(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072088
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】鋼材の曲り反り計測装置、鋼材の異常通知システム、コンピュータプログラム、鋼材の曲り反り計測方法及び鋼材の異常通知方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
G01B11/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182714
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】501120122
【氏名又は名称】スチールプランテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中田 祥成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 春希
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA46
2F065AA53
2F065CC07
2F065DD03
2F065FF16
2F065GG04
2F065JJ05
2F065MM14
2F065MM24
2F065PP22
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065SS04
2F065SS09
2F065TT03
(57)【要約】
【課題】鋼材の曲り反り量をより精度良く自動計測できる鋼材の曲り反り計測装置、鋼材の曲り反り計測方法及び鋼材の異常通知方法を提供する。
【解決手段】鋼材の曲り反り計測装置は、鋼材を支持する支持台と、鋼材の長さ方向における複数の計測位置で、長さ方向と交差する交差面上における鋼材の長さ方向に沿って配置された線状材の二次元位置及び鋼材の二次元位置を計測する二次元位置計測部と、計測した線状材及び鋼材それぞれの二次元位置に基づいて鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する算出部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材を支持する支持台と、
前記鋼材の長さ方向における複数の計測位置で、前記長さ方向と交差する交差面上における前記鋼材の長さ方向に沿って配置された線状材の二次元位置及び前記鋼材の二次元位置を計測する二次元位置計測部と、
前記二次元位置計測部で計測した前記線状材及び前記鋼材それぞれの二次元位置に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する算出部と
を備える、
鋼材の曲り反り計測装置。
【請求項2】
前記算出部は、
前記線状材の二次元位置を基準とする前記鋼材の二次元位置を鋼材位置情報として生成し、前記複数の計測位置の位置情報及び前記鋼材位置情報に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する、
請求項1に記載の鋼材の曲り反り計測装置。
【請求項3】
前記線状材が複数配置されており、
前記算出部は、
前記複数の線状材の前記交差面上の二次元位置に基づいて前記交差面上で水平基準軸及び鉛直基準軸を設定し、前記鋼材位置情報を前記水平基準軸上及び前記鉛直基準軸上それぞれの座標に変換して前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する、
請求項2に記載の鋼材の曲り反り計測装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記鋼材位置情報の前記水平基準軸上及び鉛直基準軸上での座標及び前記複数の計測位置の位置情報に基づいて曲り反り近似曲線を生成し、前記曲り反り近似曲線と、前記曲り反り近似曲線が前記鋼材の両端と交差する両端部を結ぶ直線との距離に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する、
請求項3に記載の鋼材の曲り反り計測装置。
【請求項5】
前記算出部は、
前記複数の線状材の前記二次元位置に基づいて前記複数の線状材の間の相対位置を算出し、前記相対位置の経時変化に基づいて線状材の異常を判定する、
請求項3に記載の鋼材の曲り反り計測装置。
【請求項6】
前記算出部は、
前記判定部で異常と判定された線状材を除外した残りの線状材の二次元位置に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する、
請求項5に記載の鋼材の曲り反り計測装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の鋼材の曲り反り計測装置と、
前記鋼材の曲り反り計測装置が算出した鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方が所定の許容値を超える場合、異常を通知する通知装置と
を備える、
鋼材の異常通知システム。
【請求項8】
支持台によって支持された鋼材の長さ方向における複数の計測位置で、前記長さ方向と交差する交差面上における前記鋼材の長さ方向に沿って配置された線状材の二次元位置及び前記鋼材の二次元位置を取得し、
取得した前記線状材及び前記鋼材それぞれの二次元位置に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する、
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項9】
支持台によって支持された鋼材の長さ方向に沿って線状材を配置し、
前記長さ方向における複数の計測位置で、前記長さ方向と交差する交差面上における前記線状材の二次元位置及び前記鋼材の二次元位置を計測し、
計測した前記線状材及び前記鋼材それぞれの二次元位置に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する、
鋼材の曲り反り計測方法。
【請求項10】
請求項9に記載の鋼材の曲り反り計測方法によって算出した鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方が所定の許容値を超える場合、異常を通知する、
鋼材の異常通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の曲り反り計測装置、鋼材の異常通知システム、コンピュータプログラム、鋼材の曲り反り計測方法及び鋼材の異常通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の形状に関する検査工程では、目視検査による曲り反り等の検査が行われている。目視検査の結果、鋼材の反りや曲りが著しい場合は、オフラインで検査員による曲り反り等の測定が行われる。検査員による手測定では、水糸、ピアノ線又は直尺などが用いられる。
【0003】
手測定では長い測定時間を要し(例えば、鋼材一本につき数十分程度)、また測定結果の検査員によるばらつきや測定結果の記載ミスなども生じやすい。特許文献1には、鋼材の搬送中に鋼材の曲り反りを自動測定する技術が開示されている。特許文献2には、鋼材を載置台の上に静止した状態で載置し、計測装置を移動させながら自動計測することにより、鋼材の曲り反りを自動測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-234540号公報
【特許文献2】特開2013-228325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送中の鋼材は、上下左右のぶれや振動があり、計測中における鋼材のぶれや振動を除去することは困難である。また、静止状態の鋼材を長さ方向に計測する場合でも、計測装置の移動に伴うぶれや振動によって鋼材の曲り反りを精度良く計測することは困難である。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、鋼材の曲り量・反り量をより精度良く自動計測できる鋼材の曲り反り計測装置、鋼材の異常通知システム、コンピュータプログラム、鋼材の曲り反り計測方法及び鋼材の異常通知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、鋼材の曲り反り計測装置は、鋼材を支持する支持台と、前記鋼材の長さ方向における複数の計測位置で、前記長さ方向と交差する交差面上における前記鋼材の長さ方向に沿って配置された線状材の二次元位置及び前記鋼材の二次元位置を計測する二次元位置計測部と、前記二次元位置計測部で計測した前記線状材及び前記鋼材それぞれの二次元位置に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する算出部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鋼材の曲り量・反り量をより精度良く自動計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の鋼材の曲り反り計測装置の構成の平面視を示す図である。
【
図2】
図1の鋼材の曲り反り計測装置のX-X線に沿って取った断面図である。
【
図3】本実施形態のコントローラの構成の一例を示す図である。
【
図5】鋼材及び水糸の二次元位置と鋼材の長さ方向の計測位置の一例を示す図である。
【
図7】ライン距離計の座標系における二次元位置を示す図である。
【
図8】基準座標系における二次元位置を示す図である。
【
図9】座標変換後の鋼材位置情報の一例を示す図である。
【
図11】鋼材の稜線上の座標群の一例を示す図である。
【
図12】鋼材の曲り量の算出方法の一例を示す図である。
【
図13】本実施形態の鋼材の曲り反り計測装置による処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態の鋼材の曲り反り計測装置の構成の平面視を示す図であり、
図2は
図1の鋼材の曲り反り計測装置のX-X線に沿って取った断面図である。鋼材の曲り反り計測装置は、鋼材Sを支持する支持台10、鋼材Sの長さ方向に沿って配置された線状材として機能する水糸20、二次元位置計測部として機能するライン距離計30A、30B、30Cを備える。また、本実施形態の鋼材の曲り反り計測装置は、駆動装置40、ベルト41、軌道42、及び移動装置43を備えている。鋼材Sは、例えば、H形鋼(H鋼)であるが、これに限定されるものではなく、I形鋼、T形鋼、L形鋼、山形鋼、溝形鋼、又は帯鋼などの一定の断面形状に形成され、材軸方向(長さ方向)に長く、曲りや反りが生じ得る鋼材であればよい。本明細書では、H形鋼を例に挙げて説明する。尚、鋼材Sの長さに特に制限はないが、例えばH形鋼やC形鋼の一般的な長さは5~20mの範囲内にあり、本発明はこのような範囲内の長さを有するH形鋼やC形鋼の曲り反りを計測する際に特に有効である。
【0011】
水糸20は、線状材であればよいが、金属線材や樹脂製の糸等を用いることが好ましい。水糸20は、鋼材Sから適長離隔して鋼材Sの長さ方向と平行に配置されている。
図1及び
図2では水糸20を1本配置しているが、後述のように複数(例えば、2本、3本など)の水糸を互いに適長離隔して鋼材Sの長さ方向と平行に配置してもよい。また、水糸20は、直線の基準として用いられるため、たるみが生じないような一定の張力がかけられた状態で支持されている。
【0012】
支持台10は、鋼材Sの長さ方向に沿って一定の間隔を空けて並べられた支持部材を複数有しており、複数の箇所で鋼材Sを静止状態で支持する。支持部材の幅、配置数、及び材質等は、鋼材Sの種類や長さに応じて適宜設定する。本実施形態においては、長さ6~19mのH形鋼を鋼材Sとすることを想定し、鋼材Sの長さ方向に沿う方向の幅が約140mmの鋼鉄製の支持部材を12台配置している。このような構成とすれば、支持台10が鋼材Sを支持するために十分な強度を有するとともに、ライン距離計30A、30B、30Cによる計測を行う複数の計測位置の設定の自由度を高くすることができる。
【0013】
鋼材Sの長さ方向と平行に軌道42が配置されている。軌道42は、移動装置43の不図示の両輪の間に配置されることで、移動装置43は、軌道42に沿って移動することができる。移動装置43にはベルト41が連結され、駆動装置40によってベルト41を移動させることで移動装置43を移動させることができる。1台の駆動装置40により、3台の移動装置43を連動させて同時に移動させることができる。駆動装置40は、通信モジュールを備え、後述のコントローラとの間で情報やデータの授受を行うことができる。
【0014】
図1及び
図2の例では、軌道42上の3台の移動装置43が適長離隔して配置されている。3台の移動装置43には、それぞれライン距離計30A、30B、30Cが取り付けられている。ライン距離計30A、30B、30Cは、それぞれ鋼材Sの複数面の二次元位置を計測して各面内の複数の位置の二次元位置情報を取得できる。ライン距離計30Aは、鋼材Sの符号Aで示す範囲の二次元位置情報を取得し、ライン距離計30Bは、鋼材Sの符号Bで示す範囲の二次元位置情報を取得し、ライン距離計30Cは、鋼材Sの符号Cで示す範囲の二次元位置情報を取得できる。隣接するライン距離計で計測された二次元位置は、鋼材Sの長さ方向に沿って水糸20の位置を基準に連結処理され、鋼材Sの一端から他端に亘る連結した二次元位置情報に統合される。
【0015】
駆動装置40は、不図示の移動量検出器(エンコーダ)を備え、各移動装置43の移動に伴う移動量を計測して取得できる。これにより、ライン距離計30A、30B、30Cの位置(本明細書では軌道42の方向をz軸方向とし、ライン距離計30A、30B、30Cが計測する計測点のz座標での位置とする)を取得できる。なお、ライン距離計30A、30B、30Cをライン距離計30とも称する。ライン距離計30の台数は3台に限定されるものではなく、鋼材Sの長さに応じて所要の台数を設ければよく、1台でもよいが、計測時間の短縮の観点からは複数のライン距離計30を設けることが好ましい。
【0016】
図2に示すように、ライン距離計30の計測領域は、図中の直線M1とM2との間の領域とすることができる。ライン距離計30の計測領域には、水糸20、鋼材Sの複数の面(被計測面)が含まれる。鋼材Sは、支持台10に載置され静止した状態で二次元位置が計測される。また、鋼材Sの静止位置は、ライン距離計30に近い鋼材Sのエッジ部(図では左下角)が鋼材Sの寸法、形状に依らず同じ位置であるので、ライン距離計30を昇降あるいは横移動させることなく、どの種類の鋼材Sに対しても計測できる。
【0017】
鋼材の曲り反り計測装置は、算出部として機能するコントローラ50を備える。
【0018】
図3は本実施形態のコントローラ50の構成の一例を示す図である。コントローラ50は、コントローラ50全体を制御する制御部51、インタフェース部52、メモリ53、通信部54、及び記憶部55を備える。
【0019】
制御部51は、IC(Integrated Circuit)チップ、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等が所要数組み込まれて構成されてもよい。また、制御部51は、DSP(Digital Signal Processors)、FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)等を組み合わせて構成してもよい。
【0020】
インタフェース部52は、インタフェースモジュールを備え、ライン距離計30A、30B、30C、及び駆動装置40との間のインタフェース機能を実現する。具体的には、インタフェース部52は、ライン距離計30A、30B、30Cから鋼材Sの二次元位置情報、及び水糸20の二次元位置情報を取得する。インタフェース部52は、駆動装置40からライン距離計30A、30B、30Cの移動量(z軸方向の位置情報)を取得する。また、インタフェース部52は、駆動装置40に対して、移動装置43の移動指令を出力する。
【0021】
通信部54は、通信モジュールを備え、外部の装置との間で有線通信又は無線通信を行う機能を有する。
【0022】
記憶部55は、例えば、ハードディスク又は半導体メモリ等で構成することができ、コンピュータプログラム56(プログラム製品)、及び所要の情報(例えば、鋼材S及び水糸20の二次元位置情報、鋼材Sの曲り量、反り量、鋼材Sの合否判定結果など)を記憶する。
【0023】
コンピュータプログラム56は、通信部54を介して外部の装置からダウンロードして記憶部55に記憶してもよい。また、記録媒体(例えば、CD-ROM等の光学可読ディスク記憶媒体)に記録されたコンピュータプログラム56を記録媒体読取部で読み取って記憶部55に記憶してもよい。
【0024】
メモリ53は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリで構成することができる。コンピュータプログラム56をメモリ53に展開して、制御部51がコンピュータプログラム56を実行することでコントローラ50の機能を実現できる。制御部51は、コンピュータプログラム56で定められた処理を実行することができる。すなわち、制御部51による処理は、コンピュータプログラム56による処理でもある。
【0025】
図4は鋼材Sの被計測面の一例を示す図である。ライン距離計30は、ライン距離計30に設けられた発光部から、例えばレーザ光を照射し、反射したレーザ光を受光部で受光することで被計測面内の任意の計測点までの距離を計測する。例えば、ライン距離計30の計測領域を定める直線M1とM2の間の中心線の方向をx軸とし、x軸と直交する方向をy軸とすることで、計測した距離をxy平面上の二次元位置に変換できる。前述の
図1及び
図2に示したように鋼材Sを支持台10に支持した場合、鋼材Sの被計測面は、
図4に示すように、xy平面上でラインL1、L2、L3、L4、L5、及びL6で示す面となる。ラインL4とL5との間が離隔しているのは、ライン距離計30が照射するレーザ光が水糸20によって遮られるからである。ライン距離計30は、各被計測面L1~L6内の計測点の二次元位置を計測できる。ライン距離計30をz軸方向(鋼材Sの長さ方向)に所定の距離だけ移動させて二次元位置を計測することを繰り返すことで、鋼材Sの被計測面の全長に亘って計測を行うことができる。なお、鋼材Sの二次元位置を計測する場合、被計測面L1~L6のうちの少なくともいずれか1つに関する二次元位置を計測すればよいが、計測の精度を向上させるため、直交する少なくとも2つの被計測面(例えば、被計測面L1とL2)の二次元位置を計測するのが好ましい。
【0026】
すなわち、ライン距離計30は、鋼材Sの長さ方向における複数の計測位置(z座標)で当該長さ方向と交差する交差面上の、水糸20の二次元位置(xy座標)及び鋼材Sの二次元位置(xy座標)を計測する。ライン距離計30は、計測した二次元位置(xy座標)をコントローラ50へ出力し、駆動装置40は、鋼材Sの長さ方向における複数の計測位置(z座標)をコントローラ50へ出力する。交差面は、鋼材Sの長さ方向と直交していることが好ましい。これにより、鋼材の曲り量及び反り量の算出に要する計算量を少なくすることができる。
【0027】
上述のように、本実施形態によれば、静止した鋼材Sの長さ方向に沿ってライン距離計30を複数台配置し、または移動させて、ライン距離計30によって鋼材Sの一端から他端に亘って複数の位置で交差面上の二次元位置を計測するので、搬送中の鋼材に対する測定と異なり、鋼材に上下左右方向のぶれが生じることがなく、鋼材搬送に伴って発生する振動の影響も受けない。
【0028】
また、上述のように、コントローラ50(制御部51)は、計測された水糸20の二次元位置(xy座標)、鋼材Sの二次元位置(xy座標)及び計測点のz座標に基づいて鋼材Sの曲り量及び反り量を算出する。
【0029】
鋼材Sの複数面の二次元位置と同時に計測される水糸の二次元位置を基準とすることにより、複数のライン距離計30のデータを正しく点群データとして長さ方向に統合できるので、複数のライン距離計を計測領域が重複するように広い領域を移動させる必要がなく、計測時間を短縮できる。また、長さ方向の途中に障害物が存在しても、複数のライン距離計30のデータを統合し補完できる。
【0030】
また、単に鋼材Sの二次元位置を計測するだけでなく、曲り反りのない線状材としての水糸20の二次元座標を同時に計測することで、水糸20の位置を基準位置として、曲り反りのない基準位置に対する鋼材Sの二次元位置情報(本明細書では、鋼材位置情報とも称する)を生成することができる。これにより、ライン距離計30(移動装置43)の移動に起因する上下左右方向のぶれや振動の影響を除外することができ、鋼材の曲り量・反り量をより精度良く自動計測できる。本実施形態においては、鋼材位置情報は、水糸20の中心の二次元位置を基準位置とした鋼材Sの二次元位置情報である。なお、水糸の中心(中心座標)としては、例えば、ライン距離計30の計測結果から水糸の上端点と下端点の座標を求め、これらの中点の座標を求めることで算出したものが使用できる。
【0031】
また、仮にライン距離計30(移動装置43)の移動に起因する上下左右方向のぶれや振動が生じたとしても、鋼材Sの二次元位置から水糸20の二次元位置を差し引くことで、鋼材Sの二次元位置の変動分を、水糸20の二次元位置の変動分で相殺(補正)することができ、ライン距離計30(移動装置43)の移動に起因する上下左右方向のぶれや振動の影響を除外することができ、鋼材の曲り量・反り量をより精度良く自動計測できる。
【0032】
また、ライン距離計30を用いるので、サイズの異なる複数種類の鋼材Sでも複数面の二次元位置を計測することができ、鋼材Sの種類に応じて、ライン距離計30の配置位置(例えば、高さや距離など)を調整する必要がない。
【0033】
次に、鋼材Sの曲り量・反り量の算出方法について具体的に説明する。なお、以下では、便宜上鋼材Sの被計測面として被計測面L1(
図4参照)を用いて説明するが他の被計測面も同様である。
【0034】
図5は鋼材S及び水糸20の二次元位置と鋼材Sの長さ方向の計測位置の一例を示す図である。駆動装置40によって移動装置43を鋼材Sの長さ方向(z軸方向)に移動させることにより、ライン距離計30による計測点のz座標を移動させることができる。
図5の例では、ライン距離計30の計測位置(すなわち計測点のz座標)をz
1 ,z
2 、…z
i 、…で表す。ライン距離計30の計測位置z
1 での鋼材Sの二次元位置を、ラインL1に沿って、(x
11,y
11)、(x
21,y
21)、…、(x
j1,y
j1)、…で表し、水糸20の二次元位置を、(x
s1 ,y
s1 )で表す。また、ライン距離計30の計測位置z
2 での鋼材Sの二次元位置を、ラインL1に沿って、(x
12,y
12)、(x
22,y
22)、…、(x
j2,y
j2)、…で表し、水糸20の二次元位置を、(x
s2 ,y
s2 )で表す。同様に、ライン距離計30の計測位置z
i での鋼材Sの二次元位置を、ラインL1に沿って、(x
1i,y
1i)、(x
2i,y
2i)、…、(x
ji,y
ji)、…で表し、水糸20の二次元位置を、(x
si ,y
si )で表す。
【0035】
なお、
図5は模式的に図示したものであり、計測位置のz座標方向の間隔(比率)はこれに限定されない。複数の計測位置については、後述の近似曲線の生成のために十分な数を鋼材の長さに応じて設定すればよく、例えば等間隔で設定された数十点程度とすることが好ましい。また、ラインL1に沿った二次元位置については、鋼材Sの被計測面上の少なくとも1つの計測点は鋼材Sの稜線上の点とすることが好ましい。また、鋼材Sの被計測面上の二次元位置の計測点は被計測面の中心線上の点を含むことが好ましい。特に鋼材Sの稜線上の点は、計測結果から特定することが容易であるため、稜線は鋼材Sの曲り量や反り量を精度よく算出するために用いる代表線として有用である。また、被計測面の中心線は、2本の稜線の中点の集合であるため、同様の理由から代表線として有用である。さらに、例えば等間隔で設定された数十点程度で二次元位置を計測することにより、鋼材Sの曲りと反りを含む歪みをより詳細に把握することができる。
【0036】
図6は鋼材位置情報の一例を示す図である。鋼材位置情報は、水糸20の中心の二次元位置を基準とする鋼材Sの二次元位置情報である。コントローラ50は、水糸20の中心の二次元位置及び鋼材Sの二次元位置に基づいて、ライン距離計30の計測位置それぞれでの鋼材位置情報を生成する。
図6に示すように、ライン距離計30の計測位置z
1 での鋼材Sの鋼材位置情報を(xp
11,yp
11)で表すと、xp
11=x
11-x
s1 、yp
11=y
11-y
s1 で求めることができる。ここで、(x
11,y
11)は鋼材Sの二次元位置であり、(x
s1 ,y
s1 )は水糸20の中心の二次元位置である。同様に、ライン距離計30の計測位置z
i での鋼材Sの鋼材位置を(xp
1i,yp
1i)で表すと、xp
1i=x
1i-x
si 、yp
1i=y
1i-y
si で求めることができる。ここで、(x
1i,y
1i)は鋼材Sの二次元位置であり、(x
si ,y
si )は水糸20の中心の二次元位置である。
【0037】
図7はライン距離計30の座標系における二次元位置を示す図である。ライン距離計30の座標系は、ライン距離計30の計測領域を定める直線M1とM2の間の中心線の方向をx軸とし、x軸と直交する方向をy軸とすることができる。
図5及び
図6に示した、鋼材S及び水糸20の二次元位置は、ライン距離計30の座標系における二次元位置である。
図7に示すように、ライン距離計30の座標系のx軸方向及びy軸方向は、鋼材Sの各面と平行ではない。鋼材Sの各面が水平方向又は鉛直方向と平行となるように配置した場合、鋼材Sの曲り反りは、水平方向における面上の位置の変位、あるいは鉛直方向における面上の位置の変位として捉えることができる。別言すれば、ライン距離計30の座標系における二次元位置から直接鋼材Sの曲り反りを求めることができない。このため、鋼材Sの各面が水平方向又は鉛直方向となるように座標系を変換する必要がある。そこで、本実施形態においては、
図7に示すように、2本の水糸20a、20bが適長離隔して配置されている。
【0038】
座標変換を行うため、
図7に示すように、水糸20aの中心から水糸20bの中心へ向かうベクトルを考える。ベクトルは必ずしも水平方向又は鉛直方向と平行ではない。水糸20a、20bを配置する際に、障害物や設置時の困難さが生じる場合があるからである。
【0039】
図8は基準座標系における二次元位置を示す図である。基準座標系の水平方向をx′軸とし、鉛直方向をy′軸とする。
図7に示したベクトル(
図8中、破線で示す矢印)と鉛直方向のベクトル(
図8中、実線で示す矢印)とのなす角をαとすると、水糸20aの中心を起点として角度αだけ回転させることでxy座標系をx′y′座標系に変換できる。
図8に示すように、基準座標系では、鋼材Sの各面は水平方向又は鉛直方向と平行になる。すなわち、鋼材Sの被計測面の二次元位置(鋼材位置)から直接曲り反りを求めることが可能となる。
【0040】
図9は座標変換後の鋼材位置情報の一例を示す図である。ライン距離計30の計測位置z
1 での鋼材Sの座標変換前の鋼材位置情報(ライン距離計30の座標系における鋼材位置情報)を、(xp
11,yp
11)、(xp
21,yp
21)、…、(xp
j1,yp
j1)、…とする。ライン距離計30の計測位置z
1 での鋼材Sの座標変換後の鋼材位置情報を(x′p
11,y′p
11)、(x′p
21,y′p
21)、…、(x′p
j1,y′p
j1)、…の如く表すことができる。鋼材位置情報のx′成分は水平方向の成分であり、y′成分は鉛直方向の成分である。
【0041】
図10は鋼材Sの曲り反りを示す図である。鋼材S(H形鋼)のウェブ(中央の橋渡し部分)の幅方向を水平成分(x′成分)とし、ウェブと垂直な方向を鉛直成分(y′成分)とし、鋼材Sの長さ方向をz成分とする。曲りはウェブの面に平行な面内(x′z面内)での鋼材位置情報のx′成分の変化によって表され、反りはウェブの面に垂直な面内(y′z面内)での鋼材位置情報のy′成分の変化によって表される。
【0042】
コントローラ50(制御部51)は、複数の計測位置の位置情報(z座標)及び鋼材位置情報に基づいて鋼材Sの曲り量及び反り量を算出することができる。
【0043】
より具体的には、
図8及び
図9に示したように、コントローラ50(制御部51)は、ライン距離計30の座標系における複数の水糸20a、20bの位置に基づいて交差面上で水平基準軸及び鉛直基準軸(すなわち、基準座標系)を設定することができる。コントローラ50(制御部51)は、鋼材Sの長さ方向における複数の計測位置で計測した鋼材位置情報を水平基準軸上及び鉛直基準軸上それぞれの座標に変換し、それらの鋼材Sの長さ方向における変化に基づいて鋼材Sの曲り量及び反り量を算出することができる。
【0044】
上述の構成により、鋼材Sの二次元位置を計測することにより鋼材位置情報を水平成分と鉛直成分に分離することができ、鋼材Sの曲り量及び反り量を分離して算出できるとともに、曲り反りを同時に求めることができる。
【0045】
次に、座標変換後の鋼材位置情報(
図9参照)から鋼材の曲り量及び反り量を算出する方法について説明する。
【0046】
本実施形態においては、まず、座標変換後の鋼材位置情報の中から、鋼材Sの2面L1とL2が交差する稜線上の計測点の座標群を抽出する。具体的には、面L1の一方の端(面L2側の端)の計測点について、複数の計測位置における計測点の座標群を抽出する。その後、その稜線上の計測点から数えて1番目、2番目、…の計測点(二次元位置)について、複数の計測位置における計測点の座標群を順次抽出する。
【0047】
図11は鋼材Sの稜線上の計測点の座標群の一例を示す図である。
図11の例では、座標変換後の鋼材位置情報の中から座標群(x′p
j1,y′p
j1,z
1 )、(x′p
j2,y′p
j2,z
2 )、…、(x′p
ji,y′p
ji,z
i )、…が抽出されている。そして、抽出された座標群に基づいて水平成分(x′)及び鉛直成分(y′)の座標群を求める。水平成分の座標群は、(x′p
j1,z
1 )、(x′p
j2,z
2 )、…、(x′p
ji,z
i )、…であり、鉛直成分の座標群は、(y′p
j1,z
1 )、(y′p
j2,z
2 )、…、(y′p
ji,z
i )、…である。
【0048】
図12は鋼材Sの曲り量の算出方法の一例を示す図である。曲りはウェブの面に平行な面内(x′z面内)での鋼材位置情報のx′成分の変化によって表される(
図10参照)。そこで、x′z面内の座標群を近似する近似曲線を求める。近似する際の曲線の式としては、多次曲線(例えば、3次、4次、5次など)として、最小二乗近似により、x′=ΣK
kz
k +K
0(k=1~m)の形の近似式を算出すればよい。mは次数である。
図12中、近似曲線を破線で図示している。
【0049】
次に、近似曲線が鋼材Sの両端と交差する両端部の座標を求める。
図12の例では、鋼材Sの一端側の座標を(x′p
j1,z
1 )とし、他端側の座標を(x′p
jn,z
n )としている。そして、鋼材Sの両端の座標を結ぶ直線を求める。
図12中、直線を実線で図示している。近似曲線と鋼材Sの両端の座標を結ぶ直線との距離Δx′を求め、距離Δx′の最大値Δx′
maxを鋼材Sの第1の曲り量として算出する。
【0050】
なお、図示していないが、鋼材Sの反り量は、以下のようにして求めることができる。すなわち、y′z面内の座標群を近似する近似曲線を求める。近似する際の曲線の式としては、最小二乗近似により、y′=ΣKkzk +K0(k=1~m)の形の近似式を算出すればよい。次に、近似曲線が鋼材Sの両端と交差する両端部の座標を求める。そして、鋼材Sの両端の座標を結ぶ直線を求める。近似曲線と鋼材Sの両端の座標を結ぶ直線との距離Δy′を求め、距離Δy′の最大値Δy′maxを鋼材Sの第1の反り量として算出できる。
【0051】
その後、稜線上の計測点の座標群について行った上記の計算と同様にして、稜線上の計測点から数えて1番目、2番目、…の計測点についての複数の計測位置における計測点の座標群に対する計算を行い、第2の曲り量と反り量、第3の曲り量と反り量、…が算出できる。
【0052】
上述のように、コントローラ50(制御部51)は、鋼材位置情報の水平基準軸上及び鉛直基準軸上での座標及び複数の計測位置の位置情報に基づいて曲り反り近似曲線を生成する。コントローラ50(制御部51)は、曲り反り近似曲線と、当該曲り反り近似曲線が鋼材Sの両端と交差する両端部を結ぶ直線との距離に基づいて鋼材Sの曲り量及び反り量を算出することができる。
【0053】
図13は本実施形態の鋼材の曲り反り計測装置による処理手順の一例を示す図である。コントローラ50は、搬送された鋼材Sが支持台10上での所定位置で静止したことを検出し、上位システムより予め取得した鋼材Sの種類、寸法情報に基づいて求められる計測位置及び移動計測範囲を設定する。コントローラ50は、移動装置43を計測開始位置にセットする。
【0054】
コントローラ50は、ライン距離計30を鋼材Sの長さ方向に所定の距離だけ移動させて鋼材S及び水糸20の二次元位置を計測することを繰り返す(S11)。コントローラ50は、ライン距離計30の位置情報(z座標)、鋼材S及び水糸20の二次元位置情報(xy座標)を取得し(S12)、水糸20の二次元位置を基準として鋼材Sの鋼材位置情報を生成する(S13)。鋼材位置情報は、水糸20の二次元位置を基準とした鋼材Sの二次元位置情報である(
図6参照)。
【0055】
コントローラ50は、水糸20(より具体的には、水糸20a、20b)の中心座標に基づいて基準軸(基準座標系)を設定する(S14)。コントローラ50は、基準軸に基づいて鋼材位置情報を座標変換して座標変換後の鋼材位置情報を求める(S15)。座標変換後の鋼材位置情報については
図9を参照。
【0056】
コントローラ50は、座標変換後の鋼材位置情報から鋼材Sの長さ方向の座標群を抽出する(S16)。コントローラ50は、抽出した座標群のうち、x′z面内及びy′z面内それぞれの座標群を近似する近似曲線を生成する(S17)。近似曲線は
図12を参照。コントローラ50は、近似曲線と、近似曲線が鋼材Sの両端と交差する両端部を結ぶ直線との距離を算出する(S18)。
【0057】
コントローラ50は、水平成分(x′)の距離の最大値を鋼材Sの曲り量とし、鉛直成分(y′)の距離の最大値を鋼材Sの反り量とする(S19)。コントローラ50は、算出した第1の曲り量及び第1の反り量、第2の曲り量及び第2の反り量、…のうち、それぞれの最大値(最大の曲り量と最大の反り量)に基づいて鋼材Sの合否判定を行い(S20)、処理を終了する。
【0058】
鋼材Sの合否判定は、例えば、鋼材Sの最大の曲り量が曲り許容値を超える場合、曲り不合格と判定し、鋼材Sの最大の反り量が反り許容値を超える場合、反り不合格と判定できる。鋼材Sの最大の曲り量が曲り許容値以下であり、かつ、鋼材Sの最大の反り量が反り許容値以下である場合、鋼材Sは合格と判定できる。
【0059】
図13に示す処理において、計測領域内に支持台10の支柱などの計測障害物が含まれる場合には、ライン距離計30と鋼材S及び水糸20との距離関係から、鋼材Sでもなく水糸20でもない物体を障害物であると判定し、統合された二次元位置情報から障害物の二次元位置情報を除外できる。
【0060】
上述のように、本実施形態の鋼材の曲り反り計測装置によれば、鋼材Sの曲り量・反り量を複雑な機構を用いずに自動計測可能としつつ、より精度良く定量的に把握することができる。また、本実施形態によれば、計測時間が数秒(例えば、5秒など)以下となり、例えば、手測定の場合の計測時間(数十分)に比べて大幅に短縮できる。
【0061】
また、図示していないが、コントローラ50は、複数の水糸の二次元位置に基づいて当該複数の水糸の間の相対位置を算出し、算出した相対位置の経時変化に基づいて水糸の異常を判定してもよい。具体的には、複数の水糸のうち、基準となる水糸を決定しておき、基準の水糸と他の水糸との間の相対位置が許容範囲を超える場合、あるいは許容範囲を下回る場合、当該水糸が異常であると判定できる。相対位置を水糸の中心間の距離とした場合には、水糸に何かが付着して弛み量が増加し、あるいは切断した場合などの異常を検出できる。また、相対位置を水糸の表面の間の距離(計測された二次元位置の間の距離の最小値)とした場合には、水糸に汚れ等が多く付着する等により形状が変化した場合などの異常を検出できる。水糸が異常であると判定した場合、コントローラ50は、通信部54を介して異常であることを通知してもよい。なお、異常を通知する通知装置を、鋼材の曲り反り計測装置とは別の装置として構成し、通信部54を介して鋼材Sの合否判定結果を通知装置に出力し、当該通知装置が異常を通知する異常通知システムを構成してもよい。
【0062】
また、コントローラ50は、異常と判定された水糸を除外した残りの水糸の二次元位置に基づいて鋼材Sの曲り量及び反り量を算出してもよい。これにより、正常な水糸の二次元位置だけを使用することができるので、鋼材Sの曲り量及び反り量を精度良く算出できる。
【0063】
コントローラ50は、複数の水糸の中心座標の標準偏差を算出し、算出した標準偏差が所定の閾値を超える場合、ライン距離計30又は移動装置43が異常であると判定してもよい。また、コントローラ50は、ライン距離計30又は移動装置43が異常であると判定した場合、通信部54を介して異常を通知してもよく、通信部54を介して判定結果を通知装置へ出力してもよい。この場合、通知装置が異常を通知すればよい。
【0064】
本実施形態の鋼材の曲り反り計測装置によれば、形やサイズの異なる複数種類の鋼材Sを、ライン距離計30の計測領域に収められるので、ライン距離計の高さや水平位置を鋼材Sの種類に応じて調整する必要がなく、単純な機構で実現でき、故障率が低く、保守性も優れている。
【0065】
また、水糸の本数に冗長性を持たせることにより、破断や何らかの原因で直線性が損なわれた水糸を検出して二次元位置の計測の基準として使用しないこと、あるいは異常を通知することで保守担当者等に対して必要な処理を促すことができる。また、ライン距離計30や移動装置43などの異常に対しても、複数の水糸20の中心座標の変動から検知することができ、故障予知、保守時期の設定、異常時の通知など保守性を改善できる。
【0066】
(付記1)鋼材の曲り反り計測装置は、鋼材を支持する支持台と、前記鋼材の長さ方向における複数の計測位置で、前記長さ方向と交差する交差面上における前記鋼材の長さ方向に沿って配置された線状材の二次元位置及び前記鋼材の二次元位置を計測する二次元位置計測部と、前記二次元位置計測部で計測した前記線状材及び前記鋼材それぞれの二次元位置に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する算出部とを備える。
【0067】
(付記2)鋼材の曲り反り計測装置は、付記1において、前記算出部は、前記線状材の二次元位置を基準とする前記鋼材の二次元位置を鋼材位置情報として生成し、前記複数の計測位置の位置情報及び前記鋼材位置情報に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する。
【0068】
(付記3)鋼材の曲り反り計測装置は、付記2において、前記線状材が複数配置されており、前記算出部は、前記複数の線状材の前記交差面上の二次元位置に基づいて前記交差面上で水平基準軸及び鉛直基準軸を設定し、前記鋼材位置情報を前記水平基準軸上及び前記鉛直基準軸上それぞれの座標に変換して前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する。
【0069】
(付記4)鋼材の曲り反り計測装置は、付記3において、前記算出部は、前記鋼材位置情報の前記水平基準軸上及び鉛直基準軸上での座標及び前記複数の計測位置の位置情報に基づいて曲り反り近似曲線を生成し、前記曲り反り近似曲線と、前記曲り反り近似曲線が前記鋼材の両端と交差する両端部を結ぶ直線との距離に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する。
【0070】
(付記5)鋼材の曲り反り計測装置は、付記3又は付記4において、前記算出部は、前記複数の線状材の前記二次元位置に基づいて前記複数の線状材の間の相対位置を算出し、前記相対位置の経時変化に基づいて線状材の異常を判定する。
【0071】
(付記6)鋼材の曲り反り計測装置は、付記5において、前記算出部は、前記判定部で異常と判定された線状材を除外した残りの線状材の二次元位置に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する。
【0072】
(付記7)鋼材の異常通知システムは、前述の鋼材の曲り反り計測装置と、前記鋼材の曲り反り計測装置が算出した鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方が所定の許容値を超える場合、異常を通知する通知装置とを備える。
【0073】
(付記8)コンピュータプログラムは、支持台によって支持された鋼材の長さ方向における複数の計測位置で、前記長さ方向と交差する交差面上における前記鋼材の長さ方向に沿って配置された線状材の二次元位置及び前記鋼材の二次元位置を取得し、取得した前記線状材及び前記鋼材それぞれの二次元位置に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する、処理をコンピュータに実行させる。
【0074】
(付記9)鋼材の曲り反り計測方法は、支持台によって支持された鋼材の長さ方向に沿って線状材を配置し、前記長さ方向における複数の計測位置で、前記長さ方向と交差する交差面上における前記線状材の二次元位置及び前記鋼材の二次元位置を計測し、計測した前記線状材及び前記鋼材それぞれの二次元位置に基づいて前記鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方を算出する。
【0075】
(付記10)鋼材の異常通知方法は、前述の鋼材の曲り反り計測方法によって算出した鋼材の曲り量及び反り量の少なくとも一方が所定の許容値を超える場合、異常を通知する。
【0076】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【0077】
以上に開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての修正や変形を含むものと意図される。
【0078】
例えば、上記の実施形態では、ライン距離計30及び移動装置43を鋼材Sの斜め下方に設置する構成であるが、これは冷却床や検査床に鋼材を並べながら計測を行う場合に鋼材の移動や他の設備との干渉を避けることができるからである。そのような干渉がない場合には、ライン距離計30及び移動装置43を支持台よりも上方に配置してもよい。
【0079】
ライン距離計は、二次元位置情報を取得できるものであれば、どのようなセンサを用いてもよいが、例えば、レーザ形状センサが好適に使用できる。また、駆動装置40をそれぞれのライン距離計30(移動装置43)毎に設けてもよい。
【0080】
水糸(線状材)を2本配置する好ましい形態を示したが、3本以上配置しても良い。
【0081】
また、支持台の構成は上記の形態に限られず、二次元位置計測部による複数の計測位置での計測が可能なように鋼材を静止状態で支持できればよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、鋼材の曲り量及び反り量の双方を算出する場合を示したが、本発明は、鋼材の曲り量及び反り量のうちの一方のみを算出する形態も含むものである。
【符号の説明】
【0083】
10 支持台
20、20a、20b 水糸
30、30A、30B、30C ライン距離計
40 駆動装置
41 ベルト
42 軌道
43 移動装置
50 コントローラ
51 制御部
52 インタフェース部
53 メモリ
54 通信部
55 記憶部
56 コンピュータプログラム
S 鋼材