作について、
図9及び
図10を用いて説明する。
【0084】
1-6.インクジェットシステム10の機能及び動作
図9は、インクジェットシステム10の機能を示す図である。サーバー300は、仮想化プログラムVMを読み出し、読み出した仮想化プログラムVMを実行することにより、クラウドサーバーCSとして機能する。クラウドサーバーCSによって、制御プログラムPM1が読み出され、制御プログラムPM1を実行することにより、クラウドサーバーCSは、生成部301として機能する。処理装置200の制御回路210は、インクジェットプログラムPM2を読み出し、読み出したインクジェットプログラムPM2を実行することにより、取得部211と、送信制御部213と、提示制御部215と、受付部217と、決定部219として機能する。更に、通信装置230は、送信部231と、受信部233として機能する。更に、表示装置270は、提示部271として機能する。なお、サーバー300がクラウドサーバーCSとして機能しない場合、サーバー300が制御プログラムPM1を実行することにより、サーバー300が、生成部301として機能してもよい。各機能部について、
図10を用いて説明する。
【0085】
図10は、インクジェットシステム10の動作を示すフローチャートである。
図10に示す一連の処理の前に、処理装置200は、ユーザーUが指定した基準色に関する情報を受け付ける。基準色に関する情報は、例えば、ユーザーUが指定した基準色を示すRGB値である。但し、ユーザーUが基準色を指定しなくてもよい。本実施形態では、ユーザーUが基準色を指定する態様を用いて説明する。処理装置200は、記録データDPを生成するために、基準色を形成するための画像データを記憶している。説明の簡略化のため、以下の記載では、ユーザーUが指定した基準色は、2次色であり、基準色を形成する画像データのうち第1種類のインクのドットの個数と、第2種類のインクのドットの個数とが同一である場合を前提に説明する。
【0086】
ステップSC2において、取得部211として機能する制御回路210は、基準色を形成する2種類のインクに関するインク情報KIと、この2種類のインクを吐出する2つのヘッドユニットHUに関するヘッド情報HIとを取得する。第1実施形態では、説明の簡略化のため、インクジェットプリンター100が、2つのヘッドユニットHUと、2種類のインクとを有することを示しているが、インクジェットプリンター100が、3つ以上のヘッドユニットHUと、3種類以上のインクとを有する場合には、制御回路210は、3種類以上のインクのうち、基準色を形成する2種類のインクに関するインク情報KIと、この2種類のインクを吐出する2つのヘッドユニットHUに関するヘッド情報HIとを取得すればよい。
【0087】
ヘッド情報HIは、ヘッドユニットHU-1及びヘッドユニットHU-2に関する情報であり、より具体的には、ヘッドユニットHU-1に関する情報と、ヘッドユニットHU-2に関する情報とを有する。ヘッドユニットHU-1に関する情報及びヘッドユニットHU-2に関する情報は、例えば、ヘッドユニットHU-1、HU-2の夫々の製造番号である。但し、ヘッドユニットHU-1に関する情報及びヘッドユニットHU-2に関する情報は、夫々のヘッドユニットHUを特定できる情報であれば製造番号に限らない。取得部211は、入力装置260によってユーザーUにヘッドユニットHU-1、HU-2の夫々の製造番号を入力させることにより、ヘッド情報HIを取得する。又は、ヘッドユニットHU-1、HU-2の夫々の筐体に、夫々の製造番号を示す二次元コードが印字されている場合には、ユーザーUのスマートフォン等の撮像装置によって二次元コードを読み取り、取得部211は、前述の撮像装置から、ヘッド情報HIを取得してもよい。
【0088】
インク情報KIは、第1種類のインク及び第2種類のインクに関する情報であり、より具体的には、第1種類のインクに関する情報と、第2種類のインクに関する情報とを有する。第1種類のインクに関する情報は、第1種類のインクを特定できる情報であり、例えば、第1種類のインクの型番、第1種類のインクの品名、及び、第1種類のインクのメーカー名である。同様に、第2種類のインクに関する情報は、第2種類のインクを特定できる情報であり、例えば、第2種類のインクの型番、第2種類のインクの品名、及び、第2種類のインクのメーカー名である。以下では、第1種類のインクに関する情報は、第1種類のインクの型番であり、第2種類のインクに関する情報は、第2種類のインクの型番であることを前提に説明する。取得部211は、入力装置260によってユーザーUに第1種類のインクの型番、及び、第2種類のインクの型番を入力させる。
【0089】
ステップSC2の処理終了後、処理装置200は、ステップSC4において、ヘッド情報HI及びインク情報KIをクラウドサーバーCSに送信する。具体的には、送信制御部213として機能する制御回路210は、送信部231として機能する通信装置230を制御して、ヘッド情報HI及びインク情報KIを、クラウドサーバーCSに送信する。より詳細には、制御回路210は、通信装置230の送信バッファーに、ヘッド情報HI及びインク情報KI、並びに、クラウドサーバーCSのアドレスを書き込む。通信装置230は、クラウドサーバーCSのアドレスを参照して、ヘッド情報HI及びインク情報KIをクラウドサーバーCSに送信する。処理装置200は、クラウドサーバーCSからの応答を待ち受ける。
【0090】
クラウドサーバーCSがヘッド情報HI及びインク情報KIを受信した場合、生成部301として機能するクラウドサーバーCSは、ステップSS2において、ヘッド情報HIとインク情報KIとの両方に基づいて基準色情報STIを生成する。具体的には、生成部301は、クラウドサーバーCSの記憶領域に記憶された基準色情報管理テーブルSTTと、ヘッド情報HIと、インク情報KIと、に基づいて、基準色情報STIを生成する。
図11を用いて基準色情報管理テーブルSTTを説明する。
【0091】
図11は、基準色情報管理テーブルSTTの内容の一例を示す図である。基準色情報管理テーブルSTTは、2個のヘッドユニットHUの製造番号と、2種類のインクの型番との組み合わせに応じた基準色情報STIを記憶するテーブルである。
図11に示す基準色情報管理テーブルSTTは、2以上のm個のヘッドユニットHUの製造番号のうち2個のヘッドユニットHUの製造番号と、2以上のn種類のインクの型番のうち2種類のインクの型番とに対応する基準色情報STIを記憶する。
【0092】
例えば、
図11に示す基準色情報管理テーブルSTTは、ヘッドユニットHU-1の製造番号が「hid-2」であり、第1種類のインクの型番が「kid-2」であり、ヘッドユニットHU-2の製造番号が「hid-1」であり、第2種類のインクの型番が「kid-1」である場合に対応する基準色情報STIが、基準色情報STI-1であることを示す。基準色情報STI-1は、ヘッドユニットHU-1の複数の駆動素子111fに供給する駆動波形PDを示す波形指定信号dCom-aと、ヘッドユニットHU-2の複数の駆動素子111fに供給する駆動波形PDを示す波形指定信号dCom-bとを含む。
【0093】
基準色情報管理テーブルSTTは、ヘッドメーカーによって管理される。ヘッドメーカーは、実験等によって、ある2個のヘッドユニットHUの一方のヘッドユニットHUが2種類のうち一方の種類のインクを吐出し、他方のヘッドユニットHUが他方の種類のインクを吐出した場合に、2つのヘッドユニットHUの製造誤差、及び、2種類のインクの特性の差を相殺できる2つの波形指定信号dComを設定する。ヘッドメーカーが新たなヘッドユニットHUを販売するたびに、ヘッドメーカーは、基準色情報管理テーブルSTTを更新することが好ましい。
【0094】
生成部301は、基準色情報管理テーブルSTTから、ヘッド情報HIに含まれるヘッドユニットHU-1の製造番号及びヘッドユニットHU-2の製造番号と、インク情報KIに含まれる第1種類のインクの型番及び第2種類のインクの型番とを用いて、基準色情報STIを取得することにより、基準色情報STIを生成する。また、生成部301は、基準色情報管理テーブルSTTに第1種類のインクの型番及び第2種類のインクの型番の一方又は両方が登録されていない場合、登録されていないインクの型番に関する基準色情報STIを基準色情報管理テーブルSTTに登録する指示を、ヘッドメーカーに通知してもよい。通知の方法として、例えば、生成部301は、ヘッドメーカー内の基準色情報管理テーブルSTTを管理する部署にメールを送信する、又は、当該部署が管理するサーバーに通知する。
【0095】
説明を
図10に戻す。ステップSS2の処理終了後、生成部301として機能するクラウドサーバーCSは、ステップSS4において、ヘッド情報HIと、インク情報KIと、に基づいて、複数の近傍色情報NBIを生成する。以下の記載では、基準色情報STI及び近傍色情報NBIを、色情報と総称することがある。近傍色情報NBIは、基準色の近傍の色である近傍色を記録媒体PP上に形成するための情報である。例えば、基準色が(R,G,B)=(0,0,255)である場合、近傍色は、(R,G,B)=(51,0,255)、及び、(R,G,B)=(0,51,255)である。近傍色は、人間の目で色の違いが認識できる程度に離れていることが好ましい。本明細書において、基準色と、任意の第1色とがある場合、基準色と第1色とのCIELab1976の色差ΔEが0.0以上且つ3.0未満である場合、第1色は基準色の範囲とし、色差ΔEが3.0以上10.0未満である場合、第1色は基準色に対して近傍色であるとする。近傍色の具体例について、
図12を用いて説明する。
【0096】
図12は、近傍色の一例を説明する図である。
図12の例では、生成部301は、基準色STCの4つの近傍色として、近傍色NBC1と、近傍色NBC2と、近傍色NBC3と、近傍色NBC4の夫々の近傍色情報NBIを生成する。以下の記載において、近傍色NBC1と、近傍色NBC2と、近傍色NBC3と、近傍色NBC4とを、近傍色NBCと総称することがある。近傍色NBC1のシアンインクのドットDt1の大きさは、基準色STCのドットDt1の大きさよりも大きい。近傍色NBC2のドットDt1の大きさは、基準色STCのドットDt1の大きさよりも小さい。近傍色NBC3のマゼンタインクのドットDt2の大きさは、基準色STCのドットDt2の大きさよりも大きい。近傍色NBC4のドットDt2の大きさは、基準色STCのドットDt2の大きさよりも小さい。
【0097】
生成部301は、ヘッド情報HI及びインク情報KIに基づいて、近傍色情報NBIを生成する。近傍色情報NBIを生成するために、クラウドサーバーCSは、近傍色情報管理テーブルNBTを記憶しておく。近傍色情報管理テーブルNBTは、基準色情報管理テーブルSTTと同様に、2個のヘッドユニットHUの製造番号と、2種類のインクの型番との組み合わせに応じた複数の近傍色情報NBIを記憶する。複数の近傍色情報NBIは、
図12の例を用いると、近傍色NBC1を形成するための近傍色情報NBI1と、近傍色NBC2を形成するための近傍色情報NBI2と、近傍色NBC3を形成するための近傍色情報NBI3と、近傍色NBC4を形成するための近傍色情報NBI4とである。以下の記載では、近傍色情報NBI1、近傍色情報NBI2、近傍色情報NBI3、及び、近傍色情報NBI4を、近傍色情報NBIと総称することがある。生成部301、近傍色情報管理テーブルNBTから、ヘッド情報HIに含まれるヘッドユニットHU-1の製造番号及びヘッドユニットHU-2の製造番号と、インク情報KIに含まれる第1種類のインクの型番及び第2種類のインクの型番とを用いて、複数の近傍色情報NBIを取得することにより、複数の近傍色情報NBIを生成する。
【0098】
なお、複数の近傍色情報NBIのうち任意の1つの近傍色情報NBIが、「第1近傍色情報」の一例であり、この近傍色情報NBIによって記録媒体PP上に形成される近傍色が、「第1近傍色」の一例である。更に、複数の近傍色情報NBIのうち「第1近傍色情報」である近傍色情報NBIとは異なる近傍色情報NBIが、「第2近傍色情報」の一例であり、この近傍色情報NBIによって記録媒体PP上に形成される近傍色が、「第2近傍色」の一例である。
【0099】
なお、
図12の例では、生成部301は、4つの近傍色NBCの夫々の近傍色情報NBIを生成したが、生成する近傍色情報NBIの個数は4つに限らない。例えば、生成部301は、シアンインクのドットDt1のサイズを大きく又は小さくさせた1つの近傍色の近傍色情報NBIを生成してもよい。又は、生成部301は、2次色を形成する2種類のインクのドットのいずれか一方のドットの大きさを大きく又は小さくした4つの近傍色NBCの夫々の近傍色情報NBIを生成したが、更に、2次色を形成する2種類のインクのドットの両方のドットの大きさを大きく又は小さくした4つの近傍色NBCの夫々の近傍色情報NBIを更に生成してもよい。即ち、生成部301は、合計8つの近傍色NBCの夫々の近傍色情報NBIを生成してもよい。
【0100】
説明を
図10に戻す。ステップSS4の処理終了後、クラウドサーバーCSは、ステップSS6において、基準色情報STIと複数の近傍色情報NBIとを処理装置200に送信する。
【0101】
受信部233として機能する通信装置230は、ステップSC6において、クラウドサーバーCSから基準色情報STIと複数の近傍色情報NBIとを受信する。ステップSC6の処理終了後、提示制御部215として機能する制御回路210は、ステップSC8において、提示部271として機能する表示装置270を制御して、基準色情報STIに対応する色と、複数の近傍色情報NBIの夫々に対応する色とを提示する。基準色情報STIに対応する色は、基準色STCを表示装置270のRGB値に変換した場合の色である。基準色情報STIに対応する色は、表示装置270の色調整によっては基準色STCとは異なる場合がある。同様に、複数の近傍色情報NBIの夫々に対応する色とは、複数の近傍色NBCの夫々を表示装置270のRGB値に変換した場合の色である。具体的な提示方法について、
図13を用いて説明する。
【0102】
図13は、基準色情報STIに対応する色と、複数の近傍色情報NBIの夫々に対応する色とを提示する一例を示す図である。制御回路210は、基準色選択画面CD1を表示装置270に表示させることにより、基準色情報STIに対応する色と、複数の近傍色情報NBIの夫々に対応する色とをユーザーUに提示する。
図13に示す基準色選択画面CD1は、アイコンSTDと、アイコンNBD1と、アイコンNBD2と、アイコンNBD3と、アイコンNBD4とを有する。
【0103】
アイコンSTDは、基準色STCを形成するための基準色情報STIに対応する色を有するアイコンである。制御回路210は、基準色情報STIに対応する色として基準色のRGB値を指示すればよい。アイコンNBD1は、
図12に示した近傍色NBC1を形成するための近傍色情報NBI1に対応する色を有するアイコンである。近傍色情報NBI1に対応する色のRGB値を算出するため、例えば、近傍色情報NBI1は、夫々のインクの吐出量の比を示す情報を含む。例えば、近傍色情報NBI1は、シアン100%:マゼンタ80%を示す情報を含む。イエローは0%であるから、100%を255とすると、近傍色情報NBI1に対応する色のCMY値は、(C,M,Y)=(255,204,0)であり、RGB値は、(R,G,B)=(0,51,255)である。同様に、アイコンNBD2は、近傍色情報NBI2に対応する色を有するアイコンである。アイコンNBD3は、近傍色情報NBI3に対応する色を有するアイコンである。アイコンNBD4は、近傍色情報NBI4に対応する色を有するアイコンである。基準色情報STIに対応する色、近傍色情報NBI1に対応する色、近傍色情報NBI2に対応する色、近傍色情報NBI3に対応する色、及び、近傍色情報NBI4に対応する色は、近傍ではあるが、夫々異なる色である。
図13では、アイコンSTDと、アイコンNBD1と、アイコンNBD2と、アイコンNBD3と、アイコンNBD4とが夫々異なる色を有することを示すため、夫々異なる網掛けを付与してある。
【0104】
ステップSC8の処理終了後、受付部217として機能する制御回路210は、ステップSC10において、基準色情報STIと複数の近傍色情報NBIとに対するユーザーUの指示を受け付ける。具体的には、ユーザーUは、入力装置260を操作して、基準色情報STIと複数の近傍色情報NBIとのうち、所望色に最も近い色に対応する色情報のアイコンを選択する。以下の記載では、基準色情報STI、及び、複数の近傍色情報NBIのうち、ユーザーUが選択した色情報を、「選択色情報」と記載することがある。制御回路210は、ユーザーUが選択した選択色情報のアイコンを、ユーザーUの指示として受け付ける。
【0105】
ステップSC10の処理終了後、制御回路210は、ステップSC12において、選択色情報を調整する調整情報ISIを受け付けるため、微調整画面CD2を表示させる。
【0106】
図14は、微調整画面CD2の一例を示す図である。微調整画面CD2は、アイコンSTD4と、シアン色の値を入力する入力欄NP-Cと、マゼンタ色の値を入力する入力欄NP-Mと、イエロー色の値を入力欄NP-Yと、OKボタンBt1とを有する。アイコンSTD4は、微調整画面CD2の初期状態では、ステップSC10においてユーザーUが選択したアイコンと同一である。入力欄NP-C、入力欄NP-M、及び、入力欄NP-Yは、ステップSC10においてユーザーUが選択したアイコンに対応する色のCMY値が設定される。入力欄NP-C、入力欄NP-M、及び、入力欄NP-Yのいずれか1つの入力欄の値を変更した場合、アイコンSTD4の色が、変更後の値に応じたCMY値が示す色に更新される。
【0107】
なお、微調整画面CD2は、
図14に示す態様に限らない。例えば、微調整画面CD2は、ブラック色の入力欄を有してもよい。
【0108】
説明を
図10に戻す。ステップSC12の処理終了後、受付部217として機能する制御回路210は、ステップSC14において、微調整画面CD2のOKボタンBt1の押下を受け付ける。OKボタンBt1の押下した場合の時点での入力欄NP-C、入力欄NP-M、及び、入力欄NP-Yによって示されるCMY値が、選択色情報を調整する調整情報ISIである。ユーザーUがOKボタンBt1を押下した場合、ステップSC16において、決定部219として機能する制御回路210は、受付部217が受け付けた結果である調整情報ISIに基づいて、印刷処理に使用する色情報を決定する。具体的には、制御回路210は、微調整画面CD2のOKボタンBt1が押下された時点での入力欄NP-C、入力欄NP-M、及び、入力欄NP-Yによって示されるCMY値を、印刷処理に使用する色情報CIとして決定する。制御回路210は、印刷処理に使用する色情報CIを、記憶回路220に記憶する。ステップSC16の処理終了後、インクジェットシステム10は、
図10に示す一連の処理を終了する。
【0109】
図10に示すフローチャートは、ヘッド情報HIとインク情報KIとのいずれか一方又は両方が更新される度に実行されることが好ましい。ヘッド情報HIとインク情報KIとのいずれか一方又は両方が更新されるまでは、制御回路210は、記憶回路220に記憶された色情報CIを、印刷処理に使用する色情報に決定し、ヘッド情報HIとインク情報KIとのいずれか一方又は両方が更新された場合、ステップSC4において、更新されたヘッド情報HIとインク情報KIとをサーバー300に送信する。ヘッド情報HIとインク情報KIとのいずれか一方又は両方が更新された場合とは、ヘッドユニットHU-1及びヘッドユニットHU-2の一方又は両方が交換された場合、又は、液体容器121及び液体容器122の一方又は両方が交換された場合である。ステップSC4の処理終了後、制御回路210は、
図10に示す一連の処理を実行し、ステップSC16において決定した色情報CIで、記憶回路220に記憶された色情報CIを上書きする。
【0110】
1-7.第1実施形態のまとめ
以上、第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、サーバー300に通信可能なインクジェットシステムであって、第1種類のインクを記録媒体PPに吐出するヘッドユニットHU-1と、第2種類のインクを記録媒体PPに吐出するヘッドユニットHU-2と、ヘッドユニットHU-1及びヘッドユニットHU-2に関するヘッド情報HIと、第1種類のインク及び第2種類のインクに関するインク情報KIとの両方を取得する取得部211と、サーバー300に向けて、ヘッド情報HIとインク情報KIとの両方を送信する送信部231と、ヘッド情報HIとインク情報KIとの両方に基づいて生成された、基準色STCを記録媒体PP上に形成するための基準色情報STIを、サーバー300から受信する受信部233と、を有する。
第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、基準色情報STIによって、2つのヘッドユニットHUの製造誤差、及び、2種類のインクの特性の差を相殺できるため、調整されていない初期色から所望色に調整する態様と比較して、所望色を得るための調整にかかるユーザーUの負担を軽減できる。
【0111】
また、第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、サーバー300を含み、サーバー300において、ヘッド情報HIとインク情報KIとに基づいて基準色情報STIを生成する生成部301を、更に有する。
第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、ヘッド情報HIとインク情報KIとに基づくことにより、2つのヘッドユニットHUの製造誤差、及び、2種類のインクの特性の差を相殺できる。
【0112】
また、生成部301は、ヘッド情報HIとインク情報KIとの両方に基づいて、ヘッドユニットHU-1に設けられた駆動素子111fに印加する駆動波形PDを調整する情報である波形指定信号dComとヘッドユニットHU-2に設けられた駆動素子111fに印加する駆動波形PDを調整する情報である波形指定信号dComとの両方を含む基準色情報STIを生成する。
第1実施形態によれば、基準色情報STIが、駆動波形PDを調整する情報である波形指定信号dComを含むことにより、2つのヘッドユニットHUの製造誤差、及び、2種類のインクの特性の差を、第1種類のインクのドットのサイズと第2種類のインクのドットのサイズとを略同一にすることで相殺できる。
【0113】
また、受信部233は、ヘッド情報HIとインク情報KIとのいずれか一方又は両方に基づいて生成された、基準色STCの近傍の色である近傍色NBC1を記録媒体PP上に形成するための近傍色情報NBI1を、サーバー300から更に受信する。
第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、基準色情報STIに加えて、近傍色情報NBI1を受信するため、ユーザーUは、基準色STC及び近傍色NBC1のうち所望色により近い色を選択できるので、基準色STCを所望色に調整する態様と比較して、所望色を得るための調整にかかるユーザーUの負担を軽減できる。
【0114】
また、受信部233は、ヘッド情報HIとインク情報KIとの両方に基づいて生成された、基準色STCの近傍の色であり、近傍色NBC1と異なる近傍色NBC2を記録媒体PP上に形成するための近傍色情報NBI2を、サーバー300から更に受信する。
第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、基準色情報STI及び近傍色情報NBI1に加えて、近傍色情報NBI2を受信するため、基準色STC及び近傍色NBC1のうち所望色により近い色を選択する態様と比較して、所望色を得るための調整にかかるユーザーUの負担を軽減できる。即ち、近傍色NBCの個数を増加させることに応じて、所望色を得るための調整にかかるユーザーUの負担を軽減できる。
【0115】
また、ヘッドユニットHU-1が第1種類のインクを記録媒体PPに吐出し、且つ、ヘッドユニットHU-2が第2種類のインクを記録媒体PPに吐出することにより、記録媒体PPに画像を形成する印刷処理を実行し、インクジェットシステム10は、受信部が受信した基準色情報STIに対応する色をユーザーUに提示する提示部271と、基準色情報STIに対するユーザーUの指示を受け付ける受付部217と、受付部217が受け付けた結果に基づいて、印刷処理に使用する色情報を決定する決定部219と、を更に有する。
第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、印刷処理に所望色を反映できる。
【0116】
また、受付部217は、ユーザーによる選択色情報を調整する調整情報ISIを受け付け、決定部219は、調整情報ISIに基づいて、印刷処理に使用する色情報CIを決定する。選択色情報が基準色情報STIである場合、受付部217は、ユーザーUによる基準色情報STIを調整する調整情報ISIを受け付ける。
第1実施形態によれば、ユーザーUは、選択色情報を調整することによって、選択色情報によって形成される色を所望色に近づけることができる。
【0117】
また、インクジェットシステム10は、決定部によって決定された色情報CIを記憶する記憶回路220を更に有し、決定部219は、更新されたヘッド情報HIとインク情報KIとのいずれか一方又は両方を取得部211が取得するまでは、記憶回路220に記憶された色情報CIを印刷処理に使用する色情報CIに決定し、送信部231は、更新されたヘッド情報HIとインク情報KIとの両方を取得した後、サーバー300に向けて、更新されたヘッド情報HIとインク情報KIとの両方を送信する。
第1実施形態によれば、ヘッドユニットHU-1及びヘッドユニットHU-2の一方又は両方が交換された場合、又は、液体容器121及び液体容器122の一方又は両方が交換された場合に、印刷処理に使用する色情報CIを更新できる。
【0118】
また、ヘッド情報HIは、ヘッドユニットHU-1に関する情報と、ヘッドユニットHU-2に関する情報とを有する。
第1実施形態によれば、ヘッド情報HIが、ヘッドユニットHU-1に関する情報とヘッドユニットHU-2に関する情報とを有することにより、ヘッドユニットHU-1とヘッドユニットHU-2との製造誤差を相殺できる。
【0119】
また、インク情報KIは、第1種類のインクに関する情報と、第2種類のインクに関する情報とを有する。
第1実施形態によれば、インク情報KIが、第1種類のインクに関する情報と第2種類のインクに関する情報とを有することにより、第1種類のインクと第2種類のインクとの特性の差を相殺できる。
【0120】
また、第1種類のインクと第2種類のインクは、互いに異なる色のインクであって、基準色は、多次色である。
第1実施形態によれば、多次色をユーザーUの所望色に設定できる。但し、第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、第1種類のインクと第2種類のインクが同一の色のインクである場合、即ち、1次色にも対応できる。
【0121】
2.第2実施形態
第1実施形態に係る基準色情報STIは、1つのドットのサイズを調整するため、駆動波形PDを調整する情報であったが、これに限らない。例えば、基準色を形成する複数のドットのうち第1種別のインクのドットの個数と第2種別のインクのドットとの個数を変更することでも、基準色を調整できる。以下、第2実施形態について説明する。
【0122】
図15は、基準色の第2実施形態に係る調整例を説明する図である。
図15に示す初期色INCは、
図8に示す初期色INCと同一である。
図15に示す所望色HPCは、ユーザーUが所望する色を示す。ユーザーUは、マゼンタ色よりの青色を所望しているため、ドットDt2の個数がドットDt1の個数より多くなるように調整する。
図15の例では、ドットDt2の個数が12個であり、ドットDt1の個数が4個である。マゼンタ色のドットDt2の個数が増加することにより、マゼンタ色の面積がシアン色の面積よりも大きくなるため、所望色HPCは、初期色INCと比較してマゼンタ色の成分を多くできる。
【0123】
図16は、第2実施形態に係る基準色情報STIの一例を示す図である。基準色を形成する複数のドットのうち第1種別のインクのドットの個数と第2種別のインクのドットとの個数を変更する方法として、第2実施形態に係る基準色情報STIは、ヘッドユニットHU-1に対応する画像データに行う画像処理を調整する情報とヘッドユニットHU-2に対応する画像データに行う画像処理を調整する情報とのいずれか一方又は両方を含む。ヘッドユニットHU-1に対応する画像データとは、記録データDPのうち、ヘッドユニットHU-1が第1種類のインクを吐出することによって形成される画像を示すデータである。同様に、ヘッドユニットHU-2に対応する画像データとは、記録データDPのうち、ヘッドユニットHU-2が第2種類のインクを吐出することによって形成される画像を示すデータである。画像処理を調整する情報は、例えば、以下に示す3つの態様がある。第1の態様において、画像処理を調整する情報は、画像処理に含まれる色変換処理において使用されるルックアップテーブルを調整する情報である。第2の態様において、画像処理を調整する情報は、画像処理に含まれるRIP処理において使用されるディザパターンを示す情報を調整する情報である。第3の態様において、画像処理を調整する情報は、画像処理に含まれるRIP処理において使用される誤差拡散マトリクスを示す情報を調整する情報である。
図16では、画像処理を調整する情報が、ルックアップテーブルを調整する情報であるとして説明する。
【0124】
図16では、調整前のルックアップテーブルLT1と、調整後のルックアップテーブルLT2とを示す。ルックアップテーブルLT1とルックアップテーブルLT2との差異は、(R,G,B)=(0,0,128)の変換後のCMY値が、(C,M,Y)=(128,128,0)から、(C,M,Y)=(172,64,0)に調整されている。画像処理を調整する情報は、調整後のルックアップテーブルLT2、又は、調整後のルックアップテーブルLT2の更新部分である。画像処理を調整する情報が、調整後のルックアップテーブルLT2の更新部分である場合、当該更新部分の位置を示す情報、例えば、更新部分の行番号も、第2実施形態に係る基準色情報STIに含まれる。
【0125】
例えば、第2実施形態に係る基準色情報管理テーブルSTTは、2個のヘッドユニットHUの製造番号と、2種類のインクの型番との組み合わせに応じた、第2実施形態に係る基準色情報STIを記憶する。第2実施形態に係る生成部301は、第2実施形態に係る基準色情報管理テーブルSTTと、ヘッド情報HIと、インク情報KIとに基づいて、第2実施形態に係る基準色情報STIを生成する。
【0126】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、決定部219は、第2実施形態に係る基準色情報STIを、印刷処理に使用する色情報として記憶回路220に記憶する。例えば、第2実施形態に係る基準色情報STIが、調整後のルックアップテーブルLT2の更新部分である場合、決定部219は、記憶回路220に記憶されているルックアップテーブルを、第2実施形態に係る基準色情報STIで更新する。
【0127】
2-1.第2実施形態のまとめ
以上、第2実施形態に係る生成部301は、ヘッド情報HIとインク情報KIとの両方に基づいて、ヘッドユニットHU-1に対応する画像データに行う画像処理を調整する情報とヘッドユニットHU-2に対応する画像データに行う画像処理を調整する情報とのいずれか一方又は両方を含む基準色情報STIを生成する。
第2実施形態によれば、基準色情報STIが、画像処理を調整する情報を含むことにより、2つのヘッドユニットHUの製造誤差、及び、2種類のインクの特性の差を、第1種別のインクのドットの個数と第2種別のインクのドットとの個数とを変更することで相殺できる。
第1実施形態と第2実施形態とを比較すると、第2実施形態では、第1種類のインクのドットのサイズと第2種類のインクのドットのサイズとが異なるため、基準色内で、第1種類のインクの色と第2種類のインクの色との配置の偏りが生じて、並置混色が発生しにくくなる虞がある。並置混色が発生しないと、ユーザーUには、2種類のインクの色が個々に識別できてしまう虞がある。一方、第1実施形態では、第1種類のインクのドットのサイズと第2種類のインクのドットのサイズとが略同一であるため、基準色内で、第1種類のインクの色と第2種類のインクの色との配置の偏りが抑制される。従って、第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、第2実施形態に係るインクジェットシステム10よりも並置混色を発生しやすくでき、質の高い基準色を提供できる。
一方、第1実施形態に係るインクジェットシステム10は、複数の基準色の調整が困難である。例えば、第1の基準色と第2の基準色とで駆動波形PDの調整態様が異なる場合に、印刷処理において、ある1つの所定の単位期間で、第1の基準色と第2の基準色との両方を記録媒体PPに形成するためには、例えば、駆動信号生成回路114が2系統の駆動信号Comを出力し、一方の系統の駆動信号Comを第1の基準色の駆動波形PDに調整し、他方の系統の駆動信号Comを第2の基準色の駆動波形PDに調整する必要がある。即ち、1つの所定の単位期間で同時に形成したい基準色の個数分と同数の系統の駆動信号Comが必要となる。一方、第2実施形態では、画像処理によって記録データDPを調整するため、複数の基準色を調整する場合でも、駆動信号生成回路114が2系統の駆動信号Comを出力する必要はなく、1系統の駆動信号Comを出力すればよい。従って、第2実施形態に係るインクジェットシステム10は、第1実施形態に係るインクジェットシステム10と比較して、複数の基準色の調整が容易である。
【0128】
3.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0129】
3-1.第1変形例
上述した各態様において、受付部217は、ユーザーUによる基準色情報STIを採用するか否かを示す可否情報を受け付けてもよい。
【0130】
図17は、第1変形例に係る基準色選択画面CD1-Bを示す図である。基準色選択画面CD1-Bは、ボタンBt2を有し、アイコンNBD1、アイコンNBD2、アイコンNBD3、及び、アイコンNBD4を有さない点で基準色選択画面CD1と相違する。
【0131】
第1変形例では、アイコンNBD1、アイコンNBD2、アイコンNBD3、及び、アイコンNBD4を有さないため、近傍色情報NBIを生成しない。即ち、上述の各態様において、生成部301は、近傍色情報NBIを生成しなくてもよい。
【0132】
ボタンBt2は、表示された色を基準色として使用しない、即ち、基準色情報STIを採用しないとユーザーUが判断した場合に押下される。ユーザーUによって、アイコンSTDが押下された場合、受付部217は、基準色情報STIを採用することを示す可否情報を受け付ける。一方、ボタンBt2が押下された場合、受付部217は、基準色情報STIを採用しないことを示す可否情報を受け付ける。
【0133】
決定部219は、可否情報が基準色情報STIを採用することを示す場合、基準色情報STIを印刷処理に使用する色情報CIに決定する。一方、決定部219は、可否情報が基準色情報STIを採用しないことを示す場合、基準色情報STIを印刷処理に使用する色情報に決定しない。例えば、制御回路210は、近傍色情報NBIを生成させる指示をサーバー300に通知する。制御回路210は、近傍色情報に対応する色をユーザーUに提示する。又は、制御回路210は、基準色を示すCMY値をユーザーUに入力させる画面を表示してもよい。
【0134】
以上、第1変形例に係る受付部217は、ユーザーUによる基準色情報STIを採用するか否かを示す可否情報を受け付け、決定部219は、可否情報が基準色情報STIを採用することを示す場合に、基準色情報STIを印刷処理に使用する色情報CIに決定する。
第1変形例によれば、ユーザーUが基準色情報STIを採用することを選択した場合に、基準色情報STIを印刷処理に使用する色情報CIに決定できる。
【0135】
3-2.第2変形例
上述した各態様において、
図10に示す一連の処理の前に、処理装置200は、ユーザーUが指定した基準色に関する情報を受け付けたが、基準色に関する情報を受け付けなくてもよい。例えば、クラウドサーバーCSは、ステップSS2において、ヘッド情報HIと、インク情報KIと、に基づいて、基準色を特定してもよい。第2変形例における基準色情報管理テーブルSTTは、2個のヘッドユニットHUの製造番号と、2種類のインクの型番との組み合わせに応じて、基準色に関する情報と、基準色情報STIとを記憶する。クラウドサーバーCSは、ステップSS6において、基準色に関する情報と、基準色情報STIと、複数の近傍色情報NBIと、を処理装置200に送信する。通信装置230は、ステップSC6において、クラウドサーバーCSから、基準色に関する情報と、基準色情報STIと、複数の近傍色情報NBIと、を受信する。ステップSC8において、制御回路210は、基準色情報STIに対応する色と、複数の近傍色情報NBIの夫々に対応する色とを提示するが、ステップSC6で受信した基準色に関する情報に基づいて、基準色情報STIに対応する色を提示すればよい。
【0136】
3-3.第3変形例
第2実施形態、及び、第2実施形態に基づく各変形例において、駆動素子111fは、圧電素子の替わりに、電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、加熱により圧力室CVの内部に気泡を発生させて、圧力室CVの内部の圧力を変動させる発熱素子を採用してもよい。発熱素子は、例えば、駆動信号Comの供給により発熱体が発熱する素子であってもよい。
【0137】
3-4.第4変形例
上述した各態様において、取得部211は、ヘッド情報HIとインク情報KIとのいずれか一方のみを取得してもよい。例えば、取得部211がヘッド情報HIのみを取得する場合、生成部301は、ヘッド情報HIに基づいて、基準色情報STIを生成する。
ヘッド情報HIに基づいて基準色情報STIを生成することにより、ヘッドユニットHU-1とヘッドユニットHU-2との製造誤差を相殺できるため、2つのヘッドユニットHUの製造誤差及び2種類のインクの夫々の特性の差を何ら調整しない態様と比較して、所望色を得るための調整にかかるユーザーUの負担を軽減できる。しかしながら、第4変形例では、2種類のインクの特性の差を相殺できない。従って、第1実施形態にかかるインクジェットシステム10は、第4変形例に係るインクジェットシステム10と比較して、所望色を得るための調整にかかるユーザーUの負担をより軽減できる。
【0138】
3-5.第4変形例
第4変形例と同様に、取得部211がインク情報KIのみを取得する場合、生成部301は、インク情報KIに基づいて、基準色情報STIを生成する。
インク情報KIに基づいて基準色情報STIを生成することにより、2種類のインクの特性の差を相殺できるため、2つのヘッドユニットHUの製造誤差及び2種類のインクの夫々の特性の差を何ら調整しない態様と比較して、所望色を得るための調整にかかるユーザーUの負担を軽減できる。しかしながら、第5変形例では、ヘッドユニットHU-1とヘッドユニットHU-2との製造誤差を相殺できない。従って、第1実施形態にかかるインクジェットシステム10は、第5変形例に係るインクジェットシステム10と比較して、所望色を得るための調整にかかるユーザーUの負担をより軽減できる。
【0139】
3-6.第6変形例
上述した各態様では、ヘッドユニットHUを、X軸に沿う方向に往復同させるシリアル方式のインクジェットプリンター100を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。インクジェットプリンター100は、複数のノズルNが、記録媒体PPの全幅に亘り分布する、ライン方式の液体吐出装置であってもよい。
【0140】
3-7.第7変形例
上述した各態様に係るインクジェットシステム10は、サーバー300を有したが、サーバー300を有さなくてもよい。
【0141】
図18は、第7変形例に係るインクジェットシステム10-Bの機能を示す図である。インクジェットシステム10-Bは、サーバー300を有さない点でインクジェットシステム10と相違する。インクジェットシステム10-Bは、サーバー300と通信可能である。
【0142】
3-8.第8変形例
上述の各態様に係るインクジェットシステム10は、処理装置200を有したが、処理装置200を有さなくてもよい。第7変形例に係るインクジェットプリンター100は、入力装置と、表示装置と、サーバー300と通信可能な通信装置230とを有する。第8変形例に係る記憶回路160には、インクジェットプログラムPM2と同様のプログラムが記憶されている。第8変形例に係る制御回路170は、前述のプログラムを読み出して、読み出したプログラムを実行することにより、取得部211と、送信制御部213と、提示制御部215と、受付部217と、決定部219として機能する。
【0143】
3-9.第9変形例
上述した複数の各態様は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0144】
10,10-B…インクジェットシステム、100,100_1,100_2,100_3,100_i…インクジェットプリンター、110a…液体吐出ヘッド、110b…制御モジュール、111…ヘッドチップ、111a…流路基板、111b…圧力室基板、111c…ノズル板、111d…吸振体、111e…振動板、111f…駆動素子、111g…保護板、111h…ケース、111i…配線基板、112…駆動回路、113…電源回路、114…駆動信号生成回路、120,121,122…液体容器、130…移動機構、131…キャリッジ、132…無端ベルト、140…搬送機構、150…通信装置、160…記憶回路、170…制御回路、200,200_1,200_2,200_3…処理装置、210…制御回路、211…取得部、213…送信制御部、215…提示制御部、217…受付部、219…決定部、220…記憶回路、230…通信装置、231…送信部、233…受信部、240…通信装置、260…入力装置、270…表示装置、271…提示部、290…バス、300…サーバー、301…生成部、310…制御回路、320…記憶回路、380…通信装置、390…バス、Bt1…OKボタン、Bt2…ボタン、CD1,CD1-B…基準色選択画面、CD2…微調整画面、CI…色情報、CS…クラウドサーバー、CV…圧力室、Com,Com-1,Com-2…駆動信号、DP…記録データ、Dt1,Dt2…ドット、FN…ノズル面、HI…ヘッド情報、HPC…所望色、HU,HU-1,HU-2…ヘッドユニット、IH…導入口、INC…初期色、ISI…調整情報、KI…インク情報、L1…第1列、L2…第2列、LT1,LT2…ルックアップテーブル、N…ノズル、NBC,NBC1,NBC2,NBC3,NBC4…近傍色、NBD1,NBD2,NBD3,NBD4…アイコン、NBI,NBI1,NBI2,NBI3,NBI4…近傍色情報、NBT…近傍色情報管理テーブル、NP-C,NP-M,NP-Y…入力欄、NW…ネットワーク、Na…連通流路、PD,PD0,PD1,PD2…駆動波形、PM1…制御プログラム、PM2…インクジェットプログラム、PP…記録媒体、R…リザーバー、R1,R2…空間、Ra…供給流路、SI,SI-1,SI-2…印刷データ信号、STC…基準色、STD,STD4…アイコン、STI,STI-1…基準色情報、STT…基準色情報管理テーブル、Sk1,Sk2…制御信号、U,U_1,U_2,U_3…ユーザー、VBS…オフセット電位、VH0,VH1,VH2…最高電位、VHV…電源電位、VL0,VL1,VL2…最低電位、VM…仮想化プログラム、dCom,dCom-1,dCom-2,dCom-a,dCom-b…波形指定信号、ΔVh0,ΔVh1,ΔVh2…電位差。