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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007208
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】金型金具
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/10 20060101AFI20240111BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B29C33/10
B22D17/22 C
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108524
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】390015624
【氏名又は名称】浦谷商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 直斗
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CA15
4F202CA30
4F202CB01
4F202CK43
4F202CK74
4F202CK75
4F202CP01
4F202CP03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】底部に空気孔を有する金型本体の金型金具であって、着脱部と螺着する入れ子構造体を容易に着脱しうる金型金具を提供する。
【解決手段】底部に空気孔を有する金型本体1の金型金具であって、当該金型金具は、金型金具の任意の箇所に略円筒状の固定部3が螺着され、当該固定部の下部に空孔2と、前記固定部の上部に弾性体7を介した着脱部4と、当該着脱部の上部に螺着される着脱自在な入れ子構造体5とを有してなることを、特徴とする金型金具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に空気孔を有する金型本体の金型金具であって、当該金型金具は、
金型金具の任意の箇所に略円筒状の固定部が螺着され、当該固定部の下部に空孔と、
前記固定部の上部に弾性体を介した着脱部と、
当該着脱部の上部に螺着される着脱自在な入れ子構造体と、を有してなる、
ことを特徴とする金型金具。
【請求項2】
前記固定部は、第1内径を有する第1シリンダと、前記第1シリンダより上部に前記第1内径より小さな第2内径を有する第2シリンダと、を備えてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の金型金具。
【請求項3】
前記金型金具は、前記固定部の内底面と当接する第1鍔部、該第1鍔部と反対側に設けられた第2鍔部、該第1及び第2鍔部の間の中間部を備えた略円筒状の構造体を備え、
前記第1鍔部が、前記第1シリンダ内を気密状態で摺動するように前記第1鍔部の第1外径と前記第1シリンダの第1内径が選択され、
前記第2鍔部が前記第2シリンダ内を摺動し得るように前記第2内径と前記第2鍔部の外径が選択され、
前記中間部の外径は前記第2鍔部の外径より小さく選択され、
前記円筒状の固定部の上部には、前記第1内径と前記第2内径との差に基づいて構成された縁部が設けられてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の金型金具。
【請求項4】
前記弾性体は、前記第1鍔部と前記縁部の間に嵌装された弾性体であって、常時弾性力F1を下向きに第1鍔部に付勢する弾性体を備えてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の金型金具。
【請求項5】
前記着脱部は、前記縁部上部に配された少なくとも1つの球体を介して取り外し可能に固定部と結合される脚部を有する着脱部を備えてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の金型金具。
【請求項6】
前記着脱部は、前記脚部の内周側先端に凹所が設けられており、
前記弾性体の弾性力F1が、前記空気孔を介して流入する圧縮空気の圧力未満であるとき、前記球体が前記第2鍔部の外周と当該凹所に挟持される
ことを特徴とする請求項1に記載の金型金具。
【請求項7】
前記円筒状の固定部に構成される前記縁部と前記金型金具は、六角ボルトを挿通し、互いに固定できる
ことを特徴とする請求項1に記載の金型金具。
【請求項8】
前記円筒状の固定部には、ネジが刻設され、当該ネジによって前記金型本体と前記金型金具が螺着される
ことを特徴とする請求項1に記載の金型金具。
【請求項9】
前記入れ子構造体には内ネジが刻設され、前記着脱部には外ネジが刻設されてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の金型金具。
【請求項10】
前記弾性体が、前記中間部の周りに巻き付けられた圧縮コイルバネである、請求項1に記載の金型金具。
【請求項11】
前記入れ子構造体は、識別リサイクルマーク形状、リサイクルマーク形状、ハーモニカ形状と丸形状からなる群から選択される1種である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の金型金具。
【請求項12】
前記金型本体は、合成樹脂成形、ブロー成形、ダイキャスト成形からなる群から選択される1種である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の金型金具を備えてなる金型本体。
【請求項13】
前記金型金具は、前記固定部の内底面と当接する第1鍔部、該第1鍔部と反対側に設けられた第2鍔部、該第1及び第2鍔部の間の中間部を備えた略円筒状の構造体を備え、
前記第1鍔部が、前記第1シリンダ内を気密状態で摺動するように前記第1鍔部の第1外径と前記第1シリンダの第1内径が選択され、
前記第2鍔部が前記第2シリンダ内を摺動し得るように前記第2内径と前記第2鍔部の外径が選択され、
前記円筒状の固定部の内周面には、当該固定部の内底面より上方に、順に第1縁部と第2縁部が設けられ、
前記第1縁部の内径は前記第1鍔部の上方への移動を不能にするように設定され、
前記第2縁部の内径は、前記第1鍔部と第2縁部の間に第1弾性体を挟持するように選択され、
前記円筒状の固定部の上端近傍にはピストンを移動自在に挿通する孔を構成する第3縁部が設けられ、前記第3縁部の下方には、複数の球体を部分的に受け入れる凹所が設けられ、
前記第2鍔部は円筒状の中空体として構成され、当該中空体の第2鍔部の上端面には第3縁部が設けられ、
前記中空体の第2鍔部の内底面と前記ピストンとの間に第2弾性体が挟持され、
前記第2弾性体の弾性力F2が前記空気孔を介して流入する圧縮空気の圧力未満であるとき、前記球体が前記ピストンの凹所を介して前記ピストンの外周面と前記第3縁部の内周面との間に保持されるように前記第3縁部の内径が選択され、
前記中空体の第2鍔部の内径が、前記第3縁部の内径より小さくされる
ことを特徴とする請求項1に記載の金型金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型金具に関する。さらに詳しくは、金型成形後、入れ子構造体の着脱を容易にするために、底部に空気孔を有する金型金具に関する。
【背景技術】
【0002】
金型から金型金具を着脱する際、一般的な手法として射出成形機では、可動金型本体(可動型)が固定金型本体(固定型)に近接・隔離する方向に駆動されて、金型本体の型締め(型閉)と型開き(型開)が行われる。型締めされた金型内のキャビティーに溶融状の合成樹脂が供給され、その溶融状の合成樹脂が硬化して成形品が形成され、金型の型開き後、成形品が金型から取り出される。
【0003】
射出成形においては、高温の溶融状合成樹脂よりガスが発生する場合がある。ガスは、キャビティー内部に滞留し、その部分は局所的に合成樹脂の充填を妨げるため成形品に不良を生じさせる。ガスをキャビティー外部に排出するため、ガス抜き用の金型部品が取り付けられる場合がある。当該金型部品は、ガスは通過できるが溶融状の合成樹脂はその粘性のために通過できない狭小な隙間をキャビティー表面に設け、当該狭小な隙間以外の部分はキャビティー表面と面一となるように構成される。当該狭小な隙間は金型本体に設けられた貫通孔と連通しており、該貫通孔はキャビティー外部の大気と接するように形成されている。
【0004】
前記狭小な隙間は微細な空間であるため、キャビティー内で発生したゴミや塵が孔を塞ぎ、ガス抜きの機能が不全となる虞があるので、定期的にガス抜き用金型部品を金型本体より脱離させ、クリーニング処理を施したうえで再装着する必要がある。
さらにこの処理を行う際、事前に入れ子を取り外すことが必要となる。
【0005】
また成形品の表面に情報の刻印を行う場合、刻印面を有する入れ子を用いる場合がある。また、成形品の表面に部分的な形状を作製する場合、作製する部分形状に対応する入れ子を用いる場合がある。固定又は可動金型本体に凹部を作製し、そこに該入れ子を装着する。型締めを行い、溶融状の合成樹脂を流し込むことにより、入れ子の表面に刻印された製造年月や製品の識別番号等の情報、または部分形状は、成形品に転写される。刻印情報を変更したり、部分形状を変更したりする場合には、入れ子を金型本体より脱離させ、入れ子を再装着する必要があるが、情報刻印時に使用される入れ子表面は、キャビティー表面と面一になるように設置され、また、部分的な形状を作製するときに使用される入れ子表面もまた、キャビティー表面と比べて大きな段差がない場合が多い。
【0006】
前述のように金型部品のクリーニング処理が必要になった場合、入れ子を取り外した後、ガス抜き用金型部品を金型本体より取り外さねばならない。ガス抜き用金型部品は、その表面がキャビティーの表面と面一になるように配設されているので、型開きした状態でキャビティー側からガス抜き用金型部品を掴み、引き抜き交換することはできない。一旦、金型本体を射出成形機から外し、金型本体の裏面を露出させ、裏面からボルトの螺着を解除し、棒状の治具を貫通孔に挿入し、ハンマーなどでガス抜き用金型部品をキャビティー側に押し出して、ガス抜き用金型部品を金型本体より脱離させる作業が必要となる。
【0007】
金型本体は重量物であるため、これを射出成形装置から外すためには多大な作業量と労力が必要であり、また、金型を組みなおして射出成形装置に組み付ける場合にも同様であり、入れ子を着脱する際も同様である。このように、ガス抜き用金型部品は比較的小型軽量の部品であるにもかかわらず、その交換には、重量物である金型本体を取り外し、再度組み付けるという大掛かりな作業がなされていた。
【0008】
さらに、入れ子構造体の表面はキャビティーの表面と面一となるか、または段差が小さい場合が多いので、キャビティー側から交換はできない。入れ子の交換においても、一旦金型本体を射出成形機から外し、再度装着する必要があり、入れ子を交換する際に容易に着脱ができず作業効率が悪いことが課題となっている。
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、特許文献1では、特に、金型を交換することなく樹脂成型品を成形することができる金型金具を提案している(特許文献参照)。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される金型金具では、入れ子に関しては、金型キャビティーに対して油圧シリンダなどの駆動機を利用することにより、進退自在に移動する入れ子を金型キャビティーの一部に組み込んでいる。したがって、入れ子を交換するためには、金型を組みなおす必要が生じるため、金型交換による作業効率が低下するという問題点が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5126647号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、底部に空気孔を有する金型本体の金型金具であって、着脱部と螺着する入れ子構造体を容易に着脱しうる金型金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、底部に空気孔を有する金型本体の金型金具であって、当該金型金具は、金型金具の任意の箇所に略円筒状の固定部が螺着され、当該固定部の下部に空孔と、前記固定部の上部に弾性体を介した着脱部と、当該着脱部の上部に螺着される着脱自在な入れ子構造体とを有してなる、ことを特徴とする金型金具に関する。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記固定部は、第1内径を有する第1シリンダと、前記第1シリンダより上部に前記第1内径より小さな第2内径を有する第2シリンダとを備えてなることを、特徴とする請求項1に記載の金型金具に関する。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記金型金具は、前記固定部の内底面と当接する第1鍔部、該第1鍔部と反対側に設けられた第2鍔部、該第1及び第2鍔部の間の中間部を備えた略円筒状の構造体を備え、前記第1鍔部が、前記第1シリンダ内を気密状態で摺動するように前記第1鍔部の第1外径と前記第1シリンダの第1内径が選択され、前記第2鍔部が前記第2シリンダ内を摺動し得るように前記第2内径と前記第2鍔部の外径が選択され、前記中間部の外径は前記第2鍔部の外径より小さく選択され、前記円筒状の固定部の上部には、前記第1内径と前記第2内径との差に基づいて構成された縁部が設けられてなることを、特徴とする請求項1に記載の金型金具に関する。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記弾性体は、前記第1鍔部と前記縁部の間に嵌装された弾性体であって、常時弾性力F1を下向きに第1鍔部に付勢する弾性体を備えることを、特徴とする請求項1に記載の金型金具に関する。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記着脱部は、前記縁部上部に配された少なくとも1つの球体を介して取り外し可能に固定部と結合される脚部を有する着脱部を備えてなることを、特徴とする請求項1に記載の金型金具に関する。
【0017】
請求項6に係る発明は、前記着脱部は、前記脚部の内周側先端に凹所が設けられており、前記弾性体の弾性力F1が、前記空気孔を介して流入する圧縮空気の圧力未満であるとき、前記球体が前記第2鍔部の外周と当該凹所に挟持されることを、特徴とする請求項1に記載の金型金具に関する。
【0018】
請求項7に係る発明は、前記円筒状の固定部に構成される前記縁部と前記金型金具は、六角ボルトを挿通し、互いに固定できることを、特徴とする請求項1に記載の金型金具に関する。
【0019】
請求項8に係る発明は、前記円筒状の固定部には、ネジが刻設され、当該ネジによって前記金型本体と前記金型金具が螺着されることを、特徴とする請求項1に記載の金型金具に関する。
【0020】
請求項9に係る発明は、前記入れ子構造体には内ネジが刻設され、前記着脱部には外ネジが刻設されてなることを、特徴とする請求項1に記載の金型金具に関する。
【0021】
請求項10に係る発明は、前記弾性体が、前記中間部の周りに巻き付けられた圧縮コイルバネである、請求項1に記載の金型金具に関する。
【0022】
請求項11に係る発明は、前記入れ子構造体は、識別リサイクルマーク形状、リサイクルマーク形状、ハーモニカ形状と丸形状からなる群から選択される1種である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の金型金具に関する。
【0023】
請求項12に係る発明は、前記金型本体は、合成樹脂成形、ブロー成形、ダイキャスト成形からなる群から選択される1種である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の金型金具を備えてなる金型本体に関する。
【0024】
請求項13に係る発明は、前記金型金具は、前記固定部の内底面と当接する第1鍔部、該第1鍔部と反対側に設けられた第2鍔部、該第1及び第2鍔部の間の中間部を備えた略円筒状の構造体を備え、前記第1鍔部が、前記第1シリンダ内を気密状態で摺動するように前記第1鍔部の第1外径と前記第1シリンダの第1内径が選択され、
前記第2鍔部が前記第2シリンダ内を摺動し得るように前記第2内径と前記第2鍔部の外径が選択され、前記円筒状の固定部の内周面には、当該固定部の内底面より上方に、順に第1縁部と第2縁部が設けられ、前記第1縁部の内径は前記第1鍔部の上方への移動を不能にするように設定され、前記第2縁部の内径は、前記第1鍔部と第2縁部の間に第1弾性体を挟持するように選択され、前記円筒状の固定部の上端近傍にはピストンを移動自在に挿通する孔を構成する第3縁部が設けられ、前記第3縁部の下方には、複数の球体を部分的に受け入れる凹所が設けられ、前記第2鍔部は円筒状の中空体として構成され、当該中空体の第2鍔部の上端面には第3縁部が設けられ、前記中空体の第2鍔部の内底面と前記ピストンとの間に第2弾性体が挟持され、前記第2弾性体の弾性力F2が前記空気孔を介して流入する圧縮空気の圧力未満であるとき、前記球体が前記ピストンの凹所を介して前記ピストンの外周面と前記第3縁部の内周面との間に保持されるように前記第3縁部の内径が選択され、前記中空体の第2鍔部の内径が、前記第3縁部の内径より小さくされることを特徴とする請求項1に記載の金型金具に関する。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る金型金具によれば、底部に空気孔を有する金型本体の金型金具であって、当該金型金具は、金型金具の任意の箇所に略円筒状の固定部が螺着され、当該固定部の下部に空孔と、前記固定部の上部に前記弾性体を介した着脱部と、当該着脱部の上部に螺着される着脱自在な入れ子構造体とを有してなることを、特徴とする金型金具であるので、当該着脱部の上部に螺着される入れ子構造体を容易に着脱することができるという作用効果を奏する。
【0026】
請求項2に係る金型金具によれば、前記固定部は、第1内径を有する第1シリンダと、前記第1シリンダより上部に前記第1内径より小さな第2内径を有する第2シリンダとを備えることを特徴としているので、弾性体と略円筒状の構造体を利用した着脱部を下から押し上げる機能を補助することができるという作用効果を奏する。
【0027】
請求項3に係る金型金具によれば、前記金型金具は、前記固定部の内底面と当接する第1鍔部、該第1鍔部と反対側に設けられた第2鍔部、該第1及び第2鍔部の間の中間部を備えた略円筒状の構造体を備え、前記第1鍔部が、前記第1シリンダ内を気密状態で摺動するように前記第1鍔部の第1外径と前記第1シリンダの第1内径が選択され、前記第2鍔部が前記第2シリンダ内を摺動し得るように前記第2内径と前記第2鍔部の外径が選択され、前記中間部の外径は前記第2鍔部の外径より小さく選択され、前記円筒状の固定部の上部には、前記第1内径と前記第2内径との差に基づいて構成された縁部が設けられるので、金型本体の空気孔からの圧縮空気の圧力により上方に押し上げられ、着脱部を押し出すことができるという作用効果を奏する。
【0028】
請求項4に係る金型金具によれば、前記弾性体は、前記第1鍔部と前記縁部の間に嵌装された弾性体であって、常時弾性力F1を下向きに第1鍔部に付勢する弾性体を備えるので、空気孔から常時弾性力F1を上回る圧力を受けない限り、第1鍔部を固定することができ、着脱部を着脱する際に空気孔から常時弾性力F1を上回る圧力を加えることで、着脱部を容易に着脱することができるという作用効果を奏する。
【0029】
請求項5に係る金型金具によれば、前記着脱部は、前記縁部上部に配された少なくとも1つの球体を介して取り外し可能に固定部と結合される脚部を有する着脱部を備えるので、圧縮空気圧により押し上げられる前記略円筒状の構造体により固定部から脱着部が容易に押し出され、着脱部を有した入れ子構造体を交換できるという作用効果を奏する。
【0030】
請求項6に係る金型金具によれば、前記着脱部は、前記脚部の内周側先端に凹所が設けられており、前記弾性体の弾性力F1が、前記空気孔を介して流入する圧縮空気の圧力未満であるとき、前記球体が前記第2鍔部の外周と当該凹所に挟持されるので、弾性力F1以上の圧縮空気の圧力が加わった際、構造体が効率的に摺動できるという作用効果を奏する。
【0031】
請求項7に係る金型金具によれば、前記円筒状の固定部に構成される前記縁部と前記金型金具は、六角ボルトを挿通し互いに固定できるので、着脱部を脱着する際、固定部が外れないようにすることができるという作用効果を奏する。
【0032】
請求項8に係る金型金具によれば、前記円筒状の固定部には、ネジが刻設され、当該ネジによって前記金型本体と前記金型金具が螺着されるので、金型本体と金型金具を密接に係合することができるという作用効果を奏する。
【0033】
請求項9に係る金型金具によれば、前記入れ子構造体には内ネジが刻設され、前記着脱部には外ネジが刻設されるので、入れ子構造体と着脱部を容易に着脱することができるという作用効果を奏する。
【0034】
請求項10に係る金型金具によれば、前記弾性体が、前記中間部の周りに巻き付けられた圧縮コイルバネであるので、空気孔から空気圧が加わった際、摺動の負荷による摩耗に耐えうる耐久性に備えた金型金具を形成することができるという作用効果を奏する。
【0035】
請求項11に係る金型金具によれば、入れ子構造体は、識別リサイクルマーク形状、リサイクルマーク形状、ハーモニカ形状と丸形状からなる群から選択される1種であるので、様々な形状の入れ子構造体が使用可能であり、用途に応じた入れ子構造体を使用することができるという作用効果を奏する。
【0036】
請求項12に係る金型本体によれば、前記金型本体は、合成樹脂成形、ブロー成形、ダイキャスト成形からなる群から選択される1種である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の金型金具を備えてなる金型本体であるので、用途に応じた様々な金型本体に、前記金型金具を汎用的に使用することができるという作用効果を奏する。
【0037】
請求項13に係る金型金具によれば、前記金型金具は、前記固定部の内底面と当接する第1鍔部、該第1鍔部と反対側に設けられた第2鍔部、該第1及び第2鍔部の間の中間部を備えた略円筒状の構造体を備え、前記第1鍔部が、前記第1シリンダ内を気密状態で摺動するように前記第1鍔部の第1外径と前記第1シリンダの第1内径が選択され、前記第2鍔部が前記第2シリンダ内を摺動し得るように前記第2内径と前記第2鍔部の外径が選択され、前記円筒状の固定部の内周面には、当該固定部の内底面より上方に、順に第1縁部と第2縁部が設けられ、前記第1縁部の内径は前記第1鍔部の上方への移動を不能にするように設定され、前記第2縁部の内径は、前記第1鍔部と第2縁部の間に第1弾性体を挟持するように選択され、前記円筒状の固定部の上端近傍にはピストンを移動自在に挿通する孔を構成する第3縁部が設けられ、前記第3縁部の下方には、複数の球体を部分的に受け入れる凹所が設けられ、前記第2鍔部は円筒状の中空体として構成され、当該中空体の第2鍔部の上端面には第3縁部が設けられ、前記中空体の第2鍔部の内底面と前記ピストンとの間に第2弾性体が挟持され、前記第2弾性体の弾性力F2が前記空気孔を介して流入する圧縮空気の圧力未満であるとき、前記球体が前記ピストンの凹所を介して前記ピストンの外周面と前記第3縁部の内周面との間に保持されるように前記第3縁部の内径が選択され、前記中空体の第2鍔部の内径が、前記第3縁部の内径より小さくされることを特徴とするので、着脱部に螺着した入れ子構造体の重量が、重い場合であっても安定した取り外しを可能とする効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係る金型本体と空気孔を有する金型金具の断面図である。
図2】本発明に係る金型金具の一実施形態である、金型金具から着脱部を有した入れ子構造体を取り外した後の断面図である。
図3】本発明に係る金型金具の一実施形態である、空気孔からの空気圧により、着脱部が略円筒状の構造体によって押し出された後の金型本体と金型金具を示す断面図である。
図4】発明に係る金型金具の一実施形態である、着脱部が略円筒状の構造体によって押し出された後の金型本体と金型金具を示す断面図である。
図5】本発明に係る空気孔を有した金型金具を示す断面図である。
図6】本発明に係る金型金具の一実形態である、金型本体に着脱部を有した入れ子構造体を螺着した金型金具を示す断面図である。
図7】本発明に係る金型金具の一実形態である、空気孔を有した金型金具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る金型金具について詳述する。
【0040】
ここで金型本体は、プラスチック用を例示しているが、あくまで一例であり、本発明の金型金具は、例えば、プレス金型、パンチ金型、ダイカスト金型、射出成型、複合成形などにも適用可能であり、特定の金型本体に限られることはない。
【0041】
<金型金具>
図1乃至図4図6は、本発明に係る金型本体と空気孔を有する金型金具の断面図である。
図1を参照すると、本発明の一実施形態である、底部(6)に空気孔(2)を有する金型本体の金型金具の任意の箇所に略円筒状の固定部(3)を螺着し、当該固定部(3)の下部には空孔が設けられ、前記固定部(3)の上部に弾性体(7)を介した着脱部(4)を装着し、当該着脱部(4)の上部に着脱自在な入れ子構造体(5)を装着する金型金具を形成する。弾性体(7)としてバネは、天然又は合成ゴム等の弾性を備えた素材であれば特定の物に限定されない。
【0042】
図2は本発明に係る金型金具の一実施形態である、金型金具から着脱部を有した入れ子構造体を取り外した後の断面図である。
図1乃至図5を参照すると、本発明の一実施形態である本発明の一実施形態である、底部(6)に空気孔(2)を有する金型本体(1)の金型金具(MD)の任意の箇所に略円筒状の固定部(3)を螺着し、当該固定部(3)の下部には空孔が設けられ、前記金型金具は、前記固定部(3)の内底面(9)と当接する第1鍔部(11a)、該第1鍔部(11a)と反対側に設けられた第2鍔部(11b)、該第1鍔部(11a)と第2鍔部(11b)の間の中間部(M)を備えた略円柱状の構造体(AR)を設け、前記固定部(3)の上部に弾性体(7)を介した着脱部(4)を装着し、当該着脱部(4)の上部に着脱自在な入れ子構造体(5)を装着する金型金具(MD)から、着脱自在な入れ子構造(5)に螺着された着脱部(4)を取り外した形態である。その後、新たに着脱自在な入れ子構造(5)と螺設されるように構成された着脱部(4)を設けることも可能である。
【0043】
図3は本発明に係る金型金具の一実施形態である、空気孔からの空気圧により、着脱部が略円筒状の構造体によって押し出された後の金型本体(1)と金型金具(MD)を示す断面図である。
図3乃至図5を参照すると弾性体(7)の弾性力F1が、前記空気孔(2)を介して流入する圧縮空気の圧力より大きいとき、前記第1鍔部(11a)と前記縁部(10)の間に嵌装された弾性体(7)が上向きに押し戻される。そして、弾性体(7)に付勢された円筒状の構造体(AR)が上方へ摺動する。その結果として、着脱部(4)と螺設された着脱自在な入れ子構造体(5)を容易に着脱することが可能になる。また図3に記載の矢印は、空気を流入させる方向を示す。
【0044】
図4は発明に係る金型金具の一実施形態である、着脱部(4)が略円筒状の構造体(AR)によって押し出された後の金型本体と金型金具を示す断面図である。
図4及び図5を参照すると前記弾性体(7)の弾性力F1が、前記空気孔(2)を介して流入する圧縮空気の圧力より大きいとき、前記第1鍔部(11a)と前記縁部(10)の間に嵌装された弾性体(7)が上向きに押し戻される。その後、弾性体(7)に付勢された略円筒状の構造体(6)が上方へ摺動する。その結果、着脱部(4)と螺着された着脱自在な入れ子構造体(5)を取り外した後、空気孔(2)からの流入を停止した形態となる。すなわち弾性力F1が前記空気孔(2)を介して流入する圧縮空気の圧力未満である状態を表す。
また空気孔(2)から流入する空気を流入する方法は、特に限定されるものではない。
【0045】
図5は、本発明に係る空気孔(2)を有した金型金具(MD)を示す断面図である。
図1乃至図5を参照すると、金型金具(MD)は略円筒状の固定部(3)を有している。
固定部(3)は、第1内径(I1)を有する第1シリンダ(13)と、第1シリンダ(13)より上部に第1内径(I1)より小さな第2内径(I2)を有する第2シリンダ(14)と、空気孔(2)と連通する内底面(9)を備えている。金型金具(MD)は、固定部(3)の内底面(9)と当接する第1鍔部(11a)、第1鍔部(11a)と反対側に設けられた第2鍔部(11b)、該第1鍔部(11a)と第2鍔部(11b)の間の中間部(M)を備えた略円筒状の構造体(AR)とを備えている。
第1鍔部(11a)は、第1シリンダ(13)内を気密状態で摺動するように第1鍔部の外径(111a)と前記第1シリンダ(13)の第1内径(I1)が選択され、第2鍔部(11b)が前記第2シリンダ内を摺動し得るように前記第2内径(I2)と前記第2鍔部の外径(111b)が選択される。選択された中間部(M)の外径(MOD)は前記第2鍔部の外径(111b)より小さく選択され、前記円筒状の固定部(3)の上部には、前記第1内径(I1)と前記第2内径(I2)との差に基づいて構成された縁部(10)が設けられる。また前記第1鍔部(11a)と前記縁部(10)の間に嵌装された弾性体(7)は、常時弾性力F1を下向きに第1鍔部(11a)に付勢する弾性体(7)を備えている。
金型金具(MD)は、前記縁部(10)の上部に配された少なくとも1つの球体(8)を介して取り外し可能に固定部(3)と結合される脚部(12)を有する着脱部(4)を更に備え、前記脚部(12)の内周側先端に凹所(Re)が設けられており(図3及び図4参照)、前記弾性体(7)の弾性力F1が、前記空気孔(2)を介して流入する圧縮空気の圧力未満であるとき、前記球体(8)が前記第2鍔部(11b)の外周と当該凹所(Re)に挟持され、当該着脱部(4)に着脱自在な入れ子構造体(5)とを有する金型金具(MD)を形成する。
前記金型本体(1)の底部(6)の空気孔(2)から、気体による空気圧を加えることで、前記弾性体(7)と結合する略円筒状の構造体(AR)が上方へ押し上げられる。次に入れ子構造体(5)が装着された着脱部(4)が、略円筒状の構造体(AR)により押し上げられ、着脱自在となる機能を備える金型金具(MD)を形成することが可能となる。
【0046】
図7は、本発明に係る金型金具の一実施形態である、空気孔を有した金型金具を示す断面図である。
図1図6及び図7を参照すると、金型金具(MD)は、固定部(3)の内底面(9)と当接する第1鍔部(11a)、第1鍔部(11a)と反対側に設けられた第2鍔部(11b)と第1及び第2鍔部の間の中間部(M)を備えた略円筒状の構造体(AR)を備える。また第1鍔部(11a)が、第1シリンダ(13)内を気密状態で摺動するように第1鍔部の外径(111a)と第1シリンダ(13)の第1内径(I1)が選択される。さらに第2鍔部(11b)が第2シリンダ(14)内を摺動し得るように第2内径(I2)と第2鍔部の外径(11b)が選択される。円筒状の固定部(3)の内周面には、固定部(3)の内底面(9)より上方に、順に第1縁部(10a)と第2縁部(10b)が設けられる。設けられた第1縁部(10a)の内径は第1鍔部(11a)の上方への移動を不能にするように設定される。次に第2縁部(10b)の内径は、第1鍔部(11a)と第2縁部(10b)の間に弾性体(7)を挟持するように選択される。円筒状の固定部(3)の上端近傍にはピストン(15)を移動自在に挿通する孔を構成する第3縁部(10c)が設けられている。この第3縁部(10c)の下方には、複数の球体(8)を部分的に受け入れる凹所が設けられる。第2鍔部(10b)は円筒状の中空体として構成されており、中空体の第2鍔部(11b)の上端面には第3縁部(10c)が設けられる。中空体の第2鍔部(11b)の内底面とピストン(15)との間に第2の弾性体(7a)が挟持される。この第2の弾性体(7a)の弾性力F2が空気孔(2)を介して流入する圧縮空気の圧力未満であるとき、球体(8)がピストン(15)の凹所を介してピストン(15)の外周面と前記第3縁部(10c)の内周面との間に保持されるように第3縁部(10c)の内径が選択される。また中空体の第2鍔部(11b)の内径が、第3縁部(10c)の内径より小さくされるように形成される。
【0047】
図示されていないが、弾性体(7)を下向きに第1鍔部(11a)に付勢できれば良く、その他当業者が使用し得るあらゆる弾性体が利用可能であることは言うまでもない。
【0048】
本発明は、上記実施形態以外にも、当業者には自明の範囲で種々の変形、修正、変更を行うことが可能である。
図示はしていないが、識別リサイクルマーク形状、リサイクルマーク形状、ハーモニカ形状と丸形状や等の入れ子構造体を使用する構成にしてもよく、状況に応じて様々な樹脂成型品を製造することが可能になる。
また、図示はしていないが本実施形態では、月暦を示す「1」から「12」までの月数字が等間隔に凸状または凹状に刻設され、この月暦が製造月を表すことにより、製造年の文字等、矢印および製造月を表す1から12までの数字マークや文字等に2次元バーコードやQRコード(登録商標)を刻印する入れ子構造体を使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る金型金具は、重量物である金型本体を射出成形機から取り外して金型を分解し、金型本体の内部に磁石移動など特別な構造を形成し、あるいは金型本体の大幅な改良を行う必要性がない。更には金型本体の型開きの状態から、キャビティー側より、ガス抜き用部品または、円形、四角形など自由な形の入れ子構造体を簡単に着脱し交換できる交換自在な金型金具を提供することができる。このことは、金型を用いた樹脂成形作業の効率を高めることに大いに寄与することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 金型本体
2 空気孔
3 固定部
4 着脱部
5 入れ子構造体
6 底部
7 弾性体
7a 第2の弾性体
8 球体
9 内底面
10 縁部
10a 第1縁部
10b 第2縁部
10c 第3縁部
11a 第1鍔部
111a 第1鍔部の外径
11b 第2鍔部
111b 第2鍔部の外径
12 脚部
13 第1シリンダ
I1 第1内径
14 第2シリンダ
15 ピストン
16 構造体
I2 第2内径
AR 略円筒状の構造体
Re 凹所
M 中間部
MD 金型金具
MOD 中間部の外径
← 矢印は空気の流入方向を示す
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7